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滋賀大学経済学部准教授 得田雅章 1. はじめに本論の目的は H20 年とH19 年に実施された彦根市観光関連調査について 観光消費額および経済波及効果を中心として比較考察を行うものである 1 H19 年に開催された 国宝彦根城築城 400 年祭 は 好景気やキャラクターひこにゃんが中心となったゆる

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滋賀大学 経済学部 准教授 得田 雅章 1. はじめに 本論の目的は、H20年とH19年に実施された彦根市観光関連 調査について、観光消費額および経済波及効果を中心として比 較考察を行うものである1 H19年に開催された「国宝彦根城築城400年祭」は、好景気や キャラクターひこにゃんが中心となったゆるキャラブームに乗っ て、大きな盛り上がりをみせた。 一方、H20年は長期イベントである「井伊直弼と開国150年祭2 の期間が含まれるものの大規模イベントの翌年にあたり、どの 程度の落ち込みとなるか、あるいは持続的な盛り上がりが確認 されるのか、定量的に比較検討する意義は大きいと考えられる。 ただし、両年における調査は、次の2点において調査対象が異 なっているため単純比較はできない。 ①観光消費額および経済波及効果の推計期間がH20年調査 では1年(2008年1月~12月)に対し、400年祭調査では祭開 催期間の8ヵ月(2007年3月~11月)であったこと。 ② H20年調査では夏場のびわ湖関連レジャー(水泳・花火大 会等)を含めた市内観光全般を対象としているのに対し、 400年祭調査では彦根城周辺観光に限定している。 そこで本論では400年祭調査結果を再計算し、上記差異を補 正したH19年の観光消費額および経済波及効果を推計したうえ で、H20年調査との定量的な比較検討を行った。 2. 観光客アンケート調査概観 観光消費額推計の基礎データは、観光客アンケート調査により収集した。彦根城周辺5地点に、調査員を2名ない し3名を配置し、その地を訪れた観光客にアンケート票を配付し、自記入法(その場で回収)による調査を行った。な お、H20年調査では参考調査として市内3ヶ所で留置き調査も実施しているが、回収数が尐ないため集計結果につい ては省略する〈山﨑・得田(2009)参照〉。両年の調査とも、秋季の3日間にわたる調査を行った。それぞれイベント日3 通常の休日、平日に区分し結果をまとめている〈山﨑・得田(2009)〉。 1 両調査とも彦根市からの委託調査であり、包括的な調査結果については山﨑・得田(2009)および山﨑・得田(2008)を参照していただきたい。 なお、本論での 400 年祭とは H19 年 3/21~11/25 の 250 日間にわたって催された「国宝彦根城築城 400 年祭」を指す。 2 開催期間 H20 年 6/4~H22 年 3 月の複数年にまたがる長期イベントである。詳細は http://www.hikone-150th.jp/にて。 3 H20 年のイベント日は「井伊直弼 大名茶会と花展」の開催日にあたり、400 年祭(H19 年)は「小江戸彦根の城まつり」期間中の、「城まつりパ レード」の開催日にあたる。 ② 彦 根城 大 手門 ① 彦根城 表 門 ③ 京 橋口駐車場 ④ いろは松駐車場 ⑤ 四番町スクエア ⑥ 駅 前 観 光 案 内 所 ⑦ 花しょうぶ通り ⑧ 七曲仏壇街 [ 図 1 彦根城周辺エリアと調査地点 ]

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具体的な調査地点は図1の通りであり、①~⑤は調査員による調査、⑥~⑧は調査員を置かない留置きによる調 査である。本論で比較検討する調査員調査のアンケート回答数は両年で大きく変わらない[表1]。 [ 表 1 アンケート回答数 ] H20 年調査 400 年祭(H19 年)調査 調査地点 イベント日 10/12(日) 通常休日 11/9(日) 平日 11/13(木) 小計 イベント日 11/13(土) 通常休日 10/13(土) 平日 11/8(木) 小計 調 査 員 調 査 ①彦根城 表門 100 107 62 269 99 100 90 259 ②彦根城 大手門 100 107 60 267 100 100 60 260 ③京橋口駐車場 100 107 60 267 99 100 60 259 ④いろは松駐車場 100 107 60 267 95 101 60 256 ⑤四番町スクエア 100 107 60 267 100 100 60 260 調査員調査計 500 535 302 1,337 493 501 300 1,294 留 置 調 査 ⑥駅前観光案内所 34 ⑦花しょうぶ通り 28 ⑧七曲仏壇街 3 留置調査計 65 合計 500 535 302 1,402 493 501 300 12,94 3. 観光客1人あたり消費行動 H20年の観光客アンケートデータから導かれた彦根観光における宿泊客・日帰り客別の1人当たり観光消費金額の 平均は、それぞれ29.6千円・6.7千円であった4。宿泊・日帰り客とも400年祭調査に比べると大きく増額した[表2]。この 結果の原因として、①400年祭期間では集客超により十分に活用できなかった有料交通手段(タクシー、ベロタク シー、屋形船等)を、H20年では利用しやすかった[交通費]。②平均宿泊日数が1.16泊(400年祭)から1.24泊(H20 年)と連泊化が進んだ[宿泊費]5。③図2に示されるように、観光消費額分布としてH20年調査では高額消費者の割 合が増え、平均を押し上げている。④H20年前半の急激な物価高騰の影響で、アンケート記入額を高めにした6、等 が考えられる。 [ 表2 観光客1人当たり消費金額内訳 ] ※「内ひこにゃんグッズ」の割合のみ、お土産購入費に占める割合 ※滋賀県調査とは「滋賀県観光動態調査報告書」をさす 4 なお、メディアンでは、宿泊客24.6千円、日帰り客5.2千円であった。 5 1泊あたりに換算すると、9,725円であり、宿泊費として妥当な額と考えられる。 6 日本銀行『生活意識に関するアンケート調査』(第35回)によると、1年前に比べた現在の物価に対する実感を、「上がった(かなり・尐し)」と感じ ている割合が94.6%を占めている。 割合 平均金額 割合 平均金額 割合 平均金額 割合 平均金額 割合 平均金額 割合 平均金額 交通費 19% ¥5,636 29% ¥1,947 13% ¥2,917 23% ¥1,168 21% ¥7,234 34% ¥3,525 宿泊費 41% ¥12,059 0% ¥0 43% ¥9,961 0% ¥0 37% ¥12,774 0% ¥0 飲食費 17% ¥5,109 27% ¥1,807 19% ¥4,364 25% ¥1,277 25% ¥8,508 37% ¥3,876 お土産購入費 17% ¥5,102 29% ¥1,953 20% ¥4,592 28% ¥1,437 13% ¥4,486 21% ¥2,181  内ひこにゃんグッズ

22%

¥1,111 23%

¥442

47% ¥2,160 35% ¥504 その他 6% ¥1,648 14% ¥953 6% ¥1,475 25% ¥1,302 4% ¥1,225 9% ¥928 合計 宿泊客 日帰り客 ¥34,228 ¥10,510 H20年調査(本調査) (参考)彦根市400年祭調査(H19年) (参考)滋賀県調査(H17年) 宿泊客 日帰り客 ¥23,308 ¥5,184

¥6,660

日帰り客 宿泊客

¥29,554

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[ 図2 観光客1人当たり観光消費額の分布 ] 4. 観光消費額の推計 H20年の彦根市観光関連観光客数と観光消費額は、以下の考え方にしたがって推計している。 まず、彦根市観光関連の観光消費額は、 観光消費額 = 宿泊客観光消費額 + 日帰り客観光消費額 と定義する。ここで、 宿泊客観光消費額 = 宿泊客一人あたり観光消費額 × 宿泊観光客数(実人数) 日帰り客観光消費額 = 日帰り客一人あたり観光消費額 × 日帰り観光客数(実人数) である。 宿泊観光客数(実人数)は、観光客アンケート調査の結果7から、ほぼ1泊であることから、滋賀県観光入込統計の 宿泊客数をそのまま用いた。日帰り観光客数(実人数)については、日帰り観光客数(延べ人数)を1人当たり訪問地 点数で除すことで求めた。 日帰り観光客数(実人数) = 日帰り観光客数(延べ人数) ÷ 1人当たり訪問地点数 ただし、現時点(本論執筆時H21年4月)では、H20年7月から12月までの彦根市観光入込客数データ(とそれをもと にした実人数データ)が入手できないため、何らかの形で推計(予測)しなければならない。そのための有用なモデル として、次に示す回帰式を用意した。 城山公園入場者数 = b0 + b1 × 観光客数(実人数) + b2 × 夏ダミー + 誤差項 このように城山公園入場者数を、彦根市観光客数(実人数)と夏ダミーに回帰させた。観光客数(実人数)の導出お よびその妥当性を検証するため、○観光客数(実人数)=(宿泊観光客数(実人数)+日帰り観光客数(実人数))、○ 城山公園入場者数(実人数)の月次データを用い、OLS(最小二乗法)により推計した。なお、観光客入込データから の実人数化に関して、彦根観光は日帰り型がメインで宿泊も1泊がほとんどであることから、平均宿泊日数を1と仮定 し、入込客数をそのまま実人数化してある(宿泊客)。また観光客の観光地立寄り地点数は2.07とした8(日帰り客)。 サンプル期間は2000年1月~08年6月で、ダミーは7月と8月が1、それ以外の月は0の夏ダミー変数である9 回帰式から、b1は城山公園入場率で、b2は夏場の彦根城周辺観光に依らない観光客(花火大会、びわ湖水泳、 ウォーターレジャー[鳥人間コンテスト]等)数と考えることができる。したがって、符号条件は0 <b1 < 1、b2 < 0であるこ 7 山﨑・得田(2009)、問 3(31 ページ)より。 8 山﨑・得田(2009)アンケート項目問 5 より。400 年祭調査でもほぼ同じ値であることから、サンプル期間中はこの値で固定している。 9 夏ダミーを 7 月と 8 月の 2 種作成することも考えたが、別個に考える根拠に薄く、実際推計しても特筆すべき結果が見い出せなかった。 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 相対度数 08年調査 400年祭調査 日帰り客 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 相対度数 08年調査 400年祭調査 宿泊客

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とが予想できる。なお、定数項b0は観光に区分されない固定的な人数と定義づけることができ、符号条件はb0 < 0 であることが予想される。入込統計上、算入されてしまったが、実際は地元住民や企業出張者を控除するということ である。誤差項は入場者数を左右するその他の不確定要因(ホワイトノイズ)である。 < OLS推計結果 >

 

2 5326 0.409 × 38101 × 1.94 19.72 10.73 0.795 11677 =1.866 R DW       城山公園入場者数(実人数) =  観光客数(実人数) - ダミー変数                                                    標準誤差        カッコ内はt値である。自由度修正済み決定係数

R

2 は高く、全ての符号条件を満たしている。さらに、観光客数 (実人数)とダミー変数の各係数は1%水準で有意であり、定数項も5%水準で有意であることがわかる。DW比から誤 差項の系列相関もナシと判断できる。これらの結果から、このモデルの適合度は良好であるといえるだろう。観光客 数の係数0.409すなわち40.9%は彦根城への立ち寄り率と見ることができる。この数値は、観光客アンケートと非常に 近接していることがわかる10。これらの結果をもって、推計される観光客数(実人数)の妥当性は高いと考えられる。 この回帰式を利用することで、H20年7月から12月にかけての観光客実人数を予測することが可能となる。さらに、 H20年上半期の宿泊率を適用することで、宿泊客と日帰り客を分けることができる。本論での観光消費額の推計に は、こうして得られた観光客数を利用した。その結果、H20年の彦根市への観光客数(実人数)を185万人と推計され た。また、本モデルから導出されるもの、観光客アンケート調査での宿泊・日帰り比率、および過去の彦根市観光入 込客統計での宿泊・日帰り比率を考慮してH20年の彦根市観光客の宿泊比率を11%とした(したがって宿泊客20.5万 人、日帰り客164.4万人)。こうして得られた観光客数に、アンケートから得られた1人あたり観光消費額を項目別に積 算することにより、宿泊客観光消費額が61億円、日帰り客観光消費額が110億円と推計した。したがって観光客全体 の観光消費額は約170億円と推計された[図3上]。 一方、H19年との比較検討をするために、400年祭調査結果を若干補正する必要がある。すなわち第1節で挙げた ①期間、②夏レジャーの差異を補正する。400年祭調査では未算入だったH19年1~3月と12月の観光客実人数は約 45万人である。これが1人当たり11,363円消費すると仮定すると(H20年実績[宿泊・日帰り合算])、約51億円の観光 消費額を生み出していたことがわかる。また、夏レジャー(H19年7、8月)に訪れた観光客実人数は約26万人である。 同様に1人当たり消費額を乗じると約29億円の観光消費額となる。すなわち、400年祭調査で控除した観光消費額は 計約80億であり、これを400年祭観光消費額の約174億円と合算し、H19年の彦根市観光全体の観光消費額を254億 円と推計する[図3下]。 こうして経済波及効果の原資となる観光消費額が定量化された。やはり大規模イベントであった400年祭を含む H19年に比してH20年は84億円もの差を開けられた。ただし内訳をみると、交通費の増大が若干見受けられるものの、 費目別比率の大きな変動は確認できなかった。次節では、ファーストインパクトである観光消費額が、彦根市内でど のように波及していくのかを定量化していく。 10 山﨑・得田(2009)アンケート項目〈問 5〉の円グラフで示される値参照。なお、400 年祭調査でも同値であった。

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[ 図3 H20年とH19年観光消費総額比較 ] 5. 経済波及効果の推計 H20年調査および400年祭調査ともに経済波及効果の推計は、国土交通省の提唱する乗数理論に基づく観光消費 調査推計支援システムに依拠している11。各種入力指標の具体的値は表3に、入力情報源は表4にまとめてある。 [ 表3 波及効果推計のための各種入力指標 ] 11 国土交通省 HP 参照(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanko/hakyukouka/step3.htm)。 交通費 12億円 19% 宿泊費 25億円 41% 飲食費 10億円 17% お土産 購入費 10億円 17% その他 3億円 6% 交通費 32億円 29% 飲食費 30億円 27% お土産 購入費 32億円 30% その他 16億円 14% 交通費 25 億円 22% 飲食費 28 億円 25% お土産購入 費 31億円 28% その他 28 億円 25% 宿泊 61 億円 35% 日帰り 113 億円 65% 観光客数 243 万人 宿泊 61億円 36% 日帰り 110億 円 64% 交通費 8 億円 12% 宿泊費 26 億円 43% 飲食費 11 億円 19% お土産購 入費 12 億円 20% その他 4 億円 6% 宿泊客数 26.3 万人 日帰り客数 216.9 万人 観光客数 185 万人 宿泊客数 20.5 万人 日帰り客数 164.4 万人 400年祭調査 観光消費総額 174億円 (補正)1~3月、12月+夏琵琶湖関連レジャー 観光消費総額 80億円 【H19年 】 観光消費総額 254億円 【H20年 】 観光消費総額 170億円 □域内調達率(支払先の域内率) 売上原価 営業経費 人件費 本社比率 飲食業 60% 71% 99% 47% 宿泊業 60% 61% 77% 65% 交通・運輸業 56% 70% 99% 47% H20年 19% 61% 90% H19年 20% 58% 74% 観光施設業 56% 73% 99% 47% 全産業 57% 72% 99% 47% 土産 販売業 73% □観光消費総額 (千円) 観光消費の総額 H20年 H19年 飲食費 4,017,497 4,821,674 宿泊費 2,470,974 3,821,848 交通費 4,356,941 5,720,223 土産品購入 4,257,414 6,314,172 現地ツアー、入場料など 1,904,204 4,693,152 総額 17,007,030 25,371,069

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[ 表4 入力情報源 ] パラメータ名 出典、データソース等 観光消費総額 観光客アンケートならびに彦根市観光入込統計等による推計値 収支構造 事業所アンケート、H18事業所・企業統計調査(滋賀県)、彦根商工会議所担当者からのヒアリ ングを参考として設定した。 域内調達率 事業所アンケート、H13事業所・企業統計調査(総務省統計局)、県産業連関表からの歩留まり 率計算、H17国勢調査を参考として設定した。 限界消費性向 国土交通省資料および「FirstStepマクロ経済学(賀川昭夫等著)」の数値を基本とした(0.86)。 ただしH20調査では年後半からの急激な景気悪化を考慮し0.84と設定した。 市内消費率 彦根市人口(11万人)に対応する三大都市圏目安(75%)とその他地方圏目安(100%)および、 H13 TMO診断評価調査研究事業現地実態調査「消費者意識等調査(Ⅰ)」~彦根商工会議所 ~H13中小企業総合事業団のデータを参考として設定した。 給与地域補正値 2004年度版 個人所得指標(日本マーケティング教育センター)より設定した。 彦根市内人口 H20年調査:広報ひこねH21年2/1号より、400年祭調査:広報ひこねH19年11/1号より 観光消費総額、その他の観光客実人数と消費単価は両調査で大きく異なるが、それ以外の項目はほぼ同一の設 定としている。以下ではH20年調査における波及過程についてやや詳しく述べていく。イメージとして図4を参照しつ つ追っていただきたい。なおH19年についても同様の手法であるため、結果のみを簡潔に言及することにとどめる。 まずは原材料等波及効果についてまとめる。観光消費額(170億円)が各企業の原材料調達に及ぼした金額を示 す。観光消費額から、売上原価・営業経費(この2つを原材料等とする)相当分を抽出し、これに彦根市内調達率をか けたものが原材料等直接効果(第1次波及効果)(4,319百万円)となる12 原材料等直接効果(第1次波及効果) = 原材料等相当額 × 彦根市内調達率 更に、この4,319百万円分の資材を提供した事業所にも、原材料等率および彦根市内調達率をかけた1,790百万円 の(第2次)原材料調達が発生する。このように、はじめの観光消費額が連続した原材料調達へとつながっていった ものが原材料等波及効果となる。 第n次原材料等波及効果 = n-1次原材料等波及効果 × 原材料等率 × 彦根市内調達率 原材料等波及効果は、第2 次、第3 次、・・・、第n次とつながり、それら全ての波及効果を総計したものが原材料等 波及の全部効果であり、合計7,375百万円となった。 12 実際は観光 5 業種(飲食業、宿泊業、交通・運輸業・土産販売業、観光施設業)に分けて計算している(所得波及効果も同じ)。 H20年 H19年 観光客実人数 1,849,162人 3,136,262人 宿泊者実人数 204,901人 338,716人 日帰り客実人数 1,644,261人 2,797,546人 宿泊者の消費単価 29,554円 23,300円 日帰り客の消費単価 6,660円 5,200円 □収支構造(対売上高比率) 売上原価率 営業経費率 人件費率 その他率 営業利益率 飲食業 28% 30% 35% 4% 4% 宿泊業 23% 27% 26% 12% 12% 交通・運輸業 6% 13% 70% 9% 1% H20年 50% 12% 22% 6% 10% H19年 52% 9% 19% 6% 14% 観光施設業 29% 34% 28% 6% 3% 全産業 55% 14% 23% 4% 4% 土産 販売業 □その他 H20年 H19年 限界消費性向 0.84 0.86 市内消費率 給与地域補正値 調査対象期間 域内人口 111,787人 111,310人 12ヶ月 88% 99%

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[ 図4 H20年経済波及イメージ ] 次に所得波及効果についてまとめる。この効果はさらに(所得増加分から生じる所得波及効果)と(原材料等波及 効果から生じる所得波及効果)に分けて集計できる。まず所得増加分から生じる所得波及効果について述べる。観 光消費額から原材料等をひいたもの(所得増加分)が、観光消費によって観光関連5業種において生じた付加価値と なる。これに彦根市内調達率をかけたものが彦根市の観光消費による第1次所得(付加価値)であり、7,581百万円と 算出された。 第1次所得効果 = 付加価値相当額 × 彦根市内調達率 この所得も何割かは新たな消費へと充てられていくため、第1次に留まるのではなく、第2次、第3次へと波及する。 z

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彦根市 総生産 5 千億円 彦根市 労働力人口 5 .7万人 経済波及効果 総額 331億円 総生産の6.6% 雇用効果 総額 1,955人 労働量人口の3.4% 消費は、新たな事業者の所得を発生させ、また新たな消費へとつながっていく。なお、新たな消費は以下の簡易な ケインズ型消費関数に基づき導出した。 第n次消費効果 = 第n-1次所得効果 × 限界消費性向 × 彦根市内消費率 こうして消費→所得→所得増加による消費の増加→増加した消費による所得増加→・・・といった連鎖を辿っていく ことで、第2次、第3次といった所得・消費波及が算出できる。観光消費額によって生じた所得の全部効果は9,412百 万円であり、観光消費額によって生じた消費の全部効果は6,917百万円であった。 次に原材料等波及効果から生じる所得波及効果について述べる。所得波及は第2次、第3次といった各段階の原 材料等波及効果からも発生する。というのは、原材料等波及効果の各段階において、原材料等費と同時に、所得増 加分も発生するからである。所得増加分から生じる所得波及効果と同様、原材料等波及の各段階で生じた所得に 付加価値率および彦根市内調達率をかけて所得効果を算出し、その所得に限界消費性向および市内消費率をか けて消費効果を算出する。これらの波及の総計が、全段階の原材料等波及効果による所得の全部効果(2,423百万 円)であり、全段階の原材料等波及効果による消費の全部効果(1,781百万円)である。 所得増加分から生じる波及効果(所得・消費)と原材料等波及効果から生じる波及効果(所得・消費)を合算させた 結果、所得の全部効果が11,834百万円、消費の全部効果が8,698百万円となった。 本集計からは雇用効果に関する集計も可能となる。雇用の直接効果は、観光消費によって生じる人件費相当額 (6,262百万円)から、以下の式により雇用可能な人数を算出し、雇用吸収力として示している。 雇用者数 = 人件費相当額 ÷ 平均所得 ÷ 地域補正 上記式より、雇用の直接効果を1,413人と推計できた。さらに、波及効果による雇用者数は、 人件費相当額 = 所得の全部効果 × 所得に占める人件費割合 の式により人件費相当額を算出した後、前出と同様に算出した結果、542人となった。 これらの効果を総合すると、観光客の消費総額170億円のうち、直接効果として彦根市内に留まる額は10,581百万 円と推計される(原材料等直接効果+人件費相当額)。また、観光産業における雇用者数は、1,413人、生じた付加 価値は7,581百万円と推計される。さらに、この直接効果をもととして、彦根市内にもたらされる生産波及効果の総額 は、16,073万円と推計される(原材料等波及の全部効果+消費の全部効果)。また、これによる雇用効果は、542人 と推計される。以上より、観光客の消費170億円によって彦根市内にもたらされた経済波及効果の総額は331億円と なり、その乗数効果は1.945となる。また、それによって生じた雇用者数は1,955人と推計される。これは彦根市総生 産の6.6%、彦根市労働力人口の3.4%に相当する[図5]。 [ 図5 H20年彦根市観光における経済波及効果の相対規模 ] ※彦根市総生産はH17年度の額を提示した。労働力人口はH17年国勢調査より。 前節にて、400年祭調査から再計算して導出したH19年観光消費額も、前出表3の入力指標を利用して、経済波及 効果を同様に推計できる。波及過程の詳細な説明は省略するが、主要結果を抜粋し、H20年調査と比較したものを 表5にまとめた。

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[ 表5 経済波及効果比較要約表 ] H20年 H19年 H20年/ H19年 観光客の消費総額 170億円 254億円 67.0% 彦根市内にとどまった観光消費額 106億円 152億円 69.7% 観光産業での雇用者数 1,413人 1,933人 73.1% 観光産業で生じた付加価値 76億円 106億円 71.7% 生産波及効果の総額 161億円 240億円 66.8% 波及効果による雇用者数 542人 864人 62.8% 観光消費による経済波及効果の総額 331億円 494億円 66.9% 乗数 1.945 1.948 99.9% 雇用者総数 1,955人 2,797人 69.9% 市内事業所の収支構造および域内調達率、消費者の限界消費性向ならびに市内消費率はわずか2年で大きく変 わるものでなく、すなわち彦根市経済構造のディープ・パラメータに大きな変化が見られないため、インプットとアウト プットの比率である乗数は約1.9で固定化されている。そのことにより、どの出力指標をみてもH20年はH19年の6割か ら7割にとどまることが示された。 6. おわりに 本論では400年祭の彦根城周辺観光調査結果から、H19年彦根観光全体の経済波及効果を推計したうえで、H20 年調査との定量的比較を行ってきた。結果としては前年比6、7割減という定量化がなされたわけであるが、この落ち 込み幅をどう評価すればよいか。一つの判断材料として彦根市の観光事業費推移を追ってみると、400年祭事業費 (H19年)の3.67億円に対し、150年祭事業費(H20年)は1.26億円と1/3に大幅に縮小されている(「広報ひこね」2007 年4/1号および2008年4/1号)。必ずしも事業費とその成果が比例するわけではないが、大規模イベントの翌年にし てはまだかなりの“熱”をもっていると考えることができるのではないか。城山公園入山者数をみても、400年祭期間 の7割程度であったが、平年(H11年~18年)ベースではなお1.5倍の集客状況である(彦根市集計)ことも、この考え を後押しすることになろう。 とはいえ、彦根市の観光消費額を各種アンケート等により統一的に調査する試みは、本論で比較検討した2年のみ であり、大きなイベントがない平年との比較ができれば、本論の分析はさらに意義があるものになると思われる。そ の意味では、今後持続的にデータの蓄積がなされることを期待する。 < 参考資料 > ■ 賀川 昭夫・片岡 孝夫・坪沼 秀昌 「First Step マクロ経済学」 有斐閣/1994年 ■ 山﨑 一眞・得田 雅章 「H20年 彦根市観光に関する経済効果測定調査 報告書」 彦根市/2009年 ■ ――――・―――― 「彦根城築城400年祭 経済効果測定調査 報告書」 彦根市/2008年 ■ 「生活意識に関するアンケート調査」(第35回) 日本銀行/2008年 ■ 「事業所・企業統計調査」 総務省統計局および滋賀県/各年 ■ 「平成19年 滋賀県観光入込客統計調査書」 滋賀県/2007年 ■ 「広報ひこね」 彦根市、各号 ■ 「平成17年滋賀県観光動態調査報告書」 滋賀県/2005年 ■ 国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/ ■ 観光庁ホームページ http://www.mlit.go.jp/kankocho/

参照

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