法政大学スポーツ健康学部アスレティックトレーニ ングルーム活動報告 第5報 : 法政大学におけるア スレティックトレーナー活動(9)
著者 泉 重樹, 春日井 有輝, 瀬戸 宏明, 中一 尚斗, 玉 木 涼祐, 平野 祐貴
出版者 法政大学スポーツ健康学部
雑誌名 法政大学スポーツ健康学研究
巻 11
ページ 13‑22
発行年 2020‑03‑30
URL http://doi.org/10.15002/00023155
法政大学スポーツ健康学部アスレティックトレーニングルーム活動報告 第 5 報
-法政大学におけるアスレティックトレーナー活動 9 -
A Report on Athletic Training Room Activities from 2018 to 2019 in Faculty of Sports and Health Studies, Hosei University.
泉重樹1)3)、春日井有輝2)、瀬戸宏明1)、中一尚斗3)、玉木涼祐3)、平野祐貴3)
Shigeki Izumi, Yuki Kasugai, Hiroaki Seto, Naoto Nakaichi, Ryosuke Tamaki, Yuki Hirano
[Abstract]
the Athletic Training Room (AT-Room) provides athletic training service to the student athletes at the faculty of sports and health studies, Hosei university. The aim of this study was to report clinical activity from 2018 to 2019. The AT-Room users were 269 in 2018 and 188 in 2019. The number has decreased this study compared to the previous study. The possible causes a were that the start time of the AT-Room was later than last year, and the number of re-use users was decreasing. Exercise therapy was the most common intervention in both 2018 and 2019. Teachers who are also orthopedic surgeons have enhanced the guidance of student trainers.
Keywords:JSPO-AT, Athletic Training Room, Athletic team activities
キーワード:日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、トレーナー活動、大学スポーツ、AT-Room
1. 緒言
法政大学スポーツ健康学部(以下、本学部)は 2009年度に開設してから、2019年度で11年目を 迎えた。本学部におけるスポーツ医学的支援シス テム1)として2011年より始まったスポーツ健康 学部クリニック1)とAthletic Training Room2)(以下、
AT-Room)は、2019年度で9年目を迎えている。
AT-Roomは、本学部の教員である医師との連携の
もとで、スポーツ現場で起こった外傷や障害その 他コンディション評価や、応急処置、医師の指導 の下でのアスレティックリハビリテーション、テー ピングやウォーミングアップ・クーリングダウン、
各種トレーニングの指導などを実施している2-5)。
AT-Roomは日本スポーツ協会公認アスレティック
トレーナー(以下、JSPO-AT)を目指す学生トレー ナー達の実習の場としても運営されており、これま でに活動報告として計4編の報告を行っている2-5)。 さらに2012年度から本学部新入生に対して整形外 科的メディカルチェックを行い始めるとともに6,7)、 2016年度より学内トレーニング施設(多摩キャン パスおよび小金井キャンパストレーニングセン ター)を本学部卒業生のJSPO-ATおよび学生ト レーナーが管理サポート業務を行うようになり8)、 これまでそれぞれの取り組みについて報告してき た。また2018年度より医師(整形外科専門医・日 本スポーツ協会公認スポーツドクター)である専 任教員が本学部に着任したことにより、スポーツ 健康学部クリニックにおける診断からAT-Roomへ [ 原著 ]
1)法政大学スポーツ健康学部 2)法政大学兼任講師
3)法政大学スポーツ健康学研究科
の連携および他医療機関への紹介状の作成が行わ れる頻度も向上している。2020年度には東京オリ ンピック・パラリンピックが控えているが、本学 部のスポーツ医学的支援システムも10年目の節目 を迎える。
本 研 究 の 目 的 は2018お よ び2019年 度 のAT- Room活動を振り返り、これまでの活動との検討 を行うことで今後のAT-RoomおよびAT教育活動 に資する知見を得ることである。
2. 方法
2.1 対象と AT-Room 利用方法について
AT-Roomを利用する対象は基本的には本学部学 生とし、何らかの身体的不調がある場合にはスポー ツ健康学部クリニックを受診後にAT-Roomを利用 することを原則とした。また法政大学体育会所属 の学生であり、各運動部に所属するアスレティッ クトレーナー(以下、AT)や学生トレーナー、多 摩体育館トレーニングセンターに勤務しているAT からの紹介があればAT-Roomを利用できることと した。上記の他、本学部学生については授業等で
AT-Roomを紹介し、コンディショニング相談や身
体機能のチェック希望などスポーツ実施および身 体活動に関する内容についても直接相談ができる こととした。
2.2 開設日
2018年度、2019年度ともに、4月から12月ま での授業期間中とした。開設日は両年度とも月曜 日と木曜日の週2回とした。開設時間は授業開始 時間の変更に伴い2018年度から17:25~20:25(3 時間:5・6限に相当)とした。
2.3 実施内容
AT-Roomの運営は、JSPO-ATの資格を持つ教員 の指導の下、学生トレーナーが実習として評価や 各種処置を実施する形をとした。
運営自体はJSPO-AT資格を持つ教員2名および 日体協AT資格を持つ本学大学院生2名がティー チングアシスタント(以下、TA)として指導を行
う体制とした。2018年度は本学部の3年生19名が、
2019年度は本学部の3年生16名がAT現場実習と してAT-Roomを担当した。
AT-Roomでは以下の業務を行うこととした。1.
スポーツ外傷・障害の応急処置及び評価、2. アス レティックリハビリテーションのプログラム作成・
実施、3. 傷害予防・再発防止トレーニングのプロ グラム相談・作成・実施、4. セルフケア及び競技 力向上のためのストレングストレーニング指導を 中心としたコンディショニング全般の相談・指導 である。
2.4 集計方法
これまでの報告同様2-5)、実際にAT-Roomを利 用した学生選手達を対象に、後ろ向きに集計を行っ た。集計は下記の通りとした。対象者の人数を初
めてAT-Roomを利用した者(初利用者)と、個人
が2回目以降にAT-Room利用した者(総利用者)
に分けて集計を行った。対象者の競技別、症状を 持つ部位別、実際にAT-Roomで行った介入内容、
鍼治療受療者ごとにも集計を行った。
本研究で用いられるデータは法政大学スポーツ 健康学部によるAT-Room事業として行われた測 定・評価等において得られた情報の一部を利用し て作成されたものである。本研究はヘルシンキ宣 言9)の趣旨に則り実施され、対象者から文書によ る同意書を得た上で行った。解析の為に用いたデー タの個人情報は全て匿名化して処理することとし た。
3. 結果
3.1 総開設日数および利用者数
2018年度の開設日数は、春学期(4月~7月)
は28日、 秋 学 期(9月 ~12月 ) は27日 の 計55 日であった。2019年度の開設日数は、春学期(4 月~7月)は28日、秋学期(9月~12月)は28 日の計56日であった。
2018年度の利用者数は初利用者が73名、総利 用者は269名であった(図1)。1日あたりの平均 利用者数は4.9名であった。2019年度の利用者数
は初利用者が89名、総利用者は188名であった(図 1)。1日あたりの平均利用者数は3.4名であった。
なお、図1では参考としてAT-Room初年度であっ た2011年からの各年度の初利用者数と総利用者数 も記載した2-5)。
2018年度の利用者数の内訳は、学年別では多い 順 に1年 生104名(39%)、2年 生70名(26%)、 3年生36名(13%)、4年生26名(10%)と続い
た(図2)。男女別利用者数は、男性204名(76%)、 女性65名(24%)であった(図3)。
2019年度の利用者数の内訳は、学年別では多い 順に2年生68名(36%)、3年生56名(30%)、1 年生31名(16%)、4年生20名(11%)と続いた(図 4)。男女別利用者は、男性152名(81%)、女性 36名(19%)であった(図5)。
46 58 74 49 86 76 110
73 89 84
169 409
152
278 267 362
196 99
0 100 200 300 400
500 再利用者
初利用者
(名)
39%
26%
13%
10%
12% 1年生
2年生 3年生 4年生 その他
16%
30% 36%
11%
7%
1年生 2年生 3年生 4年生 その他
81%
19%
男性 女性 76%
24%
男性 女性
図 1. AT-Room 利用者数
AT-Room 開設年の 2011 年度からの推移を示した。
図 2. 2018 年度の学年別 AT-Room 利用者割合
図 4. 2019 年度の学年別 AT-Room 利用者割合
図 5. 2019 年度の男女別 AT-Room 利用者割合 図 3. 2018 年度の男女別 AT-Room 利用者割合
3.2 競技別
AT-Roomの利用者を行っている競技別に集計し た。
2018年度の利用者の人数は多い順にサッカー70 名(26%)、陸上競技56名(21%)、ウェイトリフ ティング22名(8%)、馬術19名(7%)、バスケッ トボール16名(6%)、ラグビー12名(4%)、テ ニス12名(4%)、スキー11名(4%)と続いた(図 6)。初利用者は多い順に陸上競技、サッカー、ラ グビー、同数で馬術、ラクロス、野球、その他であっ た(図6)。
2019年度の利用者の人数は多い順にサッカー53 名(28%)、ハンドボール35名(19%)、ラグビー 15名(8%)、陸上競技13名(7%)、テニス13名
(7%)、バスケットボール13名(7%)、野球11名
(6%)、と続いた(図7)。初利用者は多い順にサッ
カー、ハンドボール、陸上競技、テニス、バスケッ トボール、野球、その他であった(図7)。
3.3 部位別
AT-Roomの利用者を対象とした部位別に集計し た。
2018年度の利用者の人数は多い順に膝関節86 名(30%)、腰殿部46名(16%)、大腿33名(11%)、 足 関 節32名(11%)、 肩 関 節26名(9%)、 下 腿 17名(6%)、股関節13名(5%)、足部10名(3%)、 手関節・手部10名(3%)と続いた(図8)。 2019年度の利用者の人数は多い順に肩関節31 名(27%)、下腿31名(27%)、腰殿部30名(26%)、 足関節26名(22%)、膝関節25名(22%)、大腿 23名(20%)、足部14名(12%)、手関節・手部 13名(11%)、股関節6名(5%)と続いた(図9)。
8 26 1
5 2
6 4 3 5
8 3
5 13
62 30 21
14 14
6 8 8 4
1 6 2
4
0 20 40 60
サッカー 陸上競技 ウエイトリフティング 馬術 バスケットボール ラグビー テニス スキー ラクロス ハンドボール バドミントン 野球 その他
初利用者 再利用者
(名)
24 14 4
8 5 4 4 5 2
3 15
29 21
11 5 8 9 7 4
1
4
0 20 40 60
サッカー ハンドボール ラグビー 陸上競技 テニス バスケットボール 野球 ラクロス バドミントン スキー その他
初利用者 再利用者
(名)
図 6. 2018 年度の競技別 AT-Room 利用者数
図 7. 2019 年度の競技別 AT-Room 利用者数
3.4 介入内容別
AT-Roomの利用者を行った介入の内容別に集計 した。
2018年度の利用者の人数は多い順に運動療法
219名(30%)、ストレッチング117名(16%)、マッ サージ108名(15%)、寒冷療法61名(8%)、超 音波56名(8%)、温熱療法49名(7%)、EMS 38 名(5%)、テーピング32名(4%)、超音波検査装
15 9
17 15 13 13 10 5 5 7
16 22
13 11 12 10 4 8 1
2
0 20 40 60 80
肩関節 下腿 腰殿部 足関節 膝関節 大腿 足部 手関節・手部 股関節 その他
初利用者 再利用者
(名)
84 57 55 30
42 34 13
22 18 9 9 2
1
135 60
53 31
14 15 25
10 6 6
2 3
0 40 80 120 160 200
運動療法 ストレッチング マッサージ 寒冷療法 超音波 温熱療法 EMS テーピング エコー評価 鍼治療 微弱電流 BIODEX 中周波
初利用者 再利用者
(名)
21 19
21 19 12 12 11 6 5
11
65 27
12 13 14 5 2 4 5
4
0 20 40 60 80
膝関節 腰殿部 大腿 足関節 肩関節 下腿 股関節 足部 手関節・手部 その他
初利用者 再利用者
(名)
図 9. 2019 年度の部位別 AT-Room 利用者数
図 10. 2018 年度の介入内容別 AT-Room 利用者数 図 8. 2018 年度の部位別 AT-Room 利用者数
置による評価(以下エコー評価)24名(3%)、鍼 治療15名(2%)、その他であった(図10、11)。 2019年度の利用者の人数は多い順に運動療法 132名(28%)、マッサージ64名(14%)、ストレッ チング63名(13%)、超音波49名(10%)、温熱
療法49名(10%)、テーピング25名(5%)、寒冷 療法22名(5%)、微弱電流19名(4%)、エコー 評価19名(4%)、鍼治療17名(4%)、その他であっ た(図12、13)。
66 34
36 35 27 21 18 18 17 12 8
2 1
66 30
27 14 17 4 4
1 2 5 2
0 40 80 120 160 200
運動療法 マッサージ ストレッチング 超音波 温熱療法 テーピング 寒冷療法 微弱電流 エコー検査 鍼治療 スキンストレッチ EMS 中周波
初利用者 再利用者
(名)
運動療法 28%
マッサージ 14%
ストレッチング 13%
超音波10%
温熱療法9%
テーピング5%
寒冷療法5%
微弱電流4%
エコー検査4%
鍼治療4% スキンストレッチ2% EMS 0% 中周波0%
図 12. 2019 年度の介入内容別 AT-Room 利用者数
図 13. 2019 年度の介入内容別 AT-Room 利用者割合
運動療法 30%
ストレッチング マッサージ 16%
15%
寒冷療法8%
超音波8%
温熱療法7%
EMS 5%
テーピング4%
エコー評価3%
鍼治療2%微弱電流1% BIODEX 1% 中周波0%
図 11. 2018 年度の介入内容別 AT-Room 利用者割合
3.5 鍼治療
2018年度に鍼治療を受けた者は16名であった。
主訴部位は腰殿部6名(38%)、大腿4名(25%)、 股関節2名(13%)、頚部2名(13%)、その他であっ た(図14)。
2019年度に鍼治療を受けた者は22名であった。
主訴部位は腰殿部8名(36%)、下腿4名(18%)、 膝関節3名(14%)、大腿2名(9%)、肩関節2名
(9%)、手関節2名(9%)であった(図15)。
4. 考察
4.1 AT-Room 利用者全体について
2018年度と2019年度のAT-Roomの利用者を集 計した。図1の過去の総利用者状況からみると、
2018年度と2019年度ともに利用者数は前報の過 去2年と比べて減少した。この結果には2点要因 があると考えている。1点目は2018年度から始まっ た100分授業の影響である。1時限が90分から 100分授業になり授業回数も半期15回から14回 になり開設日数も年間で4回分減少した。さらに 2017年度まではAT-Roomの開設時間は17:00から
20:00までであったが、2018年度からは5限の授
業時間が17:25〜19:05になった影響で、AT-Room
の開設時間自体も17:25〜20:25までとなった。25 分間開設時間が後ろ倒しになった影響は2018年度 開始から出始め、1日の動きでみるとAT-Room開 始直後にその日の来施設希望選手達が来るが、そ の後の遅い時間には来ないという傾向が定着して しまった。2点目は再利用者の減少が大きくなっ たことである。特に2019年度は総数に対する再利 用者の割合が53%であった。2018年度までの同平
均75%に比べても大きく落ち込んでいる(図1)。
2017年度からTeaching Assistant(TA)として加 わったJSPO-AT資格を持つ大学院生は2018-19年 度も継続しており、指導体制に変化はない。また 前報での報告5)のように学生トレーナー達つまり
AT-Roomに関わる学生の実習先はほぼ学内の運動
部活動においてスポーツ現場実習を行っている。
開設時間自体が遅くなった影響で学生たちにとっ
てはAT-Roomに行く機会が減少している可能性が
ある。
4.2 競技別利用者および傷害部位別利用者について 競技別利用者について、過去2報4,5)同様、サッ カー、陸上競技、ラグビー、ハンドボール等の学 生トレーナーが在籍している部活動のAT-Room利
3 4 2 1 1 1
3 1
0 2 4 6 8
腰殿部 大腿 股関節 頸部 下腿
足関節 初利用者
再利用者
(名)
7 2
3 2 2 1 1
1 2
1
0 2 4 6 8
腰殿部 下腿 膝関節 大腿 肩関節 手関節 頸部
初利用者 再利用者
(名)
図 14. 2018 年度の鍼治療部位別 AT-Room 利用者数
図 15. 2019 年度の鍼治療部位別 AT-Room 利用者数
用者が多いことが挙げられる(図6、7)。これま でと同様に学生トレーナーからの紹介による学生
のAT-Room利用が多かったことが考えられる。そ
の一方2018年度には学生トレーナーの紹介以外の 例もみられていた。ウェイトリフティング選手(1 名)は自身のコンディショニング調整のために
AT-Roomを繰り返し活用していた。馬術部員は部
長先生の紹介からオフ期のトレーニングをAT- Roomで学生トレーナーの指導の下に実施してい た。このような活用の仕方も利用者が増加してい た要因と考えられた。2019年度は再利用者が減少 していたことが利用者減少の大きな要因であると 考えられる。
傷害部位別では、2018年度は膝関節が最も多 かった(図8)。これは過去のAT-Room報告4,5)と 同様である。サッカーを中心に前十字靭帯再建術 後や半月板切除術後の手術後や内側側副靭帯損傷 後の保存療法といったアスレティックリハビリ テーションを長期にわたって行っていたことがあ げられる。この結果は膝関節の再利用者が多かっ た結果にも表れていた(図8)。しかしながら2019 年度は最も多い部位は肩関節と下腿が31名ずつで あった(図9)。肩関節は初利用者15名対して再 利用者が16名と初利用者と再利用者比率がほぼ 1:1であったのに対し、下腿は初利用者9名対 して再利用者が22名と初利用者と再利用者比率が 3:7であった。傷害部位で下腿が伸びた要因は再 利用者が多かったことが挙げられる。2018年度に 最も多かった膝関節(25名)は初利用者13名対 して再利用者が12名と初利用者と再利用者比率が ほぼ1:1であり、肩関節同様例年に比べ2019年 度は再利用者が少なかったことが本結果につな がっていることは明らかである(図9)。
4.3 介入内容別その他について
AT-Roomで行った介入の内容は、過去の我々の 報告2-4)と同様で運動療法が最も多かった(図10、
12)。AT-Roomでは、来室すると始めに評価を行っ た後、症状によって温熱療法や電気療法等の物理 療法を行いその後、運動療法やストレッチングを
行うのが基本的な流れである。運動療法は選手自 身でも行えるものを学生トレーナーも一緒に実施 ながら指導する形で行っている。選手達が自身の 身体を理解し自分でエクササイズやコンディショ ニングができるようになることは選手達にとって 必 要 な 能 力 で あ る。 こ れ ま で 同 様、 今 後 もAT- Roomの活動を通して学生選手たちに実践を通し て教育していきたい。
鍼治療に関しては、2018年度の総数は16名、
2019年度の総数は22名であった(図14、15)。前
回のAT-Room報告よりも減少していた5)。鍼治療
は陸上競技、サッカーの選手に対して多く施術を しており、前回の報告同様5)、繰り返し同じ選手 に施術する機会が中心であった。過去の鍼治療の 経験といった部分が影響していたことが考えられ る。鍼治療部位は2018、2019年度ともに腰殿部が 最も多かった。これも過去の報告と同様2-5)、慢性 の疼痛や硬結といった筋の硬さを訴える選手に対 して治療をしていたためである。しかしながら
AT-Room全体の利用者が少ないことが鍼施術を受
ける選手が減った要因につながっていると考える。
超音波検査装置による評価については、今回の
AT-Room報告からは介入内容別の項目に入れるこ
ととした。教員の指導の下、学生トレーナーも積 極的に超音波検査装置による軟部組織評価の実践 を行っており、評価として定着してきている。
緒言でも述べた通り、2018度から新たに整形外 科医である専任教員が加わり、超音波検査装置を 用いての診断や、医療機関への紹介状の作成を行 う機会がスポーツ健康学部クリニック業務として 増加した。医師である教員の指導の下、アスレ ティックリハビリテーションを行うとともに、学 生トレーナーもすぐに医師である教員の指導を仰 げる体制が整ったことを実感できていると考える。
4.4 今後の課題と展望
2018年度から100分授業が導入されたことによ り、体育会やサークル活動自体の開始時間と終了 時間が遅くなったことによるAT-Room活動自体に 影響が生じていることが明らかになった。この部
分は今後もAT-Roomの取り組みの中で改善できる ような方法を探っていきたい。今後もATとして スポーツを行っている学生達の外傷・障害の予防 を目指して、スポーツ現場でのAT活動とともに、
AT-Room活動でも学内各運動部活動および部局、
外部医療機関との連携を通して、学生選手達の日々 の活動を支えていきたい。
本学部開設から10年が過ぎ、本学部におけるス ポーツ医学的支援システムも2020年度で10年目 を迎える。この間日本のATをめぐる制度自体に は大きな変化はみられてこなかったものの、ATを 取り巻く環境は少しずつ変化していると考えてい る。「Global Practice Analysis 2012 世界におけるア スレティックトレーナーの実態調査」(2012)10)
および「第1回日本のトレーナー実態調査集計報 告書」(2018)11)をみると日本のトレーナーの年 齢層は25~35歳が最多層で次に36歳から45歳 が続いており業界自体が若いことは過去2回の報 告でも変化はない。その分収入が抑えられている 部分は否めないが若者が多い業界という意味では 今後の成長可能性は大きい。しかしながら業務形 態としてフルタイムATが2割、パートタイムAT が3割強という現状は今後さらに業界として努力 し て い か な け れ ば な ら な い と い え る。 辰 見 ら
(2019)12)は学生トレーナーを対象にした就業感 に関する調査の中でATを目指す専門学校生、大
学生の30から40%の者がAT活動を副業として捉
え て お り、JSPO-ATを 目 指 す 学 生 の み で み る と AT活動が主業としては確立されていないとして捉 えている現状を報告している。
本学部卒業生でATとして働くことを希望する 者は毎年5~10名程度と少ないものの、大学生時 代に学生トレーナーの経験をしたことが一般企業 への就職活動に際してプラスになったという感想 を持つものは多い。笠原ら(2016)13)は学生トレー ナー活動を行った卒業生に対する追跡調査の中で、
課外活動に積極的に行った者は専門的知識・技術 以外にもマネジメント能力やリーダーシップ、身 だしなみ・マナー、規律性、社交性の面で積極的 に行っていなかった者よりも役立った項目が多
かったことを報告している。学生トレーナー活動 がいわゆる社会人基礎力を醸成することは確かで あると考えるが、ATを日本で職業として確立させ ていくためには2020東京オリンピック・パラリン ピックのレガシーとしてさらなる取り組みが必要 になると考える。
5. まとめ
2018年度と2019年度のAT-Room活動を報告し た。AT-Roomの 利 用 者 は 2018年 度 は269名、
2019年度は188名であり、前回の報告よりも減少 した。この要因には開始時間が遅くなったことと、
再利用者の減少が大きいと考えられる。部位別に は2018年度は膝関節が最も多く、2019年度は肩 関節と下腿が多かった。介入内容は2018年度、
2019年度ともに運動療法が最も多かった。整形外 科医師である専任教員が着任したことで、選手の 連携が充実しその結果学生トレーナーの学習・実 習機会が充実することとなった。
謝辞
本 論 文 を 作 成 す る に あ た り 協 力 い た だ い た、
2018年度と2019年度のアスレティックトレーナー 現場実習生に深謝します。
参考文献
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12)辰見康剛, 篠原純司, 小林直行, 西山侑汰, 名 頭薗亮太, 粟谷健礼. (2019). 日本スポーツ協 会公認アスレティックトレーナーを目指す学 生の就業観とそこから見える課題. 九州共立
大学研究紀要, 10(1), 1-9.
13)笠原政志, 山本利春, 阿久津洋介. (2016). ス ポーツ医科学サポートを通じたアスレティッ クトレーナー教育経験者の進路と社会人基礎 力 か ら み た そ の 教 育 的 意 義. 日 本 ア ス レ ティックトレーニング学会誌, 2(1), 51-57.