【研究ノート】
経営形態別介護サービス供給者の効率性と品質
松 井 佐 和
1 は じ め に
2000年4月より導入された介護保険制度は,個人が選択可能な多種多様な 介護サービス供給とともに,競争原理を介護市場に導入することにより超過 需要の状態にある介護市場を効率化し,介護サービスの品質を高めることを 目的としていた.しかしながら,営利業者は利潤を追求するあまり,劣悪な 介護サービスを提供するのではないかという懸念もあった.介護サービス供 給者の動向の現況に関して厚生労働省の平成12年から18年の「介護サービ ス施設・事業所調査結果の概況」をみると,日本の訪問介護市場シェアにお いては営利法人,NPO法人が増え,社会福祉法人,医療法人,社団・財団法人,
協同組合,地方公共団体が減っている現状がある.
本稿の目的は,介護保険制度下での各経営形態の属性毎に効率性と品質を 分析することにある.公共サービス供給者の効率性と品質に関する分析は数 多くあるが,分析対象・方法・結果も多種多様であり確たる結論は出ていな い.また日本において経営形態別にDEA(包絡分析法)分析したものは見当た らない.したがって,本論文では,分析対象を京都府の介護サービスにしぼり,
経営形態別に事業者の効率性及び品質を考慮した効率性をDEA分析する.
先行研究では,効率と品質に関して,非営利法人と営利法人のパフォーマ ンスの差に着目して分析したものとして,以下のようなものがある.
第1に営利法人と非営利法人のどちらが効率的かに関する議論は次のよう に整理できる.理論的には短期では利潤最大化行動をとる営利法人は,限界 費用と限界収入(価格)を一致させるのに対して,非営利法人では,非分配制 約条件の下,平均費用と平均収入(価格)が一致する点で生産するので,非営 利の方が資源配分上過大な点で生産が行われ非効率となる1).実証では,本論 文と同じDEA分析したFizel and Nunnikhoven (1992) やNyman and Bricker (1989) でも,営利法人の効率性が肯定されている.しかし,鈴木(2003)の実証分析 のように営利・非営利間には効率性の差はみられないとしたものもある.
第2に営利法人と非営利法人のどちらが高品質かに関しての先行研究とし て,Hansmann (1980) はNPO活動における非分配制約2)の重要な役割は,サー ビスの品質に関する情報に非対称性があるときに生じる利潤最大化目的から くる品質を下げる等の機会主義的行動の抑制にあり,非営利の方が高品質で あるとしている3).そして鈴木亘(2002)は,上記Hansmann (1980)の契約の 失敗仮説を実証して,消費者は非営利性を高品質のシグナルとして捉えてい るが,非営利業者の方が提供するサービスの水準の方が高いという事実は見 出せなかったとした4).さらに,Glaeser and Schleifer (2001) は,営利法人と非 営利法人のどちらが,高品質なものを供給するかについて,非営利の利潤分 配率の存在により,非営利の方が高品質とした5).
実際の介護市場では介護報酬価格が一定であり,非営利法人には補助金,
寄付金,優遇税制等の特典がある.また,実際の介護市場においては介護
1) NPOは,非分配制約において完全競争市場下で1種類のサービスを生産および競争価格(限
界収入=平均収入)で販売し,営利法人は,NPOと費用関数・収入関数が同一,と仮定する.
山内(1997),88-89頁参照.
2) 利潤を出すのはかまわないが利潤分配が禁止されているということ.Hansmann (1980), p.835.
参照.
3) この点について遠藤(1995)は,「消費者が非営利性を品質のシグナルとして捉えることと,
非営利組織が実際に良質のサービスを供給することは,厳密に言えば別の問題である」として いる.遠藤(1995),32頁参照.
4) 鈴木亘(2002),78-84頁参照.
5) Glaeser and Schleifer. (2001), pp.103-104.参照.
報酬価格一定という価格規制に加えて,平成18年度の通達によりケアマネ ジャー1人当たり標準担当件数が39件までに規制され6),平成21年度の介 護報酬改定により40件以上の超過部分に関して報酬が減算されるというペナ ルティつきの数量規制がされた7).価格・数量規制のあるこの営利法人・非 営利法人混在の競争市場において経営形態別に説明している理論はまだほと んどない.したがって,競争市場における経営形態別のパフォーマンスの現 況については,実証研究に委ねなければならない.そこで,DEA分析を用い て各介護サービス供給者の効率性及び品質について実証分析を行う.
構成は以下のとおりである.第1節では,問題意識と先行研究について述べ,
第2節では,介護サービス供給者の種類と京都府の事業者別立地条件等を回 帰分析した結果について述べる.第3節では,DEA分析の概略について述べ る.第4節ではデータとDEA分析の結果について述べる.第5節では,主成 分分析を用いて品質を測定し,品質を考慮したDEA分析の結果について述べ る.最後に結論と要約について述べる.
2 介護サービス供給者の種類
非営利法人か否かは,構成員に利益が分配されることを目的とするか否か によって分けられる(通説)8).以下,各法人について分類し,属性及び先行 研究における各パフォーマンスについて述べる.
2. 1 NPO
L. M.サラモンによるNPOの国際的定義は,NPOを①フォーマルに組織 されていること,②民間の組織であること,③利益分配(剰余金の個人分配)
6) 指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準.介護保険市場の需給調整はケアマ ネジャーを通じて行われる.鈴木亘(2002),85頁参照.
7) 取扱件数が40件以上60件未満の場合には超えた部分では5割減算,60件以上の場合には7
割減算される.(平成18年の通達では,40件を超えてしまった場合には報酬全体が4割減算さ れていた.)
8) 斉藤和夫(2007),156頁.
をしないこと,④自己統治,⑤ボランタリーであること,⑥宗教団体でない こと,⑦政治団体でないことという7つの特徴をもつ9).この定義の下では,
以下の民法第34条に基づく公益法人(社団 ・ 財団法人),特別法に基づく広義 の公益法人(社会福祉法人,医療法人)もNPOに含まれる.
(1)社会福祉法人
社会福祉法人は,社会福祉事業を行うことを目的として社会福祉法の定め るところにより設立された法人をいい(社会福祉法第22条)10),税制上の優遇 措置を受けている.2000年介護保険以前から行政監督下の措置制度での介護 サービスの中心的役割を果たしてきた.したがって,行政に近い立場にある と推測され,市場の潜在的能力の低い地域にも進出すると考えられる.行政 に近い立場から利用者負担軽減制度11)も担っている.品質に関しては,金谷
(2003)の実証研究によれば2001年度時点では,社会福祉法人では,福祉専門 職員割合の平均等が有意に高いが,トラブル・苦情なしの項目やヘルパーの 問題でトラブル等ありの項目からは,社会福祉法人等と営利法人との間に明 確な差はないとしている.
(2)社団・財団法人
民法第34条の公益法人で税制上の優遇措置を受ける.2006年の公益法人制 度改革三法12)により一般と公益の2本立てとなり,公益社団法人・財団法人 では許認可主義をとるが,一般社団法人・財団法人では主務官庁の許認可が
9) Salamon and Anheier (1994) 参照.他に連邦政府資金への依存度とクライアントの参加の程度 に応じてNPOを4つに分類したKramer (1977) の分類もある.
10) 小野幸二・髙岡信男編(2008),574頁.
11) 市町村民税世帯非課税であって特に生計が困難な者に対し社会福祉法人等が運営主体となっ ている介護保険サービスを利用する場合に利用者負担額の4分の1(老齢福祉年金受給者は2
分の1)を軽減する制度.
12) 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律,公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関 する法律,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の 認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律.
不要となった(準則主義).この中でも福祉公社は,かつて訪問介護事業が措 置制度により低所得者に限られ,市場サービスが十分でなかった時代に,福 祉制度対象外でも生活支援が必要な人にサービス提供するために自治体出資 で設立された公益法人であり,行政の訪問介護事業者の受託者にもなった13). 有償ボランティア事業もあり,行政に近い立場及び住民相互の助け合い活動 にも寄与している立場と推測される.品質に関しては,金谷(2003)の実証研 究によれば2001年度時点では,5年以上ヘルパー割合の平均で有意に高かっ た.
(3)医療法人
医療法人とは,病院・医師や歯科医師が常勤する診療所または介護老人保 健施設の開設所有を目的とする法人である(医療法第39条).設立には都道府 県知事の認可を必要とし(同第44条),剰余金の配当が禁止されている(同第 54条).2000年以前から存在しており,条件によっては営利株式会社による 運営も認められている.保険収入を除き,株式会社とまったく同一の課税を される.但し,留保金への課税はない.品質に関しては,金谷(2003)の実証 研究によれば2001年度時点では,福祉専門職割合の平均は有意に高く,意外 にも看護資格者割合の平均が有意に低かった.
(4)NPO法人
民間非営利団体のことをいい,1998年制定の特定非営利活動促進法によっ て福祉分野の民間市民活動の法人格取得が容易になった.株式会社とまった く同一の課税をされる.ボランティア団体や住民相互の助け合いの住民主体 の活動として地域高齢者の生活支援を行ってきたという経緯がある新規業者 である.品質に関しては,金谷(2003)によれば,福祉専門職割合の平均が 有意に低く,行政調査・指導のある率が高かったので,2001年度当時の調査
13) 金谷(2003),5頁.
では高品質とはいえない.金谷・山内(2009)の2001−2005年度パネル分析 でも介護福祉士・1級ヘルパー割合は有意にマイナスであった.ただ,金谷・
山内(2009)の分析にあるようにボランティア行動者率が高いためと思われる ので,この点は行政がボランティアに対する講習等を行うことにより,容易 に改善されるであろう.
(5)協 同 組 合
共通目的のため組合員が事業体を共同設立・所有し,民主的な管理運営を 行う非営利の相互扶助組織のことで14),事業内容ごとに特別法で協同組合が 定義されている.法人税法上,軽減税率の適用を受ける.これも住民主体の 市民活動から介護サービスがはじまったという経緯がある.上述NPOの7つ の特徴は,そのほとんどが協同組合にあてはまる.唯一の相違点は,③利益 分配をしないことであるが15),上記住民主体の市民活動の経緯及び非営利目 的規定により非営利に含まれると考える.農協は地方都市,生協は都市部に 多い.品質に関しては,金谷(2003)の実証分析によれば,NPO法人と同じ ように2001年度時点では,資格や経験を有する職員の割合が低く(1級ヘルパー 取得者割合の平均と福祉専門職割合の平均で有意にマイナス),トラブル・苦情割合 が多かった(トラブル・苦情なしで有意にマイナス,ヘルパーの問題でトラブル等あ りで有意にプラス).しかし,金谷・山内(2009)の2001−2005年度パネル分析 では,苦情対策実施率がプラスで有意になっており,品質改善がみられる.
2. 2 NPO以外
(1)営利法人(会社)
会社には株式会社と持分会社がある.①株式会社は有限責任社員(株主)の
14) 消費生活協同組合法第9条および農業協同組合法第8条で「営利を目的としてその事業を行っ
てはならない」とある.
15) 消費生活協同組合法第2条1項5号および6号ならびに第53条において「剰余金の割り戻」
しが,農業協同組合法第52条で「剰余金の配当」が規定されている.
みからなり,株主は出資額に応じて株式を取得し配当により利益を得る.持 分会社には,②合名会社と③合資会社④合同会社があり(会社法第575条1項),
②はすべて無限責任社員16)から,③は有限責任社員17)と無限責任社員から,
④は有限責任社員のみからなる(同第2条1号).会社は営利性,社団性,法人 性を有する(同第3条,第5条,第105条2項,第575条以下).営利性により利 益重視で市場潜在能力が高い地域に参入すると推測される新規事業体である.
品質に関しては,金谷(2003)の実証分析によれば2001年度時点では,1級 ヘルパー取得者割合の平均及び福祉専門職割合の平均では有意に低かったが,
有限会社で看護資格者割合の平均では有意に高く,トラブル・苦情なしが株 式会社では有意にマイナス,有限会社では有意にプラスであった.株式会社 でトラブル・苦情なしが有意にマイナスであった点は,金谷(2003)のいうと おり,事業規模の大きさがトラブル割合に影響しているものと思われる.
(2)地方公共団体
都道府県や市町村のように地域内行政のため憲法・法律が定めた自治権行 使を目的とする団体である.特養等の施設や2005年法改正による介護予防支 援事業所,居宅介護支援事業所等がある.行政がどのような品質のサービス を提供するかを政策的に決めるので,高品質か低品質かは一概にはいえない.
鈴木(2002)の分類でも,非営利法人を社会福祉法人,医療法人,社団・財 団法人,NPO法人,生協,農協としている.
以上の経営形態別の非営利に関する分類について,第 1 表にまとめた.
16) 直接無限連帯責任を負う.
17) 平成17年商法改正により有限責任社員にも業務執行権が許容されるようになった.
社会福祉法人 社団・財団法人 医療法人 NPO法人 協同組合 営利法人 地方公共団体
非営利 ○ ○ ○ ○ ○ × ×
第 1 表 経営形態別の非営利に関する分類
2. 3 京都府のデータによる回帰分析
京都府における各経営形態別の立地条件が,人口密度,高齢者人口割合や 高齢者世帯構造等どのような要因によって決まっているか回帰分析を行った.
データは総務省統計局編(2008)及び平成17年度の京都府提供の資料18)を使っ た.なお,京都府では訪問介護において社会福祉法人の総数に占める割合が
32%前後なのに対し,営利法人の総数に占める割合が12年度から41%前後
とトップである.推定式は以下のとおりである.
Pi=β0+β1lnDi+β2R1i+β3R2i+β4R3i+β5R4i+ui
ここで被説明変数Pは,京都府の15市11区10町1村の訪問介護の営利 法人の総数に占める割合である.説明変数は,lnDが人口密度の自然対数値,
R1が65歳以上の人口割合,R2が65歳以上の高齢者のいる世帯割合(対一般 世帯数),R3が高齢夫婦のみの世帯割合(対一般世帯数),R4が高齢単身世帯割 合(対一般世帯数)である.65歳以上の高齢者のいる世帯とは,単独世帯を除 く一般世帯19)のうち65歳以上の親族のいる世帯をいう.高齢夫婦世帯とは,
夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦1組の一般世帯(他の世帯員がいないもの)を いう.高齢単身世帯とは,65歳以上の者1人のみの一般世帯をいう.人口密 度については,総務省統計局『国勢調査報告』の平成17年度の人口総数と可 住地面積20)から算出している.下添え字のiは,京都府市町村を表し,uiは 誤差項を示している.
人口密度は,都市部と過疎地域で事業者の経営形態別立地条件が異なるの
18) 京都府健康福祉部高齢者支援課から,訪問介護に関する経営形態別データの提供を受けた.
なお,京都府内の平成17年度の訪問事業所数は,営利法人141,社会福祉法人111,医療法人
40,NPO法人22,社団財団法人18,生協8,農協1,地方公共団体1,その他1,である.
19) 一般世帯とは,以下のような世帯のことをいう.(1)住居と生計を共にしている人の集まり
または一戸を構えて住んでいる単身者(ただし,これらの世帯と住居を共にする単身の住み込 みの雇人については,人数に関係なく雇主の世帯に含めた),(2)上記の世帯と住居を共にし,
別に生計を維持している間借りの単身者又は下宿屋などに下宿している単身者,(3)会社・団 体・商店・官公庁などの寄宿舎,独身寮などに居住している単身者.したがって,一般世帯の 中には社会的入院等をしている者も含まれているおそれがある.
20) 可住地面積とは,北方地域及び竹島を除いた総面積から林野面積と主要湖沼面積を差し引い て算出したものである.なお,林野面積とは,森林面積と森林以外の草生地面積の合計である.
かを分析する.移動費用や移動時間がかかるという意味で効率的でない過疎 地域の方に非営利法人が立地しているものと予想される.
また,65歳以上の人口割合は,高齢化率によって事業者の経営形態別立地条 件が異なるのかを分析する.高齢化率の高いところは介護サービス利用が増える と予想されるので,効率的に営利法人が立地をすすめているものと予想される.
さらに,高齢者のいる世帯割合・高齢夫婦のみの世帯割合・高齢単身世帯 割合は,高齢者が同居しているのか独居なのか等,高齢者世帯の構造によって,
事業者の経営形態別立地条件が異なるのかを分析する.独居の高齢単身世帯 の多いところに介護サービス利用が増えると予想され,営利法人が効率的に 立地をすすめているものと予想される.
推定結果は,以下のとおりである(第 2 表).非営利法人は,社会福祉法人,社団・
財団法人,NPO法人,生協,農協,医療法人を合算し,分析したものである.
結果は,営利法人においては人口密度と高齢単身世帯割合(対一般世帯数)
がプラスの符号で有意であり,人口密度の高いところや独居の高齢者単身世 帯割合の高いところに営利法人が多く立地していることが分かる.また,65 歳以上の高齢者のいる世帯割合(対一般世帯数)もマイナスの符号で有意であ り,同居親族のいる高齢者世帯の多いところでは営利法人は立地しないこと が分かる.営利法人が採算性を重視し,効率的に都心部の単身高齢者世帯に ターゲットをしぼって,立地していることがうかがえる.65歳以上の人口割 合については有意でなかった.より多面的で広範囲の分析が必要とされるも のと思われる.
反対に,非営利法人では,人口密度と高齢単身世帯割合(対一般世帯数)が(社 会福祉法人では,高齢単身世帯割合(対一般世帯数)が),マイナスの符号で有意で あり,人口密度の低い過疎地域ではほとんど非営利法人しかなく,ここに現 在の非営利法人と営利法人の棲み分け構造がうかがえる.NPO,生協,社団・
財団法人,農協,医療法人,地方公共団体に関しては有意ではなかった.
3 DEA
分析の概要まず,DEAの概念について簡単に述べる.
DEA分析(包絡分析法)とは,事業体等対象となる意思決定主体(DMU)の 効率性を相対的に測定・評価する手法のことであり,効率的フロンティアを 基準として非効率な事業体の改善案等を具体的に提言できる分析法を言う.
この効率的フロンティアに包まれる部分を生産可能集合という.DEA分析の 特徴としては,多入力多出力システムにおいてもDMUの相対的効率性が測 定可能なことにある21).
21) 刀根薫(1993)参照.
対総数割合 変数 定数項 人口密度65歳以上 人口割合
高齢者の いる世帯
高齢夫婦 のみ世帯
高齢単身 世帯
決定係数
(修正済決定 係数)
非営利法人 係数 t−値 59.796
2.090**
-5.289 -2.087**
0.195 0.131
4.103 1.406
-0.323 -0.088
-3.749 -1.859*
R2=0.752 (R2=0.714)
営利法人 係数 t−値 37.589
1.373 5.775 2.380**
-0.136 -0.095
-4.720 -1.690*
1.255 0.356
3.661 1.897*
R2=0.773 (R2=0.737)
NPO法人 係数
t−値 10.562
0.575 -0.901 -0.554
-0.190 -0.198
0.218 0.116
-0.322 -0.136
0.531 0.410
R2=0.031 (R2=-0.121) 生協 係数
t−値 1.662 0.209
0.058 0.082
-0.377 -0.911
0.523 0.645
-0.464 -0.453
0.358 0.640
R2=0.090 (R2=-0.051) 農協 係数
t−値 1.770 0.548
0.175 0.613
0.218 1.294
-0.551 -1.673
0.537 1.294
-0.332 -1.459
R2=0.158 (R2=0.025) 社財団法人 係数
t−値 1.381 0.100
0.566 0.465
-0.491 -0.686
-0.359 -0.256
0.568 0.321
1.174 1.211
R2=0.145 (R2=0.012) 医療法人 係数
t−値 2.839 0.127
0.849 0.430
-0.812 -0.700
1.657 0.729
-1.884 -0.657
0.754 0.480
R2=0.153 (R2=0.019) 社会福祉
法人
係数 t−値 41.583
0.890 -6.036 -1.458
1.847 0.759
2.614 0.548
1.241 0.207
-6.234 -1.893*
R2=0.642 (R2=0.585) 地方公共
団体
係数 t−値 -0.886
-0.217 -0.154 -0.425
0.102 0.482
0.453 1.087
-0.678 -1.290
-0.153 -0.532
R2=0.097 (R2=-0.053) 第 2 表 推定結果
(注)**は5%水準で有意,*は10%水準で有意であることを示している.
DEAにおける効率性の概念としては,①所与の投入要素の下で産出を最大 にする技術効率性,②投入要素の価格を所与としてその最適な組み合わせを 達成する配分効率性,③技術効率性と配分効率性の積で表される総効率性,
の3つがある22).DEAにおける効率性の概念の根底にある,より少ない投入 でより大きな産出を得るという考え方には,社会的厚生の最大化という経済 学上の効率の意味を含んでいないが,介護保険市場の効率性を計測する一指 標として分析する意義はあることと思われる.
DEAによる効率性の評価手法としては,(a)一般的な相対効率性を計測す るCharnes, Cooper and Rhodes (1978)によって提案されたCCRモデルと,(b)
生産技術に関する効率性を計測するBanker, Charnes and Cooper (1984)によっ て提案されたBCCモデルがある.すなわち,CCRモデルが(ⅰ)全体の効率 の客観的評価を導き出し,(ⅱ)非効率の原因を識別しその非効率的な量を推定 するものであるのに対して,BCCモデルは,技術的非効率性と規模の非効率
22) 塩津ゆりか・原田禎夫・伊多波良雄(2001),79頁.
㩷 㩷 㩷
㩷㩷 㩷٨㩷 㩷
㩷㩷 㩷
㩷 㩷 㩷
٨ ٨ ٨ 㩷
٨㩷 㩷 㩷٨ ٨㩷
٨ ٨
٨ 出力y
E
D B
I H G
q r s t
0
入力x F
CCRモデルにおける 効率的生産フロンティア
BCCモデルにおける 効率的生産フロンティア
A C
生産可能集合
第 1 図 CCRモデルとBCCモデル
性を区別するために,(ⅰ)与えられた実施規模での純粋な技術効率性を推定し,
(ⅱ)今後の展開に対して規模の収穫が逓増(増加型),逓減(減少型),一定(一 定型)のいずれになっているかを識別するものである23).
以下第 1 図を用いて,A〜Iの企業における1つの入力(x),1つの出力(y)
の場合を考える.
CCRモデルにおいては,企業Bが最も効率的な企業である.原点0とB を結んだ直線より下の領域はすべて生産可能な領域であり,B以外のすべて の企業には非効率性があり,効率性を改善する余地があるといえる.一方,
BCCモデルにおいては規模に関して収穫変動を仮定し,最も効率的な企業は,
A,B,D,E,Iとなる.ここで,企業CのBCCモデルにおける入力型モデ
ルの技術効率性の程度は,qs/qtとして測ることができる.というのは,企業 Cは同じ出力(q)をより少ない入力(s)で達成可能であるからである.同 じように,CCRモデルの相対効率性の程度は,qr/qtとして示される.したがっ て,DEA効率的であるとき,その効率性値は1となり,非効率であるときそ の値は1より小さくなる.
また,qr/qsが規模の効率性評価に相当する.なお,同じ入力のもとでの出 力の値を比較することにより,出力型モデルにおける技術効率性の程度も比 較可能である24).
以上のBCCモデルを用い,規模の効率性をみて,増加型か減少型か一定型 かを各経営形態別にみる.増加型とは,規模を拡大して新しい点に移った方 が効率性のよくなるものであり,減少型とは,規模を縮小した新しい点に移っ た方が効率性のよくなるものである.一定型とは,増加型でも減少型でもなく,
他の点に移ることは一般に効率性を悪くし,ある意味最も生産性の高い活動 であるものをいう.これにより,介護サービスの生産量がどの方向に向かう のが効率的か,すなわち,これから先,各供給者が縮小していくのがよいのか,
23) Charnes, Cooper, Lewin, and Seiford, (ed.), (1994) 参照.
24) 塩津・原田・伊多波(2001),79-80頁.
拡大していくのがよいのかをこの方法により分析する.
4 京都府のデータによる DEA
分析効率性の比較については,後に述べるようにサービスの品質をも考慮しな ければならないが,データの都合上から,より数多く経営形態別介護サービ スについて観察のできる効率性のみの場合について,まず分析を行う.
4. 1 デ ー タ
データは,平成19年度の京都府介護サービス情報公表システムをもとに,
規模の効率性等についてDEA分析をBCCモデル及びCCRモデルに基づいて 行う.インプットに訪問介護員等常勤換算人数25)をとり,アウトプットに身 体介護中心型26)の1か月の提供時間,生活援助中心型27)の1か月の提供時 間をとる(第 3 表).データの都合上,訪問介護員の給料がコストの大半を占 める訪問介護について分析を行う.データは京都市を中心に京都府内でアッ トランダムに抽出し,サンプルの数は50,内訳は営利法人16,地方公共団体
1,NPO法人3,社団・財団法人4,協同組合2,医療法人5,社会福祉法人
19である.
イ ン プ ッ ト ア ウ ト プ ッ ト
訪問介護員等常勤換算人数 身体介護中心型の1か月の提供時間,
生活援助中心型の1か月の提供時間 第 3 表 効率性分析におけるインプットとアウトプットの説明
25) 常勤換算人数とは,常勤者(当該施設・事業所において定められている勤務時間数のすべて を勤務している者)の兼務および非常勤者について,その職務に従事した1週間の勤務時間を 当該施設・事業所の通常の常勤者の1週間の勤務時間で除し,小数点以下第1位でもとめた数
(小数点第2位以下は切り捨て)と常勤者の専従職員数の合計をいう.
26) 身体介護中心型とは,利用者の身体に直接接触して行う介助並びにこれを行うために必要な 準備及び後始末並びに利用者の日常生活を営むのに必要な機能の向上等のための介助及び専門 的な援助であり,1人の利用者に対して訪問介護員等が1対1で行うものが中心の場合をいう.
27) 生活援助中心型とは,身体介護以外の訪問介護であって,掃除,洗濯,調理などの日常生活 の援助が中心の場合をいう.
4. 2 分析結果
営利法人と非営利法人のどちらが効率的かに関しては,理論的には利潤最 大化行動をとる営利法人は,限界費用と価格を一致させるのに対して,非営 利法人では,非分配制約条件下で平均費用と平均収入が一致する点で生産す るので,非営利法人の方が資源配分上過大な点で生産が行われ非効率となる.
分析結果は,以下のようになった.
まず,CCRモデルによる効率性の分析では,第 4 表をみると7つの営利法 人が上位1〜10位の範囲にあり,また第 5 表をみると効率性の平均値は営利
法人0.70200に対して,社会福祉法人の平均値は0.48546なので,営利法人の
CCR BCC
上位
10事業体
社会福祉法人B 1.000 社会福祉法人B 1.000
営利法人AK 1.000 社会福祉法人F 1.000
営利法人AS 1.000 社会福祉法人H 1.000
営利法人AP 0.961 営利法人AK 1.000
NPO法人AT 0.929 営利法人AP 1.000
営利法人AJ 0.902 営利法人AS 1.000
地方公共団体U 0.836 NPO法人AT 0.988
営利法人AR 0.831 営利法人AE 0.931
営利法人AE 0.772 営利法人AJ 0.905
営利法人AI 0.725 営利法人AR 0.852
下位
10事業体
医療法人AY 0.355 社会福祉法人C 0.408
社会福祉法人W 0.352 営利法人AD 0.397 社会福祉法人C 0.313 社団財団法人AB 0.385 社会福祉法人I 0.298 社会福祉法人J 0.377
営利法人AH 0.295 医療法人AX 0.374
社会福祉法人P 0.256 営利法人AH 0.307 社団財団法人Y 0.252 社会福祉法人I 0.306
医療法人BB 0.202 社団財団法人Y 0.290
社団財団法人Z 0.195 社会福祉法人P 0.260 社会福祉法人M 0.186 社会福祉法人M 0.247
第 4 表 各手法による効率性上位・下位10事業体
(注)網掛けは各手法で共通して上位または下位10位に入っている事業体である.
高い効率性がうかがえる.なお生産量である1か月当たり介護提供時間合計 平均値は,社会福祉法人3,965.0時間に対して,営利法人1,592.8時間で,圧 倒的に社会福祉法人の生産量が多い.
さらに第4表を詳しくみると,下位10位の事業体はおおむね介護提供時間(生 産量)の少ない小規模の事業体である.しかし,BCC・CCR共通で下位10位 の事業体の中でも,社会福祉法人Iは介護提供時間(生産量)が6番目に多い 大規模事業体であり,その非効率の要因についてはさらなる分析を必要とする.
理論的には,非営利法人の非効率の要因については,James and Rose-Ack-
erman (1986) で生産量と効率のトレードオフが論じられている.すなわち,非
営利法人の生産量は限界費用が価格を上回るのでパレート最適でなく,非営 利法人は費用最小化のインセンティブが乏しいため生産非効率をひきおこし,
また,非営利法人の高品質の選好や一括寄付金等によって,X非効率・高品質・
技術選好・内部補助などの非効率を生み,ここに生産量と生産効率のトレー 平均 標準偏差 最小値 最大値 社会福祉法人効率性 0.48546 0.1859 0.18659 1
営利法人効率性 0.70200 0.1979 0.29575 1 NPO法人効率性 0.58790 0.2431 0.38309 0.92946
医療法人効率性 0.36489 0.1020 0.20229 0.52441 協同組合効率性 0.53518 0.1413 0.39405 0.67631 社団 ・ 財団法人効率性 0.33710 0.1256 0.19511 0.52129 地方公共団体効率性 0.83687 - 0.83687 0.83687 社会福祉法人介護提供時間合計 3,965.0 5,990.331 273.8 18,020.5 営利法人介護提供時間合計 1,592.8 1,118.704 439.5 5,057.0 NPO法人介護提供時間合計 835.1 315.600 529.0 1,269.5 医療法人介護提供時間合計 404.6 266.296 122.0 895.0 協同組合介護提供時間合計 1,164.5 66.500 1,098.0 1,231.0 社団 ・ 財団法人介護提供時間合計 744.3 365.308 125.8 1,019.5 地方公共団体介護提供時間合計 777.0 - 777.0 777.0
第 5 表 経営形態別に見たDEAによる技術効率性の要約(CCRモデル)
(注) 介護提供時間合計は1か月あたりのものである.
ドオフの可能性があるとする.
なお,BCCモデルによる規模の効率性の分析では,社会福祉法人のうち2 法人が,規模縮小により効率的になる減少型という結果が得られた(第 6 表). 但し,この減少型という結果が得られた社会福祉法人は,もともと規模の大き い法人であり,減少型の結果が出やすかったことに注意しなければならない.
あるいは介護サービスが超過需要状態にある影響もあるかもしれず,増加型と いう結果の出た社会福祉法人も相当数あるため,より詳細な検証が必要である.
後述の品質を考慮した分析でも,BCCモデルによる規模の効率性の分析を行う.
サンプル数が少ないので確たることは言えないが,NPO法人と協同組合の 効率性が相対的に良い.これは,NPO法人や協同組合が,ボランティア団体 や住民・会員相互の助け合いの活動として介護サービスを発展させてきたと いう経緯からのマンパワーによるものと推測される.
BCCとCCRの結果を比較したものを本稿末尾の表13にまとめた.BCCの 方が,効率性の値が高く出てしまうことがわかる.
5 品質の考慮
効率性を比較するには,サービスの品質をも考慮しなければならない.な ぜなら,サービスの品質が低くコストも低いというのは,鈴木(2003)や Hart, Shleifer and Vishny (1997) のモデルの仮定にあるように当然推測されるこ 規模の効率性 規模に関して収穫逓増 規模に関して収穫一定 規模に関して収穫逓減
社会福祉法人 14 3(1) 2(2)
営利法人 13(1) 3(2) 0
NPO法人 3 0 0
医療法人 5 0 0
地方公共団体 1 0 0
協同組合 2 0 0
社団・財団 4 0 0
第 6 表 規模の効率性のDEA分析(BCCモデル)の結果
( )内は効率的フロンティア上の事業体数
とだからである28).そこで,ここでは品質を測定することとする.
5. 1 デ ー タ
データは,平成19年度の京都介護・福祉サービス等第三者評価29)を用い,
品質の指標として,①健全な組織体制の第三者評価結果,②適正なサービス の提供体制の第三者評価結果,③利用者保護の観点の第三者評価結果及び④ サービスの質の向上の取組の第三者評価結果をとる.データの都合上,効率 性と同じ訪問介護員の給料がコストの大半を占める訪問介護について,分析 を行う.データは,京都市を中心に京都府内でアットランダムに抽出し,サ ンプルの数は45,内訳は営利法人17,地方公共団体1,NPO法人1,社団・
財団法人4,社会福祉法人22である.
5. 2 経営形態と品質の関係
まず,上記品質の4つの指標と各経営形態の関係についてみてみる.それを図 示した第 2 図をみてみると,利用者保護の観点とサービスの質の向上の取組の
28) 鈴木(2003),138頁,及びHart, Shleifer and Vishny (1997), p.1133参照.
29) この第三者評価は,評価日時が同じ,評価者が同じという条件下での評価ではないので,必 ずしも絶対的評価というわけではないことに注意しなければならない.
①健全な組織体制
②適正なサービス提供体制
③利用者保護の観点
④サービスの質の向上の取組
第三者評価点数
社福 営利 地公 社財 NPO
第 2 図 経営形態と4つの品質の関係
部分で折れ線が交叉しており,これだけでは経営形態と品質の関係は明確でない.
したがって,さらに主成分分析を用いて,これら4つの評価を成分抽出し てみることとする.主成分分析とは,多次元のデータをそこに含まれる情報 の損失をできるだけ少なくして,2次元あるいは3次元のデータに縮約する 手法のことであり,多数の指標を統合した総合的な指標を作成するものであ る30).主成分分析を加えた第 3 図をみると,社会福祉法人・NPO法人・社団・
財団法人の非営利法人で,品質が高いことが分かる31).
品質に関する主成分分析の結果は,第 7 表からみても,品質の平均値が営利 法人-0.4280に対して,社会福祉法人0.38545であり,非営利法人の方が高品質 といえ,Hansmann (1980)やGlaeser and Schleifer (2001) の理論を肯定し,鈴木
(2002)の実証分析と異なった結論となった.しかし,平均値は相対的に低いも
のの,最大値の0.93456をはじめ,営利法人もかなりの数,品質の良いものがある.
では,効率性と品質の関係はどうであろうか.Hart, Shleifer and Vishny (1997) 30) 内田治(2007),142頁.
31) 第1主成分は,分散最大の原則と同時に,各項目の観測値の相関係数の2乗和最大の性質・
第1主成分を説明変数とし各項目の観測値を被説明変数とした場合の誤差の2乗和最小の性質 をもつ.そのため,第1主成分は与えられたデータの情報を最も合理的に集約したものと考え られ、また,第1主成分の寄与率が75.095%と大きかったため,この分析では第1主成分を使 う(高橋・中本(1996)参照).
第三者評価点数及び第一主成分得点
①健全な組織体制
②適正なサービス提供体制
③利用者保護の観点
④サービスの質の向上の取組 第1主成分得点
社福 営利 地公 社財 NPO
第 3 図 経営形態と主成分分析による品質の関係
平均 標準偏差 最小値 最大値 社会福祉法人品質 0.38545 0.72422 -2.03290 1.15058 営利法人品質 -0.42800 1.06600 -2.63560 0.93456 社団・財団法人品質 0.00521 0.89454 -1.41880 1.02800
NPO法人品質 0.57338 - 0.57338 0.57338
地方公共団体品質 -1.79700 - -1.79700 -1.79700 社会福祉法人介護提供時間合計 4241.8 5730.2620 273.8 18020.5 営利法人介護提供時間合計 1526.9 1116.8300 439.5 5057.0 社団・財団法人介護提供時間合計 744.3 365.3085 125.8 1019.5 NPO法人介護提供時間合計 1269.5 - 1269.5 1269.5 地方公共団体介護提供時間合計 777.0 - 777.0 777.0
第 7 表 記述統計(主成分分析)
BCC CCR ①健全な
組織体制
②適正な サービス提供体制
③利用者 保護の観点
④サービスの質 の向上の取組
BCC Pearson 相関係数 1 .768** 0.168 0.166 0.019 0.175
有意確率 (両側) 0 0.269 0.277 0.9 0.25
CCR Pearson 相関係数 .768** 1 0.063 0.103 -0.124 0.045
有意確率 (両側) 0 0.682 0.503 0.416 0.77
①健全な組 織体制
Pearson 相関係数 0.168 0.063 1 .653** .751** .785**
有意確率 (両側) 0.269 0.682 0 0 0
②適正な サービス 提供体制
Pearson 相関係数 0.166 0.103 .653** 1 .657** .531**
有意確率 (両側) 0.277 0.503 0 0 0
③利用者保 護の観点
Pearson 相関係数 0.019 -0.124 .751** .657** 1 .618**
有意確率(両側) 0.9 0.416 0 0 0
④サービス の質の向上 の取組
Pearson 相関係数 0.175 0.045 .785** .531** .618** 1 有意確率 (両側) 0.25 0.77 0 0 0
第 8 表 相関係数
(注)N(サンプル数)は45.
**は,相関係数が1%水準で有意(両側)であることを示している.
がそのモデルで仮定しているように,効率がよくなると品質は悪くなるもの であろうか32).
この点に関して,効率と品質の関係についてみた第 8 表を見てみると,
CCRと4つの評価の相関にはプラスとマイナスがある.しかも非有意である.
他方BCCと4つの評価の相関はプラスだが非有意である.したがって,こ れだけでは効率と品質の関係は分からないため,これら4つの評価について,
さらに主成分分析を行い,効率と品質の関係についてみる(第 4 図).
効率と主成分分析の品質の関係を示した第4図をみると,営利法人のうちで,
効率性がよいもので品質が相対的に低いもの,社会福祉法人や社団・財団法 人で,効率性が低くて品質が高いものもみられるが,相関があるとまではいえ ない.規模の経済が働いているのかもしれず,さらなる分析が必要である.
第 4 図 効率性と品質
32) Hart, Shleifer and Vishny (1997), p.1133,参照.費用削減を伴うコストイノベーションは品質 削減を伴うと仮定している.
5. 3 品質考慮後の効率性
前述したように効率性の比較には,サービスの品質を考慮しなければならな い.なぜなら,サービスの品質が低くコストも低いというのは,鈴木(2003)や Hart, Shleifer and Vishny (1997)のモデルの仮定にあるように当然推測されるこ とだからである.品質を考慮した費用関数を推定した先行研究としては,DEA 分析したFizel and Nunnikhoven (1992) やNyman and Bricker (1989) があり,これ らでは営利法人の効率性が肯定されている33).しかし,鈴木(2003)の実証分 析では,営利法人・非営利法人間に効率性の差はみられないとしている34). データとして,平成19年度の京都府介護サービス情報公表システムを用い,
インプットに訪問介護員等常勤換算人数をとり,アウトプットに,①身体介護中 心型の1か月の提供時間,②生活援助中心型の1か月の提供時間,③健全な組 織体制の第三者評価結果・適正なサービスの提供体制の第三者評価結果・利用 者保護の観点の第三者評価結果・サービスの質の向上の取組の第三者評価結果 の4つの合計点をとった(第 9 表)35).データの都合上,効率性と同じ訪問介護員 の給料がコストの大半を占める訪問介護について分析を行う.データは京都市を 中心に京都府内でアットランダムに抽出し,サンプルの数は45で,内訳は営利法 人17,地方公共団体1,NPO法人1,社団・財団法人4,社会福祉法人22である.
33) Nyman and Bricker (1989), p.591, Fizel and Nunnikhoven (1992), p.434.
34) 鈴木亘(2003),143-145頁.
35) 本来ならば,表8にあるように第三者評価の4つのアウトプット項目は相関が強いので,主
成分分析の値を入れるべきところ,負の値が出てしまった.主成分分析を用いたDEAに関し ては,上田(1995)及び上田(2002)等にて研究されているが,まだ負の値の取り扱いについ ては,実例上は確たるものがない.そこで,今回は第三者評価の4つの項目の合計点をとって 分析したが,このことが課題として残った.
イ ン プ ッ ト ア ウ ト プ ッ ト
訪問介護員等常勤 換算人数
身体介護中心型の1か月の提供時間 生活援助中心型の1か月の提供時間
健全な組織体制の第三者評価結果,適正なサービスの提供体制の 第三者評価結果,利用者保護の観点の第三者評価結果,サービ
スの質の向上の取組の第三者評価結果,の4つの合計点 第 9 表 品質を考慮した効率性分析におけるインプットとアウトプットの説明
CCR BCC
上位
10事業体
社会福祉法人B 1.000 社会福祉法人B 1.000 社会福祉法人AK 1.000 社会福祉法人E 1.000
営利法人AP 1.000 社会福祉法人F 1.000
営利法人AS 1.000 社会福祉法人H 1.000
社団財団法人Z 0.970 社会福祉法人K 1.000
営利法人AJ 0.906 社会福祉法人S 1.000
社会福祉法人E 0.904 社会福祉法人Z 1.000
営利法人AR 0.857 営利法人AK 1.000
地方公共団体U 0.843 営利法人AP 1.000
営利法人AE 0.772 営利法人AS 1.000
下位
10事業体
社会福祉法人R 0.384 社会福祉法人R 0.446 社会福祉法人J 0.378 社団財団法人AB 0.442 社会福祉法人F 0.374 営利法人AD 0.397 社会福祉法人N 0.340 社会福祉法人N 0.378
営利法人AH 0.304 社会福祉法人P 0.317
社会福祉法人I 0.298 社団財団法人Y 0.316 社団財団法人Y 0.295 社会福祉法人L 0.308 社会福祉法人L 0.266 営利法人AH 0.307 社会福祉法人P 0.261 社会福祉法人I 0.306 社会福祉法人M 0.244 社会福祉法人M 0.247 第 10 表 各手法による品質考慮後の効率性上位・下位10事業体
(注)網掛けは各手法で共通して上位または下位10位に入っている事業体である.
平均 標準偏差 最小値 最大値 社会福祉法人品質考慮後効率性 0.52206 0.20557 0.24484 1
営利法人品質考慮後効率性 0.70845 0.19592 0.30475 1 社団・財団法人品質考慮後効率性 0.54518 0.25916 0.29586 0.97059
NPO法人品質考慮後効率性 0.48905 - 0.48905 0.48905 地方公共団体品質考慮後効率性 0.84316 - 0.84316 0.84316 社会福祉法人品質合計点 93.27 6.31867 72 100
営利法人品質合計点 86.60 9.13906 68 98 社団・財団法人品質合計点 90.25 7.66078 78 99 NPO法人品質合計点 95.00 - 95 95 地方公共団体品質合計点 75.00 - 75 75 第 11 表 経営形態別に見たDEAによる技術効率性の要約(CCRモデル)
第 10 表をみると,CCRモデルの品質考慮後の効率性について,6つの営 利法人が上位1〜10位に入っており,下位1〜10位に8つの社会福祉法人 が入っていること,また第 11 表の品質考慮後効率性平均値を見ても営利法
人0.70845に対し,社会福祉法人0.52206であり,営利法人の方が品質考慮
後の効率性が高いという結果が得られた.DEA分析では,品質を考慮した 効率性において,非営利法人よりも営利法人のほうが効率的であるとの結果 は,営利法人の効率性を肯定したFizel and Nunnikhoven (1992)やNyman and
Bricker (1989)と同じ結果となったが,営利・非営利間には効率性の差はみら
れないとした鈴木(2003)の結論とは異なる結果となった.
第5表の効率性のみの場合と第11表の品質考慮後の効率性の場合とを比較 すると,社会福祉法人と営利法人の効率性平均の差が0.03ポイント縮まり,
社会福祉法人の順位がその分若干上位にきたが,DEA分析の結果では営利法 人の方が高い効率性であることにかわりはない.
第 12 表はBCCモデルにおいて規模に関してそれぞれ収穫逓増(増加型), 一定(一定型),逓減(減少型)の事業体数のまとめである.品質を考慮すると 規模を縮小した方が効率性のよくなる減少型や現在の規模が最も効率的な一 定型が増える.これは,品質を考慮すると,主成分分析で相対的に高品質だっ た社会福祉法人等で効率性スコアが上がるためであり,これによって,増加 型から減少型・一定型へと変わった社会福祉法人等が多かったためである.
この点,規模の大きい法人は減少型の結果が出やすいことには注意しなけれ 規模の効率性 規模に関して収穫逓増 規模に関して収穫一定 規模に関して収穫逓減
社会福祉法人 0 7(1) 15(5)
営利法人 2 7(3) 8
NPO法人 0 0 1
地方公共団体 0 1 0
社団・財団 1 0 3(1)
第 12 表 規模の効率性のDEA分析(BCCモデル)の結果(品質考慮後)
( )内は効率的フロンティア上の事業体数
ばならないことは前述のとおりである.このBCCモデルの分析結果では,15 の社会福祉法人が規模を縮小した方が効率性のよくなる減少型となった.な お,品質考慮後の効率性の低い事業体は相対的に小規模の事業体の割合が多 いが,BCC・CCR共通で下位10位の中に入っているものの中には,介護提 供時間合計(生産量)が5番目・6番目・8番目に多い大規模な社会福祉法人 が3つもあり,前述生産量と効率のトレードオフのおそれがよりいっそう示 唆される結果となった.
BCCとCCRの結果を比較したものを第 13 表と第 14 表にまとめた.ここ でもBCCの方が,効率性の値が高く出ていることにかわりはない.
6 ま と め
本稿では,京都府の訪問介護サービスのデータを用いて経営形態別にサー ビスの効率性及び品質を分析した.その結果,訪問介護サービスにおいて品 質に関しては,主成分分析を行うと営利法人よりも非営利法人の方が高品質 との結果が出ており,Hansmann (1980) やGlaeser and Schleifer (2001) の理論を 肯定したが,鈴木(2002)の実証分析とは異なる結果となった.また,効率性 に関しては,効率性のみの場合でも,品質を考慮した効率性の場合でも,営 利法人のほうが効率的とのDEA分析結果が出て,営利法人の効率性を肯定し たFizel and Nunnikhoven (1992) やNyman and Bricker (1989) の結果と同じとなっ たが,営利・非営利間には効率性の差はみられないとした鈴木(2003)の結 論とは異なる結果となった.なお,サンプル数が少ないので確たることはい えないが,NPO法人・協同組合で相対的に効率的の結果が出たことは,ボラ ンティア等住民主体のマンパワーの効率性に及ぼす影響も示唆され,超過需 要の状態にある介護サービスにおいて,今後ボランティアの果たす役割に対 する期待はますます大きくなるものと思われる.ただ,介護は基本的に資格 を必要とするような種類のサービスなので,ボランティア行動者率が高いと,
品質への影響が懸念されるため,行政等がボランティアに対する講習等を行
うことが必要であろう.
さらに,品質を考慮した規模の効率性のDEA分析BCCモデルにおいて15 の社会福祉法人で,(規模を縮小した方が効率性のよくなる)規模縮小・分割を考 慮すべき減少型の結果が出た.しかし,京都府の回帰分析でみたように過疎 地域で社会福祉法人等の果たしている役割は大きく,都市部の事業体に限り 大規模法人の分割・縮小を考慮すべきものと考える.金谷(2003)の分析結果 でも介護事業収益率は高齢化率で有意にマイナスとなっており,高齢化率の 高い地方や過疎地域では利用量の確保や移動時間の問題で採算をとりにくい 可能性が指摘されている.2009年の介護報酬改定では,人件費の高い都市部 の事業所に対しては,地域区分ごとの報酬単価の上乗せ割合を見直したが36), 過疎地域の対策としては,加算措置中心となった.すなわち,従来の厚生労 働大臣が定める地域37)について加算される特別地域加算に加えて38),中山間 地域等39)における小規模事業所加算40)や中山間地域等41)に居住する者への サービス提供加算42)が新設された.加えて,地方自治体ごとに補助金交付等 もなされている43).しかし,これらの加算や補助金対象指定地域は依然とし
36) 特別区(東京23区)と乙地(札幌市,仙台市,大津市,姫路市等)のみ引き上げられた.
37) 厚生労働大臣が定める地域とは,山村振興法・離島振興法・沖縄振興特別措置法・奄美群島 振興開発特別措置法・小笠原諸島振興開発特別措置法・過疎地域自立促進特別措置法(一部指 定)・豪雪地帯対策特別措置法(一部指定)・辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上 の特別措置等に関する法律(一部指定)に指定されている地域のことをいう.
38) 特別地域に該当する事業所に対して所定単位数の15%加算される.
39) 特別地域加算対象地域以外の地域で,半島振興法・特定農山村法・過疎地域自立促進特別措 置法・豪雪地帯対策特別措置法・辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置 等に関する法律に指定されている地域をいう.
40) 特別地域加算対象地域以外の中山間地域等に所在する小規模の事業所に所定単位数の10%
が加算される.
41) 中山間地域等とは,半島振興法・特定農山村法・山村振興法・離島振興法・沖縄振興特別措 置法・奄美群島振興開発特別措置法・小笠原諸島振興開発特別措置法・過疎地域自立促進特別 措置法・豪雪地帯対策特別措置法・辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措 置等に関する法律に指定されている地域をいう.
42) 事業所が通常の事業実施地域を越えて中山間地域等に居住する者にサービス提供をした場合 に所定単位数の5%が加算される.
43) 例えば,山間地域住民に介護サービスを提供する事業者に対する京都市介護サービス山間地 域提供協力金等がある.
CCR 事業体 BCC 0.5492146 社会福祉法人A 0.6219636
1 社会福祉法人B 1 0.3135535 社会福祉法人C 0.4089052 0.6286824 社会福祉法人D 0.6940421 0.5711588 社会福祉法人E 0.799992
0.374963 社会福祉法人F 1
0.4438019 社会福祉法人G 0.635535
0.411631 社会福祉法人H 1
0.2982195 社会福祉法人I 0.3065473 0.3745835 社会福祉法人J 0.3776753 0.5936541 社会福祉法人K 0.6768799 0.1865854 社会福祉法人M 0.2477851 0.6986395 社会福祉法人O 0.7200346 0.2569064 社会福祉法人P 0.2605661 0.4574961 社会福祉法人Q 0.4578211 0.5334887 社会福祉法人S 0.5560743 0.695884 社会福祉法人T 0.7174373 0.4824067 社会福祉法人V 0.491818 0.3527735 社会福祉法人W 0.6177608 0.2521499 社団財団法人Y 0.2902519 0.195106 社団財団法人Z 0.8235212 0.5212873 社団財団法人AA 0.5291568 0.3798691 社団財団法人AB 0.3855546 0.4511584 NPO法人AC 0.4819822 0.9294565 NPO法人AT 0.9884586 0.3830878 NPO法人AU 0.4454708 0.3940502 協同組合AV 0.4120607 0.6763098 協同組合AW 0.6790742 0.3651243 医療法人AX 0.3740319 0.3559493 医療法人AY 0.6146918 0.3766742 医療法人AZ 0.5714229 0.524414 医療法人BA 0.5385318 0.202291 医療法人BB 0.77777 0.3862631 営利法人AD 0.3976607 0.7726091 営利法人AE 0.9312115 第 13 表 各手法による効率性の比較
CCR 事業体 BCC
0.6262277 社会福祉法人A 0.6399272 1 社会福祉法人B 1 0.4243513 社会福祉法人C 0.4739865 0.6286824 社会福祉法人D 0.6940421
0.9047619 社会福祉法人E 1
0.374963 社会福祉法人F 1
0.6756825 社会福祉法人G 0.847422
0.411631 社会福祉法人H 1
0.2982195 社会福祉法人I 0.3065473 0.3785769 社会福祉法人J 0.504286
0.7252486 社会福祉法人K 1
0.2662486 社会福祉法人L 0.3080112 0.2448378 社会福祉法人M 0.2477851 0.3408678 社会福祉法人N 0.3783195 0.7285119 社会福祉法人O 0.9003177 0.2613061 社会福祉法人P 0.3178099 0.4578292 社会福祉法人Q 0.4579451 0.3842893 社会福祉法人R 0.4461786
0.5721481 社会福祉法人S 1
0.7201306 社会福祉法人T 0.8778488 0.4925388 社会福祉法人V 0.5347467 0.5683019 社会福祉法人W 0.6177608 0.2958598 社団財団法人Y 0.3167804
0.9705882 社団財団法人Z 1
0.5279379 社団財団法人AA 0.5291568 0.3863392 社団財団法人AB 0.4426448 0.4890501 NPO法人AC 0.5335062 0.396403 営利法人AD 0.3976607 0.7726091 営利法人AE 0.9312115 0.51977 営利法人AF 0.5244413 0.7142837 営利法人AG 0.8760074 0.3047519 営利法人AH 0.3075505 0.7275315 営利法人AI 0.7659196 0.9061314 営利法人AJ 0.924683
1 営利法人AK 1
第 14 表 各手法による品質考慮後効率性の比較
て限定されており,報酬に対する加算は,消費者に対する1割負担部分に上 乗せされてはねかえってくるので,こういった老人の多い過疎地域について は移動距離に応じて,適切な補助制度等の適用を考えてもよいものと考える.
今後の課題としては,主成分分析で負の値が出た場合のDEAにおける出入 力の実例上の取り扱いに関しての課題が残った.
謝 辞
お忙しい中,京都府のデータを提供してくださった京都府健康福祉部高齢者支援課の 皆様,ヒアリング調査を受けて下さった京都府の訪問介護事業所の皆様,アドバイスを 下さった同志社大学の伊多波教授,宮澤教授,佐竹教授に心よりお礼を申し上げたい.
いうまでもなく,ありうべき誤解や誤りは,すべて筆者の責任に属する.この研究が少 しでも京都府の介護行政の助けになれば幸甚である.
0.6578705 営利法人AG 0.6988163 0.2957507 営利法人AH 0.3075505 0.7257628 営利法人AI 0.7271664 0.9026675 営利法人AJ 0.9057923
1 営利法人AK 1
0.678676 営利法人AL 0.6875448 0.5916302 営利法人AM 0.6002885 0.5958916 営利法人AN 0.6143273 0.6636494 営利法人AO 0.6848493
0.9611305 営利法人AP 1
0.5860392 営利法人AQ 0.5982485 0.8310423 営利法人AR 0.8523074
1 営利法人AS 1
0.5829913 営利法人X 0.6649579 0.836865 地方公共団体U 0.846556
0.6880497 営利法人AL 0.7171745 0.597764 営利法人AM 0.6002885 0.6148357 営利法人AN 0.6221679 0.6811394 営利法人AO 0.6848493
1 営利法人AP 1
0.6006661 営利法人AQ 0.688618 0.8570793 営利法人AR 0.955466
1 営利法人AS 1
0.6626051 営利法人X 0.6649579 0.8431583 地方公共団体U 0.846556
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