社 会 学 論 考 第 号
パーソナル・ネットワークからみた 高齢者の孤立と地域の役割
小 山 弘 美
「超高齢社会
Jに 突 入 し た 日 本 に お い て 高 齢 者 の 孤 立 が 社 会 問 題 化 するなかで,その対処策として地域の重要性が強調される場合が多い.
しかし,このような地域の取組みがどの程度高齢者の孤立の問題に影 響を与えるのか, 明 らかになっているわけではない.本稿ではこの点 を明らかにするため,社会経済的要因も加味した上で「孤立J, ["パー ソナノレ ・ ネットワ ー ク J , ["地域参加状況」の関連について分析を行う . 結 果 は 以 下 に ま と め る こ と が で き る . 第
1に,属性的要因を統制して も 地 域 参 加 は 高 齢 者 の パ ー ソ ナ ル ・ ネッ トワー ク量を増やす効果を もっ.第
2に,地域参加を行っている高齢者ほど, 地 域 の中に支援を 期 待 で き る 人 を 存 し て お り , 孤 立 状 況 を 回 避 で きている. しかし,近 隣に期待できる支援の内容は限定的である.第
3に,地域活動が活発 な 地 域 に お け る , 孤 立 者 の 減 少 は 見 ら れ ず , 孤 立 に 対 す る 地 域 レ ベ ル の 活 動 の 集 合 効 果 は 認 め ら れ な か っ た . 以 上 の 結 果 か ら , 個 人 が 地 域 活 動 に 参 加 す る こ と に よ る 孤 立 回 避 の 効 果 は 認 め ら れ た も の の , 地 域 活動の活性化は,地域から孤立者がいなくなるほどの解決策にはなり
えないことがわかった.このことは,孤立してしまうような社会経済 的地位の低い人びとを地域が「排除」している可能性を示唆する.
キーワード :パ ー ソナル・ ネッ トワー ク,高齢者の孤立, 地 域 の役割
1
問題設定
号 2 0 1 2 . 1 1 本 稿 の 目的は高齢者の孤立に対する処方筆としての地域の役割につ いて,その可能性と限界を明らかにすることである.この目的達成の た め に , 孤 立 をパーソナル ・ ネ ッ ト ワ ー ク 分 析 に よ っ て 特 定 し , 高 齢 者 の 地 域 参 加 状 況 が高齢者のパーソナル・ネットワーク量や孤立に影 響を及ぼすものであるか分析を行う.
高齢者の孤立は,
1970年 代 前 後 か ら,高 齢の夫婦のみ世帯の増加に 連動して,配偶者の死後も子と同居しない単身高齢者の増加によって 問題が顕在化していた. その後 ,阪神・淡路大震災の復興過程におい ても,高齢者の孤立が重要な問題としてとりあげられた.近年では,
高齢者の絶対量の多さとライフスタイルの変化があいまって,学術分 野や政策分野のみならず,報道などでも社会的問題として数多く取り 上げられている
1)実際, 日本はすでに
65才以上人口比率が
21%以 上である「超高齢社会
Jに突入している.
2010年には,総人口
1億
2779万人にたいし,
65才以上の高齢者が
2975万人
(23.3%),
75才 以上の後期高齢者は
1470万人
(11.5%)となっている
2)これに対し て ,
2055年には
65才以上高齢者 が
40.5%,後期高齢者が
26.5%にな ると推計されている
3) 2010年時点において高齢者の
16.9%は単独 世帯,
37.2%は夫婦のみ世帯であり,高齢者がし、る世帯のうち約半数 は高齢者のみ世帯となっており,その割合は年々増加してきている
4)2011
年 版 の 『 高 齢 社会白書』によ れば, r 困ったときに頼れる人が いない人
jは「 一人暮らしの男性J, r 近所づきあいがない人 J, r 親し い友人・仲間をもっていない人J に多い
.また,高齢者の社会的孤立
5)
は , r 生 き が い の 低 下
Jr 高 齢 者 の 消 費 者 被 害
Jr 高 齢 者 の 犯 罪
Jr 孤 立死」などの 問題をもた らすとされ , 対 処 策 と し て 高 齢 者 の 社 会 的 孤 立を防ぐための 地 域 活 動 が 紹 介 さ れ て い る . 同 様に,高齢者の孤 立の 問 題 に 対 し て , 地 域 の 重 要 性 が 主張さ れ る 場 合 が 多 い ( 石 田
2011: 183)実際,高齢者の孤立防止の「見守り」や「サロン」など,各 地 域 に お い て さ ま ざ ま な 取 組 み が 行 わ れている.しかし,このような地 域の取組みがどの程度高齢者の孤立の問題解決につながるのか,明ら かになっているわけではない.
円ノ臼
本 稿 の 主 題 は こ の 点 を 明 ら か に す る こ と で あ る が , そ の た め に は 以 下に注意が必要である.
2011年 版 の 『 高齢社会白 書』で見られたよう に , 多 く の 場 合 「 ネ ッ ト ワ ー ク の 少 な さ 」 が 孤 立 の 原 因 と さ れ , そ の 対 処 法 と し て 地 域 活 動 が 推 奨 さ れ て い る . しかし,孤立が 地 域 の 問 題 に す り か え ら れ る 際 , 孤 立 を 引 き 起 こ す 社 会 経 済 的 要 因 が 見 過 ご さ れ てしまっている.加えて,原因とされている「ネットワークの少なさ」
自 体 に も 社 会 経 済 的 要 因 が 関 連 し て い る こ と は , こ れ ま で の ネ ッ ト ワ ー ク 研 究 で 明 らかになっている . つ ま り , 階 層 や 貧 困 な ど を 起 因 と し て 引 き 起 こ さ れ て い る 孤 立 を , 地 域 の 問 題 と し て 引 き 受 け , 地 域 が 解 決 す る こ と が 可 能 で あ る の か . 上 記 の 問 い を こ の よ う に 読 み か え る 必 要がある.
そ し て , こ れ に 答 え る た め に は , 孤 立 の 研 究 を パ ー ソ ナ ル ・ ネット ワ ー ク 研 究 の 中 に き ち ん と 位 置 づ け て 分 析 を 行 う こ と が , 最 善 の 策 で あると考える .パ ー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク 分 析 で あ れ ば , 孤 立 者 を 操 作 的 に 特 定 す る こ と が で き , 構 造 的 要 因 と の 関 連 を 考 慮 す る こ と が 可 能 で あ る . 以 下 に 孤 立 と パー ソ ナ ル ・ ネ ッ トワークについての先行研 究を概観し,孤立をパーソナノレ・ネットワーク研究の一部として位置 づ け た あ と , 課 題 の 設 定 を 行 う .
1.1
先 行 研 究
1. 1. 1
孤 立 の 研 究
ま ず こ こ で 孤 立 の 定 義 に つ い て 確 認 し て お く . 孤 立 に 近 い 概 念 と し て 孤 独 が あ る が , 孤 立 は 「 人 間 関 係 を 喪 失 し た 状 態
Jな ど 客 観 的 状 態 を 表 す の に 対 し , 孤 独 は 「 人 間 関 係 の 欠 損 ま た は 消 失 に よ り 生 じ る 否 定 的 な 意 識
Jな ど 主 観 的 状 態 を 表 す
(Townsend1963: 188= 1974: 227;石田
2011:73) 6)本 稿 で も こ の 定 義 を 採 用 す る が , こ こ で い う 孤 立
と は 社 会 的 な 関 係 か ら の 孤 立 を 表 す た め , 社 会 的 孤 立 と 同 義 と 捉 え う る.
い く つ か の 先 行 研 究 で は , ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト の 有 無 を 孤 立 の 指
標 と し , 孤 立 と 属 性 と の 関 連 を 指 摘 し て き た の . 河 合 克 義 は 東 京 都 港
社 会 学 論 考 第
33号
区
(1995年 ,
2004年) ,神奈川 県 横 浜 市 鶴 見 区
(2006年)における 単身高齢者を対象とした調査において,
i病気など緊急時に誰も来てく れ る 人 が い な し リ 状 態 を 孤 立 状 態 と し て い る . こ れ に 該 当 す る 単 身 高 齢者の割合は,港区で
1割半,鶴見区で
3害JIと非常に高くなっている.
孤立状態にある人は,未婚者や子どものいな い人において割合が高 く,
親族とのつながりが希薄で,
6割 の人は近所づきあいがあまりない
.また,低所得者や民間賃貸住宅居住者でその出現率が高くなることを 指摘している.孤立状態と階層や貧困との関連がみられることから,
高 齢 期 時 点 で の 状 態 だ け で な く , 生 涯 の な か で の 労 働 と 生 活 の 不 安 定 性 に 目 を 向 け る 必 要 を 訴 え て い る ( 河 合
2009).石田光規は
2003年 版
JGSSのデータを用いて孤立について分析を 行っている.石田は「重要なことを話したり,悩みを相談する人たち」
を挙げてもらう質問項目に対し, 1人もあげていない人を,情緒的関 係 を 喪 失 し て い る 人 , す な わ ち 孤 立 者 と し て い る . 孤 立 の 要 因 と し て 機会(家族,家族外活動,居住地域),資源(経済的資源,学歴,健康 状態) ,属性(性別,年齢)の
3つ を あ げ て い る . こ れ ら を 独 立 変 数 としてロジスティック回帰分析を行い,①離別または死別による配偶 関係の喪失は強い影響を与える,②属性を背景とした社会的不平等が 存 在 す る , ③ 居 住 地 の 都 市 規 模 の 影 響 が 存 在 す る , と い う 点 を 明 ら か にしている.そして,調査対象者の半数は家族・親族以外に情緒的サ ポ ー ト の 関 係 を 保 有 し て い な い こ と か ら , 家 族 ・ 親 族 は い ま だ に 情 緒 的サポート関係の中心に位置しているという.その一方で,孤立者の
9割 以 上 は 家 族 と 同 居 し て お り , 同 居 家 族 に さ え も 頼 れ な い 状 況 の 進 行 を 示 唆 し て い る . 石 田 は , 属 性 を 背 景 と し た 社 会 的 不 平 等 の 存 在 を 指摘し,男性や高齢者を関係弱者としている.注目すべきは,ネット ワークのジェンダー差である
.男 性 で は 婚 姻 関 係 の 有 無 , 女 性 で は 友人関係形成の機会が重要で、あり,これが孤立にも影響を与えていると する(石田
2011).これらの孤立に関する研究から,階層や貧困などの社会的経済的な 条 件 や ジ ェ ン ダ ー な ど の 個 人 属 性 が 孤 立 状 況 に 対 し て 大 き な 影 響 を 与
‑4
一
えていることがわかる.また,子や配偶者といった親族関係や近所づ きあいなどの関係資源を狙立変数とし,これが孤立に与える影響も指 摘されてきたのである.
1. 1. 2
パーソナル・ネットワーク
パーソナル・ネ ッ トワー ク研究では居住 地 の特質や個人を独立変数 として,ネットワークに対する効果を明らかにしてきた
C.S.Fischerは都市度とパーソナル・ネットワークの関係についての分析のなかで,
性別,学歴,所得,エスニシティなどの個人的属性が パ ーソナル・ネ ッ トワークに 影 響 を 与 え る と と も に , 都市度 もまた,独立してパ ー ソ ナル ・ ネットワークに影響を与えていることを明らかにした.
Fischerはこの研究のなかで,ライフサイクル段階が男'性と女性のネットワー クに対し異なる帰結をおよぼしているとし,高齢であるほど社交的な 活 動 が少なく,ネットワークが小さくなり,男性は特にこの傾向が強
く表れるとしている
(Fischer1982 = 2002) .この
Fischerの研究に触発されて日本でもパーソナル ・ ネットワー クの実証研究が展開されている.大谷信介は中園地方・四国地方の諸 都 市 に お け る 研 究 で , 都 市 度 と 友 人 ネ ッ ト ワ ー ク の 関 連 に つ い て
Fischer仮説を 支持し,個人の属性とネッ トワークの規模との関連を 明らかにした.それによれば,ネットワークの規模は,女性より男性,
未 婚 よ り 既婚で大きく,学歴・収入の高さや居住年数の長さに正の関 連を持ち,持ち家の人のほうがそうでない人よりも大きいということ である.また,学歴の高い人ほど友人とのつきあいが多く,親せき・
近 所 の 人 と の つ き 合 い が 少 な い こ とも明らかとなった(大谷
1995).高齢者のパーソナル・ネットワーク研究は,
1980年代中旬以降,老
化のイメー ジの中 心であ った 「孤独」や隠居慣行などの消極的生活態
度 が 変 化 してきていることを明らかにしてきた.高齢期をアクティブ
エイジどして捉えなおし,そのネッ トワー クの豊富さを強調する傾向
が見られる.例えば,金子勇は都市高齢者の生きがいと住縁に関連が
認められたことから,地域での積極的な高齢者の役割形成を期待して
号
いる(金子
1987).前田信彦は,高齢者のパーソナル・ネットワーク からみれば,高齢者の孤立化というイメージは当てはまらす,多くは 友 人 を 中 心 と し た 多 様 な ネ ッ ト ワ ー ク を 構 成 し て い る と す る ( 前 回
2006: 153).退職後の高齢者の パ ーソナル・ネットワークの再編について,森岡 清 志 は 定 年 到 達 者 と 退 職 者 を 対 象 と す る 調 査 結 果 か ら 次 の よ う な 知 見 を導いている .第
1に,職縁・社縁の縮小化・希釈化,第
2に男性に おけるネットワークの縮小と,女性における職縁以外のネットワーク の活性化,第
3に地域社会の重要性の増大と地域社会における友人ネッ トワー クの展開である(森岡
1994:167).さらに森岡は,親しい人 びとの外に拡がるネットワーク,拡大パ ーソナル・ネ ットワ ー クを年 賀 状 を 手 が か り と す る 事 例 分 析 か ら 捉 え て い る . こ の な か で , 親 族 や 友人の居住地の距離とかれらとの接触頻度が高い関連を有するとし,
このことが親しさの程度を決定する上で大きな効果を持つこと,また,
都 市 の 諸 機 関 の 利 用 を 通 し て ネ ッ ト ワ ー ク が 再 編 ・ 維 持 さ れ る こ と を 示した(森岡
2001:166).以上の先行研究から, パ ーソナル・ネットワークは性別,居住年数,
居住形態,社会的経済的地位などの個人属性から影響を受けるという ことがわかる.本稿が対象としている高齢期の パーソナル・ネ ッ トワ ークは,職縁を大幅 に 減 ら し , 居 住 地 の 近 い 親 族 や 友 人 , ま た は 近 隣 との関係を増やしていく変化の過程にある.この変化に対して,属性 的 要 因 の み が 影 響 を 与 え る の か , ま た は , 地 域 の 活 動 が 影 響 を お よ ぼ
しえるのかは,本稿にとって重要な論点である.
1.
2 研究課題
本稿では,高齢者の孤立と地域活動との関連を捉えたいわけである が,孤立を扱った研究においても,高齢者のパーソナル・ネットワー クを扱った研究においても,地域活動への参加が孤立を防ぐために効 果 を も つ の か ど う か , こ の 点 を 扱 っ た も の は な か っ た . そ れ に も か か わ ら ず , 高 齢 者 の 孤 立 の 対 策 と し て , 地 域 活 動 の 推 進 が 常 に さ け ば れ
6
ているのである.このような状況から,孤立と地域活動との関連につ いて,あらためて問い直すことが求められているといえる.
ここで,孤立状況をどのように操作的に特定するかが重要な課題と なる.パーソナル・ネットワーグ研究において個人のパーソナル・ネ ットワーク量は,主に
2種類の方法で測定されてきた.
1つは
Fischerの よ う に 生 活 課 題 に 対 す る 支 援 者 の 数 で 把 握 す る も の (
Fischer1982=2002) ,もう 1 つ は 親 族 や 親 し い 友 人 の 数 を あ げ て も ら い そ れ を カ ウ ン ト す る も の ( 森 岡 編 2000) で あ る . 孤 立 の 研 究 を 行 う う え では,この
2つ の 方 法 に よ っ て 測 定 さ れ る も の を 識 別 す る こ と が 重 要 である.前者はソーシヤノレ・サポート量を表していると捉えることが でき,このサポート量が無い状態こそが孤立の状態であるといえる.
ゆえに,この方法で測定されたものをソーシャル・サポート量とし,
これが無い状態を孤立状況と特定する.一方,後者は関係資源、の量を 直 接 表 す も の で あ り , こ れ を パ ー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク 量 と し , 孤 立 に影響を与える独立変数として捉える.これで,石田の指摘にあった ようなパーソナル・ネットワーク量を保有していたとしてもソーシヤ ル・サポートが得られない状況も確認することが可能となるだろう.
孤 立 状 況 に 影 響 を 与 え る 独 立 変 数 と し て の パ ー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク量は,それ自体が個人の属性的,または社会経済的要因に左右され ており,特に高齢期には再編過程にある変数である.そこで,このよ うな属性的要因を統制したうえで,地域活動がパーソナノレ・ネットワ ークに 影 響 を 与 え て い る の か に つ い て も 見 て み る 必 要 が あ る . そ の 上 で , 地 域 活 動 が 孤 立 回 避 に 貢 献 し て い る の か , ま た , 地 域 活 動 が 活 発 な地域は孤立を防ぐことができているのかを検証していく.
本稿で確認すべき分析枠組みをモデノレで示したのが図
1である.こ の図に沿いながら,以下に仮説・課題を設定する.
( a ) …高齢者は居住地の近い親族,友人,近隣との関係を増やすなど,
ノ
fー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 再 編 過 程 に あ る . そ の た め , 近 隣 と の 接
触機会となる自身の地域参加状況は,パーソナノレ・ネットワーク量に
影 響 を 与 え る の で は な い か
(3節).
社 会 学 論 考 第
33(b)
…パーソナル・ネットワーク量の孤立への影響を単純に見たいので はなく,地域参加によって培われたパーソナル ・ ネットワークによる 孤立への影響を見たいので,ここでは探索的な分析を行う. ( a ) の地 域参加によって増えるパーソナル・ネットワークは近隣との関係であ る.この近隣との関係が孤立を回避できるか否かを聞いたい.そこで,
地 域 の 中 に 支 援 を 期 待 で き る 高 齢 者 ( 孤 立 回 避 可 能 な 近 隣 と の 関 係 保 有 者 ) と 孤立 している高齢者の地域参加状況とパーソナノレ・ネ ッ トワ ーク量を比較し,
(b)の影響を考察する
(4節)•(c)
ー・ここでは,ミクロレベ ルではなくメゾレベルの効果を分析するこ とにしたい.地域レベルの活動の集合効果が孤立状況に対し影響を与 えうるものであるのかを確認するため,地域活動が活発な地域とそう でない地域について,孤立の出現率を比較する (5節).
(a) (b)
地 │ ご │ パ ー ソ ナ ル わ ト ワ ー ク ト 一 川 │
域 I I
"5LI
参 I
(c)I
加 │ I
図 1 地域参加 ,パ ーソナル・ネットワーク量 ,狐立の関係モデル
2
分析方法
( 1 ) データ
本稿で扱うデータは,
2009年
9月にせたがや自治政策研究所と首 都 大 学 東 京 が 共 同 で 実 施 し た 「 地 域 の 生 活 課 題 と 住 民 力 に 関 す る 調 査
'09Jの 結 果 で あ る . 調 査 は 郵 送 法 ( 無 記 名 自 記 式 に よ る 郵 送 配 布 の郵送回収)によって実施された.母集団は
2009年
8月
1日 時点で
20才以上
75才未満の世田谷区に住民票を有する男女である.年齢に よって層化し,各層から系統抽出法で無作為に標本を抽出した.標本 数 は
10,
000(20~34 才 3 , 600 , 35~74 才 6 , 400) で,回収数は 5 , 467 ,
うち有効回収数は
5,
447(回収率
54.67%,有効回収率
54.47%)であ
口 ︒
った.層別の内訳は
20"'34才で有効回収数
1,
390(有効回収率
38.6%),
35"'74才で有効回収数
4,
040(有効回収率
63.1%)となっている
8)分析において高齢者とは前期高齢者に分類される
65才以上
75才未 満の者を指す.
Fischerがし、うように,ライフサイクル段階によって パーソナル ・ネットワーク 量,ソー シャル・サポ ート 量は異なり,ま た 男 女 に よってもこの特徴が異なることが予想される.高齢者の状況 を相対的に捉えるために,パーソナル・ネットワ ー ク量やソーシヤノレ・
サ ポ ー ト 量 を 年 代 別 に 比 較 し た い . 年代別に比較を行う場合,回答数 の分布も考慮し,
35才未満
(n=1390),
35・
45才未満
(n=846),
45・
55才未満
(n=924),
55‑65才未満
(n=1162),
65'75才未満
(n=1108)の
5つのカテゴリーで行う.有効回収数が多いため,年代別男女別に 分けて分析を行うことも可能である.
( 2 ) ノ号ーソナル・ネッ トワーク
パ ー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク は , 次 の よ う な親しい人びとの合計人数 で示される .調 査 票 の 設 問 に お い て , 子 ど も と , き ょ う だ い ( 配 偶者 きょうだいを含む)は居住地の時間的距離別(同居を含む)にその人 数 を 聞 い ている.また親しい親せき,親しい友人についても居住地の 時間的距離別(同居を含む)にその人数を聞いている. r 近隣づきあい」
については, r 立ち話をする人J, r 家 にあがって話をする人 j の人数を 足した数とする.
パ ー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 中でも,子どもやきょうだいは多くの 場合,親密なネットワークに含まれる. したがって,子どもやきょう だいは保有量に影響されやすい.そこで,これらをのぞき親しい親せ き,親しい友人,近隣づきあいの人数を合計し,親密なネットワーク 量 を 算 出 した.合計したところ,分布にばらつきが生じたため ,合計 値に
1を足して対数変換9)し,これを「親密ネットワーク量
Jとする.
( 3 ) 孤立
ソーシヤル・サポ ート については,
Fischerと同 様に相談,親交,
実用的という
3つ の支援機能に対応した生活課題に対して,同居の家
族 以 外 で 頼 め る 人 が い る か ど う か を 聞 い た 設 問を使用する.生活課題
社 会 学 論 考 第
33は「悩みを相談できる J ["資金運用などの相談ができる J ["日頃から話 したり,出かけたりする
J["留守を頼める
J["家族の入院時に手伝いを 頼める
J["専門家を紹介しで くれる
jの
6つである . これらの質問群 に対し, ["気軽に頼める人がいる J ["気軽とはいえないが頼める人はい るJ["頼める人はいなしリの選択肢の中から「頼める人はいなしリとし た回答回数の合計を「孤立得点」とする.すべての生活課題に対して
「 頼める人はいなしリと回答した人は,点数が
6点となる.この「孤立得点
J6点 の 人 を 「 孤立状 況
jにある人と特定する
10)( 4 ) 地域参加状況
地域との関わりは,地域の行事にどの程度参加しているかを表す「地 域活動参加度
Jと「地域組織への加入の有無」によって測定する["地 域 活 動 参 加 度 」 は , 地 域 の お 祭 り や , 地 域 清 掃 , 防 災 訓 練 な ど の
10項目の活動
11)について, ["必ず行く」場合に
3点, ["できるだけ行く
j場合に 2点,それ以外には 0点を与え,各項目の得点を合計した数値 として表される.合計得点は
Oから
30までの値をとるが,
8点以上が 外れ値とな ったため,
0点をそのままとし,
2点を
1点 , 3~4 点を 2 点" 5~6 点を 3 点, 7~8 点を 4 点,
9点以上を
5点として再得点化 した
12)高齢者の得点の分布は,
0点
47.9%,
1点
15.3%,
2点
13.7%,
3点
7.7%,
4点
4.3%,
5点
11.1%となっている .
「地域組織への加入の有無
jにつ い て は , 伝 統的な地域組織である 町内会・自治会への加入
13)と,課題別の活動や個人の趣味的関心から 活動を行う組織への加入を地域組織への参加の指標として活用する.
後者については,各団体への加入率が低い
14)こともあり,ボランティ ア・ NPO ・市民活動などの団体やサークノレ,スポーツのサークル,趣 味や文化のサークノレの
3つのうちいずれかへの加入をもって, ["課題 別・趣味別活動
Jへの加入とする .回答者のうち高齢者の町内会・自 治会加入率は
63.9%,課題別・趣味別活動への加入率は
53.1%である.
以上のように設定した「パ ーソナル・ネットワークj, [ " 孤 立 j , [ " 地 域 参 加 状 況 」 の 関 連 を 分 析 し , 高 齢 者 の 孤 立 状 況 と 地 域 の 役 割 に つ い て考察していく.
‑ 10 ‑
社 会 学 論 考 第
33号
2012.11 3パーソナル・ネットワーク量
3. 1
年代別パーソナル・ネットワーク量
高齢者の パーソナル・ネ ッ トワーク量の変化を知るために,まずは 年代別に「きょうだい数(配偶者きょうだい数を含 む)J , r 親 し い 親 せ き数J, r 親 し い 友 人 数 J, r 近 隣づ きあい
jの人数を比較する.
4つの 変数についてそれぞれ分散分析を行い,平均値を比較したのが表
1である.
表
1年代別ネットワーク量の平均値および一元配置の分散分析結果
きょっだい数 親しい 親せき 親しい友人 近隣づきあし 、
男性 女 性 男 性 女性 男性 女 性 男性 女 性
35才未満
1.68 1.71 3.57 3.11 13.57 10.94 1.20 1.21 35‑45才未満
2.20 2.16 2.64 2.47 9.70 9.78 1.50 2.95 45‑55才未満
2.42 2.49 2.75 2.12 9.65 8.63 2.13 2.50 55455才才未未満 満
3.32 3.50 2.38 2.17 7.19 7.59 2.19 3.42 65‑7 4.36 3.68 2.08 1.65 6.51 5.75 2.21 3.54*** ホ** *** *** *** *** ** **本
**p<0.01 *** p
く
0.001「きょうだい数」は実数であるため,年齢が上の世代のほうが,多 いというのは納得のいくところである r 親しい親せき」について,男 性は 一貫して上の世代のほうが少なくなっているが,女性は
55・
65才 未 満 で ひ と つ 前 の 世 代 よ り 少 し 多 く な っ て お り , 定 年 後 の 親 せ き と の つきあいが,女性では増えたとする先行研究と合致する(森岡
1994:163
・
5).しかし,
65‑75才未満では大きく減少している r 親 し い 親 せ き」は女性よりも男性のほうが,すべての年代を通して数が多くなっ ており,これは先行研究の知見と異なる
15)(大谷
1995:133・
4;中尾
2002: 22・3).「親しい友人」についても上の世代ほど大幅に減少しており,
35才 未満と
65・
75才未満を比較すると男女ともに半数以下となっている.
「近隣づきあい」だけは,上の世代のほうが多くな っている.これは,
高 齢 者 が 男 女 共 に 地 域 で の ネ ッ ト ワ ー ク を 活 性 化 さ せ る と す る 先 行 研 究と合致している(森岡
1994).また,男性より女性の近隣づきあい が多いことは,大谷
(1995:134)の結果と 一 致する.
ここで,高齢者にとって重要で親密なネ ッ トワークに数えることが
できる「子どもの数J を確認しておくことにする.高齢者のうち,子 どものいない人が
15.9%,
1人
17. 4 % ,
2人
48.6%,
3人
16.8%,
4人以上
1.4%で,平均値は1.
7人となっている.
高齢者のパーソナル・ネットワークをみると,他の年代と比べ「き ょうだい数」の多いことがわかる.子どもの数は平均して約
2人であ る I 親 し い 友 人
J数は若い世代に比べれば大幅に減少してはいるもの の,人数でいえば一番 多 く , 重 要 な ネ ッ ト ワ ー ク で あ る こ と を う か が わせる
I親しい親せき」数が少なく,
I近 隣 づ き あ し リ が 多 い こ と か ら,実際に親しくつきあう親せきが少なくなり,一方身近にいる近隣 との交流が増えるのであろう.先行研究でも確認したとおり,高齢者 は,近くに住む人と親しい関係を築くようである.次に親しい人びと の居住地の距離別ネットワークを見てみよう.
3. 2
親 し い 人 び と の 居 住 地
表2
は「親しい親せき」と「親しい友人」の合計数について,居住 地までの時間的距離別年代別に比較したものである.まず,性別によ り異なる特徴を示していることがわかる.男性では,全てのカテゴリ ーにおいて,高齢者の数値が
35才未満の数値の約半分にな っている.
1
時間以内の近距離では,
55・
65才未満よりも
65‑75才未満のほうが
「親しい親せき・友人」の数が多くなっており,特に
30分以内では
0.5人も多くなっている .退職 後 に 地 域 に ネ ッ ト ワ ー ク を 増 や す 機 会 が増えるためと考えられる.
一方,女性では,
35才未満において
30分以内の場所に住む「親し い親せき・友人」が 一番少なくなっており,
2時間以上の場所で一 番 多くなっている.一方,
65・
75才未満の層を見ると
30分以内の人数が 一番 多 く な る . 女 性 の 場 合 , 結 婚 を 期 に 移 住 し て く る な ど
35才未満 では,近所の「親しい親せき・友人」が少ないが,その後近所で「親 しい人びと
jを増やしていく傾向を持つためと考えることができる.
いずれにせよ,
65‑75才未満では,男性も女性も
30分以内の親しい人 びとの人数が増しており,高齢期において親しい人びとを地域社会の
円L'EA
社 会 学 論 考 第
33号
2012.11表
2距離別「親せき・友人」合計数の平均値および一元配置の分散分析 結果
男性 女性
30
分以内
3時
0間 分 以 か肉 ら
121時時聞間か 以ら 内
2時間以よ
30分 以内
310時分間か以 ら 肉
21時時間間か以ら 内
2時間以上
35才来満
4.93 3.87 4.45 5.39 3.28 3.45 3.89 4.02 35‑45 F未 満
2.39 3.13 3.74 3.95 3.44 3.04 3.18 3.28 45‑55未満
3.51 2.42 3.10 3.61 3.90 2.30 2.78 2.74 55‑65 F未満
1.99 1.90 3.15 3.39 3.08 1.92 2.34 2.51 65‑75才未満
2.47 1.95 2.43 2.74 3.01 1.73 2.13 1.99キヰ本 ヨドキキ 本 * *本* *ホ *本* ホ** 調解刻ド* 本*p
く
0.01*** pく
0.001中で 再 編 成 さ せ て い る 可 能 性 が あ る .
3. 3
高 齢 者 の パ ー ソ ナ ル ・ ネ ッ ト ワ ー ク 量 の 規 定 要 因
親 し い 親 せ き , 親 し い 友 人 , 近 隣 づ き あ い の 人 数 か ら 算 出 し た 「 親 密 ネ ッ ト ワ ー ク 量 」 の 平 均 値 を 年 代 別 男 女 別 に 比 較 したのが表
3である.上の世代ほど, i 親 密 ネ ッ トワーク量」が少なくな って い る こ と が わ か る . ま た , 男 性 よ り 女 性 の ほ う が 年 代 を 通 し て 高 い 数 値 を 示 し て いる
16)表
3年代別に見た「親密ネットワーク 量」の平均値および一元配置の分 散分析結果
男性料* 女性料*
平均値 度数 標準偏差 平均値 度数 標準偏差
35才未満
1.088 477 0. 4
14 1.088 893 0.328 35‑45才未満
0.914 354 0.429 1.088 477 0.320 45‑55才未満
0.934 414 0. 4
36 1.021 496 0.354 55‑65才未満
0.914 501 0. 4
00 1.025 626 0.335 65‑75才未満
0.891 444 0. 4
27 0.948 583 0.363* * *
pく
0.0013.2
で も 確 認 し た よ うに,高齢 者 は 近 く に 住 む 人 と の 関 係 を 強 め る
傾 向 も つ ため,近隣と接する機会となる地域参加 を多く行う人ほど「親
密ネッ トワー ク量
Jが 多 く な っ て い る の で は な いか .高 齢 者 の 「親密
ネ ッ ト ワ ー ク 量 j を 従 属 変 数 と し , 重 回 帰 分 析 を 行 っ て そ の 規 定 要 因
を 探 っ て みよう.統制 変 数 と し て , 子 ど も の 有無
17)(子ども無 =0 ,子
ども有 =1 ) , 居 住年数,持ち家か否か(賃貸=0 ,持ち家=1 ) ,教育年数
33
号
(9
,
12,
14,
16年) ,世帯年収
(200万未満から
2000万以上までを
8つのカテゴリーに分け,その中央値を割り当てた数値) ,主観的健康 観 ( 健 康
=4, ま あ 健 康
=3, あ ま り 健 康 で な い
=2, 健 康 で な い
=1)を 用いる.これに, i 地域活動参加度
Jと , i 町内会・自治会
j・「課題別・
趣味別活動
jへの加入(未加入
=0,加入
=1)を加え,地域参加状況が
「親密ネットワ ー ク量J に対し影響があるかを見てみることにする.
表
4より,男女ともにネットワークに関連する属性的要因を統制しても「地域 活動参加度J.
i町内会加入 J,
i課題別・趣味別活動加入」
の 地 域 参 加 状 況 を 表 す 変 数 が 「 親 密 ネ ッ ト ワ ー ク 量
Jに強い影響を持 っていることがわかる.これ以外の「親密ネットワーク量
Jに影響を 持 つ 属 性 は , 男 女 で 異 な っ て い る . 男 性 で は , 子 ど も が い る 人 , 教 育 年 数 が 長 い 人 で 「 親 密 ネ ッ ト ワ ー ク 量
jが 高 く な る が , 女 性 で は , 教 育年数,居住年数,主観的健康観が影響している.
近 隣 と 接 す る 機 会 を も た ら す 地 域 活 動 や 地 域 組織 へ の 参 加 は , 個 人 の属性や社会経済的条 件 を 統 制 し で も , や は り 高 齢 者 の 「親密 ネット ワーク量
Jに影響をもたらしていた.図
1の(a)において,地域参加は 高 齢 者 の パ ー ソ ナ ル ・ ネットワーク量に正の影響をおよぼしていると いえる .
表
4r 親密ネットワーク 量」を従属変数とした重回帰分析
65‑75才未満
男性 女 性
子の有無
0.112*
0.011教 青 年 数 0.072 + 0.088 + 世 帯 年 収 0.007 0.004 居 住 年 数 ‑0.012 0.099 + 持ち家 0.010 ‑0.032
主観的健康観
0.053 0.100*
地域活動参加度
0.253* * *
0.219* * *
町内会加入
0.096 + 0.131* *
課題・趣味別活動
0.181* *
0.221* * *
R2
乗
0.162* * *
0.206* * *
空ラス数 347 393
+p
く
0.1*
pく
0.05* *
pく
0.01* * *
pく
0.001 14 ‑4
孤立状況とサポート源
4. 1
孤立得点
高齢者の孤立状況を確認するため, I 孤 立 得 点 」 を 年 代 別 に 比 較 し たのが,表
5である.カテゴリー数が多いため,ここでは男女合わせ て分析を行っている.全体では,
I孤 立 状 況
Jにある人が
3.8%である のに対し,
65・
75才未満では
5.8%と高くなっている.
35才未満にお ける「孤立状況」の人の割合に比べて,高齢者世代では倍以上の割合 で孤立している人がいることがわかる.また,高齢の世代のほうが
6点の割合が高くなるだけでなく,
0点の割合も若い世代より高くなっ ている.支援状況を見ると,高齢の世代ほど,多くの場合で「頼れる 人 が い る 」 人 と , ど ん な 場 合 で も 「 頼 れ る 人 が い な い
j人 に 極 端 に 分 かれてくるようである.
表
5年代別孤立得点
孤豆
1尋 高 合 計
。
2 3 4 5 6 35才 未 満
529 316 224 153 102 31 35 139038.1
略
22.7覧 16.1見
11 .
0首
7.3% 2.2% 2.5首
100.0弛
35‑45才 未 満
370 203 99 82 43 22 27 84643.7
也
24.0也
11.7弘
9.7也
5.1弛
2.6% 3.2% 100.0% 45‑55才 未 満
374 192 116 101 60 44 37 92440.5
首
20.8首
12.6見
10.9% 6.5% 4.8百
4.0% 100.0略
55‑65才 未 満
529 211 168 106 66 41 41 116245.5
也
18.2也
14.5% 9.1唱
5.7首
3.5首
3.5唱
100.0% 65‑75才 未 満
497 169 138 103 66 71 64 110844.9% 15.3% 12.5
也
9.3也
6.0% 6.4百
5.8% 100.0%合 計
2299 1091 745 545 337 209 204 543042.3% 20.1
弛
13.7也
10.0百
6.2也
3.8首
3.8% 100.0%p く
0.001ここで,
65・
75才未満の高齢者で孤立状況にある人の属性を確認し ておくことにする.男女比では,男性
37人
(58%),女性
27人
(42%)となっており,
6対
4の割合で男性が多1t̲¥ .世帯の状況は,単身世帯 が
18%,夫婦のみ世帯
33%,夫婦と子ども世帯
40%となっている.
単身世帯である 11 人 に つ い て は , 世 帯 内 に も 世 帯 外 に も 支 援 を 頼 め
る人がいない完全な孤立の状態であることが推察される.世帯年収は
200万円未満が
28%で,高齢者全体では
20%で あ る こ と を 考 え れ ば
高 い 割 合 に な っ て い る . 賃 貸 住 宅 に 住 む 人の割合も
31%と,高齢者全 体 の
20%に 比 べ て 高 い 割 合 で あ る . 先 行 研 究 ( 河 合
2009;石 田
2011)と同様に,男性や階層の低い人において, 孤立 状 況 が 見 ら れ る 傾 向 に あるといえる だ ろう.
4. 2
ソ ー シ ヤ ル ・ サ ポ ー ト 供 給 者
次 に , 高 齢 者 は 誰 に 支 援 を 頼 め る の か を 見 て い く こ と に す る . 生 活 課 題 を 達 成 す る 上 で , 支 援 を 期 待 で き る 人 の 有 無 を 問 う 上 述 の 質 問 群 で 「 気 軽 に 頼 め る 人 が い る
JI 気 軽 と は い え な い が 頼 め る 人 は い る
Jと 答 え た 回 答 者 に は , ど の よ う な 人 に 頼 み や す いの か , 最 も 頼 み や す い 人のカテゴリ ー を
1つ だ け 選 択 して も ら っ て い る .
6聞の う ち 頼 み や す い人 に 選 ば れ た 回 数 を カ ウ ン トし, 年代 ご とに平 均 値 を比べたのが,
表 6 ,表 7である.
表
6支援を誰に頼めるか一一年代別平均値および一元配置の分散分析結 果(男性 )
親・子 近 所 親せき 友人 職場
35才未満
0.718 0.162 0.882 2.083 0.381 35‑: 4
5才未満
1.219 0.188 0.754 1. 4
29 0.608 45‑55才未満
0.762 0.298 1.041 1. 4
50 0.555 55‑65才未満
0.822 0.361 1.198 1. 4
49 0. 4
09 65‑75才未満
1.212 0.439 1.144 1.018 0.203* * * * * * * * * * * * * * *
* * *
pく
0.001表
7支援を誰に頼めるか一一年代別平均値および一元配置の分散分析結 果 ( 女 性 )
親・子 近 所 親せき 友人 職場
35才未満
1.009 0.131 0.970 2.275 0.307 35‑45才未満
1.338 0.258 0.888 2.235 0.265 45‑55才未満
0.824 0.275 1.146 2.144 0.305 55‑65才未満
1.084 0.339 1.295 1.964 0.168 65‑75才未満 1 .
515 0.5141 . 1
67 1.226 0.065* * * * * * * * * * * * * * *
* * *
pく
0.001‑16 ‑
33
号
2012.11親または子のカテゴリーを見ると,男女ともに
35才未満で最も低 くなっているが,
35・
45才未満で 一度上昇 し ,
45・65才未満では少な くなり,
65・
75才未満で上昇している.子育て期に親の支援を期待し,
50
代前後では,親が高齢化し自分が支える側となるため低くなり,
65才以上では子どもを頼りにできるようになるということであろう.
友人カテゴリーは年齢が上がるにつれ,男女ともに大幅に減少して いる.親せきカテゴリーは若い世代では選ばれる数が少なくなってい る.高齢世代のほうが確かに多いが,
55・
65才未満よりも
65‑75才未 満のほうが少なくなっている.頼る親せきも高齢
化してくるということだろうか.近所は若い世代から高齢世代にかけて徐々に上昇してい く.職場カテゴリーのみ,男女で異なる変化を示す
.男性は 35・45才 がピー クで,世代が上になるほど少なくなっているが,女性は就業率 と同様に
35才未満と
45‑55才未満で高くなっている.全体としては 男性のほうが職場に頼れる人が多く,このことは就業率が女性よりも 高いことを反映している.男女を比較すると,職場の人のカテゴリ
ー以外はすべて女性のほうが回答回数が多くなっている.
特に,高齢者に着目してみると,ひとつ前の世代より友人,親せき,
職場の人は少なくなっているのに対し,親
・子以外では近所だけが多 くなっている
. 3節の分析で見たように,高齢者は地域活動によ って ノぐーソナル
・ネットワークを増やしており,そこから得た近隣との関 係により,近所に支援をお願いできるようになっているのかもしれな い. しかしながら,近所からの支援を受けられるとした回答回数は,
子,親せき,友人の回答回数よりも半数以下であることには注意して おく必要がある.
それでは,近所の人にはどのような生活課題に対し頼れることがで きると回答しているのであろうか.高齢者のみを取り出して
,r 気軽に 頼める人がいる
Jr 気軽とはいえないが頼める人はいる」としたそれぞ れに対し,近所の人に頼めると
した割合を課題ごとに男女別にまと め たのが表
8,表
9である.これを見ると, r 一週間くらい家をあけるよ
ラなときに留守を頼める人Jにおいて,近所が高い割合を示している
ことがわかる . さらにいえば,気軽にというよりも気軽とはいえない が頼めるとする割合が高くなっている.このことから,近所に頼める 生活課題は,実用的な支援であり,しかも「気軽に頼める
Jとはいえ ない支援であるといえよう
表
8課題ごとの近所の人に頼める割合(男性)
気軽(~頼める人が
いる
気軽にとはいえな いが頼める人はい
. 宣 宣 ・司一 一A ム 且 墨.III ̲ Lリ
表
9課題ごとの近所の人に頼める割合(女性) 気軽に頼める人が
いる
気軽にとはいえな いが頼める人はい
'留守 │入院
E市 A . . . 日 山 目4. 3
支 援 を 頼 め る 人 を 地 域 に も つ 高 齢 者 と 孤 立 状 況 に あ る 高 齢 者 高齢者にとって,身近で、実用的な生活課題をお願いできる人が近所 にいるということはとても大きなことであろう.これが可能か否かは,
高齢者の孤立状況を左右する大きな要因であると考えられる .生 活 課 題 に 対 す る 支 援 を 近 所 に お 願 い で き る 人 は , 孤 立 状 況 に あ る 人 と 比 較 して,どのような特徴の属性を持つ人なのであろうか.また,地域参 加状況に違いがあるの だろうか.
6つの生活課題に対するサポー
ト源として
1回でも近所を選んだ回答者を「近所に頼める人 J とする.この「近所に頼める人 J と「孤立 している人J.それ以外の人びとの聞で,個人属性,地域参加状況,ネ ッ トワーク量の違いを平均値の差で見て いる のが表
10である.
男 性 は 近 所 に 頼 め る 人 と 孤 立 し て い る 人 の 個 人 属 性 が 大 き く 異 な っており,社会経済的地位や居住の状況が近隣とのつきあい方に影響 をおよぼしている可能性がある.女性は, 個人 属 性 に は 差 異 が 見 ら れ ないが,居住の状況には違いが見られ,特に主観的健康観に違いがあ ることは男性と異なる.これは,自分が健康で相手への支援が行える 場合に,相手の支援も期待することができるという,近隣関係におけ
18
表
10近所に緩める人・孤立している人に関する個人属性の平均値と一元 配置の分散分析
男性 女墜
近所f
=*liその他 孤立して 近所に頼
その他孤立して
める人 いる人
める人いる人
子どもがいる率
0.91 0.87 0.70 ** 0.86 0.81 0.78教 育 年 数
13.11 14.03 12.89 ホ* 12.37 12.64 12.16世 帯 年 収
550.63 687.11 469.74 ** 519.25 529.29 568.92居 住 年 数
25.78 23.13 21.38 本本 24.05 22.01 21.63 f+持ち家率
0.74 0.63 0.48 *** 0.72 0.60 0.62 ホ**主観的健康観
2.98 2.93 2.69 2.83 2.94 2.48 f*地域活動参加度
1.60 1.07 0.61 キヰ 2.13 1.37 0.45 ***町内会加入率 入率
0.70 0.64 0.471+ 0.67 0.63 0.56課 親 題 密 ネ ・ 趣 ッ 味 ト ワ 別 ー 活 ク 動 量 加
0.46 0.44 0.29 0.68 0.58 0. 4
6ホ4.03 3.34 2.03 *本本 3.92 3.46 1.55 判ドホ*
+p
く
0.1* pく
0.05*キp<0.01*** p<0.001る
E酬性の規範の表れではなかろうか.
近 所 に 頼 め る 人 と 孤 立 し て い る 人 の 地 域 参 加 状 況 を 比 較 し て み よ う.まず,地域活動参加度は男女ともに大きな違いが認められる.や はり地域活動への参加によって,支援を期待することができるような 近所の人と の関係を築き,孤立を緩衝させていると考えられる.
次 に , 地 域 組 織 へ の 参 加 に つ い て は 男 女 で 特 徴 が 異 な っ て い る . 男 性 で は , 町 内 会 加 入 率 が 「 近 所 に 頼 め る 人 」 で は
70%.r 孤立 して い る人
Jでは
47%で有意な差が表れたが,課題別・趣味別活動の加入率 に有意な差は見られなかった.反対に女性では,町内会加入率に有意 な差がなく,課題 別・趣味別 活 動 の 加 入 率 が 「 近 所 に 頼 め る 人
Jでは68 % なのに対 し.i 孤 立 している人
Jでは 46%と有意な差が見られる . 強制加入や自動加入といわれてきた町内会・自治会への 加 入 に は , 地 域の規範的,半強制的側面がし、まだ存在している.職場で多くの時間 を過ごして きた高齢男性にとっては,自分から手を挙げて 地域 に参加 す る こ と が 難 し い 場 合 が あ ろ う . 実 際 , 課 題 別 ・ 趣 味 別 活 動への加 入 率を見ると女性より男性のほうが大幅に低くなっている.その一方で,
半強制的加入の仕組みを持つ町内会・自治会への加入が,孤立を和ら げ,近所に支援を頼められるようになるという結果は大変興味深い.
反対に,女性は半強制的な 参加 の つ き あ い よ り も , 自 ら 手 を 挙 げ て 参
加 す る 組 織 の人びとに対して,お互い支援を しあえるような関係を築
きやすいということであろうか.
親 密 ネ ッ ト ワ ー ク 量 に つ い て も 男 女 共 に 近 所 に 頼 め る 人 と 孤 立 し ている人とでは大きな差が見られる .親密ネッ トワーク 量自 体 も 地 域 参 加 状 況 に 影 響 を う け て い た の で , 地 域 へ の 参 加 は , 近 所 へ の 支 援 期 待を可能にし,孤立を防ぐ役割を果たしている可能性が見てとれる.
これで,図 1 の ( b ) の孤立 に 対 す る パ ー ソ ナ ル ・ネ ットワ ーク量の 効果が確認できたわけである.
ここで,親密ネットワーク 量 に つ い て , も う 一 点 指摘しておくと,
孤立者においても,親密ネ ッ トワーク量が決して無いわけではないと いうことである.自ら「親ししリとして挙げた親せき・友人や近隣と の親密といえるネットワークを男女平均して
2人程度持っているので ある. しかしながらこの人たちは,さまざまな生活課題に対して誰に も頼ることができない状況となっているということ,この点がパーソ ナル・ネ ットワ ーク 量 と サ ポ ート量を識別して分析することによ って 浮かび上がってきた.
それはさておき,確かに孤立は性別や居住状況と関連があり,特に 男性では,社会経済的地位とも関連を持っていることがわかる. しか し,上述の結果から,地域参加を高めることによ って, 何 か し ら の 支 援 を 近 所 に 頼 め る 状 況 を 作 り 出 せ る 可 能 性 が あ り , 孤 立 状 況 を 回 避 で きるのではないかという点を読み取ることもできる.注意すべきは,
地域参加のもつ意味合いが男女で異なる可能性があるということであ る.孤立予防の地域活動を行う際には充分考慮すべきであろう.
5