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森林伐採による草原維持管理の作業負担軽減と草原再生 実施主体新宮牧野組合 実施場所阿蘇市新宮牧野 実施期間平成 23 年 7 月 ~ 平成 23 年 11 月 背景 ねらい新宮牧野は 阿蘇市山田地内の阿蘇北外輪山 大観峰の西 500m に位置し 総面積 272ha( うち野草地 138ha 放牧地

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活動報告(1)担当:牧野管理小委員会

様々な形で牧野の利用と維持管理を続ける

牧野利用と多様な形での維持管理の促進

①農畜産業による牧野利用の継続 ②様々な人々による草原維持管理の促進 ③利用や維持管理ができず荒廃が進む場所の再草原化 ④集落における草原とのかかわりの継続

全体的な評価

今回提出された「活動結果報告」33 件のうち、牧野利用 と維持管理に関連する活動は 20 件、そのうち主対象とな るのは 12 件でした。 各牧野組合では、牧野利用や維持管理の継続に向けて牧 野の状況にあわせた取り組みを行っているほか、地元の 人々が協力して草原維持管理を継続していくための機運 づくりの活動も行われ、報告内容は多彩になっています。 組合による野焼きを支援するボランティア活動は平成 24 年春で 14 年目をむかえ、ボランティア派遣数は年々増 加しています。今春はトラスト地の野焼きで死亡事故が発 生し、改めて安全対策強化に向けて検討がされています。 環境省による「牧野組合ごとのカルテ作成」はこれまで に 22 組合で実施。調査結果に基づき「輪地切り作業負担 軽減のための小規模樹林除去」や「野草地の利用を支援す る作業道整備」などの事業が行われ、草原維持・管理の継 続に貢献しています。 「あか牛肉料理認定店制度」では着実に認定店が増加。 全国的にあか牛肉の評価が高まる中、地元消費の拡大が課 題となっていますが、地域内では肉の不足が指摘されてい ます。 「政策提言のための農業環境政策研究の成果出版物の 作成」では、『生態系調和的農業と環境直接支払い』が出 版され、阿蘇草原再生を市民・国民的な取り組みとしてい くため、また恒久的な財源確保に向けて重要な活動として 評価されました。 7月の九州北部豪雨災害による土砂崩れや河川の氾濫 などによる被害に加え、草原も至るところ崩落や地滑りが 発生し、牛の被害も多発しました。自然の脅威を目の当た りにして、暮らしの安全性確保を第一に自然と人との共生 が改めて求められているといえます。 牧野利用・維持管理に関連する活動結果報告 NO 事業・活動名 ※担当 1 森林伐採による草原維持管理の作業負担軽減と草原再生 ● 2 ヤブ化した草原の再生による放牧面積の拡大 ● 3 草原再生事業「野焼き」 ● 4 牧野管理と地域住民への啓発活動 ● 5 長野牧野と地域の交流会 ● 6 牧野組合毎の牧野カルテ作成支援 ● 7 野焼き作業の省力化及び野草地利用を支援する作業道、歩道整備事業 ● 8 輪地切り作業軽減のための防火帯整備と小規模樹林伐採事業 ● 9 2011 年度秋の輪地切り支援ボランティア活動 ● 10 野焼き及び輪地切り支援ボランティア活動 ● 11 あか牛の流通・消費拡大の取り組み~阿蘇あか牛肉料理認定店制度~ ● 12 政策提言のための農業環境政策研究の成果出版物の作成 ● 13 阿蘇花野再生プロジェクト ステップⅡ ~放置人工林伐採による生物多様性豊かな草原の再生~ ○ 15 地域生物多様性保全活動(湿地の調査、保全活動) ○ 16 GIS による「草原自然環境マップ」 オペレーター育成講習会 ○ 24 草原の宝について学ぼう(草原学習及び野焼き体験) ○ 26 阿蘇草原再生フォーラム 2011 ○ 27 採草地保全、野草堆肥を利用した農産品の流通拡大に向けた活動 ○ 28 採草による未利用草地の再生 ○ 29 野草堆肥を用いた米の購入者との牧野交流 ○ ※NO は各活動の掲載番号に対応 =奨励賞を受賞した活動 ※牧野管理小委員会における協議の対象:●=主対象となる活動 ○=関連する活動 全体構想 取り組みの 内容

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森林伐採による草原維持管理の作業負担軽減と

草原再生

◆実施主体 新宮牧野組合 ◆実施場所 阿蘇市 新宮牧野 ◆実施期間 平成 23 年 7 月~平成 23 年 11 月 背景・ねらい 新宮牧野は、阿蘇市山田地内の阿蘇北外輪山、大観峰の西 500m に位置し、総面積 272ha(うち野 草地 138ha、放牧地 127ha、林地7ha)の牧野である。新宮牧野内の阿蘇市と小国の境にある7ha の 森林は伐採適期になっていたため、輪地切りの労力の軽減や延焼防止を図るとともに、伐採跡地を 野草地として再生することを目的として、森林の伐採を行った。雑木であるクヌギ・コナラ類の一 部は水源涵養として残し、伐採跡地の活用を検討中である。 実施概要 ◇小国境の植林地伐採による再草原化 ・実施内容:伐採適期になっていた植林地の伐採約6ha ※水源涵養林としてクヌギ、コナラ、ナラなどは残して伐 採した。 ・実施時期:平成 23 年7月 22 日~約 10 日間 ・実施主体:新宮牧野組合 ・伐採及び伐採木の処理:阿蘇市森林組合 ※7ha のうち 0.84ha は環境省による平成 22 年度小規模樹 林地除去事業で、残り約6ha を新宮牧野組合が伐採した。 ◇野焼きに向けた防火帯づくり ・森林伐採後、隣接する山林との間に作業道を兼ねた防火帯 を設置 ※防火帯幅8m、延長 250m、ブルで押して転圧 ・実施体制:新宮牧野組合員、ブルオペレーター1名、関西 学院大学の学生ボランティア(工事前の雑木片づけ) ※オペレーター等の費用は中山間地域等直接支払いの補 助金を活用。 成果 約6ha(環境省事業分を含めて7ha)を草原に戻すことにより、輪地切り延長短縮による省力化 (1km 程度)とともに、防火帯設置により野焼きの安全性確保が図れた。 水源涵養林としてクヌギ、コナラ、ナラなどを残すことで、斜面地の流土を防いでいる。 伐採地には、ベニバナヤマシャクヤク、ヤツシロソウ、ヒゴタイなど、長年眠っていた植物が少 しずつ復活してきている。 実施者の感想 伐採跡地では有害雑草であるセイヨウヤマゴボウの繁殖が多く苦況している。伐採木の運び出し や雑草処理等のためにも作業道の必要性を強く感じている。 対象地は保安林であるが、樹木の約 1/3 を占めていたクヌギ、コナラ、ナラなどを水源涵養林と して残すことで伐採が許可された。他の多くの組合が、材としての価値のない山を保全していくこ とに苦労している。保安林制度を解いて伐採ができるようにするため、草原特区の申請を進めてほ しい。 新宮牧野の森林伐採跡地

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ヤブ化した草原の再生による放牧面積の拡大

◆実施主体 池ノ窪牧野組合 ◆実施場所 南阿蘇村 池ノ窪牧野 第二牧野内 ◆実施期間 平成 23 年 4 月~平成 24 年 2 月 背景・ねらい 池ノ窪牧野(南阿蘇村)は、阿蘇中央火口丘南斜面、烏帽子岳の南西に位置する総面積 136ha(う ち野草地 95ha、牧草地 41ha)の牧野で、有畜農家 37 戸が、あか牛繁殖牛を中心とする放牧に利用し ている。牧野は、池ノ窪、第二牧場、第三牧場の3箇所からなるが、第二牧場内では斜面地など管 理が行き届かずヤブ化が進む箇所があるため、雑木伐採を行うことで、放牧地としての利用面積の 拡大を図った。 実施概要 ◇ヤブ化した草原の再生①(H23 年4月~7月) ・4月 21 日:雑木伐採 7.53ha(作業は森林組合) ※環境省の平成 22 年度事業 ・4月 22 日:雑木処理(組合/有畜農家と支援ボランティ ア 20 名で実施) ※放牧前に人力とユンボ利用で伐採木を谷に集めた。 ・7月 24 日:伐採地の野焼き(地元の人々約 40 名で実施) ※数時間かけて焼いたが、脂気のない木だったため殆ど 燃えなかった。 ◇ヤブ化した草原の再生②(H24 年2月) ・雑木伐採:5.17ha(作業は森林組合) ※環境省の平成 23 年度事業 ・雑木処理(南阿蘇村の支援によりバックホーで伐採木の 処理、オペレーター8人・日+全組合員 37 戸が参加) ◇放牧利用のための牧柵整備 ・雑木伐採したエリアを放牧地として利用するため、組合 で牧柵を整備。 ※整備延長:300~400m程度 成果 雑木除去による草原再生面積:12.7ha ※①②計 ①の伐採地の野焼きでは谷間に集めた伐採木はほとんど燃えなかったが、伐採跡に草が生育し、 放牧に利用できている。雑木伐採後、放牧利用のために必要な箇所に牧柵を整備することにより、 利用面積が拡大し、放牧頭数も増加している。 実施者の感想 雑木伐採跡地を放牧利用するためには牧柵などの整備が必要な場合が多いので、そこまで含めた 支援制度が検討されるといい。牧柵整備等に対して個別の補助金はあるが、申請してから時間がか かるため今回は組合で整備した。牧野組合が管理する放牧地の周辺には集落管理の野草採草地があ るが、ほとんど採草利用されなくなっている。放牧に利用できればいいが、入会権があるため転用 は難しい状況である。また、今年の集落の野焼きは雨模様だったためうまく燃えなかった。来年は 古野になって野焼きの実施が大変になることが予想される。 ヤブ化が進む草原 雑木伐採により草原へ

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草原再生事業(野焼き)

◆実施主体 下磧牧野組合 ◆実施場所 南阿蘇村 下磧牧野 ◆実施期間 平成 23 年 11 月中旬~平成 24 年 3 月 背景・ねらい 下磧牧野は、南阿蘇村の北東部、中央火口丘の南側に位置する総面積 68ha(うち野草地 30ha)の牧 野である。毎年、ボランティアの支援を受けながら、野焼きなど維持管理作業を行うことで草原保 全・再生に貢献するとともに、周年放牧により年間を通じて草原を活用している。また、(社)日本 草地畜産種子協会から、放牧畜産を先駆的に取り入れている「持続型畜産展示牧場」として指定さ れており、様々な草原利用の受け入れを行うことで阿蘇の草原のPRに努めた。 実施概要 (1)牧野全域での野焼き実施 ・防火帯作り H23 年 11 月 12 日:組合員4名、支援ボランティア 16 名、計 20 名 ・牧野組合の野焼き H24 年 2月 12 日:組合員4名、支援ボランティア 36 名、計 40 名 H24 年 3月 25 日:組合員6名、支援ボランティア 33 名、計 39 名 ・集落の野焼き H24 年3月:集落住民 42 名で実施 (2)牧野視察等の受け入れ:年間延べ 250 人 ・テレビ番組、広告、報道関係取材、行政関係機関の視察 のほか、平成 24 年5月には、地元小学校の草原学習の 受け入れを行った。 成果 今年は天候が悪く野焼きの日は大変風の強い日だったが、 事故もなく無事終了した。野焼きは2回にわたって実施し、 それにより緑の草原が保たれている。 報道関係の取材や子どもたちの草原学習の受け入れも大 変好評であり、草原やあか牛の普及・PRに貢献できた。 実施者の感想 野焼きは天候によって日程の設定が難しい。安全に楽に野 焼きを行えるよう、組合では 10 年以上前から防火帯を兼ね た管理道づくりを進めてきた。長期的な視点で牧野の維持管 理の継続を考えると、作業が楽にできるような基盤づくりを 進めることが第一である。 あか牛が注目されていることもあり取材や視察が非常に 増えている。その対応で組合員の負担が増え仕事への影響も あるため、組合では取材等の受け入れを有料化(基本料金1 回 2,000 円)にすることとした。 下磧牧野での周年放牧の様子 白水小学校の草原学習 草原再生ロゴマーク入りの看板でPR

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牧野管理と地域住民への啓発活動

◆実施主体 山本清澄(的石原野組合) ◆実施場所 阿蘇市 的石牧野 ◆実施期間 平成 23 年 2 月~平成 24 年 3 月 背景・ねらい 的石牧野は、阿蘇市の西部北外輪山上に位置し、採草や放牧に利用し、管理している。有畜農家 9戸のうち、放牧農家は6戸、3戸は酪農家である。野焼きなど牧野管理については、今のところ 地域住民の協力が得られている。 しかし、北外輪壁の原野のうち放牧が出来ない急傾斜地は昭和 30 年頃に植林が行われ、これによ り野焼きのための輪地切り等に大変苦労している。木が大きくなってからは、大雨で斜面の木が流 れ大災害になったこともあるため、地域住民、牧野組合が一体となって元の草原に戻すことなどに ついて、原野組合や区の総会などで話し合いを行った。 実施概要 1月の原野管理組合総会、2月の区の総会において、集落の安全性確保や今後の草原維持管理の 継続について話し合いを行った。 また、平成 23 年度の環境省事業で行った牧野カルテ作りの会合において、牧野利用や維持管理継 続に必要な整備などについて検討された。 成果 集落の安全性を確保するために、大雨時に災害発生の危険性が非常に大きい分収林の除去または 広葉樹への転換が最善の策であることが地域内の総意として確認できた。 牧野カルテづくりの中で、今後の維持管理に必要な作業道などの整備が具体的に提案された。 実施者の感想 野焼きを行うミルクロードから下(戸下)の原野は、急傾斜地であり維持管理作業に危険を伴う 場所である。現在は、地元の人々で野焼きを行っているが、今後 10 年もすれば担い手不足が予想さ れる。 野焼きや輪地切り作業が楽にできるように作業道などが必要だが、その際にも大雨による崩落な どを考慮しながら整備を進める必要がある。 土砂崩れの危険性のある分収林は除去して草原に戻す、または広葉樹に転換することなどを検討 し、安全に野焼きを行えるように、また安心して暮らせるようにしたい。 戸下の原野 的石牧野の採草地

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長野牧野と地域の交流会

◆実施主体 長野牧野農業協同組合 ◆実施場所 長野公民館 ◆実施期間 平成 23 年 10 月 25 日~平成 23 年 11 月 10 日 背景・ねらい 私達の牧野組合は国立公園阿蘇の中心に位置し、熊本市から見渡すと丁度真正面に長野牧野の草 原が広がっている。草原を採草・放牧に利用する有畜農家が減少する中、牛を多く飼っている人で 28 頭、少ない人で5頭を、春から秋まで約8ヵ月間放牧することにより経済的に牛を飼養し、原野 の有効利用を進めているが、組合員の減少により、野焼きは支援ボランティアの協力により継続し ている。 野焼きに関してはボランティアの皆さんばかりを頼ることはできないので、地元の消防団と長野 部落の皆さんに牧野の現状を理解してもらうために部落の公民館で意見交換会を実施した。 実施概要 ◇意見交換会の実施 ・参加者:長野牧野組合員 40 名 (有畜・無畜農家、地元消防団員含む) ・内容として、有畜農家が減少していることから、 阿蘇のあか牛を増やす意味で、現在の助成をさら に広く活用した方が良いという意見、また、牛の 放牧については、広範囲でなく範囲を少し仕切る ことによって、草原の有効活用が出来るという意 見も出た。 成果 野焼きの重要性と放牧による経済効果について地 域の人々の意識を高めることができた。 実施者の感想 この阿蘇の大自然の中で動物と人間とが一体とな り、いかに阿蘇の自然を守るかが、阿蘇に生きる私 たちの責務だと感じている。 特に、阿蘇のあか牛は黒牛とは違って早く大きく なるため、短期間で生産・販売できるという利点が あり、今後もあか牛を増やして阿蘇の草原を守りな がら頑張っていきたいと思う。 長野牧野での野焼き 長野牧野の放牧風景

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牧野組合毎の牧野カルテ作成支援

◆実施主体 環境省 九州地方環境事務所 ◆実施場所 阿蘇郡市内の牧野(的石、古閑、下磧) ◆実施期間 平成 23 年 7 月~平成 24 年 2 月 背景・ねらい 阿蘇郡市内の牧野において、牧野内の野草地の現状、過去から現在に至るまでの植物の変化や牧 野の利用・管理状況の変化、牧野における地名やその由来等を調査し、草原とその利用・管理状況 を把握し、牧野組合の今後の利用・管理の目標を設定する。 実施概要 各牧野の事情に詳しい組合員・長老などにヒアリングを行い、牧野内の地名、過去、現在の利用 (管理)状況、動植物の生息状況等について情報収集し、その情報を基に現地調査を行って現在の 牧野の状況を調べ、牧野を維持する上で必要な管理方針、課題を整理、検討した。 成果 牧野の現状を知ることで、各組合の草原維持に対する意識が高ま ったのではないか。また、地名の由来や過去の管理状況などを記録 することで、将来に残る資料としても価値があるものになっている と思われる。 環境省としては、新たな支援メニューについて発掘ができ、草原 再生のための支援事業を進める上での資料となるものである。 <H23 作成実施牧野> 阿蘇市 古閑牧野 216ha 的石牧野 260ha 南阿蘇村 下磧牧野 68ha これによりこれまで牧野カルテを作成した牧野面積の合計は 6,954ha となった。 実施者の感想 ヒアリング、現地調査を牧野組合の方々と行う中で、牧野組合の 方々に自分たちの管理する牧野の価値を再認識し、草原環境の維持 について改めて理解を深める良い機会になっているのではないか と思う。 <これまでに牧野カルテを作成した牧野> 作成年度 実施牧野 牧野面積 作成年度 実施牧野 牧野面積 H17 阿蘇市 木落牧野 737ha H20 阿蘇市 二塚牧野 82ha 小堀牧野 101ha 湯浦牧野 443ha 南阿蘇村 池ノ窪牧野 136ha H18 阿蘇市 狩尾牧野 683ha H21 阿蘇市 跡ヶ瀬 258ha 日の尾牧野 175ha 三閑牧野 308ha 南阿蘇村 長野牧野 225ha 黒川牧野 1,410ha 南阿蘇村 中松牧野 553ha H19 阿蘇市 新宮牧野 263ha H22 阿蘇市 泉牧野 214ha 町古閑牧野 429ha 根子岳牧野 72ha 高森町 村山牧野 150ha 下荻の草牧野 61ha 産山村 西原牧野 110ha 計 6,410ha 現地調査(的石牧野)

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野焼き作業の省力化及び野草地利用を支援する

作業道、歩道整備事業

◆実施主体 環境省 九州地方環境事務所、牧野組合 ◆実施場所 阿蘇郡市内の牧野(跡ヶ瀬、中松、二塚) ◆実施期間 平成 23 年 11 月~平成 24 年 3 月 背景・ねらい 阿蘇の草原は永年にわたって人々の手によって維持されてきた文化的な遺産であり、その大面積 の草原を維持していくために野焼きは必要不可欠な作業である。しかし、牧野を管理している牧野 組合は従事者の高齢化や後継者不足で維持管理は困難な状況となっている。 また、阿蘇の草原は、利用可能な野草地があるにもかかわらず作業道の整備が進んでいないため 利用できず、野焼きのみの管理となっている箇所もあることから、作業道の整備を行うことで、未 利用の野草地を利用できるようにするとともに、野焼き時の安全確保や労力の縮減を図るものであ る。作業道及び歩道の整備は、九州地方環境事務所の支援メニューの一つであり、牧野組合が行う 野草地の保全活動を支援するものである。 実施概要 輪地切り、野焼き等の管理作業の労力軽減を図 るため、また未利用の野草地を放牧地とするため の移動経路、牛馬の牧野間の移動経路としての作 業道の整備を行った。 <作業道整備延長> 阿蘇市 跡ヶ瀬牧野:延長 1,696m(牛道整備) 南阿蘇村 中松牧野:延長 655m(作業道整備) 阿蘇市 二塚牧野:延長 100m(防火帯整備) 成果 未利用で放置されていた野草地を放牧地として 利用出来るようになった他、輪地切り、野焼き時 の移動、牛馬の牧野間の移動など、作業道を整備 したことで牧野管理の際の労力軽減が見込まれる。 実施者の感想 作業道を整備したことで、未利用で荒廃してい た草地が放牧により回復することが見込まれ、ま た、防火帯を兼ねた作業道により野焼き面積の増 加も見込まれる。 跡ヶ瀬牧野での作業道整備の様子

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輪地切り作業軽減のための

防火帯整備と小規模樹林地伐採事業

◆実施主体 環境省 九州地方環境事務所、牧野組合 ◆実施場所 泉牧野、池ノ窪牧野 ◆実施期間 平成 23 年 5 月~平成 24 年 3 月 背景・ねらい 阿蘇の草原は、農業・畜産業の担い手の減少や高齢化等により維持が困難になってきている。 樹林除去予定地は、スギ・ヒノキの造林地や永年放棄された野草地であり、野焼き時の延焼防止 のため、毎年急傾斜地での輪地切り作業が必要となっている。 このため、樹林の伐採除去を行うことで、輪地切りの労力の軽減や延焼防止が図られ、牧野組合 員の心労軽減にもつながるものと思われる。また、伐採後は草原として管理するため草原面積の拡 大にもつながる。 実施概要 放牧地の管理上の障害となっている灌木の除去 及び輪地切り、野焼きの労力軽減、安全性の向上 のための防火帯整備を行った。 <防火帯整備延長> 泉牧野:706m <小規模樹林除去面積> 池ノ窪牧野:5.17ha 成果 防火帯を整備したことにより、長年野焼きが行 われず、放置され荒れ野になっていた草原の野焼 きが再開され、草原再生に繋がった。 牧野内に侵入している灌木を撤去したことによ り、放牧利用面積が拡大し、野草地の保全に資す ることが出来た。 実施者の感想 草原に灌木が侵入し、ヤブ化していた部分を伐 採することで、放牧地として草原が管理されるこ とになり、草原の回復と豊かな生物多様性の回復 に資することが出来たのではないかと思う。 また、防火帯を整備したことで、野焼きが再開 され、荒れ野が草原に再生しただけでなく、今後 の野焼きの継続についても安全性の向上に大きく 貢献出来たのではないかと思う。 池ノ窪牧野での小規模樹林除去作業 泉牧野での防火帯整備

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COLUMN 構成員の牧野を紹介します。

平成 23 年度の協議会(第 13 回及び第 14 回)では、 新たに 43 の牧野組合等が協議会構成員として加入 し、平成 23 年度末現在で、協議会に参加する区・ 牧野組合等は 106 団体(区長会、財産区等 19 団体 を除くと 87)となりました。 熊本県による平成 23 年度阿蘇草原維持再生基礎 調査によると、阿蘇地域の牧野総面積は約 22,000ha、 そのうち、構成員として加入する牧野組合等が管理 する牧野面積は約 14,500ha で総面積の 65%を超え、 有畜農家数は全体の約 74%、放牧頭数は約 80%を 占めています。 ◇協議会に加入する牧野の状況 市町村 協議会加入 牧野数 牧野面積 (ha) 野草地 (ha) 入会権者数 (戸) 有畜農家数 (戸) 放牧頭数 (頭) 野焼き面積 (ha) 阿蘇市 36(※55) 8,535 5,524 3,618 309 2,592 6,598 小国町 4 506 474 202 25 176 480 南小国町 7 1,259 976 244 36 308 1,146 産山村 4 570 502 117 26 234 453 南阿蘇村 17 2,072 1,278 1,690 184 1,359 861 高森町 10 661 348 177 33 436 553 西原村 4 730 569 567 25 74 600 山都町 5 179 140 71 12 75 46 協議会加入計(A) 87(※106) 14,512 9,811 6,686 650 5,254 10,737 H23 年調査計(B) 174 21,986 15,690 9,193 884 6,538 16,354 割合(A/B) 50.0% 66.0% 62.5% 72.7% 73.5% 80.4% 65.7% ※印は阿蘇市 19 団体を加えた加入数(19 団体:黒川区長会 15、財産区管理会 2、中無田原野管理組合北山レストラン・有志の会) 資料:熊本県による H23 年 9 月「阿蘇草原維持再生基礎調査」を基に作成 平成 23 年度に新規加入した牧野組合から4牧野を紹介します。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

間瀬野牧野共有組合(南小国町)

間瀬野(まぜの)牧野は南小国町南西部、筑後川上流域に位置 し、周辺牧野とあわせ一帯はまとまりのある草原が広がってい ます。下の道と上中原の人々の共有原野であり、かつては採草・ 放牧に利用されていましたが、現在は全て放牧地として利用さ れています。野焼きは無畜農家を含む世話人 12 名で実施され、 周辺原野と一緒に焼くため防火帯づくりは不要です。 間瀬野渓谷や押戸石などの資源を活かして、組合では自然案 内人協会によるエコツアーの受け入れを行っていますが、近年 は、ミステリーロードの開通により観光・レクリエーション利 用の面でも注目されるエリアです。 ◇間瀬野牧野共有組合データ ※H23 阿蘇草原維持再生基礎調査より ・面積:137ha(うち野草地 96a、牧草地 10ha、樹林地 31ha) ・入会権者数:69(うち有畜農家 10) ・放牧頭数:60 頭 渓谷に通じる管理道

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立山牧野組合(阿蘇市)

立山(たちやま)牧野はやまなみ道路とミルクロードの交差部 から道路沿いに広がっています。かつては集落の各戸が原野を 利用し、100 頭位の牛が放牧されていましたが、今は放牧利用す るのは1戸のみ、採草利用も激減しました。野焼きは入会権者 全員で行いますが、輪地切りは山際を3km 以上切るため支援ボ ランティアの協力を得ています。 原野内には川が流れ、谷間の湿地にはサクラソウをはじめ草 原性の植物も多く見られます。農家民泊などで受入れた子ども たちを原野につれて行き、牛を見たり川遊びをする草原体験の 取り組みも行われています。

下市牧野組合(南阿蘇村)

下市(しもいち)牧野は、南阿蘇村東部、中央火口丘南側に位置 し、全体を放牧地として利用しています。有畜農家により牧野 組合を組織し、あか牛を中心に約 70 頭が放牧されています。平 坦地は改良されており、野焼きは急傾斜地の野草地のみで行い ますが、アップダウンが多く大変な場所です。野焼き作業には 集落全員が参加しますが、高齢化が進んだため最近はボランテ ィアの支援を受けるようになりました。 放牧地(牧野エリア)の南側にある採草地は利用が減って荒 れてきています。現在の放牧地は面積が限られているため、利 用されない採草地の放牧利用についても模索されています。

下野牧野組合(南阿蘇村)

下野(しもの)牧野は、南阿蘇村の西部、阿蘇ファームランド周 辺に位置します。かつて周辺はほとんどが原野でしたが、開発 により原野面積は減少しました。 牧野組合は有畜農家により組織され、かつての国営牧場跡地 (牧草地)と共有地である野草地を利用・管理し、繁殖あか牛 を中心とした放牧畜産に力を入れています。集落の刈り干し場 だった野草地は、利用が減ったため放牧地として利用、道路際 斜面で放牧ができない箇所で採草を行っています。野草地の野 焼きには組合員が1戸から2~3人が出役して実施。牧野利 用・管理では組合員が共同で作業を行う体制ができています。 ◇立山牧野組合データ ※H23 阿蘇草原維持再生基礎調査より ・面積:312ha(うち野草地 240ha、牧草地 12、樹林地 60ha) ・入会権者数:31(うち有畜農家 3) ・放牧頭数:6 頭

◇下市牧野組合データ ※H23 阿蘇草原維持再生基礎調査より ・面積:63ha(うち野草地 42a、牧草地 19ha、樹林地 2ha) ・入会権者数:85(うち有畜農家 13) ・放牧頭数:70 頭

◇下野牧野組合データ ※H23 阿蘇草原維持再生基礎調査より ・面積:52ha(うち野草地 32a、牧草地 20ha、樹林地 0) ・入会権者数:40(うち有畜農家 9) ・放牧頭数:180 頭 下市牧野の放牧地(改良草地) 野焼きをする野草地(写真奥) やまなみ道路沿いに広がる牧野 放牧利用は激減しました 野草放牧地、手前の斜面地では採草を行う 国営牧場跡の改良草地(村有地)

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2011 年度秋の輪地切り支援ボランティア活動

野焼き及び輪地切り支援ボランティア活動

◆実施主体 公益財団法人 阿蘇グリーンストック ◆実施場所 阿蘇郡市各牧野 ◆実施期間 9.平成 23 年 8 月 20 日~平成 23 年 12 月 14 日 10. 平成 24 年 2 月 11 日~平成 24 年 4 月 7 日 背景・ねらい 毎年夏から秋にかけて行われる春の野焼きに向けた「輪地切り(防火帯づくり)」は、総延長 500 ~600 ㎞にも及び、傾斜の多い草原の草を刈る作業で、危険も多く、暑い中大変な労力を要する。 「阿蘇千年の草原」の維持・保全に欠かせない輪地切り・野焼き作業が、地元牧野組合員の減少 と高齢化により、地元の人々だけでは難しくなってきているため、九州内外の人々に呼びかけ、研 修を行なった上で野焼き・輪地切り支援ボランティアを派遣している。 実施概要 実施日 実施内容 実施結果 平成 23 年8月 20 日 刈払機安全講習会(小堀牧野) 参加者数:25 名 ボランティアリーダーによる 2011 年度秋の 輪地切り支援活動についての安全確認会議 (リーダー全体会議)の実施 参加者数:38 名 平成 23 年8月~12 月 秋の輪地切り支援活動の実施 延べ 54 か所 参加者数:延べ 1,253 名 平成 23 年 12 月 17 日 ボランティアリーダーによる今秋の輪地切 り支援活動の反省会議の実施 参加者数:48 名 平成 24 年2月5日 ボランティアリーダーによる春の野焼き・ 輪地切り支援活動の安全確認会議の実施 (リーダー全体会議) 参加者数:49 名 (ボランティアリーダー) 平成 24 年2月 11・12 日 2011 年度野焼き支援ボランティア初心者研 修会(第 1 回)の開催 参加者数:延べ 217 名 平成 24 年2月 18・19 日 〃(第2回)の開催 平成 24 年2月~4月 2011 年度、春の輪地切り及び野焼き支援活 動 延べ 52 か所 合計 1,054 名 野焼き作業(町古閑牧野) 輪地切り作業(中松3区牧野)

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COLUMN:支援ボランティア活動について

●平成 23 年度のボランティア派遣数は延べ 2,300 人以上 1999 年春、7ケ所 110 名から始まった活動が、2011 年 度は 49 牧野に、延べ 2,300 名を超えるボランティアの 支援活動となり、これまでに延べ 1 万5千人以上の方 が野焼き・輪地切り支援活動を行いました。 <野焼き支援ボランティアの会> 2000 年発足。財団の活動会員として、約 670 名(2011 年度) の会員が登録。2001 年には野焼き支援ボランティアリーダー 制度が発足し、ボランティアの熱心で質の高い活動は地元の 牧野組合からも高い評価を受けている。 成果 ボランティアの中でも春の野焼きの準備作業としての「輪地切り」の重要性についての理解が徐々 に広まってきており、参加者は年々増加している。 5,500 ヘクタールを超える草原保全支援活動フィールドは阿蘇全体の野焼き面積の3分の1以上 になり、今や阿蘇の草原保全には欠かすことの出来ない活動になってきている。ボランティアの熱 心で質の高い活動は地元の牧野組合からも高い評価を受け、活動の規模は年々大きくなっており、 年間 2,000 名を超える活動となっている。また最近では、企業内のグループでの参加も増えてきて いる。 今年の初心者研修会の募集には、若い女性向けのタウン誌への掲載やSNSツールの使用等によ り、若い方(40 代以下)の参加が初めて5割を超えた。 実施者の感想 ◆2011 年度 秋の輪地切り支援ボランティア活動 今年の輪地切りは、何とか無事故で行なうことが出来たが、リーダー全体会での意見や、後での 聞き取りでは、いくつかの活動で、ヒヤッとするような場面があったということだ。 このような意見を集約し、リーダーによる研修等を徹底し、今後の安全対策に活かしていきたい と思う。 ◆2011 年度 野焼き及び輪地切り支援ボランティア活動 今年の野焼き支援活動では、終盤にボランティアの死亡事故という最悪な結果となってしまいま した。関係者の皆様には大変ご心配、ご迷惑をお掛けし、申し訳ございません。 1999 年より、13 年間無事故で活動してまいりましたが、財団としても非常に無念でたまりません。 改めて、亡くなられたボランティアの方のご冥福をお祈り申し上げますと共に、今後の安全対策に 全力で取り組んでいく所存です。 1 102 293 83 7 276 58 8 189 85 1 ,567 1 ,779 1 ,907 1 ,903 1 9612 137 2 307 7 1 2 1 2 1 31 7 2 1 2 3 3 6 4 3 4 6 4 6 4 74 9 4 9 0 10 20 30 40 50 0 500 1000 1500 2000 2500 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 支 援 牧 野 数( 牧 野) ボ ラ ン テ ィ ア 派 遣 数( 人) 輪地切り・野焼きボランティア派遣数・支援牧野数の推移 野焼きボランティア 輪地切りボランティア 受入れ牧野組合数 ※ボランティア派遣数:延べ人数、グラフ内の数字は野焼き・ 輪地切り派遣数の合計 資料:(公財)阿蘇グリーンストック

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あか牛の流通・消費拡大の取り組み

~阿蘇あか牛肉料理認定店制度~

◆実施主体 阿蘇地域農業振興協議会畜産部会 ◆実施場所 阿蘇郡市内の認定店(50 店舗) ◆実施期間 平成 23 年 4 月 1 日~平成 24 年 3 月 31 日 背景・ねらい 阿蘇地域で育ったあか牛の肉を提供する管内の旅館・ホテル・ペンション・レストラン等を阿蘇 あか牛肉料理認定店として認定し、広く認定店制度をPRすることによって、阿蘇あか牛のブラン ド化と消費拡大を推進する。 実施概要 (1)阿蘇あか牛肉料理認定店の新規認定 2店舗 ①新規認定にかかる認定店証、のぼり旗の配布 ②平成 24 年3月 31 日現在の認定店 50 店舗 (2)広報宣伝対策の実施 ①認定店を紹介したドライブマップの印刷・配布 ・東京、大阪、管内物産館、観光協会、駅等に 4,000 部配布 ②あか牛肉の試食及び認定店の広報宣伝イベントの開催 ・小国町わいた温泉(平成 23 年 10 月 26 日) ※わいた温泉感謝祭で試食とアンケートを実施。 ・福岡県農産物販売所「ぶどう畑」(平成 23 年 12 月 17 日) ※試食とアンケートを実施 ・南小国町黒川温泉べっちん館(平成 24 年 1 月 29 日) ※べっちん館でのイベントにあわせて、試食とアンケートを実施 ・小国町農産物直売所「朝どり市」(平成 24 年3月3日) 成果 (1)阿蘇あか牛肉料理認定店の認定推進を図った結果、認定店が2店舗拡大し、50 店舗となった。 (2)あか牛肉の試食イベント時にアンケート調査を実施した結果、あか牛肉は、美味しく、食べて みたいが、食べられる所を知らないという意見が多く、今後も、認定店の広報宣伝による消費拡大 に努める必要がある。 あか牛を食べた感想 これまであか牛を食べなかった理由 実施者の感想 福岡県においても、あか牛が熊本県特有の品種だと半分以上の消費者に認知されており、近くで 購入できれば買いたいという意見も多いことから、福岡県への広報宣伝により、観光目的で阿蘇に 来てもらい、さらにあか牛を食べてもらう取り組みも効果的だと感じた。 あか牛を食べたほ とんどの人が、な んらかの方法で、 また食べたい意向 を持っている。 これまで、あか牛 を食べなかった 理 由 の 多 く は 、 「食べられる場 所知らない」。

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政策提言のための農業環境政策研究の

成果出版物の作成

◆実施主体 横川洋(九州共立大学)・高橋佳孝(農研機構) ほか ◆実施場所 阿蘇市・阿蘇郡域、全国各地、ドイツ、オーストリア ◆実施期間 平成 23 年 4 月 1 日~平成 24 年 3 月 31 日 背景・ねらい 阿蘇地域で展開される草原再生の取り組みを、広く納税者が支援する仕組み作りの一つとして、 「農業環境政策の構築」を提案するため、農業環境政策のフレームワークの検証と、草地農業の実 証分析の二つを柱に、阿蘇の草原再生に適応可能かどうかを判断するための科学的知見を提示する。 また、実践的には国の農地・水・環境保全向上対策や自治体の各種農業環境プログラムの見直し、 展開に大きな示唆を与えることを目指すものである。 実施概要 有識者による農業環境政策の検証と分析を行い、再生事業への適応可 能性を判断する根拠を提示するため、科研費出版助成を獲得し、有識者 の協力によりデータの収集・分析、執筆、出版を行った。 1.農業環境政策論(横川洋)、2.景観概念を生かした農業環境政策(横川洋)、3.百姓仕 事の新しい評価方法としての「環境支払い」を求めて(宇根豊)、4.阿蘇千年の草原の維持・ 保全と自然再生について(高橋佳孝)、5.環境支払いと阿蘇草原の保全価値の計測(矢部光 保)、6.九州における草地畜産の課題と展開(福田晋)、7.MEKAⅢ-ドイツ農業環境政策(T. フェルマン・横川洋)、8.MEKA の運用方法と効果(富岡昌雄)、9.オーストリアにおける 山岳農村景観の保全と観光(横山秀司)。(なお、下線は協議会構成員。) 出版物の作成のため、平成 17 年から実施した「生態系調和型農業への政策転換と日本型GAP の構築に関する総合研究」(科研費)の研究チームを中心に、ドイツおよび中国の環境政策研究者 2名を加えた、合計 13 名体制で執筆、編集、出版を行った。その間、各執筆者との打ち合わせや 調整、新しい情報や補足データの収集を実施し、内容に追加した。 また、平成 23 年 11 月 26 日には、本出版物の紹介を兼ね、農村計画学会 2011 年秋季シンポジウ ム「阿蘇草原保全の現状と再生への課題─阿蘇の文化的景観の持続的保全管理と地域活性化を求め て─」を開催し、阿蘇草原保全の意義と環境支払い制度の重要性を啓発した。 成果 活動の成果は、青山社より「生態系調和的農業と環境直接支払い-農業環境政策論からの接近-」 (横川洋・高橋佳孝編著)として出版された。本書には、阿蘇草原再生の意義、保全の経済価値などが 収録されており、協議会活動の理論的バックボーンとして今後の活用が期待される。また、成果物 に収録されているドイツのバーデン・ヴェルテンベルク州の農業環境政策(MEKA)については、熊 本日日新聞が関心を示し、取材のために渡独した後に、「草原が危ない第8部」として平成 24 年6 月2日より8回にわたって紙上連載し、熊本県民の農業環境政策に対する理解の増進に役立った。 実施者の感想 阿蘇における草原利用計画に関して、草原の持つ多様な生態系サービスをバランスよく供給する ようなゾーニングの必要性を、国内外の事例と比較検討する中で提案してきた。阿蘇の草原は、旧 来の農業政策の枠組みだけでは維持することが困難になっている。誇りや義務感だけで草原は守れ ない。地域において生活できることが大切である。「草原環境を守り育てる農業」への支援策の構築 が焦眉の課題となっていると思う。

参照

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