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名作再読、拾い読み(30)

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Academic year: 2021

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 ギリシア悲劇作家のソフォクレスもエウリピ デスもそれぞれ『エレクトラ』という悲劇を書 いていますが、オニールはアイスキュロスの『オ レステイア』を基にして『喪服の似合うエレク トラ』を作りました。粗筋は以下の通りです。

 アメリカ南北戦争が終結し、北軍の指揮官エ ズラ・マノンが戦地から帰ってきた夜、妻のク リスティーンは彼女の不倫相手であるアダム船 長から手に入れた毒薬で夫を殺害します。断末 魔の最中に偶然、娘のラヴィニアが部屋に入っ てきてエズラの最期の言葉を聞き、床に転がっ ていた毒薬の箱を拾いました。ラヴィニアは、

直ぐにでも父を殺した犯人である母を罰したい のですが、手助けをしたアダム船長をも罰する ために、弟のオリンが帰国してから事を進めよ うと、慎重に復讐の時期を待つことにします。

 母の愛人であるアダム船長は、本当は父の弟 デイヴィッドとマノン家の使用人マリーとの間 に生まれた息子でした。家名を守るためデイ ヴィッドとマリーは追い出され、彼等の存在を 知る人は年老いた使用人のセスしかいません。

デイヴィッドが酒浸りになって死んだ後、息子 のアダムは船員で航海中のために連絡が取れず、

生活に困ったマリーはエズラに援助を求めまし た。しかし、若い時に自分の求愛を断って弟の デイヴィッドを選んだマリーをエズラは許さず に見殺しにしたのです。航海から戻って母の死 んだ情況を知ったアダムは、マノン家に復讐す るために接近してきたのでした。

 ラヴィニアは、戦地から戻ってきたオリンに 父の死の真相を話すのですが、彼は自分の母が 犯人とは到底信じられません。彼は母を愛して いて、母とは恋人同士のように二人だけで南海 の島に住みたいという夢を持っていたのです。

父の葬式の後、ラヴィニアとオリンは外出した 母の跡をつけ、母がアダム船長と密会する場面 を目撃します。オリンも遂に母の裏切りを確信 し、母が立ち去った後で、アダム船長をピスト ルで撃ち殺しました。ラヴィニアは母にアダム 船長を殺したのは自分とオリンだと打ち明け、

母は絶望して飛び降り自殺をします。その後、

オリンは罪の意識に苛まれて精神的に不安定に

なり、それを心配したラヴィニアは、静養のた め彼を南海の島へ連れて行きました。彼女は島 の男性に恋をして美しくなり、緑色のドレスを 着ると、母親そっくりの姿になります。オリンは、

彼女が親しくなる男性は皆、アダム船長に似て いることに気付きました。また、彼は母と瓜二 つの姉を見ているうちに母が恋しくなり、それ と同時に自分達の罪深さを悟って家に戻ること を主張します。ラヴィニアは嫌でも家に戻らざ るを得ませんでした。オリンの帰国を知って、

恋人のヘイゼルは直ぐにオリンに会いに来ます が、彼は自分たちが結婚できないこと、また彼 女の兄のピーターがラヴィニアとの結婚を望ん でいるがそれも許されないことだと言い、殺人 の罪を告白した文書を残して自殺します。オリ ンの死に気が動転したラヴィニアは、ピーター に結婚してくれと迫りますが、その時、彼にア ダムと呼びかけてしまいました。彼女は心の底 ではアダム船長に恋をしていたのです。ピーター はショックを受けて立ち去りました。後に残っ たラヴィニアは、家族の死に絶えた屋敷の中に 独り閉じ籠もって生きていく決心をします。

 親子間の複雑な愛憎心理、特にエレクトラコ ンプレックス(Electra complex)がラヴィニア を通して恐ろしくも悲しく胸に迫ってきます。

 劇中で何度か、使用人のセスの渋いバリトン の声で歌われる「シェナンドーア」の歌は、そ の哀愁を帯びた旋律を実際に耳にすると、滔々 と流れゆく河の水に人の嘆きや悲しみが洗い流 されていくように感じられることでしょう。

※Electra complex《精神分析》エレクトラコンプレッ クス《娘が父親に抱く潜在的な性的思慕と母親への 敵意; →Oedipus complex》(ウィズダム英和辞典)

参考文献

1. 呉茂一[ほか]編 『ギリシア悲劇全集』第1巻(人文 書院、1960)

2. Eugene O’Neill “Mourning becomes Electra” (in

“The plays of Eugene O’Neill”, Random House, c1954-1955)

3. ユージン・オニール著 菅泰男訳 『喪服の似合う エレクトラ』(『ウィリアム・バトラー・イェイツ、

ジョージ・バーナード・ショー、ユージン・オニール』

[ノーベル賞文学全集20] より)(主婦の友社、1972)

おざわ ふみひこ(情報サービス課)

名作再読、拾い読み(30)

名作再読、拾い読み(30)

『喪服の似合うエレクトラ』(2) ("Mourning becomes Electra")

小澤文彦

図書館員の文献紹介と資料の活用

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