つながるITがもたらす 豊かなくらしと経済
~ ビッグデータの価値と信頼 ~
2012年5月24日
IPAグローバルシンポジウム 東京大学
工学系研究科技術経営戦略学専攻 教授
元橋 一之
くらしと経済の基盤としての ITを考える研究会
○座長 元橋 一之 東京大学 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授
○委員 折田 明子 慶應義塾大学大学院 政策・メディア 研究科 特別研究講師
加藤 和彦 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 教授
首藤 一幸 東京工業大学大学院 情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授
須崎 有康 独立行政法人産業技術総合研究所
情報セキュリティ研究センターソフトウェア セキュリティ研究チーム 主任研究員
つながるIT
• ビッグデータの背景と意義
• ビッグデータを支える技術と課題
• 質的にこのなってきたIT利用への対応
• ビッグデータ時代のコンプライアンスと 可能性
• 起業をめぐるバイアスと価値提供のあり方
• ビッグデータにおける個人的な情報の価値
• 新サービス創出のための課題と取り組み
つながるITとは
• クラウドコンピューティングなどにより あらゆる情報がつながる
• これまでとは質的に異なるITの台頭
• ITを利用する場面が劇的に拡大・深化
• ITの高機能化や相互の接続・統合の進展
問題意識と検討課題
• これまでとは質的に異なる変化
–
データの保存量・処理速度の「青天井」化–
組込みソフト製品と情報システムの統合化–
「モノとモノ」による相互接続の拡大化• 社会と生活の基盤としてのITが持つ意味
–
IT利用による価値の創造が競争力の源泉• 個人とITの関わり方に関する新たな課題
ディスプレィとカメラが付いた 自動販売機
カメラ画像を分析して、性別、年齢 を推測し、さらにその日の気温や天 候を参考にして、推奨商品を提示。
10 代以下から60代以上までの年代
現在位置と周辺の観光スポットを 検索するタブレット
タブレットのGPSから現在地を 測定し、これをサーバに送信し て周辺の観光スポットを検索し た結果を表示。
つながるITの最大のメリット
ビッグデータ
Internet of Things 組込みソフトウェア製品と
意図しない プライバシー侵害 クラウド
コンピューティング
個人・企業ユーザの IT管理負担からの解放 新たな(真の)
ITリテラシーの確立
インターネットの進化
WEB 1.0 WEB 2.0
各種センサから集まってくる
ビッグデータ (Web 3.0)
ビッグデータの背景と意義
これまでのITの技術発達・進化の過程を踏 まえ、ビッグデータとその処理、応用
• 大規模データを元にしたネットワーク サービスの出現
Google社 Amazon社
ビッグデータ利用企業の台頭
•
Google社–
巨大容量の非定型データに対する「深い」分析–
分散並列処理を用いた高速処理–
コモディティハードウェアの利用等の新たな パラダイムの導入•
Amazon社–
eコマースシステムで獲得・蓄積した膨大な データに対する広く、深く、速い処理による「ロングテール」商機の発見
ビッグデータ利用のさらなる深化
–
ソーシャルメディアの人間関係に基づくネッ トワークから生成されるデータなどの収集分 析による、さらに個人に特化した事業展開の 可能性Web 3.0
ビッグデータの性質
Volume
(量)
Variety
(多様性)
Velocity
(速さ、データの新鮮さ)
ビッグデータを支える技術と課題
• ビッグデータの処理を汎用品で安価に拡張 できる環境で扱うことを可能にする理論的 背景
–
CAP定理•
Consistency(データの整合性)•
Availability(システムの可用性)•
tolerance to network Partitions(ネットワーク の分断耐性)–
エラー忘却型コンピューティング–
結果整合性(Eventual Consistency)ビッグデータを支える技術と課題
• ハードウェア能力
• ソフトウァアーキテクチャ
–
分散システム対応ストレージシステム–
ソフトウェアフレームワーク MapReduce–
NoSQL• 非構造化データを構造化データに変換する
技術
ビッグデータを支える技術と課題
• セキュリティ上の課題
–
ユーザの意図しない暗号の危殆化–
情報の漏えい、消失、削除ミス等• 今後の課題
–
解析技術の効率化–
データ解析の限界の十分な理解–
ビッグデータが全体に及ぼす影響質的に異なってきたIT利用への対応
• ソーシャルメディアとITのモバイル利用
• 多様な意味を持ち始めたデータ
• 利用者のリンクの可能性とID
• 意図せぬ情報提供
–
モバイル利用による実空間情報•
投稿しないことが情報になる•
位置情報•
活用例:利用者が「センサ」になる–
ソーシャルメディアを介する情報情報の質の変化
ソーシャル メディアと ITのモバイ
ル利用
個人が提供 する情報
多様な意味 を持ち始め
たデータ
利用者が認識する匿名性と
同一人物として識別されること
インターネットの利用 特にソーシャルメディアや
モバイル利用
ユーザは自分が能動 的に提供する内容
(投稿等)
意図しない多く の情報の提供
本人にも 思いがけ ない価値
個人情報の 漏えいやプ ライバシー
蓄積
組み合わせ
利用者間の名乗りと
サービス利用時のID
twitterの投稿をプロットしたもの
ビッグデータ時代の
コンプライアンスリスク
•
ビッグデータにおける法的・社会的なコンプラ イアンスリスク–
大量のデータ漏えいのリスク–
プライバシー侵害のリスク–
不正な表示のリスク•
プライバシー侵害のリスクからの保護–
そのときの基準は何かという点については、社会的 に不明確–
プライバシーの取り扱いについては、引き続き広く 議論を進める必要ありJR東日本次世代自販機の注意書き
プライバシーと価格の散布図
プライバシー
価格
① 価格重視
③ オプション機能重視
② プライバシー重視
対象者を整理したサービス設計の 必要性
• 便益と安心・安全の両立
• 蓄積や組み合わせを誰に開示するか
プライバシーに関する 経済的考え方
個人情報の 市場の供給 者への開示
供給者の利 用者の特性
に応じた サービスの
提供
社会厚生 の向上
プライバシー情報を利用する業者において、当該情報の取 り扱いを厳格に行い、外部に漏えいすることなく、サービ スの提供という使途も限定的に行うことが前提
ビッグデータの出現による 費用便益バランスの変化
個人情報を 収集分析す
るコスト
(生産者サイド)
個人情報を 供与するこ とのコスト
(個人サイド)
個人情報 の便益
金銭的な 社会厚生
消費者余剰
+
生産者余剰
=
= -- --
ビッグデータによる 新たなメリットの享受
•
社会的な便益の向上の観点も含めた費用便益の バランスの確保のための適切なルールの設定•
ビッグデータの活用による、これまでの費用便 益のバランスを変化実現に向けて:
•
行動経済学の分析結果等も踏まえた設定•
個人情報の提供に対する心理的なコストを低減 させるための適切な方策新サービス創出のための課題と 取り組み
ビッグデータを 利用した新たな サービスを実現
価値の創造
信頼の基盤
つながるITにおける
「価値の創造」と「信頼の基盤」
価値の創造
• IT融合を進めるIT技術者の育成
–
作る技術者から価値を生み出す技術者–
マルチスキルなIT技術者• 社会基盤の整備
= ビッグデータの解放と融合の促進
–
ビッグデータのビジネス利用促進–
オープンガバメント等の社会基盤の整備信頼の基盤
• 信頼の基盤に向けてのセキュリティ確保
–
ビッグデータによるセキュリティ対策の推進–
情報システム利活用に伴うセキュリティの確保の推進
• ビッグデータ活用を支える信頼性・安全性
–
社会インフラとしての堅牢性の確保–
利用環境の継続的モニタリングとフィードバック–
ソフトウェア品質監査制度等の制度面の整備–
データそのものの品質の確保に向けた取組み「融合新産業」の創出に向けた
重点6分野と横断的課題5分野
ビッグデータを用いた ビジネスモデル
• マルチサイド市場
–
複数の市場間に正の外部経済効果が生じて新たな 経済価値が創出–
一般消費者と事業者の双方においてそのメリット を享受できる可能性の創出• 新たなビジネスチャンス
–
経済的分析作業ためのツールやデータプラット フォームの開発–
経済的分析のための人材育成などの支援サービスマルチサイド市場の事例
市場A 市場B
クレジットカード
加盟店 カード利用者アップル
APPストア
アプリベンダ iPhone利用者ブルーレイ
ディスク
コンテンツ作成者 コンテンツ購入者情報がつながりつつある現状と 将来の暮らしのために
•
たくさんの情報がつながりあう現在–
コンピュータ資源の廉価な活用–
スマートフォンの普及とモバイル端末向けのアプリ ケーションの成長–
ビッグデータ分析による新たなサービス–
起業の増加へ–
コワーキングスペースの増加•
多様な情報を相互につなげ、ビッグデータ分析 により、新たなサービスを提供する起業のチャ ンスは急速に拡大「ビッグデータ」の実りを実現化 するために
•
国内ファイナンスを容易に–
エンジェル税制の利用促進–
転換貸付の法的制度の透明化–
スタートアップへの専門家支援のためのアクセスの確保•
国際的な発展を容易にするための支援–
起業者の世界的なチャレンジを支援する仕組み•
具体的な必要と思われる支援–
設立の手続き–
法律・会計等の専門家に対するアクセスの確保アプリケーション
(競争領域・非競争領域)
クラウド SAAS PAAS
データ主導 ビジネスモデル
ビジネス
BD活用 システム