A. 研究目的
平成 27 年度特定疾患受給者証更新申請時に、 スモ ン患者を対象に療養状況を調査するためアンケートを 実施した。 アンケートで、 現在保健師に療養上の相談 を し て い る と 回 答 し た 患 者 が 、 全 回 答 117 名 中 4 名 (3.4%) という結果であった。 一方で、 保健師への相 談希望があると回答した患者は、 117 名中 11 名 (9.4
%) であったことから、 スモン患者が保健師への相談 を希望する声が、 実際の相談件数を上回っていること が分かった。 そこで、 保健師側のスモンに関する意識 の実態を把握するために、 大阪府内保健所保健師 (以 下、 府内保健所保健師) に対して、 アンケート調査を 行った。
B. 研究方法
府内保健所保健師を対象に、 平成 28 年 4 月 22 日に
「難病事業保健師説明会」 を開催した。 その中で、 「ス モンに関する調査研究班」 の構成員である 「大阪府立
急性期・総合医療センター 狭間医師」 と、 「 大阪ス モンの会 所属のスモン患者」 の 2 者の立場から、 ス モンに関する講演を行った。 受講者に対して、 講演の 前後にスモンに関するアンケート調査を行った。
受講前のアンケート調査は、 回答対象者の基本情報 に関する 7 項目 (①保健師としての勤務年数、 ②過去 の難病業務経験の有無、 ③スモンについて研修等で学 んだ経験の有無、 ④スモンの知識について (知ってい るか否か)、 ⑤スモン患者から相談を受けた経験の有 無、 ⑥スモン患者に対する支援の経験の有無、 ⑦スモ ンに関する疾患や患者に対しての自由意見) とした。
受講後のアンケート調査は、 具体的な意見や感想に 関する 4 項目 (①今回の講演で初めて知ったこと (選 択式とし、 スモンに関する医療費制度、 スモンの歴史、
スモンの病態、 スモンの患者会、 スモン患者の現状、
その他、 特になし、 から重複回答可能とした)、 ②受 講後のスモンについてのイメージや意識変化の有無、
③講演に対する感想、 ④保健師としてスモンについて
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大阪府内保健所における保健師のスモンに関するアンケート調査
浅田留美子 (大阪府健康医療部保健医療室地域保健課) 北邨 健司 (大阪府健康医療部保健医療室地域保健課) 伊岡 直和 (大阪府健康医療部保健医療室地域保健課) 浅井 多紀 (大阪府健康医療部保健医療室地域保健課) 新安 弘佳 (大阪府健康医療部保健医療室地域保健課) 塚本 光 (大阪府健康医療部保健医療室地域保健課)
研究要旨
大阪府内保健所保健師のスモンに関する意識の実態を把握するために、 アンケート調査を 行った。 今回のアンケート調査結果から、 スモンに関する知識に乏しい府内保健所保健師が 約 6 割、 スモン患者の支援経験がない府内保健所保健師が約 8 割存在すること、 医師及びス モン患者の講演を通じて、 スモンに対する意識の変化がみられたことが分かった。
スモンの風化を防ぐためには、 社会全体でスモン患者のサポート体制を整備する必要があ る。 本府としても、 スモン患者の生の声が府内保健所保健師を含む支援関係者に届くよう、
患者会をはじめとする関係機関とも共同し、 情報提供や啓発を行うなど、 引き続きスモン対 策に取り組んでいく。
知りたいこと、 ⑤今後保健師としてスモンについて取 り組みたいことや取り組めそうなこと) とした。
(倫理面への配慮)
アンケートを回答前に、 対象者には目的等を説明し、
回答は任意とした。 結果に関しては匿名化し、 個人が 特定できないように配慮した。
C. 研究結果
講演受講者は、 43 名であった (政令中核市保健所 保健師 13 名、 府保健所保健師 30 名)。 そのうち、 ア ンケート回答数は、 講演前アンケート 39 名 (回答率 90.7%)、 講演後アンケート 40 名 (回答率 93.0%) で あった。
〈講演前アンケートにおいて〉
①保健師勤務年数について、 20〜30 年未満 は 12 名 (30.8%)、 10〜20 年未満 は 10 名 (25.6%)、 1
〜5 年未満 と 5〜10 年未満 はいずれも 6 名 (15.4
%)、 30〜40 年未満 は 2 名 (5.1%)、 未記入 は 3 名 (7.7%) であった。 最大値は 33 年、 最小値は 1 年、
平均は 15.5 年、 中央値は 16.5 年であった。 (図 1)
②過去の難病業務経験について、 経験あり は 36 名 (92.3%)、 今年度初めて難病病業務に従事する は 2 名 (5.1%)、 未記入 は 1 名 (2.6%) であった。
(図 2)
③スモンについて、 学生時代や保健師の研修等で学 ん だ 経 験 あ り は 21 名 (53.8%)、 経 験 な し は 12 名 (30.8%)、 不明 は 5 名 (12.8%)、 未記入 は 1 名 (2.6%) であった。 (図 3)
④スモンの知識について、 ある程度知っている と の 回 答 は 14 名 (35.9%)、 あ ま り 知 ら な い と の 回 答 は 20 名 (51.3%)、 知 ら な い と の 回 答 は 5 名 (12.8%) であり、 あまり知らない または 知らな い との回答は全体の 64.1%であった。 (図 4)
⑤スモン患者から相談を受けた 経験あり は 6 名 (15.4%)、 経験なし は 33 名 (84.6%) であった。
相談を受けた 経験あり と回答した 6 名のうち 5 名 は、 スモンに関する知識は ある程度知っている と 回答した。 相談をうけた 経験なし と回答した 33 名 の う ち 24 名 (72.7%) は 、 ス モ ン に つ い て の 知 識 を あまり知らない または 知らない と回答した。
(図 5)
― 147 ― 15.4%
15.4%
25.6%
30.8%
5.1%
7.7%
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図 1 保健師勤務年数 (n=39)
92.3%
5.1% 2.6%
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図 2 難病担当業務経験の有無 (n=39)
53.8%
30.8%
12.8% 2.6%
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図 3 スモンについて学んだ経験 (n=39)
35.9%
51.3%
12.8%
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図 4 スモン知識の有無 (n=39)
15.4%
84.6%
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図 5 スモン患者からの相談経験の有無 (n=39)
⑥スモン患者に対する支援について 経験あり は 8 名 (20.5%)、 経験なし は 31 名 (79.5%) であっ た。 支援の 経験なし と回答した 31 名のうち 22 名 (71.0%) は 、 ス モ ン に つ い て の 知 識 を あ ま り 知 ら ない または 知らない と回答した。 (図 6)
⑦スモンに関する疾患や患者に対する自由意見とし ては、 「難病対策の成り立ちとして、 公衆衛生の重要 なエピソードとして、 後進にもしっかり知っていただ く必要があると思う」、 「実際の関わりや支援を行った ことはないが、 安全で体のためを思って服薬した薬に よって健康を害された思いを受けとめる事が必要と考 える。 また実際に支援する際には直面する問題も一緒 に考えていきたい」 などの回答があった。
〈講演後アンケートにおいて〉
①今回の講演で初めて知ったことについて、 スモ
ンに関する医療費制度 は 6 名 (15.0%)、 スモンの 歴 史 は 12 名 (30.0%) 、 ス モ ン の 病 態 は 16 名 (40.0%)、 スモンの患者会 は 11 名 (27.5%)、 ス モ ン 患 者 の 現 状 は 27 名 (67.5%)、 そ の 他 は 4 名 (10.0%)、 特になし は 2 名 (5.0%) であり、 こ の項目の中では、 スモン患者の現状 について初め て知ったとの回答が最多であった。 (図 7)
②講演受講後、 スモンについてのイメージや意識が 変 わ っ た か に つ い て は 、 と て も 変 わ っ た は 8 名 (20.0%)、 やや変わった は 21 名 (52.5%)、 あま り変わらない は 4 名 (10.0%)、 変わらない は 5 名 (12.5%) であり、 全体の 7 割以上がスモンについ てのイメージや意識が変わったという回答であった。
(図 8)
③講演の感想として、 「スモンという疾患について よく分かった。 歴史だけでなく、 難病対策について改 めて認識することができた」、 「今回の講演内容を保健 師間で共有し、 つないでいきたい」、 「地域でスモン患 者に関わるとしても、 ここまで具体的に率直な思いを 聞く機会はないと思うので、 大変勉強になった。 また、
どんな困り事があるかも分かったので今後の支援に役 立てたい」、 「スモンは突然の発症かつ症状も様々であ り、 これまで大変ご苦労をされた様子を語っていただ き、 身を正す思いである。 患者さんだけでなくそのご 家族も苦しんでこられた様子を聞き、 保健師として何 ができるか、 改めて考える機会となった」、 「実際の経 験を聞く貴重な時間だった。 医師の講演を受けた後に、
スモン患者さんの講演を受けることができたので、 病 態と症状がより理解できた。 ご自身も大変な思いをし ているのに、 患者会員の生活まで配慮しており、 心を 打たれた」 などの回答があった。
④保健師として、 スモンについて知りたいことに関 する意見は、 「製薬会社から金銭的な補償があったの か」、 「病態 (経過、 予後も含めて) を詳しく知りたい」
などの回答があった。
⑤スモンについて、 今後保健師として取り組みたい ことや取り組めそうなことの意見として、 「スモン患 者さんと保健所管内でお会いする機会は少ないが、 歴 史について忘れてはいけない。 若い人に伝えていきた い」、 「他の難病と同様に、 地域で包括されるような取
― 148 ― 20.5%
79.5%
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図 6 スモン患者の支援経験の有無 (n=39)
15.0%
30.0%
40.0%
27.5%
67.5%
10.0%
5.0%
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10.0%
20.0%
30.0%
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50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
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図 7 講演で初めて知ったこと (n=40)
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図 8 講演を受講してスモンに関するイメージが変わったか (n=40)
り組みに力を入れたい」、 「スモン検診に同行したい」
などの回答があった。
※%は小数点第 2 位を四捨五入した数値を算出。
D. 考察
今回のアンケート調査から、 スモンに関する知識に 乏しい府内保健所保健師が約 6 割、 スモン患者の支援 経験がない府内保健所保健師が約 8 割存在することが 分かった。 スモン患者と関わる機会が少ないことの要 因として、 2 点考えられる。 1 点目は、 特定疾患受給 者証の更新申請に関して、 患者の負担を軽減するため、
平成 23 年度から大阪府が直接郵送で書類の受付を行 うようになり、 スモン患者が管轄の保健所に出向く機 会が減少したことがあげられる。 2 点目は、 介護保険 や福祉サービス等を利用することで、 地域における支 援者の幅が広がり、 府内保健所保健師への相談が減少 した可能性があることが考えられる。 スモン患者と関 わる機会が少ないことに加え、 新任保健師が増加した ことで、 直接スモン患者の声やニーズを聞く機会がな く、 スモンについての知識が不足している可能性があ ることがあげられる。
また、 講演に関する感想等から、 スモンに関する基 本的な情報提供も重要だが、 当事者の実際の声が、 保 健師のイメージや意識変容に働きかけるのに重要であ ることが分かった。
E. 結論
今回のアンケート調査結果から、 スモンに関する知 識に乏しい府内保健所保健師が約 6 割、 スモン患者の 支援経験がない府内保健所保健師が約 8 割存在するこ と、 医師及びスモン患者の講演を通じて、 スモンに対 する意識の変化がみられたことが分かった。
また、 スモンが発生してから長い年月が経ち、 近年 スモン患者の高齢化や、 併発症状の出現、 なによりス モン自体の風化が大きな問題となっている。 スモンの 風化を防ぐためには、 社会全体でスモン患者のサポー ト体制を整備する必要がある。 本府としても、 スモン 患者の生の声が府内保健所保健師を含む支援関係者に 届くよう、 患者会をはじめとする関係機関とも共同し、
情報提供や啓発を行うなど、 引き続きスモン対策に取
り組んでいく。
G. 研究発表 なし
H. 知的財産権の出願・登録状況 なし
I. 文献 なし
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