空気吹き石炭ガス化複合発電
―IGCC 実証プロジェクト―
1. はじめに
石炭ガス化複合発電(IGCC:Inte- grated coal Gasification Combined Cycle)は,石炭をガス化し,ガスター ビン燃料とする高効率発電技術であ る.日本の電力会社は,酸素吹きガス 化炉を採用した海外の先行機より高い 効率が期待できる空気吹き IGCC 技術 の開発を進めてきた.
1986~1996 年 に 石 炭 使 用 量 200t/
日のパイロット試験を(独)新エネル ギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
の委託事業として実施し,789 時間連 続運転試験を含む 4 770 時間の試験運 転により,IGCC 技術の成立性を検証 している.
本実証プロジェクトは,このパイ ロット試験の成功を受け,商用化への 最終段階として IGCC の信頼性,運用 性,保守性,経済性などを実証するも のである.
2. 空気吹き IGCC の特徴
IGCC の導入により,従来の微粉炭 火力に比べ,下記の効果が期待される.(1)現状の微粉炭火力に対して,送電 端効率が約 2 割向上(商用化段階).
(2)発電効率の向上により発電電力量 当たりの SOx,NOx,ばいじんの排 出量が低減できる.また CO2の排 出原単位を重油火力なみに削減で きる.
(3)既設微粉炭火力では利用しがたい 低灰融点炭が利用可能となるため,
石炭火力発電に利用可能な炭種が 拡大される.
(4)石炭灰をガラス状の石炭ガス化溶 融スラグとして排出するため,土 木工事用材料などとしての有効利 用が期待される.
(5)生成ガスから直接脱硫するため,
多量の用水を使う排煙脱硫装置が 不要となり,既設微粉炭火力と比 べ,用水使用量を大幅に削減できる.
欧米の IGCC 先行機は,酸素吹き ガス化炉を採用しているが,空気 吹き IGCC では空気分離設備の動 力がきわめて少なくなるため,送 電端効率の向上が期待される.
3. IGCC 実証プロジェクトの実 施体制
IGCC 実証プロジェクトは,福島県 いわき市の常磐共同火力(株)勿来発 電所構内で実施され,電力 9 社と電源 開発(株)が設立した(株)クリーン コールパワー研究所(CCP 研究)に より推進されている.
プロジェクト費用については,国(経 済産業省)からその 30%に当たる補 助を受け,残る 70%を電力 9 社,電 源開発,(財)電力中央研究所の 11 法 人が分担している.また,研究員の出 向も含む常磐共同火力の協力を受け,
効率的な実証試験運営を目指している.
4. 実証機の概要
IGCC 実証機は,商用機の約 1/2 規 模の 250MW(石炭使用量 1 700t/ 日)
で,ガス化炉には空気吹き二段噴流床 式ガス化炉を,ガス精製には MDEA
(メチルジエタノールアミン)を用い た湿式ガス精製を,ガスタービンには 出力 250MW に対応する 1 200℃級ガ スタービンを採用した.(図 1,図 2)
5. 実証機の進捗状況
1999~2001 年の設計研究・事前検 証試験を経て,2001 年の CCP 研究所 設立とともに,実証機の詳細設計と環 境アセスメントが始められた.
2004 年に環境アセスメントが完了 し,同年 8 月に建設工事が始まった.
3 年にわたる建設工事が 2007 年 9 月 に終了,ガス化炉の点火とともに実証 試験を開始した.はじめにプラント全 体の調整試験を実施し,2007 年 12 月 に石炭ガス専焼によるガスタービン運 転に成功,2008 年 3 月には定格負荷 の 250MW の 運 転 に 成 功 し た.2008 年 6 月からは,本プロジェクト最大の 目標としている 2 000 時間連続運転を 開始し,2008 年 9 月に延べ 2 039 時間 の連続運転に成功した.電力需要が増 大する夏場の 3 か月間をノンストップ で運転できることを実証したことにな り,商用化へ向けて大きな一歩を踏み 出すことができたと考えている.
2009 年 1 月から 3 月にかけて,運 転最適化試験と炭種変化試験を行っ た.運転最適化試験では,送電端効率
42.9%(低位発熱量(LHV)基準)を 達成した.炭種変化試験では,亜瀝青 炭である北米炭とインドネシア炭,そ れぞれ 1 種を選定し,運転試験を行っ た.部分負荷ではあるものの,設計炭 以外の石炭でも,安定して運転できる ことを確認した.2009 年 6 月から約 5 000 時間の運転を実施し,設備の耐 久性確認を行っている.今後,負荷変 化試験等の制御に関する試験,さらな る炭種変化試験,運用性の向上を目的 とした試験を計画している.実証試験 は 2011 年 3 月の終了予定である.
6. おわりに
日本が開発を進めている空気吹き IGCC は,世界でも最高の送電端効率 が得られる IGCC である.この技術が 完成すれば,石油火力と同等の CO2
発生量で石炭火力発電が可能となり,
資源の節約と同時に,地球温暖化対策 にも大きく貢献することができる.
(原稿受付 2009 年 12 月 11 日)
〔佐藤岳晴 (株)クリーンコールパ ワー研究所〕
複合発電設備
ガス化炉設備 排熱回収ボイラ
ガス精製設備
図 2 IGCC 実証機全景 図 1 IGCC 実証機系統図
石炭
微粉炭機 ガス化炉 熱交換器
スラグホッパ ガス化剤 チャー
ガス精製
チャー回収装置 ガスタービン ホッパ
昇圧機
蒸気タービン
冷却水
発電機 変圧器 電気 排熱回収ボイラ
日本機械学会誌 2010. 4 Vol. 113 No.1097