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肝移植のためのフィブリノゲン補充体制の整備の必要性

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Academic year: 2021

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【編集者への手紙】 Letter to the Editor

肝移植のためのフィブリノゲン補充体制の整備の必要性

武富 太郎

1)

Brian Parker

2)

山田 貴子

3)

田中 紘一

4)

田中 健一

5)

キーワード:脳死肝移植,フィブリノゲン濃縮製剤,クリオプレシピテート,新鮮凍結血漿

2010 年 7 月の臓器移植法改正案施行以来,脳死から の肝移植件数が増加傾向にある.肝移植手術は大量出 血を伴うことも多く,輸血治療は周術期管理の大きな ウェイトを占める.特に本邦の脳死肝移植は米国と比 べてまだ極端なドナー不足があるため,今後暫くは極 めて重症度の高い患者に優先的に肝臓が提供されるケー スが多いと考えられ,出血量も多くなることが予想さ れる.肝移植手術期に見られる Coagulopathy の特徴と しては,凝固因子の不足,希釈性の凝固障害に加えて,

再灌流直後にグラフト肝から分泌されるヘパリン様物 質と tPA(tissue plasminogen activator)が全身に循環 することで線溶を主体とする凝固障害を呈することで ある1).凝固因子の低下,ヘパリン様物質の分泌はトロ ンビンの産生,機能を阻害し,TAFI(thrombin acti- vatable fibrinolysis inhibitor)を介した抗線溶作用が阻 害され,同時に分泌される tPA によるプラスミン活性 化と相乗して,時に止血が得られないほど深刻な線溶 を見る.このような線溶亢進下ではフィブリノゲンが 消費性に低下し,抗線溶薬とともにフィブリノゲンの 補充も必要になる.フィブリノゲンの効率的補充には クリオプレシピテートもしくはフィブリノゲン濃縮製 剤を用いる方法があるが,本邦ではクリオプレシピテー トの日本赤十字社からの供給がなく,フィブリノゲン 濃縮製剤も出血に伴うフィブリノゲン低下には保険適 応がないことから,本邦では新鮮凍結血漿(FFP)で 補う必要がある.しかし FFP のフィブリノゲン含有量 は決して多くなく(224±17.8mg!dl)2),100mg!dl上げ るために必要な FFP の量は 30ml!kg3),一方のクリオ プレシピテートは 3ml!kg と 10 分の 1 の量で済む.肝 移植患者では腎機能や心機能に問題がある患者も少な

くないために大量輸血から血管内容量過多を引きおこ し,肝うっ血によるグラフト機能の悪化も懸念される.

またクリオプレシピテートはフィブリノゲンだけで なく第 8 因子と第 13 因子,vWF も多く含むため,線 溶亢進のために著減する第 8 因子とフィブリン安定化 因子である第 13 因子を効率的に補充できる.一方のフィ ブリノゲン製剤はその他の凝固因子は含まないものの,

より少ない量での補充が可能で,ウィルス不活化処理 がされていること,備蓄保存が容易であるなどの利点 がある.脳死肝移植件数の多い米国クリーブランドク リニックにおいて,2001 年から 2009 年までの全脳死肝 移植症例を調査した結果,23% にあたる患者がクリオ プレシピテートを投与されており,その使用は近年増 加している(Fig. 1).またフィブリノゲン補充の有効性 は肝移植に限らない.山本らは胸部大動脈手術,肝臓 癌・肝門部癌切除術,肝移植手術において低フィブリ ノゲン血症(<150mg!dl)を認めた際にフィブリノゲ ンを補充することで平均出血量を 31〜37% 減少できた と報告している4)

本邦では現在このクリオプレシピテート,フィブリ ノゲン製剤ともに使用が制限されている状況にあり,

フィブリノゲン補充をしばしば必要とする脳死肝移植 が増加している現況を鑑み,早急に供給体制を整備す る必要があると考えられる.

1)岡山大学麻酔・蘇生科

2)Department of Anesthesiology, Cleveland Clinic Foundation 3)川崎医科大学総合外科

4)神戸国際医療交流財団

5)Department of Anesthesiology, Emory university school of medicine

〔受付日:2011 年 12 月 19 日,受理日:2012 年 5 月 1 日〕

Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy, Vol. 58. No. 4 584):555556, 2012

(2)

556 Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy, Vol. 58. No. 4

Fig. 1 Cryoprecipitate use for orthotopic liver transplantation in Cleveland Clinic  Foundation (2001 〜 2009)

1)武田純三,田中健一:麻酔科医,集中治療医に必要な血 液凝固,抗凝固,線溶系が分かる本,真興交易出版,東 京,2011, 127―139.

2)笹川 滋:血液主成分(赤血球,血小板,凝固因子)の 機能の保存による経時的変化.臨床病理,特集第 88 号:105―115, 1991.

3)Chowdhury P, Saayman AG, Paulus U, et al: Efficacy of standard dose and 30ml!kg fresh frozen plasma in cor- recting laboratory parameters of haemostasis in criti- cally ill patients. Br J Haematol, 125: 69―73, 2004.

4)山本晃士,西脇公俊,加藤千秋,他:術中大量出血を防 ぐための新たな輸血治療―クリオプレシピテートおよび フィブリノゲン濃縮製剤投与効果の検討―.日本輸血細 胞治療学会誌,56(1):36―42, 2010.

THE NECESSITY OF FIBRINOGEN SUPPLY SYSTEM FOR LIVER TRANSPLANTATION IN JAPAN

Taro Taketomi

1)

, Brian Parker

2)

, Takako Yamada

3)

, Koichi Tanaka

4)

and Kenichi A. Tanaka

5)

1)Department of Anesthesiology & Resuscitology, Okayama University

2)Department of Anesthesiology, Cleveland Clinic Foundation

3)Department of Surgery, Kawasaki Medical School

4)Foundation for Kobe International Medical Alliance

5)Department of Anesthesiology, Emory University

Keywords:

orthotopic liver transplantation, Fibrinogen concentrate, Cryoprecipitate, fresh frozen plasma

!2012 The Japan Society of Transfusion Medicine and Cell Therapy Journal Web Site: http:!!www.jstmct.or.jp!jstmct!

参照

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