論文内容要旨
論文題名
N-Terminal Pro-B-Type Natriuretic Peptide as a Biomarker for Loss of Muscle Mass in Prevalent Hemodialysis Patients.
(血液透析患者においてNT-proBNPは筋肉量減少のバイオマーカーである)
掲載雑誌名
PLoS One. No.11 Vol.11 e0166804. 2016年
専攻名 内科系内科学(腎臓内科学分野) 氏名 池田 美紗
内容要旨
【背景】透析患者では慢性炎症や低栄養状態が心血管病を高率に発症する(MIA症候群)。 特に同患者の低栄養は脂肪量減少や筋肉量減少を呈した特徴的な病像を形成し、protein- energy wasting(PEW)と定義されている。PEWの進行は様々な因子が要因となり、MIA症 候群の構成因子である慢性炎症や酸化ストレスは、体蛋白や体構成蛋白の産生・合成に比 して異化が亢進した病態形成に関係する。透析患者の慢性炎症は、尿毒症や透析療法に関 連した炎症に加え、体液過剰などが関係することが明らかにされている。
血液透析患者においてPEWは生命予後に関連する重要な病態である。近年、N末端脳性ナ トリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)はPEWに関連することが報告されている。本研究では
NT-proBNPと体構成成分および筋肉量減少の関連について検討した。
【方法】維持血液透析患者238名を対象に、前向きコホート研究を行った。血液サンプル は観察開始時に透析前に採取し、高感度CRP(hsCRP)、interleukin-6(IL-6)、NT-proBNP、
アディポネクチンを測定した。栄養はsubjective global assessmentで評価した。筋肉 量は観察開始時と12か月後に二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で総除脂肪量(TLBM)を 測定し、クレアチニン産生率(%CGR)、クレアチニン・インデックス(CI)を算出した(5ポイ ント/12ヵ月)。体液量は総体液量と細胞外液量をそれぞれWatoson及びPeterの式で算 出した(5ポイント/12ヵ月)。心機能は観察開始時の透析後のドライウェイト時に心臓超 音波検査を施行した。
【結果】NT-proBNP高値群は栄養障害がある患者並びに低心機能患者で有意に上昇した。
また,NT-proBNPは炎症因子のhsCRPとIL-6と正相関した。多変量解析ではNT-proBNP高
値はLBM減少やCI、%CGR低値と有意に相関し、慢性炎症や心機能、体液量と独立した関 連因子であった。
【考察】NT-proBNPは心負荷や体液過剰のバイオマーカーである。血液透析患者でも、体 液量や心機能に関連する。本研究では、心機能や体液量を含め検討したが、NT-proBNPは それらとも独立して筋肉量減少に関するバイオマーカーであった。腎機能正常患者におい ても、慢性心不全患者でカヘキシアを呈する患者ではそうでない患者と比べてNT-proBNP が高値であることが報告されている。
NT-proBNPは脂肪分解作用と骨格筋での酸化的リン酸化を促進しエネルギー代謝調節を行
っている可能性があり、既報の研究で散見されている。脂肪分解によりインスリン抵抗性 が惹起され、さらに心機能低下を誘発させうる。脂肪代謝と同様に、骨格筋内での作用で エネルギー消耗が生じうる。
これらより、持続的なNT-proBNP高値は、うっ血から生じる間接的な栄養障害の指標であ ると同時に、筋肉内エネルギー消費量の増加により筋萎縮を進行させる因子となる可能性 がある。
【結論】NT-proBNPは低栄養の血液透析患者で上昇し、慢性炎症や低心機能、体液過剰と は独立した筋肉量減少に関するバイオマーカーであることが示唆された。