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電解水による野菜殺菌技術の高度化 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 小 関 成 樹

学 位 論 文 題 名

電解水による野菜殺菌技術の高度化 学位論文内容の要旨

く背景と目的>

  本研究は最近急速に高まっている「消費者の生鮮食品の安全性向上に対する要望」に対応 するために,医療分野をはじめとする多方面で殺菌カが注目されている強酸性電解水の食 品分野での応用を検討したものである,電解水(強酸性および強アルカリ性電解水)に関 する研究はその効果に注目が集まり,電解水自体の性質を検討した例は少数であった.そ こで本研究ではまず電解水の基礎特性を把握することを目的とした.次に食品の中でも微 生物汚染度が高く,かっ殺菌が困難なカッ卜野菜を対象として電解水による洗浄・殺菌効果 および品質保持効果を明らかにすることを目的とした.さらに,電解水による洗浄・殺菌技 術 を 中 核 と し た カ ッ 卜 野 菜 製 造 に お け るHACCPプ ラ ン を 策 定 し た .

く結果と考察>

1.電解水の基礎特性

  短 期間の 保存にお いて,強 酸陸電 解水の酸 化還元 電位(ORP),有効塩素濃度(ACC)は 明所開放条件において速やかに低下し,有効性を失うことが示された.一方,遮光密閉条 件において強酸性電解水は安定していることが確認された,pHは保存条件によらず安定し ていた,また,強アルカリ性電解水は保存条件によらず不安定であった.次に強酸陸電解 水は通気・攪拌を加えることで経時的に,還元剤を添加することで添加濃度に比例してACC が 減少する ことが 確認され た.ま た,強酸 性電解 水のORPはACCが 完全に消失するまで lOOOmV以 上の高 い値を維持した.強酸性電解水のpHは通気・撹拌および還元剤を加えて も変化しなかった.さらに強酸性電解水の使用に際して問題となっている金属腐食につい て 各種金属 を用いて検討した結果,強酸性電解水はステンレス鋼(SUS304,SUS316)に対 して腐食作用を示さなかったことから,強酸性電解水の食品工場等における使用に問題が ないことが明らかになった,

2.電解水を用いたカッ卜野菜の殺菌

  強酸性電解水を用いて各種カット野菜(キャベツ,レタス,ニンジン,キュウリ,ゴボ ウ)の殺菌効果を検討した結果,キュウリ以外の試料においては強酸性電解水ーの10分間 以内の浸漬により一般生菌数は初発菌数の1/10〜1/100あるいはそれ以下にまで減少した,

また,強酸性電解水はカット野菜の殺菌において従来使用されている次亜塩素酸ナトリウ ム 水溶液(ACC 150 ppm程度)と同等の殺菌効果を有することが確認された,次にカット

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野菜を強アルカリ性電解水により攪拌しながら前洗浄した後,強酸性電解水で攪拌しなが ら殺菌 した場合 ,キュ ウりのよ うな殺 菌しにく い野菜でも各5分間の処理で初発菌数の 1/100ま で殺菌 すること が確認された.また,ACCやpHを調整して強酸性電解水の殺菌効 果を検討した結果,強酸性電解水の殺菌カの主体が低pH下で酸化カを増大した有効塩素で あるこ とを確認 した. さらに,殺菌カを維持するのに必要なACCが20ppm以上であること を確認した,次に,野菜表面の微生物に対する強酸性電解水の作用を走査電子顕微鏡(SEM) による野菜表面の観察と拭き取り法による表面微生物の殺菌効果との両面から検討した結 果,レ タスの表 面は強 酸性電解水の殺菌効果により清浄化されることが拭き取り試験と SEMによる観察の両面から確認された,一方,キュウりやイチゴでは十分な殺菌がなされ ていなぃことが拭き取り試験とSEMによる観察の両面から確認された,また,電解水によ る洗浄・殺菌が野菜の品質(外観やビタミンC含量)に悪影響を与えないことを確認した,

3.電解水殺菌と修飾空気を併用したカッ卜野菜の品質保持

  電解水によって殺菌したカット野菜を高品質を保持した状態で流通させるために,電解 水によ る殺菌処 理と窒 素ガス(N2)充填包装との併用によルカット野菜の外観品質および 微生物増殖に与える影響を検討した.カット野菜をN2充填包装することで野菜の保存に適 した低02.高C02のガス条件を作り出すことができた.さらに褐変等の外観劣化を抑制す ることを確認した.しかし微生物増殖は包装内ガス組成に関わらず増殖し,増殖速度は保 存温度にのみ依存することが明らかになった.そこで,低温保存中のカット野菜の微生物 数データをもとにカット野菜の微生物増殖モデルを構築し,品質保持期間を予測した,カ ツ卜野菜の一般生菌,大腸菌群,且cereusおよぴ低温細菌の増殖は5および10℃保存にお いてゴンベルツ曲線として表すことができ,初発菌数と保存温度の情報から保存中の細菌 数の予測が可能となった,カット野菜を強酸性電解水で殺菌して細菌数を減少させても,

その殺 菌効果が 持続す るのは5℃および10℃保存では3‑4日聞であった,また,殺菌によ って細菌数を減少させた場合に細菌の増殖速度が速くなることが示され,低温保持との併 用が必要不可欠であることが明らかになった.

4.強酸性電解水氷を用いた野菜の新規殺菌技術の開発

  有効塩素濃度20 ppmの強酸性電解水から調製した強酸陸電解水氷をレタスとともに断熱 容器に封入した場合には容器内の塩素ガス濃度が3.9士0.5 ppm/hにまで上昇し,レタスに存 在する各種微生物に対して強酸性電解水に浸漬した場合と同等の殺菌効果を示した.また 強酸性電解水氷により野菜を氷詰めにすることで低温保持も可能となり,保冷と殺菌を同 時に行う新規殺菌技術としての利用可能性が示された,

5.電解水を用いたカット野菜襲造‐流通におけるHACCP

  カッ卜野菜製造における衛生管理対策としてモデルHACCPプランを作成した.まず,強 酸性電解水氷によって低温保持と殺菌を行いつつ原料となる野菜を搬入する.その後,強 アルカリ性電解水によって洗浄してから強酸性電解水で洗浄することで確実な殺菌効果を 得ることが可能となる,さらに,窒素充填包装をすることによって外観品質の劣化を抑制 する,以上のようにこのモデルHACCPプランには本研究で得られた成果が盛り込まれてお り,これまで示されてきたモデルよりも高度な衛生管理体制を確立し得ることが明らかに なった.

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    伊藤 和彦 副査    教 授    端    俊一 副査    教 授    松田 從三 副査   助教授   川村周三

学 位 論 文 題 名

電解水による野菜殺菌技術の高度化

  本 論 文 は7章 か ら 構 成 さ れ て お り , 図95, 表24, 参 考 文 献166を 含 む総 頁数217 の和文論文である 。別に参考論文が7編添えら れている。

  本研 究は最近急速に 高まっている「消費者の生鮮加工食品の安全性向上に対 する要 望」に対応するた めに,カット野菜を対象として医療分野をはじめとする多方面でその 殺 菌カ が注目されてい る強酸性電解水を用いた殺菌技術の高度化を目的として いる。

最 初に 電解水の基礎特 性を把握し,強酸性電解水を用いたカット野菜の殺菌お よび品 質 保持 法の検討,強酸 性電解水氷を用いた新規殺菌技術の開発並ぴに強酸性電 解水を 基 軸と した カッ ト野 菜製 造工 程と 流通過程のHACCPプランを提案している。内 容は以 下のように要約さ れる。

1. 電 解水 の基 礎特 性

  強 酸 性 電 解 水 の 酸 化 還 元 電 位(ORP)およ び有 効塩 素濃 度(ACC)は 遮光 密閉 条件 に おい て安 定していることを確認した。また,強アルカリ性電解 水は保存条件によらず 不安 定で あっ た。 強酸 性電 解水 は 有機物と反応して比較的短時間にACCが減少するこ とを 確認 した。また,強酸性電解水の使用に際して問題となっ ている金属腐食につい て各 種金 属を用いて検討した結果,強酸性電解水はステンレス 鋼に対して腐食作用を 示さ なか ったことから,強酸性電解水の食品工場等における使 用に問題がなぃことを 明ら かに した 。

  2. 電解 水を 用い たカ ッ卜 野菜 の殺 菌

    強酸 性電 解水 を用いて各種カット 野菜(キャベツ,レタス,ニンジン,キュウリ,

  ゴ ボウ )の 殺菌 効果を検討した結果 ,キュウリ以外の試料を強酸性電解水に浸漬した

,場 合,10分 問以 内に一般生菌数を初 発菌数の 1/10〜1/100あるいはそれ以下にまで減   少 させ るこ とが 可能であることを明 らかにした。また,強酸性電解水はカット野菜の   殺 菌に おい て従 来か ら使 用 され てい る次 亜塩素酸ナトリウム水 溶液(ACC濃度150 ppm   程 度) と同 等の 殺菌効果を保持して いることを明らかにした。次にカット野菜を強酸

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性 電解 水による殺菌の前処理として強 アルカリ性電解水を用いて洗浄を行った結果,

キ ュウ りの よ うな 殺菌 しに くい 野菜 でも 各5分 問の 処理 で初発菌 数の1/100まで殺菌 で きる ことを明らかにした。強酸性電 解水の殺菌カの主体が低pH下で酸化カを増大し た有効 塩素であることを確認し,さらに,殺菌カを維持するた めの必要最小限度のACC は20ppmであ るこ とを 明ら かに した。 次に,野菜表面の微生物に対する強酸性電解水 の 作用 を走 査 電子 顕微 鏡(SEM)による 野菜表面の観察と拭き取り法による表面微生物 の 殺菌 効果との両面から検討した結果 ,レタスの表面は強酸性電解水の殺菌効果によ り清浄 化されることを認めた。また,電解水による洗浄・殺菌が野菜の品質(外観やア スコル ビン酸含量)に悪影響を与えなぃことを確認した。

3. 電解 水殺 菌と 修飾 空気 を併 用し た カッ ト野 菜の 品質 保持

  殺菌 後 のカ ット 野菜 をN2充填 包装 することで野菜の保存に適し た低02.高C02のガ ス 条件 を 作り出すことができることを 明らかにした。さらに褐変等の外観劣化を抑制 す るこ と を確認した。しかし微生物増 殖は包装内ガス組成に関わらず増殖し,増殖速 度 は保 存 温度にのみ依存することが明 らかにした。そこで,低温保存中のカット野菜 の 微生 物 数データをもとに微生物増殖 モデルを構築し,品質保持期間を予測した。カ ッ ト野 菜 の各 種微 生物 の増 殖は5お よ び10℃保存においてゴンペルツ曲線として表す こ とが で き,初発菌数と保存温度の情 報から保存中の細菌数の予測が可能となった。

4.強 酸性 電解 水氷 を用 いた 野菜 の 新規 殺菌 技術 の開 発

  有 効 塩素濃度20 ppmの強酸性電解 水から調製した強酸性電解水氷をレタスとともに 断熱 容 器に封入した場合,容器内の 塩素ガス濃度が4ppmにまで上昇した。レタスに存 在す る 各種微生物に対して強酸性電 解水に浸漬した場合と同等の殺菌効果を示した。

また 強 酸性電解水氷により野菜を氷 詰めにすることで低温保持も可能となり,保冷と 殺菌 を 同時 に行 う新 規殺 菌技 術を 提案 した 。

5.電 解水 を用 いた カッ ト野 菜製 造 ・流 通に おけ るHACCP

  本 研 究で 得ら れた 結果 を贐 り込んだHACCPプランを作成し,これまで示さ れてきた HACCPプ ラン より もさ らに 高度 な衛 生 管理 体制 を確 立し 得る こと を明 らか にし た。

  以上 のように,本研究は電解水の性質および殺 菌特性に関する基礎的な知見を提起 し た新 規性の高いものであるとともに,カット野 菜の製造,流通における実用化レベ ル での 応用を提起しており,先駆性を有する研究 として関係学会およぴ関係業界で高 く 評価 され てい る, よっ て審 査員 一 同は ,小 関成 樹が 博士 (農学)の学位を受ける の に十 分な 資格 を有 する もの .と 認 めた 。

参照

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