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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士( 獣 医学 )阿 部 仁一郎

     学位論文題名

Molecular Epizootiology of Blastocystis Infection in Japan      (日本におけるブラストシスチスBlastocystis の分子動物疫学)

学位論文内容の要旨

  プラスト シスチスBlastocystis hominisは人の消化管に寄生する原虫である.

他の哺乳動物や鳥類からもB. hominis様の微生物が見出され,それらはB.hominis と形態学的に区別できないことからBlastocystis sp.と称され,動物由来株とヒト のB. hominisとの 異同が論 議の的に なってい る.人に おける疫学 調査で動物取 り扱い者 の感染率 が高いこ とから, 人獣共通寄生虫の可能性が示唆されている.

さら に , 分子 生 物学 的 研 究に よ り ,2つ の 動 物から の分離株 が人由来 株とほぽ 同じであ ることが 示された .したが って,人への感染の可能性を評価する上で,

動 物 由 来Blastocystisを 遺 伝 子 レ ベ ル で 特 徴 づ け る こ と が 重 要 で あ る .   国内の動 物におけ るBlastocystisの感染状況は明らかではなく,動物由来株と 人のB. hominisとの遺伝子レベルでの解析もほとんど手付カゝずの状態である.

Blastocystisが人獣共 通寄生性 であるか容易に判断できない現在,様々な動物の 疫学 調 査 が必 要 である. また,動 物由来株 の遺伝子 レベルの 解析は世 界的にも 少数につ いてのみ 実施され ているに 過ぎない ので,人のB. hominisと動物由来 株との異 同を解明 するため には,両 者の系統関係をさらに解明する必要がある.

このよう な観点か ら本研究 では,国 内の各種動物におけるBlastocystisの寄生状 況を 調 査 する と ともに, 分離株を 分子生物 学的手法 により解 析し,そ れらの系 統分類学的特徴を明らかにした.

  ま ず ,西 日 本 の動物疫学 調査は, 食肉セン ターで屠 殺された 牛(調査 数:55 頭) , 豚(61頭 ) ,動 物 管 理セ ン タ ーで 保 護さ れ た 犬(54頭 )お よ び 動物 園 で 飼 育 さ れ た 哺 乳 類 ( 霊 長 類1334頭 , 草 食 動 物933頭 , 肉 食 動 物1125 頭) と 鳥 類(13種26羽)を対 象とした .高い感 染率は家 畜に見ら れ,牛で71 (39/55), 豚 で95%(58/61)だ ったが,犬 からは全 く検出さ れなかっ た(O%:

0/54). 動物 園 の 動物 で は, 霊 長 類で85(29/34), キジ 類 で80(8/10), カ モ類で56(9/16)だったが ,他の肉 食動物(0%:0/25)と草食動物(O%:0/33) から は 全 く見 出 されなか った.豚 ,霊長類 および鳥 類におけ る本原虫 の高い感     ―207

(2)

染率は世界各地でも報告されているが,牛における感染率はこれまで15%以下 と比較的低いことが知られていた.今回の調査により,国内の牛には本原虫が 高率に感染していることが判明した.

  

次に,今回の調査で動物から分離された株とヒトのB. hominisとの遺伝学的 類似性について検討するために,A hominisを遺伝学的に異なるグループに型 別で きることが 知られている,サプタイプ特異プライマーを用いたPCR法(B.

hominis

4

つ の サ プ タ イ プ に 型 別 ) と 小 亜 粒 子 リ ポ ソ ー ム

RNA

遺 伝 子

  (SSUrDNA

)を ターゲット としたPCR‐

RFLP

法ゆ.加

mm

むを7つ のりポデー ム に 型別 )を 用いて,動 物由来41分離 株(牛10株, 豚12株,霊長 類12株,

鳥類

7

株) を解析した .牛,豚お よび霊長類 からの6株はサプタイプ1に,霊 長 類 から の 他の

6

株は サ プタ イ プ

1

Want

に,牛 と豚の他の

3

株は サプタイ プ3に,そ して,鳥類 からの3株はサプタ イプ4に相当する株であることが判 明した.過去の報告によると,B.轟〇m珈むのサプタイプ1と

3

はりポデーム1 と2に各々 相当するこ とが知られているが,サプタイプ1であることが判明し た動物由来6分離株のPCR‐RFLPパターンはりポデーム1のパターンに一致し,

サプ タイプ3に相当し た3株の それらはり ポデーム

2

のバターンと一致した.

霊長類からの他の3株のサプタイプは同定できなかったが,それらのPCR‐RFLP パターンはりポデーム6のバターンに一致していた.一方,各動物からの他の

20

分離 株は,1から4のサプタイ プ特異プラ イマーを用 いた

PCR

法で全て陰性 であり,さらに,それらのPCR‐心屯Pバターンも既に報告されている各リポデ ームのバターンとは異なっていた.これらのことから国内だけでも様々な変異 があることが示された.さらに,動物由来株内には人のB.轟

D

腕mむと遺伝学的 に類似した株の存在が明らかとなった.これまで鶏とモルモット由来株のみが 人獣共通寄生性と報じられてきたが,サブタイプとりポデーム型別により,サ プタ イプ1(リポデー ム1)あるいはサブタイプ

3

(リポデーム2)に相当した 牛,豚および霊長類からの9分離株は人獣共通寄生性と考えられ,他の動物種 にも人獣共通寄生性の可能性を有するものが存在することを初めて遺伝子レペ ルで明らかにした・

  

次に,動物由来株と人のB.轟Dmf門むとの異同を解明するために,SSUrDNAの シーケンスデータを基に,両者の系統関係について解析した,解析に際し,サ プタ イプまたは りポデーム型別された動物由来19株(牛,豚,霊長類,烏類 を含む)の当該領域のシーケンスを明らかにし,それらとGenBankに登録され ている人のB.加mmむおよび動物由来数株のシーケンスデー夕(25株)を用い て解析した.シーケンスの相同性は比較した44株間で84.7〜100%であった.

(3)

人のA hominisと動物由 来株は7つのグループ(Groups I〜VII)に分類され,

グループIは人を含む霊長類,家畜(牛,豚)および鳥類,IIは人を含む霊長 類,mは人と家畜(牛,豚),IVは霊長類,烏類,齧歯類,Vは家畜(牛,豚),

VIとVIIは人と鳥類からの分離株を含み,多くは人獣共通寄生性であることが 示唆された.過去の報告によると,異なる宿主間での本原虫の交差伝播が実験 的に確認されていることから,これらのグループに分類される動物由来株は,

交差感染性を有した株であると推測された.分子系統樹で示されたBlastocystis の7つのグルー プ(I〜VII)は,サプタイプおよびりポデーム型別の結果と相 関した.すなわち,グループIはサプタイプ1(リポデーム1)に,グループII はりポデーム6に,グループIIIはサプタイプ3(リポデーム2)に,グループ VIはサプタイプ4に,グループVIIはサプタイプ2に相当する株で構成された.

一方,グループIVとVは新たなグループであった.

  多様な動物種から見出されるBlastocystisは,ヒトから検出されるB.hominis と形態学的に区別できないが,分離された動物種,形態的特徴および核型解析 などから幾つかの新種が提唱されている.新種として報告されたBlastocystisの SSUrDNAの シーケンス は明らかではないので,今後の研究が必要である.多 くの人と動物由来株が人獣共通寄生性で,異宿主間で容易に交差伝播するなら ぱ,宿主名に基づいた種名の提唱は不適切と考えられる.本原虫の分類は分子 系統学的解析が現在最も有効であることから,今後より多くのヒトと動物由来 株の遺伝子のシーケンス情報が蓄積されることにより,より適切な分類法が確 立されるものと考えられる.

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査

教授 教授 教授 助教授

神谷 大泰司 高島

正男 紀之 郁夫 祐三郎

     学位論文題名

Molecular Epizootiology of Blastocystis InfectioninJapan

( 日 本 に お け る ブ ラ ス ト シ ス チ スBlastocystisの 分 子 動 物疫 学 )

  ブラス トシス チスBlastocystis hominisは人の消 化管に寄 生する 原虫で、他の哺乳動物 や鳥類 からも8. hominis様の微生物が見出されている。これらはBlastocystis sp.と称さ れ、人 獣共通 寄生虫の 可能性が示唆されている。したがって、人への感染の可能性を評価す る上で 、動物 由来Blastocystisを 遺伝子レ ベルで 特徴づけ ること が重要で ある。国内の動 物 にお け るBlastocystisの 感染状況 は明ら かではな く、動 物由来株 と人の &hominisと の 遺伝子 レベル も未解明 の部分が多い。これらの類縁関係をさらに解明する必要がある。この ような 観点か ら申請者 は、国内 の様々 な動物に おけるBlastocystisの感染 状況を調査する と と も に 、 分 子 生 物 学 的 手 法 に よ り 分 離 株 の 類 縁 関 係 を 明 ら か に し た 。   ま ず 、 国内 の家 畜及び 動物園動 物(哺 乳類33種、 鳥類13種 )合計288個体 を調ベ、 動物 園の肉 食獣と 草食獣か らは検出できなかったが、その他の動物からブラストシスチスが検出 され、 広く分 布してい ることを初めて明らかにした。特に、牛において高度に流行している ことを 発見し た。

  次に、 これら のブラス トシスチス分離株の遺伝的な特徴づけを試み、すでに一部でおこな われて いる特 異プライ マーを用 いたPCR法(サ プタイ プ分け) と、リ ポソームRNA遺伝子を タ―ゲ ットと したPCR‑RFLP法 (リボデ ,ム分け )を用 いて解析 した。 これらの方法ではカ テゴリー分けができない分離株が多く、動物由来株fあ竃伝的に多様であることを示し、さら に、牛 、豚お よび霊長 類由来株 の中に 、人のB. hominisと遺伝学 的に類 似した株の存在を 明らか にした 。

  さ ら に 、動 物由 来株と 人のB.hominisとの類縁 関係を 解明する ために、 リボソ ―厶RNA 遺 伝子 の 塩 基配 列デー タをもと にこれら の系統 関係につ いて解 析し、7グルー プに分 類し た。そ れらの 中で、5グルー プは人 と動物由 来株を 合むことを示し、動物由来株の多くは人 獣共通 寄生性 であるこ とを示唆 した。

  以上の ように 、申請者 はプラストシスチスの国内における様々な動物における流行状況、

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さらにこれらの調査で得た分離株の遺伝子解析により類縁関係を解明し、プラス卜シスチス の動物疫学に関する新たな情報を提供した。よって、審査員一同は申請者、阿部仁一郎氏が 博士(獣医学)の学位を受ける資格があるものと認める。

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