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アンダーサンプリングによる高周波電波環境認識

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Academic year: 2021

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(1)

論 文

アンダーサンプリングによる高周波電波環境認識

久野 伸晃

森本 勇樹

唐沢 好男

High Frequency Radio Environment Recognition Based on Undersampling Nobuaki KUNO

, Yuki MORIMOTO

, and Yoshio KARASAWA

あらまし 近年,利用可能な周波数帯域を適応的に変更するコグニティブ無線など,広い帯域を利用する高度 な通信システムの研究が盛んになっている.このようなシステムでの受信系においては,広帯域の待ち受けが必 要となり,帯域内に強い入力レベルの干渉信号が入射することによる干渉問題が起きやすい.強い干渉信号に対 しては,入力段階で抑圧する必要があり,その周波数特定が必要となる.本論文では,2系統の低速サンプリン グAD変換器を用い,信号のデータサイズを落とした状態で任意の高周波信号の周波数を特定する方法を示す.

また,所望波に対して干渉波が十分に大きなレベルである場合,電力の加重平均の導入による簡易的な中心周波 数特定法を提案し,計算シミュレーションによりその原理の妥当性を示す.

キーワード コグニティブ無線,受信系非線形問題,アンダーサンプリング

1.

ま え が き

近年,ワイヤレス機器の増加に伴う周波数資源枯渇 問題の解決策として,利用可能な周波数の帯域を適 応的に変更するコグニティブ無線など,広い帯域を適 応的に利用する高度な無線通信方式の研究が盛んに なっている

[1]

[3]

.これらの通信方式に用いられる

OFDM

伝送などのマルチキャリヤ伝送では,激しい 瞬時電力の変動から,増幅器における非線形性に伴う ひずみによる受信特性劣化が問題となる

[4], [5]

.これ らの問題に対しては,

OFDM

信号の瞬時電力の抑圧 による非線形ひずみの軽減や,非線形ひずみが生じた 信号に対する補償法の研究が進められてきた

[6], [7]

. しかし,広帯域受信系通信システムにおいては,別の 通信システムなどによる,突発的な入力レベルの強い 狭帯域信号に伴う非線形干渉の影響が問題となる

[8]

. よって,これらのような広帯域受信系の通信方式にお いては,強い入力レベルの干渉信号に対して入力段階 で抑圧する必要があり,その周波数特定が必要となる.

高速サンプリング環境下では,ディジタル信号の

電気通信大学先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター,

調布市

Advanced Wireless and Communication Research Center (AWCC), The University of Electro-Communications, 1–5–1 Chofugaoka, Chofu-shi, 182–8585 Japan

DOI:10.14923/transcomj.2016GTP0007

データ量は膨大であり,受信系における信号処理と周 波数特定を同時に行うことは容易ではない.そこで,

本論文では,

2

系統の低速サンプリング

AD

変換器

Analog-to-Digital Converter: ADC

)を用いた,信 号のデータサイズを落とした状態で任意の高周波信号 の周波数を特定する方法を示す.また,所望波に対し て干渉波が十分に大きなレベルである場合,電力の加 重平均の導入による簡易的な中心周波数特定法を提案 し,計算シミュレーションによりその原理の妥当性を 示す.

2.

対象とするシステム

2. 1

二次利用者(

SU

)を対象とする環境適応型 広帯域無線

ここでは,ホワイトスペースの有効活用のため,二 次利用者(

Secondary User: SU

)としての通信システ ムを対象とする.図

1

のように,一次利用者(

Primary User: PU

)の未使用帯域から利用可能周波数帯域を 観測し,使用可能周波数を適応的に変更することで,

周波数利用効率を向上させている.しかし,複数の帯 域を利用する通信システムでは,受信系は広帯域で待 ち受ける必要があるため,この帯域内に強い入力レベ ルの干渉信号が入射することによる干渉問題が起きや すい

[9]

(2)

2. 2

受信系非線形問題

基本的に受信機は,

PU

の信号による飽和のないよ うに余裕のある設計とする.しかしながら,

PU

シス テムとの位置関係等により,非線形問題を引き起こす 強い入力レベルの干渉波が入射する可能性がある.図

1

のシステムでは,

SU

として利用している帯域は

PU

の帯域と重複していないが,強い入力レベルの干渉波 は,受信系において増幅器による非線形増幅などを引 き起こし,相互変調や混変調などの非線形ひずみが発 生することで,受信特性を大きく劣化させる

[8]

非線形問題の対策として,文献

[7]

では,非線形ひ ずみが発生した

OFDM

信号に対して,受信側でその レプリカを作成し,非線形ひずみの補償処理を実現す るような方式が提案されている.しかし,適応的に利 用帯域を変更する通信システムでは,受信系でのレプ リカの複製は複雑になり,信号処理における負荷は増 加してしまう.

2. 3

環境適応動作に基づく非線形問題対策 図

1

の電波環境において,受信系を飽和させる強い 入力レベルの干渉信号が入射した場合,干渉信号のみ を非線形現象が起きないレベルまで抑圧することで,

同問題は解決が可能となる.また,抑圧に用いる帯域 除去フィルタ(

Band Rejection Filter: BRF

)は,干 渉信号の完全な抑圧の必要がないため,急しゅんな特 性をもたない簡易なもので良い.ここでは,以下に示 す環境適応動作による非線形問題の解決を考える.

ステップ

1. ADC

に入力時の電力などから干渉波 を検知する

ステップ

2.

レベルの強い干渉波を検知した場合,

その周波数を算出する

ステップ

3.

帯域除去フィルタの帯域を干渉波に合 わせる

ステップ

4.

所望波の帯域がフィルタの減衰影響を 受ける場合,送信側でフィルタの影響を受けない帯域 に移動する

2

は,この環境適応動作のイメージである.複数

2 干渉信号に対する環境適応動作 Fig. 2 The adaptation for interference.

3 電波環境認識と干渉波抑圧の一般的な回路構成 Fig. 3 The general circuit configuration of environ-

ment recognition and intererence suppression.

のホワイトスペースを適応的に利用するシステムであ るため,このような帯域移動が可能となる.この適応 動作には,干渉信号の周波数を特定する手段が必要で あるが,図

3

の一般的な構成で広帯域の信号をそのま ま扱う場合,回路規模や計算時間の面で大きな負担と なるため,簡易に推定できる方法が望まれる

[10]

.そ こで,アンダーサンプリングによる,信号のデータサ イズを落とした状態で任意の高周波信号の周波数を特 定する方法を提案する.

3.

アンダーサンプリングによる簡易環境 認識

3. 1

環境認識部の基本構成

2. 3

で述べた環境適応動作を,図

4

の環境認識回路 を用いた基本構成で考える.強い入力レベルの干渉信号 が入射すると,低雑音増幅器(

Low Noise Amplifier:

LNA

)において非線形ひずみが生じる.図

4(a)

の構 成では,同ひずみが生じる前にアナログ段階で干渉信 号の周波数推定を行う.図

4(b)

の構成では,信号処

(3)

4 環境認識回路を用いた基本構成 Fig. 4 The basic configuration using ERC.

理部において高速

ADC

のデータ間引きにより図

4(a)

の低速

ADC

と等価とし,同ひずみが生じた信号に対 して干渉信号の周波数推定を行う.

サンプリング定理により,復調回路系における

ADC

では,上限周波数

f

max

2

倍以上のサンプリング周 波数が必要となるが,環境認識回路系では,例えば

1/10

以下に抑えた低速サンプリングによる信号処理 を考える.単純にサンプリング速度

f

sを低速にする のみでは,信号成分スペクトルは,

0 f

s

/2

の周波数 レンジに折り返して現れてしまう.しかしながら,図

5(a)

に示すように,図

4(a)

におけるフィルタからの 入力信号を分岐後,その一方に遅延素子による遅延量

Δτ

を与えると,両方の信号に対してフーリエ変換し た同一周波数成分間には,元々の周波数に依存する位 相差が生じる.この位相差及び与えた遅延量

Δ τ

から

0 f

s

/ 2

の周波数レンジの信号を特定することがで きる.

5(b)

は,図

5(a)

と同様に入力信号を分岐し,図

4(b)

の構成の環境認識回路に信号を入力したものであ る.図

5(a)

に対して

LNA

における非線形ひずみの影 響を受けるが,

3. 3

で述べる強調ファクタ

α

を大きく することで,同認識法により干渉信号の周波数を特定 することができる.

3. 2

環境認識法の基本原理

アンダーサンプリング周波数を

f

sとしたとき,ナ イキスト周波数

f

s

/ 2

以上の信号は,エイリアス信号 として式

(1)

の周波数

f

の成分として現れる.

f

= |f Nf

s

| (0 f

< f

s

/ 2) (1)

ここで,

N

は式

(1)

を満たす整数である.遅延

Δ τ

5 環境認識回路の回路構成 Fig. 5 The circuit configuration of ERC.

よる二つの

ADC

の入力信号の位相差

Δ φ

(チャネル

1

を基準とした)は,元の周波数

f

に依存し,式

(2)

で表される.

Δ φ = 2 πf Δ τ (2)

ゆえに,元の周波数

f

は,位相差

Δ φ

から,式

(3)

よ り求めることができる.

f = Δ φ

2πΔτ (3)

以上から,この環境認識回路において,位相差

Δ φ

2 π < Δ φ 0

となる範囲であれば,すなわち

Δ τ < 1 /f

max

f

max:特定したい周波数の最大値)と なるように遅延量

Δ τ

を設定すれば,サンプリング定 理を満たさない信号であっても,元の周波数を特定す ることができる.タイプ

2

の場合は,高速

ADC

の出 力を間引いて利用するが,サンプル間隔が

Δ τ

であれ ば,タイプ

1

と同等の信号を得ることができる.

3. 3

重み付け演算による干渉波の中心周波数 自動推定

前節では,正弦波信号に対する周波数推定の動作原 理を示したが,実際の信号では帯域幅を有し,かつ,

アンダーサンプリングされた後の周波数レンジにおい て,所望波と干渉波のスペクトル帯域の重複が起こり 得る.このような場合でも,受信系飽和を引き起こす 干渉波については,入力レベルが所望波に対して十分 に強いという特徴を利用した,中心周波数の自動推定 法を以下に提案する.

所望波に対して,干渉波が十分大きなレベルである

(4)

Δ φ =

i

ω

i

Δ φ

i

i

ω

i

(4)

ここで,

i

FFT

後の離散周波数成分の番号であり,

加重係数

ω

iは電力強調ファクタ

α

を用いて式

(5)

で 与える.

ω

i

= p

αi

(5)

(4)

電力加重平均位相差

Δφ

を,式

(3)

の位相差

Δ φ

に代入することで,式

(6)

から干渉波の中心周波 数

f

Iを算出することができる.

f

I

= Δ φ

2πΔτ (6)

3. 4

環境認識法のメリット・デメリット

まず,計算量の観点から比較を行う.従来法が高速

ADC

の受信データを高速フーリエ変換(

Fast Fourier Transform: FFT

)し,周波数スペクトルの最大値を 算出するとすると,データ量を

n

としたとき,各々の おおよそのステップ数は以下となる.

FFT. n log n

最大値の算出

. n

よって,データ数が十分に大きいとき,従来法の計算 量は

o ( n log n )

となる.これに対して,提案法におけ るアンダーサンプリング後のデータ量を

n

とすると,

各々の計算におけるおおよそのステップ数は以下と なる.

FFT. n

log n

(4) :

加重平均

. 2 n

+ 1

(5) :

強調ファクタ

α

の算出

. αn

(6) :

中心周波数

f

Iの算出

. 1

ここで,式

(5)

のべき乗のステップ数はおおよそ

α

で あるとした.後述する原理検証実験の結果から,所望 信号に比べて干渉信号の入力レベルが十分に大きい場 合には

α = 4

程度で収束するため,提案法の計算量は

o ( n

log n

)

となる.よって,提案法の計算量はデータ 量

n

及び

n

の比,すなわちサンプリング周波数比に

算の場合,必要とするメモリ量はサンプリング周波 数比に比例するため,小規模の回路で実現できる

3

) 広い待ち受け帯域であっても,その範囲 内で干渉波の周波数が簡単な演算で特定できる 提案法のデメリット

.

1

ADC

のサンプリング周波数は小さくて も良いが,バンドパスサンプリングのため,広帯 域特性は従来法の

ADC

と同程度のものが求めら れる

2

) 干渉波が複数の帯域の存在する場合,そ れぞれの周波数を算出することはできない(複数 の干渉波への応用は今後の課題)

4.

シミュレーションによる原理検証

4. 1

アンダーサンプリングによる正弦波信号推定 図

6

の構成で,正弦波信号の周波数推定により,

3. 2

で述べた環境認識法の原理検証を行う.ここでは,所 望波と干渉波を区別せず,三つの正弦波信号を原信 号とした.各信号はサンプリング周波数

4GHz

で生 成し,各信号の中心周波数及び入力レベルは表

1

,環 境認識回路のサンプリング周波数及び遅延量

Δ τ

200MHz

及び

0.25ns

とした.

Δ τ = 0 . 25ns

から式

(3)

より,ナイキスト周波数

2GHz

までの信号は位相差

Δφ = 0 π

に現れる.

7

は原信号及びアンダーサンプリングした信号

6 正弦波信号の周波数推定における シミュレーション構成

Fig. 6 The simulation configuration for frequency es- timation of given sine waves.

1 正弦波信号の周波数推定における設定値 Table 1 The center frequency and input level of each

signal in estimation of sine wave frequency.

信号1 信号2 信号3 中心周波数[MHz] 1152 1686 1839

入力レベル[dB] 0 −10 −5

(5)

7 正弦波信号の周波数推定における信号のスペクトル Fig. 7 The frequency spectrum in estimation for

down-sampled sine-wave signals.

2 正弦波信号の中心周波数推定値

Table 2 The estimated center frequency of sine wave.

(a)各信号の位相差

信号1 信号2 信号3 位相差[rad] 1.808 2.657 2.884 (b)位相差から算出した中心周波数の推定値及び標準偏差

信号1 信号2 信号3 中心周波数 設定値[MHz] 1152 1686 1839 中心周波数 推定値[MHz] 1152 1686 1839 標準偏差[MHz] 1.255 3.864 2.520

のスペクトルである.各信号の中心周波数は,表

1

及 び式

(1)

から,それぞれ

48MHz

86MHz

及び

39MH

の周波数に折り返し,図

7(b)

からも確認することが できた.

雑音レベルを

60dB

としてシミュレーションを

100

回行った場合,各信号の位相差の平均値は表

2(a)

と なった.位相差及び式

(3)

の理論式の関係は図

8

とな り,式

(3)

から算出した中心周波数の推定値及び標準 偏差は表

2(b)

となった.標準偏差は各信号のレベル の影響を受けているが,

1 . 3 3 . 9MHz

の範囲の高い 精度での周波数推定値が得られていることから,

3. 2

で述べた基本原理を立証することができた.

4. 2

アンダーサンプリングによる干渉信号の 中心周波数推定

9

の構成で,帯域を有する干渉信号の中心周波数

8 周波数と位相差の関係

Fig. 8 The relationship of frequency and phase dif- ference.

9 重み付け演算による周波数推定における シミュレーション構成

Fig. 9 The simulation configuration in estimation us- ing weighting calculation.

3 重み付け演算による干渉信号の周波数推定における 設定値

Table 3 The parameter in estimation using weight- ing calculation.

信号1 信号2 信号3 中心周波数[MHz] 1620 1280 1837

入力レベル[dB] 0 −25 −20

推定を行い,

3. 3

で述べた推定法の原理検証を行う.

ここでは,二つの所望信号及び一つの強い入力レベル の干渉信号を想定し,三つの帯域幅

30MHz

の信号を 原信号とした.各信号はサンプリング周波数

4GHz

で 生成し,各信号の中心周波数及び入力レベルは表

3

, 環境認識回路のサンプリング周波数及び遅延量

Δ τ

200MHz

及び

0.25ns

とした.前節同様,

Δ τ = 0 . 25ns

から信号の位相差

Δφ

0 π

の範囲に現れる.

10

は原信号及びアンダーサンプリングした信号 のスペクトルである.各信号の中心周波数は,前節と 同様に式

(1)

から

20MHz

80MHz

37MHz

に折り 返して現れることが図

10(b)

からも確認することがで きた.

雑音レベルを

60dB

としたとき,各信号の位相差 とアンダーサンプリングした信号における周波数の関 係は図

11

となった.干渉信号の位相差成分は周波数

5 35MHz

に現れ,

22 52MHz

に現れる信号

2

(6)

10 帯域信号のスペクトル

Fig. 10 The frequency spectrum of band signals.

11 アンダーサンプリング信号の位相差特性 Fig. 11 The relationship of frequency and phase dif-

ference characteristics of band signals on the down-sampled frequency domain.

位相差成分と重複しているが,入力レベルの高い干渉 信号に成分の分布が集中していることが確認できた.

雑音信号の入力レベルを

−60 0dB

としてシミュ レーションを各

100

回行った場合,干渉信号の中心周 波数推定値との関係は図

12

となった.雑音信号にお ける位相差は図

11

において

0 π

の範囲で一様分布 であり,平均値

π/ 2

に対応する周波数推定値は式

(3)

1000MHz

となる.よって,雑音信号の入力レベル が大きくなることで,周波数推定値は

1000MHz

に収 束することが,図からも確認できた.更に,電力強調 ファクタ

α

の値を大きくすることで,中心周波数推定 値は設定値に近づくことから,

α

による推定精度の向

12 重み付け演算による周波数推定における 雑音の入力レベルと周波数推定精度の関係 Fig. 12 The relationship of noise power and esti-

mated frequency in estimation using weight- ing calculation.

4 帯域の重複率と推定精度の関係調査における 中心周波数設定値

Table 4 The setting center frequency in reserch for relationship of frequency overlap ratio and estimate accuracy.

ケース1 ケース2 干渉信号 1620 中心周波数 信号1 1280

信号2 1823 1847 干渉信号と所望信号の帯域重複率 90% 10%

上も確認できた.

また,干渉信号と所望信号の帯域の重複率が推定精 度に与える影響を調べた.雑音信号の入力レベルを

60dB

とし,信号

2

の中心周波数を表

4

の二つのケー スから重複率を

10%

及び

90%

としたとき,電力強調 ファクタ

α

と干渉信号の中心周波数推定値の関係は図

13

となり,どちらのケースにおいても

α = 1 . 5 2

の 付近で推定値の収束が確認できた.このことから,

α

の値を調整することで,帯域の重複率が高い状況でも 干渉信号の中心周波数を推定できることが確認できた.

更に,干渉信号による非線形増幅が推定精度に与 える影響を調べた.非線形特性には,式

(7)

SSPA

Solid State Power Amplifier;

個体電力増幅器)の入 出力特性の近似式を用いた

[11]

.ここで,

r

は入力振 幅レベル,

A

は飽和出力レベル,

p

は非線形の強さを 示すパラメータであり,図

14

はこの増幅器の入出力 特性である.

(7)

F [r] = r

1 + r

A

2p

1

2p

(7)

信号の中心周波数は表

4

のケース

2

とし,雑音信号

13 電力強調ファクタαと周波数推定精度の関係 Fig. 13 The relationship of power emphasis factorα

and frequency’s estimation accuracy.

14 個体電力増幅器(SSPA)の非線形特性 Fig. 14 The nonlinear characteristic of SSPA.

15 SIRと推定周波数の関係

Fig. 15 The relationship of SIR and estimated fre- quency.

の入力レベルは

−45dB

,信号

1

と信号

2

の入力レ ベルは

−25dB

,飽和出力レベル

A

20dB

,非線形 パラメータ

p

3

とした.干渉信号の入力レベルを

25 15dB

の範囲,すなわち信号対干渉信号電力 比(

SIR: Signal to Interference Ratio

)を

0 40dB

とすると,

SIR

と推定周波数の関係は図

15

となった.

α = 2

において,タイプ

1

(飽和無)では推定値の収束 が確認できたが,タイプ

2

(飽和有)では干渉信号の 入力レベルが大きくなると非線形ひずみの影響により 推定値の劣化が生じた.だが,

α = 4

まで大きくする ことで推定値は収束し,非線形増幅を伴う信号であっ ても

α

を大きくすることで周波数特定できることが確 認できた.

5.

シミュレーションによるシステム動作 評価

2. 3

の環境適応動作によるビット誤り率(

Bit Error Rate: BER

)特性評価を行う.ここでは,二つの所望 信号及び一つの強い入力レベルの干渉信号を想定し,

三つの帯域幅

30MHz

の信号を原信号とした.各信号 はサンプリング周波数

4GHz

で生成し,各信号の中心 周波数及び入力レベルは表

5(a)

,所望信号の変調にお ける設定値は表

5(b)

,周波数推定における設定値は表

5(c)

とした.

16

は,前節の式

(7)

の非線形特性を用いたとき の,強い入力レベルの干渉信号による非線形増幅の様 子である.ここで,飽和出力レベル

A

20dB

,非線 形パラメータ

p

3

とした.図

16(a)

の所望信号のみ

5 BER特性評価における設定値 Table 5 The parameter for BER evaluation.

(a)各信号の中心周波数と入力レベル

干渉信号 信号1 信号2 中心周波数[MHz] 1636 1350 1818

入力レベル[dB] 0 −25 −25 (b)所望信号の変調設定値

一次変調方式 16 QAM 二次変調方式 OFDM サブキャリア周波数間隔 100 [kHz]

位相補正パイロットシンボル間隔 50

ブロック数 500

送信ビット数 1176000 (c)環境認識回路の設定値

アンダーサンプリング周波数fs 200 [MHz]

遅延量Δτ 0.25 [ns]

(8)

16 強い入力レベルの干渉信号による非線形ひずみ Fig. 16 The nonlinear distortions by the strong in-

terference.

の状況では非線形ひずみが確認されず,図

16(b)

では 強い入力レベルの干渉信号により同ひずみが確認でき た.この非線形ひずみを生じた信号に対し,

5. 2

の適 応型フィルタを用いて,適応動作に伴う

BER

特性の 評価を行った.

5. 1

干渉信号の中心周波数推定

雑音レベルを

65dB

としたとき,電力強調ファク タ

α

及び式

(3)

から算出した干渉信号の中心周波数推 定値

f

Iの関係は図

17

となった.タイプ

1

の構成(非 線形ひずみが生じる前に推定を行う構成)では

α = 2

付近で,タイプ

2

の構成(非線形ひずみが生じた後に 推定を行う構成)では

α = 3

付近で干渉信号の中心 周波数推定値の収束が確認できた.よって,増幅器な どで非線形ひずみが生じた信号に対しても,電力強調 ファクタ

α

を調整することで干渉信号の中心周波数が 正しく推定できることが分かった.

5. 2

経路差を用いた適応型ノッチフィルタ ここでは原理確認として,適応型ノッチフィルタ

Adaptive Notch Filter: ANF

)には,図

18

の経路 差を用いた簡易的なフィルタを用いた.遅延量

Δ τ

は,

経路差による遅延器及び可変移相器などを用いること で可変とする.フィルタの

ON/OFF

はスイッチで制 御し,可変減衰器は

2

経路の減衰量が同じになるよう に調整する.移相器などに減衰がないとした場合,こ のフィルタの特性

|H ( f ) |

は式

(8)

となる.

17 BER特性評価における電力強調ファクタαと周 波数推定精度の関係

Fig. 17 The relationship of emphasis factorα and frequency’s estimation accuracy in BER eval- uation.

18 経路差を用いた簡易ANF Fig. 18 The simple ANF using path difference.

|H(f)| = 1

2 (1 + exp(−j2πf (Δτ)))

(8)

よって,ノッチのヌルの周波数は

fτ )

が整数とな るときであり,ノッチの周期は

1 / Δ τ

となる.

オ ー バ サ ン プ リ ン グ 周 波 数

4GHz

1

サ ン プ ル

0.25ns

)で生成した原信号において,

5. 1

の干渉信 号の中心周波数にノッチが合う

11

サンプル,すなわち 遅延量

Δ τ

を(

0 . 25 × 11 =

2.75ns

としたとき,フィ ルタの特性

|H ( f ) |

は図

19(a)

となった.図

16(b)

の干 渉信号にこのフィルタを適応させることで,図

19(b)

のように干渉信号の抑圧に伴う非線形ひずみの抑圧が 確認できた.

19(b)

ではフィルタによる減衰の影響を受けてい るが,送信側にて所望信号の中心周波数をフィルタの 山の周波数に合わせることで,次の送信の際にフィル タの減衰の影響の受けにくい帯域へ移動することと する(フィルタの

n

番目の山の周波数は,式

(8)

から

fτ )

n 1 / 2

となるときであり,ノッチと同様に 周期は

1 / Δ τ

である).すると,図

19(c)

から,フィ ルタによる抑圧の影響を軽減できることが確認できた.

ここで,移動に伴う所望信号の中心周波数は表

6

と した.

5. 3

シミュレーション結果及び考察

16

の非線形ひずみに対して,

5. 2

ANF

及び

(9)

19 ANFによる干渉信号の抑圧

Fig. 19 The suppression of interference signal using ANF.

6 フィルタによる減衰の影響が小さい帯域への移動に 伴う中心周波数

Table 6 The center frequency with the movement for less-affected band of filter.

信号1 信号2 移動前の中心周波数[MHz] 1350 1818 移動後の中心周波数[MHz] 1455 1818

帯域移動による一連の環境適応動作による

BER

特性 は図

20

となった.図

20

は,図

16(a)

の二つの帯域の 所望信号のみの状態,図

16(b)

の干渉信号を加えた状 態,前節のノッチフィルタを適応させた状態,表

6

の 帯域移動を行った状態の,四つの適応動作における

2

帯域の所望信号の受信特性のシミュレーション結果で ある.所望信号のみの特性に対し,受信系を飽和させ る強い入力レベルの干渉信号により,受信特性の大幅 な劣化が確認できた.そこで,

ANF

を作用させるこ とで特性が改善し,フィルタの減衰の影響を受けにく い帯域に所望波を移動させることで更に改善された.

20 環境適応動作に基づくBER特性の変化 Fig. 20 BER improvement based on the adaptive

control.

6.

む す び

本論文では,受信系を飽和させる強い入力レベルの 干渉信号による非線形問題に対し,アンダーサンプリ ングを用いた簡易的な干渉波中心周波数推定法を示し,

解決策として干渉波の検知し,可変ノッチフィルタを 用いた干渉波のフィルタリングや,使用周波数の変更 による適応動作を提案した.

また,シミュレーションによりその原理の妥当性を 示し,受信系を飽和させる干渉信号であっても,電力 に対する重み付け演算により,その中心周波数を簡易 で自動的に推定できることを示した.更に,

BER

特 性評価から,一連の適応動作により干渉信号が入射し ている状況であっても,干渉信号のない状況よとほぼ 同程度の特性が得られることが分かり,広い帯域を利 用する高度な無線通信方式において,適応動作により 干渉問題が解決できることを示した.

本論文では,受信系を飽和させる干渉波は一波であ る状況を想定して検討を行ったが,干渉波が低い電力 であっても複数の帯域に存在する場合など,合計入力 電力が受信系を飽和させるような状況も考えられる.

このような場合の干渉波の検知や,抑圧技術の確立が 今後の課題である.

文 献

[1] J. Mitola and G.Q. Maguire, Jr., “Cognitive radio:

making software radios more personal,” IEEE Pers.

Commun., vol.6, no.4, pp.13–18, Aug. 1999.

(10)

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く補償法,信学論(B),vol.J85-B, no.1, pp.9–19, Jan.

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[11] J. Tellado, Multicarrier Modulation with Low PAR:

Applications to DSL and Wireless, Kluwer Academic Pub., MA, USA, 2000.

(平成28519日受付,922日再受付,

111日早期公開)

久野 伸晃 (正員)

26電通大・電気通信・電子卒.平28 同大大学院修士課程修了.

唐沢 好男 (正員:フェロー)

48山梨大・工・電気卒.昭52京大大 学院修士課程了.同年国際電信電話(株)

(現KDDI(株))入社.以来,ワイヤレス

伝送技術(無線通信の電波伝搬,アンテナ,

ディジタル伝送特性)の研究に従事.平11 電通大・電子・教授.平28.03同大退職,

同大名誉教授.工博.平10電波功績賞(ARIB),平17年度 国際コミュニケーション基金優秀研究賞,平17年度本会論文賞

(2件),平19,20年度本学通ソ論文賞(Best Tutorial Paper Award)等受賞.IEEEフェロー.

図 3 電波環境認識と干渉波抑圧の一般的な回路構成 Fig. 3 The general circuit configuration of
図 4 環境認識回路を用いた基本構成 Fig. 4 The basic configuration using ERC.
Fig. 6 The simulation configuration for frequency es- es-timation of given sine waves.
図 10 帯域信号のスペクトル
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参照

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