児童の「自ら学ぶ意欲」を育てる授業開発に関する研究
学 校 教 育 専 攻 授 業 開 発 コ ー ス 神 谷 孝 之
1 本研究の背景
OECDが2000年に実施した「生徒の学習到達 度調査 (PISA)Jによれば,日本の子どもの学 力は依然高い水準を保っているが,子どもの勉 強離れは深刻化しているという結果が出された。
結果を公表した文部科学省(布村)も
r
学ぶ意 欲や知的好奇心をはぐくむ必要がある」と述べ ているo 1989年の学習指導要領の改訂で,子ど もたちの「自ら学ぶ意欲」を育てることが重要 な教育目標となり, 1997年の教育課程審議会に おいても r自ら学び自ら考える力を育成するこ と」の重要性があらためて強調されているO 今 まさに r自ら学ぶ意欲」の育成が求められてい るのである。2 問題の所在と研究の目的
「自ら学ぶ意欲」に関しては多くの研究者に より様々な角度から研究されているが,本研究 は桜井(1997,1998)が提唱する理論に注目した。
指導教官 小 野 瀬 雅 人
欲」を 7つの下位尺度によって構成された概念 であることを示し, 1980年代に児童の「自ら学 ぶ意欲」を測定しているO 他方,ベネッセ教育 研究所をはじめとする多くの教育研究機関によ って,児童の「意欲」が低下しているという報 告があるが,どのように低下しているのかは示 されていない。 20年を経て,児童の「自ら学ぶ 意欲」はどのように変化しているのだろうか。
そこで,本研究では,児童の「自ら学ぶ意欲」
を測定し,その実態を多面的に考察することに よって r自ら学ぶ意欲」を育てる授業開発に関 する一視点を提案することを研究の目的とした。
3 研究の構成
FIG.2は,本研究の構成を示しているO
円G.2本研究の構成
. . . . .
児童の「自ら学ぶ意欲」を 5つの視点から多
円G.lr自ら学ぶ意欲Jの発現プロセス(桜井,1997;1998) 面的に検証し,心理学的な先行研究の知見と照 FIG.1は桜井が述べる「自ら学ぶ意欲」の発現 らし合わせ「自ら学ぶ意欲」を育てる方策を提 プロセスであるO 桜井は,児童の「自ら学ぶ意 言する構成となっているO
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要 旨
なった。
研究の結果とまとめ 4
(5)認知された「学習スタイル」との関係 (1)児童の「自ら学ぶ意欲」の実態
小学校児童 35名を対象に調査した結果 r確 小学校児童 205名を対象に調査した結果,児
認、意識」のある児童は「自ら学ぶ意欲」が大き 童の「有能感」が低いこと,複数の尺度で 5 年
いこと r自ら学ぶ意欲」が大きい児童は,効果 生 が ボ ト ム で あ る こ と , 高 学 年 に な る に 従 っ て
的 な 学 習 方 略 に 関 す る 「 メ タ 認 知 的 知 識 」 を 有
r f
也者受容感」が「自ら学ぶ意欲」に関係してしていることが明らかになったO
くること,中学年で女性優位,高学年で男性優
(6)先行研究との比較 位の性差が見られることが明らかになった。
児 童 の 「 自 ら 学 ぶ 意 欲 」 は 「 有 能 感 」 以 外 の (2)教師から見た児童の「自ら学ぶ意欲」
尺度全てにおいて 20年前よりも低下しているこ 小学校教師27名を対象に調査した結果,教師
と r発達的変化」や「性差」は 20年前からあ は 児 童 の 「 他 者 受 容 感Jr学ぶ楽しさJr情 報 収
まり変化していないことが明らかになった。
集」は高く
r
有能感Jr
自己決定感Jr
挑 戦Jr
独児童の『自ら学ぶ意欲』を育む授業モデル 5
立達成」は低いと捉えていること,児童の「白
本 研 究 で 明 ら か に さ れ た 結 果 と , 心 理 学 的 な ら学ぶ意欲」の捉え方に性差や経験年数の差が
先行研究による知見を統合し FIG.3に示す授業 ないことが明らかになったO また,低学年にな
モデルを提案した。
るに従って「自ら学ぶ意欲」は捉えにくくなる
』 出
学 習 活 動
①
学 習 活 動
②
レ
約 ね モIlllィ 型 一 デ 一 来 一 レ 一 従
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│ レ デ ィ ネ ス │ L T‑‑ .1
│諜題把握│
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こと r他者に頼らず,できるだけ自分の力で問 題 を 解 決 で き る 」 と 考 え て い る 児 童 は 教 師 が 捉
えているよりも多いことも明らかになったO
(3)
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自ら学ぶ意欲」を育てる要件上 記 2 つの調査により,児童の「自ら学ぶ意 欲」を育むためには「適度な難易度Jr目標の明 確化J
r
進歩の認知Jr
他者受容感Jr
活動におけ る自由度」が重要であることが明らかになった。(4)児童の「自ら学ぶ意欲」の変容とその認知 小学校児童35名を対象に調査した結果,児童 は 5年生から 6年生にかけて「自ら学ぶ意欲」
円G.3児童の「自ら学ぶ意欲』を育てる捜業モデル を上昇させること r自ら学ぶ意欲」は「有能感」
今後の課題 6
と強い関係があること
r
有能感」と「他者受容本 研 究 に お い て 児 童 の 「 自 ら 学 ぶ 意 欲 」 の 実 感 」 の 関 係 が 強 く な り 「 ク ラ ス へ の 受 容 感 」 が
態 が 明 ら か に さ れ た が , 下 位 尺 度 聞 の 因 果 関 係 特に強くなることが明らかになった。
や , 低 下 を も た ら し た 直 接 的 な 要 因 に つ い て は また,児童の「自ら学ぶ意欲」を育むために
十 分 に 検 討 さ れ て い な い 。 ま た , 提 案 さ れ た 方 は rクラスへの受容感」を向上させることと,
モデルの修正・
略や授業モデルの実施を重ね,
改善を図ることが課題であるO
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「自己決定感」を伴いながら「メタ認知的知識」
を増加させることが重要であることが明らかに