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絶滅危惧種オオルリシジミの幼児向け環境教育教材の開発

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Academic year: 2021

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Ⅰ はじめに  現在、生息環境の変化によって多くの昆虫が絶滅危惧 種となっており、保全活動が盛んに行われている。保全 活動は主に①絶滅危惧種の保護、②生息地の改善、③絶 滅危惧種の実態に関する情報の普及・啓発活動の3つの 分野で活動が行われている。本報告で対象としたオオル リシジミ Shijimiaeoides divinus(Leech)は、瑠璃色の翅 を有しており、庭の花壇で見かけるシジミチョウより一 回り大きい草原性のシジミチョウである(図1 A・B)。 本種は1化性のチョウで、成虫は5月から6月中旬の約1ヶ 月間しか見ることができない。交尾、産卵をして、卵は 7日間~10日間ほどで孵化する。孵化した幼虫は1ヶ月ほ どで大きくなり、4齢幼虫が最後の脱皮をして地面や土 中で蛹となる。蛹になってからは約10か月間羽化せずに 翌年まで過ごす。幼虫の食草はマメ科のクララ Sophora flavescens の蕾と花(図1 C~F)に限定されるという特 異な生態を有している(福田ら 1984)。  オオルリシジミは日本や中国、朝鮮半島、ロシアに生 息しているが、いずれの国でも個体数が減少しているこ とから世界的な絶滅危惧種となっている(白水 2006; 藤岡 2007;Koda 2014)。国内では、かつて東北や関東 地方と九州地方に生息していたが(白水 2006)、1990年 頃から急激に減少しており、今では長野県と、熊本県の 阿蘇地方及び大分県の一部にしか生息が確認されていな い(日本チョウ類保全協会 2012)。絶滅に瀕している要 因は、大規模土地改良事業、河川改修、宅地造成などに より食草のクララが失われたことがあげられる。かつて クララは毒の成分を有していることから、トイレの蛆殺 しや漢方薬として利用されていた。しかし近年殺虫剤や 水洗式トイレの普及など人間の生活様式が変化して、ク ララを利用する必要がなくなったため、クララは雑草と して除草されるようになった。そのためクララに依存し ていたオオルリシジミも激減した(丸山 2005)。現在環 境省のレッドリスト(1)で絶滅危惧Ⅰ類に指定されてい るほか、長野県(2)、熊本県(3)、大分県(4)にて指定希少 野生動植物に指定され、無断で捕獲することが禁止され ている。オオルリシジミは各地で保全研究(江田・中村 2009;Koda・Nakamura 2010;村田・野原 2003)や保 全活動が行われているが(福本 2017;江田・中村 2011; 清水 2009)、本種の保全・保護を継続的に進めていくた めには、次世代を担うこども世代に本種の存在と危機的 な生息状況を知ってもらうことが必要である(長野県 2018)。  オオルリシジミを知るための子ども向け教材は、すで にいくつか開発されている。江田・さくらい(2011)の 絵本は、オオルリシジミの生活史や天敵、共生昆虫など の生態を解説し、また南阿蘇ビジターセンター(2017) の紙芝居は、オオルリシジミが人間の農牧業形態へ適応 する様子を描いたものである。しかし、両教材ともに小 学校高学年以降で扱う学習内容が多く含まれており、大 人でも十分学べるページ数・情報量となっているため、 幼児に対してはじめから使用するのは難しい内容と考え られる。幼児期の段階においては、具体的にまず第1に オオルリシジミが卵から幼虫・蛹を経て成虫になる完全 変態のプロセスと、幼虫はクララという植物の花穂を食 べて生きていることを理解すること、第2にクララがな くなるとオオルリシジミも生きていけないという思考か ら、生態学的な環境のとらえ方の芽生えを養うことが必 要であると考えた。  井上(2009)は「幼児期の環境教育とは、幼児期の 発達理解を元に、子どもの主体的な遊びを重視しなが ら、持続可能な社会形成につながる環境観を形成する営 みである」と定義している。 報告 絶滅危惧種オオルリシジミの幼児向け環境教育教材の開発

江田 慧子*・新家 智子**・木場 有紀*

帝京科学大学教育人間科学部*・共立女子大学家政学部**

Development of Teaching Materials for Early Childhood about Environmental Subjects of endangered

species butterfly Shijimiaeoides divinus (Leech) (Lepidoptera: Lycaenidae)

Keiko KODA*, Tomoko SHINYA**, Yuki KOBA*

Faculty of Education & Human Sciences, Teikyo University of Science* Faculty of Home Economics, Kyoritsu Women's University**

(受理日2021年2月5日)

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 幼児の発達からみると、4、5歳になると生物の発達を 理解できるようになり、成長に伴い体の構造や機能を大 きく変化させるチョウも一個体の成長の姿として理解 するようになる(外山・中島 2013 98-119)。多くの保育 現場で「いきものの生態を知らせるため」や「いのちへ の理解と思いを育てる」ことをねらいとしてアゲハチョ ウなどの飼育活動も行われている(山下・鑄物 2015 8-17)。また身近な動植物のチョウを題材とした手袋シ アター「キャベツのなかから」があり、手遊びと遊び歌 とともに人気がある(カワハラ 2017 8-11)。これは卵か ら成虫までのモンシロチョウの完全変態の様子や幼虫 のアオムシと食草であるキャベツの繋がりについて遊 びを重視しながら理解させる教材としての意義がある といえる。  保育所保育指針では自然との関わり・生命尊重に関 して、子どもは身近な動植物への接し方を考え、命ある ものとしていたわり、大切にする気持ちを持って関わる ことを、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿としてい る(厚生労働省 2018 74-77)。幼児においては幼虫の食 草であるクララがなくなりオオルリシジミは絶滅に瀕 していることを理解することによって、命あるものをい たわり大切にする気持ちが芽生え、そのことが絶滅危惧 種を保全する環境観形成の第一歩に繋がると考える。  そこで本研究では、幼児期を保全活動の萌芽期として 捉え、オオルリシジミと食草のクララに繋がりを持たせ た幼児向けの手袋シアターの教材開発を行った。また保 育現場への浸透を容易にするために、専門家以外でも環 境教育教材を作成することが可能となる制作キットを 開発した。  なお、本研究では就学前の子どもを対象とするため、 幼児期における教育の意味を包括する保育という言葉 を使用する。 Ⅱ オオルリシジミの環境(保育)教育教材の試作 1 教材試作の実施  教材は「キャベツのなかから」の手袋シアターをアレ ンジすることにした。幼児になじみがあり受け入れやす いこと、すでに教育現場で使われている材料であり、現 場 の 保 育 者 が 作 成・ 使 用 で き る た め で あ る(齊 木 2018)。ここでモンシロチョウをオオルリシジミに置き 換えることによって、子どもがオオルリシジミの生態に ついて、卵から幼虫・蛹を経て成虫になる完全変態のプ ロセスと、幼虫はクララだけを食べて生きているという ことを理解できると考えられる。  手袋シアターは軍手の「手の平」と「手の甲」と「5 本の指部分」が使用できるため、その中で成虫、卵、幼 虫、蛹そしてクララを表現する必要がある。そこで、手 袋の試作では手の甲側の指先部分にフェルト製の幼虫 を縫い付け、その成長に合わせて多色のフェルトを用い て表現した(図2)。指先の小指は1齢幼虫(図1 D)、薬 指は若齢幼虫(図1 E)、中指は4齢幼虫(図1 F)、人差 し指は老熟幼虫(図1 G)、親指は蛹(図1 H)とした。 それぞれの人形の特徴については本制作に詳述するが、 各人形には綿を入れて立体感を出している。手の甲の部 分には茎と花蕾を各パーツに分け作成したクララを表 現した(図2 A)。手袋の手の平側に大きな卵を縫い付 けた。卵はポケット状になっており、幼虫が収納できる ようにした。卵から幼虫を取り出すことで、幼虫が孵化 する様子を表現した(図2 B)。成虫は指にはめられ、脱 着が可能な指人形として作成した。成虫の翅は表翅の青 色をベースに、メス成虫にしかない黒斑を黒丸のフェル トで表現した。指人形にすることで成虫の表翅と裏翅の 両方を表現できるようにした。また成虫の頭部は幼児が 親しみを持てるよう顔と触角をつけた(図2 C・D)。手 袋の色は指人形を際立たせるためにクリーム色を選択 した。  さらに考慮すべき点として、既存の「キャベツのなか から」は多くの色や見た目のアレンジもされ普及してい る。一方でキャベツを食べて成長するのはモンシロチョ ウのみにも関わらず、既存の教材ではチョウの成虫が明 らかにモンシロチョウではないチョウになっているア レンジも広まってしまっている(5)。そこで教材の試作 においては、色や形を変更できないようにして、正しい 科学的知識に基づく制作キットにすることが必要であ る。また普及活動で使用するため、フェルトの色に関し 図1 オオルリシジミの生態写真 A:メス成虫 B:生息地風景 C:クララ D:1齢幼虫 E:若齢幼虫 F:4齢幼虫 G:老熟幼虫 H:蛹

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ては、市販されている色の中から選択することとした。  最後に、演じる際に歌う歌は「キャベツのなかから」 の替え歌とした(すまいるママ 2016)。 2 現場からの評価・改善  2018年3月15日に、オオルリシジミが生息している熊 本県の高森町にある高森保育園にて、試作品の検証を 行った。現地の保育士4名は保育者として、保育園でオ オルリシジミの普及活動をしている3名は今後手袋シア ターを使用する実践者として手袋シアターの評価を 行ってもらった(図3 A)。高森保育園はオオルリシジ ミの生息地に最も近い保育園で、生息地へ遠足したり、 地元の有識者の講話を聴くなどの活動は行われている。 高森町に生息しているオオルリシジミの存在は知って いるものの、成虫は数回、幼虫は一度も見たことがない とのことだった。クララについても知らなかった。現場 でも幼児に対してオオルリシジミについて教えたいと 考えていたが、知見がなく教材は開発されていなかっ た。そのため、保育士にとって身近な手袋シアターの提 案は現場で受け入れられたと思われた。試作における特 徴である「幼虫の色が発育段階によって変化することの 表現」は、幼虫をみたことがない保育現場において新た な知見として受け入れられた。また、幼児は日常生活で あまり耳にしない言葉を好む傾向にあるため、成長に 伴って変化する幼虫の名称、すなわち専門用語を使うこ とが保育士から提案され、「幼虫を1齢幼虫、2齢幼虫と 「齢」という専門用語を使うことにした。その一方で、 「キャベツのなかから」のメロディーを使用するため、 演じる際に「キャベツ=ちょうちょ」と「クララ=オオ ルリシジミ」の違いを強調して欲しいと要望があった。 実演者からは指人形を立体にしてしたことで、手遊びと して指を動かしづらく、改善を求められた。さらに、メ ス成虫に人間のような顔を付けたが、より実物に近づけ るよう改善を求められた。  次に高森保育園に通っている園児2名にオオルリシジ ミの手袋シアターを実践した(図3 B)。その結果、保 育士の提案通り1齢幼虫、若齢幼虫と齢期について何度 も復唱する行動が確認された。老熟幼虫は4齢幼虫の終 盤で蛹化する前1、2日間だけ見られる状態で体色が紫色 に変化しているが、一般には全く知られていない。園児 が「老熟さん」の色と言葉に対して最も反応を示したた め、老熟幼虫期は専門的だが、あえて名称を使用するこ とにした(表1)。 表1 各パーツの試作における現場での反応と改善箇所 対象 試作品 現場での反応と実践 改善 保育者の意見 実践者の意見 手袋 シアター 手の指 立体的に見せるため幼虫の綿をいれた 作成する手間がかかる 指について幼虫が厚みとなり、手をにぎりづらく演じづらい 幼虫の綿をなくした 幼虫の体色を発育段階ごとに変化させた 成長過程が色分けされていて 分かりやすい ー ー クララ ク ラ ラ を 忠 実 に 再 現 す る た め に 各パーツに分けて制作した 作成するのが難しい印象 ー クララ部分を簡素化して 1 つパーツで作成できるようにした オオルリシジミ 脱着可能な指人形にした ー 手袋をはめたまま両手で演じられずもたついてしまった オオルリシジミの裏側をなくし手の平に縫 い付けた 取り外しがないため紛失することがない 現場でも保管しやすい 卵 大きくポケット状にした 幼虫を正しい発育段階順に取り出すことは知識がないと難しい 卵から幼虫を取り出すことが円滑にできず、テンポよく演じるこ とができなかった 卵に幼虫を入れることをやめて、クララにあ らかじめ小さな卵を取り付けることにした 歌 キャベツのなかからの替え歌にした 浸透しやすいが、「キャベツ」と言ってしまいそう あえて同じ歌にすることでメロディーを覚える必要がない 歌う際に「オオルリシジミ」と「クララ」を強調した 幼虫の発育段階は専門用語にした 専門用語は幼児が興味を持つ 専門用語を復唱している行動が見られた ー 実施方法 手袋シアターをしながら保全のお話をした 手袋シアターは幼児も好む教材である。手袋シアターで興味を 持った後にお話をしてもらいたい 手袋をはめると他の資料を持つこ とが難しい。また実演が中断する 手袋シアターは導入で使用し、その後にお話を実施する方法に変更した 図2 試作手袋シアター A:クララと卵と幼虫 B:卵から出た幼虫を指に装着して いる様子 C:指に装着するオオルリシジミ(表面) D:指に装着するオオルリシジミ(裏面) 図3 2018年の熊本県における試作品の検証の様子A:高森保育園での話し合い B:園児の反応

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Ⅲ オオルリシジミの環境(保育)教育教材の本制作  本制作では手袋シアター、手袋シアター実践時の歌、 手袋シアターの制作キットを作成した。以下に概要を示 す。 1 手袋シアター(表面)  手袋の色は1齢幼虫の色と重なるためクリーム色から 青色に変更した。青色に変更したことで、オオルリシジ ミの生息地である里山に広がる雄大な青空(図1 B)が 表現でき、より幼児に生息地の景色を伝えやすくなっ た。手の甲部分にはクララをあしらったフェルトを、指 先部分には幼虫をあしらったフェルトをそれぞれ装着 した(図4 A)。まずクララはオオルリシジミの若齢幼 虫が摂食する蕾から花の間の形を表現した。全体には鮮 やかな緑色のフェルトに統一し、蕾・花の部分は白色の フェルトとした。卵は試作時と同様にクララの蕾に付け た。  指人形には綿は入れずにすべてフェルトのみで作成 した。小指の人形は1齢幼虫を表現した。1齢幼虫の体色 は灰緑色から乳白色であるため、全体の体色はクリーム 色のフェルトを使い、涎掛けをつけることで、赤ちゃん を表現した。薬指の人形は若齢幼虫(2,3齢幼虫)を表 現した。本来の若齢幼虫の体色は淡い黄緑色であるが、 中指の人形と区別するために、もともとの薬指=お姉さ んというイメージを残し、桃色のフェルトを使いリボン をつけることで女の子を表現した。中指の人形は4齢幼 虫を表現した。4齢幼虫の体色は黄緑色であるため、フェ ルトも鮮やかな黄緑色を使用した。黄色の帽子をつける ことで男の子を表現した。人差し指の人形は老熟幼虫を 表現した。赤紫のフェルトを使いエプロンをつけること で、お母さんを表現した。最後に親指の人形は蛹を表現 した。蛹の体色は濃褐色であるため、茶色のフェルトを 使い、蝶ネクタイをつけることでお父さんを表現した。 2 手袋シアター(裏面)  手の平は、試作品と同様にメス成虫の表翅を表現した (図4 B)。試作ではオオルリシジミの特徴である翅の表 と裏で模様が違うところを表現するために、手袋につけ ない蝶も使用したが、本制作では専門用語のフレーズに 親しむことをねらいとしたため表翅のみを手袋本体に 縫い付けた。また試作では成虫の顔を入れていたが、本 制作では顔は入れずに体と触角のみと作成しやすいよ うに簡略化した。 3 替え歌の作成 手袋シアターで演じる際の歌を「キャベツのなかから」 からアレンジして作成した(図5)。 ① クララの中から 青虫でたよ(握りこぶしにしてク ララをみせる) ② ピッピッ いちれい(1齢)赤ちゃん(小指を立てる) ③ ①を繰り返し ピッピッ じゃくれい(若齢)お姉 さん(薬指を立てる) ④ ①を繰り返し ピッピッ よんれい(4齢)お兄さん (中指を立てる) ⑤ ①を繰り返し ピッピッ ろうじゅく(老熟)お母 さん(人差し指をたてる) ⑥ ①を繰り返し ピッピッ さなぎ(蛹)お父さん(親 指を立てる) ⑦ ①を繰り返し ピッピッピッピッピッ(×2)(小指 から順番にすべての指を立てる) ⑧ オオルリシ~ジ~ミ~(手の平のメス成虫が飛んで いるように見せる) 4 手袋シアター制作キットの作成  フェルトの色や形が変更されず手袋が作成できるよ うに制作キットを作成した。制作キットには各色のフェ ルト、カラー糸、カラー軍手、目部分のビーズ、型紙(図 6)、取扱説明書、オオルリシジミの説明書(日本自然 保護協会 2019)を封入した(図7)。各色のフェルトは 作成部位ごとに袋詰めされており、部位ごと分担して制 作しやすくする工夫を行った。型紙はオオルリシジミの 図5 手袋シアター実演時のうごき A:にぎりこぶし B:小指立て C:薬指立て D:中指立て E:人差し指立て F:親指立て G:すべての指立て H:成虫の飛翔 図4 本制作の手袋シアター A:表面(手の甲) B:裏面(手の平)

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成虫の翅、成虫の胴体、クララ、幼虫、幼虫の付属物に 分かれており、フェルトの上から他のフェルトを貼る場 所は点線で示しされている。取扱説明書では同封物の確 認、作成手順(縫うことを推奨しているが、ボンドで貼 ることもできる仕様になっている)、歌と実演方法の説 明をした。最後に日本自然保護協会(2019)が発行して いる説明書を同封してA4サイズにおさまるよう配慮し た。説明書にはオオルリシジミの生活史や食草、分布域、 雌雄の見分け方や、他のシジミチョウとの区別方法、保 全について記載されている。 5 手袋シアターを用いた教育プログラムの試案  本教材はオオルリシジミがクララを食べて成長する ことを理解させるものであるが、オオルリシジミがクラ ラの減少によって絶滅に瀕していることを子どもたち に気付かせ、ともに守っていくことを伝えるためには、 この手袋シアターを用いた教育プログラムを作る必要 があると考える。手袋シアターをオオルリシジミとクラ ラを結びつける導入の教材として利用できる教育プロ グラムを作成した。はじめのあいさつ(2分)、手袋シア ターの実演(5分)、絵本・紙芝居の読み聞かせ(10分)、 保全のためのおはなし(5分)、オオルリシジミのクイズ (5分)、おわりのあいさつ(3分)の全30分で構成を考 えてみた。手袋シアターに続いて出版されている絵本ま たは紙芝居の読みきかせを行い、オオルリシジミの一生 について学ぶ。その後の展開としてオオルリシジミの個 体数が減少していること、人が取り組める活動について 話をし、最後に復習としてオオルリシジミに関するクイ ズをして終了する。幼児向けのため30分の教育プログ ラムを試案したが、小学校以降の児童向けでは保全のた めのおはなしの時間を資料や動画等を使用してより詳 細に説明してすることで、45分の授業に発展できると 考えられる。 Ⅳ 今後の展開  本研究では、オオルリシジミの保全活動を担う次世代 (子ども)特に幼児向けの教材として、手袋シアターの 開発を行った。作成した手袋シアターではオオルリシジ ミとクララの繋がりを持たせ、オオルリシジミの発育段 階に合わせた体色の色合いを表現した。替え歌には専門 用語を使用した。また誰でもオオルリシジミ手袋シア ターを作成し、演じることができるように制作キットの 作成も行った。  今後の課題としては、試案をもとに教育プログラムを 開発し、オオルリシジミが生息している熊本県と長野県 にて実践することが必要である。本教材を教育プログラ ムに上手く組み込むことにより、本種の存在を知っても らう導入的効果が見込まれ、その後の生活史・生息環境 や保全活動の実態の話を円滑につなげられると考えら れる。その一方で、幼児期に向けた適切な保全教育のあ り方の検討と幼児に正しい知識が定着したかについて も、今後プログラムを実施し評価する必要がある。  また、本教材は未就学児を対象としたものであるが、 世代間の連携をはかるためには、小学生を対象にした教 材も作成する必要がある。特に小学3年生の理科では昆 虫の成長を調べる単元があり(文部科学省 2018)、その 中でチョウはモンシロチョウまたはアゲハチョウを取 り扱うことが知られている(澤田ら 2016)。その単元を 扱う時期は5月から6月であり、オオルリシジミの発生と 一致している。従って、長野県や熊本県では副読本とし てオオルリシジミを扱う教材の提供を考える。オオルリ シジミを知ることは地域教育に繋がり、絶滅危惧種を通 して環境保全に目を向けることも可能となる。  さらに本研究を継続することは学校教育で行われて いる自然教育を補完し、社会教育として地域・家庭・学 校との連携を図るとともに、現在希薄となっている生き ものとのつながり、地球環境を守る大切さを全世代に普 及・啓発し、持続可能な社会の構築に寄与すると考えて いる。 謝 辞  本研究を実施するにあたり熊本県でオオルリシジミ の保全活動を行っている井上真希氏、岡俊樹氏、岡くに 図7 手袋シアターの制作キット A:パッキングの様子 B:作成キットの中身 図6 手袋シアターの型紙

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子氏、高森保育園の保育士の皆様に厚く感謝する。この 研究の一部は帝京科学大学平成31年度地域連携推進セン ター予算とJSPS科研費19K14350の助成を受けたもので ある。 (1) 環 境 省, 環 境 省 レ ッ ド リ ス ト2020に つ い て, http://www.env.go.jp/press/107905.html(2020年 6月6日アクセス) (2) 長野県,希少野生動植物について,https://www. pref.nagano.lg.jp/shizenhogo/kurashi/shizen/ hogo/kisyoyasei/jorei/jorei-kisyosyu.html(2020 年6月6日アクセス) (3) 熊 本 県, 熊 本 県 の 野 生 動 植 物 の 多 様 性 の 保 護, https://www.pref.kumamoto.jp/kiji_7 10.html (2020年6月6日アクセス) (4) 大分県,指定希少野生動植物の追加指定について, https://www.pref.oita.jp/soshiki/1 3 0 7 0/ siteikisyousyu-h29.html(2020年6月6日アクセス) (5) 学研モール,学研の保育用品手袋人形キャベツの中 から,https://gakken-mall.jp/ec/mirai/pro/ disp/2/3011227107(2020年6月6日アクセス) 引用文献 藤岡知夫,2007,「日本の秘蝶(13)平石山のオオルリ シジミ,及びオオルリシジミの世界的地理変異」, 『Butterflies』,44:37-46. 福田晴夫・浜栄一・葛谷健・高橋昭・高橋真弓・田中 蕃・田中洋・若林守男・渡辺康之 ,1984,『日本原色 蝶類生態図鑑(Ⅲ)』, 保育社,大阪,373pp. 福本匡志,2017.「長野県の飯山市のオオルリシジミ保 全の取り組み」,『昆虫と自然』,52:16-19. 井上美智子,2009,「幼児期の環境教育研究をめぐる背 景と課題」,『環境教育』,19(1):95-108. カワハラアミコ,2017,『保育で使える!ワクワク手袋シ アター』,ナツメ社,東京,144pp.

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