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キャリア成熟への影響要因に関する文献検討 -看護職及び看護学生を対象として-

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1)中部学院大学

  看護リハビリテーション学部看護学科 〒501-3993 岐阜県関市桐ヶ丘2-1 2)岐阜大学医学部看護学科

〒501-1193 岐阜県岐阜市柳戸1-1

1)Department of Nursing, Faculty of Nursing and Rehabilitation, Chubu Gakuin University

2-1 Kirigaoka, Seki-City, Gifu, Japan(501-3993)

2)Department of Nursing, Gifu University School of Medicine 1-1 Yanagito, Gifu-City, Gifu, Japan(501-1193)

キャリア成熟への影響要因に関する文献検討

-看護職及び看護学生を対象として-

山田加奈子1),竹下美惠子2)

The Factors that Influence Career Maturity for Nurses and

Nursing Students from Previous Research

Kanako YAMADA1) and Mieko TAKESHITA2)

Abstract

 This study aims to clarify the factors that influence career maturity for nurses and nursing students from previous research. We selected twelve previous studies that fulfilled our conditions from a search of the web edition of the Japan Medical Abstracts Society literature database. We selected descriptions of factors that influence career maturity, made one code per factor, and categorized them by similar content. The categories were as follows: internal factors, composed of the six sub-categories of a self-concept including a professional identity, ability to self-educate, goals for the future, motivation for ones job, role models, and self-efficacy; environmental factors, composed of the two sub-categories of social support as support in the workplace, and systems such as working conditions; and individual traits, composed of the six sub-categories of clinical experience, nursing curriculum, age, sex, parental status (i.e. presence or lack of children), and family support. We found that career maturity is affected by internal factors that affect the formation of ones identity, by surrounding people, and by ones work environment. In addition, career maturity differs on the basis of individual traits such as ones age, sex, and experiences to date.

キーワード:キャリア成熟,看護 Keywords :Career Maturity, Nursing

短報

Ⅰ.序  論

近年,非正規雇用率の高さや若年無業者の 存在など「学校から社会・職業への移行」が 円滑に行われていないことが課題として挙げ られている.また,職業意識・職業観が未熟 なこと,進路意識が希薄なまま進学するもの の増加など,若者の「社会的・職業的自立」 に向けた課題がみられる17).これは大学全入 時代にあり,目的意識を持たず進学すること で,進学後も職業意識や職業観を十分醸成す ることができないためであると考える.

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大学などへ進学した後に学生が自分自身の 進路を決める中で,入学と同時に進路の方向 性が決まる場合がある.その中で,看護系大 学は,高齢化に伴う医療ニーズの高まりによ る医療系人材の育成のため,2008年に166校 であったものが,2019年には283校に増加し ている3 ).看護系大学は,看護に従事する専 門職を育成することを目的とした大学であ り,卒業後は看護師などの資格を取得し看護 職として就職する者がほとんどである.また, 看護専門学校や短期大学は看護師になること を前提に入学している一方で,近年の看護大 学生の入学動機は, 資格取得を目指して や 人の役に立ちたいとの思いから なども あるが, 人に勧められた , 本当にやりた い職業に関する大学等の進学をあきらめた , 何となく といった消極的な志望動機もあ ることが報告されている22).看護系大学教員 には,看護系大学入学後に看護職としての適 性や興味関心を深められるような支援を行う 責務があると考える.そのためには,学生が 看護職を自らのキャリアと捉え,どの程度そ の準備ができているか把握し,高めていくた めの方略を見出す必要がある.この個々人の キャリアの捉え方について,Super26)はキャ リア成熟という概念を示し,「キャリア発達 の程度であるとし,キャリア発達課題へ取り 組もうとする個人の態度的・認知的レディネ ス」と定義している.また,King11)は「キャ リア成熟とは,知見の広い,年齢にふさわし いキャリアを決定するための個人のレディネ スである」と定義している.それらをもとに, 坂柳24, 25)は,「キャリア成熟とは,キャリア の選択・決定やその後の適応への個人のレ ディネスないし取り組み姿勢」と定義し,尺 度開発を行い数量化した.キャリア成熟に関 する研究は,国内外問わず教師27)や介護職29) など様々な職業を対象として報告されてい る.しかし,看護学生のキャリア成熟を高め るための支援に関する示唆を得るためには, 看護職へ適応するための影響要因を明らかに することが重要であると考える.また,すで に看護職に就いている者のキャリア成熟を高 める要因は,看護学生のキャリア成熟を高め る要因になり得ると考える.そこで,看護教 育制度は国により異なるため,国内の文献を 対象としてこれまでの研究を検討することに した. 本研究は看護学生が看護職へ適応するため の支援に関する示唆を得るために,看護学生 ならびに看護職のキャリア成熟に関する研究 の動向と課題を明らかにすることを目的とす る.

Ⅱ.研究方法

1 .用語の定義 学生が看護職を自らのキャリアと捉え,適 応するためにどの程度準備ができているか把 握し,その支援に関する示唆を得ることが目 的であり,本研究では坂柳24, 25)の「キャリア 成熟とは,キャリアの選択・決定やその後の 適応への個人のレディネスないし取り組み姿 勢」とする定義を用いる. 2 .文献抽出方法 検索には医学中央雑誌Web版を使用した. 医学中央雑誌は,全国の医学・歯学・看護系 大学のほぼ100%で導入されており,「網羅的 な収集」を基本方針に据え,現在約5,000誌 から収録された約1,000万件の論文情報が収 録されていることから検索ツールとした. キーワードを「キャリア成熟」「看護学生」, 条件を原著論文として検索を行った.その結 果, 4 件の論文が得られた.そのうち, 2 件 は看護師を対象としているものであり,学生 を対象とした論文は 2 件であった. 先行文献の分析対象としては少ないため, 看護学生は入学時に看護師という職業を選択 して入学し,看護師を目標として基礎教育を 受けていることから,キーワードを「キャリ ア成熟」「看護師」,条件を原著論文として検 索を行った.その結果,23件の論文が得られ た.そのうち,看護専門学校教員は教員のキャ リア成熟に関する影響を含んでいること,日 本と中国の看護師を比較した論文は国で看護

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した研究が 5 件(27.8%),中堅看護師を対 象とした研究が 3 件(16.7%),キャリア中 期看護師を対象とした研究が 1 件(5.5%), 新人看護師を対象とした研究が 1 件(5.5%), 初期キャリア看護師を対象とした研究が 1 件 (5.5%)であった.中堅看護師とは臨床経験 5 年以上と定義されており,キャリア中期と は40歳以上の看護師を対象としていた.初期 キャリア看護師とは,卒後 1 ∼ 3 年目の看護 師を対象としていた. 2 .使用されたキャリア成熟測定尺度 キャリア成熟を測定するために使用された 尺度は 4 種類であった.坂柳25)が勤労者の キャリア成熟を測定するために開発した成人 キャリア成熟尺度(Adult Career Maturity

Scales,以下ACMS)が10件(62.5%),林2 )

の看護師の職業的キャリア成熟尺度が 3 件

(18.8%),狩野ら8 )の看護師における職業キャ

リア成熟測定尺度が 2 件(12.5%), 坂柳24)

の大学生を対象としたキャリアレディネス尺 度(Career Readiness Scale,以下CRS)が

1 件(6.3%)であった. 成人を対象とした職業キャリア成熟尺度と 大学生を対象としたキャリアレディネス尺度 は,対象は異なるものの 3 つの態度特性から なる. 3 つの態度特性とは,①関心性:自己 のキャリアに対して積極的な関心を持ってい るか,②自律性:自己のキャリアへの取り組 み姿勢が自律的であるか,③計画性:自己の キャリアに対して,将来展望をもち計画的で あるかである. 狩野ら8 )は,看護師を対象として,坂柳25) が開発した職業キャリア成熟尺度項目を用い て, 3 つの態度側面はそのままのそれぞれ 4 項目毎の計12項目で測定される,看護師にお ける職業キャリア成熟測定尺度を作成した. 林2 )は,看護師の成長・発達の育成に影響 する要因を明らかにした先行研究から,看護 職を継続してこられた理由と看護職を辞めた いと思ったとき乗り越えられた理由をもとに 28項目で尺度を開発した.なお,いずれの尺 度においても,得点が高いほどキャリア成熟 教育制度が異なること,男性看護師や子育て 中の看護師はある特定の要因を持つ対象であ ることから,看護職を選択し適応する過程に ある看護学生のキャリア成熟を高める要因を 検討する対象から除外した. 以上,看護専門学校教員・男性看護師・日 中看護師・子育て中の看護師を対象とした論 文を除いた16件と先に述べた学生を対象とし た 2 件を合わせた18件を文献検討の対象とし た. 3 .調査内容 調査内容は,文献の年代,研究種別,研究 内容,対象者,使用尺度,キャリア成熟に影 響する要因とした. 4 .分析方法 対象者および使用尺度は単純集計し,キャ リア成熟に影響する要因は,結果の記述を 1 意味内容 1 文としてコード化し,類似した内 容でサブカテゴリー,カテゴリーに集約した.

Ⅲ.結  果

抽出された文献一覧を表 1 に示す.看護師 または看護学生のキャリア成熟に関する研究 は,2006年から報告が始まっていたが,その ほとんどが2010年以降に報告されている.18 件の研究はすべて量的研究であった.看護師・ 看護学生のキャリア成熟に影響あるいは関連 する要因について述べられていたものが13件 (72.2%),看護師・看護学生のキャリア成熟 の 実 態 の み を 調 査 報 告 し た も の が 3 件 (16.7%),看護師の職業的キャリア成熟測定 尺度の開発に関するものが 2 件(11.1%)で あった. 1 .研究対象者の背景 看護学生を対象としたものは,看護大学生 と看護専門学校生のそれぞれ 1 件(5.5%) ずつあり,それ以外の16件(88.9%)はすべ て看護師を対象としていた.看護師を対象と した16件のうち,管理者除く看護師を対象と

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度が高いことを示している. 看護師を対象としたキャリア成熟尺度が作 成されているが,信頼性・妥当性の確認がさ れた坂柳25)の開発した成人キャリア成熟尺度 が10文献で使用されていた(表 2 参照). 表1 キーワード「キャリア成熟」,「看護学生」また「キャリア成熟」,「看護師」とし,条件を原著論文として抽出    した文献の概要 文献名 著者 年代 対象 1 職業キャリアに焦点を当てた看護実践環境と就業継続意向の関連 原北航ら1) 2017 看護師 (管理者を除く) 2 国立病院機構 A 地区看護職員のキャリア志向の実態(第 2 報) 児玉真由美ら12) 2017 看護師 3 国立病院機構 A 地区看護職員のキャリア志向の実態(第 1 報) 三島真由美ら16 ) 2017 看護師 4 看護大学生のキャリア成熟に関する研究 久司一葉15) 2017 看護大学生 5 初期キャリア看護師の職業キャリア成熟度と背景要因 加納さえ子ら10) 2016 初期キャリア看護師 6 中堅看護職者のキャリア成熟に関する研究 看護師長によるサポートとキャリア成熟との関連 狩野京子6) 2015 中堅看護師 (管理者を除く) 7 看護師における職業アイデンティティ,職業経験の質と職業キャリア成熟の関係 狩野京子ら7) 2015 看護師 (管理者を除く) 8 中高年看護師の職業的キャリア成熟度の特徴と関連する要因 近藤暁子ら13) 2015 看護師 9 新卒看護師の離職と看護基礎教育との関連 看護学生のキャリア成熟と職業的アイデンティティに着目して 田中里美ら28) 2014 看護専門学生 10 クリティカルケア看護領域に勤務する看護師の職業的成熟に関する実態調査 中井夏子ら19) 2013 看護師 11 看護職者の「職業キャリア成熟測定尺度」に関する構成概念妥当性の検討 狩野京子ら8) 2012 看護師 (管理者を除く) 12 中堅看護師の職業キャリア成熟度と看護師長によるソーシャルサポートの関連 狩野京子ら9) 2010 中堅看護師 13 看護師の「職業キャリア成熟」に影響する要因 小手川良江ら14) 2010 看護師 14 新人看護師の職業的成熟度に関する研究 現状及び関係する特性に焦点を当てて 中原博美ら18) 2010 新人看護師 15 A 病院におけるキャリア中期看護師のキャリア成熟度の実態調査−経験年数別成熟度の調査結果の比較から− 中村美智子ら20) 2010 看護師 (管理者を除く) 16 キャリア中期看護師の職業キャリア成熟に関する実証的研究 伊津美孝子ら4) 2010 キャリア中期看護師(専門・ 認定看護師・管理者を除く) 17 中堅看護師の職業的キャリア成熟度の特徴 西森麻喜子21) 2010 中堅看護師 18 看護師の職業的キャリア成熟度測定尺度の開発 林有学2) 2006 看護師 (管理者を除く) 表2 使用尺度一覧 使用尺度 件数 成人キャリア成熟尺度(坂柳25) 10 看護師の職業的キャリア成熟尺度(林2) 3 看護師における職業キャリア成熟測定尺度(狩野8) 2 キャリアレディネス尺度(坂柳24) 1

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え,これらの11コードをサブカテゴリー <目標>とした. 中原ら18)は,キャリア成熟度と,仕事へ の意欲,看護職継続意志,就業継続意志と の間に有意な相関が認められたことを示し た.近藤ら13)は,中高年看護師のキャリア 成熟度に関連していた要因は学会参加であ り,看護への学習意欲や看護実践への意欲 であると考え,これらの 6 コードをサブカ テゴリー<意欲>とした. 小手川ら14)は,役割モデルがあると答え た者は職業キャリア成熟度と 3 つの下位尺 度が有意に高値であったと報告している. 近藤ら13)は,中高年看護師のキャリア成熟 度に関連していた要因は,目標とする看護 師がいることであった.看護師としての役 割モデルを持つことを示すこれらの 5 コー ドをサブカテゴリー<役割モデル>とし た. 加納ら10)は,初期キャリア看護師を対象 とした研究で,キャリア成熟下位尺度と自 己効力感下位尺度の一部に相関が認められ たと報告しており,これらの 4 コードをサ ブカテゴリー<自己効力感>とした. 以上の 6 つのサブカテゴリーは,看護学 生・看護師の内面的な認知に関わることか らカテゴリーを≪内的要因≫とした.看護 学生・看護師は看護職としてのアイデン ティティ等の自己概念を形成し,看護師の 役割モデルから目標を見出し,自身の自己 効力感や自己教育力をもとに意欲を持つと いう内的要因がキャリア成熟を高める影響 要因となっていた. 2 )環境要因 加納ら10)中原ら18)は,初期キャリア看護 師を対象とした研究で,先輩看護師の支援, 病棟の雰囲気,医師・コメディカルの支援, 師長の支援,同僚看護師からの支援が,キャ リア成熟の下位尺度と有意な相関が認めら れたと報告している.狩野6 )は,中堅看護 師を対象とした研究で,キャリア成熟度に 影響する要因として情緒的サポートが抽出 されたと報告している.近藤ら13)は,キャ 3 .キャリア成熟に影響する要因 看護師および看護学生のキャリア成熟に影 響する要因について述べられていた研究は11 件であった.看護師のキャリア成熟へ影響す る要因は137コード,14サブカテゴリー, 3 カテゴリーに集約できた.カテゴリーは≪≫, サブカテゴリーは<>で示す. 1 )内的要因 田中ら28)は,看護専門学校生を対象とし た研究で,キャリア成熟の 3 つの下位尺度 と職業的アイデンティティの 4 つの下位尺 度の間に,相関があったことを報告してい る.また,中原ら18)は,看護職への適性に 対する知覚,現実の看護実践の理想が合致 している者は,キャリア成熟度が有意に高 値であったことを報告している.これらは, 看護職としての自分を自己の中でどのよう に捉え位置づけているかを示す項目である と考え,これらの19コードをサブカテゴ リー<自己概念>とした. 加納ら10)は,初期キャリア看護師を対象 とした研究で,キャリア成熟の 3 つの下位 尺度と自己教育力の 4 つの下位尺度の間に 有意な相関があったと報告している.また, 中原ら18)は,新人看護師を対象とした研究 で,キャリア成熟度と余暇の過ごし方との 間に有意な相関があったと報告している. 自己教育力とは,主体的,自律的に学習す る技能と態度であり5 ),学習時間外の余暇 の時間の過ごし方が関係しているとされる ため,これらの13コードをサブカテゴリー <自己教育力>とした.  中井ら19)は,認定看護師と専門看護師 に対して関心群と非関心群とに分け,キャ リア成熟度を比較した研究で関心群が有意 に高値であったと報告している.専門看護 師や認定看護師に関心があるということ は,看護師として将来の目標があると推察 される.また,近藤ら13)は,中高年を対象 とした研究で,中高年看護師のキャリア成 熟度に関連していた要因は看護職としての 目標がある者であったとの報告もあり,看 護師としての目標を示す項目であると考

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リア成熟度と関連していた要因として,刺 激しあえる仲間,チームワークが図れてい ることであったと報告している.職場内で の様々な立場からのサポートであると考 え,これらの27コードをサブカテゴリー <ソーシャルサポート>とした. 近藤ら13)中原ら18)は,労働条件に対する 知覚,看護職の発達やキャリアアップに関 する院内教育への参加,リアリティショッ クの予防に関する院内教育プログラムに参 加している者は,キャリア成熟度が有意に 高値であったと報告している.これらは, 職場の風土や勤務条件等所属施設のシステ ムと考え,これらの 7 コードをサブカテゴ リー<システム>とした. 以上の 2 つのサブカテゴリーは,看護師 を取り巻くものであることからカテゴリー を≪環境要因≫とした.看護師の所属施設 のシステムの中で,自身を取り巻く様々な 人々からのソーシャルサポートを受けると いう≪環境要因≫がキャリア成熟への影響 要因となっていた. 3 )個人特性 近藤ら13)は,中高年看護師や若年看護師 のキャリア成熟度は役職のある看護師より 有意に低値であったと報告している.さら に,キャリア成熟度に関連していた要因と して,外来勤務の長さ,経験年数の長さ, 経験部署が多いであったと報告している. 児玉ら12)加納ら10)中村ら20)は,キャリア成 熟度は経験年数別に有意に差が認められた と報告している.狩野ら9 )は,キャリア成 熟度は配置転換の有無により有意差があっ たと報告している.これらの,職位や経験 年数,経験部署は臨床における看護師の経 験を示し,これらの20コードをサブカテゴ リー<臨床経験>とした. 狩野ら9 )加納ら10)は,キャリア成熟度は 2 年の看護基礎教育課程の学生より 3 年の 看護基礎教育課程の学生の方が有意に高 かったと報告している.さらに,中原ら18) は新人看護師が直面しやすい問題・課題と その対処法に関する学生時代の学習,看護 職者のキャリアアップに関する学生時代の 学習とキャリア成熟度との間に有意な相関 が認められたと報告している.看護基礎教 育課程の種類や教育に関するものであり, これらの 7 コードをサブカテゴリー<教育 課程>とした. 久司15)は,看護大学生を対象とした研究 で,キャリア成熟度が,入学時と入学後 4 ∼ 8 か月後, 1 年次と 2 年次で有意に高 まったと報告している.また,近藤ら13) 中高年のキャリア成熟度に関連していた要 因が年齢であったと報告している.これら の 6 コードをサブカテゴリー<年齢>とし た. 中井ら19)は,キャリア成熟度が,女性よ り男性が有意に高得点であったと報告して おり,これらの 4 コードをサブカテゴリー <性別>とした. 近藤ら13)中井ら19)は,中高年看護師の キャリア成熟度に関連した要因は子どもの 有無だと報告している.子どもがいない者 より子どもがいる者はキャリア成熟度が有 意に高得点であった.これらの 4 コードを サブカテゴリー<子ども>とした. 小手川ら14)は,キャリア成熟度は将来を 話し合う,育児や家事に協力等の家族支援 がある者は有意に得点が高かったと報告し ている.これらの 4 コードをサブカテゴ リー<家族支援>とした. この 6 つのサブカテゴリーは,対象の属 性であることからカテゴリーを≪個人特性≫ とした.看護学生や看護師は,自身の受け た看護基礎教育を背景に年齢や臨床経験を 積むことや,私生活における家族からの支 援を受け子育ての経験を積むという個人特 性がキャリア成熟の影響要因となってい た.

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表3 キャリア成熟へ影響する要因 n=137 カテゴリー カテゴリーサブ コード 内的要因 自己概念 (19) キャリア成熟度と職業的アイデンティティの自己向上間では中等度の正の相関がみられた(12) 看護職への適正に対する知覚がある者は職業キャリア成熟尺度得点が有意に高値であった(4) 現実の看護実践の理想の合致している者は,職業キャリア成熟度得点が有意に高値であった(2) 自己概念と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計学的に有意な関係が認められることを示した(1) 自己教育力 (13) 職業キャリア成熟度の「関心性」と自己教育力の「成長・発展への志向」との間にはかなり正の相関 が認められた(3) 職業キャリア成熟度の「自律性」と自己教育力の「自己の対象化と統制」との間にはやや正の相関が 認められた(3) 職業キャリア成熟度の「計画性」と自己教育力の「学習の技能と基盤」との間にはかなり正の相関が 認められた(3) 職業キャリア成熟度の「計画性」と自己教育力の「自信・プライド・安定性」との間にはやや正の相 関が認められた(3) 余暇の過ごし方と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計学的に有意な関係が認められることを示し た(1) 目標 (11) 職業キャリア成熟尺度得点の認定看護師に対する関心の比較では、「認定関心群」と「認定非関心群」 で有意差を認めた(4) 職業キャリア成熟尺度得点の専門看護師に対する関心の比較では、「専門関心群」と「専門非関心群」 で有意差を認めた(4) 中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は目標あり(3) 意欲 (6) 中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は学会発表を聴きに行きたい(3) 看護職継続意志と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計学的に有意な関係が認められることを示し た(2) 仕事への意欲と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計学的に有意な関係が認められることを示した (1) 役割モデル (5) 役割モデルありの群は「職業キャリア成熟」が有意に得点が高かった。(4)中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は目標とする看護師あり(1) 自己効力感 (4) 職業キャリア成熟度の「関心性」と自己効力感の「能力の社会的位置づけ」との間にはやや正の相関 が認められた(2) 職業キャリア成熟度の「自律性」と自己効力感の「行動の積極性」との間にはやや正の相関が認めら れた(2) 環境要因 ソーシャル サポート (27) キャリア成熟度に影響ある因子として情緒的サポートが抽出された(7) 中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は刺激し合える仲間あり(7) 職業キャリア成熟度と職場のソーシャルサポート「先輩看護師の支援」との間にはやや正の相関が認 められた(4) 中堅看護師の職業キャリア成熟度に影響ある因子として評価的サポートが抽出された(4) 職業キャリア成熟度と職場のソーシャルサポート「師長の支援」との間にはやや正の相関が認められ た(3) 職業キャリア成熟度と職場のソーシャルサポート「病棟の雰囲気」との間にはやや正の相関が認めら れた(2) システム(7) 労働条件に対する知覚と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計学的に有意な関係が認められること を示した(3) 院内教育に対する知覚と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計学的に有意な関係が認められること を示した(2) リアリティショックの予防に関する院内教育プログラムへの参加と職業キャリア成熟尺度得点との間 に統計学的に有意な関係が認められることを示した(1) 看護職者の発達やキャリアアップに関する院内教育への参加と職業キャリア成熟尺度得点との間に統 計学的に有意な関係が認められることを示した(1) 個人特性 臨床経験 (20) 経験年数別に有意に差が認められた(9) 中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は対象病院での経験部署が多い(5) 中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は対象病院での外来勤務年数(4) 若年看護師のキャリア成熟度は役職ある看護師より有意に低かった(2) 教育課程 (7) 職業キャリア成熟度は看護基礎教育課程で有意な関連が認められた(5) 新人看護師が直面しやすい問題・課題とその対処法に関する学生時代の学習と職業キャリア成熟尺度 得点との間に統計学的に有意な関係が認められることを示した(1) 看護職者の発達やキャリアアップに関する学生時代の学習と職業キャリア成熟尺度得点との間に統計 学的に有意な関係が認められることを示した(1) 年齢 (6) 職業キャリアは、1 年生時と 2 年生時で有意差を認めた(5)中高年看護師のキャリア成熟度第 1 因子(自己教育性)に関連していた要因は年齢が高い(1) 性別 (4) 女性より男性が職業キャリア成熟尺度得点が有意に高得点であった(4) 子ども (4) 中高年看護師のキャリア成熟度に関連していた要因は子どもあり(4) 家族支援 (4) キャリア成熟度は、将来を話し合う、育児や家事に協力等の家族支援がある者は,有意に得点が高かった。(4) ( ) 内の数字はコード数を示す

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Ⅳ.考  察

2010年代に看護職および看護学生のキャリ ア成熟に関する研究が進んだ背景には,少子 高齢化や医療の進歩により看護職のニーズが 高まる中,看護職の人手不足が深刻な問題と なり,看護職の離職防止に関する検討会等具 体的な取り組みが始まったことがある.その ような中で,職業継続と関連があるとされて いる職業あるいは職場適応を促す支援として 看護職および看護学生のキャリア成熟に関す る実態調査や影響要因に関する研究が進んだ と考える.そのため,研究対象者も職業適応 の初期段階にある新人看護師や結婚・妊娠出 産あるいはキャリアアップを考える中堅看護 師といった経験年数ごとに検討されている. 一方で,管理者や専門看護師等はほとんど研 究の対象とはなっていない.これは,すでに 看護職に適応し,さらに看護職としての自己 の在り方について関心を持ち決定し,そのた めに計画的・自律的に行動し,キャリアを積 み専門性を高めていると考えられるが,必ず しもキャリア成熟の高さと一致しない可能性 もあることから,今後検討が必要であると考 える. 看護学生を対象とした研究はほとんどみら れなかったが,新人看護師を対象として研究 を行った中原ら18)は,新人看護師のキャリア 成熟と看護基礎教育課程における知識の習得 や看護職としてのキャリアに関する知識の習 得との間には関連があることを明らかにして いる.これは看護職に就くために,学生時代 から知識の習得を行い,その後職業人へと連 続しているため,看護学生時代に得た知識が それ以降のキャリアへ影響していると考える. 今後,看護学生のキャリア成熟の実態や影響 要因を明らかにすることは,それ以降の看護 職のキャリア成熟を高めるための示唆を得る ことができると考える. 看護職および看護学生のキャリア成熟の影 響要因は,大きく 3 つに集約することができ た.≪内的要因≫のうち,キャリア発達とは 個々人が取り組む発達課題であり,それには 自己の理解が不可欠であることから自己概念 が影響を与えることは必然であるといえる. また,自己教育力とは主体的な行動や自分の 能力を客観的に評価できる能力であり,キャ リア成熟を高めるために,看護職へ関心を持 ち自律的に行動するために必要な能力である と考える.また,役割モデルをもつことは目 指すべき姿が具現化され,将来に対する目標 へとつながるといえる.役割モデルや将来に 目標をもつことで,自己のキャリアに対し積 極的な関心へつながり,主体的な行動につな がると考える.また,これらの要因は,個人 の認知思考に関する側面であり,働きかけに より変容できる側面であると考える. ≪環境要因≫として,職場内サポートとし て<ソーシャルサポート>,労働条件などの <システム>が集約された.Super26)は,キャ リアとは自己と他者,自己と環境との相互作 用の中で修正調整されるとしている.看護職 や看護学生のキャリア成熟に影響を与える他 者とは支援をしてくれる人物であり,環境と は労働条件であった.つまり,キャリアとは, 職業を通して自分の役割を果たし自己実現し ていく過程であるが,キャリア成熟を高める 支援者として,周囲の環境を整える必要があ る. キャリアとは発達心理学や差異心理学を背 景にしているとも言われている30).<性別> において,女性より男性が有意に高得点であっ たのは、看護職は男性が圧倒的に少なく目的 意識がはっきりしているため,キャリア成熟 が高まっていると推察する.さらに,<年齢>, <子ども>がキャリア成熟の影響要因となる のは,社会的な経験の広がりによって職業に 対する意識が変化したと考えられる. <教育課程>によるキャリア成熟への影響 の違いは,大学設置基準の改正に伴い,教育 課程の内外を通じて社会的・職業的自立に向 けた取り組みが行われているためであると考 える.その中で,生涯を通して自己のキャリ アについて考え,就業後に直面するであろう 問題や課題とその対処方法について知識を得

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ておくことで,それらを克服しキャリア成熟を 高めることができると考える.≪個人特性≫ とした影響要因は,対象に備わった特徴であ り,看護職のキャリア成熟を高めるために考 慮する要因であると考える.一方で,看護学 生にとっては教育課程の中でのキャリア教育 の在り方が影響していることが示唆された.

Ⅴ.結  語

1 .看護職および看護学生のキャリア成熟に 関する研究は,2006年頃から報告されはじ め,その多くが2010年代に行われていた. 2 .対象は,新人看護師や初期キャリア形成 時期にある看護師または中堅看護師が多 かったが,看護学生を対象とした研究に関 する必要性が示唆されていた. 3 .看護職および看護学生のキャリア成熟に 影響を与える要因は,≪内的要因≫,≪環 境要因≫,≪個人特性≫に集約された. 1 ) ≪内的要因≫は,職業アイデンティティ を含む<自己概念>,<自己教育力>, 将来に対する<目標>,仕事に対する <意欲>,<役割モデル>,<自己効力 感>からなる. 2 )≪環境要因≫は,職場内サポートとし て<ソーシャルサポート>,院内教育や 労働条件などの<システム>からなる. 3 )≪個人特性≫として,経験年数や経験 部署といった<臨床経験>,<教育課程>, <年齢>,<性別>,<子ども>,<家 族支援>からなる. 文  献 1) 原北航,吉岡真弓,酒井美也子(2017)職 業キャリア成熟に焦点を当てた看護実践 環境と就業継続意向の関連,日本看護学 会論文集,看護管理,47,70-73. 2) 林有学(2006)看護師の職業的キャリア成 熟度測定尺度の開発,日本看護学会論文 集,看護管理,36,380-382. 3) 一般社団法人 日本看護系大学協議 会(2019)2019 年 度 会 員 校( 大 学 一 覧 ), http://www.janpu.or.jp/campaign/file/ ulist.pdf,2019年12月9日閲覧. 4) 伊津美孝子,平野加代子,小澤やつ子 (2010)キャリア中期看護師の職業キャリ ア成熟に関する実証的研究,日本看護学 会論文集,看護管理,40,168-170. 5) 梶田叡一(1985)「 自己教育への教育 」, 36-52,明治図書出版株式会社,東京. 6) 狩野京子(2015)中堅看護職者のキャリア 成熟に関する研究,看護師長によるサ ポートとキャリア成熟との関連,日本医 学看護学教育学会誌,24(1),28-35. 7) 狩野京子,出井涼介,實金栄,中嶋和 夫,山口三重子(2015)看護師における職 業アイデンティティ,職業経験の質と職 業キャリア成熟の関係,日本看護評価学 会誌,5(1),1-10. 8) 狩野京子,李志嬉,中島望,實金栄,山 口三重子,中嶋和夫(2012)看護職者の「職 業キャリア成熟測定尺度」に関する構成 概念妥当性の検討,岡山県立大学保健福 祉学部紀要,19,19-29. 9) 狩野京子,山口三重子,松尾英子,曽田 美佐子(2010)中堅看護師の職業キャリア 成熟度と看護師長によるソーシャルサ ポートの関連,日本看護学会論文集,看 護管理,41,37-40. 10) 加納さえ子,津本優子,内田宏美(2016) 初期キャリア看護師の職業キャリア成 熟度と背景要因,島根大学医学部紀要, 38,63-73.

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(10)

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参照

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