九州教育学 会研究紀 要 第46巻 2018 65-72
1.:ま
じめに
語彙の充実は,全
ての学びの根幹 をなす重要 な要素である。平成29年 3月 に告示 された小・ 中学校学習指導要領 において も,国
語科の改訂 の要点の一つ として「語彙指導の改善 と充実」 が挙げ られている [文部科学省 2017:8]。 知的障害のある児童生徒 にとって も語彙 は学 ぶ上で重要 な役割 を担 う。知的障害のある児童 生徒の語彙獲得プロセスの特徴 は健常児 と比較 して,①
知的発達の遅れが大 きいほ ど語彙習得 の時期が遅れる,2)語
彙習得の速度は健常児 と 比べて緩やかである,と
い う2点
がある [大伴 2001:91]。 知的障害のある児童生徒に語彙の指 導 を行 う場合 には, この ような障害特性 を考慮 しなが ら指導 を実施す ることが必要 となる。 これ まで,学
びの困難 さがある児童 を対象 と した語彙指導 に概念地図法が用い られて きた。 概念地図法 とは,概
念 と概念 とを命題で関連づ けて図式化 し,知
識の様子 を目に見える形で表 現 した ものである[Novak&Gowin 19&]。
中 山ほか (2008)は,喚
語困難のある学習障害が ある小学生 に対 して概念地図法 による指導 を行 なった。 その結果,記
述 された言葉が増加 し, 「対象児が好む言葉」を書 く割合が減少 し「一般 的な言葉」 を書 く割合が増加 したことを報告 し た。岡根ほか (2016)は,同
時処理に困難があ る小学生 を対象 として概念地図法 を用いた語彙 指導 を行 なった。「例示」お よび「体制化」の支 援 によ り,記
述 された単語数の増加お よび言葉 の カテゴリーの拡大が認め られた。 しか しなが ら, これ までの実践 は,主
に学習 障害な どの発達障害がある小学生 を対象に され て きた。加 えて.指
導結果の分析 は概念地図に語彙指導 にお ける概念地 図法の効果の検討
斗 ■ J ↓ ノ ´ 1 , 4 ユ エ 記述 された単語 のみに焦点 をあててお り, どの ように記述 されているのか につ いては分析 され ていない。 どの ように記述 されたのかについて の分析 を,対
象の 目的に合わせて行 うことが課 題 としてあげ られている[中山ほか 2008]。 語 彙の学習が強調 されている昨今において,学
び に困難 さがある児童生徒への効果的な語彙指導 のあ り方を検討することが必要であると考える。 そ こで本研究では,知
的障害のある中学生 を 対象 として,概
念地図法 を用いた語彙指導 を行 い,指
導の効果 を検討す ることを 目的 とした。 その際,記
述 された単語の数 と, どの ように記 述 されたかについて検討す ることとした。2.方
法(1)対
象生徒 対象生徒 は,公
立中学校の特別支援学級 に在 籍 していた中学校3年
生 (以 ド,生
徒A)と
中 学校2年
生 (以下.生
徒B)で
あった。 ①生徒Aの
指導開始 までの状況 小学校 の6年
間は通常学級 に在籍 していた。 小学校では多 くの学習で困難 さが生 じていた。 中学校 は,学
区外の知的障害特別支援学級のあ る学校に進学 した。 他者 と会話 をす るときには,一
方的に自分の 興味・ 関心があることを話す ことが多か った。 他者か ら聞いた話 を理解することが得意であ り, 自分 より年齢が上の人同士の会話 に も参加す る ことがで きていた。一方で.意
見 を求め られる と,思
っていることを伝 えることがで きず, も どか しく感 じている様子 もあった。 ―知 的障害のあ る中学生 を対 象 として 一九州教育学会研究紀要 第46巻 2018 ②生徒
Bの
指導開始 までの状況3歳
の時 に広汎性発達障害 と診断 された。小 学校入学時 よ り,特
別支援学級 に通 っていた。 中学校では,医
療機関にて中度の知的障害 とい わてお り,指
導開始時は,知
的障害特別支援学 級 に在籍 していた。 興味があ る内容 については知識が多か った。 その一方で,他
者 と会話 をす るこ とが多いが, 「これ」や「あれ」などの指示語で会話 をす るこ とが多 くあった。 (2)諸検査の結果 ①生徒Aの
諸検査の結果 DN―CAS(13歳
9ヶ 月時)のPASS標
準得点の 結果は, プランニ ング49(47-62),同 時処理58 (55‐69), il:i意51(49-66), 1継1次処理94(87‐ 102), 全検査50(47-58)で
あ った。 K―ABC
Ⅱ (13歳9ケ 月時)の
話 彙 尺度 は81 (76-88), 読み尺度 は71(66-78), 書‐き尺1衰:は79 (72-88),算数 尺 度 は69(67-75),習
得 度 は72 (69‐76)で
あった。 ②生徒Bの
諸検査の結果 DN―CAS(12歳
8ケ 月時)のPASS標
準得点の 結果 は,プ
ランニ ング60(57-72),1可 時処理45 (41-56), 7主意55(53-69). 継次処理58(55-70), 全検査40(38-48)で
あった。 K―ABC
Ⅱ (12歳8ヶ 月時)の
語彙尺度は66 (61-73),読 み尺度は82(76-89).書 き尺度は68 (62-77).算 数尺度 は67(62-73).習
得度 は67 (64-71)で あった。 (3)指導の方針 と指導 目標 生徒Aお
よび生徒Bは
,DN―CASの
結果か ら 同時処理の弱 さが認め られた。 同時処理 は,言
語処理能力において も重要 な役割 を担 ってお り, 複数の 単語 の意味的符号化 による新 た な意味の 構築 に関与 している[Kiめy&Williams 1991]。 生徒Aお
よび生徒Bへ
の指導 は.心
的過程 とし ての同時処理の弱 さを補 う支援が必要であった。 また.【
ABC
Ⅱの結果や 日常生活の様子か ら, 語 彙 につ いて の吉 手 さが あ る こ とが 明 らか に なった。必要 に応 じて適切 な言葉 を用 いるこ と がで きるようになることが必要であると考 えた。 以上か ら,概
念地図を用いた指導 を行 なった。 概念地 図は,単
語 間のつ なが りや単語 間の カテ ゴ リー を視党 的 に理解 す る こ とが で きるため, 対象生徒 た ちの同時処理の弱 さを補 いつつ,新
たな語彙 を獲得す る指導が可 能 と考 えた。 指導 目標 は,①
概念地図作成 を通 して,単
語 と単語の意味的つなが りを意識 し,多
くの単語 を記う│`す ることがで きること,②
単語 と単語 を 意味的つ なが りに よ り分類す ることを通 して, 単語間の関係 を構造的に理解 し.概
念地図を完 成 させ ることがで きること,と
した。(4)手
続 き ①全体的な手続 き 指導 は,プ
レテス トー指導前期 ―中間テス ト ー指導後期 ―ポス トテス トの順に行った。 プレテス ト・中間テス ト・ポス トテス トでは, 「朝」「学校」「夏」「楽 しい」 とい うテーマにつ いて概念地図を完成 させ ることを求めた。テス トでは,対
象生徒1人が10分の間に,で
きるだ け多 くの言葉 を書 くように求めた。 指導は,週
2回の個別指導で実施 した。指導 前期 ・後期 ともに指導回数は11回であった。 ②概念地図作成の手続 き 概念地図の作成に際 し,は
じめにA3用
紙の 中心にテーマ となる単語 を書いた。その後,テ ー マを起点 として,関
連す る単語 を線で結 びなが ら記述 した。概念地図に書かれた どの単語か ら で も,単
語 を連想 してつなげて良い とした。 指導前期では,対
象生徒 と指導者が交互に言 葉を書 くことによって概念地図を完成 させ ると い う指導 を行 なった。対象生徒は鉛筆 を使い, 指導者は赤ペ ンを使 って単語 を書いた。 は じめ に,対
象生徒がテーマか ら想起す る単語 を記述 した。次に,対
象生徒が書いた言葉か ら指導者 が赤ペ ンで関連する単語 を記述 した。対象生徒 は指導者が記述 した単語か らのみ,関
連する単 語 を連想 して記,`す る とい うルー ルを設 けた。 指導者 も同様に,対
象生徒が記述 した単語か ら のみ 関連す る単語 を連想 して記述す る とい う ルールを設けた。なお,指
導者が記述する際は,I石力1・ 語彙指導 における概 念地 図法の効 果の検討 対象生徒 にとって新奇 と思われる単語 を中心 に 記述 した。 この指導前期の手続 きを「交互記述 例示条件」とした。「交互記述例示条件」は
,中
山ほか (2(Ю8)を
参考 とした。 指導後期では.は
じめに対象生徒が1人で付 箋 に単語 を書 きなが ら概 念地図を完成 させるよ う指導 した。その後,単
語が書かれた付箋 を別 紙 に移 し,付
箋に書かれた単語間で関連す る単 語 をまとめて グループを作 るよう指導 した。最 後 に, グループの名前 を付 けるよう指導 した。 この指導後期の手続 きを「 グループ化条件」 と した。「 グループ化条件」 は,岡
根 ほか (2016) を参考 とした。(5)概
念地図における課題 指導前期お よび指導後期で用いたテーマ を表 1に 示 した。指導前期では, 日常的に用いる言 葉であ り関連す る言葉を連想 しやすいテーマ と した。指導後期では,難
易度の高い単語 として, 抽象的な言葉 を中心 にテーマ とした。 表1
指導に用いたテーマ 1旨'lJilり│ 指 導後期 ①記述単語数の変化の分析 記述 された単語の数 (以下,記
述単語数)に
ついて分析 した。は じめに,プ
レテス ト・中間 テス ト・ ポス トテス トのそれぞれのテーマにつ いて記述 された単語数を求めた。その後,各
テ ス トによる同一テーマの記述単語数の変化につ いて検討 した。 ②記述形態の変化の分析 どのように記述 されたか (以下,記
述形態) について分析 した。記述形態は岩井 (2002)を 参考 とし,「直線型」「放射型」「分岐型」「ネッ トワーク型」とした。「直線型」は,主
にテーマ から2本
以下の線で単語が結ばれている記述形 態とした。「放射型」は,主
にテーマから3本
以 上の線で単語が結ばれている記述形態 とした。 「分岐型」は,主
にテーマから結ばれた単語の線 が,途
中で分岐 している記述形態 とした。「ネッ トワーク型」は,主
にテーマから結ばれた線の 途中にある単語 と単語が結ばれている記述形態 とした。 記述形態の判定は,指
導者を含めた5名
で 行った。5名
は独立で記述形態を判定 した。そ の後,判
定 した記述形態の一致率を算出 した。 全員が一致 しなかった場合は,協
議により決定 した。その後,各
テス トにおける各テーマの記 述形態の変化を検討 した。(7)倫
理的配慮 本指導の実施についての 目的を生徒Aお
よび 生徒Bの
保護者に説明をし,同
意を得た。また, 個 人が特定 されることがないように した上で指 導の結果 を公表す ることについて説明 を し,同
意 を得た。3.結
果(1)記
述単語数の変化の分析の結果 ①生徒Aの
記述単語数の変化の分析結果 生徒Aの
記述単語数の変化の分析による記述 単語数の推移を図 1に 示 した。 プレテス トでは,「夏」について14語,「学校」 について9語
,「朝」について12語,「楽 しい」 テーマ 指導回 テーマ12_壁
固 2__L_二 _並 │!」3_
動惣14
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15_i塁
.生 5 11).F16
環境 (, │││17
地 球 718
材料8___家
19
科 学9
かばん20
電気 10 り││11
建物22
法律 本21
運 動(6)分
析方法 概念地図法による指導の効果は,プ
レテス ト・ 中間テス ト・ ポス トテス トで対象生徒 によって 記述 された概念地図で検討す ることとした。そ のため,対
象生徒 によって概念地図に書かれた 単語 を分析の対象 とした。記述 された単語の数 と, どの ように記述 されたかについて検討す る ため,記
述単語数の変化の分析 と記述形態の変 化の分析 を行 った。九州教育学 会研 究紀要 第46巻
"18
記述 単語数 ブレテスト 中間テスト ボストテスト ‐ I+学 校 く "朝 く卜楽しい 図1
生徒Aの
記述単語数の変化の分析結果 について12語の単語が記述 された。 中間テス トでは,「夏」について29語,「学校」 について36語,「朝」について31語.「楽 しい」 について30語 の単語が記述 された。 ポス トテス トでは,「夏」について41語,「学 校」について50語,「朝」 について∞語,「楽 し い」 について52語 の単語が記述 された。 プ レテス トか ら中間テス トにかけては,全
て のテーマについて,記
述単語数が増加 した。最 も記述単語数が増加 したのは「学校 」であ り, 27語の増加が認められた。最 も少ない増加であっ た「夏」で も15語の増加が認め られた。 中間テス トからポス トテス トにかけては,「朝」 を除いた3テーマについて.記
述単語数が増加 した。最 も記述単語数が増加 したのは「楽 しい」 であ り,22語
の増加が認め られた。最 も少ない 記述単語数の増加 は「夏」であ り,12語
の増加 が認め られた。「朝」については,記
述単語数が 1語減少 した。 ②生徒Bの
記述単語数の変化の分析結果 生徒Bの
記述単語数の変化の分析による記述 単語数の推移を図2に
示 した。 プレテス トでは,「夏」について10語,「学校」 について8語
,「朝」について10語,「楽 しい」 について7語
の単語が記述 された。 中間テス トでは,「夏」について26語,「学校」 について21語,「朝」について31語,「楽 しい」 について28語の単語が記述 された。 ポス トテス トでは,「夏」について38語,「学 校」について19語.「朝」について25語,「楽 し い」について30語の単語が記述 された。 プ レテス トか ら中間テス トにかけては,全
て のテーマについて記述単語数が増加 した。最 も 記述単語数が増加 したのは「朝」 と「楽 しい」 であ り,21語
の増加が認め られた。最 も少ない 記述単語数の増加 は「学校」であ り, 8語
の増 加が認め られた。 中間テス トか らポス トテス トにかけては,「夏」 と「 楽 しい」 で記述単語数の増加が認め られ, 「夏」は記述単語数が 12語増加 し,「楽 しい」は2語
増加 した。「学校」 と「朝」については,記
述単語数が減少 した。「学校」は記述単語数が 2 語減少 した。「朝」は記述単語数が6語
減少 した。 6( 50 40 30 20 10 0 ブレテスト 中間テスト ボストテスト ー 鷹 ‐ 学校 0朝 ‐ れ い 図2
生徒Bの
記述単語数の変化の分析結果(2)記
述形態の変化の分析結果 記述形態の変化の分析結果について対象生徒 ごとに示 した。概念地図は一部のみ示 した。 ①生徒Aの
記述形態の変化の分析結果 生徒Aの
「夏」の概念地図について,プ
レテ ス トを図3に,中
間テス トを図4に,ポ
ス トテ ス トを図5に示 した。 また,記
述形態の変化の 分析結果を表2に示 した。 プレテス トでの記述形態は,「学校」 と「朝」 については「直線型」であ り,「夏」 と「楽 し い」については「放射型」であった。中間テス トでの記述形態は,全
てのテーマで「分岐型」 であった。ポス トテス トでの記述形態は,全
て のテーマで「ネットワーク型」であった。 生徒Aの
記述形態については,全
体的な傾向 として「直線・放射型」か ら「分岐型」,「ネッ トワーク型」へ と推移 した。´ ¨ 卜t / ヽ ‘ ダ ´/ ヽ/ V / ヾ ハ ´ ノ ´ 立石 力斗 語彙指導 における概念地図法 の効果 の検討 図
3
生徒 A「 夏」のプレテス ト 記述形態:「放射型」 図4
生徒 A「 夏」の中間テス ト 記述形態:「分岐型」 図5
生徒 A「 夏」のポス トテス ト 記述形態:「ネットワーク型」 表2
生徒Aの
記述形態の変化の分析結果 夏 放射型 (100%) 分岐型 (1∞%) ネ ッ トワー ク型 (100%) 学 校 分岐型 皇 `聖 左 ネットワーク型 __皇∞監L_
楽 しい ②生徒Bの
記述形態の変化の分析結果 生徒Bの
「夏」の概念地図について,プ
レテ ス トを図6に,中
間テス トを図7に,ポ
ス トテ ス トを図8に示 した。 また.生
徒Bの
記述形態 の変化の分析結果 を表3に示 した。 プ レテス トでの記述形態は,全
てのテーマで 「直線型」であった。中間テス トでの記述形態は 「夏」が「直線型」,そ
れ以外のテーマで「放射 型」であった。ポス トテス トでの記述形態は「楽 しい」が「放射型」,そ
れ以外のテーマが「分岐 型」であった。 生徒Bの
記述形態 について,全
体的な傾向 と して,「直線型」か ら「放射型」.「分岐型」へ と 推移 した。 図6
生徒 B「 学校」のプレテス ト 記述形態:「直線型」朝
(艦
; 分岐型 (100%) ネ ッ トワー ク型 (80%) 放射型 (100" 分岐型 〔Ш 拉 テーマ ブ レテス ト 中間テス ト ボス トテス ト 図7
生徒 B「 学校」の中間テス ト 記述形態:「放射型」鮨
/ セメ
︹0
′︵
ワ
︱ ホ 一ヾ ん、ひ
ヽ ヽ 工 や 、 一 ネ スく﹂
躊
ヽ こ´ c L "r < ( ※ ( )内は判定の ‐致率を示す。 ネットワーク型 __lШZL_
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九州教f,学会研究紀 要 第46巻 2018 テーマ プ レテス ト 中間テス ト ボス トテス下 @´
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図8
生徒 B「 学校」のポス トテス ト 記述形態:「分岐型」 表3
生徒Bの
記述形態の変化の分析結果 直線型 (80%) 直線型 (100%) 分岐 型 (60%) 対象生徒 と指導者が交互に単語 を書いてい くこ とが,対
象生徒の記述単語数の増加 を導 く有効 な手立てであるといえる。特 に本研究では,指
導者は対象生徒 に とって新奇 と思われる単語 を 記述 した。 また.対
象生徒 は指導者が記述 した 単語か ら新たな単語をつ なげる必要があ り,指
導者 も対象生徒が記述 した単語か ら新たな単語 をつなげるというルールを設けた。このことは, 対象生徒 にとって既知の単語 と,新
奇な単語が 結 びつ くことを意味 している。対象生徒が有 し ている語彙 を起点 として,関
連する単語 を認識 し,語
彙が拡大 したことによって,記
述単語数 が増 えた と考 え られる。(2)記
述形態の変化 概念地図の記述形態について,生
徒Aは
「直 線型・放射型」か ら「分岐型」.「不 ッ トワー ク 型 」へ と変化 した。生徒Bは
「 直線型」 か ら 「放射型」,「分岐型」へ と変化 した。両生徒 と も,学
習 を進める中で記述形態 に変化が認め ら れた。 比護 (2013)は,概
念地図の型 と学力 との間 には相関があると述べてお り,「直線型」.「放射 型・分岐型」,「ネ ッ トワー ク型」の順 に学力が 高い と述べている。本研究では学力 との相関に ついては検討 していないが,指
導 を通 して よ り 高次な記述形態 になった といえる。 それぞれの記述形態の特徴 は,単
語間の関係 にあると考えられる。「直線型」と「放射型」は, 単語 と単語が1本の線 によってつながれるため, 単語 と単語の関係は1対 1である。「分岐型」に なると, 1つ
の 単語か ら複数の 単語がつ ながれ るため,単
語 と単 語 の 関係 は1対
多で あ る。 「 ネッ トワー ク型」になると,単
語 と単語が複雑 につ ながれるため,単
語 と単語の関係は多対多 である。岸 (2000)は , ネ ッ トワー クの広が り の程度が概念 (単語)の
包括性 の 目安 になると している。「分岐型」や「 ネッ トワー ク型」へ と 記述形態が変化 した ことか ら,指
導 を通 して, 単語 と単語のつなが りが密接 になった といえる。 生徒Aは
指導前期 を経て記述形態が1対多の 「分岐型」にな り,指
導後期を経て記述形態が多 対多の「 ネッ トワー ク型」へ と変化 した。生徒 学 校 直線型 放射型 (100%) 分岐型 (80%) (]OO。) 朝 * LI,. 放射型 放射型 ※ ( )内は判定の ・致4.考
察 本研究で は,知
的障害のある中学 生 を対象 と して,概
念地図法 を用 いた語彙指導 を行い.指
導の効果 を検討す るこ とを 目的 と した。指導の 効果 につ いて,記
述 単語数の変化,記
述形態 の 変化か ら考察 を行 った。(1)記
述単語数の変化 生徒Aは
プレテス トか ら中間テス ト.中
間テ ス トか らポス トテス トにかけて記述 単語数が増 加 した。 これによ り,指
導前期の「交互記述例 示条件」 と指導後期の「 グループ化条件」によ る指導が効果的であった といえる。生徒Bに
つ いては, プ レテス トか ら中間テス トにかけて記 述 単語数が増加 してお り,「交互記述例示条件」 による指導が効果的であった といえる。 両対象生徒 の記述 単語数変化の共通点か ら, 指導前期の「交互記述例示条件」が記述 単語数 の増加 に効 果的であ っ た といえる。 中山ほか (2008)は,指
導回数の一部で対象児 と指導者が 交互に単語を書 くとい う手続 きを取 り入れ,記
述 単語数の増加 に効果があった と述べ ている。 直線型 (1009′6) 放射型 (80%) 分岐型 (80%)、 '石 力
+
語彙指導における概念地図法の効果の検討Bは
指導後期を経て記述形態が 1対 多である「分 岐型」へ と変化 した。生徒Aと生徒Bの
共通点 か ら,複
数の 単語 どうしが,よ
り強いつなが り を有 し始めたのは指導後期であるといえる。 こ のことか ら,「グループ化条件」が単語 と単語の つ なが りを広げる手立て として有効であるとい える。岡根ほか (2016)は.概
念地図に自発的 に記述 した単語 を見直 し,意
味的関連性 による 分類を行 うことで,そ の単語が属するカテゴリー の理解 を促進 し,記
述 されなかった関連 カテゴ リーに気づ くようになると述べている。本研究 の結果は,単
語 と単語 を結びつけることが,記
述形態の変化に影響 を及ぼす ことを明 らかに し た。「 グループ化条件」のように単語 と単語 を結 びつ ける活動 は,単
語の カテ ゴリー を増や し. 単語 と単語の結 びつ きを増やす ことに より複雑 な記述形態 になってい くといえる。(3)対
象生徒間の相違 各テス ト結果の変化か ら,生
徒Aは
記述単語 数が増加 し続け.記
述形態 も最高次の型 まで変 化 し続 けた。生徒Bは ,指
導前期 を経て記述単 語数が増加 し,指
導前期 を経て記述形態が緩や かに変化 し,指
導後期 を経て記述形態が 1対 1 か ら1対多へ と変化 した。以上か ら.指
導に効 果について,指
導前期 と指導後期で明確 に区別 す ることがで きず,個
人差がある といえる。 知的障害のある児童生徒 における語彙獲得過 程は,緩
やかである ものの.健
常児の語彙発達 と近い発達過程 をた どる といわれている [大伴 2∞1:92]。 この語彙発達は当然個人差があると 考えられる。 また,Novak&Gowin(1984)は
, 概念地図の効果が明 らかになるには,時
間がか かることを指摘 している。 これ らの ことか ら,知
的障害のある児童生徒 1人 1人の実態 に即 して,指
導時期 を変えてい くことが求め られる。特 に生徒Bは ,今
後指導 を継続 してい くことで指導の効果が現れて くる 可能性がある。また,「交互記述例示条件」では 記述単語数の増加,「グループ化条件」では記述 形態の高次化 という,全
体的な指導効果を示 し た。 しか し,前
述の ように知的障害のある児童 生徒の実態等 によ り,そ
れ らの効果 を明確 に分 けることは困難である。「交互記述例示条件」で も,記
述形態の変化 を促す手立てや,「グループ 化条件」で も,記
述単語数の増加 を促す手立て を考案する必要がある。学習者の負担 を勘案す る と,「交互記述例示条件」 と「 グループ化条 件」 を融合するなど, よ り短期間で記述単語数 が増加 しつつ記述形態が高次化で きるような手 続 きを開発することが求め られる。5.お
わりに
本研究では,「交互記述例示条件」と「グルー プ化条件」 とい う手続 きによる概念地図法の指 導が,知
的障害のある中学生を対象に した場合 に も.記
述単語数の増加お よび記述形態の高次 化 に効果があることを示 した。 よって,指
導 目 標であった。(⊃概念地図作成を通 して,単
語 と 単語の意味的つなが りを意識 し,多
くの単語 を 記述す ることがで きること,②
単語 と単語 を意 味的つ なが りによ り分類す ることを通 して,単
語間の関係 を構造的に理解 し,概
念地図を完成 させ ることがで きる.に
ついては概ね達成する ことがで きた と考える。 しか し,対
象生徒の実態 に合わせた指導 を行 うことや.さ
らに効果的な指導手続 きを検討す ることが今後の課題 として残 された。 また。本 研究の事例数は十分 とはいえず.本
研究におけ る対象生徒の実態 についてのみ指導の効果が認 め られたことか ら,概
念地図法による指導効果 の一般化には慎重 になる必要がある。知的障害 のある生徒や.語
彙に困難 さがある生徒への指 導法 として,よ
り効果的な指導方法 を開発す る ためにも,今
後 も実践 を重ねてい くことが望 ま れる。 謝 辞 本論文の執筆 を快諸いただいた生徒A・ 生徒B本
人ならびに両生徒の保護者のみなさまに感 謝 中 し11げます。 また,協
力をいただ きました針池栄治氏,塚
田仲 子氏,萩
島彩夏氏,石
橋雪花氏,佐
々木真 山氏 に記 して感謝 中 し上げ ます。九州教育学 会研究紀 要 第46巻 2018 参照文献 比護一幸