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冗長性を活かした大学英語読解授業活動を学習者はどのように捉えているか

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冗長性を活かした大学英語読解授業活動を学習者はどのように捉えているか

How Learners Reflect on Their University English Reading Class Activity

Based Upon Redundancy?

キーワード:学習者論、読むこと、認知 千田誠二 CHIDA Seiji 1. はじめに 本研究は、英語で英語の授業を行うことが提唱される時代にあって、新学習指導要領の理念である「知 識の習得や定着を中心とした学力観」から「思考・判断・表現」「主体的な学習への態度」「英語 4 技能統 合」などを重視した学力観(文科省,2013)への重視に対応すべく、その策の一つとして「冗長性」という概念 に着目した。授業で使用する教材準備・作成、そして授業進行中の教師―学習者間のやりとりや言語活動 といった英語授業実践全体の文脈において、「冗長性」を意識した読解授業を実践し、受講者である学習 者がそれをどのように捉えたのかを調査分析を行い、その結果を報告することとした。 2. 先行研究 2.1 言語教育における「言い換え」「冗長性」と本研究への応用 「冗長性」を一般的な国語辞典で調べてみると、「余分な部分」などとあり、その意味からときとして否定的 な意を含むことばとして捉えられることがある。しかし、コンピュータをはじめとした機械工学などの分野では、 システム障害などが発生した場合でもその機能が維持されるようにあらかじめ予備の機能などが付しておか れる、また安定的に情報伝達をまとまった形で正確に担保できるという、肯定的な面での意味において使わ れることが少なくない。 一方、言語教育の分野では「冗長性」(redundancy)は「言語の特質の一つ。言語においては、意味 (meaning)と形(form)が 1 対1で対応しているわけでなく、一つの意味を複数の表現方法で表す場合があ る。これを冗長性という」などと説明されている(白畑他(編),2009, p.258)。ここにみられる「一つの意味を複 数の表現方法で表す」ことは、言語教育ではしばしば「言い換え」というストラテジーとして説明されることが 多い。コミュニケーション・ストラテジーの概念では、「言い換え」は言語能力、社会言語学能力、談話能力、 にならぶ方略的能力としての範疇(Canal and Swain,1980)でしばしば説明される。さらにその「言い換え」 は 5 つの下位区分に分けられ、コミュニケーションが破綻しそうな状況において、それを維持する・修正する

役割を持っているとされる(Tarone,1981)。ストラテジーの学習における教育的価値について田中(2006)は、

現在の英語教育が「的確な言語表現を完全に使えるようにすること」を重視しすぎていると指摘した上で、例 えば、挨拶表現においてHow are you? は普通の会話においては、What are you doing? や What’s up? のような言い換えや、またポライトネスの面でも、She is pregnant.が She is expecting. といった言い換え

が、相手の立場に立った言語使用としてコミュニケーションの基礎であるとの考えを述べている(p.15)。創造

的な言語習得のプロセス面でいえば、学習者はこの「言い換え」による仮説検証を繰り返す段階を通るとい

う(Ellis, 1985)。このように学習者のアウトプット面での「言い換え」の役割や価値についての言及がなされて

いると同時に、英語教師側が学習者にどのように修正されたインプットを与えるかといったような研究分野 (Parker and Chaudron,1987., Yano, Long, and Ross,1994, etc.) において、英語教育現場でのテキスト 本文の扱い方に参考となるような視点が論議されてきた。

本研究では、このような「言い換え」や「視点の切り替え」を「冗長性の概念を活かした」英語授業という枠 で捉え、教師自身の教材の解釈や発問作成などの教材準備、また授業中の言語活動でのやりとりの場面を 含めた授業活動への応用の視点とした。興味深いことに本論の冒頭で紹介した「一つの意味を複数の表現 方法で表す」(白畑他(編),2009,p.258) という冗長性の説明の箇所では、Tom speaks Japanese.という文につ

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いて「Tom という語から主語が三人称単数であることが分かる。そして spoke ではなく speak という語幹が使 われていることから時制が現在であることが分かる。にもかかわらず、動詞に三単現の s がついている。(中 略) こういったことは、英語の文法における冗長性とみなされる(p.258)」といったように、言語表現上の言い 換えだけでなく、英文を解釈する多様な「視点」や「切り口」による解説がなされている。英語の授業に例え れば、読解授業などで英文について何を取り上げ、どのように説明したり質問するかといった「焦点の幅」で もあり、教師の英語教育観や信条に重なる部分といえよう。英語教育分野では例えば、ボトムアップ的な読 み方に偏りがちな読解作業から「より多角的で総合的な理解が図られる」ための和泉(2016)による授業実践 や、「発問で生徒の経験を関連付けた深い理解を促す」ことを目指した雨宮(2014)のリーディング授業実践 などは、本研究でいうところの冗長性に富んだ教師の見方による参考にすべき豊かな望ましい言語活動例 といえる。筆者は、このように学習者の目の前に提示された英文が有する「余分な情報」について教師側か ら積極的にその視点や切り口を広げて展開させることで、豊かなコミュニケーションの「幅」を学習者に体感 させることが重要と考えてきた。 2.2 「冗長性を活かした授業」と学習者の捉え方を調査する意義 上記の考えに基づいて、筆者はこれまで冗長性の概念の応用を、教育実践の信条として教材内容の解 釈や質問作成・準備、また授業中の言語活動でのやりとりの場面などに反映させてきた。そこで本研究では、 受講生である大学生英語学習者が、筆者による読解授業活動をどのように捉えたかその意識や態度につ いて分析を行うこととした。理由は先行研究でもみられるように、教師と学習者双方の言語教育(学習)観や 信条は、必ずしも一致するとは限らず、また学習者に容易に受け入れられるとは限らないといわれていること にある。これはビリーフ(信条)が学習者の取る学習方略の選択に大きく影響を与えているからだとされる (Horwitz,1987; Yang,1999 ) 。 Horwits(1987) が 開 発 し た BALLI(The Belief About Language Learning Inventory)は、34項目から成る①外国語学習能力 ②外国語学習の難しさ ③外国語学習の特 質 ④学習・コミュニケーション方略 ⑤動機づけの 5 分野を対象とする質問紙による調査方法であり、それ によって学習者の持つ信条が捉えやすくなった。これらの詳細な分析によって個々の信条と学習方略との 関わりは一般的につながりが深いことがわかった。教える際に学習者に合った教授法を考えることが、彼ら の学習を成功に導くことにつながるとされる。個別に学習者の観察をするのが難しい集団授業の場合には 時として難しいことでもあるが、少なくとも教師の信条に基づいた授業活動を個々の学習者がどのように捉え ているかを把握することは、のちに十全なサポートを設ける上で、または正しい仮説を立てる上で必要不可 欠なことだろう。このような問題意識から本研究では、「冗長性」を活かした読解授業活動の実践と、それが 学習者にどのように捉えられているかについて自由記述によるコメントを調査・分析することとした。 3. 筆者の授業実践について 研究の対象としたクラスは、必修の英文読解系科目受講生である大学生 32 名(2 年次生)である。テキス ト「Reading Fusion2 (南雲堂)」を、毎授業 1 課の半分約 260~300 語の英文を扱った。授業ではテキスト 英文の読解とワークシートの解答を活動の中心とした。一語一義的な理解だけでは捉えられないような発 問:「同じ意味で他の表現ではどう表されるか選択肢から選べ」「表現はちがうが中身は同じと思う表現を他 の段落の語句から抜き出しなさい」「今日読んだ英文全体の本質に近い別の場面で見る英文広告を以下か ら選びなさい」といったように、「本質的な意味が同じでオリジナルテキスト英文の形式・意味からどれくらい 離れているか」を意識せざるを得ないようなワークシートの質問に毎回取り組んだ。以下は各読解発問タイ プのおおよその占有率である。 表1. 当授業でのワークシート内の読解発問のタイプと出題数占有率 TorF 事実型質問 フレームチェンジ タイトルをつける質問 大意要約 日本語訳 30% 15% 30% 10% 10% 5%

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問題例①:授業で扱った T or F 問題における「言い換え英文」

1)テキスト英文と近似度が高い言い換え(テキストの英文と表現形式とあまり離れていない)

・text 英文: No long-term studies on the effects of eating GM foods have been carried out. (遺伝子組換え食品の摂食の影響について長期的な調査はまだされていない) 言い換え文➡No study has ever shown that GM foods give healthy or unhealthy life. 2)テキスト英文と近似度が低い言い換え(テキストの英文と表現形式と離れている)

text 英文:In the words of Fortune magazine, “Today's elite celebrities are no longer just building wealth, they're building empires.”(雑誌によると、今日のエリートスターたちはもはや(サイ ドビジネスによって)富を構築というよりは、帝国を築いているといえる)

言い換え文➡Celebrities are admitted by many field such as worldly famous magazine for their competence in doing business.

問題例②:テキスト文中の第 2 段落中の指定された語句と、それが表す意味を具体的に示したと思われる 英文をテキスト文中の他の場所に探す問題(※冗長性を意識する前段階として、テキスト文中でも 「同じ質の意味を他の箇所の表現で言い換えていること」を意識させることで、表現や理解の視点 の幅があることを体験させるフレームチェンジの問題)

Q. In the text, there are two key expressions: “not accustomed” and “strengthened”. Then, which of each behavior below is “not accustomed” or “strengthened”? Please put “A” for “not accustomed” and put “B” for “strengthened”.

1. Every time we do an action, our brain sends commands to our muscle through nervous system (神経システム). ( )

2. The first time we go bowling, we tend to perform poorly. ( )

3. If we go and play bowling repeatedly, nervous system improves our skill level. ( ) 4. Before the establishment of muscle memory, action is needed to be performed consciously ( ) 問題例③:フレームチェンジをした質問:テキスト本文の内容と似ている別の英文資料を提示して、その内容 の近似度を判断し、適切なものを一つ選択させる問題 例:①『英語教師のトレーニング講座の掲示』 ②『お祝い行事についてのお知らせ』 ③『大学施設に 関する掲示』 など別の英文資料を用意して読ませ、右のような問いを与える:「テキストの第2段落の英 文には、〇〇University が行っている国際交流の実施内容や目的が書いてありました。別資料として配 布した3つの広告で、その内容がテキストの内容と本質的に最も似ていると思われるプログラムはどの 広告か。一つ選んで番号に○をしてください。」 4. 調査方法: 自由記述質問紙調査の実施 4.1 調査の概要 RQ(リサーチ・クエスチョン):『読解クラスにおいて、冗長性を念頭におくことを教師の信条とした読解活動に 対して学習者はどのように捉えているか』 対象者:先述の読解科目受講生 大学生 32 名(2 年次生) 質問紙:年度末終わりに①できたところ ②課題と思ったこと ③気づいたところ、などを中心に自由に記述 してもらった。分析に使った自由記述データ量は、約 10,000 字である。ふだん行っている授業改善 のためのアンケートや授業感想記述として実施し、成績とは関係ないことを口頭で伝えた。 4.2 分析方法 1) 量的側面: KH Coder(テキストマイニング計量:石田・金,2012., 牛澤,2018)により、データ傾向として頻 度の高い同じことばや似たことば、あるいは一緒に出現しやすいことばや表現の関係性などを概観し、それ を本研究の読解活動における学習者が重視した部分と捉え、言語データを拾う暫定的な枠組みとした。 2) 質的側面:MAX QDA software を使って、データをコーディング、カテゴリー化した。少数事例を深く濃

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密に記述することが多い質的分析(やまだ,2007)をメインにした場合、研究課題の設定は調査者の関心に 沿った(西條,2007)ものになる場合が多くなる。本研究での対象とした 32 人のデータは、教師のある信条に 基づいた読解活動を学習者がどのように捉えているか、というものであった。現象の本質を理解することを目 的とした現象学的アプローチの場合のサンプル数の目安(3~10 名)(Creswell,2013)より対象は多く、分 析結果の解釈のあとにその示唆に基づく授業活動のあり方を考えることが当然予想できうるため、のちの理 論生成や仮説生成を目的としたグラウデッド・セオリーアプローチ(Corbin,2008)が扱うとされる 20 名~30 名のサンプル数に近いデータ数となった。全体として本研究はデータの語数や頻度など全体傾向把握に 量的側面と、そのあとの質的側面によって個別文脈的な様相を深くみることから混合型研究方法をとってい る。とりわけその方法の 4 つの型といわれているデータの結合(収斂的)、データの説明(説明的順次的)、 データの積み上げ(探索的)、データの埋め込み(介入)(Creswell,2015)のうち、「データの積み上げ(探 索的)」のタイプともいえる。つまり、のちの「量的研究のための尺度開発や、新たな変数の発見、新しい介 入方法の考案などの目的で、質的データの分析結果が用いられる」という前提である。ここでは冗長性を意 識した読解授業活動において、利点や困難な面などを含む学習者の受け止め方の諸相を質的に深く捉え ることで、以降その分析結果が、教師にどのような介入を行うのが望ましいかを考える視点を得ることにつな がると思われる。 5.結果 5.1 量的側面:言及内容についての傾向把握 テキストマイニング計量で明らかになった右図の頻出度と共起度において、他の 語句と比較して突出している部分がみられた。それは「文」という語と「主題文・支持 文」という語であった。また、共起度としてエリアがそこに近かった「理解」という語の 内容は「~できるようになった」との文脈で肯定的な内容がほとんどであった。当初、 筆者は自身の本来の関心事である「意味内容の冗長性を活かした授業への捉え方 や感想」が出ることを予期・期待していた。しかし、結果を量的にみると「主題文・支 持文についての言及が計量的に多く、さらにその見分けるといった力が学習者の読 解作業をスムーズにさせる上で何らかのよい影響を与えていた」という、想定外の新 たな文脈の存在が事前に予測することができた。 5.2 質的側面:カテゴリー抽出 上記にあるような全体の傾向の把握に基づき、改めて言語データを細部に渡って眺めていった。そして 似た意味内容のコメントを集め概念化し、コード名をつけた。それぞれの該当コードの数とその全体での占 める割合を示したのが以下の表 2 である。 表 2. 各コードが占める割合 コード 頻度 割合 主題文・支持文の「段落内」での見分け 10 16.13 形式スキーマを得たことで生じた内容に焦点を当てる余裕 9 14.52 表現はちがうが内容が同じものに対する理解の促進 8 12.90 読み方への捉え方の変化や向上 6 9.68 複数の表現や視点から考えさせられる内容への驚き 6 9.68 アウトプットへの効果についての言及 5 8.06 読む速さとの関係について 5 8.06 選択肢内の同じ単語や言い方での比較の難しさ 3 4.84 マクロな冗長性(フレームチェンジ)についての困難さ 2 3.23 マクロ:自分や日常生活の中に意識して考えていくことへの言及 2 3.23 図 1. 語の共起度

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主題文と支持文を区別することによる理解のしやすさ 1 1.61 自ら冗長性を考えるような態度 1 1.61 大学文化・文脈とのつながり(スコアへの希求) 1 1.61 自分のことばで要約 レコード自己文脈でざっくり把握ができるように 1 1.61 TOEIC などの資格試験での問題選択肢を選ぶ際 1 1.61 ミクロ:問題解答への根拠が具体的に 1 1.61 表 3. カテゴリ―化による質的分析(一部) 言語データの一部 コード(名) カテゴリ― 英検の長文やテキストの読解問題が本当にできなかったのですが、 授業でざっと意味を取ることや、主題文と支持文に着目することなど を意識して選んだことで、以前より正答率が上がりました。 主題文・支持文 の「段落内」での 見分け ≪形式スキー マの重要性の 言及≫(全体 の 24%) 最初はやんわり掴んでいた全体の概要が、主題文やキーセンテンス を意識することによって、より深く理解することができました。授業で重 点的に取り扱うような部分だけでなく、全体を理解することによって、 より記憶に残りやすかったです。 自分の意識が変わったところは長文を読むときに主題文と支持文に 分けて読むことを意識するようになったことです。ずっとダラダラと読 んでいるよりも圧倒的に理解度が高くなるし読むスピードも速くなった ように感じます。 読む速さとの関 係について 授業でやったように、読む際、主題文と支持文を意識することで、まし た。すべての文を読んでしまい、時間がかかりがちだったためどこを しっかり読むべきで、どこを速く読むべきかということを見つけられ、と てもよい成長ができたと思います。テストのときも時短できそうです。 自分の考えを英語で書く問題が大学 1 年生の頃まで苦手で、テスト でそのような問題が出題されても白紙のままで諦めてしまうことが多か った。この授業を通して、身近なニュースなどいろんな視点から教科 書の内容を見て行くので、内容が頭に入りやすく自分の考えも英語 で書けるようになった。 読み方への捉え 方の変化や向 上 ≪自律的な意 識変容≫(全 体の約 20%) 私はこの半年間、英文の読み方など意味の捉え方に対する意識が 変わった。普段英文を読むとき、その文の目的を深く考えていなかっ た。特に長文を読むときもそうだ。 1 年生の頃は教科書の内容を暗記してテストに挑んでいたが、授業 では教科書プラス事例や文の具体例など、今までにないタイプの授 業だったので、最初は驚いたが自分の意見を述べたり例を挙げて答 えたりなど新たな視点で物事を考えることができて新しい自分が見え た気がする。 複数の表現や 視点から考えさ せられる内容へ の驚き TF の問題を解いているとテキストの英文がこんなに簡単に書き換え られるのかと気づきます。 穴あきの文を読んだりキーセンテンスを探したり、大筋を表す、言い 換えの文を選んだりする、と言った今までにない問題を解くことによっ て、内容理解が早くなってスラスラ前より読めるようになった. また、ちゃんと段落ごとに細かく問題があって、それを解いていくこと で全体から詳細まで理解することができて、一つの内容についてい ろいろな考え方ができるようになりました。 形式スキーマを 得たことで生じ た内容に焦点を 当てる余裕 ≪冗長性へ の言及≫(全 体の約 36%) 今まではただ段落のメインとなる話題は何かを見つけることだけに集 中していて結局読み取れずにいたのが、分けて文を読むことで(主

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題文と支持文を)本当に伝えたい部分はここで、それについて考えを 深められるのがこの文だ!と読み取って考えることができました。 この手の問題は「~の中から一つ選びなさい」といった選択式の問題 が多いため、どこが本文と違うのかを見つけ出すことに時間を取られ てしまいがちでした。しかし回数を重ねていくにつれて、主題文、支 持文を見つけてから読むと、スムーズに本文の内容が取れていくよう になって、問題の選択肢の文の異なる部分も素早く見つけるようにな りました。そこはすごく個人的に伸びたところではないかなと思いま す。 文章中の単語を別の単語でも考えることによって、書き方も変わりこ の単語も使えるんだ!と実感し、実際に使用しながらできた。そして また単語も増えて勉強する時にもこれは違う単語でも言い換えること ができるのかな? と思ったりしたので、これからはそのような勉強方 法でもっと単語力を身につけていきたいです。 表現はちがうが 内容が同じもの に対する理解の 促進 別の言葉に言い換えてある所は、別の表現を見ることでより記憶に残 った。 苦手なところは多角的な面で文を考えることです。一つの文があった ら文に書いてあることをそのままでしか考えることができないので、「こ れってこういうことも考えられるのでは?」という結びつける力もこれか ら培いたいです。 二つの段落で似たような文や同じ意味の単語を二つ以上使うところ に気づくようになった。 6. 考察 ここでは分析を通して生成された大きく3つのカテゴリー:≪形式スキーマの重要性の言及≫(全体の約 24%)、≪自律的な意識変容≫(全体の約 20%)、≪冗長性への言及≫(全体の約 36%)と、その下位カテ ゴリーとなる各コードの内容について考察する。 リサーチ・クエスチョンにもあるように、冗長性を念頭におくことを教師の信条とした読解活動に対しての学 習者の捉え方をみることが本研究の目的であった。本研究でいう冗長性とはこれまでみてもわかるとおり、英 文の意味内容の多様な捉え方や、意味の深化をめざすものであった。その点で読解時の≪形式スキーマ の重要性の言及≫というカテゴリー名に生成されるまでの下位コードが全体の 24%もあったことは筆者にと って少々意外であった。言い換えれば、教師の思った以上に形式スキーマを獲得することは学習者にとっ て簡単ではないこと、また重要であったことが示唆される。例えば、一番コードが多かった「主題文・支持文 の『段落内』での見分け」についてのコメントでは、「ざっと意味を取ることや、主題文と支持文に着目すること などを意識して選んだことで、以前より正答率が上がりました」や、「最初はやんわり掴んでいた全体の概要 が、主題文やキーセンテンスを意識することによって、より深く理解することができました。授業で重点的に 取り扱うような部分だけでなく、全体を理解することによって、より記憶に残りやすかったです」などのコメント がみられた。またそれらは、コード名「読む速さとの関係について」のコメントである「自分の意識が変わった ところは長文を読むときに主題文と支持文に分けて読むことを意識するようになったことです。ずっとダラダラ と読んでいるよりも圧倒的に理解度が高くなるし読むスピードも速くなったように感じます」という、読解内容 に直接関わっていたことがわかる。つまり、学習者は上記のように自分なりに英文全体への捉え方を確立し たり、文章の構成全体の把握を自身でコントロールできたとメタ的に捉えたと感じたようなときに、テキスト理 解が促されることが示唆される(千田,2018)。教師が思った以上に、文章についての形式スキーマを獲得す ることが学習者にとって時間がかかるというコメントが多かった結果を通して、今回の研究方法の手続きがあ る程度妥当であったとの認識にもつながった。通常質的データサンプリングにおいては、調査者の関心に 沿って分析対象を決めることも少なくない。しかし、本研究では今回の結果にもあるように、学習者にとって

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困難でもあった読解過程の重要な部分を見過ごしてしまうことが防ぐことができた。学習者の捉え方の全体 がまだ把握できていない状態から分析する場合、今回のようにテキスト計量によって客観的に暫定カテゴリ ーを設定することで、後の十全な質的分析データの選定につながったことを示していると考えられる。 次に、上記のような形式スキーマの確立に伴う自信によって生成されたと思われるカテゴリー≪自律的な 意識変容≫について考察する。「読み方への捉え方の変化や向上」や「複数の表現や視点から考えさせら れる内容への驚き」といったコードにあるコメントである。前者では、「いろんな視点から教科書の内容を見て 行くので、内容が頭に入りやすく自分の考えも英語で書けるようになった」「英文の読み方など意味の捉え 方に対する意識が変わった。(以前は)普段英文を読むとき、その文の目的を深く考えていなかった。特に 長文を読むときもそうだ。」などがみられた。後者は「最初は驚いたが自分の意見を述べたり例を挙げて答え たりなど新たな視点で物事を考えることができて新しい自分が見えた」や「言い換えの文を選んだりする、と 言った今までにない問題を解くことによって、内容理解が早くなって」などのコメントである。つまり、カテゴリ ー名にもあるように、これらは「読み方の意識の変容」という自律的な側面への言及であって、また「今までに ない問題」と述べているように、テキスト英文や語句における一語一義的でない多義性の存在への驚きや戸 惑い、あるいは抵抗感のようなものから、新しい読解の仕方への自信を得たとも考えられる。Wallace and Oxford (1992) は、学習者がすでに身につけた学習方法や考え方が確立していた場合に、それとは異な る教師の指導方法に直面すると批判的になり、学習がうまくいかなくなる場合があると述べている。本研究に おいてリサーチ・クエスチョンでもあった学習者が筆者の授業実践をどう捉えているかという目的を設定した 理由はそこにつながる。つまり、ある程度想定したように冗長性を意識した読解授業が学習者にとっては当 初は学習方法についての信条のギャップがあったことが示唆される。その上で読み方への認識が自律的に 変容したものと考えられる。 最後のカテゴリーは、本研究において最も重要と思われた≪冗長性への言及≫の中での「形式スキーマ を得たことで生じた内容に焦点を当てる余裕」と、「表現はちがうが内容が同じものに対する理解の促進」の コード内容である。つまり、テキスト英文全体の構成の把握ができるようになって、冗長性を伴う多義的な内 容への深い理解が促されたということを示唆されるような内容である。つまり、「構成全体の把握」から「冗長と 思われる部分への着目や理解」への「流れ」が示されているコメント:「ちゃんと段落ごとに細かく問題が(略)、 それを解いていくことで全体から詳細まで理解することができて、一つの内容についていろいろな考え方が できるように」、「分けて文を読むことで(略)、それについて考えを深められるのがこの文だ!と読み取って 考えることが…」「主題文、支持文を見つけてから読むと、スムーズに本文の内容が取れていくようになって、 問題の選択肢の文の異なる部分も素早く見つけるように」が多くみられた。これらのコメントからは、冗長度の 高い英文を理解することがさらなる表出を伴う言語活動への契機となった例も示唆されていた。つまり「別の 表現をみることでより記憶に残った」という受動的なレベルだけでなく、「二つの段落で似たような文や同じ意 味の単語を…(略)気づくようになった」といった探索的な側面や、「別の単語でも考えることによって、書き方 も変わりこの単語も使えるんだ!と実感し、実際に使用しながら…」とあるように、英語使用の能動的な側面 にまで言及が広がっていたことがわかる。おそらく、全体的な把握による理解の促進がメンタルスペースを広 げ、そこで初めて冗長性を意識した読解プロセスから表出時への意識や言語行動への転化が促されたの だろうと思われる。 7. まとめと今後の課題 これらの結果をみてわかるように、一般的に大学英語のように読解英文量が多い中で教師が冗長性の概 念を念頭に英文読解活動を実践するという今回のケースにおいては、①学習者はまず形式スキーマをつか むことが英文読解時の全体的理解の促進につながった ②これまで関わることが多くなかった「冗長性への 気づきを伴う」発問や読解活動への驚き・受け止め・理解などの意識変容があった ③その形式スキーマ確 立の自信と余裕からそれに対応しうる読解姿勢を身につけていき ④積極的な言語使用の側面の意識にま でつながっていった。冗長性へ意識が向かうにあたって、テキストの文章構成把握(形式スキーマ構築)が 前提として重要とうかがえるような捉え方がみられた。研究の今後の課題としては、主題文・支持文の見分け の速さや余裕など読解時の理解処理についてのコメントが複数あったため、テキスト量の多さ少なさによっ

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て冗長性への意識の向けやすさがどう変わるか、などのデータも含めて追調査が必要と考えられる。 (大妻女子大学) 引用文献

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参照

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