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東日本大震災アーカイブの活用実態に関する調査分析

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地域安全学会論文集 No.37, 2020.11

1

東日本大震災アーカイブの活用実態に関する調査分析

Survey and Analysis on the Actual Use of the Great East Japan Earthquake Archives

池田

真幸

1,2

,佐藤

翔輔

3

Masaki IKEDA

1

and Shosuke SATO

2

1 国立研究開発法人 防災科学技術研究所

National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience

2 東北大学大学院 理学研究科

Graduate School of Science, Tohoku University

3 東北大学 災害科学国際研究所

International Research Institute of Disaster Science, Tohoku University

The objective of this paper is to clarify the actual use of the Great East Japan Earthquake archives and to contribute to the effective preservation and utilization of disaster records. In the areas affected by the Great East Japan Earthquake, local governments, researchers, and the media have created disaster archives that are important for long-term preservation. On the other hand, the purposes and situations of the utilization of archives vary from one user to another, and the whole picture is still unknown. In this study, a questionnaire survey was conducted among local governments, school boards and social welfare councils about the actual use of archives. Based on the results, some conclusions about their characteristics and usage patterns were drawn through cross-tabulation. This indicates the importance of the use of the archives after the earthquake.

Keywords: the Great East Japan Earthquake, disaster archives, actual use, cross-tabulation

1.はじめに 東日本大震災が発生した2011年以降,震災に関する記 録を収集・編纂し公開する「震災アーカイブ」が盛んに 行われている1) .主な作り手は自治体,報道機関,大学 等研究機関,市民等である2) .2011年以前と比較して, 特にデジタルデータをWeb上で公開する「デジタルアー カイブ」と呼ばれるものも顕著に増えている3) .一方で, 想定される活用の場面は多様であり4),その全体像は未 解明と言える.本研究では,東日本大震災(以下,単に 「震災」と言う場合は「東日本大震災」を指す.)に関 するアーカイブを対象に,活用主体により異なる多様な アーカイブの活用実態を明らかにすることを目的とする. 政府諮問機関である東日本大震災復興構想会議(2011) は,震災アーカイブの目的を「大震災の記録を永遠に残 し,広く学術関係者により科学的に分析し,その教訓を 次世代に伝承し,国内外に発信する」こととしている5) . 一方,近年の「アーカイブ」像について古賀(2012)は, 「公文書館など「公的なアーカイブズ」に加えて,それ 以外の多様な「アーカイブ」に注目が集まって」おり, 「歴史研究のために活用する」だけでなく,「政策を分 析・検証し,今後の改善につなげる手立てとしてアーカ イブズ資料を活用」することの重要性を指摘している6) . 総務省(2013)が作成した『震災関連デジタルアーカイ ブ構築・運用のためのガイドライン』の緒言にも,「震 災の記録・資料、さらに被災前の故郷の様子、地域の文 化・伝統、復旧・復興の過程を残すことにより、防災・ 減災計画、復旧施策、教育等への活用とともに、それら の記録が被災地の心の糧となることも期待されます。」 とある7) . しかし,「震災アーカイブ」の活用の実態を明らかに した研究はまだ蓄積が少ない.東日本大震災の発生から 執筆時点まで(2011~2018年)に刊行された「震災アー カイブ」に関する論文を調査したところ,具体的な活用 事例に言及した論文は84編中9編,利活用の実態と課題に ついて言及した論文は5編あった.その他の論文は,コン テンツの収集,メタデータ付与,記録形態の変換や可視 化,2次利用を目的とした権利処理,横断検索技術等, 構築手法に関する内容を主に扱っている論文(例えば, 河合(2012)8),今村ほか(2012)9),町ほか(2017)10) など)と,既存のアーカイブを概観し定義や類型化につ いて論じた論文(岡本(2012)11),吉見(2015)12)など) が主であった. 震災アーカイブの活用事例を示した論文では,長坂 (2016)は,「311まるごとアーカイブス」の活動内容の ひとつに「コンテンツの活用支援」を掲げ,コンテンツ を用いた小学校の防災教育カリキュラム開発・電子副教 材開発の事例を紹介している2)

地域安全学会論文集

No.37, 2020.11

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中川ほか(2015)は,宮城県石巻市を対象とした独自 のアーカイブコンテンツとして「石巻津波伝承AR」を開 発・公開し,「防災まちあるき」に活用した実践事例を 紹介している13) 宇田川ほか(2016)も,AR(拡張現実)技術を用いた, 災害伝承を目的としたスマートフォン向けアプリケーシ ョンを開発し,阪神・淡路大震災の被災地である神戸市 において,地域外から来た自治体防災担当者と,地域内 の若者を対象とした実証的な利用評価を行っている14) . 佐藤(2017)は,東日本大震災アーカイブの利活用し た,東松島市図書館の「まちなか震災アーカイブ」と, 多賀城市教育委員会の防災教育副読本「命をまもり 未来 をひらく」の利用実践を通して,利活用促進における有 効な要素や阻害要因を明らかにしている15) また,震災アーカイブの利活用実態と課題に言及した 既往研究では,川内(2014)は「地域の防災意識につな げるために震災資料の活用がなされることが期待されて いる」一方,「震災資料は様々な可能性を含みこんだ資 料群であり,その活用の方法についてもまた,多様なも のがあ」り,「社会的な活用法の検討が課題となってい る」と言及している4) . 今村ほか(2014)では,「記録を収集し保存したとし ても,活用されていかなければ,東日本大震災の記憶を 次世代へ継承していくことが難しくなる恐れがある」と して,活用場面について「防災啓発・教育,被害予測・ 評価,地域支援,他地域との関係強化」を挙げている9) 以上のように,既往研究では多様なアーカイブの活用 場面が示されているが,その全体像は十分に把握されて いるとは言えない.そこで,本研究では,東日本大震災 で甚大な被害を受けた岩手県・宮城県・福島県を対象に, 防災政策における震災アーカイブの活用実態を明らかに し,活用促進の手立てを考察することを目的とする.尚, 本研究における「震災アーカイブ」は,災害に関する事 実を記録した「災害記録」と,災害対応を通じて気付い たことや体得したことを他人に伝えるための言葉や文章 等の「災害経験」を合わせたものとして定義する.具体 的には,「災害記録」としては写真や映像,音声,計測 器等によって計測した数値など,「災害経験」としては 災害対応業務のために作成された行政文書や広報資料, 後日の振り返りの記録,手記,語り,これらを編纂して 作成された研修資料・説明資料等を想定している. 以下,2章では研究方法を示す.3章ではアンケート 調査結果を示す.4章では,3章のアンケート調査結果 に基づいて,想定活用場面別の震災アーカイブ活用状況 と,活用主体の属性との関係について分析結果を示し, 結果の考察を行う.   2.研究方法  アンケート調査 本研究では,震災アーカイブの活用実態を把握するた め,アンケート調査を行った.対象組織は,防災基本計 画において,市町村レベルの防災政策の実行機関として 明記されている,市町村の自治体防災担当(以下,「自 治体」),市町村教育委員会(以下,「教委」),市町 村社会福祉協議会(以下,「社協」)の3組織を選択した. 対象地域は岩手県・宮城県・福島県の計127市町村とし, 381組織を対象とする全数調査を行った. 調査は,2017年12月15日から2018年2月13日までの60日 間に,郵送による質問紙の配布・回収によって行った. 質問項目は表1の通りである.問1では,回答者の所属や 連絡先等について任意での回答を得た.問2以降では,組 織における震災アーカイブの活用等の状況を,回答者に 代表して回答を得た.質問内容の詳細は3章の各節で説明 する.有効回答数と回答率は,全体で227 (59.6%),組織 種 別 で は 自 治 体72 (56.7%),教委 68 (53.5%) ,社協87 (68.5%) であった.県別では,岩手県69 (69.7%),宮城県 63 (60.0%),福島県95 (53.7%) であった.組織種別と県別 の有効回答数と回答率を,表2に示した.  クロス集計 次に,震災アーカイブの活用状況と,活用主体の属性 との関係を明らかにするため,クロス集計による分析を 行った.アンケート調査結果から得られた,震災アーカ イブ全体の活用状況,およびアーカイブ種類別の活用状 況を被説明変数とし,アンケート結果に既存資料等のデ ータを加えて得られた,震災アーカイブ活用主体の属性 情報を説明変数として,クロス集計を行った.結果に統 計的な有意差があるか,相関関係をカイ二乗検定によっ て確認した.分析には統計解析ソフトR16) を用いた. アンケート調査結果から得られた活用主体の属性は, 組織種別,県,自治体規模,所属変化,対応経験の有無, 震災前の災害アーカイブ活用の有無,である.既存資料 から追加した項目は,各組織の担当部署の職員数,震災 による津波到達の有無,震災による死者の有無,である. これらの変数の詳細については,4章(2)に示す. 3.アンケート調査の結果  震災アーカイブの活用状況と活用場面 問3では,震災アーカイブの活用有無について質問した. いずれかの場面で震災アーカイブを活用したと回答した 組織は,全体では74.8%,組織別では,自治体は85.9%, 教委は59.7%,社協は77.4%であった. 表 アンケート質問項目 問 質問項目 回答形式 1 回答者属性(任意) 自由記述 2 震災後の所属変化と 震災時の災害対応経験 選択式(単一) 3 震災アーカイブ活用の有無 選択式(単一) 3-2 場面別のアーカイブ活用の有無 選択式(複数) 3-3 アーカイブ活用しなかった理由 選択式(複数) 4 「組織/収集」アーカイブの活用 有無 選択式(複数) 5 活用したデジタルアーカイブ 選択式(複数) 6 震 災 時 の 災 害 対 応 で 活 用 し た 震災前の災害アーカイブの有無 選択式(単一) 7 震 災 時 の 災 害 対 応 で 活 用 し た 震災前の災害アーカイブの詳細 自由記述  表 組織種別と県別の有効回答数と回答率 自治体 教委 社協 合計 岩手県 26 (78.8%) 16 (48.5%) 27 (81.8%) 69 (69.7%) 宮城県 19 (54.3%) 20 (57.1%) 24 (68.6%) 63 (60.0%) 福島県 27 (45.8%) 32 (54.2%) 36 (61.0%) 95 (53.7%) 合計 72 (56.7%) 68 (53.5%) 87 (68.5%) 227 (59.6%) 

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2  中川ほか(2015)は,宮城県石巻市を対象とした独自 のアーカイブコンテンツとして「石巻津波伝承AR」を開 発・公開し,「防災まちあるき」に活用した実践事例を 紹介している13) 宇田川ほか(2016)も,AR(拡張現実)技術を用いた, 災害伝承を目的としたスマートフォン向けアプリケーシ ョンを開発し,阪神・淡路大震災の被災地である神戸市 において,地域外から来た自治体防災担当者と,地域内 の若者を対象とした実証的な利用評価を行っている14) . 佐藤(2017)は,東日本大震災アーカイブの利活用し た,東松島市図書館の「まちなか震災アーカイブ」と, 多賀城市教育委員会の防災教育副読本「命をまもり 未来 をひらく」の利用実践を通して,利活用促進における有 効な要素や阻害要因を明らかにしている15) また,震災アーカイブの利活用実態と課題に言及した 既往研究では,川内(2014)は「地域の防災意識につな げるために震災資料の活用がなされることが期待されて いる」一方,「震災資料は様々な可能性を含みこんだ資 料群であり,その活用の方法についてもまた,多様なも のがあ」り,「社会的な活用法の検討が課題となってい る」と言及している4) . 今村ほか(2014)では,「記録を収集し保存したとし ても,活用されていかなければ,東日本大震災の記憶を 次世代へ継承していくことが難しくなる恐れがある」と して,活用場面について「防災啓発・教育,被害予測・ 評価,地域支援,他地域との関係強化」を挙げている9) 以上のように,既往研究では多様なアーカイブの活用 場面が示されているが,その全体像は十分に把握されて いるとは言えない.そこで,本研究では,東日本大震災 で甚大な被害を受けた岩手県・宮城県・福島県を対象に, 防災政策における震災アーカイブの活用実態を明らかに し,活用促進の手立てを考察することを目的とする.尚, 本研究における「震災アーカイブ」は,災害に関する事 実を記録した「災害記録」と,災害対応を通じて気付い たことや体得したことを他人に伝えるための言葉や文章 等の「災害経験」を合わせたものとして定義する.具体 的には,「災害記録」としては写真や映像,音声,計測 器等によって計測した数値など,「災害経験」としては 災害対応業務のために作成された行政文書や広報資料, 後日の振り返りの記録,手記,語り,これらを編纂して 作成された研修資料・説明資料等を想定している. 以下,2章では研究方法を示す.3章ではアンケート 調査結果を示す.4章では,3章のアンケート調査結果 に基づいて,想定活用場面別の震災アーカイブ活用状況 と,活用主体の属性との関係について分析結果を示し, 結果の考察を行う.   2.研究方法  アンケート調査 本研究では,震災アーカイブの活用実態を把握するた め,アンケート調査を行った.対象組織は,防災基本計 画において,市町村レベルの防災政策の実行機関として 明記されている,市町村の自治体防災担当(以下,「自 治体」),市町村教育委員会(以下,「教委」),市町 村社会福祉協議会(以下,「社協」)の3組織を選択した. 対象地域は岩手県・宮城県・福島県の計127市町村とし, 381組織を対象とする全数調査を行った. 調査は,2017年12月15日から2018年2月13日までの60日 間に,郵送による質問紙の配布・回収によって行った. 質問項目は表1の通りである.問1では,回答者の所属や 連絡先等について任意での回答を得た.問2以降では,組 織における震災アーカイブの活用等の状況を,回答者に 代表して回答を得た.質問内容の詳細は3章の各節で説明 する.有効回答数と回答率は,全体で227 (59.6%),組織 種 別 で は 自 治 体72 (56.7%),教委 68 (53.5%) ,社協87 (68.5%) であった.県別では,岩手県69 (69.7%),宮城県 63 (60.0%),福島県95 (53.7%) であった.組織種別と県別 の有効回答数と回答率を,表2に示した.  クロス集計 次に,震災アーカイブの活用状況と,活用主体の属性 との関係を明らかにするため,クロス集計による分析を 行った.アンケート調査結果から得られた,震災アーカ イブ全体の活用状況,およびアーカイブ種類別の活用状 況を被説明変数とし,アンケート結果に既存資料等のデ ータを加えて得られた,震災アーカイブ活用主体の属性 情報を説明変数として,クロス集計を行った.結果に統 計的な有意差があるか,相関関係をカイ二乗検定によっ て確認した.分析には統計解析ソフトR16) を用いた. アンケート調査結果から得られた活用主体の属性は, 組織種別,県,自治体規模,所属変化,対応経験の有無, 震災前の災害アーカイブ活用の有無,である.既存資料 から追加した項目は,各組織の担当部署の職員数,震災 による津波到達の有無,震災による死者の有無,である. これらの変数の詳細については,4章(2)に示す. 3.アンケート調査の結果  震災アーカイブの活用状況と活用場面 問3では,震災アーカイブの活用有無について質問した. いずれかの場面で震災アーカイブを活用したと回答した 組織は,全体では74.8%,組織別では,自治体は85.9%, 教委は59.7%,社協は77.4%であった. 表 アンケート質問項目 問 質問項目 回答形式 1 回答者属性(任意) 自由記述 2 震災後の所属変化と 震災時の災害対応経験 選択式(単一) 3 震災アーカイブ活用の有無 選択式(単一) 3-2 場面別のアーカイブ活用の有無 選択式(複数) 3-3 アーカイブ活用しなかった理由 選択式(複数) 4 「組織/収集」アーカイブの活用 有無 選択式(複数) 5 活用したデジタルアーカイブ 選択式(複数) 6 震 災 時 の 災 害 対 応 で 活 用 し た 震災前の災害アーカイブの有無 選択式(単一) 7 震 災 時 の 災 害 対 応 で 活 用 し た 震災前の災害アーカイブの詳細 自由記述  表 組織種別と県別の有効回答数と回答率 自治体 教委 社協 合計 岩手県 26 (78.8%) 16 (48.5%) 27 (81.8%) 69 (69.7%) 宮城県 19 (54.3%) 20 (57.1%) 24 (68.6%) 63 (60.0%) 福島県 27 (45.8%) 32 (54.2%) 36 (61.0%) 95 (53.7%) 合計 72 (56.7%) 68 (53.5%) 87 (68.5%) 227 (59.6%)  3  問3-2では,想定する活用場面(表3)別の震災アーカ イブの活用有無を,「活用して行った」「活用せず行っ た」「機会が無かった」からの単一選択で質問した. 想 定 利 用 場 面 は , 今 村 ほ か (2014 ) , 中 川 ほ か (2015),長坂(2016),佐藤(2017),および総務省 (2013)から想定利用場面を抽出し,「行動」「対象」 「状況」について分類した結果に,各組織種別の想定利 用場面を当てはめて作成した. 場面別の活用状況(図1)は,「機会が無かった」と の回答を除いて,各場面の機会があった場合の活用の有 無について集計を行った.どの組織も共通して「a.計画」 「b.研修」「c.啓発」での活用が多く,「d.提案」「e.共 有」「f.提供」「g.提供」の活用が相対的に少なかった. 組織別では,自治体は他組織よりも全体的に震災アー カイブの活用が多く,場面別でも全ての場面においてよ く活用されていることが分かった.教委は,他組織より も全体的に活用が少なく,「e.共有」での活用が上位で あった.地域内の学校間や近隣の教育委員会間で記録や 経験を共有する機会が多かったと考えられる.社協は, 自治体に比べて「j.支援」が上位にあることが特徴的で ある.県内や全国での相互支援の仕組みにより,他地域 の被災地に派遣された社協職員が震災アーカイブを活用 する機会が多かったと考えられる. 問3-3では,活用しなかった場合の理由を「活用できる ものがないから」「整理されていなかったから」「他の 業務で多忙だったから」「引継ぎがなかったから」「そ の他」から,複数選択で回答を得た.結果は「活用でき るものがないから」が最も多かった(図2).  震災デジタルアーカイブの活用状況 震災アーカイブは,「震災アーカイブ」と「震災デジ タルアーカイブ」に大別できる3) .問5では,活用したこ とのある震災デジタルアーカイブのWebサイトを,一覧 から複数選択で回答を得た.尚,一覧は調査設計時点で 実施したWeb調査に基づき独自に作成した. 震災デジタルアーカイブを活用したと回答した組織は 35で,全体の19%と少なかった.Webサイト別の結果 (図3)は,回答数が少なく特徴を読み取ることは難しい が,県等の上位機関や報道機関のアーカイブサイトが比 較的多く活用されていた.尚,デジタルアーカイブWeb サイトを活用したとの回答数が少ないため,十分な分析 が不可能であることから,これ以降において震災デジタ ルアーカイブを対象とした分析は行わない.また,本論 文において「震災アーカイブ」とした場合,「デジタル /非デジタル」は区別しないものとする.   「組織/収集」別の震災アーカイブの活用状況 「デジタルアーカイブ」と「震災アーカイブ」の関係 図 震災アーカイブを活用しなかった理由  表 組織種別の震災アーカイブの想定活用場面 活用場面 自治体 教委 社協 a 計画 地域防災計画の作成・更新 危機管理マニュアル・教材作成 事業や業務計画等の作成・更新 b 研修 職員への研修や訓練 学校教職員等への研修や訓練 職員への研修や訓練 c 啓発 住民への訓練や講話 児童生徒の学習・保護者への説明 住民への訓練や講話 d 提案 上位機関等への説明や提案 上位機関等への説明や提案 自治体等に対する説明や提案 e 共有 被災地の他自治体との経験共有 他校との経験共有や対応検証 被災地の他社協との経験共有 f 提供 被災地外の自治体への説明等 被災地外の教育機関への説明等 被災地外の社協への説明等 g 提供 被災地外の他組織への説明等 被災地外の他組織への説明等 被災地外の他組織への説明等 h 照会 災害対応業務の問合せへの回答 災害対応業務の問合せへの回答 災害対応業務の問合せへの回答 i 対応 自地域での別の災害への対応 自地域での別の災害への対応 自地域での別の災害への対応 j 支援 他地域での別の災害への応援 (該当項目なし) 他地域での別の災害への応援   順位 自治体 教委 社協 1 a.計画 b.研修 a.計画 2 c.啓発 c.啓発 b.研修 3 b.研修 a.計画 c.啓発 4 h.照会 i.対応 h.照会 5 i.対応 e.共有 j.支援 6 f.提供 h.照会 i.対応 7 j.支援 d.提案 d.提案 8 e.共有 g.提供 e.共有 9 g.提供 f.提供 f.提供 10 d.提案 - g.提供 図 各組織の場面別アーカイブ活用状況とランキング

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について古賀(2012)は,デジタルアーカイブの発展に より伝統的な「図書館の図書資料,文書館の記録(文書) 資料,博物館のモノ資料」の区分が薄れつつあると指摘 し,近年のアーカイブに見られるもう一つの特徴として 「組織アーカイブズ (institutional archives)」と「収集アー カイブズ (collecting archives)」という概念を挙げている. 「組織アーカイブズ」は「組織によって作成ないし受理 された記録を保管する場」,「収集アーカイブズ」は 「個人,家族,(収集機関以外の)組織から資料を収集 して保管する場」であり,それぞれに優先される目的, 利用者,公開ポリシーが異なると述べている. そこで問4では,活用した震災アーカイブについて, 「組織内で収集・管理している」か「他の組織が収集・ 管理しており,一般に公開している」か,「その他」の 選択肢から,複数選択での質問を行った. 全体では,組織アーカイブを活用した割合が81.3%で, 収集アーカイブの29.8%よりも多かった.組織別では, 自治体は収集アーカイブより組織アーカイブの活用が多 い傾向が顕著であった.また,教委は他組織より組織ア ーカイブの活用が少なく,社協は組織アーカイブも収集 アーカイブも活用が多い特徴があった(図4). 自治体で組織アーカイブの活用が多い理由は,震災時 の対応を文書主義によって管理し記録する体制が機能し ており,震災後の防災政策での活用が進んでいるものと 考えられる.一方,教委の組織アーカイブの利用が少な い理由は,自治体と同様の記録・管理体制が機能しなか ったためか,記録・管理はされているもののアーカイブ が利用されていないのか,本調査結果から判断すること は難しい.また,社協で組織アーカイブだけでなく収集 アーカイブもよく活用されている背景には,単純集計の 結果のみから解釈することは難しいため,4章のクロス集 計によって確認する.  震災時の対応で活用した震災前の災害アーカイブ 問6は,震災の対応や復旧・復興に役に立った震災前の 災害アーカイブの有無を,単一選択で質問した.全体の 20.7%が「ある」と回答しており,組織別では,自治体 は18.1%,教委は8.8%,社協は31.0%が「ある」と回答し た(図5). 問7では,問6で「ある」と回答した場合に,その災害 アーカイブの対象とする災害名称と,アーカイブの具体 的な内容について,自由記述で質問をした.得られた自 由記述を災害と内容について分類した結果,16の災害種 別と28の内容種別が抽出された.内容種別は,その上位 のカテゴリとして「経験継承」「事前対策」「応急対応」 「復旧復興」「連携調整」を作成し,全ての回答を上位 カテゴリのいずれかに分類した.その上で,自由記述の  図 「組織/収集」別の震災アーカイブ活用状況  図 震災デジタルアーカイブの活用状況  図 活用した震災前の災害アーカイブの有無

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4  について古賀(2012)は,デジタルアーカイブの発展に より伝統的な「図書館の図書資料,文書館の記録(文書) 資料,博物館のモノ資料」の区分が薄れつつあると指摘 し,近年のアーカイブに見られるもう一つの特徴として 「組織アーカイブズ (institutional archives)」と「収集アー カイブズ (collecting archives)」という概念を挙げている. 「組織アーカイブズ」は「組織によって作成ないし受理 された記録を保管する場」,「収集アーカイブズ」は 「個人,家族,(収集機関以外の)組織から資料を収集 して保管する場」であり,それぞれに優先される目的, 利用者,公開ポリシーが異なると述べている. そこで問4では,活用した震災アーカイブについて, 「組織内で収集・管理している」か「他の組織が収集・ 管理しており,一般に公開している」か,「その他」の 選択肢から,複数選択での質問を行った. 全体では,組織アーカイブを活用した割合が81.3%で, 収集アーカイブの29.8%よりも多かった.組織別では, 自治体は収集アーカイブより組織アーカイブの活用が多 い傾向が顕著であった.また,教委は他組織より組織ア ーカイブの活用が少なく,社協は組織アーカイブも収集 アーカイブも活用が多い特徴があった(図4). 自治体で組織アーカイブの活用が多い理由は,震災時 の対応を文書主義によって管理し記録する体制が機能し ており,震災後の防災政策での活用が進んでいるものと 考えられる.一方,教委の組織アーカイブの利用が少な い理由は,自治体と同様の記録・管理体制が機能しなか ったためか,記録・管理はされているもののアーカイブ が利用されていないのか,本調査結果から判断すること は難しい.また,社協で組織アーカイブだけでなく収集 アーカイブもよく活用されている背景には,単純集計の 結果のみから解釈することは難しいため,4章のクロス集 計によって確認する.  震災時の対応で活用した震災前の災害アーカイブ 問6は,震災の対応や復旧・復興に役に立った震災前の 災害アーカイブの有無を,単一選択で質問した.全体の 20.7%が「ある」と回答しており,組織別では,自治体 は18.1%,教委は8.8%,社協は31.0%が「ある」と回答し た(図5). 問7では,問6で「ある」と回答した場合に,その災害 アーカイブの対象とする災害名称と,アーカイブの具体 的な内容について,自由記述で質問をした.得られた自 由記述を災害と内容について分類した結果,16の災害種 別と28の内容種別が抽出された.内容種別は,その上位 のカテゴリとして「経験継承」「事前対策」「応急対応」 「復旧復興」「連携調整」を作成し,全ての回答を上位 カテゴリのいずれかに分類した.その上で,自由記述の  図 「組織/収集」別の震災アーカイブ活用状況  図 震災デジタルアーカイブの活用状況  図 活用した震災前の災害アーカイブの有無 5  回答が抽象的で詳細の分類を判別できない場合には, 「(上位カテゴリ名)+全般」という分類名を付した. 災害種別(図6)は,阪神・淡路大震災,新潟県中越地 震,新潟県中越沖地震,岩手・宮城内陸地震,宮城県北 部連続地震の順に多かった.内容種別(図7)は,災害ボ ランティア,被災者生活支援,職員派遣による経験獲得, 支援者による伝達,訓練・人材育成の順に多かった. 組織種別の傾向を見ると,自治体と教委は1995年阪 神・淡路大震災が突出して多いが,社協は2004年新潟県 中越地震,2007年新潟県中越沖地震,2003年宮城県北部 連続地震,2008年岩手・宮城内陸地震など,震災の直前 10年以内に発生した地震災害に関する災害アーカイブが よく活用されている.内容種別上位の傾向からも,社協 ではこれらの災害のアーカイブから,災害ボランティア センター運営や被災者生活支援についての記録や経験を 獲得し,震災前までの防災対策に活用してきた背景があ るのではないかと考えられる.   震災後の所属変化と震災時の災害対応経験 問2では,震災当時からの所属部署の変化と,震災当 時に災害対応にあたった経験の有無について,「震災当 時,現在と同じ所属で災害対応にあたった」「震災当時, 現在と異なる所属で災害対応にあたった」「災害対応の 経験なし」の選択肢から回答を得た. 回答結果は,全体では27.3%が震災当時と同じ部署, 43.6%が部署は異なるが震災時の災害対応経験あり, 29.1%が震災時の災害対応経験なしと回答した.組織種 別では,社協では他組織よりも震災当時と同じ部署の職 員がいるとの回答が多かった(図8).社協では,ボラン ティアセンターや生活支援相談事業等の災害対応に関わ る職員の異動が,自治体や教委に比べて少ないのではな いかと考えられる. 4.活用主体の属性と活用状況の関係の分析   活用場面別のクラスタ分析 a~jの10の場面別の震災アーカイブ活用有無パターン は,2^10 = 1024通り考えられるが,10の場面毎の活用有 無(0,1)を有効回答227件についてクラスタ分析するこ とで,典型的な活用場面のパターンの分類を試みた.ク ラスタ分析はK-means法を用いて行い,エルボー曲線 (図9)から分類数を3と決定し,これにより典型的な3パ ターン(以下,活用場面パターンと呼ぶ)に分類するこ とができた.回答データを3つの活用場面パターンでグル ープ分けし,場面別の活用状況を平均した結果(図10), それぞれのパターンの特徴として,活用場面パターンIは 「多場面活用」型,IIは「計画・研修・啓発活用」型, IIIは「非活用」型と捉えることが出来る.IIIは震災アー カイブをほとんど活用していないため,これを除いて,I とIIの分類を,次節のクロス集計の説明変数に加える.  図 震災後の所属変化と震災時の災害対応経験  図 活用した震災前の災害アーカイブの災害種別  図 活用した震災前の災害アーカイブの内容種別

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 震災アーカイブ活用の有無と属性のクロス集計 これまでのアンケート調査結果から,組織アーカイブ が良く活用されていること,デジタルアーカイブWebサ イトはあまり活用されていないこと,活用パターンが主 に3通り(非活用型を除けば2通り)に分類できること, が分かってきた.また,アンケート調査では,どのよう な活用主体かを示す属性情報として,組織種別(自治体, 教委,社協),県別(岩手県,宮城県,福島県),自治 体規模(市,町村),震災当時からの部署異動の有無, 震災当時の災害対応経験の有無,震災対応における震災 前の災害アーカイブ活用の有無,の情報を得た.これに, 既存資料から得られる,各組織の職員数,震災による津 波到達の有無,震災による死者の有無,の属性情報を加 えて,震災アーカイブの活用主体と活用状況との関係を 調べるため,クロス集計を行った.また,それぞれの属 性によるクロス集計の差に統計的な有意差があるか,カ イ二乗検定を行った. 職員数は,自治体は総務省による「平成29年地方公共 団体定員管理調査」17) の「行政防災職員数」を,教委は 同調査の「教育一般職員数」と「社会教育一般職員数」 の合計を,社協は,2017年4月1日に全面施行された社会 福祉法第59条2に基づく各機関の現況報告書を福祉医療機 構のWebサイト18)から取得し,「社協本部職員数」(常 勤および非常勤,兼務職員の合計)をそれぞれ用いた. 基準日は2017年4月1日時点としたが,一部社協は2017年 度の報告書がなかったため,2018または2019年度の報告 書から抽出した.更に,職員数の算出根拠が異なるため, 組織別に職員数を平均し,平均以上か平均未満かの2群に 分類した. 津波到達は,回答者の所在地自治体が震災による津波 の到達があれば「あり」,なければ「なし」とした. 死者は,回答者の所在地自治体で震災による死者数19) が1以上であれば「あり」,0であれば「なし」とした. 震災アーカイブ全体の活用状況と各属性とのクロス集 計の結果を,表4に示す.カイ二乗検定により5%水準で 有意となったのは,組織種別,職員数,県,自治体規模, 津波到達,死者,震災前活用,の属性であった. 職員数が多い組織では,震災アーカイブの活用割合が 高いという結果となった.同じく,自治体規模が大きい 組織ほど活用割合が高かった.これらの理由については, 組織の職員数や予算等の規模が大きいほど,想定利用場  図 活用場面クラスタ分析のエルボー曲線 表 震災アーカイブ活用と活用主体の属性のクロス集計 n 活用 p 値 オッズ比 [90%CI] 組織種別 教委 68 60.3% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 社協 87 78.2% 2.36 [1.17-4.76] 自治体 72 86.1% 4.08 [1.79-9.32] 職員数 平均未満 146 65.1% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 平均以上 81 93.8% 8.16 [3.10-21.46] 県 福島県 95 62.1% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 岩手県 69 79.7% 2.40 [1.17-4.92] 宮城県 63 90.5% 5.80 [2.27-14.81] 自治体規模 町村 132 62.1% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 市 95 93.7% 9.04 [3.68-22.21] 津波到達 なし 149 66.4% 0.00 1.00 [1.00-1.00] あり 78 92.3% 6.06 [2.47-14.90] 死者 なし 78 52.6% 0.00 1.00 [1.00-1.00] あり 149 87.2% 6.17 [3.21-11.89] 所属変化 あり 165 75.8% 0.81 1.00 [1.00-1.00] なし 62 74.2% 0.92 [0.47-1.80] 対応経験 なし 66 75.8% 0.92 1.00 [1.00-1.00] あり 161 75.2% 0.97 [0.50-1.89] 震災前活用 なし 181 70.2% 0.00 1.00 [1.00-1.00] あり 46 95.7% 9.35 [2.19-39.97]  図 活用場面パターン別の震災アーカイブ活用状況 表 活用場面パターンI と活用主体の属性のクロス集計 n I p 値 オッズ比 [90%CI] 組織種別 教委 33 24.24% 0 1.00 [1.00 - 1.00] 社協 63 46.03% 2.67 [1.04 - 6.81] 自治体 55 69.09% 6.99 [2.62 - 18.62] 職員数 平均未満 80 40.00% 0.01 1.00 [1.00 - 1.00] 平均以上 71 60.56% 2.30 [1.20 - 4.43] 県 福島県 49 42.86% 0.39 1.00 [1.00 - 1.00] 岩手県 47 48.94% 1.28 [0.57 - 2.86] 宮城県 55 56.36% 1.72 [0.79 - 3.75] 自治体規模 町村 65 43.08% 0.16 1.00 [1.00 - 1.00] 市 86 54.65% 1.59 [0.83 - 3.05] 津波到達 なし 83 27.71% 0 1.00 [1.00 - 1.00] あり 68 76.47% 8.48 [4.05 - 17.74] 死者 なし 32 18.75% 0 1.00 [1.00 - 1.00] あり 119 57.98% 5.98 [2.29 - 15.61] 所属変化 なし 43 41.86% 0.23 1.00 [1.00 - 1.00] あり 108 52.78% 1.55 [0.76 - 3.17] 対応経験 あり 108 47.22% 0.34 1.00 [1.00 - 1.00] なし 43 55.81% 1.41 [0.69 - 2.87] 震災前活用 なし 107 42.99% 0.01 1.00 [1.00 - 1.00] あり 44 65.91% 2.56 [1.23 - 5.33]

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6   震災アーカイブ活用の有無と属性のクロス集計 これまでのアンケート調査結果から,組織アーカイブ が良く活用されていること,デジタルアーカイブWebサ イトはあまり活用されていないこと,活用パターンが主 に3通り(非活用型を除けば2通り)に分類できること, が分かってきた.また,アンケート調査では,どのよう な活用主体かを示す属性情報として,組織種別(自治体, 教委,社協),県別(岩手県,宮城県,福島県),自治 体規模(市,町村),震災当時からの部署異動の有無, 震災当時の災害対応経験の有無,震災対応における震災 前の災害アーカイブ活用の有無,の情報を得た.これに, 既存資料から得られる,各組織の職員数,震災による津 波到達の有無,震災による死者の有無,の属性情報を加 えて,震災アーカイブの活用主体と活用状況との関係を 調べるため,クロス集計を行った.また,それぞれの属 性によるクロス集計の差に統計的な有意差があるか,カ イ二乗検定を行った. 職員数は,自治体は総務省による「平成29年地方公共 団体定員管理調査」17) の「行政防災職員数」を,教委は 同調査の「教育一般職員数」と「社会教育一般職員数」 の合計を,社協は,2017年4月1日に全面施行された社会 福祉法第59条2に基づく各機関の現況報告書を福祉医療機 構のWebサイト18)から取得し,「社協本部職員数」(常 勤および非常勤,兼務職員の合計)をそれぞれ用いた. 基準日は2017年4月1日時点としたが,一部社協は2017年 度の報告書がなかったため,2018または2019年度の報告 書から抽出した.更に,職員数の算出根拠が異なるため, 組織別に職員数を平均し,平均以上か平均未満かの2群に 分類した. 津波到達は,回答者の所在地自治体が震災による津波 の到達があれば「あり」,なければ「なし」とした. 死者は,回答者の所在地自治体で震災による死者数19) が1以上であれば「あり」,0であれば「なし」とした. 震災アーカイブ全体の活用状況と各属性とのクロス集 計の結果を,表4に示す.カイ二乗検定により5%水準で 有意となったのは,組織種別,職員数,県,自治体規模, 津波到達,死者,震災前活用,の属性であった. 職員数が多い組織では,震災アーカイブの活用割合が 高いという結果となった.同じく,自治体規模が大きい 組織ほど活用割合が高かった.これらの理由については, 組織の職員数や予算等の規模が大きいほど,想定利用場  図 活用場面クラスタ分析のエルボー曲線 表 震災アーカイブ活用と活用主体の属性のクロス集計 n 活用 p 値 オッズ比 [90%CI] 組織種別 教委 68 60.3% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 社協 87 78.2% 2.36 [1.17-4.76] 自治体 72 86.1% 4.08 [1.79-9.32] 職員数 平均未満 146 65.1% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 平均以上 81 93.8% 8.16 [3.10-21.46] 県 福島県 95 62.1% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 岩手県 69 79.7% 2.40 [1.17-4.92] 宮城県 63 90.5% 5.80 [2.27-14.81] 自治体規模 町村 132 62.1% 0.00 1.00 [1.00-1.00] 市 95 93.7% 9.04 [3.68-22.21] 津波到達 なし 149 66.4% 0.00 1.00 [1.00-1.00] あり 78 92.3% 6.06 [2.47-14.90] 死者 なし 78 52.6% 0.00 1.00 [1.00-1.00] あり 149 87.2% 6.17 [3.21-11.89] 所属変化 あり 165 75.8% 0.81 1.00 [1.00-1.00] なし 62 74.2% 0.92 [0.47-1.80] 対応経験 なし 66 75.8% 0.92 1.00 [1.00-1.00] あり 161 75.2% 0.97 [0.50-1.89] 震災前活用 なし 181 70.2% 0.00 1.00 [1.00-1.00] あり 46 95.7% 9.35 [2.19-39.97]  図 活用場面パターン別の震災アーカイブ活用状況 表 活用場面パターンI と活用主体の属性のクロス集計 n I p 値 オッズ比 [90%CI] 組織種別 教委 33 24.24% 0 1.00 [1.00 - 1.00] 社協 63 46.03% 2.67 [1.04 - 6.81] 自治体 55 69.09% 6.99 [2.62 - 18.62] 職員数 平均未満 80 40.00% 0.01 1.00 [1.00 - 1.00] 平均以上 71 60.56% 2.30 [1.20 - 4.43] 県 福島県 49 42.86% 0.39 1.00 [1.00 - 1.00] 岩手県 47 48.94% 1.28 [0.57 - 2.86] 宮城県 55 56.36% 1.72 [0.79 - 3.75] 自治体規模 町村 65 43.08% 0.16 1.00 [1.00 - 1.00] 市 86 54.65% 1.59 [0.83 - 3.05] 津波到達 なし 83 27.71% 0 1.00 [1.00 - 1.00] あり 68 76.47% 8.48 [4.05 - 17.74] 死者 なし 32 18.75% 0 1.00 [1.00 - 1.00] あり 119 57.98% 5.98 [2.29 - 15.61] 所属変化 なし 43 41.86% 0.23 1.00 [1.00 - 1.00] あり 108 52.78% 1.55 [0.76 - 3.17] 対応経験 あり 108 47.22% 0.34 1.00 [1.00 - 1.00] なし 43 55.81% 1.41 [0.69 - 2.87] 震災前活用 なし 107 42.99% 0.01 1.00 [1.00 - 1.00] あり 44 65.91% 2.56 [1.23 - 5.33] 7  面の実施機会が多く,震災アーカイブの活用機会自体も 多くなっているのではないかと考えられる. 震災による津波が到達した地域では,内陸地域よりも 活用割合が高かった.同様に,震災による死者が出た地 域では,出ていない地域よりも活用割合が高い結果とな った.これらの理由は,震災後の復旧復興等のために, 震災アーカイブを活用する機会が多いためと考えられる. 福島県の活用割合が低いことについては,本調査結果 からその理由を断定することはできないが,福島県は他 県よりも内陸の自治体数や町村数が多いため,これらの 属性の偏りが影響している可能性が考えられる. また,震災前の災害アーカイブを活用した組織ほど, 震災アーカイブの活用割合が高いことが分かった.災害 対応におけるアーカイブ活用の経験があると,その後の 防災対策において継続して活用されやすい可能性がある. 次に,各属性と震災アーカイブ活用場面のパターンと のクロス集計を行った(表5).この結果,表4で有意で あった属性のうち,組織種別,職員数,津波到達,死者, 震災アーカイブ活用,の属性が有意となった.一方,県, 自治体規模,は有意ではなかった. 有意であった職員数についても,オッズ比が2.30と, 震災アーカイブ活用全体への影響(8.16)に比べて小さ くなっており,90%信頼区間の下限も1.20と高くない. 一方で,津波到達のオッズ比は8.48,死者のオッズ比は 5.98,自治体の場合のオッズ比が6.99と高いことから,職 員数や自治体の規模,県の違い等によらず,津波被災を 経験した沿岸部の自治体では,多くの想定利用場面にお いて震災アーカイブを活用していると言える.このこと から,活用場面パターンI「多場面活用型」となる背景に は,震災の復旧復興等において震災アーカイブを活用す ることで,様々な場面での活用を行っているのではない かと考えられる. 最後に,活用場面パターンを加えたそれぞれの属性に 対して,組織アーカイブの活用,および収集アーカイブ の活用とのクロス集計の結果を,表6および表7に示す. 表6では,組織アーカイブの活用に対して有意であった 属性は,津波到達,死者,活用場面パターン,であった. このことから,津波被災を受けた沿岸部の自治体を中心 に,震災の復旧復興等のために,組織内に保管している 震災アーカイブが多様な場面で活用されているという実 態が見えてきた. 表7では,収集アーカイブの活用に対して有意であった 属性は,組織種別,県,震災前アーカイブ活用,であっ た.組織種別では,自治体での活用割合が低く,教委と 社協が高いという結果となった.また,宮城県は他県よ りも活用割合が有意に高く,震災前のアーカイブを活用 している組織も高いという結果になった.しかし,これ らのオッズ比の90%信頼区間下限は,それぞれ1.18,1.10, 1.20,1.03と低いため,必ずしも大きな影響があるとは言 い難い.また,5%水準で有意ではなかったが,活用場面 パターンでは,組織アーカイブの活用との関係に反して, 活用場面パターンIIの方がIよりも割合が高かった.この ことから,断定はできないものの,教委や社協では,計 画の作成や更新,研修や教育・啓発等を,収集アーカイ ブを活用して行っている可能性が考えられる.また,宮 城県が他県よりも有意に高かったことの背景には,他県 よりもこれらの場面(計画の作成・更新,研修や教育・ 啓発)が求められる機会が多かった,何らかの理由が背 景にあるのかもしれない. 5.おわりに  本研究の結果から,震災から7年が経過した東日本大震 災被災地における,震災アーカイブの活用実態を確認す ることができた.デジタルアーカイブについては十分な 活用がなされているとは言い難い結果であったが,デジ タル/非デジタルと並ぶアーカイブの特徴と言える組織 /収集アーカイブの区分において,組織や場面によって 収集アーカイブもよく活用されているという実態が確認 できた. また,全体的な傾向としては大きく2つのパターンを 表 収集アーカイブ活用と活用主体の属性のクロス集計 n 収集 p 値 オッズ比 [90%CI] 組織種別 自治体 55 18.18% 0.03 1.00 [1.00 - 1.00] 社協 63 38.10% 2.77 [1.18 - 6.50] 教委 33 39.39% 2.92 [1.10 - 7.78] 職員数 平均以上 71 23.94% 0.07 1.00 [1.00 - 1.00] 平均未満 80 37.50% 1.91 [0.94 - 3.87] 県 福島県 49 18.37% 0.05 1.00 [1.00 - 1.00] 岩手県 47 34.04% 2.29 [0.89 - 5.88] 宮城県 55 40.00% 2.96 [1.20 - 7.30] 自治体規模 市 86 25.58% 0.09 1.00 [1.00 - 1.00] 町村 65 38.46% 1.82 [0.91 - 3.65] 津波到達 あり 68 30.88% 0.95 1.00 [1.00 - 1.00] なし 83 31.33% 1.02 [0.51 - 2.04] 死者 あり 119 28.57% 0.19 1.00 [1.00 - 1.00] なし 32 40.62% 1.71 [0.76 - 3.84] 所属変化 あり 108 29.63% 0.53 1.00 [1.00 - 1.00] なし 43 34.88% 1.27 [0.60 - 2.70] 対応経験 なし 43 30.23% 0.88 1.00 [1.00 - 1.00] あり 108 31.48% 1.06 [0.49 - 2.28] 震災前活用 なし 107 26.17% 0.04 1.00 [1.00 - 1.00] あり 44 43.18% 2.14 [1.03 - 4.48] 活用場面 I 75 26.67% 0.24 1.00 [1.00 - 1.00] パターン II 76 35.53% 1.52 [0.76 - 3.04] 表 組織アーカイブ活用と活用主体の属性のクロス集計 n 組織 p 値 オッズ比 [90%CI] 組織種別 教委 33 75.76% 0.14 1.00 [1.00 - 1.00] 社協 63 80.95% 1.36 [0.49 - 3.75] 自治体 55 90.91% 3.20 [0.95 - 10.80] 職員数 平均未満 80 82.50% 0.74 1.00 [1.00 - 1.00] 平均以上 71 84.51% 1.16 [0.49 - 2.74] 県 岩手県 47 76.60% 0.24 1.00 [1.00 - 1.00] 福島県 49 83.67% 1.57 [0.57 - 4.32] 宮城県 55 89.09% 2.50 [0.84 - 7.38] 自治体規模 町村 65 83.08% 0.92 1.00 [1.00 - 1.00] 市 86 83.72% 1.05 [0.44 - 2.49] 津波到達 なし 83 77.11% 0.02 1.00 [1.00 - 1.00] あり 68 91.18% 3.07 [1.15 - 8.19] 死者 なし 32 65.62% 0 1.00 [1.00 - 1.00] あり 119 88.24% 3.93 [1.57 - 9.84] 所属変化 あり 108 81.48% 0.3 1.00 [1.00 - 1.00] なし 43 88.37% 1.73 [0.60 - 4.94] 対応経験 あり 108 82.41% 0.59 1.00 [1.00 - 1.00] なし 43 86.05% 1.32 [0.49 - 3.56] 震災前活用 なし 107 82.24% 0.54 1.00 [1.00 - 1.00] あり 44 86.36% 1.37 [0.51 - 3.69] 活用場面 II 76 75.00% 0 1.00 [1.00 - 1.00] パターン I 75 92.00% 3.83 [1.43 - 10.24]

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確認できた.1つは,津波被災を受けた沿岸部の自治体 等を中心に,震災の復旧復興を目的とした震災アーカイ ブ活用が行われるというものである.このパターンでは, 様々な利用場面において,組織内で収集・保管している 「組織アーカイブ」がより多く活用される.もう1つの パターンは,断定はできないものの,教委や社協では, 被災程度や組織規模によらず,計画の作成・更新や研 修・教育・啓発などの場面において,他組織が収集し公 開する「収集アーカイブ」が多く活用されている可能性 がある.この活用のパターンにおいては,震災前の災害 アーカイブを活用した経験があると,その後においても 震災アーカイブが活用されているという傾向が見られた. また,特に社協においては,災害ボランティアセンター 運営や被災者生活支援等に関する計画作成や更新,研修, 教育・訓練等の目的で,震災アーカイブの活用がなされ ている可能性がある. 謝辞 この研究は東北大学災害科学国際研究所の共同研究事業によ り助成を受けて実施したものである.   参考文献  1) 佐藤翔輔:我が国における津波災害の記憶を巡る試み,国際 シンポジウム「大規模災害とコミュニティの再生」,第 3 部:コミュニティにおける災害の記憶の継承,2012.11. 2) 長坂俊成:ボーンデジタルの時代における災害のデジタルア ーカイブとその利用, 日本写真学会誌, Vol. 79, No. 1, pp. 16–22, 2016. 3) 佐藤翔輔:東日本大震災アーカイブの 5 年間-生かされる記 録の意義-,月刊IM,2016 年 3 月号,pp.16-19,2016.2. 4) 川内淳史:「震災資料」保存の取り組みの現状と課題 阪 神・淡路大震災から東日本大震災へ(<特集>震災アーカイブ),

情報の科学と技術, Vol. 64, No. 9, pp. 377–381, 2014, doi: 10.18 919/jkg.64.9_377. 5) 東日本大震災復興構想会議:復興への提言~悲惨のなかの希 望 ~, https://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/fukkouhenoteigen.pdf. (2020 年 8 月 18 日閲覧) 6) 古賀崇:総論 : アーカイブズをいかに位置づけるか : 日本の 現状からのレビュー(<特集>アーカイブズの現在), 情報の科 学と技術, Vol. 62, No. 10, pp. 408–414, 2012. 7) 総務省:「震災関連デジタルアーカイブ構築・運用のための ガイドライン」の公表, https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu02_03000115.html. (2019 年 7 月 1 日閲覧) 8) 河合美穂:国立国会図書館における東日本大震災アーカイブ

の取組み, 情報知識学会誌, vol. 22, no. 4, pp. 291–297, 2012, doi:

10.2964/jsik.22_291.

9) 今村文彦・柴山明寛・佐藤翔輔:東日本大震災記録のアーカ

イブの現状と課題(<特集>震災アーカイブ), 情報の科学と技

術, Vol. 64, No. 9, pp. 338-342, 2014, doi: 10.18919/jkg.64.9_338. 10) 町英朋・塩雅之・坂井知志:日常生活圏におけるデジタルア

ーカイブの撮影方法とメタデータの開発, デジタルアーカイ

ブ学会誌, Vol. 1, pp. 51–54, 2017, doi: 10.24506/jsda.1.Pre_51. 11) 岡本真:震災アーカイブズの現状と課題, 情報知識学会誌, Vol. 22, No. 4, pp. 308–315, 2012. 12) 吉見俊哉:知識循環型社会とアーカイブ, 社会学評論, Vol. 65, No. 4, pp. 557-573, 2015. 13) 中川政治・尾形和昭・佐藤翔輔・佐藤茂久・藤間千尋:ICT を活用した仮想体験型震災学習プログラムの開発 - 東日本 大震災で被災した石巻市における 「 防災まちあるき 」 実践 事例 -, 地域安全学会論文集, Vol. 26, No. 26, pp. 37–44, 2015. 14) 宇田川真之・他:災害伝承支援アプリケーションの研究開発 とまち歩き学習での利用評価, 社会安全学研究, Vol.6, pp.81-93, 2016. 15) 佐藤翔輔:東日本大震災アーカイブを使ってみた, 情報管理, Vol. 59, No. 10, pp. 690–694, 2017.

16) R Core Team : R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. https://www.R-project.org/. (2020 年 4 月 1 日閲覧) 17) 総務省:地方公共団体定員管理関係(都道府県、指定都市、 市区町村データ)(平成29 年), https://www.soumu.go.jp/mai n_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin/190325data.html. (2019 年 4 月 1 日閲覧) 18) 独立行政法人福祉医療機構:社会福祉法人の財務諸表等電子 開 示 シ ス テ ム, https://www.wam.go.jp/wamnet/zaihyoukaiji. (2019 年 4 月 1 日閲覧) 19) 消防庁:平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震(東日 本大震災)について(第159 報), https://www.fdma.go.jp/disa ster/higashinihon/items/159.pdf. (2019 年 4 月 1 日閲覧) (原稿受付 2020.5.16) (登載決定 2020.8.29) 

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添付資料-4-2 燃料取り出し用カバーの構造強度及び耐震性に関する説明書 ※3 添付資料-4-3

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