岩本光雄名誉会員
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(2) 66. 濱田穣. Locomotion 研究がある。この方面では岩本先生も冨田 先生と共同研究で,ニホンザルの四肢運び順が他の一 般的な哺乳類で後方交叉型であるのとは異なり前方交 叉型(後肢が先に着地し,ついて対角側の前肢が着地 する)ということを報告されている。 岩本先生の Life-work は,指掌紋の研究である。霊長 類に関しては,早くも 1964 年にニホンザルの手の指掌 紋を記述されている。さらにスラウェシマカクの指掌 紋の研究もおこなわれた。指掌紋とならんで岩本先生 の最も好きな研究対象は,化石・遺骨形態学である。 静岡県岩水寺,愛知県牛川,青森県尻屋崎,山口県於 福カルストの安藤採石場,秋吉台,西秋吉台鷹ケ穴, 愛媛県肱川敷水,鳥浜貝塚出土縄文前期の下顎骨,藤 沢市天岳院出土の最新世顔面骨,木更津近郊鎗水,お よび種子島縄文時代遺跡のサル下顎骨等と,数多くの マカク化石・遺骨を調査,記載された。これに関連し て ア ジ ア 大 陸 で の 化 石 と 現 生 マ カ ク( 例,Macaca robustus)との比較研究をされた。そして大きなインパ クトを与えたのは神奈川県中津層準からの化石コロブ ス 亜 科 で,Dolicopithecus (Kanagawapithecus) leptopostorbitalis と記載された。さらにエチオピアでの 化石調査から,それは政情の関係で予備調査であった にもかかわらず,Omo 河流域で Papio quadratirostris を 発見,記載されている。この調査では化石のみならず, 現生オナガザル類の分布・分類学研究,ならびにマン トヒヒとアヌビスヒヒ,および両種間の雑種の形態学 研究もされている。 岩本先生は多くの霊長類分類学・系統発生学・形態学・ 進化に関する本を執筆,翻訳された。それは他に追随 を見ないものである。私が大学院へ入ろうとしていた 学部学生のころ,岩本先生の執筆された『世界のサル』 (1968 年,河合雅雄,岩本光男,吉場健二著,毎日新聞 社)と訳書『猿と類人猿 Monkeys and Apes』(P. Napier 著,1974 年,主婦と生活社),さらに『人類学講座』(1978 年,1981 年,雄山閣)のいくつかの章は格好の教科書 であった。また霊長類形態学で勉強になったのが『指 紋-霊長類進化の軌跡』(1973 年,NHK ブックス)で ある。これらの他に一般書と翻訳も多数,ものされて いる。岩本先生は霊長類学会で理事を務められ,学会 の発展に貢献された。特に編集理事として「霊長類研究」 の発行にたずさわられた。 霊長類研究所を 1994 年に退職された後,JMC 所長を 何年か務められた。スラウェシマカクの現地調査では 1986 年に一緒させていただいた。蒸し暑く,山がちの フィールド環境であったが,ほんとうに淡々と調査さ れることに感銘を受けた。また岩本先生の車の運転は, ひじょうに生真面目で,道路の左端ちかくをトレース され,ひじょうに驚かされた。またお書きになった文 字は一種独特で,いくらか棟方志功の書く文字に似た. 味があった。退職後は,趣味とかお稽古ごとなど,と りたててされなかったようで,旅行や同窓会などを楽 しまれていたようだ。.
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