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アワビ種苗生産技術の現状と展望

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Academic year: 2021

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1.アワビの漁獲量

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2.アワビ種苗生藍技術の発展段階

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3.罷茜生彊のかかえる問題

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アワビ種苗生産技術の現状と展望 21 0 0 (uO≡∈)p①総〇一の直P8S①u〇一のq<十〇.〇之 H.discus S.52 55 1977 1980 図鵜3 アワビ彊苗放流数の推移 (資料:水産庁, ㈲日本栽培漁業協会編 の生態10)はかなり様子を異にする。同一水温条件下で はエゾアワビの性成熟の進行速度はクロアワビの2倍以 上を示す。また,エゾアワビは夜間極めて活動的である が,クロアワビはそれほどでもない。そこで,暖流域に 寒流種の放流を進める前に2つの点を点検しておきたい。 1つは暖流域でエゾアワビが再生産に関与して,在来種 との間で交雑種を生じないかという点である。成熟の進 行速度は異なるが,エゾアワビが先に成熟し,産卵を繰 り返しながら,在来種と産卵期が重なる可能性が考えら れる。雑種が生じた場合は遺伝子資源保全の観点から論 議のあるところであろう。ところで数種類の分布が重な っているカリフォルニア沿岸では,多数の種間雑種が発 見されているが11〉,種は存続しているので,雑種の不稔 化などにより種の独自性が保たれる機構があるのかもし れない。 今1つは生物社会の種構成の異なる暖流域で,生態 が異なる寒流種の放流効果が期待できるかという点であ る。放流事業は経済行為であるから,むしろこの点を試 験放流によって確認しておく必要がある。暖流域におけ るエゾアワビの放流は日本海北部で良い成績を上げてい る10)。しかし,生物社会の種構成の比較的単純な日本海 における事例が太平洋側にも適用できるかどうかは疑念 のあるところである。種苗の放流効果は寒暖両水域とも 外洋に画した漁場よりも,湾内や水道筋の漁場で一般に 高いが,これも補食者の種数や量的な組成を反映しての ことであろう。 60 1985 栽培漁業種苗生産,入手・放流実績〉 20 1 0 (uo萎王p8∋さしdp8S①u〇一窒<︺o.〇之 55 60 図-2 アワビ種苗生産数の推移 For culture :民間企業生産の養殖用種苗,主にエ ゾアワビ(資料:水産庁, ㈲日本栽培漁業協会編 栽 培漁業種苗生産,入手・放流実績〉

4.種苗サイズと放流効果

周知のように,近年,種苗放流により生産量を飛躍的 に増大させることができた魚介類にサケとホタテガイが ある。これらの成功は種苗性(魚介の稚仔が種苗として

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22 上0 0.9 0.8 0.7 生0.6 率0・5 0.4 0.3 0.2 0.l 水 産 土 木 Vol.26No.2 2 4 6 8 10 12 14 放流暗殺長(cm) 図一4 アワビ放流時の殻長と1年後の生残率 白丸,黒中丸:マダカアワビ 黒丸:クロアワビ 三角:メガイアワビ 備えるべき性質)をもった稚仔の大量入手に支えられて いる。サケについては回帰率が向上したのは人工飼料を 給与し,より大型にして放流を始めてからである。これ らの例から,魚介の稚仔の種苗としての価値は大きさに 比例して増大するというよりも,むしろある点を超えて 顕著になるもののように思われる。それではアワビの稚 貝はどの大きさから種苗になるのか?それは井上12)に よって明解に示されている。神奈川県地先に放流された マガタアワビH.giga海eaの例では,年間の生残率は放 流時の殻長2cmから4cmの間で急速に上昇している。 この結果からは,安定した生残率を得るには,少なくと も殻長4cmが必要である(図一4)。 小型種苗で放流数を増やして対応したいという方向に は図鵜4のシグモイドカーブは良い答えを与えないであ ろう。現在,全国で殻長25-30mmの種苗が2千万個放 流されている。図の関係が一般別として成立するとして, このサイズの年間生残率は30%前後と読みとれる。漁獲 対象までの所要時間を3年とすれば,成長に伴い生残率 は改善されるものの,通算の生残率は10%台になる。漁 獲率50%前後,体重100-200gで回収されるとして,放 流効果は数百トンの水準である。多くの仮定を積み上げ た大まかな推論にすぎないが,大きくは外れていないよ うに思われる。この水準では統計上の漁獲量を押し上げ る効果は天然の年変動に隠れて見えなくなる。また,経 済的な収支から言っても利益は大きくない。再捕までの 写真一1岩手県陸前高田市広田町漁業協同組合のアワ ビ彊苗生産施設 職員2人の配置で年50万個(殻長25へ30 mm)を生産。奥に見える温室内で,太陽熱エ ネルギー利用による温水を使って春採苗を行 う。取水は低コストの海中濾過方式を採用。 期間を短縮し,生残率を高める種苗の大型化は必然の方 向である。漁場の環境を類型化し,それぞれにおける経 済的な最適サイズを求めておく必要がある。 ところで,在来の漁獲量の十数倍増を果たしたサケや ホタテガイの成功は海洋の空いていた環境収容力の活用 であった。これら魚介の飼料であるプランクトンは,い わば広大な面で生産され補給されるのに対し,海藻食者 の貝類の飼料は岩礁という線上でしか生産されない。こ のような飼料の量的生産水準の違いから,アワビの生産 量は種苗放流や漁場環境の改良技術を駆使しても将来数 倍になるということはない。当面の生産目標は過去最大 の7千トン前後であろう。この中3千トンが種苗放流に よるものとし, 1万個の放流で0.5トンの収獲があると すると必要種苗数は6千万個になり,これは前述のよう に近未来に実現できる数字である。

5.種苗生産技術の展望

このようにして見てくると,アワビの種苗放流が経済 的に成立するかどうかは,生産種苗の数量,大きさとコ ストにかかっていることが判る。アワビは本来整った環 境下では年間4cm前後に成長する能力をもっている。 今後の種苗生産技術の目標はハードとソフトを駆使して, この成長能力を引き出し,大型種苗の低コスト大量生産 を実現することである。 寒流域では,東北水研が指導し岩手県陸前高田市の気 仙町漁協と広田町漁協に助成を得て建設されたアワビ種 苗生産施設が1つのモデルとなろう。ここでは巡流水槽 を使用し,太陽エネルギーの活用で春季採苗を行い,付着 珪藻と配合飼料を給与して,年間の平均水温が14。cをき る条件下であるが, 1 - 2人の少人数で殻長25-30mm

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アワビ程苗生産技術の現状と展望 の種苗50-80万個の生産を実現しだ(写真- 1 )。生産コ ストは殻長1mm当り1円余で在来法に比べ大巾に低廉 化できている。取水,濾過,飼育の諸設備も運転経費の 縮小を目標に工夫を凝ら、して設計された。 暖流域ではクロアワビの大量弊死問題の解決が種苗放 流事業の成否の上で1つの試金石である。アワビの種苗 生産は飼育が周年にわたるので施設を休ませる期間がな い場合が多い。いわば連作になっており,これがウィル ス性の病気を発症させる土台になっているように思われ る。ウィルスからの隔離などによる解決策は飼育施設が 屋外に配置されている場合も多く困難を伴う。施設を休 ませながら交互に使用できるゆとりのある設計が望まれ る。飼育水槽の構造やカゴなどの内部装置,珪藻培養器 などハード全般も水理学的な観点から見直しが必要であ る。 ソフト面では,病気を発症させない飼育方法の確立を 図る必要がある。全般に給与飼料の不適からくる栄養状 態の悪化が背景にあると考えられる。給与飼料の質の改 善や,弊死時期には既に種苗を十分大型化しておく秋季 の早期採苗,場合によっては春季の採苗の実施などが検 討されてよい。また,クロアワビ種苗を効率よく生産し ている愛知県栽培漁場センターや静岡県温水利用研究セ ンターの事例を解析することは,弊死問題の解決策を見 出す上で役に立つであろう。 暖流域における巡流水槽を中心とする施設設計は最近, 三重県栽培漁業センターや徳島県牟岐町の漁協種苗セン ターで採用された。これら施設の運用がクロアワビの種 苗生産の1つのモデルとなってくれることを期待してい る。クロアワビの大量籍死問題は,大型種苗の生産を可 能にするシステム設計とその運用法確立の過程で解決で きればと思っている。 今後,放流種苗の生産は放流事業の経済的自立の上で, 漁業者自らが行う方向が益々求められるようになろう。 他方,放流を目的とした中間育成は漁業者の性格から長 続きしないであろうし,体制的にも効率的とは言えない。 このため,中間育成を必要としない,種苗としての価値 を持った大型稚貝の効率的な生産体制の整備が行えるか どうかが放流事業の成否を決めるであろう。種苗の生産 23 は数の増加から質(種苗性)の改善を図る時代に入った ばかりで,当面の技術的目標はサイズの大型化である。 生産水準の低下により岩礁藻場の収容力は空いている。 過放流や天然種苗とのニッチ(生態的地位)の競合など を種苗の放流量や種苗性との関連で問題とし,一般論と して放流効果の有無を論じるのは,このような体制が整 備された後からでも遅くはないと考える。 参 考 文 献 1)浮 永久:海外におけるアワビ漁業と研究の現 状,日本水産資源保護協会月報, 251, pp.5-16, 1984. 2)猪野 峻:邦産アワビ属の増殖に関する生物学的 研究,東海水研研究報告, 5, pp. 1-102, 1952. 3)井上正昭・野中 忠・山田静男:磯根資源とその 増殖1-アワビー,水産増養殖叢書, 24,日本水 産資源保護協会,東京, pp. 1-108, 1972. 4)浮 永久・菊地省吾:外部環境要因による成熟, 産卵の制御(貝類),日本水産学会編,水産学シリ ーズ41,恒星社厚生閣,東京, pp.64-79, 1982. 5)関 哲夫・菅野 尚:エゾアワビの初期発生と水 温による発生速度の制御,東北水研研究報告, 38, pp. 143-153, 1977. 6)関 哲夫・菅野 尚:エゾアワビ被面子幼生の着 底と変態について,東北水研研究報告,42, pp. 31 -39, 1981. 7)菊地省吾・浮 永久・秋山和夫・鬼頭 鈎・菅野 尚・佐藤重勝・桜井喜十朗・鈴木 博:アワビ飼 料藻類の造林技術開発に関する研究,農林水産技 術会議研究成果, 116, pp. 1-61, 1979. 8)中津川俊雄・畑井喜司雄・窪田三朗:筋萎縮を伴 うアワビ稚貝の病理組織学的所見,魚病研究, 23, pp. 203へ204, 1988. 9)浮 永久:アワビ類の増養殖に関する基礎的研究, pp. 1-428,東京大学農学部, 1987. 10)浮 永久・菊地省吾・菅野 尚:養殖場造成指針 (アワビ),地球社,東京, pp.55-159, 1982.

11) Owen, B., Mclean, J. H. and Meyer, R. J言Hybridi-zation in the eastem Pacific abalones (Halio轟) , Bu11. Los Angeles County Museum of Natural History Science, 9, Pp. 1-37, 1971.

12)井上正昭:アワビの漁業管理, (袖日本水産資源 保護協会,国内における資源評価及び管理手段に 関するレビュー,東京, pp.121-218, 1987.

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