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臨床心理学専攻の学生が保育士資格を取得することについての一考察

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Ⅰ.問題提起

臨床心理士が昨今注目している職域として 「子育て支援」がある。子育てといえば、家庭 なら親、社会なら保育士や教員といった立場の ものがおこなうのが主流であろう。笠原(2004) は、「保育士は、子育てに悩んではいるが、ま だ専門機関にかかっていない親と接する機会が 比較的多く、かかわりを持ちやすい最初の専 門家であると言える。」と述べている。つまり、 保育士は、親にとって臨床心理士に出会う前の 専門家といっても良い。このような現状からか、 本学臨床心理学部の学生たちも臨床心理士だけ でなく、保育士の資格にも関心を持ち、保育士 試験に挑戦する者が増えている。保育士は国家 資格である。児童福祉法第 18 条の 4 によれば、 「保育士とは、第 18 条の 18 第 1 項の登録を受け、 保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術を もって、児童の保育及び児童の保護者に対する 保育に関する指導を行うことを業とする者をい う。」と定義されている。保育士の資格は、国 家試験でも珍しく、ふた通りの方法で取得でき るものとなっている。まずひとつめは、厚生労 働大臣の指定する「指定保育士養成施設(大学・ 短大・専門学校)」等に通い、所定の単位を取 得し、卒業することであるが、ふたつめの方法 は都道府県が実施する全国統一の保育士試験に 合格することである(ただし、平成 15 年 11 月 29 日からは、改正児童福祉法の施行により、保 育士と称して保育の業務をおこなうためには、 どちらの方法で資格を取ったとしてもさらに都 道府県に保育士登録をおこなう必要がある)。 実際に保育士として業務に携わる者のうち、 9 割がひとつめの方法で取得した者たちであ り、保育士試験を受験した者は 1 割といわれて いる。本学部の学生たちは、ふたつめの方法で 保育士を目指している。忙しい学生生活のなか から学習時間を捻出するのは大変なことと思わ れるが、それに向かう気持ちはいかなるもので あろうか、また、実際に学生たちが取り組んで いる試験とはいったいどのような内容のもので あろうか。臨床心理学にも近い内容の科目もあ れば、全く心理学を基本としないような専門内 容も知識として入れておかねばならないかもし れない。それらを知ることは、「子育て支援」 に後進で参入した臨床心理士にとっても必要な ことであると思われる。 本論ではまず、保育士試験の内容の紹介とと もに現場の保育士に求められている資質につい て考察し、保育士と臨床心理学との関連につい て論ずる。さらに、2010 年 8 月におこなわれ た保育士試験を受験した自主勉強会のメンバー の学生たちの声をまとめて報告したい。

Ⅱ 保育士と臨床心理学との関連

1)保育士試験について 保育士試験は、筆記試験及び実技試験によっ

臨床心理学専攻の学生が保育士資格を取得すること

についての一考察

三 林 真 弓

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ておこなわれる。筆記試験は、以下の 8 科目で ある。 1. 社会福祉 2. 児童福祉 3. 発達心理学及び精神保健 4. 小児保健 5. 小児栄養 6. 保育原理 7. 教育原理及び養護原理 8. 保育実習理論 各科目の出題内容を表 1 にまとめた。「1. 社 会福祉」は、社会福祉の理念と概念が問われ、 ヨーロッパや日本におけるそれの歴史について 理解し、法律や人名などを覚えなければならな い。また、社会福祉サービスの動向なども知っ ていなければならないし、心理カウンセリング とは違った意味合いの対人援助職のための面接 技術の知識が必要である。「2. 児童福祉」は、 児童を対象とした福祉の理念が問われ、欧米に おけるその歴史的展開もおさえておかないとい けない。児童福祉法に基づいた問題が多く、児 童福祉のための諸機関についての事項が問われ る。「3. 発達心理学」は、実際には生涯発達と いうよりもやはり乳幼児期の発達について多く 出題されている。エリクソンやピアジェなどの 発達理論も詳細に覚えないといけない。『保育 所保育指針』が平成 21 年に改定されてからは、 子どもの発達と発達のおもな特徴について、年 齢の区切りがよく問われている。「3.精神保健」 は、大脳生理学的な問題から発達障害、子ども の神経症的な症状や発達障害者支援法などの法 律や制度など出題範囲が多岐にわたる。平成 22 年の試験では、事例が示され診断名を問う ような出題が多かった。「4. 小児保健」は、赤ちゃ んの発育の特徴や予防接種の種類、子どもの事 故などの出題が多く、実際に出産・子育て経験 のある者は非常に身近な内容である。合計特殊 出生率などの近年の動向や、『保育所保育指針』 の健康・安全に関する事項についても問われる。 「5. 小児栄養」は、妊娠・授乳期など母親のた めの食生活から、乳幼児期・障害を持つ小児の ための食生活についても問われる。『食事摂取 基準』が平成 22 年度から新しく変わったこと で、基準値や年齢区分などの変更点を中心に細 かなデータが問われる。例年難問が多く、クリ アしにくい科目のひとつである。「6. 保育原理」 は保育所の保育について本質的なところが問わ れる。モンテッソーリやフレーベルといった歴 史的人物の功績や著作の文章などもおさえてお かねばならない。他の科目と重なる部分もある が、本科目で最も『保育所保育指針』の語句の 穴埋め問題が多い。全文を何度も読み理解して おく必要がある。「7. 教育原理」は国内外の教 育の歴史や法律・制度の知識が問われる。具体 的な学習の教授法や最近の教育問題、生涯学習 といったような内容も問われる。「7. 養護原理」 は、児童憲章や児童の権利に関する条約などの 文章や制定年などが問われる。また、児童養護 施設や里親制度などの統計的データや動向も知 識として必要である。児童虐待関連についても 本科目で問われる。「8. 保育実習理論」は保育 所保育の際の最も実践的な音楽・絵画・言語と いったスキルについての知識が問われる。よっ て、ピアノなどの習い事をしていたり、絵画教 室に通っていた経験のある者は得意であろう し、そうでない者にとってはかなり難解であろ う。また、『保育所保育指針』の 表 現 と 言 葉 に関する内容が発達過程ごとに問われたり、『児 童福祉施設最低基準』について各施設の微妙な 違いを問われるたりするため、詳細に覚えねば ならない。 配点は、各科目とも 100 点満点であり、「3. 発 達心理学及び精神保健」と「7.教育原理及び 養護原理」の 2 科目で 1 セットとなっている試

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表 1.筆記試験科目の出題内容 出題の基本方針 出題範囲 出題の基本方針 出題範囲 社会福祉 社会福祉全般に 関して、その理 念体系を理解し ているかを問う ことを基本とす る。問題選択に 当たっては、我 が国の社会福祉 の体系を概括的 に理解している かという点のほ か、その背景と なっている社会 の動向、社会保 障等の関連の深 い 制 度 の 概 要、 制度の歴史的展 開等の点につい ても留意する必 要がある。 1 現代社会と社会福祉の意義  (1)社会福祉の理念と概念  (2)社会福祉の対象と主体  (3)社会福祉ニーズの変容  (4)社会福祉の発展 2 社会福祉の法体系と実施体系  (1)社会福祉法制の体系  (2)社会福祉のサービス実施体系  (3)社会福祉サービスの評価と情報提供  (4)社会福祉の財政と費用負担  (5)社会福祉サービスにおける公私の役割  (6)社会保障及び関連制度の概要 3 社会福祉援助技術の概要  (1)社会福祉援助技術の発展経緯  (2)社会福祉援助技術の形態と方法  (3)社会福祉援助活動の動向 4 社会福祉専門職  (1)社会福祉従事者の概要  (2)社会福祉従事者の専門性と倫理  (3)保健・医療関係分野の専門職との連携 5 社会福祉の動向  (1)少子高齢社会への対応  (2)在宅福祉・地域福祉の推進  (3)社会福祉基礎構造改革の進展  (4)ボランティア活動の推進  (5)諸外国の動向 6 利用者保護制度の概要  (1)第三者評価  (2)苦情解決  (3)権利擁護  (4)情報提供 小児保健 個々の小児と集 団を形成した場 合の小児各時期 の健康について の理解と健康増 進や疾病異常に 対する対応への 理解を問うこと を 基 本 と す る 。 問 題 選 択 に 当 たっては、身体 面のみならず心 の健康について の理解や各種の 保健対策、安全 対策等について も留意する必要 がある。 1 小児の健康と小児保健の意義と目的  (1)小児の健康の定義と健康に影響する要因  (2)小児の健康と保育との関係  (3)小児の健康と家庭・地域の関連  (4)小児の健康指標と小児保健水準 2 小児の発育・発達と生活の支援  (1)身体発育の特徴とその評価  (2)精神運動機能発達の特徴とその評価  (3)生理機能と小児の生活  (4)発育・発達を促す保育の実際 3 小児の食生活と栄養  (1)小児の栄養の意義  (2)小児各時期の食生活の実際 4 心身の健康増進の意義とその実践  (1)小児各時期の健康づくりの意義  (2)小児各時期の健康づくりの実践 5 小児の疾病とその予防対策  (1)小児期の健康状態の評価  (2)小児の疾病の特徴と小児期に多く見られる疾病  (3)心身の状態と保育現場で必要な応急処置  (4)予防接種  (5)養育上問題と心身の健康  (6)疾病異常と支援体制 6 事故と安全対策  (1)小児の事故の特徴  (2)事故と心身の被害と救急処置  (3)事故防止対策と安全教育  (4)事故や災害と精神保健 7 児童福祉施設における保健対策  (1)児童福祉施設における保健活動の基本的方針  (2)各種の児童福祉施設の特徴と健康管理の実際  (3)保健活動における連携 8 母子保健対策と保育  (1)地域母子保健の意義  (2)母子保健サ−ビスの実際  (3)母子保健サ−ビスと保育との連携 児童福祉 児童がおかれて いる現状とこれ に対応して行わ れている現在の 児童福祉制度及 びその役割を体 系的に理解して いるかを問うこ と を 基 本 と す る。問題選択に 当たっては、我 が国の児童福祉 の理念・制度の 体系を概括的に 理解しているか と い う 点 の ほ か、児童及びそ れをとりまく環 境の状況、児童 福祉従事者の状 況、児童福祉に 係る相談援助活 動の点について も留意する必要 がある。 1 児童福祉の意義とその歴史的展開  (1)児童福祉の概念  (2)児童福祉の理念  (3)現代社会と児童 2 わが国の児童福祉に関する制度と福祉機関・施設  (1)児童福祉に関する法律  (2)児童福祉の制度  (3)児童福祉の機関  (4)児童福祉の施設  (5)児童福祉の費用 3 児童福祉の現状と課題  (1)少子化と子育て支援サービス  (2)健全育成  (3)母子保健  (4)保育  (5)養護と虐待の防止  (6)障害児  (7)少年非行・情緒障害  (8)ひとり親家庭  (9)現代の児童福祉の課題と展望  (10)諸外国の現状 4 児童福祉の実践と児童福祉従事者  (1)児童福祉の専門職  (2)児童福祉の専門援助技術  (3)児童福祉サービス関連機関との連携 5 相談援助活動 小児栄養 小児栄養の基本 的理論を体系的 に理解している か、特に保育の 実際との関連に おいて実践的な 知 識 ・理 解 と なっているかを 問うことを基本 とする。 1 小児の健康な生活と食生活の意義  (1)小児の心身の健康や生活と食生活の関係  (2)家庭・地域における食生活の実態と小児の食生活 2 小児の発育・発達と食生活  (1)身体発育・精神運動機能発達と栄養・食生活  (2)食べる機能・消化吸収機能発達と栄養・食生活 3 栄養に関する基本的知識  (1)栄養素、栄養生理、代謝に関する基本的知識  (2)栄養所要量の意義とその活用  (3)小児の集団生活と献立作成・調理の基本  (4)栄養状態の評価 4 妊娠・授乳期の食生活  (1)妊娠のメカニズムと正常な妊婦の食生活  (2)母乳分泌と母乳分泌促進の食生活  (3)妊娠・分娩の異常と食生活  (4)胎児と食生活 5 乳児期の食生活  (1)乳児期の心身の特徴と食生活の関係  (2)乳汁栄養(母乳栄養・人工栄養・混合栄養)  (3)離乳の意義とその実践  (4)乳児期の栄養上の問題と健康への対応 6 幼児期の食生活  (1)幼児期の心身の特徴と食生活の関係  (2)幼児期の食生活の特徴とその実践  (3)間食の意義とその実践  (4)幼児期の栄養上の問題と健康への対応 7 学齢期・思春期の食生活  (1)学齢期・思春期の心身の特徴と食生活  (2)学齢期・思春期の具体的な食生活  (3)学校給食と栄養教育 8 小児期の疾病と食生活  (1)小児の疾病の特徴と食生活  (2)摂食障害と食生活のあり方  (3)症状別の食生活  (4)食餌療法  (5)不適切な食生活と健康障害 9 障害をもつ小児の食生活  (1)障害の特徴と食生活  (2)障害児の食生活の実際 10 児童福祉施設における食生活  (1)児童福祉施設の特徴と食生活の基本  (2)児童福祉施設の給食の基本的方針  (3)食事による健康障害とその予防  (4)栄養・食生活に関する教育や指導 発達心理学 発 達 の 基 本 原 理、胎児期から 老人期までにお ける発達期の特 徴及び各々の発 達段階における 心 理 構 造 の 特 質、乳幼児期に おける発達援助 のあり方、特に 保育の実際との 関係において十 分に把握できて いるかを問うこ と を 基 本 と す る。 1 発達心理学の方法と考え方  (1)何のために発達心理学を学ぶか  (2)一人一人の子どもの発達を正確にとらえる必要性  (3) 人間の発達を「ライフサイクル」的な視点か らとらえた「発達段階」 2 初期経験の重要性  (1) 知能・性格・感情の基本を形成する乳幼児期 の経験  (2) 野生児の事例、動物実験の事例からみた発達 の課題 3 発達期の特徴  (1)胎児期  (2)新生児期  (3)乳児期  (4)幼児期  (5)児童期  (6)青年期  (7)成人期から老人期 4 乳幼児期における発達援助のあり方

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表 1(つづき).筆記試験科目の出題内容 出題の基本方針 出題範囲 出題の基本方針 出題範囲 精神保健 発達段階及びそ の特質を基本的 に 理 解 し た 上 で、それから外 れた行動を示す 児 童 に つ い て、 正しい理解と取 扱いができるか ど う か 、ま た、 保育等の実際と 関連して精神保 健の意義及び目 的を理解してい るかどうかを問 うことを基本と する。 1 小児の精神機能発達と精神保健  (1)精神発達と脳神経系器官の成熟  (2)心の健康に影響する要因 2 小児の生活環境と精神保健  (1)家族関係と小児期の精神保健  (2)文化・教育環境と小児期の精神保健  (3)社会環境と小児期の精神保健 3 小児各時期の精神保健  (1)身体と精神保健の関係  (2)乳児期の精神保健  (3)幼児期の精神保健  (4)学齢期の精神保健  (5)思春期の精神保健  小児の心の健康障害  (1)小児各時期の精神障害の特徴  (2)心の健康障害と小児の養育のあり方 5 小児期の精神保健活動  (1)精神医学と保育の連携  (2)子育て支援対策と心の健康づくり  (3)児童福祉施設における心のケア  (4)地域精神保健活動と保育 教育原理 教育に関する基 礎的概念、教育 活動における実 践原理を体系的 に理解している かを問うことを 基本とする。 1 教育の意義、目的及び児童福祉との関連性  (1)教育の意義と目的  (2)教育と児童福祉の関連性 2 教育の基礎的概念と諸理論  (1)諸外国の教育理論  (2)日本の教育理論  (3)幼児教育の理論 3 教育の歴史  (1)諸外国の教育史  (2)日本の教育史  (3)子ども観と教育観の変遷 4 教育の制度  (1)教育制度の基礎  (2)教育法規・教育行政の基礎  (3)諸外国の教育制度 5 教育の実践  (1)教育の内容  (2)教育の方法  (3)教育指導の原理と形態 6 生涯学習社会における教育  (1)生涯学習の基礎  (2)生涯学習社会における教育 7 現代の教育問題 保育原理 保育所の保育を 体系的に理解し ているかを問う ことを基本とす る。問題選択に 当たっては、地 域 の 子 育 て 支 援や多様な保育 ニ ー ズ へ の 対 応、保育サービ スの評価、家庭、 地域との連携な ど保育を巡る現 代的課題に関し ても配慮が必要 である。 1 保育の本質  (1)保育の意義とその思想  (2)保育の目標  (3)子どもの発達特性  (4)保育の原理 2 保育の場  (1)家庭  (2)保育施設  (3)家庭的保育  保育の歴史と現状 4 保育所保育の原理  (1)保育の特性  (2)保育の目標  (3)保育の方法  (4)保育の環境 5 保育所保育の内容  (1)保育の内容構成の基本方針  (2)ねらい、内容、領域 6 保育所保育の計画  (1)保育の計画作成上の基本的視点  (2)保育計画と指導計画  (3)保育の計画作成上の留意事項 7 発達過程区分の保育の内容と指導計画  (1)3歳未満児の保育の内容と指導計画  (2)3歳以上児の保育の内容と指導計画 8 保育所の健康・安全上の留意事項  (1)健康上の留意事項  (2)安全上の留意事項 9 多様な保育ニーズへの対応上の留意事項  (1)入所児童の多様な保育ニーズへの対応  (2)地域における子育て支援 10 子育てに関する相談援助活動  (1)「家族」における現代的課題と支援  (2)子育て支援ニーズと相談援助活動  (3)相談援助の基本原則  (4)保育所における相談援助活動  (5)地域における相談援助ネットワーク 11 保育サービスの評価と苦情解決  (1)保育サービスの評価  (2)保育サービスに対する苦情解決  (3)職員の研修と資質の向上 12 家庭、地域との連携  (1)保育における連携の意味  (2)家庭との連携  (3)幼稚園との連携 13 保育士の資質と任務 養護原理 保育所以外の児 童福祉施設にお ける児童処遇に 関して、体系的 に理解している かを問うことを 基本とする。 1 児童養護の概念  (1)家庭や社会の役割  (2)社会的養護を必要とする子どもたち  (3)児童養護の歴史  (4)児童養護の体系    家庭、施設、里親 2 施設における児童養護  (1)施設養護の特質  (2)施設養護の基本原理    個別化、親子関係の尊重と調整、集団の活用 3 施設養護の実際  (1)日常生活及び自立に向けての援助  (2)治療的・支援的援助  (3)親子関係・学校・地域などとの関係調整 4 児童福祉施設の運営・管理と援助者  (1)援助(養護)の理念  (2)児童福祉施設の運営・管理  (3)児童福祉施設援助者としての資質  (4)個別援助技術や集団援助技術などの専門援助技術  (5)スーパービジョンとチームワーク  (6)倫理の確立 5 今後の課題 保育実習理論 保育等に関する 教 科 全 体 の 知 識・技能を基礎 とし、これらを 総合的に実践す る応用力を問う ことを基本とす る。保育実習理 論 に つ い て は、 保育原理と比べ て具体性のある 出題とする。 1 保育所保育  (1)保育の計画  (2)保育形態  (3)デイリープログラム  (4)保育内容    ア 健康 イ 人間関係 ウ 環境 エ 言葉 オ 表現  (5)生活指導    ア 基本的生活習慣 イ 安全教育 ウ 社会性の涵養 2 入所施設の処遇  (1)乳児院の養育  (2)児童養護施設の養護  (3)肢体不自由児施設、知的障害児施設等の療育  (4)その他の児童福祉施設の処遇 (出典;厚生労働省 web の「保育士試験出題範囲」を一部省略して作成)

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験は、1 科目ごと各 50 点満点で 1 セットが 100 点満点になるようになっている。どの科目も 6 割以上の正解でその試験が合格となり、セット になっている試験はどちらの科目も 6 割以上の 正解が求められる。 また、1 年目の受験で合格した科目は、2 年目、 3 年目の受験では免除される。つまり、1 発合 格しなくとも、3 年間のうちにバランスよく合 格を重ねて取得する方法もあるのである。 一方、実技試験は、筆記試験のすべてに合格 した者についておこなわれる。「音楽」と「絵 画制作」、「言語」の 3 分野からあらかじめ出題 され、そのうちのふたつを選択して受験をする。 平成 22 年は、「音楽」の課題曲が『とんでった バナナ』と『ちょうちょう』の 2 曲の弾き歌い で、幼児に歌って聴かせることを想定しての実 技であった。「絵画制作」は、『保育所(園)で の子どもたちと保育士との活動の一場面を表現 する。』という課題で、色鉛筆を持参して 45 分 間のうちに制作するものであった。「言語」は、 自分の前にいる 20 人程度の 3 歳児クラスの幼 児に集中して話を聴かせる時間という想定のも と、各自あらかじめ用意をした童話などを 3 分 以内にまとめて話をするというものであった。 1 分野が 50 点満点で、どちらも 6 割以上の得 点であったときに実技試験合格となる。平成 22 年の京都府の実技試験では、「言語」を選択 した者が最も多く、次いで「音楽」、「絵画制作」 の順であった。 例年 8 月上旬の土日に筆記試験が、10 月中 旬の日曜に実技試験がおこなわれる。平成 22 年の京都府では、筆記試験会場が同志社大学の 京田辺キャンパス、実技試験会場が京都文教短 期大学であった。 保育士試験の受験者動向であるが、厚生労働 省の web によると、前年(平成 21 年)の受験 申請者数は、41,163 名であり、最終合格者は、 5,204 名(合格率 12.6%)であった。毎年、科 目ごとの合否の割合や都道府県ごとの動向など 細かなデータは示されておらず、若干不透明な 部分があるともいえる。また、保育士は厚生労 働省の管轄であるが、社団法人全国保育士養成 協議会が全国都道府県の 保育士試験 指定機 関として全面実施している。よって、受験の手 引きの取り寄せなどは協議会の web を参考に すると良い。 斉藤・吉見(2001)は、当時(平成 12 年)、 各都道府県でおこなわれていた保育士試験科目 を用いて保育所所長等にアンケート調査をする ことにより、保育士に求められる専門性を試験 科目ごとに分析した。その結果、現場の保育者 が最も必要であると感じている科目は【児童心 理】であった。当時の科目構成であるので、今 現在は置かれていないが、【発達心理学】や【精 神保健】に通じるものがあるであろう。また、 この調査での調査対象者の属性において、保育 士資格を取得した方法の内訳が示されていた。 保育士の養成校で所定の単位を取得したものは 69.6%、各都道府県の保育士試験に合格したも のが 26.8%、そのほかが 3.6%であった。対象 者は、保育園の園長もしくは主任などの現場で も指導的立場にいる人たちである。そのような 人たちのなかにも保育士試験による資格取得者 が活躍していることからも、保育士試験の重要 性がうかがわれる。 2)保育士に求められている資質 永井・松田・加藤・林・佐伯(2003)は、保 育士と幼稚園教諭の虐待に対する関心と認識の 高さについて調査した。その結果、いずれも虐 待に対する関心は高いものの、必ずしも正しい 認識には結びついていないことが明らかとなっ た。ただし、保育士のほうが幼稚園教諭に比べ 被虐待児の保育経験が高く、虐待の認識の割合

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も高かった。このことから、保育所・幼稚園と も就学前の子どもたちを預かる施設であったと しても、その質の違いから、保育所のほうが福 祉的にも心理的にも困難さを抱える子どもたち が多く存在していることがみえてくる。 早坂(2007)は、の現場の保育士へインタ ビュー調査をおこない、保育現場の「気になる 子」のなかには、発達障害だけではなく、愛着 の問題や環境要因による関係性の障害の徴候を 示す子が存在していることを確認した。しか し、保育士は「気になる子」と捉えているもの の、そのような子どもたちに適切な対応をとっ ていない可能性が示唆された。これは、積極的 に とっていない というより、それに関する 知識を持ち合わせないために適切な対応が と れない ということかもしれない。 浅見(2000)は、「園長が望む保育者の資質」 と「現任保育者の求める保育者の資質」につい て、それぞれ幼稚園園長と現任の幼稚園教諭に 対し、自由記述の調査をおこなった。前者の結 果では、①学識・研究的態度(31%)、②人格・ 人柄・性格など(24%)、③子どもへ向かう姿 勢(12%)、④健康・健康的(11%)、⑤社会常 識・マナー(7%)などが挙げられた。後者の 結果では、①子どもとの関わり(33%)、②明 るい(14%)、③健康・元気(10%)、④優しさ (8%)、⑤知的センス(7%)、前向きな姿勢(7%) などが挙げられた。幼稚園園長は、教育的な社 会人としての資質を、また現任の幼稚園教諭は、 はつらつとした母性的な資質を求めているよう である。 矢持・白石・村上・富田・谷川・坂之上 ・伊藤・ 近藤・野田・管田(2003)は、4 年制大学での 幼稚園教諭や保育士養成について、現場(山口 県内の保育園・幼稚園)の人たちが 4 年制大学 卒を求めているかどうかを調査した。その結果、 採用について幼稚園・保育園ともに賛成が 7 割 近くを占めた。つまり、4 年制養成校卒業者の 採用については公立・私立園ともに賛成傾向に あり、採用の条件としては、知識・技術的な面 よりも、仕事に対する意欲や情熱、周りの職員 との協力、協調性を重視する傾向がみられたの である。また、県の保育士試験や通信教育等で の資格取得の採用は、幼稚園では公立・私立園 ともほとんどないが、保育園においては公立・ 私立を問わず 4 年制養成卒業者とほぼ同数で採 用されていた。  江田(2007)は、現場の保育士や養成大学の 学生に「保育士に求められる資質能力」として 10 領域を設定し、調査をおこなった。その結果、 「子どもへの思いやりや願いを的確に捉える洞 察力」、「子どもの成長・発達に関する理解」、「子 どもへの愛情」、「保育士としての使命感」など が見いだされた。これらのうちのはじめのふた つについては、児童心理・発達心理をベースに した資質ともいえるであろう。さらにいえば、 そのような能力はノーマルな子どもたちを観察 する力というよりも、 気になる子 と呼ばれ るような子どもたちにこそ発揮されることが期 待される能力でもあり、臨床心理とも密接に結 びついているといえよう。 藤村(2010)は、保育士として学力や技能は 重要な資質としながらも、実際の乳幼児の保育 や教育の現場においては、これらの技量がどの ように生かされるかは技量以外の個人のパーソ ナリティ特性のあり方に依存すると考え、保育 者適性尺度を作成した。その結果、7 つの下位 尺度(『愛他性』、『共感性』、『論理的思考性』、 『気働き』、『社交性』、『行動力』、『養育性』)が 見いだされた。なかでも、保育士養成系の大学 での調査データでは、『共感性』の得点が最も 高かった。共感できる能力はいわずもがな、カ ウンセラーにとっても大切な資質のひとつとし て挙げられる。

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田村・浜崎・岩崎・荒木(2004)は、さまざ まな子育て支援活動が実際に保育者自身にとっ て望ましい影響があると認識されているのか否 かという問題に注目し調査をおこなった。その 結果、「園舎・園庭の開放」や「子育て情報の 提供」、「未就園児への保育サービス」などの活 動を押さえて最も望ましい影響があると認識さ れていたのは、「育児相談」であった。「育児相 談」によって、保育者自身の子ども理解、保護 者との関わり、家庭との連携において望ましい 影響があると比較的強く認識されているという ことである。これは、まさに保育者がカウンセ リングの技術を持っていてこそ生かされるとい えるだろう。 これらのことから、保育士に求められている 資質は、現代の家庭環境や子どもの状態などを 踏まえ、臨床心理学との関連が深いといえる。 具体的には、特別支援や心理面での正しい知識 を持ち子どもを見立てることができること、子 どもや保護者の内面に丁寧に向き合うことがで き、愛情を持って接することができることが明 らかとなったといえるであろう。幼稚園教諭や 小学校教諭は、集団を相手にすることを前提と している免許である。つまり、対象がまずはク ラス運営などの集団なのであるが、保育士は、 あくまで個人を相手にする資格である。そこの ところでも、臨床心理士と共通するものがある であろう。また、先行研究では、保育所(園) を現場としている保育士について、このような ことが見いだされたが、さらにいえば、他の児 童福祉施設(児童厚生施設・児童養護施設・児 童自立支援施設・児童家庭支援センター・助産 施設・乳児院・母子生活支援施設・知的障害児 施設・知的障害児通園施設・盲ろうあ児施設・ 肢体不自由児施設・重症心身障害児施設・情緒 障害児短期治療施設)に勤務する保育士こそ、 これらの資質がより求められる職場であるとい えるのではないだろうか。

Ⅱ.保育士勉強会と質問紙調査

1)勉強会の立ち上げの動機と運営状況 今年度に入ってすぐ、ゼミなどを通して筆 者の周りの学生たちが保育士の資格に関心が高 いことが見受けられた。保育士試験を受けよう とする学生がいるのは例年のことと変わりない が、「受けてみたいのだけれど、どのように勉 強したらいいか分からない」というとまどいの なかにいる学生もちらほらいた。一方で、昨年 度末に学内でおこなわれた保育士資格取得のセ ミナーに参加した学生などは、着実に受験モー ドに入っており、頼もしい存在であった。筆者 は、これはおもしろいと思いついた。紀貫之風 にいうとするなら 学生のすなる保育士試験と いうものを教員もしてみんとてすなり 。自ら も受験生となって保育士試験のための勉強会を 立ち上げ、彼らをつなごうと考えた。もちろん、 筆者も全く受験態勢ゼロの地点にいる人間であ る。ただ、受験勉強のスタート地点に違いのあ る者たちを集めたら、すでに勉強している者た ちが最初はリードしてくれるに違いない、その 手本を見ながら、お互いに切磋琢磨できるよう な勉強会を運営していこうと考えたのである。 筆者の担当する各学年のゼミ生を中心に声かけ をし、今年(2010 年)の受験を考えている学 生たちを集めた。なかには、勉強会が始まって から、その存在を伝え聞いて参加を希望する他 ゼミの学生もあったり、途中までは受験しよう と思っていたものの願書の取り寄せに間に合わ なかったり、就職活動などで今年の受験は見合 わせようとした者などもあって、若干の変動は あった。学年も、学部の 3 回生から大学院のマ スター 2 回生まで幅があり、一堂に会して集ま ることのできる時間帯を設けるのは困難であっ

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た。よって、8 月の試験までの勉強会スケジュー ルをまずはじめに話し合って決め、週に 3 回程 度の時間を設け、集まれる人たちで集まって進 めるようにした。隔週の勉強会では、担当者 を決めて、その科目の問題を作成し解説もおこ なってもらった。問題や解答のプリントは、参 加の人数にかかわらず、メンバー分コピーして 準備してきてもらい、それらのプリントは、欠 席したメンバーにも後日配布できるようにし た。また、メーリングリストを作成し、勉強会 の運営に用いたり、情報交換をしたり、士気を 高めるためにやりとりができるようにしたりし た。 2)調査の目的 勉強会のメンバーとして、ともに受験した学 生たちの保育士試験に臨む動機や目的を明らか にする。また、彼らの受験体験についてまとめ、 臨床心理学専攻の学生が保育士を取得すること について考察する。 3)調査の方法 ①調査方法 質問紙調査法による。 ② 調 査 時 期  保 育 士 試 験 が す べ て 終 了 し た 2010 年 12 月上旬 ③調査対象者 おもな勉強会のメンバーであっ た 12 名の学生に配布し、回収できたの   は 10 名であった(男性 2 名、女性 8 名)。10 名のうち 2 名は 2 年目の受験であった。 ④調査内容 筆記の 10 科目について、それぞ れ「大いになじみがある」(7 点)から「全 くなじみがない」(1 点)まで 7 件法で評定 してもらった。また、「受験の動機」、「資格 取得の計画」、「試験科目の得意・不得意」、 「2010 年筆記試験の感想」、「勉強会の感想」、 「本学科の学生が保育士を取得することにつ いての意見」、「保育士以外の関心のある資格 について」をおもに自由記述でたずねた。な お、本調査以前の段階で各メ  ンバーの試 験の合否科目については聴き取り済みであっ た。 4)結果と考察 まず、10 科目についてのなじみのある程度 を評定してもらった結果について、各科目ごと の平均値を図 1 に示した。【発達心理学】は満 点(7 点)を示し、ついで【精神保健】が 6.7 点であった。やはり実際に学部の授業科目とし て組まれている科目であるので、なじみがあ るといえるのであろう。この 2 科目は、先述し た斉藤ら(2001)から考えると、現場の保育者 たちが最も必要であると感じている科目群で ある。よって、本学科の学生たちは保育現場の ニーズにも応えうるといえるであろう。ほか、 中央値を超えたのは、【児童福祉】のみであり、 残りの科目はほとんど中庸に位置していた。た だ、【小児栄養】は目立って低く(2.1 点)、最 もなじみがない科目であることが明らかとなっ た。筆者は、非常勤で通信制の大学生にカウン セリング心理学を教えているが、学生のなかに は栄養士の資格を持って仕事をしている者が多 くいる。彼らからみると、カウンセリング心理 図 1.試験科目のなじみのある程度

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学は、 栄養カウンセリング という分野でも なじみがあり、決して疎遠な専攻同士ではない ともいえる。今後、栄養学についても食育・摂 食といった形での臨床心理からのアプローチを 試みれば、より本学科の学生たちにも親しみが もてるかもしれない。 以下、質問項目ごとに結果を示し、筆者の体 験も含めた考察を述べる。 「受験の動機」 『将来子どもと関わる仕事に就きたいと考え たとき、保育士の資格が必要だと思ったから』(6 名)が最も多かった。職場として保育所を希望 する者も 1 名いたが、多くは、その他の児童福 祉施設での就職を希望していた。また、臨床心 理士とダブルで取得することで進路の可能性を 広げたいと考えている者もいた。 『保育士は保育所で働くときだけに必要な資 格』と受け取られがちだが、臨床心理を学び、 その他の児童福祉施設での就職にも保育士資格 が役に立つと知ったときに資格取得のモチベー ションがアップするように考えられた。 「資格取得の計画」 今年の受験が 1 年目でも 2 年目でも、『来年 には取得したい』と考えている者が最も多かっ た(8 名)。 もちろん、受験前には今年のうちに資格取得 しようと考えていた者がほとんどだったように 思う。だが、まだ学生の期間が残っていたり就 職までに猶予があったりする場合には、その期 間を最大限に生かし、計画的に取得しようと考 えているものと思われる。 「試験科目の得意・不得意」 得意な科目・苦手な科目については、図 2, 3 の通りであった(複数回答あり)。 得意科目の【発達心理学】や【精神保健】に ついては、『大学の授業で勉強したから』とい う理由が多く、【児童福祉】については、『もと もと関心がある分野で学習しやすかった』とい う理由であった。苦手科目は 6 割が【小児栄養】 であった。『全くの専門外』、『暗記すべき事項 が多すぎるため』という理由で挙がっていた。 実際の試験会場でも、【小児栄養】の時間だけは、 机や椅子が増え、受験生が非常に多かった記憶 がある。臨床心理学科の専攻だからというだけ でなく、なかなかクリアしにくい科目として存 在しているともいえるのではないだろうか。 「2010 年筆記試験の感想」 『問題集や過去問とは全く違う傾向のものが 出たり、細かすぎたりしたので戸惑った』、『マー クシート方式なので、ある意味、運のようなも 発達心理学 37% 児童福祉 27% 社会福祉 18% 保育原理 9% 精神保健9% 小児栄養 60% 社会福祉 20% 小児保健 10% 保育実習理論 10% 図 2.得意科目 図 3.苦手科目

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のも関わってきているように感じ恐ろしかっ た』、『夏の暑い時期だったので過酷だった』、『あ と 1 問で合格のものばかりで悔しい』といった 大変さを味わった感想が多かったなか、『少な い時間のなかでも半分合格できたし、得られた 知識も多かったので、結果的には良かった』、『勉 強会メンバーとみんなで受けた感じがあって良 い思い出』、『簡単だった』というポジティブな 感想も持たれていた。『久々に全力で勉強した ので達成感がすごかった』という感想もあった が、筆者は達成感というより、消耗が激しく 2 日間で疲労困憊してしまった。全科目を受験す る人は 1 年目のときしかほとんど無いだろう が、体力勝負のところもある。実際の試験内容 は、感想にもみられたとおり、ちょっとひねっ た出題の仕方がされていたり、細かすぎて混乱 するような問題が多かったように思う。大きな 会場だったため、筆者は 2 日間ともメンバーに はひとりも会えなかったが、それでも一緒に受 験している仲間がいる心丈夫さが支えになって いたように感じている。 「勉強会の感想」 まずは、『勉強内容が頭に入り、とても良かっ た』、『分からないところを聞く相手がいたので 助かった』、『勉強会そのものにはなかなか出席 できなかったが、プリント類がもらえて多くの 問題を解くことができた』といった学習面での 感想が聞かれた。各回の担当の学生が、どこが 重要で重要でないか、何をどのような形式で覚 えると良いかについて教えてくれると、その科 目内容が図と地の関係のように浮かび上がって くる。そのおかげで勉強の仕方が分かり、ひと りでも勉強を進められたということがあったで あろう。また、どの学生も自分の本分と並行し ながらセカンドで勉強しているのであるから、 いずれかの科目を担当して勉強会をリードする 役回りは、相当な負担だったであろう。しかし、 その役回りを積極的に担当することで、その科 目を熱心に勉強することにもつながり、結果的 にはその人の自信につながっていったように思 われる。また、『情報交換したり、お互いに励 まし合えたことで救われた』、『ひとりだとつい 怠けてしまったりするが、一緒に頑張っている 人がいるとすごく励みになった』、『心強いしモ チベーションが上がった』といった精神面で支 えになったという感想が聞かれた。筆者自身の ことについていえば、特に【保育実習理論】で の音楽の知識がなく、テキストを読んでも全く 頭に入らなかった。しかし、ピアノの得意な学 生に丁寧に教えてもらったおかげで理解するこ とができ、その後からは、逆に得意分野のひと つになったくらいであった。時間割がそれぞれ 違い、いつも少人数での勉強会であったが、出 られないことや出なくてはならないことを負担 に思うのではなく、そのような場を積極的に活 用しようと考えることで、勉強会の意義は大き かったように思われる。 「本学科の学生が保育士を取得することについ ての意見」 後進の学生たちにエールを送る意見が多く、 ここにすべて記載する。 『保育士の資格を取ることはよいと思う。子 ども全体のことについて学べ、より深い理解が できる』、『心理をやっていて子どもと関わりた いという学生は、保育士をとっていると動ける 範囲が一気に広がると思う。教員免許でも良い かもしれないが、福祉領域の場合、また、学部 卒で就職しようという人にとって、とても有効 な資格だと思う』、『臨床心理学の専門性を発揮 できる場として、子どもに関わる職場はたくさ んある。そういう場で働きたいと思っている学 生にとって、保育士の資格を取っておくことは 知識を増やす意味でも大事なことだと感じる』、 『子どもに興味がある人は是非挑戦して欲しい

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と思う。PSW の関連科目や臨床心理学を学ん だ人が保育士資格を持つことで、子どもとより 関わることができ、社会の役に立つことができ ると思う。国家試験と聞くとすごく難しく思え るが、意外にそんなこともないので挑戦してみ る価値は大ありだと思う』、『子どもの心もとて も複雑な世の中なので、保育士として仕事をす るときに臨床心理学は大きな武器になると思 う』、『ストレス社会のなかで、今後も臨床心理 を学んだ保育士は必要になってくると感じる』、 『今回知識を得たことが、実際の臨床場面でも 生かせるのではないかと考えている』、『保育を 学ぶことで心理に生かせるし、またその逆もあ ると思う。保育士を取得する人が増えていけば いいなと思う』 以上から、臨床心理学を専攻していることで 得られた視点が、よりよい保育につながるとい う思いが、それぞれの学生に強くあることがう かがわれ、そのような質の高い保育士を目指そ うとしているところに彼らのモチベーションの 高さがあることが明らかとなった。 「保育士以外の関心のある資格について」 保育士以外の資格・免許で関心のあるものを 複数回答してもらった結果を図 4 に示した。京 都文教大学・大学院で取得・養成可能をうたっ ている「認定心理士」、「臨床心理士」、「精神保 健福祉士」が上位に挙がった。しかし、学生た ちは決して資格マニアというのではなく、あく までも必要なものを取得したいと考えているの であり、『保育士以外なし』と答えた者も 2 名 あった。 はじめに資格ありき の大学教育で は、学生たちも進路に迷うことなく当然のよう に資格取得に励むかもしれないが、彼らのよう に専攻を通して改めて必要な資格に気づき、自 分たちで主体的に挑戦するというのはごく自然 なスタイルで、望ましいあり方といえるのでは ないだろうか。 なお、実際の試験の合否については、2 年目 受験の 1 名が筆記試験をすべてパスし、次の実 技試験も合格して、めでたく今年のうちに資格 を取得した。しかし、それ以外のメンバーは、 まずは筆記試験科目のいくつかの合格を獲得し た形となった。プライバシーに関わるのであま り詳細には報告しないが、なかでも【発達心理 学】と【小児保健】は合格者が多かった。【小 児栄養】は、例年に劣らず非常に難解さを増し、 突破した者はごく少数に留まった。筆者はと いえば、その【小児栄養】で 問 16 が『選択肢 Aが曖昧な表現であることから、受験者全員を 正解とします。』という処置があったおかげで、 なんとか 6 割をとることができ、実技試験も勉 強しあえる仲間がいたおかげで合格することが できた。

Ⅲ.総括

合格したものの、ではすぐに保育園などで保 育士として勤める技量が備わっているか、とい うと、とてもそのような自信はない。というの は、実習をおこなっていないからである。ここ まで保育士試験の良い点を中心に述べてきたよ うにも思うが、保育実習が明らかに欠落してい 認定 心理士, 4 臨床心理士, 3 精神保健 福祉士, 3 社会福祉士, 3 小学校教諭 免許, 2 幼稚園教諭 免許, 1 産業カウン セラー, 1 図 4.関心のある資格 ・ 免許

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ることも明記しておかねばならないだろう。逆 に養成学校であれば、実習にこそ重きを置いて 丁寧な指導がなされるのであろう。実際に資格 を持って務めるとなると、採用試験という関門 がある。そのときに保育士試験で通過した者ほ ど、ボランティアやアルバイトなどで場数を踏 み、現場を知っておくことが求められるであろ う。 以上、保育士養成系の大学における学生やカ リキュラムについての研究が多いなか、見過ご されがちな保育士試験のほうに焦点を当て試験 内容や受験生について、特に臨床心理学との関 連から考察した。保育士に求められる資質とし て、子どもを見立てる力や子どもや保護者の心 理を理解することができることが見いだされ、 臨床心理学との関連の深さが浮き彫りになっ た。本学部の学生たちが、保育士受験に臨むの はもっぱら進路のためであり、臨床心理学の知 識も兼ね備えた、より質の高い保育士を目指し ていることが明らかとなった。 福祉的視点にたつ保育士と教育的視点にたつ 幼稚園教諭という立場の違いもあるが、これら の保育者に心理的視点も加えられたら、確かに よりよい保育が目指せるであろう。もちろん、 保育所・幼稚園にも保育カウンセラー・キンダー カウンセラーという形で、心理士が参入してい くことがこれからさらに望まれるところであ り、筆者も大いに期待している。しかし、その ような専門家を上手に活用できるのも、保育者 に心理的視点があってこそといえるであろう。 保育士が、保育現場で醸成してきた技量や 保 育士らしさ を損なうことなく、今を生きる子 どもたちのニーズに見合った対応を臨床心理士 とともに構築していけるのが理想である。 一方で、今回筆者は受験をして改めて、子ど もに関するあらゆる法律や行政がおこなってい る制度・置かれている施設などについて知識を 蓄えることができた。さすが保育士は、国家資 格でもあり、また臨床心理士より長い歴史のあ る職域ならではのことがあると感心した。子ど もに関わる臨床心理士なら、独学でもこれらの 知識は是非身につけておきたいと思うものばか りであったし、今後、大学教育・大学院教育の なかで学生たちに還元していきたいと考えてい る。 筆者は、教員という立場にありながらも、勉 強会の講師の力量はまるでなく、会を運営する だけで精一杯であった。学生たちが、それぞれ 目的を持って同じ試験に臨む態度が本当にピュ アで、受験勉強の間にも彼らの成長を感じ、頼 もしい存在であった。試験の合否はともかく彼 らのがんばりを遺し、後進に伝えたいという思 いで執筆した。先述した「本学科の学生が保育 士を取得することについての意見」と同様、筆 者も本学部は、いわゆる保育所(園)のみなら ず、それ以外の児童福祉施設で勤務できるよう な学生を充分に輩出できる素地をもっていると 考える。これから、本学部は転換期を迎えよう としている。展開期といってもよいかもしれな い。それは、大学としての将来構想からの発信 であるが、その影には、先輩学生たちのこのよ うな密やかな挑戦が(今年に限らず、これまで も脈々と)あったことを忘れたくない。  謝辞 保育士試験勉強会の仲間たちに感謝します。 また勉強会開催にあたりましては、本学教育支 援課のご支援もいただきました。あわせて感謝 申し上げ、本論文をもってご報告に代えさせて いただきます。 文献 浅見均 2000 保育者の資質に関する一考察 青山 学院短期大学紀要 54, 121-150.

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江田美代子 2007 保育士に求められる資質能力に 関する調査研究 宮崎女子短期大学紀要 34, 31-46. 藤村和久 2010 保育士,幼稚園教諭を目指す学生 のための保育者適性尺度の構成 大阪 樟蔭女子 大学人間科学研究紀要 9, 129-143. 早坂佳恵 2007 保育園における「気になる子」の行 動及び保育士の対応についての臨床 心理学的考 察−アタッチメント理論の視点より −北海道 医療大学心理科学部研究紀要 3, 151. 笠原正洋 2004 保育園児の保護者が子育ての悩み を保育士に相談することに何がかかわっている のか 中村学園大学・中村学園大学短期大学部 研究紀要 36, 25-31. 永井晶子・松田博雄・加藤英世・林幹康・佐伯裕子  2003 子どもの虐待に対する保育士・幼稚園 教諭の意識と対応に関する研究 杏林医学会雑 誌 34(4), 391. 斉藤裕・吉見昌弘 2001 保育者に求められる専門 性に関する研究−現場の保育者に求められる専 門性と保育士試験科目の比較検討− 日本保育 学会大会研究論文集 54, 786-787. 田村隆宏・浜崎隆司・岩崎美智子・荒木美代子  2004 子育て支援活動の影響に関する保育者の 認識−保育者に対する影響を中心に− 鳴門教 育大学研究紀要 教育科学編 19, 91-100. 矢持九州王・白石正子・村上玲子・富田輝美・谷川和子・ 坂之上智子・伊藤順子・近藤鉄 浩・野田令子・ 管田貴子 2003 4 年制大学での幼稚園教諭・保 育士養成は求められているか(3);幼稚園・保 育園の採用についての意識調査 日本保育学会 大会研究論文集 56, 872-873. URL 厚生労働省 web 第 4 回保育士養成課程等検討会参考 資料 4(平成 22 年 2 月 9 日 ) http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0209-7j.pdf 厚生労働省 web「保育士試験の実施について」の 一 部 改 正 に つ い て( 平 成 2 1 年 1 1 月 9 日 )   http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/ T091106N0030.pdf 社団法人 全国保育士養成協議会 http://hoyokyo.or.jp/

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Abstract

A Study on Earning the Qualification of Hoikushi for

Clinical Psychology Majors

Mayumi MITSUBAYASHI

Hoikushi is a national qualification for skilled nursery teachers in Japan. There are two ways to get this qualification: one is by completing a graduate course, the other by taking a national examination. The students in this department become qualified by taking the examination.

In this paper, the writer first introduces the contents of the exam and discusses the nature of the nursery works as well as the relationship between the nursery teacher and clinical psychology.

The Hoikushi Examination consists of a written test and a practical test. The written test contains 10 content-rich subjects. The quality which is necessary to Hoikushi has been found to be able to get the clinical judgment of children and to understand the psychology of children and parents. Moreover, the close relationship between Hoikushi and clinical psychology has been clarified.

Recently, the writer started a study group for helping students to get the qualification of Hoikushi and students worked hard to learn. After the examination, they cooperated in the investigation by questionnaires. As a result, they were neither familiar with "Child Nutrition," nor were they good at it. But they were familiar with "Developmental Psychology" which was a favorite subject for them. The purpose for students of this faculty to pass the examination is to find employment. They are aiming at a higher quality nursery teacher with the knowledge of clinical psychology.

It is recommended that anyone who works with children should take the Hoikushi examination. It is very preferable in the future that the Hoikushi acquisition becomes possible in our faculty since our department is planning to develop more and more. Though this has been developed by KBU clinical psychology professors, we should not forget those senior students' secret challenges in the shadow.

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