衣服の価値を数字に換算するための
授業方法と可能性
― 小・中・高等学校の家庭科衣生活学習も視野に入れて ―
長 尾 順 子
A lecture method to convert the value of clothing
into numerical values and its potential
― Put in the field of view Home Economics
Education for Elementary, Junior and Senior High School. ―
Yoriko NAGAO
Abstract
In the modern society dominated by fast fashion, the value of clothing perceived by consumers had declined. However, as resources are limited, the importance of recognizing the value of clothing in order to ensure long-term use has become a topic of discussion. Yet, it is not easy to correct the established perception of clothing as cheap. Educational institutions, which foster consumers who will define the future, are searching for lecture methods that could solve such problems.
Thus, in this paper, we attempted to present a new lecture method that allows students to understand the labor that goes into creating clothing through numerical values. Specifically, we hypothesized that having students calculate the manufacturing cost of one skirt would provide them with an opportunity to review the value of clothing, and we put the idea in practice with female university students in Hokkaido Prefecture This method is not limited to lectures in home economics and human life science departments at universities and junior colleges, but can also be practiced in home economic classes at elementary schools, junior high schools, and high schools.
藤女子大学人間生活学部紀要, 第 57 号 1 - 8. 令和 2 年.
The Bulletin of The Faculty of Human Life Sciences, FujiWomen’s University, No. 57: 0-00. 2020.
1.はじめに
地球の環境問題を受けてこれをただ理解するだ けではなく,自ら問題解決に向けて取り組む力を 身に着けた後進の育成が期待されて,家庭科に消 費者教育の視点が加えられたのは,平成元年とさ れる(松葉口,2000)。それから 30 年程経過した 現在においては,環境問題は解決されるどころか, より深刻化し,国際的な問題へと発展している。 この逼迫する問題の解決へ向けて,より主体的に 行動できる生活者の育成が急務であることは疑い ようもない。 衣生活と環境問題に関わる先行研究は数多くみ られる。たとえば,大学生の衣服のリサイクルに 所属 : 藤女子大学人間生活学部人間生活学科表 1 対象とした小・中・高等学校の家庭科の教科書一覧 対象 番号 出版社 教科書名 文科省検定 衣生活学習・消費者教育の内容環境問題の視点からみる 小学校 家庭 501 東京書籍 新しい家庭 平成22年 ・布製品の再利用について・3Rについて 家庭 502 開隆堂 わたしたちの家庭科 平成22年 ・エコ生活について・4Rについて 中学校 家庭 724 東京書籍 新編 新しい技術・家庭 家庭分野 平成27年 ・環境に配慮した消費生活について ・環境に配慮した衣生活について ・3Rについて ・環境に配慮した繊維について ・資源・環境と衣服 ・資源の有効利用について ・衣服の再使用について 対する認識について古着の入手方法に視点をおい た報告(山田・西澤・重田,2004),衣服の資源 循環について,江戸時代からの日本の古着・古布 がどのように活用されてきたかをまとめ,現在 の課題をなげかけた報告(玉田,2015),女子大 学生が環境に対してどう配慮した行動をしている かをエコロジカルマインド評価尺度を用いた報告 (村上・槇尾・川口・増田,2015),行動着用可能 な衣服が廃棄されていることを受け,大学生が不 要となった衣服のリサイクル方法についてどの程 度認識しているかを調査した報告(杉村・松尾, 2017),中学生の衣服の消費行動と環境に対する 意識調査の結果を反映させて,衣服の処分方法や 活用方法を考えさせる中学校家庭科教育における 授業実践の報告(横山・渡邊・夫馬,2018)など がある。これら先行研究のポイントは,大別して 2 つで,1 つは環境問題に配慮した衣服の有効活 用に関するもの,2 つめは消費者教育を軸とした 衣生活学習に関するものといえる。 それでは,これらの研究成果を受けて,教育現 場ではどのような視点から環境問題に関わる衣生 活学習が行われているのだろうか。小学校から高 等学校における家庭科の教科書を 15 冊とり上げ, 環境問題と衣生活学習,あるいは環境問題と消費 者教育に関わる記載内容について抽出し,表 1 に まとめた。ここから読み取れる内容を簡潔にまと めると,先行研究と同様に次の 2 点に集約され る。地球環境の現状について把握し,迫る資源枯 渇の危機に対して警鐘を投げかけ,未来の生活者 としてどのような消費行動が望ましいかその姿勢 や手段をを記したもの,そして限りある資源を大 切にし,いかに不要衣服を有効活用して持続可能 な生活を維持していくかということ,である。こ れら資源の活用方法について具体的にみると,既 製服のリユースやリサイクルといった衣料品の再 資源化についての記載がみられる。さらに高等学 校用の教科書になると,自分と衣服,衣服と環境 といった関係性にとどまらず,世界とのつながり にも触れられるようになり,より俯瞰した学習内 容となっている。これらは家庭科教育においては, 学習者に教えるべき必須の内容として定着してい ると捉えることができる。 以上のような学習内容は,環境問題解決へ向け た後進の育成に必要な学びであることは間違いな い。しかしながら,もう一歩掘り下げて,衣服に 対する価値観が改まるような学び,たとえば衣料 品とは非常に手間をかけられた高価なものである と認識できるような学びが可能であるなら,環境 を配慮した衣生活行動をとるにしても,学習内容 をなぞらえる以上の主体的な行動が期待できるの ではないかと考える。大量生産・大量消費・大量 廃棄が代名詞となったこの現代の消費社会におい て,消費者の衣服に対する価値観は低下した。ひ とたび安価なものとして定着したイメージを元に ただすのは容易ではない。しかし,人類が長期的 な衣生活を確保するためにも,資源の有効活用に ついて学び,その学びを実践するだけではなく, もっと根本的なところから認識を改めるという教 育が可能であれば,学習者にとっても異なる視点 から環境問題解決に向けて行動することができる ようになるのではないだろうか。 そこで本稿では,服作りがいかに労力を要する 仕事であるかを数字で理解できるような新しい授 業方法の提案を試みた。具体的には1着のスカー トを製作するのに必要なコストを学習者に計算さ せることで,衣服の価値に再認識するきっかけを 提供できるのではないかと仮説をたて,北海道の 女子大生を対象に実践をおこなった。
対象 番号 出版社 教科書名 文科省検定 衣生活学習・消費者教育の内容環境問題の視点からみる 中学校 家庭725 教育図書 新・技術家庭家庭分野 平成27年 ・消費生活と環境とのつながり ・環境に配慮した衣生活について ・エコロジーな繊維製品について ・3Rについて 家庭 726 開隆堂 技術・家庭家庭分野 平成27年 ・環境に配慮した衣生活 ・3R,4R,5Rについて ・環境に配慮した繊維 ・衣服と省エネルギー ・消費生活と環境問題 高等学校 家基 311 東京書籍 自立・共生・創造家庭基礎 平成28年 ・資源としての衣服 ・衣料品の再資源化 ・3Rについて ・被服でできる省エネルギー ・LCAについて ・エシカルファッションについて 家基 312 教育図書 新家庭基礎 平成28年 ・衣服と環境 ・LCAについて ・衣服のリサイクル ・環境負荷の少ない植物由来繊維 ・生活と環境 ・低炭素な社会をめざす ・3Rについて ・エシカルファッションについて 家基 313 教育図書 高等学校 家庭基礎 グローバル&サスティ ナビリティ 平成28年 ・資源としての衣服の循環 ・主体的な消費者として ・持続可能な衣生活を目指して ・衣服の3R ・持続可能な社会 家基 314 実教出版 新家庭基礎 パートナーシップで つくる未来 平成28年 ・衣生活と資源・環境 ・ファストファッションの仕組みについて ・エシカルファッションについて ・持続可能な社会環境について 家基 316 実教出版 家庭基礎新図説 平成28年 ・衣生活と資源・エネルギー ・衣生活と環境保全 ・ジーンズのリメイクについて ・フェアトレードについて ・廃棄物の現状 ・循環型社会の構築について ・5Rについて ・地球温暖化について 家基 317 開隆堂 明日の生活を築く家庭基礎 平成28年 ・資源としての被服 ・エシカルファッションについて ・3R,5Rについて ・環境に配慮した小物製作について ・持続可能な消費について 家基 319 大修館書店 新高校 家庭基礎未来をつくる 平成28年 ・環境に配慮した衣生活について ・衣料品のリサイクル・ビジネスについて ・環境問題について 家基 320 第一学習社 新版 高等学校 家庭基礎 ともに生きる・持続可 能な未来をつくる 平成28年 ・衣生活と資源・環境について・環境に配慮した衣生活について ・消費生活と環境問題について 家総 302 教育図書 家庭総合 ともに生きる 明日をつくる 平成28年 ・衣服と環境 ・衣服のリサイクル ・環境負荷の少ない植物由来繊維 ・環境問題について ・循環型社会について ・3R,5Rについて 家総 308 教育図書 新家庭総合 平成28年 ・衣服と環境 ・衣服のリサイクルについて ・エシカルファッションについて ・環境問題について ・3R,5Rについて
2.衣服の価値を数字に換算した授業方法
⑴ 全体像 衣服が出来上がるまでの基本的な工程は,まず, その最小単位である繊維をつむいで糸をつくり, その糸を組み合わせることで布ができ,その布を 裁断し縫製するまである(図 1)。この工程にお いて全体,あるいは一部分でも,どの程度コスト (人件費)がかかっているか算出が可能であれば, 誕生時からファストファッションに慣れている学 生らにとって衣料品の価値を問い直すきっかけと なるのではないかと考えた。ただし授業時間を鑑 みて,今回の実践では繊維の入手と縫製の工程は 省略し,糸と布の生産のみに視点をおいた。具体 的には必要な糸と布製作を手作業とした場合,そ の人件費を学生らがアルバイトから得る時給に近 い金額で算出し,現代日本の学生の金銭的価値観 と照らし合わせて衣服生産を数字に置き換えるこ とを試みた。北海道の女子大学生 49 名を対象に 2019 年度に実践した内容を報告する。 図 1 衣服ができるまでの過程 90 分の講義時間のうち,純粋な作業時間を 30 分ずつもうけ,1 週目には糸をつむぎ,2 週目に は織物製作をおこない,3 週目に 1 着のスカート を製作するに必要な人件費の算出をおこなった。 概要は図 2 の通りである。 図 2 授業概要について ⑵ 製糸作業 1 週目はまず製糸をおこなった。糸は繊維によ りをかけて作るが,産業革命以降は機械が生産す るようになった。それまでの長い期間人類は,時 代や地域によって形状は異なるものの,糸つむぎ 機を用いて糸をつむいできた。管見の限り,現存 する糸つむぎ機の中で古い遺物は,エジプトのピ ラミッドから出土されたスピンドルである。類似 する形状の糸つむぎ機は日本にもみられ,鎌倉時 代の絵巻物「当麻寺縁起絵巻」の市井の老婆が道 端で糸をつむいでいる場面から,当時の日本で用 いられていた道具の様子を伝えてくれる。このス ピンドルは現代でも用いられており,本実践でも この形状の糸つむぎ機を,厚紙と割りばし,タコ 糸でつくり,これを用いた。 ここでは,まず作業時間外に教員がデモンスト レーションをおこない,つぎに実践にうつった。 要した材料は図 3 のとおりである。繊維方向をそ ろえた羊毛を糸の種とし,1 人あたり 10 g配布 して,30 分間製糸作業をおこなった。 ⑶ 製織作業 2 週目は,30 分かけてコルク板を裁断し,待ち 針を刺してつくったミニ織機(図 4)とたて 1 m, よこ 1.5 mの 2 本の毛糸を用いて織物製作をし, 約 3 × 6㎝の織物が出来上がった。製作にうつる 前に,まずパワーポイントで整経から緯糸の通し 方まで説明をおこなった。図 3 スピンドルに必要な材料 図 4 ミニ織機に必要な材料 ⑷ 用布量の計算と時給 1,000 円と仮定した際の 人件費の算出 図 5 は某ファストファッション店において 2,980 円で販売されたスカートの写真から描きお こしたものである。このスカートを製作するにあ たり,必要は布量は,約たて 100㎝×よこ 150㎝ であった。さらにスカート生地を構成する糸の数 は,2.5㎝四方においてたて糸 224 本,よこ糸 180 本であった。そこで,スカート生地を製織するの に必要な糸の量を計算でもとめ,つぎに時給 1,000 円とした場合の糸と布の生産に伴う人件費が一体 いくらになるかを学生に算出してもらった。 ①糸の用意(たて糸の長さ) 布 2.5㎝四方におけるたて糸とよこ糸の本数か ら,布を製織するに必要なたて糸の長さを算出 した。 ②糸の用意(よこ糸の長さ) 布 2.5㎝四方におけるたて糸とよこ糸の本数か ら,布を製織するに必要なよこ糸の長さを算出 した。 ③必要なたて糸とよこ糸の長さとその生産にか かる人件費 布を製織するに必要なたて糸とよこ糸の長さ を合計した。次に手つむぎにおいて 30 分で 3m を生産できると仮定し,たて・よこ糸の生産に 必要な時間数を算出し,時給 1,000 円とした場 合の人件費を割り出した。 ④用布量とその生産にかかる人件費 30 分で 18㎠の製織が可能と仮定して,スカー ト制作に必要な布量から,時給 1,000 円の場合 の人件費を計算した。 ⑤①〜④の結果をもとに,糸と布を手作業で生 産した場合の人件費を計算する。 ① ②
③ ④ ⑤ 図 5 算出の過程
3.学生の衣服に対する認識の変化
本実践は,安価なものとして定着した衣服の価 値観を改めて考えさせるために,そのきっかけと なるような授業方法をつくることを目的としてお こなった。学生が実践をとおしてどのように感じ たかを,ワークシートの記述からみていきたい。 ⑴ 糸つむぎについて この回は欠席者が 5 名おり,44 名が受講した。 学生からはのコメントは,全体的に,実体験を通 して糸の構造への理解を深めたこと,自身の製作 した糸の品質に関するものが散見された。その中 で,本作業のねらいである衣服の価値について問 い直す,すなわち衣服を製作するのにいかに労力 をともなうものであるかという考えに言及した記 述が 16 件あり,全体としては約 36%であった。 コメントのうちから抜粋したものを(表 2)にま とめた。 ・今は布も糸も売っているけと昔は繊維から糸,糸から布,布から衣服, 衣服になるまですごく長い時間をかけていたんだなと思った。 ・いつも買っているような毛糸にはならなかった。今の時代機械で作ら れているから,簡単に作れるけど,昔は糸一本つくることも時間をか けてやっていたのがすごいと思った。 ・難しかったです。(略)つむぐのに手まも時かんもかかってて、しかも 集中力も必要で疲労感がすごいです。 ・とても難しく,27㎝くらいしかできなかった。昔の人はこれをずっとやって いたなんて私が想像できないくらい努力していたんだろうなと感じた。 ・1コつむぐのにとても時間がかかるし,ほんとうに大変なんだなと思った。 ・最初の段階でもう難しく感じた。自分は17㎝しかつむぐことができな かった。17㎝だと何も作れない。洋服を作るために必要な長さはもっ と長いだろうから大変さを改めて感じることができた。 ・糸を作るところから服まで作るなんて,とても自分ではできる気がしま せんでした。 ・今私たちが服を選んで買うことができるようになるまでに,糸を作る技 術がどれだけ発達してきたのかが,糸つむぎをしてみてより感じるこ とができた。 ・実際につむいでみて,羊毛をつむぐのにたくさん時間がかかるのだと 思った。(略)自分の服には,どのくらいの糸が使われているのか気に なった。 ・そんなに進まなかったから昔の人はすごい。自分が昔に生まれてい たら,家族に全然服を作ってあげられなかったと思った。また衣服の 大切さが分かった。 ・1本でこれだけの時間がかかるのに,この糸を作り,布を織って…を 考えると気が遠くなるし,大仕事で苦労したんだなと思いました。 表2 スピンドルを用いて糸をつむぐことから読み取れる記述 ワークシートより原文のまま抜粋⑵ 製織について この回は欠席者が 8 名おり,41 名が受講した。 全体的に,前回の糸つむぎより作業が容易であり 製作が楽しいといったものや,織物構造への理解 を深めたなどがコメントとしてよせられた。その 中で,織物製作にとどまらず,その労力にまで言 及した記述は 7 件あり,全体としては約 17%で あった。抜粋したものを(表 3)にまとめた。 ・1枚の布を作るのも大変なんだなと思った。 ・前回糸を紡いだということもあり,糸と布のつながりを実感しました。 ・織物体験を初めてやってとても楽しかった。製作するのはとても時 間がかかったけど,綺麗にできたので良かったなと思いました。 ・単純作業が好きだから夢中になってやっていた。 ・糸つむぎより簡単で楽しかったです。 ・確かに,たてよこ方向より,斜め方向の方が伸びやすかったです。 ・これだけ時間をかけても少ししか作ることができなかったので,昔は 大変だったのではないかと思った。 ・30分くらいで少ししか進まなかったから衣服を作られるまでにはすご く時間と労力がかかっていることを学べて大切に使いたい。 ・昔の人は織り機でやっていたことを考えると,先週の糸から作って 織って相当苦労したことがわかりました。 ・小・中・高の家庭科の授業では布からなにかをつくることが多く布を つくるというのは新鮮でした。 ・とても時間をかけて織ったけど21㎠しが織れませんでした。これを機 械でなく人の手で織っていた時代の人たちはすごいと思いました。 ・1つの物を作るのはとても大変な事なんだとあらためて思いました。 ・実際にやってみて気づくことが多いなと感じた。 ・小さな布をつくるだけにも,けっこう時間がかかったし,疲れてしまっ た。服とかをつくるとなると何日,何時間,いったいかかるのかと考える だけゾッとした。 表3 織物を織ることから読み取れる記述 ワークシートより原文のまま抜粋 ⑶ 数字に換算し,衣服の価値について再認識する この回は欠席者が 6 名おり,43 名が受講し, 簡易的であるが,衣服製作に係る人件費の算出 をおこなった。ここではじめて学生のコメント からコストに関する記述が散見され,衣服製作が いかに労力を要するかについても含めると 22 件 のコメントがよせられた。これは全体としては約 51%と半数を超えた。抜粋したものを(表 4)に まとめた。 ・スカート1枚を人間が糸をつむぐところから始めたら,果てしない金額 になって驚きました。 ・実際に自分で計算することによって,大きなお金がかかるということ が,よりしっかりと感じられたと思う。 ・ひとつのスカートをつくるのにとても長い時間がかかっていてしかも 時給で考えると445万円…。 ・3000円弱のスカートを1枚作るのに,かなりの時間がかかることが実 際に計算してみてわかった。今までこんなこと考えたこともなかった けど実際に計算すると自分の予想を超えることがわかって驚いた。 ・衣服を手作りすると長い時間と時給1000円とすると多くのお金が 必要だということが分った。だけど,機械化されることによって(略)買 いやすくなってから服をすぐに買ったり,捨てたりすることが出来るよ うになったため,ゴミも増えるし,昔より大切に着るという文化が無っっ てしまった。(略)大切に着たい。 ・今の時代では機械などで大量生産ができ,手頃な価格で服が買え るけど,実際手で1から作ると,とても大変なのが計算してわかりました。 ・実際のコストを計算してみた結果がとても高くて驚いた。 ・スカートを作るのに糸をつむぐ時間を計算してみると4040時間,そし て布の用意もすると417時間という見たことのない大きな数字で衝 撃的でした。 ・1つの服を作るために糸がたて・よこ合わせて24.24㎞も使われてい て糸の多さにおどろきました。(略)より服を大切に着ようと思った。 ・手作業で服をつくるとなったら,多大な手間がかかる上に,時給に換 算すると,とても高額な服になってしまうのだなと思った。 表4 数字に換算したことから読み取れる記述 ワークシートより原文のまま抜粋 全体を通して,本実践より,学生たちの衣料品 に対するイメージが変化したものと考える。すな わちスカート 1 枚製作するためには,実は途方も ない労力と時間を要していることである。それに より衣服の大切さを実感した学生もいた。さらに 手作業で服をつくるとしたならば,大変高額なコ ストがかかる事を実感し,衣服についてこれまで とは異なる視点を持った学生もおり,実践の効果 がさっそくあらわれたと考えられる。他には,授 業の目的とは外れるが,作業を通して衣服素材へ の理解を深めた者,自分の向き不向きについて実 感し新しい興味関心を持った学生もいた。 以上から,衣服製作工程のうち,糸つむぎ,製 織を実際に体験し,その体験をもとに 1 枚のス カート製作に必要な人件費を算出することで,衣 服がいかに労力を必要として製作されているもの であるかを数値で示したことで,学生たちはこれ までとは異なる視点で衣服の価値について問い直 すことができるようになったと考える。とりわけ 3 回の実践のうち,学生たちに大きな反応がみら れたのは,コスト計算をおこなった 3 回目である。 ここでは生産に係る人件費の算出に,学生自身が アルバイトから得る時給とほぼ同じ金額を設定し たことから,学生にとっては非常に理解がたやす かったものと考える。 この結果を踏まえ,次年度からは,現実には低
価格で衣料品が購入できる理由について,学生た ちにディスカッションをする時間を設け,衣料品 の価値についてより深く掘り下げて検討する機会 を設けたい。