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構成作品の色彩教育への応用について(3) -max bill "die grafischen reihen" における作品研究-

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(1)Title. 構成作品の色彩教育への応用について(3) -max bill "die grafischen r eihen" における作品研究-. Author(s). 八重樫, 良二. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 57(2): 197-211. Issue Date. 2007-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/449. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.2. 平成19年2月 February,2007. 構成作品の色彩教育への応用について(3) −maXbill“diegra五schenreihen”における作品研究−. 八重樫 良 二 北海道教育大学旭川枚デザイン研究室. AboutApplicationofGeometricalArtWorkstoColorStudy −StudyaboutMaxBill’sWorksontheBook“DieGra五schenReihen”−. YAEGASHI Ryoji DepartmentofDesign,AsahikawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 要 旨 本稿はマックス・ビルの作品集,maXbill“diegrafischenreihen’’に紹介される構成作品に関する考察の 第3報である.これまで3つの作品のシリーズを取り上げて考察し,その平面構成と配色の仕方について具 体的な手法を明らかにしてきた.本ノ稿では新たにNO.1「一つの主題による多角形のバリエーション」と 題されるシリーズ作品を取り上げて,主にその作図の考え方について考察を行った.美術表現に数学的アプ ローチが計られたと思われる作品において,その表現における作図の構造を探った.特にその表現をベクト ル図形として観ることにより,シリーズ中に展開された螺旋形の構成をよく把握することができた.本稿で はNO.1シリーズの作図法とバリエーション同士の関連について明らかにし,マックス・ビルの作品理解 を深めるものである.. 1.はじめに. な印象を与える作品の好みは別として,マック ス・ビルの方法は主観的・審美的観点に頼らざる. 本稿はマックス・ビルの作品集,maXbill“die. を得ないと思われている美術の創作表現について. grafischenreihen’’に紹介される構成作品に関す. 客観的な手法を導き,それを美術表現として試み. る考察の第3報である.本書1)で紹介されるマッ. たものと言える.その規則性によって作品表現に. クス・ビルの構成作品はいずれも3角や4角,円. リズム感や秩序感をもたらす手法は,構成美に関. など単純な形を分割したものであり,その特色は. する学習に関して,今日でも基礎的で普遍的な内. 必ず何らかの規則性に基づいて分割,配色されて. 容を含んでいると思われる.. いることである.この手法によって生じる無機的. 本稿では本書に掲載される最初の作品,NO.. 197.

(3) 八重樫 良 二. 1「一つの主題による多角形のバリエーション」. 味深く,その作図の考え方を明らかにすることは,. と題されたシリーズを取り上げて考察する.この. 本書に掲載されるNO.2シリーズより以降に続. 作品は1935年から1938年の間にヨーロッパ各地で. く作品シリーズの理解を深める事にも意義を持つ. の展覧会の形で発表している.NO.2の作品は. と考える.. 1957年に,NO.3から以降の作品シリーズは1970 年以降に制作されており,この最初の作品シリー ズはマックス・ビルがまだ30才位の頃,突出して 早い時期に制作されている.マックス・ビルは19. 2.NO.1シリーズの概要とその描画への見方 NO.1「一つの主題による多角形のバリエー. 才でバウハウスに入学,1年半ほどの在学期間を. ション」のシリーズを構成する作品数は16点にも. 経て,すぐに母国スイス,チューリッヒで建築と. 及び,他のシリーズに比べて飛び抜けてその点数. 彫刻の仕事をはじめている.当時は既に建築家,. が多い.それらの印象は平面構成の作品というよ. 彫刻家の両方の顔を持って,造形作家としての評. りは製図的,国学的な色合いが強いものとなって. 価も受けている時期にあたる.本書においてこの. いる.とりわけ理屈っぼいその作品性は,人によっ. 作品は,はじまりを意味するNO.1のナンバー. ては美術本来の作品性を備えていない,機械的で. が与えられ,色面構成に関する彼の作品の最初の. 無機的な表現様式と否定的に受け取るかもしれな. シリーズとして位置付けられている.. い.その作品は製図であって描画ではない,美術. シリーズは基本の原画1点と15点のバリエー. 表現に属さないものという受け止め方である.実. ション作品,全部で16点の作品から構成されてい. 際,マックス・ビルは優れた建築家であり,幅広. る.各作品の大きさは32cmx30cm,平版の版画. い分野に渡る彼の作風はそのことと密接に関係し. 技法であるリトグラフによる制作であることが記. ていることと思われる.このシリーズの制作意義. されている.これまでの考察で“diegrafischen. は1920年代から30年代にかけた美術表現,美的価. reihen’’に紹介される構成作品の中から,NO.6,. 値観の変化など,当時の美術界の動き3)と関連し. NO.12,NO.3の3つの作品シリーズについて,. て捉える必要があろう.. その作図法と配色の方法を明らかにしてきた2). NO.6「5つの正方形における色変換」とNO.12 「8つの色変換」の2つのシリーズは同じ分割面. 当時,抽象絵画は現代美術の新たな動きとして 大きなインパクトをもって世の中に向かえられた 頃であった.マックス・ビルはバウハウスで抽象. であってもその配色を違えることでバリエーショ. 絵画における構成美を学び,その卒業後にはすぐ. ンを得ている.NO.3「7scarions」では一つの. に創作活動を始めている.今日でも変わらぬ評価. 平面構成をその上からマスキングすることでその. を得ている彼の彫刻作品と共にこのNO.1シ. 一部を覆い隠し,配色は同じであるが,見え方が. リーズもまた,この時期の重要な作品の一つとし. 異なるようにバリエーション展開した作品であっ. て位置付けられている.世界大戦を挟んだ後,1949. た.このNO.1シリーズでは単純に描かれた原. 年に出版した自己の作品集にマックス・ビルは. 画を元に,図法的にアレンジを加えることで,15 のバリエーションを展開している.. これら各作品に共通しているのは,そのバリ. 「現代美術における数学的アプローチ4)」という. 文章を掲載している.その論考の中でカンディン スキー,モンドリアンらの抽象表現を取り上げ,. エーション展開を自身で最初に定めた造形上の. 数学的手法と構成表現との結びつきについて自分. ルールに従って得ている点である.マックス・ビ. の考えを表わしている.1935年に制作された. ルのこうした考え方,いうなれば作品制作の作法. NO.1のシリーズはそこに著された内容の前身. はすでにこの最初の作品おいて明確に見られる.. ともいえるものと思われた.その制作意図は構成. 特にそのシリーズ構成の図法的な展開について興. 表現をさらに深めることであり,造形の生成原理. 198.

(4) 構成作品の色彩教育への応用について(3). を主観を排して数学的な手法をもって行うことを. 描的に捉えて,画面表示の際に一点毎の位置と色. 試している.当時,こうした制作手法は新たな独. とをデータとして処理する際の情報を意味する.. 創的な試みであり,抽象絵画に続く作品様式を模. それに対してベクトル情報という捉え方がある.. 索する試みとも想像される.こうしたことを踏ま. 図形を点の移動によって描かれるものとして,そ. えるとNO.1のシリーズは本書中でも特別な意. の軌跡をデータとする処理方法がとられている.. 義を持っているように思われる.. このことを描画に関するコンピュータソフトの別. 16点のシリーズ作品について,そのバリエー. ション順に従って図1に図示5)する.正方形枠に 囲まれる図,一つ一つが各バリエーションの作品. で言うならべイント系とドロー系の用語でその区 別がなされている.. この用語を借りて言うなら,このNO.1シリー. である.このシリーズには,主に線画的なバリエー. ズはドロー系に属する描画であって,その図形が. ションについて白黒のみ,または淡い黄みをおび. ベクトルを持って描かれていることに意味がある. た灰色,黒線で表されているものがある.最初の. ことに気付く.このシリーズでは,どの図形にも. 原画とバリエーション2・5・7・9・10・13・. 描画の始まりと終わりがあり,図形を形作る各頂. 15の8作品がモノトーンの作品である.バリエー. 点,各辺にはつながりの順番が与えられている.. ション1・3・4・6・8・11・12・14の8作品. 一見,独立して単独に置かれているように見える. に共通して同じ6色が使われている.. 線や面も,実はその連続性と関係がある.始点,. 各バリエーション作品にはマックスビル自身の. 2番目の点,3番目の点…というように点に順が. 簡単なコメントが記されている.最初の原画に相. あること,点と点を結ぶことで辺となることと. 当する第1作品にのみ“dasthema’’という小タ. いったことが,この作品では意味をもっている.. イトルが付され,他の15点は全てバリエーション. NO.1「一つの主題による多角形のバリエーショ. ナンバーだけで呼ばれて,シリーズタイトルの通. ン」というタイトルにある「一つの主題」とはコ. りに一つの主題で得た着想を様々に展開した作品. メントで説明される「連続的な展開」というテー. となっている.コメント中にその主題について,. マを意味している.マックス・ビルはこの作品で,. 「連続的な展開」または「持続的な発展」といっ. 点を打つ順,線を引く順,その方向など,描画す. た意味に翻訳される言葉が記されている7).連. る要素に順番があるということに注目しているよ. 続,展開,発展,これらの言葉をキーワードにし. うに思われた.図形の「展開」はこのシリーズ全. てシリーズは16点のイメージが展開されている.. 体のテーマであり,それがどのようにこの作品に. その最初の原画のイメージは,3角形から8角. 表れているのかを理解するためには,作品がどの. 形までの形を一辺ずつ連続して6つの多角形6)の. ような手順で描かれているのかを知る必要があっ. 外形がイメージされるよう一本の線で描かれた,. た.そのためには各作品をベクトル情報の観点か. 単純なイメージのものである.そのタイトルから. ら各作品の作図法を考察することとした.. もバリエーションは互いに関係していることが理. このシリーズの最初の原画について,例えば始. 解されるが,原画から展開された各バリエーショ. 点を置き,次に2番目の点を置き,今度は正3角. ンは,直線で構成されるものと円で構成されるも. 形の頂点となるよう3番目の点を置く…というよ. の,単純に見えるものと複雑に見えるもの,といっ. うに「点を描く」という考え方をもって図を捉え. た差異がある.本稿ではこれらのバリエーション. て,結果的に点と点の間に辺が表れる,という見. がどのように描かれているのか,原画をどのよう. 方を第1の見方とするならば,この原画は図2の. にアレンジしているのかを考察したい.. ように見ていることになる.その時,各点が置か. 画像処理に関するコンピュータ用語にビット マップ情報という言葉があるが,それは画像を点. れる順序は数字で図示したようであり,逆順に考 えることもできる.. 199.

(5) 八重樫 良 二. 最初の原画(dasthema). バリエーション1. バリエーション2. バリエーション3. バリエーション6. バリエーション7. バリエーション9. バリエーション10. バリエーション11. バリエーション13. バリエーション14. バリエーション15. バリエーション4. バリエーション12. 図1 NO.1「一つの主題による多角形のバリエーション」. 200.

(6) 構成作品の色彩教育への応用について(3). いる場合の線画のような表現のことである.この シリーズでは主に形が開いているバリエーション. 作品には色が与えられず,白黒のモノトーンで表 されている.. このような図形の一つに螺旋形がある.植物の 茎のつるまき,アンモナイトのうずまき,ゼンマ イの先など,何れも螺旋形であり,その形は生物 ⑯土「ご二二萄. 図2 点の順序. の成長概念と関わりを持って,身近によく見られ る発展する形のシンボル的な図形ともなってい る.この作品シリーズに関して,最初の原画に描. それに対して,始めに正3角形の第1辺目を,. かれる3角形から8角形までを連続する線は,3. 次に第2辺目を置く…というように「辺を描く」. 角形から8角形までその角数が増え,大きさが増. という考え方をもって凶を捉える見方を第2の見. 加するからこそ発展することと関係があると思い. 方としたならば,原画は図3のように見ているこ. がちであるが,この形は構造的には螺旋形であっ. とになる.そして幾つかの辺を描き,どこかの別. て,その意味でこの作品主題と合致しているよう. の箇所と囲むように交わったなら,形は閉じられ. に思えた.シリーズ中には多角形の形に沿って角. 面となる.これは結果として「面を描く」という. ごとに折り曲がった直線のつながりと,多角形の. ことになる.. 内接円をなぞった滑らかな半円のつながりの2種 が見られるが,どちらも形の構造としては螺旋で ある. シリーズの最初の原画に表れるこの螺旋のしく. みを知るために,最初に先ずその線分がどのよう にして次の多角形へと移り渡っていくのか考察し. たい.図2と図3において点線の箇所は形を閉じ る時の線分である.図1では3番目の点から1番 に向かって閉じることで3角形が得られる.次に 5番から2番に向かって閉じて正方形が,その次 図3 辺の順序. には8番から4番に向かって閉じて5角形が得ら れる.こうしてそれぞれ多角形を得るときの起点. 図2と図3で原画について点的と線的な二つの. となる番号と結ばれる終点となる番号の数字を組. 見方を例示したが,その違いは線の両端に順序が. みにして列記すると,3−1(3角形),5−2(4角形),. あるかどうかということである.バリエーション. 8−4(5角形),12−7(6角形),17−11(7角形),. 展開において,このことが意味を持つ場合とさし. 23−16(8角形)となっている.これらの各点に. て意味を持たない場合があることがわかった.ま. ついてその前後の数字の差をとると,次の多角形. た別に,形が閉じているかどうかも図形の性質と. への起点となる数字の差は2,3,4,5,6と. して留意を要する点のように思えた.閉じられた. いうように一つずつ差が増加していくのがわか. 形とはこの場合は3角形や4角形,円や円弧で囲. る.. まれる三日月型など,いずれにしても外形を持つ. マックス・ビルは最初の原画における螺旋のど. 面のことである.それに対し問いた形とは線の片. の箇所で線分が次の多角形へと移り渡るようにす. 方が何かにつながらず,その端で終わりになって. るか,つまり形を展開させるか,その転換点を最. 201.

(7) 八重樫 良 二. 初に決める必要があった筈である.3・5・8・. 第2の見方から捉えることでその作画の方法が理. 12・17番目の点は,それぞれの多角形の図化の最. 解される.. 初の起点,言わばジャンプ点に相当する.この考 えを推し進めるなら,23番目の次にジャンプする. 点は23に7を足した30番目の点であり,その次は その数に8を足した38番目の点となる.それは9. 3.各バリエーションの作図上の関連性 全16点の作品にはその関連がわかりやすいもの. 角形,10角形に至るまでこの螺旋が展開した場合. と,類似していながらも関連がわかりにくいもの. のことである.. がある.副次的なバリエーション作品との関連が. それではジャンプする先の点の位置,具体的に. 深いものや,それぞれ別の方法でアレンジされて. は図2における4・6・9・13・18番目の点の具. いることなどが推測され,実際に各バリエーショ. 体的な位置はどのようにして求められているので. ンの再現8)を試みることで,各作品の作図の方法. あろう.図2において3点目までは3角形の頂点. を考察することとした.図における点・線・面の. をなぞって置かれている.4番目の点は4角形(正. 置かれる位置,配色など,前述したよう,それら. 方形)をなぞるべきである.そのためには2点目. 描画の要素の描かれる順を推測しながら,描画の. と3点目を結ぶ直線,つまり3角形の2辺目の辺. 規準となる理屈を探った.こうした再現的な描画. に4角形の底辺(この場合はそれぞれの多角形の. の作業を通して,どのようにしてその図が得られ. 底にあたる辺の意味)を重ねて置いて,4角形の. ているのかを知ることができた.また,バリエー. 各角にあたる箇所を求めるのである.このように. ション同士の作図上の関連についても理解するこ. して4角形の角に相当する4番目,5番目の点の. とができた.その結果,得られた作図の仕方に着. 位置が決まる.6番目以降の点も同様に5角形か. 目して各バリエーション作品の概要をまとめて以. ら8角形に至るまで,それぞれの図形の底辺を該. 下に列記する.. 当する辺に重ねて置くことで,ジャンプする先の. 各文の冒頭に「∼からの展開.」と記している. 位置が決まる訳である.結果的に各多角形の底辺. のは,そのバリエーションが本作品シリーズの特. が重ねられる辺は,ジャンプの起点を含む.この. にどの作品を基にして得られているのか,関連し. 辺はもとの多角形とジャンプする次の多角形の両. ているか,ということを意味する.また文末には. 方の一辺であり,形を共有する特別な一辺となる.. 次にどのバリエーションの作図へとつながってい. その箇所は図3の中で2重線で示される2・4・. るかを表す記載を付け加えた.文中,アンダーラ. 7・11・16番目の辺である.もし仮に10角形に至. インが付された箇所はそのバリエーションにおけ. るまでこの最初の原画が展開されたなら,次に共. る原図に対する図法的処理に関して,鍵となって. 有される辺は22番目の辺,その次の辺は29番目の. いる文言を意味する.これら考察で得られた作図. 辺となる.このように最初の原画はいわば数列的. 上の関連に沿って,各バリエーションの相関を図. な考えと幾何的な考えとの両方から作図されてい. 4に示す.図4はマックス・ビルの碇示したバリ. ることが分かる.. エーションの順番によらず,その作図法に着目し. 最初の原画をこの考察で得られた規則性をもっ. て16作品の互いの関連性を示すものである.. て,さらに発展させることも叶能である.このよ. うに最初の原画について,その観点に点と辺の順 序があることに留意して見ることで,他のバリ. 最初の原画(“dasthema’’):. 中心から多角形を描くように点を配置し,互い. エーション展開の観点を知ることができる.例え. を結び多角形の辺とする.特定の箇所で辺を共有. ば図3に示す2重線の位置は視覚的には不規則に. して次の多角形へと展開とするようにする.各多. 位置する印象があったが,先に記した第1の見方,. 角形は閉じた図形ではない.共有する辺となった. 202.

(8) 構成作品の色彩教育への応用について(3). 点の次の点で次の多角形の始点となるよう,連続. バリエーション5:. して点を置くことで線による折り曲げ螺旋形がつ. 原画とバリエーション1からの展開.最初の原. くられる.他の15のバリエーション全ての元図と. 画またはバリエーション1で描かれる各多角形の. なる.. 外接円を描く.これはバリエーション8と同様の 処理である.そして,多角形を閉じて面とした箇. バリエーション1:. 原画からの展開.最初の原画で描かれる螺旋形 を多角形毎に閉じて面とする.各面には例えば3. 所にあたる辺(共有する辺ではない)を一定の太. さで描く.直接的には次のバリエーションを生ま ない.. 角形なら黄色を,4角形なら赤色をというように 固有の色を与えて,シリーズを通して色を使用す る場合の規則としている.黄・赤・緑・青・橙・. バリエーション6:. バリエーション2からの展開.バリエーション. 紫の6色で1組.このシリーズにおいて形と色は. 2で描かれた各辺上の円をその接点で連続させ. 結びついている.バリエーション2・6を除外し. る,つまり各辺毎にその外側,内側と反転しなが. た他の各バリエーションの元図となるが,直接に. ら連続する半円の円弧で原画の折り曲げ螺旋形を. はバリエーション3・4・5・7・8・13の元図. なぞる.半円の円弧の色はバリエーション1の. となる.. ルールに基づく.その半円がどの多角形に属する 点であるかによって決められる.次のバリエー. バリエーション2:. ションを生まない.. 原画からの展開.最初の原画で描かれる多角形 を半円でつないで閉じるが色面とはしない.さら に全ての辺の上に円を描く.原画の螺旋形が描か れる.バリエーション6の元図となる.. バリエーション7:. 原画とバリエーション1からの展開.最初の原 画またはバリエーション1で描かれる各多角形面 の内接円を描く.これはバリエーション13と同様. バリエーション3:. の処理である.そして原画の螺旋形と内接Hで幽. 原画とバリエーション1からの展開.最初の原. まれる面を淡い黄みをおびた灰色とする.3角形. 画で角となる箇所に色点を置く.各点の色はバリ. から8角形までの内接円の円弧の部分が連続する. エーション1のルールに基づく.その点がどの多. 場所(共通の内接点)で移り渡って半径が拡大す. 角形に属する点であるかによって決められる.た. る.原画での螺旋の向きと反対向きの螺旋を描く.. だし次の多角形へと展開する点(ジャンプする点). 原画の螺旋形は描かれない.概念的には彩色はさ. は二つの多角形に所属して2色に分割される.バ. れていない.バリエーション15の元図となる.. リエーション9との関連性をもつ. バリエーション8: バリエーション4:. バリエーション5からの展開.最初の原画また. バリエーション1からの展開.バリエーション. はバリエーション1で描かれる各多角形の外接円. 1の各多角形面の中心からの対角線に相当する箇. を描く.これはバリエーション5と同様の処理で. 所を結び,色線で描く.各線の色はバリエーショ. ある.各円は面として扱い,各円の色はバリュー. ン1のルールに基づく.バリエーション11・14の. ション1のルールに基づく.最初に小さい方から. 元図となる.. 順に並ぶ2つの多角形の2つの外接円に着目し て,その重なる面について少ない数の多角形の色 を優先して与える.2つの多角形が重ならない箇. 203.

(9) 八重樫 良 二. 円弧(半円). 一辺上の円. l. バリエーション2. 厩 廟. バリエーション5. バリエーション8. 中心点. ﹂T. 砺 [⊥. エーション9. ㌃ 刑. L. l. 螺旋(左巻き). バリエーション14. 厄 ニ. 図4 各バリエーションの作図上の関連性. 204. 螺旋(右巻き).

(10) 構成作品の色彩教育への応用について(3). 所つまりどちらかの多角形だけに属する円内の面. について黒面とする.次のバリエーションを生ま. を白(色を与えない)面とする.バリエーション. ない.. 9の元図となる. バリエーション13: バリエーション9:. 原画からの展開.最初の原画またはバリエー. バリエーション8とバリエーション13からの展. ション1で描かれる各多角形の内接円を描く.こ. 開.最初の原画またはバリエーション1で描かれ. れはバリエーション7と同様の処理である.それ. る各多角形の内接円と外接円を描く.これはバリ. ぞれの内接円で分割される面について互い違いに. エーション5・7とバリエーション7・13とを合. なるように淡い黄みをおびた灰色で塗り分ける.. わせた処理である.各内接円同士の交点に小さな. 概念的には彩色はされていない.バリエーション. 点を置く.外接円同士の交点は互いに2点となる. 9の元図となる.. が,それは多角形の共有する辺の両端となってい る.外接円同士の交点には大きな点を置く.また 多角形に内接及び外接する円の中心にその多角形. バリエーション14:. バリエーション1とバリエーション4からの展. に対応して小さな色点を置く.各点の色はバリ. 開.最初の原画またはバリエーション1及びバリ. エーション1のルールに基づく.バリエーション. エーション4で描かれる各多角形の各頂点と中心. 10の元図となる.また中心点を表すという点では. からの対角線を描く.多角形の各辺はバリュー. バリエーション15との関連性をもつ.. ション1のルールに基づく色線をもって描かれる が,バリエーション1を元にそれぞれの輪郭線を. バリエーション10:. バリエーション9からの展開.バリエーション. 色線として表す.そのため各辺の箇所は一番,外. 周にあたる8角形の辺を除き,2重線となってい. 9で描かれる各多角形の内接円と外接円によって. る.対角線は黒線である.次のバリエーションを. 分割される面について互い違いになるように淡い. 生まない.. 黄みをおびたノ火色で塗り分ける.概念的には彩色. はされていない.バリエーション12の元図との関 連性をもつ.. バリエーション15:. バリエーション7とバリエーション9からの展 開.バリエーション7で描かれる内接円をバリ. バリエーション11:. バリエーション4からの展開.バリエーション. エーション7の場合とは逆に,原画での螺旋の向 きに沿って一定の太さで螺旋を描く.螺旋は内接. 4で描かれる中心からの対角線に相当する線分に. 円の円弧の部分が連続する場所(共通の内接点). よって分割される面について互い違いになるよう. で移り渡って半径が拡大する.各円弧の始点から. に白,黒とバリエーション1のルールに基づく6. 移り渡る点までをその中心角を線分で表すことで. 色で塗り分ける.次のバリエーションを生まない.. 示している.シリーズ中,最後のバリエーション である.. バリエーション12:. バリエーション9またはバリエーション10から. 以上,各バリエーション作品の再現を試みた結. の展開.バリエーション9で描かれる内接円と外. 果,理解された作図の仕方に主眼をおいて各作品. 接円について,各多角形毎に内接円と外接円で囲. の概要を記した.マックス・ビルは数学的な考え. まれるリング状の面をバリエーション1のルール. をもってこのシリーズを制作し,美術表現として. に基づく各色で塗る.その内,リングが重なる面. 提示している.その描画は手業に依らず製図的に. 205.

(11) 八重樫 良 二. 描かれたことから,その描画過程を追跡し再現す. こうした関連性からそのバリエーション展開につ. ることができた.この作品では特に図形の構造を. いて,大きくは,対角線・各辺上の円・内外接の. 捉える必要があった.図形を構造的に捉える,と. 円,という3種のアレンジを加えて原画を展開し. いうことは例えば,点同士が線で結ばれる図なら. た後,再度,内外接の円のアレンジを深めて螺旋. ば,どの点とどの点がつながっているのかを見る. の構造を得ていることが分かる.シリーズ中,螺. ことが重要であって,そのつながり方が直線か曲. 旋形が明確に表れた作品としてバリエーション7. 線かということにはとらわれず図形を見る,図形. と15がある.これらの螺旋形はどのように作図さ. の骨格を捉えようとする見方のことである.シ. れたものであろうか.. リーズ作品中では特に螺旋構造について興味深. 始めにその作図法を探る手がかりとしたのはバ. く,このシリーズにおけるバリエーション展開の. リエーション1に描かれる多角形に着目し,その. まとめと共に,螺旋に関する具体的な作図の経過. 外接円と内接円を描くことであった.そのことは. について次に記したい.. バリエーション8と13から連想された.バリエー. ション8は外接円から生じる分割面に色彩を与え たもの,バリエーション13は内接円から生じる円. 4.NO.1シリーズにみる螺旋の形. の重なり面を表現した作品であり,その円は螺旋. このシリーズでは「連続的な展開」というテー. 形の形成に関連している.円の大きさの漸増は多. マによって全16点のバリエーション作品を展開し. 角形の辺の増加との関わりから生じるのであり,. ている.原画にあたる最初の作品は多角形の外周. 多角形でも円形でも,直線でも曲線であってもだ. に沿うように成長する折り曲げ線による螺旋形で. んだんに大きくなる表現はこのシリーズでの「連. あった.その多角形の対角線を描くことでシリー. 続的な展開」というテーマと密に関連している.. ズを展開しているのがバリエーション4・11・14. 図5にそうした内接円と外接円を示し,さらにそ. であり,多角形の各辺上に円を描くことによって. の両方を合わせて表した.. いるのがバリエーション2と6である.バリエー. 内接円の図からはバリエーション13と,外接円. ション1と3については色彩の要素を付加してそ. の図からはバリエーション5と8で描かれるHの. れぞれ最初の原画を面的,点的に表している.そ. 配置と同様であることが理解される.内接円と外. して各多角形の内接円,外接円を描き,そこから. 接円を同時に描いた図は,バリエーション9での. バリエーション展開したのがバリエーション5・. 描画と同様であることが分かる.図4においてバ. 7・8・13である.さらにそれらの展開をもとに. リエーション9をバリエーション8と13と関連付. バリエーション9・10・12・15と2次的な展開が. けて示したのは,こうした関連性が認められるた. 計られ,最も多くのバリエーションを生んでいる.. めである.また,その作品中,円の交点に置かれ. バリエーション9 内接円. 図5 外接Hと内接Hの合成. 外接円+内接円 (バリエーション9).

(12) 構成作品の色彩教育への応用について(3). る点の大小の違いがあることへの疑問もまた考察. とりだしバリエーション7と15と比較したものを. の興味であったが,このことについては先に記し. 図8に示す.その螺旋形は一見,異なっているよ. たようその点が内接円,外接円の何れの交点であ. うでありながら同じ作図法から得られているので. るかの違いのためであった.このようにバリエー. ある.. ション9の作品には,どのバリエーション作品に. その形の特徴として2つの点を挙げたい.一つ. も関係する作図の補助線にあたる要素が全て表れ. はその螺旋がだんだんに大きくなる正円の一部の. ている.. 連続によって形作られる近似螺旋であることであ. 図5で示すように外接円の場合には多角形毎の. る.螺旋形は本来,曲率が連続的に変化すること. 外接円は互いに交わるため,その円弧を描くだけ. で描かれる図形であるが,ここでの螺旋は小大の. では連続する滑らかな曲線にはならない.それに. 円の一部である円弧同士のつながり,つまり曲率. 対して内接円の場合には,各多角形の辺(共有さ. を一定とする円弧をつないで螺旋を表しているの. れる辺)の中点で接する関係となっていることか. である.こうした近似螺旋には2点半円弧による. ら,その接点で次の円弧に移り渡ることで滑らか. 螺旋10)や黄金矩形での正方形面に描く円弧の連. な螺旋形を描くことができる.その場合,どちら. 続によって得られる螺旋(図9)がある.. の方向にでも螺旋を描くことができることから,. 図9の近似螺旋はそれぞれ1/2円弧または1/4円. 中心から左巻きにたどる螺旋(図6)と,右巻き. 弧がつながる螺旋である.図6,図7と図9の国. にたどる螺旋(図7)の2つの螺旋形が得られた.. 中,A∼Gで示す各点は製図的には切点と呼ばれ. こうしたことからシリーズで描かれる螺旋は多角. る,正円の一部である円弧が次の大きさの正円の. 形毎の内接円を移り渡ることによって描かれてい. 円弧につながる箇所を意味している.. ることがわかった.図6と図7から螺旋形だけを. 図6 内接Hによる螺旋(左巻き). 二つ目には,この螺旋は,そのまま展開を続け. 図7 内接Hによる螺旋(右巻き). ・厄 左巻きの螺旋(図6から). ・. 右巻きの螺旋(図7から). 図8 内接Hによる螺旋とバリエーション7・15の螺旋. 207.

(13) 八重樫 良 二. G. 2点版円弧による近似螺旋. 黄金矩形内の近似螺旋 図9 曲率が・一定のH弧による螺旋の例. ずに収束してしまうことが挙げられる.図9に示 す螺旋はどちらもこのまま渦巻きを続けることで. 5.NO.1シリーズにおける配色. 大きくなっていく.凶8での左巻きの螺旋は凶9. カンディンスキー8)はバウハウスでの教員を勤. で近似螺旋として示した例と類似した印象があ. めた時に,黄,赤,青の3色を正3角形,正方形,. り,このまま展開が続きそうな印象があるが,実. 正円に与える原理的な色として説いている.その. 際は8角形の外接円の円周をたどってすぐに終結. 形態と色とを対応させる考え方はバウハウスでの. することになる.香取線香の渦巻きの終わりと同. 色彩授業を象徴するものとして,良く知られてい. 様である.一方,右巻きの螺旋では,それが外周. る.シリーズ中のバリエー. につながって収束することが暗示される形となっ. 配色は3角形と正方形について同様である.青は. ている.図8での右巻きと左巻きの螺旋を比べる. 正円の代わりに正6角形に与えられている.マッ. とき,形の印象を左右する大きな要因として螺旋. クス・ビルはカンディンスキーの3色に加えて,. の幅の間隔が挙げられよう.左巻きの方は一定な. 5角形,7角形,8角形にそれぞれに色を与え,. 幅で,右巻きの方は狭くなったり広くなったりし. このシリーズにおいて6色を用いている.. ている.これは図6,図7に示すよう各H弧の移. ション1で用いられる. このシリーズでは各多角形と色とを照合して用. り渡る箇所とその長さに違いがあるためである.. いているバリエーション1での配色がシリーズ全. 左巻きの方はそれらが比較的,揃っているため,. 体の配色計画を規定している.すでに本研究では. 螺旋の幅が一定に感じられるのである.螺旋の作. このシリーズについて,使用色6色:. り方は2つとも正3角形から正8角形までの内接. b6,V3,V12,V19,V5,S23,というように使用. 円のつなぎ合わせによっている.もし原図が正8. 色を報告11)している.それぞれ3角形は黄(b6),. 角形以上の非常に大きな角数をもつ多角形まで無. 正方形は赤(v3),5角形は青緑(v12),6角形. 限に展開を続けたとしたなら,どういう螺旋にな. は青みの紫(v19),7角形はオレンジ(v5),8. るであろうか.それはこれまでの考察から,多角. 角形は赤みの紫(s23),であることを意味する.. 形の辺数が増えるほどには面積は増えず,多角形. 色名の後に続く英記号はPCCSでのトーン記号. の大きさがいずれ円に近づく大きさに収束するこ. であり,何れも高彩度ではっきりした色であるこ. とが理解される.このことからバリエーション7,. とを意味している.シリーズを通して幾何図形と. 15に見る螺旋の展開は大きさとしてはそれほど拡. の対応関係は守られ,彩色されているバリエー. 大せず,それぞれのバリエーションで描かれた螺. ションである1,3,4,6,8,11,12,14の. 旋形とそれほどは変わらない印象に留まることが. 8作品に使用されている.. 予想される.. この6色の色相関係について図10で色相環上に その位置を表した.赤から黄色にかけた暖色系か. 208.

(14) 構成作品の色彩教育への応用について(3). ら3色,それに対照的な色として青緑と青みの紫 の2色が選ばれている.暖色系の3色と2色との 色相差は大きく,特に7角形の色であるオレンジ の上に置かれる6角形の青みの紫は,その対比効 果から青みが強調されて紫というより青の色味が 勝った効果が生じている.3色の中でも3角形の 黄色と7角形のオレンジは色相環上では隣り合う 関係に位置して,類似感がある色となっているが 3角形と7角形との間には4,5,6角形が置か れて,その色同士が隣りあうことはない. −:実線は配色されている8色相の位置関係。 −−−− :点線はオレンジ(5:0)を起点とする時の 4色調和(テトラーデ)の関係にある4色 の位置を示す 図‖ 「NO.12 8つの色変換」で用いられる8色 の色相環上での位置関係. 図11で示すよう色相順に従っているのに対して,. NO.1シリーズでは図10に示すよう不規則な関 係となっている.もしこの先に多角形の展開があ りさらに色を選択する場合には,ある程度の色相 差があるように選ばれるべきであることは推測さ −:実線は配色されている6色相の位置関係。. →:矢印は3角形から8角形までの順番。 図10 6色の色相環上での位置関係. れるが,その規則性については不明である. この作品の場合には図11のように色を色相の順. に選択することもあり得るように思われた.そう した場合には例えば3角形は黄(b6),正方形は. 先の満で考察したNO.12「8つの色変換」の. オレンジ(v5),5角形は赤(v3),6角形は赤. 作品シリーズにおいて同様にその配色について色. みの紫(s23),7角形は青みの紫(v19),8角. 相の関係を考察した.図11はNO.12シリーズで. 形は青緑(v12),となって最初の3色について. 用いられる8色を色相環上でその位置を表した図. はグラデーションの効果が期待される.段々に変. である12).図10と比較してそれが類似している. 化する形に対してグラデーションになるよう配色. ことが分かる.. した美術作品は多数みられ,順序や展開といった. このことからNO.1シリーズの配色もまた4. 規則性をテーマとするこの作品で色の選択に関し. 色調和(テトラーデ)の関係で生じる配色感と同. て,マックス・ビルがそうしなかったこともまた. 様の調和感が得られていることが言える.このシ. 興味深く思える.. リーズの配色には明快で動的な配色イメージが感 じられる.こうした明快で活気のある配色調和は 本書,“diegrafischenreihen’’に紹介される多 くの作品シリーズに共通した点である.. 色相環上で選択された色の順をみるなら, NO.12「8つの色変換」の作品シリーズでは,. 6.まとめ. 本稿での各バリエーション作品の再現の目的は 単に作品を模倣することではない.例えば,最初. の原画を見て,そこに描かれる折り曲げ螺旋の線. 209.

(15) 八重樫 良 二. 形やバリエーション1をどのように描けばいいか. ス・ビルは「連続的な展開」というテーマをこの. は誰でもすぐに思いつくことである.NO.1シ. シリーズに与えているが,それは無限に続く展開. リーズの各バリエーション作品にはすぐに真似で. ではなく,極限を向かえることが最初の原画で既. きるものもあれば,どのような考えでその図を表. 定されていた訳である.幾何形の中で正3角形は. したのか,すぐにはよくわからないものがある.. 面を持つ最初の形であるからこそ,そこから始め. いずれにしても複写的に模倣することは簡単であ. られたのであろう.その展開の終わりはおそらく. るが,それでは,例えばバリエーション1での多. 円形がふさわしいものだったように思えるが,実. 角形を重ね合わせる規則性を知ることはできな. 際にはそれには正8角形があてられている.仮に. い.また他のバリエーション作品との関連につい. 正9角形や正10角形まで展開してみても,それほ. てもわからない.先に説明したようマックス・ビ. どの差異を見いだすことはなかったのであろう.. ルの「展開」のルールを知り,作図の考え方を理. 正8角形はそれで十分に円に収束することが暗示. 解することで各バリエーション作品を再現するこ. できる形として選ばれているように推測された.. とができる.例えばバリエーション9の作品では. また,シリーズの終わりを螺旋形が描かれたバ. 中心に6つの小さな円が描かれているが,それら. リエーション15としていることにも何かしらの意. の円が多角形の内接円,外接円の中心に位置して. 図があるように思われた.最初の原画に見る多角. いることを理解して,はじめて正しく再現するこ. 形の外周に沿うように展開する折り曲げ線の1辺. とができる.掲載された作品の寸法を測ることだ. の長さをだんだんに短くし,その方向を徐々に変. けで作図するなら,そこには必ず寸法誤差が含ま. えていくことで,その螺旋形はバリエーション15. れてしまうことになる.再現するということは単. で見る滑らかに変化する螺旋に近似する.つまり,. に原図を模倣することではなく,それがどのよう. シリーズの始まりの形と終わりの形は構造的,骨. に描かれたのか理解して作図することを指してい. 格的には同じ形であった訳である.この作品シ. る.. リーズは形への構造的な見方を気がつかせてくれ 先に記したよう,この作品シリーズはまさに数. 学的な観点に立った創作である.美術表現一般に. るものであった.. 本稿では研究主題としている色彩教育との関連. は必ず,その筆勢や微妙な色合いなど偶発的な表. が希薄なものとなってしまったが,NO.1シリー. 現が生じて,普通はその作者でなければ描けない. ズは本書,“diegrafischenreihen’’の最初に提. 要素が含まれる.それに対してマックス・ビルは. 示される作品であり,その作品への考察は本書を. この作品シリーズで,それらを除外して全く機械. 理解する上で欠かせないものであった.マック. 的な方法で美術表現を試みている.そのため本人. ス・ビルの作品全体の理解に資する基礎的な考察. はなにも描かずに印刷指示するだけで,このシ. としたい.今後はこうした規則性を個性とする作. リーズを制作することが可能である.本稿では印. 風が生まれた背景とその芸術表現が認知される経. 刷指示をコンピュータソフトの操作指示に置き換. 緯,その創作手法における色彩計画の特質などに. えて,再現している.これら15点のバリエーショ. ついても考察を加え,色彩教育との関わりの観点. ン作品が何故このように描かれているのか,最初. からその個性と手法を配色技法としてどのように. の原画をどのように改変するのか,その指示内容. 生かすことができるかを考えたい.. を推測しながら再現的に作図することは言うなれ ば,その作品制作の追体験するようなものであっ 註. た.. 再現を通して,シリーズにおける各バリエー ションの図法的な処理がよく理解できた.マック. 210. 1)maxbilldiegrafischenreihenverlaggerdhatje printed,1995ISBN3−7757−0311−Ⅹ.

(16) 構成作品の色彩教育への応用について(3) (本稿での人名,図書名の記載は原著に倣った.) 2)北海道教育大学紀要教育科学編第54巻第1号「構成. CANTZprinted,2005ISBN3−7757−1641−62Gno.29 and30−neXuSteXtOSdeMaxBill−GGprinted,2004ISBN. 作品の色彩教育への応用について(1)」(175頁∼189頁). 84−252−1956−6BauhausbyBauhaus−ArchivMuseum. においてNO.6「5つの正方形における色変換」を,. Taschenprinted,1992ISBN3−8228−0710−9. 北海道教育大学紀要教育科学編第56巻第2号「構成作. (前稿で既に挙げた参考文献の記載は省略.). 品の色彩教育への応用について(2)」(175頁∼186頁)に. おいてNO.3「7scarions」とNO.12「8つの色変換」 の各シリーズを取り上げている.. (旭川校数授). 3)1920年代から30年代にかけてヨーロッパ各地で作家. 達がグループを作って新たな美術表現を模索した抽象 絵画,構成的表現が盛んに発表された時期がある.有. 名な活動にロシア構成主義やイタリア未来派などがあ る.. 4)その文章は全く研究論文に相当するものである.マッ. クス・ビルの主要な造形活動が建築家であったことを 考えあわせると,その理論的,知的な造形活動の一側 面が察せられる一文である. 5)本書ではもちろん特色刷りの色刷り印刷で掲載され ている.本稿の図版は考察説明として全て白黒版で掲 げている. 6)このシリーズでは最初の1点にのみ作品タイトルが 付されている.他はバリエーションナンバーだけであ る.本書ではマックス・ビル自身のコメントが各バリ. エーション毎に記されているが「連続的な展開」とい う言葉は最初の原画である“dasthema”に関して記さ. れるコメント中のkontinuierlicheentwicklungの語の 翻訳から待ている.なお他の文献では「reiche(順序)」 というサブタイトルも見られたが,本稿では本書に習 い「dasthema(主題)」と記した.. 7)このシリーズでの多角形は正3角形,正方形,正5 角形…というように正8角形まで展開されている.本 文中での多角形は止多角形を意味するが,煩填である ので単に多角形と記した. 8)本稿ではその作図にあたってコンピュータソフトに はAdobeIllustratorを用いている. 9)2点半円弧による近似螺旋とは中心点を2カ所にず. らして段々に半径が大きくなるように交互に半円を描 いて,半円の連続によって待た渦巻き形のことである.. 10)ワシーT)・カンディンスキーWaSSilykandinskyロ シア,モスクワ生1866年∼1944年. 11)前掲,「構成作品の色彩教育への応用について(1)」に. おいてb6 v3 v12 v20 v4 v23と記していたが一 部を改めて記した.本稿をもって訂正する. 12)前掲,「構成作品の色彩教育への応用について(2)」に おいて図6として示した図を転載した.. 参考文献 maxbill,maier,bildhauer,arChitekt,designerHATJE. 211.

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参照

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