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小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究

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(1)Title. 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. Author(s). 渡会, 陽平. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(1): 137-149. Issue Date. 2017-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9559. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第₁号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68, No.1. 平 成 29 年 ₈ 月 August, 2017. 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究 渡 会 陽 平 北海道教育大学札幌校数学教育学研究室. A Study of the Meaning of Term “B per A” in Elementary School Mathematics WATARAI Yohei Department of Mathematics Education, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本稿の目的は,小学校算数科において“AあたりB”を割合の意味を持つ表現として指導す るために,“AあたりB”という表現の意味の概念整理を行うことを通して,“AあたりB”の 意味指導への示唆を示すことである。そのために,“AあたりB”という表現の日常語として の意味及び数学的な意味の関係を整理するとともに,“AあたりB”という表現の教科書にお ける扱いについて整理し,それらの結果に基づいて“AあたりB”の意味指導への示唆につい て検討した。 その結果,算数科における“AあたりB”という表現の扱いについての課題として,“Aあ たりB”という表現が1つの量として扱われていないことと,平均値に対して“AあたりB” という表現が用いられていないことの2点を指摘した。そして,上記の課題に対して,単位量 あたりの大きさの学習において“AあたりB”という表現を1つの量として扱うための学習内 容を提案するとともに,平均値に対して“AあたりB”という表現を用いることの数学的な妥 当性を示した。. 1.研究意図. 量あたりの大きさ”は平均を前提として一方の量 の大きさの単位量に対応するもう一方の量の大き. “割合”は同種の2量に対してだけではなく異. さを意味するし,その後に学習する速さは一般に. 種の2量に対しても用いられる用語であるが,こ. 既習の単位量あたりの大きさに基づいて“単位時. れまでの算数科の指導においては異種の2量の割. 間あたりに進む道のり”として定義されている。. 合として捉えられる量(以下,異種の2量の割合. 一方で中学校数学科の関数の学習では,変化の割. と略記する)が割合として意味づけられて指導さ. 合が「( y の増加量)/( x の増加量)」で定義さ. れてはこなかった。具体的に言えば,異種の2量. れているように, x の増加量と y の増加量という. の割合の比較の問題場面において学習する“単位. 異種の2量の商に対して割合という用語が当たり. 137.

(3) 渡 会 陽 平. 前のように使われているが,それ以前に割合とい う用語が異種の2量に対しても用いることができ. 2.研究方法. るという学習内容が位置づけられているわけでは. ⑴ 研究方法. ない。このように,現在の算数・数学教育では異. 1.で述べた目的を達成するために,まず“A. 種の2量の割合を割合として認める学習内容が位. あたりB”という表現の日常語としての意味を辞. 置づけられていないのである。算数・数学教育で. 書に基づいて整理するとともに,数学的な意味を. は子ども達が既習をもとにして数学を創ることが. 分析枠組みを用いて特徴づけることを通して,双. 目指されていることを鑑みると,この学習内容の. 方の関係を明らかにする。次に,算数科において. 飛躍はカリキュラム上の問題点であり,解消する. これまでに“AあたりB”という表現がどのよう. 必要がある。. な学習内容において,どのような意味として扱わ. このような問題点に対して,渡会(2016)は小. れてきたのかを教科書分析によって明らかにす. 学校算数科の割合の比較の問題場面において関数. る。最後に,以上の検討に基づいて算数科におい. 比を一定に保つ性質に着目することによる同種の. て“AあたりB”の意味指導を行うための現状の. 2量の割合と関連づけた異種の2量の割合の意味. 課題を明らかにした上で,“AあたりB”の意味. づけを提案している。渡会(2016)の提案では同. 指導を行うための示唆について考察する。. 種の2量の割合と異種の2量の割合の意味を統合. ⑵ 数学的な意味についての分析の枠組み. することによる上記の問題点の改善が検討されて. 本稿では“AあたりB”という表現の数学的な. いるが,一方でその統合に先立って,異種の2量. 意味について整理するために,Vergnaud(1983). の割合を表すために用いられる表現“AあたりB”. が 提 案 し た 乗 法 的 構 造 の 枠 組 み を 用 い る。. の意味に着目することによる改善も考えられる。. Vergnaudは乗法・除法が関わる問題場面の全体を. 直(1990,1991)が示したように,“割合”とい. “乗法的構造の概念野”として束ね,乗法的な概. う用語は算数・数学教育では戦前には無定義で日. 念の用いられる問題場面を乗法的構造の枠組みに. 常語として用いられていたが,戦後には算数科に. よって分類している。乗法的構造の枠組みは2つ. おいて定義されて用いられるようになったという. の量の比例関係を主軸として構成されるところに. 経緯がある。その視点からみると, “AあたりB”. 特徴があり,必然的に乗法的な概念は比例関係と. という表現は日常語として用いられているために. 関連づけて説明できることになる。乗法的な概念を. 現在の算数・数学教育においても無定義で用いら. 特徴づけることのできる枠組みには他にも. れているが,割合の意味を持つ表現として指導す. Schwartz(1988)の内包 量・外 延 量の 枠 組みや. れば,児童が異種の2量の割合を割合として捉え. Nesher(1988)の命題構造の枠組みがあるが,小. られるようになることにつながると考える。それ. 学校算数科における乗法的な概念の指導は比例関. を実現するためには, “AあたりB”という表現. 係と関連づけてなされるから,小学校算数科での. の日常語としての意味と数学的な意味の概念整理. 指導を視野に入れると,比例関係と関連づけること. を行った上で,算数科においてどのような意味と. のできる乗法的構造の枠組みは“AあたりB”の数. して指導すべきなのかを明らかにする必要がある。. 学的な意味を特徴づけることに適しているのである。. 以上の問題意識から,本稿は,小学校算数科に. Vergnaud(1983)は乗法的構造の枠組みにお. おいて“AあたりB”を割合の意味を持つ表現と. いて,乗法的な問題場面を単比例の構造と複比例. して指導するために, “AあたりB”という表現. の構造によって特徴づけている。図1は比例関係. の意味の概念整理を行うことを通して, “Aあた. にある2つの測度空間M1 ,M2 で構成される単比. りB”の意味指導への示唆を示すことを目的とす. 例の構造である。 c , a , b が未知数の場合にそ. る。. れぞれ乗法,等分除,包含除の問題場面に内在す. 138.

(4) 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. る構造になり,それぞれの演算は次のような操作. 複比例の構造においてM1 とM3 ,M2 とM3 には. として説明される。. それぞれ比例関係があるので,この構造は二重の. 図2は乗法を表わしている。「 × b 」はM1 にお. 単比例の構造として解釈することができる. いて1を b に対応させるスカラー演算子であり,. (Vergnaud,1983)。例えば,縦3cm,横5cm. この「 × b 」をM2 の a に適用することで a × b. の長方形の面積は3 × 5 = 15(cm2)というよ. となる。. うに直積の乗法によって求められるが,二重の単. 図3は等分除を表わしている。「 ÷ b 」はM1 に. 比例の構造によって解釈をすれば,図7のように. おいて b を1に対応させるスカラー演算子であ. 乗法3 × 5を(1 × 3) × 5というスカラー演. り,この「 ÷ b 」をM2 の c に適用することで c. 算子を2回適用する操作として解釈できる。. ÷ b となる。 図4は包含除を表わしている。 「÷a 」は上行に おいて a を1に対応させる関数演算子であり,こ の 「÷a 」 を下行の c に適用することで c÷a となる。 【図7】. 3. “AあたりB”の意味についての概念整理 【図1】. 【図2】. ⑴ “AあたりB”の日常語としての意味 “AあたりB”の意味についていくつかの辞書 をみてみると,それぞれで表現の仕方に多少の違 いはあるが,その意味は大きく2つに分類できる。. 【図3】. 【図4】. 1つは「数詞や,数量の単位となる語に付く。 全体を平均してならし,個々に割りふったとき,. また,図5で表される複比例の構造は2つの測. その各々に配当される量を表す。(森田,1989)」. 度空間M1 ,M2 を第3の測度空間M3 に直積で対. と説明されているように,「全体の大きさを平均. 応 さ せ る 構 造 で あ り,a ∈ M1 ,b ∈ M2 ,c ∈. の操作により個々に均等に割り当てた大きさ」と. M3 ,そして 1 ∈ M1 と 1 ∈ M2 の組(1, 1) ∈ M1 ×. いう全体の大きさを前提とした意味である。. M2 に対応するM3 の要素 について,c = × (a. もう1つは,例えば“AあたりB”の意味につ. × b)が成り立つ。例えば, 「(速さ v ) × (時間 t ). いて「「一」または単位を表す語に付いて,「…に. = (道のり d )」で解決できる速さの問題場面なら. つ き 」「 … に 対 し て 」 の 意 を 表 す。( 松 村,. ば図6のように時間,速さ,道のりの測度空間が. 2006)」と説明されていて,用例の1つに「1人. それぞれM1 ,M2 ,M3 で, = 1 (1時間あたり1. あたり3枚ずつ配る。(松村,2006)」が挙げられ. km進む速さが時速1km) の複比例の構造を持つ。. ている。また, 「…につき」の意味は「…について」 と同じとあり(松村,2006),「…について」の意 味は「ごとに。それぞれに。…に対して。(松村, 2006)」とある。よって,「1人あたり3枚ずつ配 る」とは「(何人かに配るときに)それぞれに3 枚ずつ配る」ということである。この文の意味と. 【図5】. 【図6】. しては「全体の大きさを平均した結果,1人につ. 139.

(5) 渡 会 陽 平. き3枚ずつ配る」という場合も考えられるが,そ れだけではなく「予め1人に対する配布枚数が決 まっていて,1人につき3枚ずつ配る」という場 合も考えられる。後者の場合は,平均が前提にあ るわけではなく, 「基準となる大きさをそれぞれ. 【図8】. 【図9】. に適用する」という基準となる大きさを前提とし. もう1つは,1つの量そのものを表す表現とし. た意味である。. ての意味である。例えば,速さの表現の1つであ. 以上のように, “AあたりB”の日常語として. る“時速”は一般に“1時間あたりに進む道のり”. の意味は,平均して個々に割り当てた大きさを表. で定義されるから, “1時間あたりに進む道のり”. したいのか,もしくは適用する基準となる大きさ. は“時速”と同一視することができる。この場合,. を表したいのかという目的となる事柄に応じて,. “1時間あたりに進む道のり”という表現が対応. 前提となる大きさについて相対する2つの意味で. する2つの量(時間と道のり)の組ではなく速さ. 用いられている。. という量そのものを表すことになる。よって, “A. ⑵ “AあたりB”の数学的な意味. あたりB”を1つの量として捉えた場合には3つ. 乗法的構造によって“AあたりB”の意味を特. の量が関わる問題場面になるから,上記の1m2. 徴づけると,その意味は2つに分類できる。. あたりの人数を求める問題場面ならば図10のよう. 1つは,対応する2つの量の組を表す表現とし. に複比例の構造で特徴づけられる。. ての意味である。小学校算数科の第5学年では, 混み具合のような異種の2量の割合を比較するた めに“1m2あたりの人数”や“1人あたりの面積” といった単位量あたりの大きさについて学習す る。例えば「6m2に18人いる部屋」について“1 m2あたりの人数”を求める場合ならば,「6m2で 18人だから,1m2あたりの人数は18人を6等分. 【図10】. 2. すればいい。よって,18 ÷ 6 = 3だから,1m. あたりの人数は3人である。」というように,単. 一般に人数や個数といった離散量については要. 位量あたりの大きさを求めるために等分除が用い. 素の値は整数値に限られるため,2.4人や0.8個と. られる(図8) 。よって,除法によって求められ. いった数値が小数になる表現は認められない。し. る量は人数であって混み具合という量そのもので. かしながら,上記のように単位量あたりの大きさ. はない。 「1m2に対応する人数が3人である」こ. は1つの量として複比例の構造の測度空間に位置. 2. 2. とを“1m あたりの人数3人(1m あたり3人)”. づけることができるから,他2つの測度空間の量. と表現しているのである。従って,この場合の“1. の種類に制限されることなく,連続量として“1. 2. m あたりの人数3人”とは1つの量のことでは. m2あたり2.4人”や“1人あたり0.8個”といった. なく, 対応する2つの量の組のことである。即ち,. 表現を用いることができるのである。. 単比例の構造においては 1 ∈ M1 とそれに対応す. 上述のように単位量あたりの大きさを1つの量. る a ∈ M2 の組(1, a) ∈ M1 × M2 が“AあたりB”. として捉えた場合の3つの量の関係は図10のよう. を意味する(図9)。. に表すことができるが,算数科における問題解決 は図8のように2つの測度空間における等分除に よってなされるので,等分除によって求めた商を 量としての単位量あたりの大きさに対応させる操. 140.

(6) 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. 作が必要になる。図10において複比例の構造を二. あたりB”の意味を特徴づけると,それが表して. 重の単比例の構造とみた場合,その操作としては. いる対象が対応する2つの量の組である場合と1. 2. 1m に1人いる場合に対応する混み具合を“1 2. m あたり1人”と定義することを前提として2. つの量である場合の2つの意味に分類できる。 ⑶ 日常語としての“AあたりB”の意味と数学 的な“AあたりB”の意味の関係. 通りの可能性がある。 1つは,人数と混み具合の測度空間における乗. ⑴において述べたように,日常語としての“A. 法である(図11) 。この操作では「人数が3倍に. あたりB”の意味は表したい事柄が平均して個々. なれば混み具合も3倍になる」という比例関係に. に割り当てた大きさなのか,適用する基準となる. 基づいて,1m2に1人いる場合の1m2あたりの. 大きさなのかの違いにより2つに分類された。ま. 人数1人を3倍することで,即ち1 × 3 = 3に. た,⑵において述べたように,数学的な“Aあた. 2. より1m あたりの人数3人という混み具合が求. りB”の意味は表している対象が対応する2つの. められている。. 量の組なのか1つの量なのかの違いにより2つに. もう1つは,人数と混み具合の測度空間におけ. 分類された。分類の観点が異なっているので,日. る包含除である(図12)。この操作における除法. 常語としての意味と数学的な意味との間に対応関. は従来の算数・数学教育では指導されていない。. 係があるわけではなく,それぞれの意味は“Aあ. しかし,渡会(2015)が小学校算数科において比. たりB”という表現が用いられる場合の別側面の. 例の式を意味づけるために提案している再測定す. 意味になっている。. る演算から単位変換する演算への包含除の意味の 拡張を行うことにより可能になる。この場合なら ば,人数3人を1m2あたりの人数1人を単位と した再測定によって単位変換することで,即ち3 2. 4.算数科における“AあたりB”の扱い 算数科において“AあたりB”がどのように扱. ÷ 1 = 3により1m あたりの人数3人という混. われているのかについて,教科書での表現の扱い. み具合が求められている。. 方と学習内容としての意味の扱い方について整理 する。 ⑴ 算数科における“AあたりB”の表現の扱い 本稿では,算数科における“AあたりB”とい う表現の扱いを大まかに把握するために,学習指 導要領の昭和33年度以降の改訂区分ごとに,学校 図書,教育出版,啓林館,大日本図書,東京書籍,. 【図11】. 【図12】. 大阪書籍,日本文教出版の教科書を1セット抽出 し,それぞれの教科書において“AあたりB”と. このようにいずれの操作でも等分除の商と混み. いう表現がどのような学習内容で扱われてきたの. 具合の対応は可能である。しかしながら,上記の. かについて整理した。. 2. ように1m に1人いる場合に対応する混み具合. まず,いずれの教科書においても異種の2量の. を“1m2あたり1人”と定義した場合には1m2. 割合の学習において,単位量あたりの大きさを表. に対応する人数の数値と混み具合の数値が一致す. すために“AあたりB”という表現が用いられて. るため,1m2に n 人いることを“1m2あたり n. いる。. 人”と表すことによって,これらの操作は暗黙的. 次に,表1は異種の2量の割合の学習の前提と. なものとなっている。. なる平均の学習においてのそれぞれの教科書にお. 以上のように,数学的な構造を視点として“A. ける“AあたりB”という表現の扱いを整理した. 141.

(7) 渡 会 陽 平. 表1:平均の学習における“AあたりB”という表現の扱いの変遷 学校図書. S36. H27. 大日本図書. 東京書籍. 大阪書籍. なし. なし ※単位量あたりの 大きさの学習後に 平均を学習する。. 導 入 で「 1 日 あ た なし り」という表現が 用 い ら れ, 平 均 の 定 義 後 に は「 1 人 当たりの平均」, 「1 学年あたり平均○ 人」という表現が 用いられる。. 導 入 で「 ひ と り あ なし たり」という表現 が用いられ,「ひと りあたりの冊数」 が「 平 均 の 冊 数 」 として定義される。 その後,「1個あた り の 平 均 の ~」 と いう表現が用いら れる。. 導 入 で「 1 頭 あ た りの量」という表 現が用いられる。 ※単位量あたりの 大 き さ, 速 さ の 学 習後に平均を学習 する。. なし. 導 入 で「 1 歩 当 た なし りのならした長さ」 という表現が用い られる。. 導 入 で「 1 日 あ た り」という表現が 用いられ,「1日あ たりの人数」が「平 均の人数」として 定義される。. 平均の定義の後に 「1頭あたり平均 何 ℓ」 と い う 表 現 が用いられる。. 導 入 で「 1 頭 あ た り何ℓずつ」とい う表現が用いられ る。. なし. なし. なし. なし. 導 入 で「 1 日 あ た なし り」という表現が 用いられる。. なし. なし. なし. なし. 導 入 で「 1 日 あ た なし り 何 ℓ」 と い う 表 現が用いられる。. 導 入 で「 1 日 あ た なし り」という表現が 用いられる。. なし. 平均の定義後に「平 導 入 で「 1 個 あ た 日本文教出版 均すると○○1個 り何mL」という表 なし あ た り の ~」 と い 現が用いられる。 う表現が用いられ る。. S55. H14. 啓林館. 導 入 で「 1 日 あ た 平 均 の 定 義 に「 1 なし りの人数」という つ当たりの量」と 表現が用いられる。 いう表現が用いら れ, そ の 後「 一 日 当たりの平均を~」 といった表現が用 いられる。. S46. H4. 教育出版. なし. 導 入 で「 1 日 当 た り」という表現が 用いられ,「ならし た1日当たりの人 数」が「平均の人数」 として定義される。. ものである。教科書会社ごとで扱いの傾向が異. そして,表2は既習である“AあたりB”とい. なっていて,啓林館の教科書では一貫して扱われ. う表現が新しく学習する速さの学習にどのように. ていなかった。教育出版と大阪書籍の教科書では. 関わるのかについて,それぞれの教科書の速さの. 扱われていたが扱われなくなり,逆に東京書籍の. 学習における速さの定義の表現を整理したもので. 教科書では扱われていなかったが扱われるように. ある。教科書会社ごとでの“AあたりB”という. なっている。学校図書と大日本図書の教科書では. 表現の扱いの傾向を見てみると,学校図書の教科. 扱われていたが扱われなくなり,現在は再び扱わ. 書ではずっと速さの定義の表現に用いられてい. れるようになっている。また,“AあたりB”と. る。東京書籍の教科書では速さの定義の表現に. いう表現が扱われていたとしても,いずれの教科. ずっと用いられてこなかったが現在の教科書では. 書でも無定義で扱われている。そして,その扱い. 用いられるようになっている。また,教育出版,. にも違いがあり,導入でのみ扱われてその後は扱. 啓林館,大阪書籍の教科書では速さの定義の表現. われていなかったり,平均の定義に組み込まれて. に用いられたこともあったが,用いられなくなっ. いたり,平均の定義後にも扱われたりと様々であ. ている。このように速さの学習における“Aあた. る。このように平均の学習における“AあたりB”. りB”という表現の扱いについても平均の学習と. という表現の扱いは教科書ごとで様々である。. 同様に教科書ごとでの違いがある。. 142.

(8) 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. 表2:速さの学習における速さの定義の変遷 学校図書. 教育出版. 啓林館. 大日本図書. 東京書籍. 大阪書籍. 「平均1時間に進 単位の時間に進む む 道 の り( 1 時 間 道のり 当たりの速さ)を 時速という。」と説 明される。. 「 時 速 」 は「 1 時 きまった時間に進 間に進む道のりで む道のり 表した速さ」と説 明される。. きまった時間に進 む道のり. S36. 「平均してみると 1時間に○kmの割 合 に な り ま す。 こ のように計算した 速さを平均の速さ と言います。」と説 明される。. 「1時間あたりに 1km進む速さを時 速1km」と説明さ れる。. 単位時間に進む道 のり. 単位時間に進む平 均の道のり. 単位の時間に進む 道のり. 単位時間に進む道 のり. S46. 速さを表すために 「平均1秒間に何 m」,「 1 秒 間 当 た り 何mの 速 さ( 秒 速)」を用いると説 明される。. 単位時間に進む道 のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位の時間に進む 道のり. 単位時間あたりの 道のり. S55. 「平均して1時間 単位時間当たりに 当たり何kmという 進むきょり よ う に し て, 速 さ を表します。」と説 明される。 ※速さの学習後に 混み具合を学習す る。. H4. 単位時間当たりに 走るきょり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間あたりの 道のり. H14. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位の時間に進む 道のり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間に進む道 のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 単位時間あたりに 進む道のり. 日本文教出版. H27. 単位時間あたりの 道のり. 以上のように, “AあたりB”という表現はい. れているので,“AあたりB”の日常語としての. ずれの教科書においても単位量あたりの大きさを. 意味は「全体の大きさを平均の操作により個々に. 表すための表現としては扱われているが,それ以. 均等に割り当てた大きさ」である。そして,数学. 外の学習内容においての扱いについては教科書に. 的な意味は3.⑵で示したように対応する2つの. より異なる状況が現在も続いている。. 量の組である。. ⑵ 算数科における“AあたりB”の意味の扱い. また,「時速60kmで3時間進むとどれだけ進め. 3.において示した“AあたりB”の意味を観. るか。」のような速さの問題場面では,時速60km. 点として,算数科において“AあたりB”という. を「1時間で60km進む」と解釈して,「時間が3. 表現がどのような意味として扱われているのかに. 倍だから進む道のりも3倍になるから60 × 3 =. ついて整理する。. 180で180km進む。」というように解決する。この. いずれの教科書においても混み具合のような異. 解決においては時速60kmという表現自体は速さ. 種の2量の割合の比較の問題場面において単位量. という1つの量の表現ではあるが,問題解決にお. あたりの大きさを表すために“AあたりB”とい. いては速さそのものが用いられているのではな. う表現が扱われていて,その解決においては均等. く,時速60kmが“1時間に60km進む”というよ. にならした場合の単位量に対応する大きさを等分. うに対応する2つの量の組として解釈されて,そ. 除によって求めて,それらの大きさの大小関係に. れを基準となる大きさとすることで全体の道のり. よって比較を行っている。従って,この場合には. を求めている。従って,時速60kmが“1時間あ. “AあたりB”という表現におけるBの大きさが. たり60km進む”というように“AあたりB”の. 比較の対象となり,そのBは平均値として求めら. 表現で定義されているならば,時速60kmと“1. 143.

(9) 渡 会 陽 平. 時間あたり60km進む”の表現は同等になるので,. ある。よって,これまでの指導では無定義で扱わ. この場合の“AあたりB”の意味は日常語として. れている“AあたりB”という表現の意味を指導. は「基準となる大きさをそれぞれに適用する」の. するならば,“AあたりB”の意味を本質的な意. 意味であり,数学的には対応する2つの量の組の. 味である平均値と結びつけて指導することのでき. 意味である。. る平均の学習で行うことが適切であると考える。. 速さの問題場面では速さ・道のり・時間の3つ. しかしながら,4.⑴で示したように算数科にお. の量の関係による言葉の式による解決も扱われ. いて“AあたりB”という表現は主として単位量. る。言葉の式を用いた解決では速さが対応する2. あたりの大きさを表すために用いられていて,そ. つの量の組ではなく1つの量として扱われること. の前提となる平均の学習においては必ずしも扱わ. になるが,3つの量の関係により数値を機械的に. れているわけではなかった。このような現状に対. 求めてしまうため,日常語としての“AあたりB”. して,将来的に平均の学習内容において“Aあた. の意味は問題解決には関わってこない。. りB”という表現の意味づけを位置づけるために は,まず平均値に対して“AあたりB”という表. 5.“AあたりB”の意味指導への示唆. 現を用いることの数学的な妥当性を保証する必要 がある。. ⑴ “AあたりB”の扱いについての課題. 以上により,“AあたりB”という表現を1つ. 4.⑵で示したように,算数科において“Aあ. の量として扱い,その性質について考察すること. たりB”という表現は主に異種の2量の割合の比. ができる学習内容について検討することと,平均. 較の問題場面において単位量あたりの大きさを表. 値に対して“AあたりB”という表現を用いるこ. す表現として扱われ,その意味は日常語としては. との数学的な妥当性について検討することの2点. 「全体の大きさを平均の操作により個々に均等に. を算数科における“AあたりB”という表現の扱. 割り当てた大きさ」の意味であり,数学的には対. いについての現状の課題とする。. 応する2つの量の組の意味で扱われていた。しか. ⑵ 1つの量として“AあたりB”という表現を. しながら,学習指導要領解説において異種の2量. 扱うための学習内容についての検討. の割合が「基本的な量の性質をもっていない量」. まず,“AあたりB”という表現を1つの量と. というように新しい独立した量として説明されて. して扱うためにはどうしたらよいのか。従来の学. いることを鑑みると,また本稿の問題意識である. 習内容のように異種の2量の割合を単位量あたり. 異種の2量の割合を「2量の関係を表す1つの数」. の大きさによって比較するだけならば,“Aあた. という割合の意味で意味づけることを視野に入れ. りB”という表現を対応する2つの量の組として. ると, “AあたりB”という表現を対応する2つ. 捉えるだけで解決できてしまうので,1つの量と. の量の組としてだけではなく1つの量として扱. して捉える必要性は生じない。そこで,さらに“A. い,その性質について考察する学習内容を位置づ. あたりB”という表現からAの量やBの量の大き. ける必要があると考える。. さを比較する問題場面も扱ったとする。例えば,. また,上述したように算数科において主に扱わ. 「1m2あたり3人いる部屋と1m2あたり2.5人い. れている“AあたりB”の日常語としての意味は. る部屋がある。どちらの部屋のほうが人数が多く. 「全体の大きさを平均の操作により個々に均等に. いるのか。どちらの部屋のほうが面積が広いの. 割り当てた大きさ」であったが,それは平均の操. か。」といった問題場面である。この問題場面の. 作の結果を意味するから数学における平均値の意. 解決としては,“1m2あたり3人”や“1m2あた. 味に該当すると考えられる。つまり, “AあたりB”. り2.5人”という表現自体はその場の人数や面積. は本質的には平均値を表す表現と考えられるので. の情報については何も述べていないので,与えら. 144.

(10) 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. れた条件からだけではどちらのほうが人数が多い. いうように具体的な人数と缶の個数を想定してク. のかについても,どちらのほうが面積が広いのか. ラス全体の1人あたりの個数を求めてみると,上. についても判断することはできないと結論づける. 記の加法は男子と女子の人数が同じ場合には成り. ことになる。即ち,この問題場面の解決において. 立つが,人数が異なっている場合には成り立たな. は, “AあたりB”という表現がAの量でもBの. いことがわかる。よって,“a1 あたり b1”+“a2 あ. 量でもない第3の量を表した表現であると捉える. たり b2”=“(a1 + a2)あたり(b1 + b2)”という. 必要性が生じるのである。. 単位量あたりの大きさ同士の加法も一般には成り. 次に, “AあたりB”という表現を1つの量と. 立たないと結論づけられる。. して捉えた後に,その性質についてはどう扱った. 以上により,問題の解決としては「与えられた. らよいのだろうか。学習指導要領解説において異. 条件からだけではクラス全体の1人あたりの個数. 種の2量の割合が「基本的な量の性質をもってい. を求めることはできない」と結論づけられ,この. ない量」 として説明されているが,既習の量が持っ. 問題解決を通して「“AあたりB”で表される量. ていて異種の2量の割合が持っていない基本的な. は既習の量とは違って2つの大きさを合わせたと. 量の性質の1つとして合併した際の量の加法性が. きの加法が一般に成り立たない」という性質があ. ある。そこで,例えば「5年1組は空き缶集めを. るとまとめることができる。. して,男子は1人あたり8.8個,女子は1人あた. ⑶ 平均値に対して“AあたりB”という表現を. り14.2個集めた。男子と女子を合わせたクラス全. 用いることの数学的な妥当性についての検討. 体では1人あたり何個集めたことになるのか。」. 算数科において学習する平均は相加平均であ. という問題場面を扱ったとする。既習の量の問題. り,数学においては n 個の値 a1 , …, an の相加平. 場面ならば,男子と女子を合わせた大きさを求め. 均による平均値 aM は aM = (a1 + … + an) ÷ n で. る場合には加法によって求めることができたの. 定義されている。この定義における除法を単比例. で, この問題場面においても加法が使いたくなる。. の構造で特徴づけると,図13,図14の2通りの表. そこで, “AあたりB”で表される量同士の加法. し方ができる。. が成り立つのかについて検討する。 第一に, 「8.8 + 14.2 = 23より1人あたり23個で ある。 」という解決における加法が考えられる。 この場合は,クラス全体の1人あたりの個数は男 子の1人あたりの個数と女子の1人あたりの個数. 【図13】. 【図14】. の間の大きさになるということは“AあたりB” の意味から明らかなので,このような加法を用い. 図13の場合の(a1 + … + an) ÷ n における除法. ることは明らかに誤っていると判断することがで. は等分除であり,n 個の要素の和を n 等分する操. きる。従って, “a1 あたり b1”+“a1 あたり b2”=. 作として説明できる。この操作は一般的に平均し. ”という単位量あたりの大 “a1 あたり(b1 + b2). てならした大きさを求めるためになされる操作と. きさ同士の加法は成り立たないと結論づけられる。. 合致している。. 第二に, 「(1人あたり8.8個) + (1人あたり14.2. 一方で,図14の場合の(a1 + … + an) ÷ n にお. 個) = (2人あたり23個)だから1人あたり11.5個. ける除法は包含除であるが,この操作の意味を単. である。 」 という解決における加法が考えられる。. 比例の構造だけで説明することは困難である。そ. この場合については,男子が5人ならば缶の個数. こで,(a1 + … + an) ÷ n を包含除によって解釈. は44個,10人ならば88個,…,女子の人数が5人. するために,平均値を独立した1つの量と見なし. ならば缶の個数は71個,10人ならば142個,…と. て,図15のように複比例の構造で特徴づける。要. 145.

(11) 渡 会 陽 平. 素 a1 , …, an が属す測度空間がM3 ,要素の個数の. は,M3 の量が離散量であったとしても,それと. 測度空間がM1 ,そして平均値の測度空間がM2 で. は関係なくM2 の量は連続量となるので aM ∈ M2. ある。. は小数値をとりうるのである。. 【図15】. 【図16】. 【図17】. 【図18】. 図15において aM ∈ M2 を求めるために n ∈ M1 を固定すると,n ∈ M3 は個数ではなく a1 , …, an. 上述のように解釈すれば,離散量を平均した場. と同種の量の要素であるから,n ∈ M3 の大きさ. 合の平均値が小数値をとりうることを説明するこ. を n ∈ M1 の個数で平均するとその大きさは 1 ∈. とができる。しかしながら,これらの解釈の前提. M2 になる。即ち,(1, 1) ∈ M1 × M3 の場合の平. となっている平均値を独立した1つの量として見. 均値 aM ∈ M2 は aM = 1 になる。よって,測度空. なすことはそもそも妥当なのだろうか。このこと. 間M2 とM3 に お い てM3 に お け る a1 + … + an が. について検討するために平均値の意味に遡ると,. n の何倍の大きさかを求めれば,その大きさが. 平均値とはある集団の大きさをならした大きさの. M2 における平均値 aM と一致する。従って,M3. ことであり,それを求めるための操作(a1 + …. において a1 + … + an が n の何倍の大きさかを求. + an) ÷ n によって数学においては定義されてい. める除法として (a1 + … + an) ÷ n を解釈すれば,. る。そして,この定義における除法は上述したよ. 既習の包含除によって説明することができる。し. うに等分除として解釈すると,一般的に平均して. かしながら,この操作は一般的に平均してならし. ならした大きさを求めるためになされる操作と合. た大きさを求めるためになされる操作とは合致し. 致していた。この等分除の商の解釈としては n. ていない. ※1. 。. 等分した1つ分の大きさ,もしくは単位量あたり. 上述のように,平均値の定義における除法は図. の大きさの2通りの可能性があるが,平均値は集. 13のように等分除で解釈することが適切であるよ. 団の傾向を表すことを目的としていることを鑑み. うにみえる。しかしながら,この単比例の構造に. ると,対象の混雑さを表す混み具合や対象の進み. よる解釈では,測度空間M2 の量が離散量の場合. 具合を表す速さのように「~具合」という対象の. に平均値 aM が小数値をとってよいことの説明を. 傾向を表す量の表現である単位量あたりの大きさ. することができない。そこで,等分除の解釈につ. として解釈したほうが妥当である。よって,平均. いても,要素 a1 , …, an が属す測度空間M3 ,要素. 値の意味とそれを用いる目的を考慮すると,平均. の個数の測度空間M1 ,平均値の測度空間M2 によ. 値を1つの量として扱うことは妥当である。. る複比例の構造で特徴づけると図16のように表せ. 以上のように,平均値の定義は複比例の構造に. る。そして,図16において aM ∈ M2 を求めるた. おいて解釈でき,その構造において平均値は単位. めに,3.⑵で示した単位量あたりの大きさの解. 量あたりの大きさを表す1つの量として特徴づけ. 釈と同様に(a1 + … + an)/n ∈ M3 を aM ∈ M2 に. られるので,平均値に対して“AあたりB”とい. 対応させる操作として図17,図18の2通りの操作. う表現を用いても数学的に妥当である。. をすることができる(但し,図17,図18において. ⑷ “AあたりB”の意味指導への示唆. = (a1 + … + an)/n である)。この解釈において 146. 以上の検討に基づいて,本稿では平均及び異種.

(12) 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. の2量の割合の学習において次のように“Aあた. 合できるのである。. りB”の意味指導を行うことを提案する。. そして,速さの学習において“単位時間あたり. まず,平均の学習において平均値が“Aあたり. に進む道のり”によって速さを表すと定義する。. B”という表現で表わされることを扱う。この学. そうすれば速さは“AあたりB”という表現で表. 習においては例えば,平均の操作の結果に対して. されるので,合併したときに加法が成り立たない. “1日分は2.5個”という表現をした場合には現. という点について同種の2量の割合と同じ性質を. 実場面には2.5個は存在しないのでこの表現は不. 持った量として位置づけた上でその後の速さの学. 適切であるが,“1日あたり2.5個”というように. 習を進められる。. “AあたりB”という表現ならばBの値が小数値 になってもよいことを指導する。この学習によっ て, “AあたりB”という表現を平均した結果を. 6.まとめと今後の課題. 表すための数学的な表現として意味づけるのであ. 本稿の目的は,小学校算数科において“Aあた. る。. りB”を割合の意味を持つ表現として指導するた. 次に,異種の2量の割合の比較の問題場面にお. めに,“AあたりB”という表現の意味の概念整. いて,単位量あたりの大きさを表すために“Aあ. 理を行うことを通して,“AあたりB”の意味指. たりB”という表現を用いることを扱う。この学. 導への示唆を示すことであった。そのために, “A. 習において一方を単位量として他方を数値化する. あたりB”という表現の日常語としての意味及び. 方法を用いて比較する場合には,問題場面の状況. 数学的な意味の関係を整理するとともに,“Aあ. が均等にならされている状況を想定して単位量に. たりB”という表現の教科書における扱いについ. 対応する大きさを等分除を用いて求めることにな. て整理し,それらの結果に基づいて算数科におけ. る。この操作は既習の平均の操作と同様であるか. る“AあたりB”という表現の扱いについての課. ら,一方を単位量として他方を数値化する方法で. 題を明らかにした上で“AあたりB”の意味指導. 求めた結果についても平均値と同様に“Aあたり. への示唆について検討した。. B”で表すことにするのである。. その結果,算数科における“AあたりB”とい. さらに,異種の2量の割合の比較の学習に続け. う表現の扱いについての課題として,“Aあたり. て,5.⑵で示したような“AあたりB”という. B”という表現が1つの量として扱われていない. 表現を1つの量として捉え直す学習内容及び1つ. ことと,平均値に対して“AあたりB”という表. の量としての“AあたりB”の性質を顕在化する. 現が用いられていないことの2点を指摘した。そ. 学習内容を扱う。この学習において扱われる合併. して第一の課題に対しては,単位量あたりの大き. したときに加法が成り立たないという“Aあたり. さの学習において“AあたりB”という表現から. B”の性質は,例えば「あるイベントへの出席率. Aの量やBの量の大きさを比較すること及び“A. が5年1組は30%,5年2組は40%のときに,1. あたりB”という表現についての加法が成り立た. 組と2組を合わせた5年生全体の出席率は70%に. ないことを学習内容として扱うことで,“Aあた. はならない。 」というように同種の2量の割合に. りB”という表現を1つの量として捉え直すこと. ついても成り立つ性質である。従って,単位量あ. ができるとともに,同種の2量の割合と同じ性質. たりの大きさの後に位置づけられている同種の2. を持つ量として捉えることにもつながることを示. 量の割合の学習においても合併したときに加法が. した。また第二の課題に対しては,平均値の定義. 成り立たないという性質を扱えば,同種の2量の. は複比例の構造において解釈でき,その構造にお. 割合と“AあたりB”という表現で表される異種. いて平均値は単位量あたりの大きさを表す1つの. の2量の割合を同じ性質を持つ量という観点で統. 量として特徴づけられるので,平均値に対して“A. 147.

(13) 渡 会 陽 平. あたりB”という表現を用いることは数学的に妥 当であることを示した。 渡会(2016)が提案している関数比を一定に保 つ性質に着目することによる同種の2量の割合と 関連づけた異種の2量の割合の意味づけの指導で は数学的な形式の側面から同種の2量の割合と異 種の2量の割合の統合を行っているが,本稿で提. 文部科学省(2008) . 『小学校学習指導要領解説 算数編 平成20年8月』 .東洋館出版社. 渡会陽平(2014).「小学校算数科における倍と割合の意 味に関する学習過程の分析-G. Vergnaudの概念野理 論を手がかりとして-」 .日本数学教育学会誌.第96巻. 論究臨時増刊.217-224. 渡会陽平(2015).「算数科における比例の式に用いられ る乗法についての量に対する操作による意味づけ」 .日 本数学教育学会第48回秋期研究大会発表集録.213-216.. 案した指導を行うことで上記の指導に先立って同. 渡会陽平(2016).「異種の2量の割合として捉えられる. 種の2量の割合と異種の2量の割合を性質の側面. 量の割合としての意味づけ」.日本数学教育学会第49回. から関連づけられることになる。この性質の側面. 秋期研究大会発表集録.203-206.. からの関連づけを前提とした上での渡会(2016) の提案する指導への影響と接続について検討する ことが今後の課題である。. 昭和36年度用教科書 彌永昌吉ほか. 『新しい算数』 .東京書籍. 河口商次ほか. 『標準算数』 .教育出版. 塩野直道ほか. 『小学校新算数』 .啓林館. 末鋼怒一ほか. 『算数』 .大日本図書. 辻正次ほか. 『小学校算数』 .学校図書.. 註 1.渡会(2014)は図15の解釈までを基にして平均を単. 前田隆一ほか. 『小学算数』 .大阪書籍. 昭和46年度用教科書 秋月康夫ほか. 『小学校新算数』 .大日本図書.. 比例の構造で特徴づける立場をとっているが,本稿で. 彌永昌吉ほか. 『新しい算数』 .東京書籍.. はさらに分析を進めて,複比例の構造で特徴づけるこ. 河口商次ほか. 『新版標準算数』 .教育出版.. との数学的な妥当性について検討した。. 古賀昇一ほか. 『小学算数』 .大阪書籍. 塩野直道ほか. 『算数』 .啓林館.. 引用・参考文献 Nesher, P. (1988). Multiplicative school word problems: Theoretical approaches and empirical findings. In J. Hiebert & M. Behr (Eds.), Number concepts and operations in the middle grades, Hillsdale: Lawrence Erlbaun Associates, 19-40. Schwartz, J. (1988). Intensive quantity and referent transforming arithmetic operations. In J. Hiebert & M. Behr (Eds.), Number concepts and operations in the middle grades, Hillsdale: Lawrence Erlbaun Associates, 41-52. Vergnaud, G. (1983). Multiplicative structures. In R. Lesh & M. Landau (Eds.), Acquisition of mathematics concepts and processes, New York; Tokyo: Academic Press, 127-175. 直芳子(1990) . 「小学校における「割合」指導の変遷⑴ -「割合」と「比」の定義に着目して-」.日本数学教 育学会誌.第72巻.第12号.22-27. 直芳子(1991) . 「小学校における「割合」指導の変遷⑵ -「割合」と「比」の定義に着目して-」.日本数学教 育学会誌.第73巻.第2号.2-10. 松村明編(2006).『大辞林 第三版』.三省堂. 森田良行(1989).『基礎日本語辞典』.角川書店.. 148. 戸田清ほか. 『小学校算数』 .学校図書. 昭和55年度用教科書 青柳雅計ほか. 『小学校算数』 .学校図書. 宇喜多義昌ほか. 『小学算数』 .教育出版. 小平邦彦ほか. 『新しい算数』 .東京書籍. 赤攝也ほか. 『たのしい算数』 .大日本図書. 高橋陸男ほか. 『小学算数』 .大阪書籍. 橋本順次ほか. 『算数』 .啓林館. 平成4年度用教科書 青柳雅計ほか. 『小学校算数』 .学校図書. 飯島康男ほか. 『算数』 .啓林館. 赤攝也ほか. 『たのしい算数』 .大日本図書. 平林一栄ほか. 『小学算数』 .大阪書籍. 前原昭二ほか. 『新しい算数』 .東京書籍. 茂木勇ほか. 『新版算数』 .教育出版. 平成14年度用教科書 一松信ほか. 『学校算数』 .学校図書. 澤田利夫ほか. 『小学算数』 .教育出版. 杉山吉茂ほか. 『新しい算数』 .東京書籍. 赤攝也ほか. 『たのしい算数』 .大日本図書. 中原忠男ほか. 『小学算数』 .大阪書籍. 細川藤次ほか. 『算数』 .啓林館. 平成27年度用教科書 一松信ほか. 『みんなと学ぶ小学校算数』 .学校図書..

(14) 小学校算数科における表現“AあたりB”の意味に関する研究. 小山正孝ほか.『小学算数』.日本文教出版. 清水静海ほか.『わくわく算数』.啓林館. 赤攝也ほか.『たのしい算数』.大日本図書. 坪田耕三ほか.『小学算数』.教育出版. 藤井斉亮ほか.『新しい算数』.東京書籍.. (札幌校特任講師). 149.

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