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因果性の学習と推論に関する実験心理学的研究 : 因果ベイズネットの心理学的妥当性の検討

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(1)

因果性の学習と推論に関する実験心理学的研究 :

因果ベイズネットの心理学的妥当性の検討

著者

斎藤 元幸

学位名

博士(心理学)

学位授与機関

関西学院大学

学位授与番号

34504甲第550号

URL

http://hdl.handle.net/10236/13890

(2)

博士学位申請論文

因果性の学習と推論に関する

実験心理学的研究

―因果ベイズネットの心理学的妥当性の検討―

関西学院大学大学院文学研究科

博士課程後期課程

総合心理科学専攻心理科学領域

斎藤 元幸

(3)

要 旨

因 果 の 知 識 をどの よ うに 獲 得 し て 使 用 す る かと い う 問 題 は 数 多 く の 哲 学 者 の 論 考 を 背 景 に,心 理 学 においても様 々なアプローチから解 決 が試 み られてきた .近 年 ,新 たな アプロ ーチ と して因 果 ベ イズネット を用 いた 説 明 がなされ てい る .因 果 ベ イズネット と は , 既 存 の 情 報 から因 果 関 係 を適 切 に 導 き 出 し ,与 えられた 情 報 から推 測 を行 うために 統 計 学 や 計 算 機 科 学 と い った 分 野 で 開 発 され た 数 理 的 手 法 で あ る . 因 果 ベ イズネッ ト を 用 い る こと で 因 果 性 の 学 習 と 推 論 に 関 す る 一 部 の 側 面 はうま く 説 明 され る も のの ,ま だ 十 分 に検 討 されていない側 面 も数 多 く存 在 している .本 研 究 の目 的 は,因 果 構 造 の学 習 と因 果 強 度 の学 習 と因 果 推 論 の3 つの側 面 から因 果 ベイズネットの心 理 学 的 妥 当 性 を検 討 することであった. 因 果 構 造 の学 習 では事 象 間 の因 果 の方 向 性 が未 知 であり,学 習 者 は様 々な手 がか りに基 づいて因 果 構 造 を推 測 するように求 められる.研 究1 では因 果 構 造 の学 習 におけ る共 変 動 情 報 の役 割 を検 討 した ,2 事 象 で構 成 される最 も単 純 な因 果 構 造 の判 断 課 題 を用 いて,共 変 動 手 がかりと時 間 順 序 手 がかりのどちらが使 用 されるか検 討 した (実 験 1).その結 果 ,共 変 動 手 がかりが重 視 されることが示 された.また,共 変 動 手 がかりと 時 間 順 序 手 がかりが 学 習 過 程 でどのように影 響 を及 ぼしているか検 討 した ところ,学 習 初 期 では時 間 順 序 手 がかりが優 先 され ,試 行 の経 過 に伴 って共 変 動 手 がかりが重 視 さ れることが明 らかとなった (実 験 2).さらに,共 変 動 情 報 を体 系 的 に操 作 して共 変 動 手 がかりから因 果 の方 向 性 がどのように導 かれるかについて検 討 を行 った結 果 ,実 験 課 題 に応 じて,因 果 の必 要 性 に基 づいた解 釈 を行 うか ,因 果 の十 分 性 に基 づいた解 釈 を行 うか変 化 することが確 認 された (実 験 3, 実 験 4).研 究 1 の結 果 は,時 間 順 序 を重 視 す るヒューリスティックモ デ ルよ りも ,共 変 動 情 報 を重 視 す る 因 果 ベ イズネッ トを支 持 してい た.研 究 2 では因 果 構 造 の学 習 において共 変 動 手 がかりと時 間 順 序 手 がかりの使 用 が 課 題 の複 雑 性 によってどのように変 化 するか検 討 した .実 験 の結 果 ,事 象 の数 が少 ない

(4)

単 純 な課 題 では共 変 動 手 がかりが ,事 象 の数 が多 い複 雑 な課 題 では時 間 順 序 手 が か りが重 視 されることが示 された (実 験 1, 実 験 2).また,介 入 による学 習 ではこのような判 断 方 略 の変 化 は確 認 されなかった (実 験 3).研 究 2 の結 果 から,観 察 と介 入 では異 な るプロセスが働 いていることが示 唆 された . 因 果 強 度 の学 習 では,原 因 と結 果 が予 め決 められており,学 習 者 はそれらの因 果 関 係 の強 さを判 断 することが求 められる.研 究 3 では因 果 強 度 の学 習 において共 変 動 情 報 を操 作 した9 つの実 験 から 114 条 件 をまとめ,規 則 ベースアプローチや連 合 的 アプロ ーチや因 果 的 アプローチの代 表 的 なモデルの比 較 検 討 を行 った.シミュレーシ ョンの結 果 ,因 果 ベイズネットを採 用 しているSS パワーモデルがデータに対 する最 も高 い適 合 度 を示 し,その妥 当 性 が示 唆 された.研 究 4 では観 察 による学 習 と介 入 による学 習 のどち らが 因 果 強 度 の 正 確 な推 定 をもた らすか検 討 した .実 験 の 結 果 ,介 入 による学 習 の 促 進 効 果 が明 らかとなった (実 験 1, 実 験 2).研 究 4 の結 果 は観 察 と介 入 では異 なるプ ロセスが働 いていることを示 唆 するものであった. 因 果 推 論 で は , 獲 得 し た 因 果 の 知 識 に 基 づ い てあ る 事 象 か ら 別 の 事 象 に 対 して 推 測 を行 うことが求 められる.研 究 5 では因 果 推 論 において観 察 に基 づく推 論 と介 入 に基 づく推 論 が区 別 されるか検 討 したところ ,それぞれで因 果 ベイズネットの予 測 と 一 致 した 推 測 がなされていることが明 らかとなり,その妥 当 性 が示 唆 された (実 験 1, 実 験 2).研 究 6 では介 入 に基 づく因 果 推 論 を意 思 決 定 場 面 にまで拡 張 した選 択 の因 果 モデル理 論 に焦 点 を当 て,選 択 が介 入 として機 能 するか,因 果 モデルが考 慮 されるか,因 果 モデ ルのパラメータが考 慮 されるか検 討 を行 った .実 験 の結 果 ,因 果 モデルは考 慮 されるが (実 験 1),基 準 率 や因 果 強 度 などのパラメータは考 慮 されないことが示 され (実 験 2, 実 験 3),選 択 の因 果 モデル理 論 の妥 当 性 が示 唆 された. 以 上 の 15 の実 験 を含 む 6 つの研 究 を通 して,因 果 性 の学 習 と推 論 における因 果 ベ イズネットの心 理 学 的 妥 当 性 が示 された .これらの結 果 は,従 来 の連 合 的 アプローチや 規 則 ベースアプローチでは説 明 することが困 難 であった .

(5)

頁 要旨 第1部 序論 1. はじめに 1 1. 1. 因果性の学習と推論 1 1. 2. 因果ベイズネット 1 1. 3. 博士論文の目的および構成 3 2. 哲学的背景 4 3. 因果性の学習と推論におけるモデル 9 3. 1. 序論 9 3. 2. 規則ベースアプローチ 9 3. 2. 1. ⊿

P

ルール 10 3. 2. 2. 重み付き⊿

P

ルール 11 3. 2. 3. ⊿

D

ルール 12 3. 2. 4.

pCI

ルール 12 3. 2. 5.

EI

ルール 12 3. 2. 6. 二要因ヒューリスティックモデル 13 3. 2. 7. 条件付き⊿

P

ルール 13 3. 2. 8. 確率対比モデル 14 3. 3. 連合的アプローチ 14 3. 3. 1. Rescorla-Wagnerモデル 15 3. 3. 2. 改訂版Rescorla-Wagnerモデル 16 3. 3. 3. Pearceモデル 16 3. 4. 規則ベースアプローチと連合的アプローチの問題点 17 4. 因果性の学習と推論における因果ベイズネット 19 4. 1. 序論 19 4. 1. 1. はじめに 19 4. 1. 2. ベイズの定理 19 4. 1. 3. ベイズの定理の応用 20 4. 2. 因果ベイズネット 21 4. 2. 1. 因果ベイズネットとは 21 4. 2. 2. 因果マルコフ条件 23 4. 2. 3. 介入 23 4. 3. 因果ベイズネットの哲学的背景 24 4. 3. 1. 確率 24 4. 3. 2. 因果性 25 目次

(6)

4. 4. 因果ベイズネットによる因果構造の学習 27 4. 4. 1. 因果構造の学習とは 27 4. 4. 2. 制約ベース法 28 4. 4. 3. ベイズ法 29 4. 4. 4. 因果構造の学習における観察と介入 30 4. 5. 因果ベイズネットによる因果強度の学習 31 4. 5. 1. 因果強度の学習とは 31 4. 5. 2. パワーPC理論 32 4. 5. 3. 因果サポートモデル 34 4. 5. 4. SSパワーモデル 36 4. 5. 5. 原因事象が複数存在する場合の因果強度の学習 37 4. 6. 因果ベイズネットによる因果推論 38 4. 6. 1. 因果推論とは 38 4. 6. 2. 直接原因モデル (

C

E

) における因果推論 38 4. 6. 3. 因果連鎖モデル (

C

M

E

) における因果推論 39 4. 6. 4. 共通結果モデル (

C

1→

E

C

2) における因果推論 40 4. 6. 5. 共通原因モデル (

E

1←

C

E

2) における因果推論 40 4. 6. 6. 因果推論における観察と介入 41 5. 博士論文研究の目的 43 5. 1. 序論 43 5. 2. 因果構造の学習 44 5. 3. 因果強度の学習 45 5. 4. 因果推論 46 第2部 因果構造の学習 6. 研究1 因果構造の学習における共変動情報の役割 48 6. 1. 序論 48 6. 1. 1. はじめに 48 6. 1. 2. 共変動手がかりと時間順序手がかり 48 6. 1. 3. 本研究の目的 50 6. 2. 実験1 51 6. 2. 1. 方法 51 6. 2. 2. 結果および考察 53 6. 3. 実験2 56 6. 3. 1. 方法 57 6. 3. 2. 結果および考察 58 6. 4. 実験3 60 6. 4. 1. 方法 62 6. 4. 2. 結果および考察 63 6. 5. 実験4 65

(7)

6. 5. 1. 方法 65 6. 5. 2. 結果および考察 65 6. 6. 総合論議 67 7. 研究2 因果構造の学習における課題の複雑性と判断方略の変化 69 7. 1. 序論 69 7. 2. 実験1 70 7. 2. 1. 方法 70 7. 2. 2. 結果および考察 74 7. 3. 実験2 76 7. 3. 1. 方法 76 7. 3. 2. 結果および考察 78 7. 4. 実験3 80 7. 4. 1. 方法 80 7. 4. 2. 結果および考察 81 7. 5. 総合論議 83 第3部 因果強度の学習 8. 研究3 因果強度の学習に関する数理モデルの比較検討 87 8. 1. 序論 87 8. 1. 1. はじめに 87 8. 1. 2. 因果強度の学習に関する数理モデル 88 8. 1. 3. 本研究の目的 97 8. 2. 方法 97 8. 3. 結果 98 8. 4. 考察 101 9. 研究4 因果強度の学習における介入の促進効果 103 9. 1. 序論 103 9. 1. 1. はじめに 103 9. 1. 2. 観察と介入 103 9. 1. 3. 本研究の目的 106 9. 2. 実験1 107 9. 2. 1. 方法 108 9. 2. 2. 結果および考察 112 9. 3. 実験2 114 9. 3. 1. 方法 114 9. 3. 2. 結果および考察 117 9. 4. 総合論議 118

(8)

第4部 因果推論 10. 研究5 因果推論における観察と介入 124 10. 1. 序論 124 10. 1. 1. はじめに 124 10. 1. 2. 連合的アプローチと因果的アプローチ 124 10. 1. 3. 本研究の目的 126 10. 2. 実験1 127 10. 2. 1. 方法 127 10. 2. 2. 結果および考察 130 10. 3. 実験2 132 10. 3. 1. 方法 132 10. 3. 2. 結果および考察 133 10. 4. 総合論議 135 11. 研究6 意思決定における因果推論―因果モデルとパラメータの役割― 139 11. 1. 序論 139 11. 1. 1. はじめに 139 11. 1. 2. 因果推論と意思決定 140 11. 1. 3. 選択の因果モデル理論 141 11. 1. 4. 質的推定説と量的推定説 148 11. 1. 5. 本研究の目的 148 11. 2. 実験1 149 11. 2. 1. 方法 151 11. 2. 2. 結果および考察 153 11. 3. 実験2 155 11. 3. 1. 方法 155 11. 3. 2. 結果および考察 161 11. 4. 実験3 164 11. 4. 1. 方法 164 11. 4. 2. 結果および考察 167 11. 5. 総合論議 170 第5部 総合論議 12. 総合論議 174 12. 1. 博士論文研究のまとめ 174 12. 2. 理論的含意 175 12. 3. 今後の展望 177 12. 4. おわりに 178 References 180

(9)

1 部

序論

(10)

1. は じ め に

1. 1. 因 果 性 の 学 習 と 推 論 因 果 の知 識 を獲 得 して使 用 することは,複 雑 な環 境 において適 応 的 な行 動 を取 るた めに必 要 不 可 欠 である .事 象 間 の 因 果 関 係 を知 ることによって,過 去 の 説 明 や 未 来 の 予 測 が可 能 になる.また,行 為 とその結 果 の因 果 関 係 を知 る ことで適 切 な選 択 を行 うこ とができるようになり,望 ましい状 態 に近 づけようと現 在 の環 境 を制 御 することが可 能 にな る.では,因 果 関 係 はどのようにして学 習 されるのか?また,因 果 の知 識 からどのような推 論 が行 われるのか?数 多 くの哲 学 者 の論 考 を背 景 に,これらの心 的 過 程 を解 明 しようと 様 々 な ア プ ロ ー チ か ら 研 究 が 進 め ら れ て き た (see Allan, 1993; De Houwer & Beckers, 2002a; Holyoak & Cheng, 2011; Penn & Povinell i, 2007; Sawa, 2009; Shanks, 1993, 2007 for reviews).成 人 だけでなく,幼 児 やヒト以 外 の動 物 に お い て も 因 果 の 表 象 が 形 成 さ れ る こ と は 多 く の 心 理 学 者 に よ っ て 認 め ら れ て い る (Gopnik & Schulz, 2007; McCormack, Hoerl, & Butterfill, 2011; Shanks, Holyoak, & Medin, 1996; Sloman, 2005).近 年 では,因 果 性 の学 習 と推 論 を因 果 ベイズネットによって説 明 する試 みが盛 んに行 わ れている (Glymour, 2001; Gopnik, Glymour, Sobel, Schulz, Kushnir, & Danks, 2004; Griffiths & Tenenbaum, 2005, 2009; Lu, Yuille, Liljeholm, Cheng, & Holyoak, 2008 ; Sloman & Lagnado, 2005; Waldmann & Hagmayer, 2005 ).

1. 2. 因 果 ベ イ ズ ネ ッ ト

因 果 ベイズネットとは,既 存 の情 報 から因 果 関 係 を適 切 に導 き出 し,与 え られた情 報 から推 測 を行 うために統 計 学 や計 算 機 科 学 といった分 野 で開 発 された数 理 的 手 法 であ る (Pearl, 2000) .因 果 ベイズネットの観 点 から因 果 性 の学 習 と推 論 を捉 えた場 合 ,

(11)

ることができる (Figure 1-1).因 果 構 造 の 学 習 で は ,何 が 原 因 で 何 が 結 果 と な っ て い る か 考 え る こ と が 求 め ら れ る .例 え ば ,あ る 話 題 を X さ ん と Y さ ん か ら 別 々 に 聞 い た 場 合 ,X さ ん が Y さ ん に 話 し た の か (i.e., X→Y), Y さ ん が X さ ん に 話 し た の か (i.e., X←Y) , あ る い は 第 三 者 が 2 人 に 先 に 話 し た の か (i.e., X←Z→Y),ど の よ う な 経 路 か 判 断 す る こ と は 難 し い .因 果 の 順 序 を 判 断 す る 際 に は , こ れ ら の 確 率 関 係 や 時 間 関 係 は 有 益 な 手 が か り と な る . 因 果 強 度 の 学 習 で は ,原 因 が 結 果 に 対 し て ど の よ う な 影 響 を 及 ぼ す か 考 え る こ と が 求 め ら れ る . 例 え ば , 投 薬 と 健 康 状 態 の 因 果 関 係 を 考 え る 場 合 , 薬 に よ っ て 体 調 が 改 善 す る 可 能 性 も あ る が , 副 作 用 に よ っ て 悪 化 す る 可 能 性 も あ る . 薬 の 効 果 を 適 切 に 判 断 す る に は , 薬 を 飲 ん だ 時 だ け で な く , 飲 ま な か っ た 時 に ど の よ う な 結 果 が 生 じ た か も 考 え る 必 要 が あ る . 因 果 推 論 で は , あ る 事 象 の 状 態 か ら 他 の 事 象 の 状

X

Y

X

Y

X

Y

X

Y

因果構造の学習

X

Y

X

Y

因果強度の学習

X

Y

因果推論

Figure 1-1. 因 果 性 の学 習 と推 論 に関 する 3 つの側 面 .

(12)

態 に つ い て 考 え る こ と が 求 め ら れ る1.例 え ば ,空 が 曇 っ て く れ ば 雨 が 降 る の で は な い か と 原 因 か ら 結 果 を 予 測 し た り , 外 に 出 た 際 に 地 面 が 濡 れ て い れ ば 雨 が 降 っ た の で は な い か と 結 果 か ら 原 因 を 推 測 し た り す る こ と が で き る . こ の よ う な 因 果 推 論 が 可 能 に な る に は , 事 象 間 に ど の よ う な 因 果 関 係 が あ る か 事 前 に 知 っ て お く 必 要 が あ る .因 果 ベイズネットを用 いることでこれらの側 面 の一 部 はうまく説 明 されるものの,まだ十 分 に検 討 されていない側 面 も多 数 存 在 している . 1. 3. 博 士 論 文 の 目 的 お よ び 構 成 本 博 士 論 文 の 目 的 は因 果 ベ イズネットの 心 理 学 的 妥 当 性 を検 討 す ること である. 第 1 部 では,因 果 性 に関 する哲 学 的 背 景 を述 べた後 ,因 果 性 の学 習 と推 論 における規 則 ベースアプローチと連 合 的 アプローチの数 理 モデルについて説 明 する.その後 ,因 果 的 アプロ ーチの 核 と なる 因 果 ベ イズネットに つい て詳 しく 解 説 し,博 士 論 文 研 究 の 目 的 に ついて述 べる.第 2 部 では「因 果 構 造 の学 習 」について行 った研 究 ,第 3 部 では「因 果 強 度 の学 習 」について行 った研 究 ,第 4 部 では「因 果 推 論 」について行 った研 究 をそれ ぞれ紹 介 する.第 5 部 ではこれらの研 究 を踏 まえ,因 果 ベイズネットの心 理 学 的 妥 当 性 や今 後 の展 望 について議 論 を行 った. 1 こ こ で は 獲 得 し た 因 果 の 知 識 の 利 用 と い う 意 味 で 因 果 推 論 と 記 述 し て い る が , 因 果 構 造 の 学 習 と 因 果 強 度 の 学 習 を 因 果 帰 納 と 捉 え て ,3 つ の 側 面 す べ て を 対 象 と し て 因 果 推 論 と 呼 ぶ こ と も あ る .

(13)

2. 哲 学 的 背 景

因 果 関 係 をどのように認 識 するかという問 題 は,心 理 学 が実 験 的 検 討 を始 めるはるか

以 前 から哲 学 のなかで重 要 な問 題 の 1 つとして扱 われてきた.ここでは,因 果 性 に関 す

る哲 学 的 議 論 を歴 史 の流 れに沿 って整 理 し,因 果 性 がどのように定 義 されるかについて 解 説 を行 う (see Psillos, 2005; White, 1990 for reviews).心 理 学 では因 果 の知 識 がどのように獲 得 および 使 用 されるかという認 識 論 的 側 面 に 焦 点 が 当 てられているのに 対 して ,哲 学 で は認 識 論 的 側 面 だけでなく ,原 因 はどの よ うにして結 果 を引 き 起 こすの かといった形 而 上 学 的 側 面 についても検 討 がなされてきた .心 理 学 と哲 学 では扱 う問 題 が若 干 異 なるものの,哲 学 的 論 考 は因 果 性 の学 習 と推 論 に関 する心 理 学 モデル の多 く に影 響 を与 えており,ここでは心 理 学 モデルとの関 連 についても述 べる. Aristotle (trans. 1984) は原 因 をその意 味 から 4 つに分 類 している.それらは,そこ から事 物 が生 じる質 料 的 なものである質 料 因 (material cause) と事 物 が完 成 する時 , その事 物 が最 後 まで持 っている形 相 である形 相 因 (formal cause) と事 物 を完 成 させ

る作 用 因 である動 力 因 (efficient cause) と事 物 の目 的 である目 的 因 (final cause) である.例 えば,彫 像 の質 料 因 は材 料 であり ,その形 相 因 は形 や輪 郭 であり ,その動 力 因 は作 者 であ り ,その 目 的 因 は彫 像 が 作 られた 目 的 である .完 全 な因 果 的 説 明 に は , これら4 つの原 因 を挙 げる必 要 がある.Aristotle は因 果 性 について 2 つの考 えを述 べ ている.1 点 目 は,あらゆる変 化 には原 因 が必 要 であり,もし何 の干 渉 もなければ,そのよ うな因 果 現 象 は規 則 的 に起 きるということである .ここで動 力 因 の連 鎖 を遡 っていくと,そ れ 自 身 は 決 し て 動 か さ れ る こ と は な い が 他 の も の を 動 か す 「 不 動 の 動 者 (unmoved mover) 」に辿 りつく.スコラ哲 学 者 はこのような究 極 原 因 は神 であると考 えた.この必 要 性 は,論 証 的 議 論 における論 理 的 必 然 性 と同 等 であるというのが2 点 目 の主 張 である. Aristotle によると,前 提 から結 論 を導 く論 理 的 必 然 性 というのは,原 因 が結 果 を発 生 さ せる物 理 的 必 然 性 を反 映 したものである.

(14)

Descartes (1644/1991) は,世 界 が 物 理 的 実 体 と心 的 実 体 から成 り立 っている と 考 え ,物 心 二 元 論 を提 唱 した .物 心 二 元 論 によ ると ,物 体 は力 を持 たないものと考 えら れ,物 体 を持 った 時 に 感 じる 重 さは心 的 実 体 であ る我 々の 知 覚 に基 づく も のであり,物 理 的 実 体 が有 する性 質 とは捉 えられない.また,因 果 性 に関 するAristotle との相 違 点 として,運 動 や静 止 が続 いた状 態 にあるのを説 明 するのに原 因 を仮 定 する必 要 はない と いう慣 性 (inertia) を導 入 したことが挙 げられる.物 心 二 元 論 においては,物 体 のある 性 質 が 他 の 物 体 に 伝 達 され る と い う 因 果 性 の 伝 達 モ デ ル (transference model of causality) を用 いて物 体 同 士 の相 互 作 用 を説 明 する.しかしながら,どのようにして物 体 と心 の相 互 作 用 が可 能 になるのかという問 いに対 してこのモデルは答 えることができな かった.Descartes の後 継 者 は機 械 原 因 論 者 のグループと物 体 に力 能 を再 導 入 するグ ループに分 けられる.前 者 の代 表 者 である Malebranche (1674-1675/1997) によると, 真 の 原 因 と は , 原 因 と 結 果 の 間 に 必 然 的 結 合 を 知 覚 す る よ うな 原 因 で あ り ,精 神 は 無 限 に 完 全 な存 在 (神 ) とその結 果 の間 には必 然 的 結 合 を知 覚 する .したがって,真 の 原 因 は神 のみであることが導 かれる .また,必 然 的 結 合 のような関 係 は どこにも見 当 たら ないため ,因 果 性 は存 在 しない かもしれ ない と 考 え られていた .一 方 ,後 者 の 代 表 者 で あるLeibniz (1765/1896) は物 質 界 に力 や効 力 を再 導 入 し,物 質 はモナド (monad) によって維 持 され ,モナ ドに よって後 の 状 態 が 決 定 する と 考 えた .因 果 的 結 合 の 代 わり に,モナド間 における神 の予 定 調 和 が想 定 されており,モナドは相 互 作 用 しないという主 張 は因 果 性 の排 除 と解 釈 されている. Hume (1748/2003) は近 世 哲 学 において因 果 性 の問 題 に対 して最 も重 要 な寄 与 をなした.Hume は著 書 『人 間 本 性 論 』において,原 因 と結 果 の間 にある必 然 的 結 合 の ようなものは存 在 せず,そこにあるのは蓋 然 性 だけであると主 張 している .例 えば,ボール Aがボール Bにぶつかり,ボールB が動 き出 すとき,一 般 的 にはA によってB が動 いた と捉 えられる.しかし,これら 2 つの出 来 事 をどれだけ細 かく突 き詰 めたとしても,この原 因 「によって」が見 えることはない.それまでの哲 学 者 が物 事 の生 起 を神 の力 に依 拠 して

(15)

い た の に 対 し て ,Hume は 恒 常 的 連 接 (constant conjunction) , 時 間 的 継 起 (temporal succession),時 空 間 的 接 近 (spatiotemporal contiguity) によって因 果 性 の観 念 が 形 成 されるとした .因 果 推 論 は,これまで経 験 した恒 常 的 連 接 がこれから も続 くという「自 然 の斉 一 性 (uniformity of nature) 」を前 提 としている.しかし,自 然 の斉 一 性 は理 性 的 に基 礎 づけることができない ため,因 果 推 論 を支 えているのは「理 性 」

ではなく,「習 慣 」であると考 えられた.このようなHume の思 想 は,すべての因 果 的 知 識

は経 験 から生 じるという連 合 的 アプローチに強 く影 響 を及 ぼしている.

Hume に対 する批 判 を行 ったのは Kant (1781/2003) であった.Kant は著 書 『純 粋 理 性 批 判 』において,ある出 来 事 と他 の出 来 事 の間 の因 果 関 係 を認 識 するためには, どちらが先 行 しているかが規 定 されなければならないと述 べている.この規 定 は時 間 の前 後 における構 想 力 の連 結 だけでは不 十 分 であるため ,「原 因 と結 果 の概 念 」が必 要 とな る と 主 張 し て い る . 因 果 性 を 心 の 働 き に よ っ て 構 成 さ れ る も の と 捉 え る 点 で Hume と Kant の見 解 は一 致 していたが,Hume がア・ポステリオリな判 断 と考 えているのに対 して, Kant はア・プリオリな判 断 を想 定 していた.このような Kant の思 想 は,経 験 だけでなく 先 験 的 知 識 も 重 要 視 す る 因 果 的 アプロ ー チ や , 事 象 間 の 共 変 関 係 よ り も メカニズム を 重 視 する力 学 モデル (Wolff, 2007) などに反 映 されている. Mill (1843) は,原 因 は結 果 に対 する必 要 十 分 条 件 だと考 え,Hume の思 想 に洗 練 を加 えた.すべての知 識 が経 験 に由 来 するという考 えは Hume と同 様 であったが,恒 常 的 連 接 が因 果 的 連 接 となるのは,それが他 の要 因 の有 無 に依 存 しない無 条 件 のとき だけであると考 えた.例 えば,2 つの事 象 に恒 常 的 連 接 が生 じていたとしても,それが共 通 の原 因 によってもたらされている場 合 は原 因 事 象 なしに連 接 は生 じないため ,因 果 的 連 接 と呼 ぶことはできない.また,Mill は何 が原 因 であるかということよりも,我 々がどのよ うに原 因 を発 見 するかということに関 心 を持 っており ,因 果 関 係 を解 明 するいくつかの方 法 を 提 唱 し てい る .因 果 の 必 要 性 に よ る と 結 果 の 生 起 に は 原 因 の 生 起 が 必 要 で あ り , 同 一 の 結 果 が 生 じるとい う以 外 は互 いに 似 てい ない 事 例 が 多 く 存 在 す る 場 合 はそれ ら

(16)

の 事 例 に 共 通 す る 要 因 が 原 因 で あ る . 因 果 の 十 分 性 に よる と 原 因 の 生 起 は 結 果 の 生 起 に 十 分 で あ り ,ある 要 因 が 存 在 しない 場 合 に 限 定 して結 果 が 生 じな けれ ばその 要 因 が原 因 である.

一 方 ,Mackie (1974) は 結 果 の 生 起 に は 複 数 の 原 因 が 必 要 で あ る と 考 え た . Mackie によると,原 因 は結 果 の生 起 に「不 十 分 だが余 分 ではなく (Insufficient but Non-redundant) 」 , 結 果 の 発 生 に 「 必 要 で は な い が 十 分 (Unnecessary but Sufficient)」な条 件 の一 部 である.例 えば,火 災 の原 因 は漏 電 だったという場 合 ,漏 電 はそれだけでは火 災 を生 じさせるのには不 十 分 だが ,火 災 を生 じさせるのに必 要 ではな いが十 分 な条 件 セット(e.g., 可 燃 材 料 や酸 素 の存 在 や漏 電 )の一 部 である.このことは, それぞれの頭 文 字 からINUS 条 件 と呼 ばれている. Mill や Mackie が必 要 性 や十 分 性 の論 理 を用 いて恒 常 的 連 接 に修 正 を加 えていた のに対 して,Suppes (1970) は確 率 を用 いて恒 常 的 連 接 の修 正 を試 みた.Suppes は 恒 常 的 連 接 の問 題 点 として,不 完 全 な連 接 を扱 うことができないことを指 摘 している .例 えば,喫 煙 が肺 がんを引 き起 こすといっても全 ての喫 煙 者 が肺 がんを患 うわけではない . Hume の定 義 では両 者 の間 に因 果 関 係 は存 在 しないとなるが,原 因 C が結 果 E の生

起 確 率 を高 める (i.e., P(e|c) > P(e|¬c)) と考 えることにより,上 記 の主 張 は可 能 になる. しかしながら,この定 義 には擬 似 相 関 と因 果 関 係 を区 別 できないという問 題 点 があった. 例 え ば ,気 圧 計 の 変 化 と 降 雨 の 有 無 に は相 関 関 係 が 認 め られ るが ,気 圧 計 が 天 候 の 変 化 を引 き起 こしているわけではなく ,気 圧 という共 通 原 因 によって両 者 が変 化 している

だけである.そこで,Eells (1991) は状 況 要 因 F を統 制 した上 で原 因 C が結 果 E の

生 起 確 率 を上 昇 させること (i.e., P(e|c, f) > P(e|¬c, f)) を因 果 性 の定 義 に採 用 し,こ の問 題 点 を解 決 した .状 況 要 因 の統 制 によってこの問 題 は解 決 したように 見 えたが ,ど

の要 因 を統 制 すればよいかという新 たな問 題 に直 面 することとなった .因 果 性 を 2 つの

確 率 の差 分 とみなす考 え方 はΔP ルール (Jenkins & Ward, 1965) や確 率 対 比 モデ ル (Cheng & Novick, 1992) といった心 理 学 モデルにも現 れている.

(17)

Mill や Mackie や Suppes が因 果 性 を規 則 的 な継 起 と捉 えていたのに対 して , Lewis (1973) は,「もし原 因 が生 起 しなかったならば結 果 も生 起 しなかった」という反 実 仮 想 に基 づいて因 果 性 を定 義 している .例 えば,漏 電 が火 災 の原 因 となるのは ,もし漏 電 が生 じていなかったならば火 災 は生 じなかったという場 合 に限 定 される .Lewis は「も し事 象 Cが生 じていれば事 象 Eも生 じていた」・「もし事 象 Cが生 じていなければ事 象 E も生 じていなかった」という反 事 実 的 条 件 文 の真 偽 を判 定 するために ,現 実 世 界 に類 似 した世 界 が別 に存 在 するという可 能 世 界 論 を利 用 した .しかしながら,可 能 世 界 論 の適 用 には多 くの困 難 が伴 い,否 定 的 な見 解 が多 い (cf. 佐 金 , 2008). Woodward (2003) は介 入 (intervention) の概 念 を導 入 して因 果 性 の定 義 を行 っている.介 入 とは事 象 の操 作 であり,事 象 C への介 入 によって事 象 E の状 態 が変 化 する場 合 C は E の原 因 である.例 えば,気 圧 計 の変 化 を観 察 して天 候 を予 測 すること は可 能 であるが ,両 者 の関 係 は気 圧 という共 通 原 因 による擬 似 相 関 であって因 果 関 係 ではないため,気 圧 計 の針 を操 作 して天 候 を変 化 させることはできない .Pearl (2000) はグラフ理 論 と 確 率 論 を基 盤 として観 察 と 介 入 の 違 いを定 量 的 に扱 う 因 果 ベイズネット (causal Bayes nets) と呼 ばれる数 理 的 手 法 を開 発 しており,既 存 の情 報 から因 果 関 係 を適 切 に導 き出 し,与 えられた情 報 から推 測 を行 うことを可 能 にした .近 年 では,因 果 ベイズネットを認 知 モ デ ルとして採 用 し,どのように 因 果 的 知 識 が獲 得 ・ 使 用 されるのか を 説 明 す る 試 み が 盛 ん に 行 わ れ て い る (Gopnik, Glymour, Sobel, Schulz, Kushnir, & Danks, 2004; Griffiths & Tenenbaum, 2005 , 2009; Lu, Yuille, Liljeholm, Cheng, & Holyoak, 2008).

(18)

3. 因 果 性 の 学 習 と 推 論 に 関 す る モ デ ル

3. 1. 序 論

数 多 くの哲 学 者 の論 考 を背 景 に,因 果 性 の学 習 と推 論 のプロセスを説 明 しようと様 々 な 理 論 や モ デ ル が こ れ ま で に 考 案 さ れ て き た (see Pineño & Miller, 2007 for a review).それらはアプローチの違 いから大 きく 3 つに分 類 することができる.1 つ目 は規 則 ベー スアプローチ (rule-based approach) であり,この立 場 では事 象 間 の関 係 性 を表 す規 範 的 な統 計 量 あるいはヒューリスティックスといった簡 便 な方 略 を用 いた説 明 が 提 供 されている.2 つ目 の連 合 的 アプローチ (associative approach) では,条 件 づ けの理 論 を援 用 して因 果 学 習 の過 程 を説 明 する試 みがなされている.3 つ目 は因 果 的 アプローチ (causal approach) と呼 ばれ,因 果 ベイズネットを用 いて因 果 性 の学 習 と 推 論 の記 述 を行 う.因 果 的 アプローチの説 明 は次 章 で詳 述 するため,本 章 では規 則 ベ ースアプローチと連 合 的 アプローチのモデルをそれぞれ概 説 し,それらの問 題 点 につい て述 べる.なお,関 連 する他 のアプローチとして,De Houwer (2009) による命 題 的 ア プ ロ ー チ (propositional approach) や Wolff (2007) に よ る 力 学 モ デ ル (dynamics model) なども存 在 する.前 者 は数 量 的 予 測 を行 わないため,後 者 は条 件 文 推 論 課 題 を主 な対 象 としており博 士 論 文 研 究 の実 験 課 題 とは直 接 関 連 しないため, 解 説 は省 略 した. 3. 2. 規 則 ベ ー ス ア プ ロ ー チ 規 則 ベースアプローチでは,ヒトが直 観 的 統 計 学 者 のように振 る舞 い,事 象 の生 起 情 報 から因 果 関 係 が引 き出 されることが想 定 されている. 事 象 の生 起 情 報 は Figure 3-1 に示 した2×2 の分 割 表 で表 現 される.4 つのセルは各 々の事 象 の共 生 起 の頻 度 を表 し ている.例 えば,セルa は原 因 と結 果 が共 生 起 した事 例 を,セル d は原 因 と結 果 が生 起 しなかった事 例 を表 している.この分 割 表 で表 現 される事 象 の生 起 情 報 に対 して何 らか

(19)

の計 算 が行 われる.このアプローチの中 には,事 象 間 の関 係 性 を表 す規 範 的 な統 計 量 に基 づく判 断 を仮 定 する規 範 的 モデルだけでなく,ヒューリスティックスといった簡 便 な方 略 に 基 づ く 判 断 を 想 定 す る 記 述 的 モ デ ル も 含 ま れ る (cf. Hattori & Oaksford, 2007).

3. 2. 1. ΔP ル ー ル

規 則 ベースアプローチにおける最 も代 表 的 なモデルはΔP ルール (Jenkins & Ward,

1965; Ward & Jenkins, 1965) であり,以 下 のように定 義 される.

∆𝑃 = 𝑃 𝑒 𝑐 − 𝑃 𝑒 ¬𝑐 =

𝑎

𝑎 + 𝑏

𝑐

𝑐 + 𝑑

(3-1) ここで P(e|c)は原 因 が生 起 した時 に結 果 が生 起 する条 件 付 き確 率 を,P(e|¬c)は原 因 が 生 起 しなかった時 に結 果 が生 起 する条 件 付 き確 率 を表 す .ΔP はこれら 2 つの条 件 付 き 確 率 の差 分 をとることで算 出 され,−1 から+1 までの値 になる.原 因 の生 起 によって結 果

a b

c d

e

e

c

c

Event C

Event E

Figure 3-1. 原 因 事 象 (C)と結 果 事 象 (E)の分 割 表 . アルファベット a, b, c, d はそれぞれの共 生 起 の頻 度 を表 す.

(20)

の生 起 確 率 が上 昇 する場 合 (i.e., ΔP > 0),原 因 と結 果 の間 には発 生 的 因 果 関 係 が 想 定 される.一 方 ,原 因 の生 起 によって結 果 の 生 起 確 率 が低 下 する場 合 (i.e., ΔP < 0),原 因 と結 果 の間 には抑 制 的 因 果 関 係 が想 定 される.原 因 の有 無 によって結 果 の生 起 確 率 が変 化 しない場 合 (i.e., ΔP = 0),原 因 と結 果 は無 関 係 となる. ΔP ルールについては支 持 する結 果 と支 持 しない結 果 の両 方 が報 告 されている.いく つかの研 究 は因 果 強 度 の評 定 値 とΔP におおまかな対 応 関 係 がみられることを示 してい

る (e.g., Allan & Jenkins, 1980; Alloy & Abramson, 1979; Dickinson, Shanks, & Evenden, 1984; Wasserman, Elek, Chatlosh, & Baker, 1993; Ward & Jenkins, 1965).しかしながら,原 因 事 象 の生 起 確 率 が上 昇 すると評 定 値 も上 昇 する

密 度 バイアスなどΔP から逸 脱 した結 果 も報 告 されている (e.g., Shanks, 1985a).

3. 2. 2. 重 み 付 き ΔP ル ー ル

ΔP ルールでは各 セルの情 報 は等 しく重 み付 けられているが,実 際 にはそうならないこ とが示 されている.例 えば Kao and Wasserman (1993) は,4 種 類 のセル頻 度 は a > b > c > d の順 で優 先 されることを示 している.また,抑 制 的 因 果 関 係 を判 断 する場 合 は b > a > d > c の順 に重 視 されることが報 告 されている (Mandel & Vartanian, 2009). これらの知 見 を反 映 した より記 述 的 なモデルとして,それぞれの生 起 頻 度 に重 みを付 け

た重 み付 き ΔP ルールが提 唱 されている.重 み付 けの方 法 はいくつか考 案 されているが

(e.g., Einhorn & Hogarth, 1986; Schustack & Sternberg, 1981),Anderson and Sheu (1995) による重 み付 き ΔP ルールは以 下 の通 りである.

∆𝑃𝑤 = 𝛽0+ 𝛽1𝑃 𝑒 𝑐 − 𝛽2𝑃 𝑒 ¬𝑐 (3-2)

ここでβ1とβ2は条 件 付 き確 率 の重 みを表 すパラメータであるが,β0を切 片 ,β1と β2を回

(21)

3. 2. 3. ΔD ル ー ル

いくつかの研 究 では ΔP ルールとは異 なる判 断 方 略 が使 用 されることが報 告 されてい

る (e.g., Shimazaki, Tsuda, & Imada, 1991).その中 でも頻 繁 に見 られるのは ΔD ルール (Inhelder & Piaget, 1958) と呼 ばれるものであり,これは確 信 事 例 (i.e., セ

a とセル d) の数 から非 確 信 事 例 (i.e., セル b とセル c) の数 を引 くことで計 算 され る. ∆𝐷 = 𝑎 + 𝑑 − 𝑏 + 𝑐 (3-3) 3. 2. 4. pCI ル ー ル ΔD ルールは頻 度 に基 づいた予 測 を行 うため,確 信 事 例 が増 え続 けた場 合 に上 昇 し 続 けてしまうという欠 点 を持 つ.White (2003) は ΔD ルールを比 率 に基 づく形 に変 更 し, pCI ルールと命 名 した.pCI ルールは ΔP ルールと同 様 に−1 から+1 までの値 をとる.

𝑝𝐶𝐼 =

𝑎 + 𝑑 − 𝑏 − 𝑐

𝑎 + 𝑏 + 𝑐 + 𝑑

(3-4) 3. 2. 5. EIル ー ル

Perales and Shanks (2007) は ΔD ルールを比 率 に基 づく形 に変 更 し,それぞれの

生 起 頻 度 に重 みを付 け,EI ルールと命 名 している.w はセルの重 みを表 すパラメータで

あり,全 ての情 報 の重 みが等 しい場 合 (i.e., wa = wb = wc = wd = 1),pCI ルールと一 致 する.

(22)

𝐸𝐼 =

𝑤

𝑎

𝑎 + 𝑤

𝑑

𝑑

𝑤

𝑎

𝑎 + 𝑤

𝑏

𝑏 + 𝑤

𝑐

𝑐 + 𝑤

𝑑

𝑑

𝑤

𝑏

𝑏 + 𝑤

𝑐

𝑐

𝑤

𝑎

𝑎 + 𝑤

𝑏

𝑏 + 𝑤

𝑐

𝑐 + 𝑤

𝑑

𝑑

(3-5)

Perales and Shanks (2007) では共 変 動 情 報 を操 作 した実 験 の中 から 114 条 件 を

選 出 してメタ分 析 を行 ったところ,EI ルールが最 も高 い適 合 度 を示 すことが明 らかになっ

た.

3. 2. 6. 二 要 因 ヒ ュ ー リ ス テ ィ ッ ク モ デ ル

Hattori and Oaksford (2007) は連 関 係 数 の指 標 である φ 係 数 に変 更 を加 えて独

自 のモデルを提 唱 している.原 因 と結 果 が非 生 起 の情 報 (i.e., セル d) は何 も起 きて いないことを表 しており,現 実 的 にはこの生 起 頻 度 を定 義 することは困 難 であり,また便 宜 的 に定 義 しても無 数 に存 在 しているので数 え上 げることは難 しい.そこで,φ 係 数 に含 まれるd を無 限 大 に発 散 させた二 要 因 ヒューリスティックモデルが提 唱 されている.

𝐻

𝐺

= lim

𝑑→∞

𝜑 = 𝑃 𝑒 𝑐 𝑃 𝑐 𝑒 =

𝑎

𝑎 + 𝑏 𝑎 + 𝑐

(3-6) ここで言 う二 要 因 とは,原 因 から結 果 への予 測 可 能 性 P(e|c)と原 因 の結 果 に対 する適

合 性 P(c|e)という 2 つの要 因 のことである.Hattori and Oaksford (2007) は共 変 動

情 報 を体 系 的 に操 作 した実 験 を対 象 としてメタ分 析 を行 い,41 個 のモデルを比 較 した

中 で二 要 因 ヒューリスティックモデルが最 も高 い適 合 度 を示 したことを報 告 している.

3. 2. 7. 条 件 付 き ΔP ル ー ル

ΔP ルールでは,原 因 事 象 が存 在 する時 と存 在 しない時 の比 較 に基 づいて因 果 関 係 が 判 断 され る .し かしな が ら ,複 数 の 原 因 事 象 が 存 在 す る 場 合 に は , 他 の 要 因(f)の 影

(23)

響 を統 制 したうえで比 較 を行 う必 要 がある .条 件 付 きΔP ルールは以 下 のように算 出 され る (e.g, Spellman, 1996; Waldmann & Holyoak, 1992) .

∆𝑃𝑐𝑜𝑛𝑑 = 𝑃 𝑒 𝑐, 𝑓 − 𝑃 𝑒 ¬𝑐, 𝑓 (3-7)

他 の要 因 が存 在 しない事 態 において条 件 付 き ΔP を算 出 した場 合 は,交 絡 のない因 果

強 度 の推 定 値 となる.

3. 2. 8. 確 率 対 比 モ デ ル

Cheng and Novick (1992) によって提 唱 された確 率 対 比 モデルでは,与 えられた 情 報 全 体 で 条 件 付 き ΔP が 計 算 さ れ る の で は な く , そ の 部 分 集 合 で あ る 焦 点 集 合 (focal set) に対 して条 件 付 き ΔP が計 算 されることを想 定 している.焦 点 集 合 を用 いる ことによって,原 因 と可 能 化 条 件 (enabling condition) の区 別 が可 能 になる.なお,

確 率 対 比 モデルでは原 因 事 象 の相 互 作 用 を交 互 作 用 対 比 として 条 件 付 き ΔP の差 分

で 計 算 し て い る が , 交 互 作 用 の 計 算 と し て は 不 適 切 な こ と が 後 に 指 摘 さ れ て い る (Novick & Cheng, 2004).

3. 3. 連 合 的 ア プ ロ ー チ2

因 果 学 習 の 実 験 事 態 で 原 因 事 象 と 結 果 事 象 を観 察 させることは ,古 典 的 条 件 づ け の 条 件 刺 激 (conditioned stimulus: CS) と 無 条 件 刺 激 (unconditioned stimulus: US) の対 呈 示 と構 造 的 に類 似 していることから,条 件 づけの理 論 を用 いて 因 果 性 の学 習 過 程 を説 明 する試 みがなされてきた .連 合 的 アプローチでは,因 果 関 係 の学 習 を事 象 間 の連 合 強 度 の変 化 として捉 える.

2 こ こ で 紹 介 し き れ な か っ た モ デ ル と し て , 修 正 SOP モ デ ル (Dickinson &

Burke, 1996) や コ ン パ レ ー タ 仮 説 (Denniston, Savastano, & Miller, 2001; Miller & Matzel, 1988; Stout & Miller, 2007) が 挙 げ ら れ る .

(24)

連 合 的 アプローチの強 みは,手 がかり競 合 (cue competition) と呼 ばれる,原 因 事 象 が 複 数 存 在 す る 事 態 にお ける 様 々 な現 象 を 説 明 で き る ことで ある .動 物 の 条 件 づ け 研 究 と 同 様 に , 因 果 学 習 に お い て も 隠 蔽 (overshadowing) や ブ ロ ッ キ ン グ (blocking) と い っ た 現 象 が 確 認 さ れ て い る (e.g., Baker, Mercier, Vallée-Tourangeau, Frank, & Pan, 1993; Chapman & Robbins, 1990; Price & Yates, 1993; Shanks, 1985b).これらの現 象 は連 合 的 アプローチのモデルでは容 易 に説 明 可 能 であるが,規 則 ベースアプローチの多 くのモデルでは説 明 に困 難 を伴 う.

3. 3. 1. Rescorla-Wagner モ デ ル

連 合 的 ア プ ロ ー チ に お け る 最 も 代 表 的 な モ デ ル は Rescorla-Wagner モ デ ル (Rescorla & Wagner, 1972) であり,連 合 強 度 の変 化 は次 のように計 算 される.

∆𝑉

𝑖

= 𝛼𝛽 𝜆 − 𝑉

𝑇

(3-8) ここで ΔViは原 因 と結 果 の連 合 強 度 の変 化 量 を,∑VTは既 に形 成 されている連 合 強 度 を表 す.結 果 事 象 が生 起 する場 合 には λ = 1 となり,連 合 強 度 は増 加 する.一 方 ,結 果 事 象 が生 起 しない場 合 にはλ = 0 となり,連 合 強 度 は減 少 する.学 習 の初 期 などで∑VT の値 が小 さいほど,連 合 強 度 の変 化 量 は大 きくなる.α は原 因 事 象 の明 瞭 度 ,β は結 果 事 象 の明 瞭 度 を表 すパラメータであり,0 から 1 の値 をとる.これら 2 つのパラメータも連 合 強 度 の変 化 量 に影 響 を及 ぼす. 一 般 的 に結 果 事 象 の明 瞭 度 β は,結 果 が生 起 する時 と生 起 しない時 で異 なる値 に なると想 定 されているが,両 者 を一 定 の値 に設 定 した場 合 はRescorla-Wagner モデル の 漸 近 値 と(3-1) 式 に 示 した ΔP の 値 が 一 致 す ることが 知 られ てい る (Chapman & Robbins, 1990; Wasserman et al., 1993; see Danks, 2003 for detailed

(25)

analysis).Rescorla-Wagner モデルの漸 近 値 はセルの生 起 頻 度 を用 いて以 下 のよう に表 現 することも可 能 である (Wasserman et al., 1993).

𝑉

𝑎𝑠𝑦𝑚𝑝

=

𝛽

𝑒

𝑎

𝛽

𝑒

𝑎 + 𝛽

¬𝑒

𝑏

𝛽

𝑒

𝑐

𝛽

𝑒

𝑐 + 𝛽

¬𝑒

𝑑

(3-9) 3. 3. 2. 改 訂 版 Rescorla-Wagner モ デ ル Rescorla-Wagner モデルでは,原 因 事 象 が存 在 しない時 に連 合 強 度 が変 化 しない ことを想 定 しているため,逆 行 ブロッキング (backward blocking) などの回 顧 的 再 評 価 (retrospective revaluation) を説 明 することはできない.この問 題 に対 しては,原 因 事 象 の明 瞭 度 α を負 の値 に設 定 することで原 因 事 象 が存 在 しない時 でも連 合 強 度

が変 化 するように修 正 が提 案 されている (Van-Hamme & Wasserman, 1994).しかし, De Houwer and Beckers (2002b) によって明 らかにされた高 次 の回 顧 的 再 評 価 は

改 訂 版 Rescorla-Wagner モデルでも説 明 困 難 である. 3. 3. 3. Pearce モ デ ル Rescorla-Wagner モ デ ル と 同 様 の 学 習 規 則 に 基 づ く も の の , Pearce モ デ ル (Pearce, 1987) では異 なる予 測 値 が導 かれる.Pearce モデルの特 徴 は,複 数 の手 が かり刺 激 を 1 つの複 合 刺 激 として捉 えることであり,2 つの刺 激 の間 には類 似 性 に基 づ いた般 化 が生 じることが想 定 されている.原 因 事 象 と結 果 事 象 が 1 つしか存 在 しない事 態 では,文 脈 刺 激(X)と原 因 事 象 と文 脈 刺 激 の複 合 刺 激 (CX)という 2 つの刺 激 に対 し て学 習 が生 じる.一 方 の刺 激 が提 示 された場 合 には,他 方 の刺 激 表 象 が類 似 性 に応 じ て活 性 化 されるため,連 合 強 度 の変 化 量 は以 下 のように計 算 される. ∆𝑉𝐶𝑋 = 𝛽 𝜆 − 𝑉𝐶𝑋− 𝑥1𝑉𝑋 (3-10)

(26)

∆𝑉𝑋 = 𝛽 𝜆 − 𝑉𝑋− 𝑥2𝑉𝐶𝑋 (3-11) 原 因 事 象 が生 起 している場 合 は(3-10)式 が,生 起 していない場 合 は(3-11)式 が適 用 さ れる.この式 に含 まれる多 くのパラメータは Rescorla-Wagner モデルと同 じ意 味 を持 つ. 新 たなパラメータ x は刺 激 間 の類 似 性 によって規 定 され,般 化 の程 度 を表 す.原 因 事 象 に対 する判 断 は原 因 事 象(C)と原 因 事 象 と文 脈 刺 激 の複 合 刺 激 (CX)の類 似 性 によ って決 まる. 𝐽𝐶 = 𝑥3𝑉𝐶𝑋 (3-12) そ れ ぞ れ の セ ル の 生 起 頻 度 を 用 い て 表 現 し た 場 合 は 以 下 の よ う に な る (Perales & Shanks, 2003).

𝐽

𝐶

=

𝑥

3

𝑎 𝑐 + 𝑑 − 𝑐 𝑎𝑥

1

+ 𝑏𝑥

1

𝑎 𝑐 + 𝑑 + 𝑏 𝑐 + 𝑑 − 𝑐𝑥

2

𝑎𝑥

1

+ 𝑏𝑥

1

− 𝑑𝑥

2

𝑎𝑥

1

+ 𝑏𝑥

1 (3-13) 3. 4. 規 則 ベ ー ス ア プ ロ ー チ と 連 合 的 ア プ ロ ー チ の 問 題 点 規 則 ベースアプローチは因 果 性 を確 率 に還 元 しており,連 合 的 アプロー チは因 果 性 を連 合 強 度 に還 元 しているため,これらのアプローチは因 果 関 係 を記 述 する術 を持 たな い.そのため,2 つの事 象 の共 変 動 が直 接 の因 果 関 係 によるものか,共 通 の原 因 による 擬 似 相 関 なのか区 別 して扱 うことができない.因 果 関 係 と 擬 似 相 関 の差 異 は事 象 に介 入 を行 う際 に顕 著 に 表 れる.因 果 関 係 がある 場 合 は原 因 事 象 への 介 入 が 結 果 事 象 を 発 生 させるのに対 して,擬 似 相 関 しかない場 合 は介 入 を行 ったとしても何 も変 化 しない. 例 えば,気 圧 計 の値 と天 候 の状 態 は共 変 関 係 にあるが,両 者 の関 係 は共 通 原 因 (i.e., 低 気 圧) による擬 似 相 関 のため,気 圧 計 の針 を操 作 しても天 候 が変 わることはない.実

(27)

験 参 加 者 が因 果 構 造 と介 入 の論 理 を理 解 していることは,多 くの研 究 によって示 されて きた (e.g., Meder, Hagmayer, & Waldmann, 2008, 2009; 斎 藤 ・嶋 崎 , 2012; Sloman & Lagnado, 2005; Waldmann & Hagmayer ,2005).

規 則 ベ ースアプロー チや 連 合 的 アプロ ーチで は,原 因 は結 果 を発 生 させ るが,結 果 が原 因 を発 生 させること はないという因 果 の非 対 称 性 が無 視 されている.原 因 事 象 から 結 果 事 象 を 推 測 す る 予 測 的 推 論 で は , 原 因 事 象 の 因 果 強 度 と 他 の 原 因 の 影 響 を 考 慮 する必 要 がある.一 方 ,結 果 事 象 から原 因 事 象 を推 測 する診 断 的 推 論 では,複 数 の 原 因 事 象 の因 果 強 度 だけでなく,それらがどのくらいの確 率 で生 起 するかという基 準 率 も考 慮 する必 要 がある.それぞれの推 論 では異 なる判 断 が 見 られること が報 告 されてお り (e.g., Fernbach, Darlow, & Sloman, 2011) ,規 則 ベースアプローチや連 合 的 ア プローチではこの差 異 を説 明 することはできない.また,因 果 の非 対 称 性 を考 慮 しないこ とは,2 つの原 因 事 象 と 1 つの結 果 事 象 が存 在 する事 態 (i.e., 共 通 結 果 モデル) と, 1 つの原 因 事 象 と 2 つの結 果 事 象 が存 在 する事 態 (i.e., 共 通 原 因 モデル) について 同 じ予 測 を行 うことを意 味 する.しかしながら,前 者 の事 態 でのみ個 々の因 果 強 度 に対 す る 判 断 が 互 い に 影 響 し あ う こ と が 多 く の 研 究 で 報 告 さ れ て い る (e.g., Booth & Buehner, 2007; Waldmann, 2000, 2001; Waldmann & Holyoak, 1992; Waldmann & Walker, 2005)3.原 因 事 象 同 士 は競 合 するが,結 果 事 象 同 士 は競 合

しないことは,手 がかり競 合 の非 対 称 性 と言 われている. 因 果 関 係 と相 関 関 係 の区 別 や因 果 の非 対 称 性 といった因 果 性 に起 因 する問 題 は, 因 果 性 を確 率 に 還 元 す る規 則 ベー スアプローチ や 連 合 強 度 に 還 元 する 連 合 的 アプロ ーチで は対 処 する ことが 困 難 である .しかし,因 果 ベ イズネッ トを用 いる 因 果 的 アプロー チではこれらの現 象 をうまく説 明 することが可 能 である. 3 手 が か り 競 合 の 非 対 称 性 に 関 す る 知 見 に は 否 定 的 な 見 解 も 存 在 す る が (e.g.,

Arcediano, Matute, Escobar, & Miller, 2005) ,細 か な 実 験 手 続 き の 影 響 を 受 け や す い だ け で 現 象 の 存 在 は 確 か で あ る こ と が 示 さ れ て い る (Waldmann & Walker, 2005).

(28)

4. 因 果 性 の 学 習 と 推 論 に お け る 因 果 ベ イ ズ ネ ッ ト

4. 1. 序 論 4. 1. 1. は じ め に 連 合 的 アプローチ (associative approach) では因 果 性 を連 合 に還 元 し,ヒトの因 果 学 習 や因 果 推 論 を動 物 の連 合 学 習 と同 じ枠 組 みで捉 えることで節 約 的 かつ包 括 的 な説 明 が試 みられている.一 方 ,規 則 ベースアプローチ (rule-based approach) では 因 果 性 を確 率 に還 元 し,事 象 間 の 関 係 性 を表 す規 範 的 な統 計 量 あるいはヒューリス テ ィックスといった簡 便 な方 略 を用 いた説 明 が提 供 されている.しかしながら,これらのアプ ローチに対 しては因 果 関 係 と相 関 関 係 が区 別 されていない ,原 因 と結 果 の非 対 称 性 が 考 慮 されていないといった問 題 点 が指 摘 されている . 近 年 ,これ らの 問 題 点 を 克 服 す る 新 た なアプ ロー チ と して因 果 ベ イ ズネッ ト (causal Bayes nets) を用 いるベイズ的 アプローチによる説 明 が注 目 されている.因 果 ベイズネ ットと は ,既 存 の 情 報 か ら因 果 関 係 を 適 切 に 導 き 出 し ,与 え られた 情 報 から推 測 を行 う ために哲 学 や統 計 学 や計 算 機 科 学 といった分 野 で開 発 された統 計 的 因 果 推 論 の手 法 である (Pearl, 2000).ベイズ的 アプローチの根 幹 には,Thomas Bayes が発 見 したベ イズの定 理 (Bayes, 1763) に基 づく計 算 がある. 4. 1. 2. ベ イ ズ の 定 理 認 知 主 体 がデータ d を生 成 する仮 説 h について考 える事 態 において,データを得 る 前 の仮 説 についての確 信 の度 合 いを P(h)という主 観 確 率 で表 す.認 知 主 体 はデータを 得 た後 に仮 説 に対 する確 信 の度 合 いをどのように変 化 させるべきか?ベイズの定 理 はこ のような確 率 の更 新 の度 合 いを定 めるものであり,以 下 の式 で 表 現 される.

(29)

𝑃 ℎ 𝑑 =

𝑃 𝑑 ℎ 𝑃(ℎ)

𝑃 𝑑

(4-1) ここで P(d|h)は仮 説 h のもとでデータ d が発 生 する確 率 を表 すが,データが発 生 した後 は確 率 でなくなるため,仮 説 h についての尤 度 と呼 ばれる.また,分 母 の P(d)は考 えられ るすべての仮 説 のもとでデータが得 られる確 率 を表 す.この数 値 は分 子 の計 算 可 能 なす べての組 合 せについて,合 計 が1 になるように基 準 化 する項 であると考 えられることから, 基 準 化 定 数 や正 規 化 定 数 と呼 ばれる. ベイズの定 理 はデータを得 る前 の仮 説 の確 からしさである事 前 確 率 P(h)から,データ を得 た後 の仮 説 の確 からしさである事 後 確 率 P(h|d)への確 信 の度 合 いの変 化 を記 述 す る.結 果 であるデータに基 づき,それを生 成 する原 因 である仮 説 を推 測 していることから, 逆 確 率 の定 理 と言 われることもある. 4. 1. 3. ベ イ ズ の 定 理 の 応 用 ベ イズの 定 理 は , 事 前 の 知 識 を 新 た に 獲 得 し た デ ー タ に 基 づ い て 更 新 す る と い う 学 習 過 程 を表 現 したものと解 釈 可 能 であり,その汎 用 性 の高 さから様 々な場 面 に応 用 され て い る . 母 数 の 推 定 や 仮 説 の 比 較 に ベ イ ズ の 定 理 を 用 い る こ と は ベ イ ズ 統 計 (Bayesian statistics) と呼 ばれ,従 来 の伝 統 的 な統 計 学 では扱 うことができなかった 問 題 に解 決 手 段 を提 供 している (cf. 繁 桝 , 1985; 渡 部 , 1999).行 動 に対 して損 失 関 数 を設 定 し, 不 確 実 状 況 下 に お ける 最 適 な 意 思 決 定 をベ イズの 定 理 に 基 づ い て考 えるのがベイズ決 定 理 論 (Bayesian decision theory) である (cf. 松 原 , 2008).

ベ イジアンネ ッ トワ ーク (Bayesian networks) とは,変 数 間 の関 係 性 をグラフと確 率 で 表 現 し,グ ラフ構 造 の学 習 や 確 率 推 論 を行 う数 理 的 手 法 であり,機 械 学 習 などの 領 域 で盛 んに研 究 されている (Pearl, 1985; cf. 植 野 , 2013).因 果 関 係 に基 づいて

(30)

ベイジアンネットワークを構 築 した場 合 は,因 果 ベイズネット4 (causal Bayes nets) と

言 われる (Glymour, 2001).ベイズの定 理 や因 果 ベイズネットを駆 使 して認 知 モデル を 作 成 す る こ と は ベ イ ジ ア ン モ デ リ ン グ (Bayesian modeling) と 呼 ば れ , 条 件 づ け (Courville, Daw, & Touretzky, 2006),視 知 覚 (Kersten, Mamassian, & Yuille, 2004; Knill & Richards, 1996),感 覚 運 動 学 習 (Körding & Wolpert, 2004),語 彙 学 習 (Xu & Tenenbaum, 2007),言 語 処 理 (Chater & Manning, 2006),意 味 表 象 (Griffiths, Steyvers, & Tenenbaum, 2007) , 帰 納 推 論 (Kemp & Tenenbaum, 2009),因 果 推 論 (Gopnik, Glymour, Sobel, Schulz, Kushnir, & Danks, 2004; Griffiths & Tenenbaum, 2005, 2009) など様 々な領 域 に適 用 され ている5 (see Tenenbaum, Kemp, Griffiths, & Goodman, 2011 for a review) .

4. 2. 因 果 ベ イ ズ ネ ッ ト 4. 2. 1. 因 果 ベ イ ズ ネ ッ ト と は 因 果 ベ イズネ ッ ト は事 象 間 の 因 果 関 係 を 非 循 環 有 向 グ ラフで ,そ の 強 さを条 件 付 き 確 率 で表 現 する.グラフ内 のノードは変 数 を,エッジ (矢 印 ) は変 数 間 の因 果 関 係 を表 しており,非 循 環 とはノードからエッジを辿 っても元 のノードに戻 らないことを意 味 している. 変 数 は二 値 変 数 のような離 散 変 数 の場 合 もあれば,連 続 変 数 の場 合 もあり,また,顕 在 変 数 や潜 在 変 数 のどちらでも組 み込 むことができる.因 果 関 係 は,決 定 的 あるいは確 率 的 ,発 生 的 あるいは抑 制 的 ,線 形 もしくは非 線 形 といったように様 々な形 態 をとる. 因 果 ベイズネットのグラフ構 造 は変 数 の同 時 確 率 分 布 を定 義 するために使 用 される. 同 時 確 率 分 布 に基 づき ,グラフ構 造 が明 らかな場 合 は変 数 の予 測 を行 い,グラフ構 造 が明 らかでない場 合 はその学 習 を行 う.例 えば,喫 煙(S)が歯 の黄 ばみ(Y)と肺 がん(L)を 4 因 果 ベ イ ジ ア ン ネ ッ ト ワ ー ク と 言 わ れ る こ と も あ る .

5 ベ イ ジ ア ン モ デ リ ン グ に つ い て は ,Trends in Cognitive Science (Chater,

Tenenbaum, & Yuille, 2006; Kousta, 2010) や Developmental Science 誌 (Gopnik & Tenenbaum, 2007) や Cognition 誌 (Xu & Griffiths, 2011) の 特 集 号 な ど も 参 照 さ れ た い .

(31)

引 き起 こしている関 係 は Figure 4-1(左 図 )のように表 現 される.これら 3 つの変 数 の同 時 確 率 分 布 は連 鎖 公 式6を用 いて以 下 のように表 現 される. 𝑃 𝑆, 𝑌, 𝐿 = 𝑃 𝑆 𝑃(𝑌|𝑆)𝑃(𝐿|𝑌, 𝑆) (4-2) また,連 鎖 公 式 においてこれらの変 数 は任 意 に並 び替 えることが可 能 であり,以 下 のよう に記 述 することも可 能 である. 𝑃 𝑌, 𝐿, 𝑆 = 𝑃 𝑌 𝑃(𝐿|𝑌)𝑃(𝑆|𝐿, 𝑌) (4-3) しかしながら,これら(4-2)式 や(4-3)式 は実 際 のグラフ構 造 を反 映 した形 にはなっておら ず,変 数 の同 時 確 率 分 布 を一 意 に表 現 するために,因 果 ベイズネットの核 となる仮 定 が 設 けられている. 6 連 鎖 公 式 に よ る と , n 個 の 離 散 型 確 率 変 数 の 分 布 は n 個 の 条 件 付 き 確 率 の 積 と し て 分 解 す る こ と が で き る (e.g., P(X1, X2, ···, Xn) = P(Xn|Xn- 1, ···, X2, X1)···P(X2|X1)P(X1)). Figure 4-1. 喫 煙 (S)と歯 の黄 ばみ(Y)と肺 がん(L)の因 果 モデル(左 図 ). 歯 の黄 ばみに 対 する介 入 によって喫 煙 から歯 の黄 ばみへのエッジが取 り除 かれた因 果 モデル(右 図 ).

歯の

黄ばみ

(Y)

肺がん

(L)

喫煙

(S)

歯の

黄ばみ

(Y)

肺がん

(L)

喫煙

(S)

介入

(I)

(32)

4. 2. 2. 因 果 マ ル コ フ 条 件

因 果 マルコフ条 件 (causal Markov condition) によると,変 数 はその直 接 の原 因 事 象 を固 定 した場 合 ,そ の結 果 事 象 以 外 の 変 数 と独 立 になる .上 述 の 例 では,ある 人 が喫 煙 していると知 ってしまえば,その人 の歯 が黄 色 いか否 かは肺 がんの予 測 とは無 関 係 となる .このように ,ある変 数 を所 与 として変 数 間 に独 立 関 係 が生 じる ことは条 件 付 き 独 立 と言 われる.因 果 マルコフ条 件 を設 けることによって(4-2)式 や(4-3)式 は以 下 のよう に書 き換 えられる. 𝑃 𝑆, 𝑌, 𝐿 = 𝑃 𝑆 𝑃(𝑌|𝑆)𝑃(𝐿|𝑆) (4-4) (4-2)式 における P(L|Y,S)が(4-4)式 では P(L|S)に単 純 化 されており,同 時 確 率 分 布 が 変 数 の順 序 に沿 った形 で分 解 されているこ とが見 て取 れる.この例 における因 果 マルコ フ条 件 は喫 煙 と歯 の黄 ばみに基 づく肺 がんの予 測 と喫 煙 のみに基 づく肺 がんの予 測 が 等 しい (i.e., P(L|Y,S) = P(L|S)) という仮 定 に他 ならない. 因 果 マ ルコフ条 件 の 背 景 には,ある 変 数 の 原 因 となるすべ ての 変 数 がネ ットワークに 含 まれ てい る ことが 仮 定 され ている .また ,因 果 のない 相 関 はない とい う Reichenbach (1956) の共 通 原 因 に関 する仮 定 を満 たしていることも想 定 されている.つまり,変 数 間 に 相 関 関 係 が 生 じてい る 時 は,どちらか一 方 の 変 数 が 他 方 の 変 数 の 原 因 と なっている か,両 方 の変 数 を引 き起 こす第 三 の変 数 が存 在 するというわけである.これら 2 つの仮 定 が満 たされるとき,因 果 マルコフ条 件 は正 当 化 される. 4. 2. 3. 介 入 因 果 ベイズネットの特 徴 の 1 つとして変 数 に操 作 を加 えた時 の結 果 を予 測 できること が挙 げられる.変 数 を強 制 的 にある値 に設 定 する ことは介 入 (intervention) と呼 ばれ, 介 入 に よ って制 御 された 変 数 は本 来 の 原 因 と は独 立 に なる .この ことは ,外 生 変 数 と し

(33)

て介 入 の変 数 を加 え,介 入 された事 象 に対 す るエッジを取 り除 くことで表 現 され ,グラフ 切 除 (graph surgery) や無 効 化 (undoing) と言 われる (Pearl, 2000; Sloman,

2005)7.上 記 の 例 においてホワイトニングによって歯 の黄 ばみ を除 去 した 場 合 ,喫 煙 か ら歯 の黄 ばみへのエッジが除 去 され (Figure 4-1 右 図 ),歯 の状 態 から喫 煙 の有 無 や 肺 がんの状 態 について予 測 することはできなくなる.このこと は当 然 のように思 われるかも しれないが,観 察 と 介 入 の違 い を表 現 し ,因 果 関 係 を適 切 に 記 述 でき るように なったの は Pearl (2000) によって因 果 ベイズネットが開 発 されてからのことである. 4. 3. 因 果 ベ イ ズ ネ ッ ト の 哲 学 的 背 景 4. 3. 1. 確 率 不 確 実 性 を 表 現 す る 方 法 と して確 率 を用 いる ことは多 いが ,その 解 釈 に は様 々な立 場 が存 在 する (Hájek, 2003).最 も一 般 的 なのは頻 度 主 義 と呼 ばれる立 場 であり,こ の立 場 では同 一 条 件 下 における無 限 回 の試 行 の結 果 ,相 対 頻 度 が収 束 したものとして 確 率 を定 義 する.例 えば,コインを投 げた際 に表 が出 る確 率 は,コインを繰 り返 し投 げて, 何 回 表 が出 たか数 えることで求 められる. 一 方 ,ベイズ主 義 の立 場 では,ある 事 象 につい ての個 人 的 な信 念 の 度 合 いと して確 率 が定 義 される8.このような確 率 は主 観 確 率 と呼 ばれ,測 定 には様 々な方 法 が存 在 す る (e.g., 戸 田 , 1982).確 信 の程 度 として確 率 を捉 えることによって,明 日 雨 が降 る確 率 といった 未 知 の 事 象 や 火 星 に 生 命 が 存 在 す る確 率 とい った 無 知 に 起 因 する 不 確 定 7 対 象 と な る 変 数 の 値 を 固 定 す る 介 入 が 強 い 介 入 (strong intervention) と も 呼 ば れ る の に 対 し て , 変 数 に 影 響 を 及 ぼ す が , そ の 値 を 固 定 し な い よ う な 操 作 は 弱 い 介 入 (weak intervention) と 呼 ば れ ,こ の 場 合 は 他 の 変 数 か ら の エ ッ ジ が 取 り 除 か れ る こ と は な く , 依 然 と し て 本 来 の 原 因 か ら の 影 響 も 受 け る

(Eberhardt & Scheines, 2007; Meder, Gerstenberg, Hagmayer, & Waldmann, 2010). 8 ベ イ ズ 主 義 の 中 に は 相 対 頻 度 に 関 す る 信 念 の 度 合 い を 確 率 と 定 義 し , 客 観 的 な 確 率 解 釈 に 留 ま ろ う と す る 考 え も あ る (e.g., Neapolitan, 2004).な お ,ベ イ ズ 統 計 に お け る 主 観 ベ イ ズ と 客 観 ベ イ ズ の 違 い は , 確 率 解 釈 に 基 づ く も の で は な く , 事 前 確 率 分 布 の 設 定 方 法 の 違 い に 基 づ く も の で あ る (Berger, 2006; Dey & Rao, 2005 繁 桝 他 訳 2011).

(34)

な事 象 に対 しても確 率 を定 義 することができる.ベイズ統 計 の領 域 では主 観 確 率 の主 観 性 が問 題 になることもあるが,認 知 モデルにおいて主 観 確 率 を使 用 する場 合 ,この問 題 点 はむしろ個 人 差 を扱 いやすくなる利 点 と考 えられる. 主 観 確 率 が 確 率 法 則 に 従 うことは様 々な形 で 示 さ れてきた (Fishburn, 1986).例 えば,Cox (1946) は信 念 の度 合 いが満 たすべきいくつかの公 理 を提 唱 し,確 率 がそれ らの公 理 を満 たすことを示 している .また,de Finetti (1937) は信 念 の度 合 いに対 す る 合 理 的 な制 限 と して確 率 の 公 理 を提 唱 してお り,確 率 の 公 理 が 満 た されない 場 合 に は不 公 平 な賭 けが生 じることを指 摘 している (cf. 園 , 2014).例 えば,コイントスの結 果 を予 測 し,予 測 が的 中 すれば1000 円 貰 える賭 けに参 加 したとする.コインの表 が出 るこ とに対 してある人 が 0.6 の信 念 を抱 いている場 合 ,その人 は 600 円 までならお金 を払 っ て賭 けを行 うと考 えられる.また同 時 に,コインの裏 が出 ることに対 しても 0.6 の信 念 を抱 いていたとする.この場 合 ,賭 けの主 催 者 はこれら2 つの賭 けを合 わせて 1200 円 で売 れ ば,結 果 の如 何 に関 わらず必 ず 200 円 儲 けることができる.確 率 の公 理 が満 たされてい ない事 態 では,相 手 が必 ず負 ける賭 け (ダッチブック) を仕 掛 けることが可 能 になる.主 観 確 率 がダッチブックを生 み出 さない 場 合 には確 率 の 公 理 が 満 たされることが知 られて

おり,このような正 当 化 はダッチブック論 証 (Dutch book argument) と言 われる.また,

確 率 の公 理 からダッチブックが導 かれることはない.

4. 3. 2. 因 果 性

確 率 の 概 念 は 不 確 実 性 を表 現 す る ためだ けで はなく ,因 果 性 の 定 義9にも 使 用 され

てきた (e.g., Eells, 1991; 大 塚 , 2010).Suppes (1970) は原 因 事 象 (C)が結 果 事

(E)の生 起 確 率 を上 昇 させるものとして因 果 関 係 を捉 えた.

𝑃 𝐸 𝐶 > 𝑃 𝐸 (4-5)

Figure 6-2.  実 験 2 のテストフェイズにおける各 群 の回 答 の割 合 .
Figure 6-3.  実 験 2 における各 群 の確 信 度 得 点 .
Figure  7-2.  実 験 1 における共 変 動 手 がかりと時 間 順 序 手 がかりの 使 用 率 .  エラーバーは標 準 誤 差 を表 す .
Figure  7-4.  実 験 2 における共 変 動 手 がかりと時 間 順 序 手 がかりの 使 用 率 .  エラーバーは標 準 誤 差 を表 す .
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