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〈論説〉民法演習 (4)

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Academic year: 2021

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(1)法科大学院論集. 第10号. 民 法 演 習(4). 河. 宏. 内. は じめ に. 本 稿 で は,前 回 に 引 き続 き,民 法 に関 す る演 習 問 題 を4問 出題 し,そ れ に対 す る解 答 例 を示 す こ と にす る。 解 答 例 は あ くまで 参 考 例 に過 ぎ な い こ と に留 意 して読 ん で い た だ けれ ば幸 いで す 。 な お,本 稿 で 百 選1,Hと ス トの民 法 判 例 百 選1,1工(第6版)を トの家 族 法 判 例 百 選(第7版)を. は,別 冊 ジ ュ リ. 意 味 し,家 族 百 選 と は,別 冊 ジ ュ リス. 意 味 し,重 判 と は,ジ ュ リス ト臨 時 増 刊 の 重. 要 判 例 解 説 を意 味 します 。. 第1問. ①. 損害賠償 と相続. サ ラ リー マ ンAに は両 親BCと. 内 縁 の 配 偶 者Dが. い る。AはEの. 過失 に. よ り車 に はね られ 死 亡 した 。 誰 がEに 対 して 損 害 賠 償 を 請 求 で き るか 。 ②. サ ラ リー マ ンAに は両 親BCと. 胎 して い る。AはEの. 内 縁 の 配 偶者Dが. お り,Dは. 胎 児Fを 懐. 過 失 に よ り車 に はね られ死 亡 し,そ の 後Fが. 出 生 した。. 誰 がEに 対 して 損 害 賠 償 を 請 求 で き るか。 ③. サ ラ リー マ ンAに は 両 親BCと. よ り車 に は ね られ 死亡 した が,Aの. 配 偶者Dと. 子Fが い る。AはEの. 借 財 が 多 い の でDFは. がEに 対 して 損害 賠 償 を請 求 で き るか。 一25一. 過失 に. 相 続 を放 棄 した。 誰.

(2) 民 法 演 習(4). ④. サ ラ リー マ ンAは,Bの. 過 失 に よ り車 には ね られ 重 傷 を 負 った 。 症 状 固. 定 後 もAは 就 労 可 能 な 状 態 で は な く,労 働 能 力 の 喪 失 は100%と Aが リハ ビ リを か ね て 散 歩 して い た と こ ろ,Cの. 車 には ね られ 死 亡 した 。Aは. Bか ら逸 失 利 益 や 慰 謝 料 の 賠 償 を ま だ 受 け て い な い。Aに 合,DEは. 妻 子DEが. いる場. 誰 に 損 害 賠 償 を 請 求 で き るか。. サ ラ リー マ ンAは,Bの. 過 失 に よ り車 に は ね られ 重 傷 を 負 い,寝 た き りで 介. 護 を 必 要 とす る状 態 に な った 。AがBに 請 求訴 訟 を して い る とき に,Aは 子CDに. 認 定 され た。. 対 して,Bは. 対 して逸 失 利益 と介護 費 用 の 損 害 賠 償. 胃ガ ンで 死亡 した。Aを 訴 訟 承 継 したAの 妻. どの よ うな 主 張 が 可 能 か 。. 「解 答 例 」 ①Aの. 死 亡 に伴 う損害 の 賠 償請 求 の主 体 と根 拠 に つ い て は,損 害 項 目 ご と. に検 討 す る必 要 が あ る。 判 例 は,Aの. 死 亡 に よ る逸 失 利益 の 損害 賠 償 請 求権 と. 慰 謝 料 請 求 権 をA自 身 がEに 対 して 取 得 し,こ れ をAの 相 続 人BCが よ って取 得 で き る(896条)と 15・2・16(百. い う(い わ ゆ る相 続 的 構 成)。 す な わ ち,大 判 大. 選n(5版)【95】)が. 最 大 判 昭42・11・1(百. 相続 に. 逸 失 利 益 の 損 害 賠 償 請 求 権 の 相 続 を 認 め,. 選H【96】)が. 慰 謝 料 請 求 権 の 相 続 を認 め る。 こ れ に. 対 して,学 説 で は,死 亡 に よ る逸 失 利 益 の損 害 賠 償 請 求 権 の相 続 を否 定 し,扶 養 請 求 権 侵 害 に よ る損 害 賠 償 請 求 を認 め れ ば足 りる との見 解(い. わ ゆ る扶 養 的. 構 成)が あ り,死 亡 に よ る慰 謝 料 請 求 権 の 相 続 も,7!1条 が あ る か ら これ を認 め る必 要 は な い との見 解 が あ る(百 選II【96】 の解 説3,4を よ れ ば,BCは,Aの. 参 照 。)。判 例 に. 死 亡 に よ る逸 失 利 益 の損 害 賠 償 請 求 権 と慰 謝 料 請 求 権 を. 相 続 に よ って取 得 し,か つ,711条. に基 づ き固 有 の 慰謝 料 請 求 権 を 取 得 して,そ. れ らの請 求 権 をEに 対 して主 張 す る こ とに な る。 で は,内 縁 の 配 偶 者Dは,Eに た とえ ば,Dが. 専 業 主 婦 でAか. 対 して 損 害 賠 償 を請 求 で きな い の で あ ろ うか 。 ら扶 養 さ れ て い た よ うな場 合 に は,DはAに 一26一. 対.

(3) 法科大学院論集 す る扶 養 請 求 権 の 侵 害 を 理 由 と し て 民709条(な に 対 し て 損 害 賠 償 を 請 求 で き る(た し,そ. う な る と,Dが. 相 続 し てEに. 昭54・7・20,な. お,自. 判 平5民. 逸失利益 を. ず 内 縁 の 配 偶 者Dの. 整が必要. 扶 養 利 益 の賠 償. 相 続 に よ っ て 取 得 す る こ と に な る(前. 賠 法72条1項. しか. に 関 す る 判 例 で あ る が,最. 掲札幌地判. 判 平5・4・. 【10】)も 参 照 。)。 内 縁 の 配 偶 者 の 慰 謝 料 請 求 権 に 関 レ て は,. 大 判 昭7・10・6(百. 選1【3】)は,内. 縁 の 配 偶 者 は711条 の 配 偶 者 に該 当 し. な い と して 慰 謝 料 請 求 を 否 定 した が,戦. 後,下. 711条 の 類 推 適 用 を 認 あ る 裁 判 例 が あ る(た 20)。 ま た,最. つ,BCもAの. 負 担 が 過 重 に な る の で,調. 逸 失 利 益 か ら,ま. 余 をBCが. 基 づ きE. 幌 地 判 昭54・7・20)1)。. 主 張 で き,か. 主 張 で き る こ と に な り,Eの. 額 が 控 除 さ れ,残. 6(重. と え ば,札. 扶 養 利 益 をEに. に な る 。 こ の 場 合,Aの. い し 自 賠 法3条)に. 第10号. 判 昭49・12・17は,被. 級 審 レ ベ ル で は,内. と え ば,前. 縁配偶者 に. 掲 札 幌 地 判 昭54・7・. 害 者 の 夫 の 妹 を,711条. 所 定 の 者 と実 質 的. に 同 視 す べ き 身 分 関 係 が 存 し被 害 者 の 死 亡 に よ り甚 大 な 精 神 的 苦 痛 を 受 け た 者 で あ る と し,こ. の 者 に 対 し て711条 を 類 推 適 用 して 慰 謝 料 請 求 権 を 認 め て い る 。. こ の 判 例 に 従 え ば,内 縁 の 配 偶 者Dに711条. を 類 推 適 用 し て,DはEに. 対 して慰. 謝 料 を 請 求 で き る とす る こ と も可 能 で あ る 。. 1)理. 論 的 に は,内 縁 の 配 偶 者DのAに. 賠 償 が で き るか,と. な って いた 場 合 に,AがCの 場 合 に,BがCに (企 業 損 害)で. 対 す る扶 養 請 求 権 は 債 権 で あ るか ら,債 権 侵 害 を 理 由 に損 害. い う問 題 が あ る。 た とえ ば,タ. レ ン トAが 興 行 主Bの. 運 転 す る 自動 車 で 怪 我 を し,Bの. 対 して 損 害 賠 償 請 求 で き るか,と あ り,Bは. 説1,2を. 損 害 を 受 けた. い う問 題 で あ る。 この よ うな 損 害 は,間. 接損害. 間接 被 害 者 で あ る か ら,原 則 と して 損 害 賠 償 請 求 が で き な い と い う の が,. 判 例 で あ り,学 説 の 多 数 説 で あ る(最 判 昭43・11・15,百 に 企 業 損害(間. ホー ル で 歌 を 歌 う こ とに. と こ ろで 歌 え ず,Bが. 接 損 害)を. 参 照。 解 説者 で あ る吉 田 教 授 は,こ. ま る 。)。大 判 昭7・10・6(百. 選H【88】. は,個. 人 会 社 の 場 合 に 例外 的. 理 由 とす る 損 害 賠 償 を 認 め た 判 例 と理 解 され て い る 。 百 選H【88】. 選1【3】)で. れ に批 判 的 で あ る(解 説3参. 照)が,少. の解. 数説 に とど. は,原 審 は,扶 養 の 権 利 又 は利 益 を 侵 害 す る故 意 ・. 過失 は認 め られ な い と して,賠 償 を認 め な か った が,大. 審 院 は,他 人 を傷 害 した場 合 は妻 子 等 の 利. 益 を 侵 害 す る こ とが あ る こ とを 予 想 し う る と して損 害 賠 償 を 認 め た 。 「他 人 を 傷 害 した 場 合 は妻 子 等 の利 益 を侵 害 す る こ と が あ る こ とを 予想 し うる」 とい う理 由付 け は擬 制 だ と思 わ れ る が,扶 養 利 益 は,企 業 損 害 な ど に比 べ て,保 護 の必 要 性 が高 い の で,債 権 侵 害 で あ って も例 外 的 に損 害 賠 償 が 認 め られ る と解 す る こ と が で き よ う。. 一27一.

(4) 民 法 演 習(4). ②. 大 判 昭7・10・6(百. 益 をEに. 選1【3】)に. よ れ ば,FはAか. よ って 侵 害 され た こ と にな り,Eに. 求 権 を 取 得 しう るが,Fは,出 けで,出 生 前 に,Fが. 対 して不 法 行 為 によ る損害 賠 償 請. 生 の 時 に遡 って権 利 能力 が あ る とみ な され るだ. 不 法 行 為 に よ る損害 賠償 請 求権 を行 使 で き るわ け で は な. い。 した が って,判 例 に よれ ば,Fは. 出生 後,不 法 行 為 の 時 に遡 ってEに 対 し. て 不 法 行 為 に よ る損害 賠 償請 求 権 を 取得 し(721条),親 理 人 と して,Eに る。Fは,大. ら扶 養 され る利. 権 者 で あ るDを 法 定 代. 対 して 不 法 行 為 に よ る損害 賠 償 請 求 権 を行 使 で き る こ とに な. 判 昭7・10・6に. よ れ ば,7!1条. の子 に該 当 しな い の で,慰 謝 料. を 請 求 で き な い が,前 述 した 最 判 昭49・12・17に よ れ ば,Fは711条. を類推適. 用 してEに 対 して慰 謝 料 を請 求 す る こ とが 可能 で あ る。 以上 の 限 りで は,① の場 合 の,BCが,Aの. 死 亡 に よ る逸 失 利 益 の賠 償 請 求. 権 と慰謝 料請 求権 を相 続 に よ って 取得 す る,と い う点 に変 更 は な く,Dに. 加え. てFも 扶 養 利益 の侵 害 を理 由 にEに 対 して損 害 賠 償 を請 求 し う るの で,Aの 失 利益 か ら,DとFの. 扶 養 利 益 の 賠償 額 が控 除 され,残 余 をBCが. 逸. 相続 によ っ. て取 得 す る こ と にな る。 しか し,大 判 昭7・10・6の で,今. 日で は,787条. 後,昭 和17年 に死 後 認 知 の訴 え が認 め られ た の. に よ り,Aの. 死 後3年 以 内 で あ れ ば,Fの. 法 定 代 理 人D. が検 察 官 を相 手 に認 知 の訴 え を提 起 で き(人 事 訴 訟 法42条1項),勝 FはAの. 認 知 され た子 とな る。 そ うな る と,BCは,Aの. 訴 す れ ば,. 死 亡 に よ る逸 失 利 益. の 賠 償 請 求 権 と慰 謝 料 請 求 権 を相 続 に よ っ て取 得 す る こ と は で き ず(889条 照),Fが. これ を相 続 す る こ とに な る(886条1項,887条1項)。BCと. 711条 に基 づ き,Eに ③. 参. して は,. 対 して 慰 謝 料 を 請 求 で き るだ けで あ る。. 本 件 の場 合,DFは. 相 続 放 棄 を した の で あ る か ら,Aの. 死 亡 に よ る逸 失. 利 益 の賠 償 請 求 権 と慰 謝 料 請 求 権 を相 続 に よ って取 得 す る こ とはで き な い。 し か し,DFがAに て,DFがEに. 対 して扶 養 請 求 権 を有 して いれ ば,Eが. こ れ を侵 害 した と し. 対 して損 害 賠 償 を請 求 す る こ とは可 能 で あ る(最 判 平12・9・ 一28一.

(5) 法科大学院論集. 7)。 しか し,こ の場 合 は,DFがAの. 第10号. 死 亡 に よ る逸 失 利 益 を 相 続 した 場 合 と賠. 償 額 は 同 じには な らな い 。 最 判 平12・9・7は,原. 審 がAの 死 亡 に よ る逸 失 利. 益 の 額 と同 じ額 を 扶 養 利益 喪 失 に よ る損 害 額 と して 算 定 した の を 破 棄 して 次 の よ う に い う。 「不 法 行 為 に よ って 死 亡 した者 の 配 偶 者 及 び子 が 右 死 亡 者 か ら扶 養 を 受 け て い た場 合 に,加 害 者 は右 配 偶 者 等 の 固有 の利 益 で あ る扶 養 請 求 権 を 侵 害 した もの で あ る か ら,右 配 偶 者 等 は,相 続 放 棄 を した とき で あ って も,加 害 者 に対 し,扶 養 利 益 の喪 失 に よ る損 害 賠 償 を請 求 す る こ とが で き る とい うべ き で あ る。 しか し,そ の扶 養 利 益 喪 失 に よ る損 害 額 は,相 続 に よ り取 得 す べ き 死 亡 者 の逸 失 利 益 の額 と 当然 に 同 じ額 と な る もの で は な く,個 々 の事 案 に お い て,扶 養 者 の 生 前 の収 入,そ. の う ち被 扶 養 者 の生 計 の維 持 に 充 て るべ き部 分,. 被 扶 養 者 各 人 につ き扶 養 利 益 と して認 め られ るべ き比 率 割 合,扶 養 を要 す る状 態 が 存 続 す る期 間 な ど の具 体 的 事 情 に応 じて 適 正 に算 定 す べ き もの で あ る。」本 件 の 場 合,た. とえ ば,Dが. 仕 事 を して お りAか ら扶 養 され て いな か った り,F. が 成 人 で 独 立 して 暮 ら して いれ ば,DFは た な い か ら,Eに い 。 また,Fが. そ もそ もAに 対 して 扶 養 請 求 権 を 持. 対 して そ の 侵 害 を 理 由 に 損 害 賠 償 を 請 求 す る こ と は で き な 未 成 年 で あ って も,成 人 す るま で の期 間 しかAに 対 して 扶養 請. 求 権 を 持 た な い 。 さ ら に,Aに. 借 財 が た く さん あ れ ば,AがDFを. 扶養 でき る. 額 も少 な く見 積 も られ る。 本 件 で は,DFが. 相 続 を放 棄 して い る の で,BCがAの. の 損 害 賠 償 請 求 権 を 相 続 して(889条1項1号),Eに 既 に述 べ た よ うに,Aの さ れ,残 余 をBCが BCもAの. 逸 失 利 益 の うち,ま ずDFの. 死 亡 に よ る逸 失 利 益 請 求 す る こ と に な るが, 扶 養 利 益 の賠 償 額 が控 除. 相 続 した と して,請 求 す る こ とに な る。 な お,お そ ら く,. 借 財 を相 続 した くな いか ら,相 続 を放 棄 す るで あ ろ う。. 以 上 の検 討 か ら,借 財 が 多 い と い う本 件 の よ うな 事 例 は別 と して,Aが した場 合 は,DFが. 死亡. 扶 養 利 益 を侵 害 され た と してEに 対 して 損 害 賠 償 請 求 を す. る と い う法 律 構 成(扶 養 的 構 成)を 採 った 場 合 よ り,DFがAの 一29一. 死 亡 に よ る逸.

(6) 民 法 演 習(4). 失 利 益 の損 害 賠 償 請 求 権 を相 続 してEに 対 して 損 害 賠 償 請 求 を す る と い う法 律 構 成(相 続 的構 成)を 採 っ た場 合 の 方 が 賠 償 額 は高 くな り,DFに. 有 利 とい え. る2)。 い わ ゆ る相 続 的 構 成 に対 して は,学 説 の 批 判 が 少 な くな いが,実 務 で こ れ が維 持 され て い る の は,相 続 的 構 成 の方 が扶 養 的 構 成 よ り も賠 償 額 が 高 い, と い う こ と もあ る と思 わ れ る。 ④. 本 件 前 段 は,最 判 平8・5・31(重. 判 平8民. 【11】)に基 づ く。 そ れ は. 次 の よ うに 判 示 す る。 「交 通 事 故 の被 害 者 が事 故 に起 因 す る後 遺 障 害 の た め に 労 働 能 力 の一 部 を喪 失 した 場 合 にお け る財 産 上 の 損害 の額 を算 定 す る に当 た っ て は,そ の後 に被 害 者 が 死 亡 した と して も,交 通 事 故 の 時 点 で,そ の 死亡 の原 因 とな る具 体 的 事 由が 存 在 し,近 い将 来 にお け る死 亡 が 客観 的 に予測 され て い た な ど の特 段 の 事 情 が な い限 り,右 死亡 の事 実 は就 労可 能期 間 の算 定 上 考 慮 す べ き もの で はな い と解 す るの が 相 当 で あ る。 右 の よ う に解 す べ き こ と は,被 害者 の 死亡 が病 気,事 故,自 殺,天 災 等 の い か な る事 由 に基 づ くもの か,死 亡 につ き不 法行 為 等 に基 づ く責 任 を 負担 す べ き 第 三 者 が 存 在 す るか ど うか,交 通事 故 と死 亡 との 間 に相 当 因果 関係 な い し条 件 関 係 が 存 在 す るか ど うか とい った事 情 に よ って異 な る もの で は な い。 本 件 の よ う に被 害者 が 第 二 の 交通 事 故 に よ って死 亡 した場 合,そ. れ が第 三 者 の不 法 行 為. に よ る もの で あ って も,右 第三 者 の 負 担 す べ き賠 償 額 は最 初 の交 通 事 故 に基 づ く後 遺 障 害 に よ り低下 した被 害 者 の 労働 能 力 を前 提 と して算 定 す べ き もの で あ るか ら,前 記 の よ う に解 す る こ とに よ って 初 め て,被 害 者 な い しそ の遺 族 が, 前 後 二 つ の交 通 事 故 に よ り被 害 者 の被 った全 損 害 につ い て の賠 償 を受 け る こ と が 可 能 とな るの で あ る。」. 2)た. だ し,た と え ば,Aに. は先 妻 と の子BCと. 後 妻Dと. の子Fが. お り,BCは. の交 通 事 故 で 死 亡 した と き,Aに. 成 人 して 働 いて い る. が,Fは. 幼 児 で あ る と い う場 合,AがEと. ば,Fは. 相 続 を放 棄 して扶 養 請 求 権 の侵 害 を理 由 と して 損 害 賠 償 を請 求 し た方 が 有 利 と い う こ とは. あ り得 る。 一30一. 見 るべ き財 産 が な けれ.

(7) 法科大学院論 集. 本 件 の場 合,ま ず,AはBに (実務 で は,67歳 (こ れ は,Aが. 対 して,Aの. 逸 失 利益(年. 第10号. 収)に 稼 働 可 能年 数. ま で稼 働 可 能 と して処 理 さ れ て い る。)を 乗 じて 総 収益 を算 定. 労 働 能 力 を100%喪. 失 して い るの で死 亡 の 場合 の算 定 と同 じ計 算. に な る。 しか し,死 亡 の 場 合 は,総 収 益 か らAの 生 活 費 相 当 額(通 常 年 収 の 30%と. され て い る)を 控 除 す るが,Aは. 生 き て い るの で これ は控 除 され な い こ. と に注 意 。)し て 損 害 賠 償 を 請 求 す る こ とが で き る。 た だ,Aは,そ. れ を一 時. 金 と して請 求 す るの で,中 間 利 息 を控 除 して 請 求 しな けれ ば な らな い。 ま た, AはBに. 対 して,負 傷 と後 遺 障害 に よ る慰 謝 料 も請 求 で き る。. 次 に,AがCの. 車 に は ね られ死 亡 した場 合,AがBか. 賠 償 を受 け て い な け れ ば,Aの. 相 続 人DEが,AのBに. ら逸 失 利 益 と慰 謝 料 の 対 す る逸 失 利 益 の損 害. 賠 償 請 求 権 と慰 謝 料 請 求 権 を相 続 に よ って取 得 し請 求 す る こ とに な る。 この 場 合,AがCと. の交 通 事 故 に よ り死 亡 した と い うこ と は,Bの. は考 慮 され な い。AとCと て も,Aの. の関 係 につ いて は,AがCの. 労 働 能 力 喪 失 は100%な. の で,CはAの. 要 はな い。Aの 相 続 人DEは,AのCに 得 し,DEはAの. 賠 償 責 任 に お いて. 車 に はね られ て 死 亡 し. 逸 失 利 益 の 損 害 賠 償 を す る必. 対 す る慰 謝 料 請 求 権 を 相 続 に よ って 取. 妻 子 で あ るか ら711条 に基 づ き固 有 の慰 謝 料 をCに 対 して 取. 得 で き る。 最 判 平8・5・31が. 別 の 交 通 事故 でAが 死 亡 した こ とを 考慮 しな くて よ い と. す る理 由 は,被 害 者 な い しそ の 遺 族 が,前 後 二 つ の 交 通 事 故 に よ り被 害 者 の 被 った 全 損 害 に つ い て の賠 償 を 受 け る こ と を可 能 に す る た め で あ る。 つ ま り, 本 件 の場 合,CはAの. 逸 失利 益 の 損害 賠 償 を す る必 要 は な い の で,AがCと. 交 通 事 故 に よ り死 亡 して も,BにAの Aの 遺 族 で あ るDEの. の. 逸 失 利 益 全 部 の賠 償 責 任 を認 め な い と,. 保 護 に欠 け る こ とに な る とい うの が そ の理 由 で あ る。. 本 件 後 段 は,最 判 平!1・12・20に 基 づ く。 それ は,次 の よ うに判 示 す る。 「交 通 事 故 の被 害 者 が事 故 に起 因す る傷 害 の た め に身 体 的 機 能 の一 部 を喪 失 し,労 働 能 力 の一 部 を喪 失 した場 合 に お い て,逸 失 利 益 の算 定 に 当 た って は,そ の 後 一31一.

(8) 民法 演習(4). に被 害 者 が 別 の 原 因 に よ り死亡 した と して も,右 交 通 事 故 の 時 点 で,そ の 死亡 の 原 因 とな る具 体 的事 由 が 存 在 し,近 い将 来 に お け る死 亡 が 客観 的 に 予 測 され て い た な どの特 段 の事 情 が な い 限 り,右 死 亡 の事 実 は就 労可 能期 間 の認 定 上 考 慮 す べ き もの で は な い と解 す るの が相 当 で あ る。 しか し,介 護 費 用 の賠 償 に つ い て は,逸 失 利 益 の賠 償 とは お の ず か ら別 個 の 考 慮 を必 要 とす る。 す な わ ち,O介. 護 費 用 の賠 償 は,被 害 者 に お い て現 実 に支. 出 す べ き費 用 を補 て ん す る もの で あ り,判 決 に お い て将 来 の介 護 費用 の支 払 を 命 ず る の は,引 き続 き被 害 者 の介 護 を必 要 とす る蓋 然 性 が認 め られ る か らに ほ か な らな い。 と ころ が,被 害 者 が死 亡 す れ ば,そ の 時点 以 降 の介 護 は不 要 とな る の で あ る か ら,も は や介 護 費 用 の賠 償 を命 ず べ き理 由 は な く,そ の費 用 を な お加 害 者 に負 担 させ る こ とは,被 害 者 な い しそ の遺 族 に根 拠 の な い利 得 を与 え る結 果 と な り,か え って衡 平 の理 念 に反 す る こ と に な る。 ⇔ 交 通 事 故 に よ る損 害 賠 償 請 求 訴 訟 に お い て一 時 金 賠 償 方 式 を採 る場 合 に は,損 害 は交 通 事 故 の時 に一 定 の 内容 の もの と して 発 生 した と観 念 され,交 通 事 故 後 に生 じた事 由 に よ っ て損 害 の 内容 に消 長 を来 さ な い もの と され る の で あ るが,右. の よ うに衡 平. 性 の裏 付 けが 欠 け る場 合 に ま で,こ の よ う な法 的 な擬 制 を及 ぼす こ と は相 当で は な い。 ⇔ 被 害 者 死 亡 後 の介 護 費 用 が 損 害 に 当 た らな い とす る と,被 害 者 が 事 実 審 の 口頭 弁 論 終 結 前 に死 亡 した場 合 と その 後 に死 亡 した場 合 とで 賠 償 す べ き 損 害 額 が 異 な る こ とが あ り得 るが,こ. の こ と は被 害 者 死 亡 後 の 介 護 費 用 を 損 害. と して 認 め る理 由 にな る もの で はな い。 以 上 に よれ ば,交 通 事 故 の 被 害 者 が 事 故 後 に別 の 原 因 に よ り死 亡 した 場 合 に は,死 亡 後 に要 した で あ ろ う介 護 費 用 を 右 交 通 事 故 に よ る損 害 と して 請 求 す る こ と は で き な い と解 す る の が 相 当 で あ る。」 最 判平11・12・20に. よれ ば,Bは,介. 護 費 用 につ い て はAの 死亡 に よ りCD. に賠償 しな くて も よい と主 張 で き るが,逸 失利 益 はAの 死 亡 に よ って 影響 を 受 けずCDに. 賠償 しな けれ ば な らな い こ と にな る。 一32一.

(9) 法科大学院論集. 「補. 第10号. 足」. ④ は難 問 で あ る。傷 害 に よ る逸 失 利 益 も介 護 費 用 も本 来 は後 何 年 働 け る か, 後 何 年 介 護 を 必 要 とす るか との 推 定 に基 づ くもの で あ る。 この よ うな 推 定 が 必 要 とな るの は,傷 害 に よ る逸 失 利 益 や 介護 費 用 の 賠 償 を 一 時 金 と して 支 払 お う とす るか らで あ る。 これ を介 護 費用 の 賠償 に 関 す る東 京 高 判 平15・7・29の うに,定 期 金 に よ る賠 償 を命 じ る こ とが で き る とい うよ うに す れ ば,わ 無 理 な 推 定 を行 う必 要 は な くな る。 東 京 高 判 平15・7・29は. よ. ざわ ざ. 次 の よ うに い う。. 「介 護 費 用 は も と も と定 期 的 に支 弁 しな け れ ば な らな い費 用 で あ り,植 物 状 態 とな った被 控 訴 人 花 子 の推 定 的余 命 年 数 につ い て は少 な く と も現 時 点 か ら二 〇 年 な い し三 〇 年 と推 認 す る こと は 困難 で あ る もの の,こ の推 定 余 命 年 数 は少 な い統 計 デ ー タ を基 礎 にす る もの で あ り,現 実 の余 命 と異 な り得 る もので あ る こ と は もち ろん,被 控 訴 人 花 子 の身 体 状 態,看 護 状 況,医 療 態 勢 や 医 療 技 術 の 向 上 の一 方 で,思 わ ぬ 事 態 の急 変 も あ り得 る こ とな どを 考 慮 す る と,概 ね の推 定 年 数 と して も確 率 の 高 い もの と も い い難 い。 そ うす る と,推 定 的 余 命 年 数 を 前 提 と して 一 時 金 に還 元 して 介 護 費 用 を 賠 償 させ た 場 合 に は,賠 償 額 は過 多 あ る い は過 少 とな って か え って 当事 者 間 の 公 平 を 著 し く欠 く結 果 を招 く危 険 が あ る。 この よ うな危 険 を 回避 す るた め には,余 命 期 間 に わ た り継続 して必 要 とな る介 護 費 用 とい う現 実 損害 の性 格 に即 して,現 実 の生 存 期 間 に わ た り定 期 的 に 支 弁 して賠 償 す る定 期 金 賠 償 方 式 を採 用 す る こ とは,そ れ に よ る こ とが 明 らか に不 相 当 で あ る とい う事 情 の な い 限 り,合 理 的 とい え る。」 東 京 高 判 は,最 高 裁 の判 例 に従 わ な け れ ば な らな い の で,逸 失 利 益 に関 して は定 期 金 に よ る賠 償 を命 じず,介 護 費 用 に関 して の み定 期 金 の賠 償 を命 じて い る。 しか し,比 較 法 的 に い え ば,ド. イ ツ で は,逸 失 利 益 につ い て も定 期 金 賠 償 を原 則 と して い る。. こ の た め,訴 訟 後 の 展 開 に よ って は,定 期 金 の 増 額,減 額,消 滅 の 請 求 が 可 能 と され て い る(つ ま り,我 が 国 の民 訴 法117条 に当 た る規 定 で 変 更 を 求 め る こ と が で き る と され て い る。)。最 判 平11・12・20の 一33一. よ う に,交 通 事 故 の 被 害 者 が 後.

(10) 民 法 演 習(4). に交 通 事 故 と全 く関 係 の な い 胃 ガ ンで 死亡 した場 合 に ま で,逸 失利 益 の賠 償 を 認 め るの は問 題 で は な い だ ろ うか。 逸 失 利益 の 賠償 も定 期 金賠 償 の形 で な し得 る とす れ ば,病 気 で死 亡 した場 合 は,民 訴 法117条 で定 期 金 の打 ち切 りを認 め て も よい の で は あ るま い か 。 な お,④ の前 段 の事 例 で も,Bに. 対 してAの 傷 害 に. よ る逸 失 利 益 を た とえ ばAが 事 故 に あ った 時 か ら67歳 ま で定 期 金 賠 償 と して支 払 う よ う請 求 で き る と考 え れ ば,AがCに た 場 合,AはCに. よ る交 通 事 故 で67歳 よ り前 に死 亡 し. 対 して67歳 ま で 定期 金 を 受 け る こ とが で き た利 益 を侵 害 さ れ. た と して 損 害 賠 償 を請 求 で き る と考 え る こ とが可 能 で あ る。 このAのCに る損 害 賠 償請 求権 をAの 相 続 人DEが. 相 続 して,Cに. 対す. 対 して 損害 賠 償 請 求 で き. る と解 す れ ば,④ の前 段 の事 例 でCに よ るAの 死 亡 を理 由 と してBを 免 責 して もAの 遺族 で あ るDEの. 第2間. ①Aか. 利 益 は害 され な い の で は な い だ ろ うか。. 物権的請求権. らBは 自動 車 を盗 ん で乗 り回 し,Cの. 駐 車 場 に放 置 した。CはAに. 対 して 自動 車 の撤 去 と駐 車 場 の使 用 料 相 当額 の賠 償 を求 め て い る が認 め られ る か。 ②AはBに. 自動 車 を所 有 権 留 保 で売 却 した。BはCと. 駐 車 場 の賃 貸 借 契 約. を して い た が,賃 料 を支 払 わ な い ま ま 自動 車 を駐 車 場 に放 置 して行 方 が分 か ら な くな った。Cは,Bと. の賃 貸 借 契 約 を賃 料 不 払 い を理 由 に解 除 し,Aに. 対し. て 自動 車 の撤 去 と駐 車 場 の使 用 料 相 当額 の賠 償 を求 め て い る が認 め られ るか 。 ③AはBに. 自動 車 を売 却 し代 金 全 額 の支 払 を受 け た が,自 動 車 の登 録 名 義. はBへ 移 転 して い な い。BがCと. 駐 車 場 の賃 貸 借 契 約 をす る こ と な く,勝 手 に. 自動 車 をCの 駐 車 場 に放 置 して行 方 が分 か らな くな っ た。CはAに. 対 して 自動. 車 の撤 去 と駐 車 場 の使 用 料 相 当額 の賠 償 を求 めて い るが 認 め られ るか 。 ④AはBに. 自動 車 を所 有 権 留 保 で売 却 した。BがCと 一34一. 駐 車 場 の賃 貸 借 契 約.

(11) 法科大学院論集. 第10号. を す る こ とな く,勝 手 に 自動 車 をCの 駐 車 場 に放 置 して行 方 が分 か らな くな っ た 。CはAに. 対 して 自動 車 の撤 去 と駐 車 場 の使 用 料 相 当額 の賠 償 を求 め て い る. が認 め られ るか。. 「解 答 例 」 ① は,自 動 車 をCの 駐 車 場 に放 置 した の はBで あ り,Aに. は帰 責 事 由が な い. が,現 時点 でAの 自動 車 がCの 駐 車 場 を違 法 に侵 害 して い る ので,CはAに. 対. して物 権 的妨 害 排 除 請 求 が で き る3)。 駐 車 場 の使 用 料 相 当 額 の賠 償 請 求 は709条 に基 づ く もの で あ る か ら,Aは,自 動 車 がCの 駐 車 場 の所 有 権 を侵 害 して い る こ とを 知 らな か った期 間 の駐 車 場 料 金 相 当額 は賠 償 す る必 要 はな く,Cか. ら 自動車 の撤 去 を 求 め られ侵 害 の事 実 を. 知 っ た と きか らの 駐 車 場 料 金 相 当 額 の 損 害 賠償 義務 の み を 負 う,と 解 す るべ き で あ る(次 の② の 最 判 平21・3・10の. 判 旨末 尾 を参 照)。 こ の 点 は,以 下 の②. ③ ④ で も同 様 に解 す べ きで あ る。 ② は,最 判 平21・3・10(重. 判 平21【 民5】)に. 基 づ く。 最 判 平21・3・10. は 次 の よ うに い う。 「本 件 立 替 払 契 約 に よ れ ば,被 上 告 人 が 本 件 車 両 の 代 金 を 立 替 払 す る こ とに よ って取 得 す る本 件 車 両 の所 有 権 は,本 件 立 替 金 債 務 が 完 済 され る ま で 同債 務 の 担 保 と して 被 上 告 人 に 留 保 さ れ て い る と こ ろ,被 上 告 人 は,Aが. 本 件 立 替 金 債 務 につ い て期 限 の利 益 を喪 失 しな い限 り,本 件 車 両 を 占. 有,使 用 す る権 原 を有 しな いが,Aが 期 が経 過 した とき は,Aか. 期 限 の利 益 を 喪 失 して 残 債 務 全 額 の 弁 済. ら本 件 車 両 の引 渡 しを 受 け,こ れ を 売 却 して そ の 代. 金 を残 債 務 の弁 済 に充 当す る こ とが で き る こ と にな る。 動 産 の購 入 代 金 を 立 替 払 す る者 が 立 替 金 債 務 が 完 済 され る まで 同 債 務 の 担 保 と して 当 該 動 産 の 所 有 権 を 留 保 す る場 合 にお い て,所 有 権 を留 保 した者(以 下,. 3)安. 永 正 昭 「講 義物 権 ・担 保 物 権 」20∼22頁,Sシ. 一35一. リー ズ民 法 ■19∼20頁 を参 照 。.

(12) 民 法 演 習(4). 「留 保 所 有 権 者 」 と い い,留 保 所 有 権 者 の有 す る所 有 権 を 「留 保 所 有 権 」 とい う。)の 有 す る権 原 が,期. 限 の利 益 喪 失 に よ る残 債 務 全 額 の 弁 済 期(以 下 「残. 債 務 弁 済 期 」 と い う。)の 到 来 の前 後 で 上 記 の よ う に異 な る とき は,留 保 所 有 権 者 は,残 債 務 弁 済 期 が到 来 す る ま で は,当 該 動 産 が第 三 者 の土 地 上 に存 在 し て 第 三 者 の 土 地 所 有 権 の行 使 を妨 害 して い る と して も,特 段 の事 情 が な い 限 り,当 該 動 産 の撤 去 義 務 や不 法 行 為 責 任 を負 うこ とは な いが,残 債 務 弁 済 期 が 経 過 した後 は,留 保 所 有 権 が 担 保 権 の性 質 を有 す るか ら とい って 上 記 撤 去 義 務 や 不 法 行 為 責 任 を免 れ る こ とは な い と解 す る のが 相 当で あ る。 なぜ な ら,上 記 の よ うな留 保 所 有 権 者 が 有 す る留 保 所 有 権 は,原 則 と して,残 債 務 弁 済 期 が 到 来 す る まで は,当 該 動 産 の 交 換 価 値 を把 握 す る に と ど ま るが,残 債 務 弁 済 期 の 経 過 後 は,当 該 動 産 を 占有 し,処 分 す る こ とが で き る権 能 を 有 す る もの と解 さ れ るか らで あ る。 もっ と も,残 債 務 弁 済 期 の経 過 後 で あ って も,留 保 所 有 権 者 は,原 則 と して,当 該 動 産 が 第 三 者 の 土 地 所 有 権 の 行 使 を 妨 害 して い る事 実 を 知 らな けれ ば不 法 行 為 責 任 を 問 わ れ る こ と はな く,上 記 妨 害 の 事 実 を 告 げ られ るな ど して これ を 知 った と き に不 法 行 為 責 任 を 負 う と解 す るの が 相 当 で あ る。」 最 判 平21・3・10に. よれ ば,本 件 の 場 合,BのAに. 来 の 前 後 で 区 別 し,残 債 務 弁 済 期 の 到 来 前 に はAはCに 務 を 負 わ な い が,残 債 務 弁 済 期 の 到 来 後 にはAはCに. 対 す る残 債 務 弁 済 期 の 到 対 して 自動 車 の 撤 去 義 対 して 自動 車 の 撤 去 義 務. を 負 う,と 解 す る こ と にな る4)。 ③ は,最 判 平6・2・8(百 平6の 事 例 で は,Yが. 選1【47】)の. 事 例 と似 て い る。 つ ま り,最 判. 自 らの 意 思 で 建 物 取 得 の登 記 を 経 由 した 場 合,Bに. 土地. 上 の 建 物 の 所 有権 を譲 渡 して も,建 物 の 移転 登記 を しな け れ ば,土 地 所 有者X に 対 して 自分 は 建物 の所 有者 で は な い か ら,建 物 収 去 ・土 地 明 渡 の義 務 を 負 わ. 4)な. お,最 判 平21・3・10で. は,自 動 車 の販 売 者 で は な く,自 動 車 の購 入 代 金 を立 替 払 い した者 が. 自動 車 の留 保 所 有 権 者 と な っ て い る が,本 件 の よ うに,自 動 車 の販 売 者 が留 保 所 有 権 者 に な っ て い る場 合 も,留 保 所 有 権 に関 して は,同 様 に解 す る こ と が で き る。 一36一.

(13) 法科 大学院論集. 第10号. な い,と は主 張 で き な い と され た。 も しそ の よ うな主 張 を認 め る と,土 地 所 有 者 は実 質 的所 有者 を探 求 す る とい う困難 を 強 い られ る こ とに な り,他 方,建 物 所 有者 は真 実 そ の所 有 権 を他 に譲 渡 した の で あ れ ば そ の 旨の登 記 を す る こ とは 通 常 さ ほ ど困難 とは い え な い,と い うの が そ の理 由 で あ る。 つ ま り,Yは 登 記 を しよ う と思 え ば で き る の に,そ れ を怠 って い た た め に,Xが 者 をつ き とめ る こ とが 困難 に な って い る わ け だ か ら,YはXに. 移転. 建 物 の所 有. 対 して 自分 は建. 物 の所 有 者 で は な い か ら,建 物 収 去 ・土 地 明渡 の義 務 を負 わ な い,と は主 張 で き な い と さ れ た の で あ る。 本 件 の場 合 も,最 判 平6・2・8と らの意 思 で 自動 車 の 登 録 を 経 由 し,Bに 怠 って い る た め に,Cは. 同様,Aは,自. 自動 車 を 譲 渡 した の に,移 転 登 録 を. 自動 車 の撤 去 を求 め る相 手 方 をつ き と め る のが 困 難 に. な っ て い る。 した が っ て,Cが. 調 査 して 自動 車 の 名 義 人Aを. つ き と め た場 合,. Aは 自動 車 の所 有 者 で は な いか ら,自 動 車 の 撤 去 義 務 を 負 わ な い と は主 張 で き ず,Cに. 対 して 自動 車 の 撤 去 義 務 を 負 う,と 解 す べ きで あ ろ う5)。. ④ は,② と同 じで あ ろ うか 。② で は,CはBと るか ら,Cは. 5)な. お,②. 賃 貸借 契 約 を して いた の で あ. ま ず はBに 対 して 自動 車 の撤 去 と駐車 場 料 金相 当 額 の 損 害賠 償 を. の最 判 平21・3・10の. 原 審 で は,最. 判 平6・2・8と. の 関 係 も問 題 とな った 。 す な わ ち,. 駐 車 場 の賃 貸 人 は,留 保 所 有 権 者 は 自動 車 の登 録 名 義 を有 す るか ら,最 判 平6・2・8に. よ り,自. 動 車 の撤 去 義 務 を負 う,と 主 張 した 。 こ の主 張 に対 して,原 審 は 次 の よ う に い う。 「控 訴 人 は,前 記 の と お り,本 件 車 両 の駐 車 場 と して本 件 土 地 を賃 貸 して い る者 と して,本 件 車 両 の所 有 権 の帰 属 に つ き重 大 な利 害 関 係 を有 して い る の で あ るか ら,前 記 最 高 裁 判 例(=最 被 控 訴 人 は,本 件 車 両 の 登 録 名 義 人 と して,本. 判 平6・2・8)に. 照 ら し,. 件 車 両 の撤 去 義 務 を負 う 旨主 張 す る。. しか しな が ら,控 訴 人 が 引 用 す る前 記 最 高 裁 判 例 は,特 定 の 土 地 を離 れ て存 在 し得 な い建 物 を所 有 す る者 が 第 三 者 にそ の 建 物 の所 有 権 を 移 転 した後 もそ の 建 物 の 登 記 名 義 を移 転 す る こ とな く,自 己 名 義 の ま ま に して い た 事 案 に関 す る もの で あ る と こ ろ,本 来 動 産 で あ る 自動 車 につ いて 自動 車 登 録 名 義 人 に 自動 車 撤 去 の 義 務 が あ るか 否 か が 争 点 と され て い る本 件 と は事 案 を 異 にす る もの で あ っ て,本. 件 に適 切 な もの で はな い。」. しか し,建 物 か 自動 車 か の 差 異 はAの 撤 去 義 務 に関 して は重 要 で はな い と思 わ れ る。 自動 車 の 所 有 権 留 保 売 買 の 場 合 は,次. の ④ で 述 べ る よ うに,Aが. と評 価 で き るか 否 か が ま さに 問 題 とな るが,本. 所 有 権 を 移 転 した の に移 転 登 録 を 怠 って い る. 件 の よ うな 通 常 の 自動車 の 売 買 の 場 合 は,Aは. 権 を 移 転 した の に移 転 登 録 を 怠 って い る と評 価 で き る こ と に問 題 は な い の で,建 Aに. 自動 車 の 撤 去 義 務 を 認 め て も よい の で は な い か と思 わ れ る 。 一37一. 所有. 物 の 場 合 と 同様,.

(14) 民 法 演 習(4). 請 求 す べ き で あ る と言 え る。Cは,Bと い を理 由 に解 除 した が,Bは の で,CはAに. の駐 車 場 の賃 貸 借 契 約 をBの 賃 料 不 払. 自動 車 を駐 車 場 に放 置 した ま ま行 方 を く らま した. 対 して 自動 車 の撤 去 を請 求 したの で あ る。 裁 判 所 は,残 債務 弁. 済 期 の 到 来 の 前 後 で 区 別 し,残 債 務 弁 済 期 の 到 来 前 に はAは 本 件 自動 車 を 占 有,使 用 す る権 限 を有 しな い ので,Aは. 自動 車 の 担 保 権 者 に過 ぎずCに 対 して. 自動 車 の撤 去 義 務 を負 わ な いが,残 債 務 弁 済 期 の 到 来 後 に はAは 本 件 自動 車 の 引 渡 を受 け,こ れ を売 却 して そ の代 金 を残 債 務 の 弁 済 に充 当 で き るの で,Aは いわ ば 自動 車 の所 有 者 と してCに 対 して 自動 車 の 撤 去 義務 を 負 う,と. した の だ. と解 す る こ とが で き よ う6)。 つ ま り,残 債 務 弁 済 期 の 到 来 後 に はAは 本 件 自動 車 の 引渡 を 受 け,こ れ を売 却 して そ の 代 金 を残 債 務 の 弁 済 に充 当 で き るの で, Aは いわ ば 自動 車 の 所 有 者 と して,① の 場 合 と同様,Cに. 対 して 自動 車 の撤 去. 義 務 を負 う,と され た の だ と考 え る こ とが で き る。 これ に対 して,④ で は,C とBと の賃 貸 借 契 約 は な く,BがCの CはBを. 知 り得 ず,自 動 車 の 名 義 人Aを 探 しだ し,Aに. 要 求 して い る。 これ は,③ がBに. 駐 車 場 に勝 手 に 自動 車 を放 置 して い る。 対 して 自動 車 の撤 去 を. の事 例 と類 似 して い る。 この た め,④ の場 合 は,A. 自動 車 の 所 有 権 を 譲 渡 し,Aは. 残 債務 の弁 済 期 が到 来 す る前 は担 保 権 の. 性 質 を 有 す る留 保 所 有権 しか もた な い と して も,Aは 登 録 を そ の ま ま に して い るわ けだ か ら,AはCに. 自動 車 の所 有 者 と して の. 対 して残 債 務 の弁 済 期 が到 来. す る前 は 自動 車 の所 有 者 で は な い か ら,自 動 車 の撤 去 義 務 を負 わ な い と主 張 す る こ とは で きな い,と 解 す る見解 もあ る7)。 つ ま り,こ の場 合 は,② の場 合 と 異 な り,③ の場 合 と同様,Aは,自 6)前. 掲 の 最 判 平21・3・10が,「. 動 車 の移 転 登 録 義 務 を怠 り,Cが. 残 債 務 弁 済 期 が 経 過 した 後 は,留. 自動 車 の. 保 所 有 権 が担 保 権 の 性 質 を 有 す. る か らと い っ て上 記 撤 去 義 務 や不 法 行 為 責 任 を免 れ る こ と はな い と解 す る のが 相 当で あ る。 なぜ な ら,上 記 の よ う な留 保 所 有 権 者 が有 す る留 保 所 有 権 は,原 則 と して,残 債 務 弁 済 期 が 到 来 す る まで は,当. 該 動 産 の 交 換 価 値 を把 握 す る に と ど ま るが,残. 債 務 弁 済 期 の 経 過 後 は,当. 該 動 産 を 占有 し,. 処 分 す る こ と が で き る権 能 を有 す る もの と解 さ れ る か らで あ る。」 と述 べ て い る趣 旨を,以 上 の よ う に解 す る こ と も で き る と思 わ れ る。 7)田. 高寛 貴 ・判 例 タ イ ム ス1305号,48頁. 以下参照。 一38一.

(15) 法科大学院論集. 第10号. 所 有 者 を探 求 す る の を 困難 に した の で あ る か ら,残 債 務 弁 済 期 の到 来 の前 後 を 問 わず,AはCに. 対 して 自動 車 の撤 去 義 務 を負 う と い う の で あ る。 しか し,所. 有 権 留 保 の 場 合,③. の 場 合 と同 様,移 転 登 録 が で き る の に,Aは. 移転登 録を. 怠 っ て い る と評 価 で き るか は疑 問 で あ る。 担 保 方 法 と して 所 有 権 留 保 を 認 め る 以 上,④. の場 合 も,弁 済 期 到 来 後 に限 ってAは. 自動 車 の 撤 去 義 務 を 負 う と解 す. るべ きで は あ る ま いか 。. 第3問94条2項. ① (1)Aは. 債 権 者 の 差 押 を 免 れ るた め に,Bと. 義 をBに 移 した 。Bの 債 権者Cが に,AはCに. 示 し合 わ せ て 甲 不動 産 の登 記 名. 甲 不 動産 を 差 し押 さえ て差 押登 記 を した場 合. 対 して 甲不 動産 は 自分 の もの だ と主 張 して,第 三 者 異 議 の訴 え を. 提起 して い るが認 め られ るか。 (2)Aは. 債 権 者 の差 押 を免 れ るた め に,Bと. 義 をBに 移 した。Aが 無 資 力 な の で,Aの. 示 し合 わ せ て 甲不 動 産 の登 記 名. 債 権 者Cが 債 権 者 代 位 権 に基 づ い て. Bに 対 して移 転 登 記 の抹 消 を請 求 した。BはAのBに 因給 付 で あ る か ら,AはBに. 対 す る移 転 登 記 は不 法 原. 対 して移 転 登 記 の抹 消 請 求 が で き な い ので,Aの. 債 権 者Cも 債 権 者 代 位 権 に基 づ い てBに 対 して移 転 登 記 の抹 消 を請 求 で きな い と主 張 す る が,そ の主 張 は認 め られ るか 。 ② (1)借 地 人Aが. そ の所 有 す る建 物 を仮 装 でBへ 譲 渡 した 場 合,土 地 賃 貸 人C. は賃 借 権 の 無 断 譲 渡 を 理 由 と して,AC間. の 賃 貸 借契 約 を 解 除 し,Bに. 対 して. 建 物 収 去 ・土 地 明 渡請 求 を す るが 認 め られ るか 。Bが 建 物 を更 にDに 譲 渡 した が,DがA・B間. の建 物 売 買 が仮 装 で あ る こ とを知 らな か った場 合,土 地 賃 貸. 人Cは 賃 借権 の無 断譲 渡 を理 由 にAC間 一39一. の賃 貸 借 契 約 を解 除 し,Dに. 対 して建.

(16) 民 法 演 習(4). 物 収 去 ・土地 明 渡 請 求 を す れ ば認 め られ るか 。 (2)土 地 がAB間 をBか. で 仮 装譲 渡 され,そ の 土地 上 にBが 建 物 を 建 て,こ の 建 物. らCが 賃 貸 借 した 場 合,AはBに. 対 して 建物 収去 ・土 地 明 渡請 求 を,C. に対 して建 物 退去 ・土 地 明 渡 請 求 を 求 め る こ とが で き るか。 (3)土 地 がAB間. で仮 装譲 渡 され,そ の土 地 をCが 賃 貸借 して 土地 上 に建 物. を 建 て た場 合,AはCに. 対 して 建物 収去 ・土 地 明渡 請 求 が で き るか。. 「解 答 例 」 ① の(1)では,Bの. 一 般 債 権 者 は,た. とえ善 意 で あ って も,虚 偽 表 示 の外 形 を. 基 礎 と して新 た に利 害 関係 を持 つ に至 った 第三 者 とは解 せ られ な い か ら,94条 2項 の第 三 者 に は 当 た らな い と考 え られ て い る。 しか し,Bの. 一 般 債 権 者Cが. 虚 偽 表 示 の 目的物 を差 し押 さえ た場 合 に は,差 押 債 権 者 は 目的物 に対 して新 た に利 害 関係 を持 つ に至 った と解 され,94条2項 た が って,Cが. 善 意 で あ れ ば,AはCに. の第 三 者 と考 え られ て い る。 し. 対 して第 三 者 異 議 の訴 え を提 起 して も. 認 め られ な い(最 判 昭48・6・28)。 ① の(2)では,Aが. 債 権 者 の差 押 を免 れ る た め に不 動 産 の名 義 をBへ 移 転 す る. 行 為 は,刑 法96条 の2に 違 反 し,AもBも. 処 罰 を受 け る行 為 で あ る こ とが 問題. とな る。 この よ う な刑 罰 法 規 にふ れ る行 為 を行 った 場 合 は,708条 給 付 に 当 た り,AはBに. の不法原 因. 対 して移 転 登 記 の抹 消 を請 求 で き な い と解 す るべ き で. あ ろ うか。 最 判 昭27・3・18は. 次 の よ うに言 う。 「民 法 七 〇 八 条 に い う不 法 の. 原 因 の た め に な され た給 付 とは,公 の秩 序 若 し くは善 良 の風 俗 に反 して な され た給 付 を さす もので あ り,債 務 者 が 債 権 の執 行 を免 か れ る た め他 人 と通 謀 し自 己所 有 の 不 動 産 を売 買 に仮 装 して他 人 の所 有 名 義 に登 記 を して も,そ れ が 「家 資 分 散 ノ際 二 於 ケ ル 如 ク犯 罪 ヲ構 成 スル 場 合 ヲ除 ク ノ外 」 民 法 七 〇 八 条 に いわ ゆ る不 法 の 原 因 に基 く給 付 と い うを得 な い こ と は,従 来 大 審 院 判 例 の示 す と こ ろで あつ て,今. にわ か に これ を 変 更 す べ き必 要 を 認 めな い。 た だ 昭 和 一 六 年 法 一40一.

(17) 法科大学 院論集. 第10号. 律 六 一 号 は,刑 法 九 六 条 ノニ を新 設 し,強 制 執 行 を免 か れ る 目的 で財 産 を仮 装 譲 渡 す る こ とを犯 罪 と して処 罰 す る こ と と した の で,右 規 定 の施 行 さ れ た 昭和 一 六 年 三 月 二 〇 日以 後 な さ れ た か か る行 為 は,民 法 七 〇 八 条 の不 法 の原 因 の た め に な され た給 付 に 当 る もの と して,給 付 者 に お い て給 付 の返 還 を請 求 し得 な い場 合 が あ る こ と は い う ま で もな い。 と こ ろが,原 判 決 の確 定 した事 実 に よ る と,被 上 告 人(原 告)先. 々代 竹 村 一 郎 は,本 件 不 動 産 が 執 行 等 に よつ て 債 権 者. の 手 に帰 す るの を 免 か れ るた め,上 告 人(被 告)下. 島 しつ と合 意 の 上,登 記 面. の 所 有 名 義 を 下 島 しづ に仮 装 し置 くこ と と して,大 正 一一 五 年 七 月 二 四 日同 人 名 義 に保 存 登 記 を した とい うの で あ る。 され ば,本 件 の 仮 装 登 記 は前 記 刑 法 の 新 設 規 定 施行 の 日か ら約 一 五 年 前 にな され た もの で あ つ て,そ の 当 時 にお い て は か か る行 為 は,い ま だ 犯 罪 を構 成 しな か つ た ば か りで な く,判 例 に よつ て も公 序 良俗 違 反 の行 為 とは認 め られ な い で,こ れ に対 して は 民法 七 〇 八条 の 適用 は な い もの と解 され て い た の で あ る。」 も し最 判 昭27・3・18の. よ う に解 す る と,. 刑 法96条 の2新 設 以 降 の事 案 で あ れ ば,強 制 執 行 を免 れ るた め の仮 装 譲 渡 は不 法 原 因給 付 とな り,AはBに. 対 して移 転 登 記 の抹 消 を請 求 で き ず,Aの. Cは 債 権 者 代 位 権 に基 づ きAのBに い る の で あ る か ら,Cの. 債権者. 対 す る移 転 登 記 抹 消 請 求 権 を代 位 行 使 して. 請 求 も認 め られ な い こ と に な る。 しか し,こ れ で はA. の債 権 者Cの 利 益 が 害 さ れ る。 刑 法96条 の2は,債. 務 者 が 強 制 執 行 を免 れ る た. め に財 産 隠 しをす る こ と を阻 止 し,債 権 者 の 利 益 を守 る た め の規 定 な の に,最 判 昭27・3・18の. よ うな 解 釈 で は,債 権 者 の 利 益 を 守 る こ と はで き な い。 そ こ. で,最 判 昭41・7・28は,次. の よ う に い う。 「… … 刑 法 は強 制 執 行 を 免 れ る 目. 的 を もつ て財 産 を仮 装譲 渡 す る者 を処 罰 す るが(刑 法 九 六 条 ノニ),こ の よ うな 目的 の た め に財 産 を 仮 装 譲 渡 した と の一 事 に よ つ て,そ. の行 為 が す べ て 当 然. に,民 法 七 〇八 条 に い う不 法 原 因給 付 に該 当 す る と して そ の給 付 した もの の返 還 を請 求 し得 な くな るの で は な い(も つ と も本 件 の仮 装 譲 渡 の行 わ れ た 昭和 八 年 一 〇 月 五 日当 時 は,右 刑 法 の新 設 規 定 施 行 前 で あ り,従 つ て,本 件 行 為 は犯 一41一.

(18) 民 法 演 習(4). 罪 を 構 成 して い な い)。 しか して,今 本 件 につ いて み る に,… …被 上 告 会 社 の右 不 動 産 につ い て の返 還 請 求 を 否 定 す る こ とは,却 つ て 当事 者 の意 思 に反 す る も の と認 め られ るの み な らず,一 面 にお い て い わ れ な く仮 装 上 の譲 受 人 た る上 告 人 を 利 得 せ しめ,他 面 にお い て 被上 告 会社 の債 権 者 は もは や右 財 産 に対 して強 制 執 行 を な し得 な い こ と とな り,そ の債 権 者 を害 す る結 果 とな るお そ れ が あ る の で あ る。 これ は,右 刑 法 の 規 定 に よ る仮 装 譲 渡 を抑 制 し よ う とす る法 意 に も 反 す る もの とい うべ きで あ る。 しか らば,本 件 に つ い て,前 記 仮 装 譲 渡 は民 法 七 〇 八条 にい う不 法 原 因給 付 に あ た らな い と した原 審 の判 断 は正 当 と して是 認 す べ き で あ る。」 つ ま り,最 判 昭4!・7・28は,刑. 法96条 の2新. 設 後 も,Aの. Bに 対 す る移 転 登 記 の抹 消請 求 を認 め な い とAの 債 権 者Cを 害 す る結 果 とな る お そ れ が あ るの で,AのBに. 対 す る仮 装 譲 渡 は不 法 原 因給 付 に な らな い と解 す. べ きで あ る,と して い るの で あ る。 この最 判 昭41・7・28に も仮 装 譲 渡 は不 法 原 因給 付 に 当 た らな い か ら,AはBに を請 求 で き る と考 え る こ とが で き るの で,Cは. よ れ ば,AB間. で. 対 して移 転 登 記 の抹 消. 債 権 者 代 位 権 に基 づ きAのBに. 対 す る移 転 登 記 抹 消請 求 権 を代 位 行 使 して,Bに. 対 して移 転 登 記 の抹 消 を請 求. で き る。 ② の(1) 94条2項. の第 三 者 とは,虚 偽 表 示 の結 果 生 じた虚 偽 の法 律 関係 を基 礎 と して. 新 た な利 害 関係 に入 った者 と解 され て い る。Aが 借 地 上 の建 物 をBへ 仮 装 譲 渡 す れ ば,土 地 の 賃 借 権 もAか 3・9参. 照)が,土. らBへ 仮 装 譲 渡 さ れ る こ と に な る(最 判 昭47・. 地 の賃 貸 人Cは,土. 地 の賃 借 権 の仮 装 譲 渡 を基 礎 と して新. た な利 害 関係 に入 った者 で は な い か ら,Aは よ り無 効 で あ る こ とをCが て,CはAが. 土 地 の賃 借 権 の譲 渡 が虚 偽 表 示 に. 善 意 で あ っ て もCに 対 して 主 張 で き る。 した が っ. 賃 借 権 を 無 断 で 譲 渡 した こ とを理 由 と して,Bに. 対 して 建 物 収. 去 ・土 地 明渡 請 求 を して もみ とめ られ な い(最 判 昭38・11・28)8)。 8)本. 間 の場 合 に,学 生 の 解 答 で は,建 物 の 仮 装 売 買 につ いてCは. 一42一. 利 害 関 係 者 で はな い か らCは94条.

(19) 法科大学 院論集. で は,Bが. 建 物 を 更 にDに 譲 渡 した が,DがA・B間. 第10号. の建 物 売買 が仮 装 で あ. る こ と を知 らな か った 場 合,土 地 賃 貸 人Cは 賃 借 権 の無 断 譲 渡 を理 由 と して, Dに 対 して 建物 収去 ・土 地 明 渡請 求 を す れ ば認 め られ る か。 この場 合 は,Aは Dに 対 して,建 物 の譲 渡 と土 地 の賃 借 権 の譲 渡 が虚 偽 表 示 で無 効 で あ る こ とを 主 張 で き な い。DはAB間. の虚 偽 表示 の結 果 生 じた虚 偽 の法 律 関係 を基 礎 と し. て新 た な利 害 関係 に入 った者 と解 さ れ,Dは の賃 借 権 をAか. 善 意 で あ る か ら建 物 所 有 権 と土 地. ら取 得 で き る こ とに な る(し た が って,AはDに. 対 して,自 分. が 土 地 の 賃 借 人 で あ る と主 張 で き な くな る(最 判 昭39・12・11)9))。. この 結. 果,土 地 の賃 借 人Aは 土 地 賃 貸 人Cに 無 断 で賃 借 権 をDに 譲 渡 した こ と に な る の で,Aの. 行 為 がCに 対 す る背 信 行 為 と認 め る に足 りな い特 段 の事 情 の な い 限. り,Cは,Aに. よ る賃 借 権 の無 断 譲 渡 を理 由 にAC間. あ るい は,解 除 す る こ と な く(最 判 昭26・5・31),Dに. の賃 貸 借 契 約 を 解 除 し, 対 して 建 物 収 去 ・土. 地 明渡 請 求 が で き る こ と に な る と解 され る。 ② の(2) AB間. で 土 地 が 仮 装 譲 渡 され,仮 装 譲 受 人Bが 土 地 に建 物 を 建 て,そ れ を 第. 三 者Cに 賃 貸 した場 合,Cは,94条2項. の 第 三 者 に当 た るか 。 この 場 合,Cは,. 虚 偽 表 示 の対 象 で あ る土 地 に対 して 虚 偽 の 法律 関 係 を基 礎 と して新 た な 利害 関 係 に入 っ た者 と は解 さ れ な い の で,第 三 者 に は 当 た らな い(最 判 昭57・6・ 2項 の 第三 者 で は な い とす る もの や,あ 賃 借権 もAか. る い は,Aが. 借 地 上 の建 物 をBへ 仮 装 譲 渡 す れ ば,土 地 の. らBへ 仮 装 譲 渡 さ れ る こ とに な る と正 し く述 べ なが ら,結 論 と して,建 物 につ い てC. は 利害 関 係者 で は な い か らCは94条2項. の第 三 者 で は な い とす る もの な ど が あ る。 建 物 はAの 所 有. 物 で あ り,Cは. こ れ に対 して 利害 関係 を もた な い の は 当然 で あ り,本 間 の場 合,こ. 要 は な い。Aが. 建 物 を仮 装 売買 す れ ば,そ. 譲 渡 に つ い て,Cは. の点 は論 じる必. れ に伴 っ て賃 借 権 も仮 装 譲 渡 さ れ る。 こ の賃 借 権 の仮 装. 一 応 利 害 関係 が あ る と い え る が,賃 借 権 の仮 装 譲 渡 を基 礎 と して 新 た に利 害 関. 係 を もっ た とい え る か が ま さ に 問題 と な る の で あ る。 こ の点 は答 案 構 成 上 注 意 して 欲 しい。 9)最. 判 昭39・12・11は,AがDに. 対 して,自 分 が土 地 の賃 借 人 で あ る と主 張 して,建. 明渡 請 求 を した事 案 で あ る。 こ のAのDに. 対 す る請 求 は棄 却 され た 。 しか し,DがCか. 去 ・土 地 明渡 請 求 を拒 め る か は別 の 問題 で あ る。 最 判 昭39・12・11の. 物 収 去 ・土 地 らの 建 物 収. 調 査 官 解 説 で も,DはAの. 請. 求 を退 け る こ と が で きて も,借 地 権 の譲 渡 につ い てCの 承 諾 を 得 な い限 り,終 局 的 な 居 住 の 安 定 を 得 る こ と は で き な い,と. さ れて い る。 一43一.

(20) 民 法 演 習(4). 7)。 した が っ て,AはBに. 対 して建 物 収 去 ・土 地 明 渡請 求 を,Cに. 対 して 建. 物 退 去 ・土 地 明 渡 請 求 をす る こ とが で き る。 た だ,こ の判 例 に対 して は,Bの. 土 地 利 用 権 が 否 定 され る と,Cは. 用 で き な くな る の で,Cは94条2項. 建 物 を利. の 第 三 者 と考 え るべ き だ との 批 判 もあ る。. つ ま り,形 式 的 に は と もか く,実 質 的 に はCはBか. ら建 物 を借 りる こ とで,土. 地 に対 して 新 た な利 害 関 係 を持 つ に至 っ た と評 価 す る こ と も可 能 だ と い う。 こ の見 解 に よ れ ば,CがAB間. の土 地 の仮 装 譲 渡 につ き善 意 で あ れ ば,Aは,C. に対 して 乙建 物 か ら退 去 し甲土 地 を 明 け渡 す よ う請 求 して も認 め られ な い だ け で な く,Bに. 対 す る 乙建 物 を収 去 し甲土 地 を 明 け渡 せ と の請 求 も認 め られ な い. と思 わ れ る。Bに 対 して 乙建 物 の収 去 を認 めつ つ,Cに. 対 す る 乙建 物 か らの退. 去 を否 定 す る こ と は無 理 だ か らで あ る10)。 ② の(3) 甲土 地 がAB間. で仮 装 譲 渡 さ れ,甲 土 地 をBか. らCが 賃 貸 借 した場 合 は,C. は,仮 装 行 為 に よ って形 成 さ れ た法 律 関係 に対 して新 た に法 律 上 の利 害 関係 を 有 す る に至 った わ け だ か ら,94条2項 る こ とを知 らな け れ ば,AはCに め,Aは,Cが. 対 してAB間. 甲土 地 の所 有 者Bか. くな る。 した が って,AがCに. の第 三 者 に該 当す る。Cが 仮 装 譲 渡 で あ. ら甲土 地 を賃 貸 して い る と認 め ざ る を得 な. 対 して 乙建 物 を収 去 し甲土 地 を 明 け渡 す よ う請. 求 して も,認 め られ な い11)。これ に対 して,Cが 10)こ. の場 合,ABCの. き る ので,CはBに. の売 買 の無 効 を主 張 で き な い た. 仮 装 譲 渡 で あ る こ とを知 って. 関 係 は ど う な る と考 え るべ きで あ ろ う か。CはBか 対 して 建 物 の 賃 料 を支 払 うべ きで あ り,BはAの. 使 用 して い る こ と にな る ので,BはAに. ら 引 き続 き建 物 を賃 貸 で. 土 地 を 建 物 の た め に無 権 限 で. 対 して 不 当 利 得 な い し不 法 行 為 を 理 由 と して地 代 相 当 額 を. 支 払 うべ き こ と に な ろ う。 11)こ. の場 合,ABCの. る が,BC間. 関 係 は ど う な る と考 え るべ きで あ ろ う か。AB間. で は 甲土 地 はAの 所 有 で あ. 所 有 者Bか. で は 甲土 地 はBの 所 有 で あ る こ と をAは 認 め ざ る を得 な い。 そ の結 果,Cは. 甲土 地 の. ら甲 土 地 を 賃 貸 借 して い る こ と にな り(つ ま り,他 人物 賃 貸 で はな くな り),CはAと. の 関係 で も甲 土 地 を 使 用 で き る こ とに な る。 しか し,AB間 BはCか. ら受 け取 った 賃 料 をAに. で,Cが. 甲土 地 の仮 装 売 買 につ いて 善 意 で あれ ば,BC間. で は,甲 土 地 はAの. 所 有 で あ る か ら,. 不 当 利 得 と して 返 還 しな け れ ばな らな い 。 この 関 係 は 複 雑 な の. 一44一. の賃 貸 借 関 係 がAC間. の賃 貸 借 関 係 に移.

(21) 法科大学院論集. 第10号. い れ ば,AがCに. 対 して 乙建 物 を収 去 し甲土 地 を明 け渡 す よ う請 求 で き る。 と. い うの は,BC間. の賃 貸 借 契 約 は有 効 で あ る(他 人 物 賃 貸 借 も有 効!)が,C. はBに 対 して 甲土 地 を使 用 させ る よ う請 求 で き るだ けで,Aに. 対 して は 甲土 地. を使 用 させ る よ う請 求 で き な いか らで あ る。. 第4問. 錯. 誤. ① (1)AとBが. 近 く に 駅 が で き る と い う こ と で,時. の 売 買 契 約 を 締 結 し た 。 し か し,駅. 価 の倍 く らい の価 格 で土 地. は で き な か っ た 。AはBに. 対 して どの よ う. な主張が可能か。 (2)Aは. 近 くに鉄 道 の駅 が で き る と聞 い てBに. ね」 と言 って,Bと. 「近 くに駅 が で き る そ うです. 時価 相 当額 で土 地 の売 買 契 約 を締 結 した。 しか し,駅 は で. き な か っ た 。AはBに. 対 して どの よ うな主 張 が可 能 か。. ②. 行 す る,と 理 論 構 成 で きな いだ ろ うか 。Cが る ので あ るか ら,CはBに. 善 意 の 場 合 は,CはAと. 対 す る賃 借 権 をAに. の 賃 貸 借 関 係 に移 行 す る,と 考 え る こ とが 可 能 か も知 れ な い(つ が され,Bが. 建 物 の 引 渡 しを 受 けた 後 に,AがCへ. 借 権 を 対 抗 で き る(借 地 借 家 法31条)の る と解 され て い る(最 お,こ. の 点,本. 判 昭39・8・28)が,こ. の 賃 貸 借 関係 は,BC間 で 仮 装譲 渡 され,甲. 対 して 建 物 の賃. の賃 貸 借 関 係 に移 行 す. 土地 に 対 してBか. らCが 地 上 権. 関 係 は そ れ ほ ど複 雑 に は な らな い と思 わ れ る。 こ の. 甲 土地 に対 して地 上 権 を有 効 に取 得 で き る。 つ ま り,Bが. をCに. 譲 渡 した場 合 と異 な り,BがCの. はCと. の 関 係 で もAで あ る と考 え られ る が,Aは. 甲土 地. た め に地 上 権 や抵 当権 を設 定 した場 合 は,甲 土 地 の所 有 者. を認 め な け れ ば な らな い。 この場 合,BC間 上 権 が設 定 さ れ て い る 甲土 地 の所 有 者Aが 悪 意 で あ れ ば,Cは. で建 物 の 賃 貸 借契 約. の場 合 と本 件 は類 似 して い る と解 す るの で あ る)。 な. 間 とは 異 な り,甲 土 地 がAB間. 善意 で あ れ ば,Cは. の 賃 貸 借 関 係 がAC間. ま り,AB間. 建 物 を 譲 渡 した とき,AはCに. で,AB間. の 設 定 を 受 け た とい う事 例 で あ れ ば,ABCの 場 合 は,Cが. の 関 係 で も甲土 地 を 使 用 で き. 対 抗 で き る と構 成 し,BC間. 甲土 地 にCの 地 上 権 が有 効 に設 定 さ れ て い る こ と. の地 上 権 設 定 契 約 で地 代 が決 め ら れて いれ ば,Cの 地 上 権 者Cに. 地. 対 し地 代 を請 求 で き る と考 え られ る。Cが. 甲土 地 に地 上 権 を取 得 す る こ と は で き な い。 地 上 権 は物 権 で あ り,物 に対 す る. 権 利 と構 成 さ れ て い る の で,人. に対 す る権 利 と して構 成 さ れて い る賃 借 権 に比 べ て,本. 問題 で は簡 明 な法 律 関 係 に な る,と. い え よ う。. 一45一. 間 の よ うな.

(22) 民法 演 習(4). (1)Aか. らBが200万. 円 を借 り る に際 して,BはCに. に頼 ん だ。 そ の 際,BはDも. 連 帯 保 証 人 にな る よ う. 連 帯 保 証 人 に な って い る と告 げ た の で,Cは. 保 証 人 に な る こ とを 引 き受 け た。Aと. の保 証 契 約 締 結 の 際 に も,CはDも. 連帯 連帯. 保 証 人 に な って い る とい う こ とだ か ら保 証 を 引 き受 け た 旨をAに 告 げ て い る。 と ころ が,後 に,DとAと. の連 帯 保 証 契 約 書 はBが 偽 造 した もの で あ り,無 効. で あ る こ とが判 明 した。CはAに (2)Dは. 対 して どの よ うな主 張 が可 能 か。. 連 帯 保 証 人 に な って い な い の に,BがDも. と告 げ た の で,Cは. 連 帯 保 証 人 に な る こ とを 引 き受 け た。Aと. 締 結 の際 に も,CはDも. の連 帯 保 証 契 約. 連 帯 保 証 人 に な って い る とい う こ とだか ら保 証 を 引 き. 受 け た 旨 をAに 告 げ て い る。CはAに ③Aか. 連 帯 保 証 人 に な って い る. 対 して どの よ うな主 張 が 可 能 か 。. らBは 絵 の購 入 の世 話 を頼 まれ,Cか. ら真 作 に 間違 い な い と い われ. 時 価 相 当額〔 の500万 円 で絵 を 購 入 し,こ の 絵 をAに600万. 円で 転 売 した。 と こ ろ. が,そ. の売 買 は錯 誤 で 無 効 で. の絵 が 贋 作 で あ る こ とが 判 明 した ので,AはBと. あ る と して,代 金600万 円 の返 済 を求 め た。 しか し,Bが か ら代 金 の 回 収 を 考 え て い る。 こ の場 合,CがBを. 無 資 力 な の で,AはC. 真 作 で あ る と騙 した 場 合 と. Cも 真 作 と信 じて いた 場 合 とで,そ れ ぞ れ,AはCに. 対 して,ど の よ うな 主 張. が 可 能 か を 検 討 しな さ い。 ④AはBか か らCが200万. ら騙 さ れ て200万 円 を借 り,CがAの 円 の返 済 を 求 め られ た 場 合,Cは. 連 帯 保 証 人 に な った 。B ど の よ うな 主 張 が可 能 か 。A. B間 の消 費 貸 借 がAの 錯 誤 に よ り無 効 で あ る場 合,Bか を 求 め られ た と き,Cは. らCが200万. 円 の返 済. どの よ うな 主 張 が 可 能 か 。. ⑤ (1)AのBに. 対 す る100万 円 の債 権 をCが 譲 り受 け,CB間. で100万 の 債権 の. 弁 済 方 法 と して,月 々10万 円 ず つ 返 済 す る との 和 解 が 成 立 した。 そ の 後,AC 間 の 債権 譲 渡 が無 効 で あ る こ とが 判 明 した場 合,BはCに 張 が 可能 か。 一46一. 対 して どの よ うな主.

(23) 法科大学院論集. (2)AB間. で債 権 の額 に つ い て争 い が あ った が,BはAに. 第10号. 対 して62万 の債 務. が あ る こ とを認 あ,そ の 内 の40万 円 につ いて は,高 級 苺 ジ ャ ムで 代 物 弁 済 を し, 残 金22万 円 は支 払 を免 除 す る との和 解 が成 立 した。 とこ ろ が,高 級 苺 ジ ャム と さ れ た もの は粗 悪 品 で あ る こ とが判 明 した。AはBに. 対 して ど の よ うな主 張 が. 可 能 か。. 「解 答 例 」 ① (1)近. くに駅 が で き る と い うの で,土 地 を 買 った が,駅 が で き な か った場 合,. た とえ ば,駅 が で き る と い う こ とを 前 提 に,代 金 を 時 価 の2倍 事 情 が あれ ば,近. に決 めた と い う. くに駅 が で き る と い う こ とが 契 約 内 容 にな って い る と解 釈 さ. れ る可 能 性 が 強 い。 した が って,駅 が で きな い こ とが 判 明 す れ ば,買 主 は錯 誤 主 張 が 可 能 で あ る12)。つ ま り,近 くに駅 が で き る土 地 と して 売 買 され た の に, 実 際 に は近 くに駅 が で きな い土 地 が売 買 され た こ とに な るか ら,近. くに駅 が で. き るか ら土 地 を買 う とい う動 機 は,単 な る動 機 の錯 誤 で は な く,土 地 の性 状 に つ い て の錯 誤 とな り,錯 誤 と して考 慮 さ れ うる(=性. 状 錯 誤)。 受 胎 可 能 な 良馬. で あ る こ とを意 思 表 示 の 内容 と して売 買 さ れ た が,実 際 に は そ うで は な か った. 12)た. と え ば,山 林 の売 買 で,北. 昭37・11・27)。. 側 に道 路 が 存 在 す る と い う買 主 の 錯 誤 が 考 慮 され た 例 が あ る(最 判. 「上 告 人 と被 上 告 人 との 間 で 昭 和 二 九 年 八 月 ニ ー 日原 判 示 山林 九 筆 につ き代 金 を二. 三 〇 万 円 と しそ の他 判 示 約 定 の売 買 契 約 が な され た こ と,右 売 買 は被 上 告 人 に お いて 売 買 の 目的 物 た る 山林 を 造 材 事 業 に供 す る た め に締 結 した もの で あ る こ と,右 契 約 締 結 に際 して,上. 告 人 は被 上. 告 人 に 対 し,… … 現 在 で は本 件 山林 の 北 側 山麓 に開 馨 道 路 が 開 通 した の で 造 林 事 業 の 経 営 上 極 め て 有 利 で あ る との 説 明 を した の で,被. 上 告 人 は これ を 真 実 で あ る と信 じ当 初 の 買 受 希 望 価 額 を 大 巾 に. 上 廻 る代 金 で 買 受 け る契 約 を した こ と,… … 右 北 側 山麓 道 路 が 存 在 す る こ とは 本 件 売 買 契 約 の 要 素 を な す もの で あ つ て,右. 契 約 締 結 に際 し北 側 道 路 の 存 在 す る もの と誤 信 した 被 上 告 人 に 錯 誤 が あ る. との 原 審 の 判 断 は 相 当 で あ る とい わ ね ば な らな い 。」 こ の場 合,「 本 件 山 林 の 北 側 山 麓 に 開 墾 道 路 が 開 通 した の で 造 林 事 業 の 経 営 上 極 め て 有 利 で あ る との説 明 を した の で,被. 上 告 人 は これ を 真 実 で あ. る と信 じ当 初 の 買 受 希 望 価 額 を 大 巾 に 上 廻 る代 金 で買 受 け る契 約 を した こ と」 ふ ら,山 林 の 北側 に 道 路 が 存在 す る とい う こ とが 契 約 内 容 に な って い た と考 え られ,道 路 が 存 在 しな い こ とが 判 明 した の で,買 主 の錯 誤 主 張 が 認 め られ た の だ,と. 思 わ れ る。. 一47一.

(24) 民 法 演 習(4). 場 合(大 判 大6・2・24),油. 絵 の真 筆 が 意 思 表 示 の 要 素 と さ れ た が,実 際 は. そ うで は な か った場 合(最 判 昭45・3・26),出 が,実 際 は そ うで は な か っ た場 合(大. 力130馬 力 とさ れ た 中古 電 動 機. 判 大10・12・15,百. 選II(5版)【52】). 等 が 性 状 錯 誤(性 質 錯 誤)の 事 例 で あ る。 判 例 に は,性 状 が意 思 表 示 の 内 容, な い し意 思 表 示 の要 素 とな って い る か ら性 状 錯 誤 が 考 慮 され る とす る もの もあ る が,厳 密 に言 え ば,性 状 が法 律 行 為 の 内容(契 約 の 内容)に. な って い るか ら. 性 状 錯 誤 が考 慮 さ れ る の で あ る。 (2)こ. れ に対 して,時 価 相 当額 で の契 約 が な され て いれ ば,近. くに駅 が で き. る か ら買 う とい うよ うに,動 機 が 相 手 方 に表 示 され て いて も,近 くに駅 が で き る とい うこ とは契 約 内容 に な って い な い と解 釈 され る可 能 性 が 強 い。 この 場 合 は,動 機 が 表 示 され て い て も考 慮 さ れ な い と考 え られ る(=単. な る動 機 の 錯. 誤)。 つ ま り,い わ ゆ る動 機 の錯 誤 の 中で も,動 機 が意 思 表 示 の 内容,よ. り厳 密. に言 え ば,契 約 の 内容 とな って い る場 合 に は,錯 誤 と して 考 慮 され る(=性 錯 誤)が,動. 状. 機 が 表 示 され て も意 思 表 示 の 内容,契 約 の 内 容 にな って いな けれ. ば錯 誤 と して 考 慮 され な い(=単. な る動 機 の 錯 誤)。. ② (1)に. 関 し て は,最 判 昭32・12・19(百. 選1(5版)【17】. 事 件)は,次. の. よ う に い う。 「保 証 契 約 は,保 証 人 と債 権 者 と の間 に成 立 す る契 約 で あ って,他 に連 帯 保 証 人 が あ る か ど うか は,通 常 は保 証 契 約 を な す 単 な る縁 由(=動. 機). にす ぎず,当 然 には そ の 保 証 契 約 の 内 容 とな る もの で は な い 。 され ば,原 判 決 説 示 の ご と くY1に. お い てY2も. 連 帯 保 証 人 とな る こ とを特 に 本 件保 証 契 約 の. 内 容 と した 旨の 主 張,立 証 の な い 本 件 に お い て は,原 判 決 の 判 断 は正 当 で あ っ て,引 用 の判 例 は本 件 に適 切 で な い か ら,論 旨 は採 る こ とが で き な い。」 最 判 昭32事 件 で は,保 証 人Y1はY2が た 旨を 債権 者Xに. 連帯 保 証 を して い るか ら,保 証 を 引 き受 け. 明示 的 に述 べ た か 否 か は は っき り しな い が,主 債 務 者 がY2. の 連帯 保証 契 約 書 を偽 造 してXに 交 付 して い た。 この よ うに,Xも 一48一. 主債務者 か.

(25) 法科大学院論集. らだ ま され てY2の. 保 証 契 約 を有 効 と信 じて い る場 合,Y1のY2が. 保 証 契 約 を 引 き受 け る との動 機 は,XとY1と と思 わ れ る。 つ ま り,Y1のY2が を,XとY1と. いるか ら. の保 証 契 約 の 内容 に は な らな い. い る か ら保 証 契 約 を 引 き受 け る との 動 機. の保 証 契 約 の 内容 にす る方 策 と して は,た と え ば,Y2の. 契 約 の有 効 性 をY1の Y2の. 第10号. 保証. 保 証 契 約 の条 件 とす る こ と が考 え られ る が,XもY1も. 保 証 契 約 の有 効 性 を信 じて い る の で,そ の よ うな条 件 が合 意 さ れ る可 能. 性 は な い。 本 件 の場 合 も,BはDが. 連 帯 保 証 人 な った と い うこ と だ か ら保 証 を. 引 き受 け た とAに 対 して保 証 を 引 き受 け た動 機 を表 示 して も,AはDの. 保証契. 約 の無 効 を知 らず 有 効 と思 って い た わ け だ か ら,そ の動 機 は契 約 内容 に は な ら ず,錯 誤 は考 慮 さ れ な い(=単 (2)の 場 合 は,Bの CとAと. な る動 機 の錯 誤)。. 詐 欺 に よ ってCはAと. の保 証 契 約 に 関 して は,Bは. 保 証 契 約 を締 結 した こ と に な る。. 第 三 者 で あ り,Bの. 詐 欺 に よ っ てCが 保. 証 の 意 思 表 示 を した こ と に な り,相 手 方 で あ るAが 詐 欺 の 事 実 を 知 って い れ ば,CはAと. の保 証 契 約 を取 り消 す こ と が で き る。 本 件 で は,CがAに. 対 して. Dも 連 帯 保 証 人 に な っ て い る と い うこ と だか ら保 証 を引 き受 け た 旨 を告 げて い る の で,AはCがDも. 連 帯 保 証 人 に な って い る と錯 誤 して い る こ と は知 って い. る。 しか し,AがBに. よ るCへ の詐 欺 の事 実 を知 らな けれ ば,Aは. る詐 欺 に つ い て悪 意 と は い え ず,96条2項. 第三者 によ. は適 用 で き な い 。 た だ,そ の 場 合,. A自 身 の沈 黙 に よ る詐 欺 が 問題 と な りう る。Aは 信 義 則 上Cの 錯 誤 を解 消 す る 義 務 が あ る と考 え れ ば,Aの. 沈 黙 に よ る詐 欺 が 認 め られ る こ と にな り,96条1. 項 が 適 用 で き る。 した が っ て,AがBに か,Aの. よ るCへ の 詐 欺 の事 実 を 知 っ て い た. 沈 黙 に よ る詐 欺 が認 め られ る場 合 に は,Cは. 詐 欺 を理 由 にAと の 保 証. 契 約 を取 り消 す こ とが で き る。 ③Cも. 絵 が 真 作 と信 じて い た場 合 に は,錯 誤 が 問 題 とな る。 錯 誤 の 場 合 の. 設 例 は,最 判 昭45・3・26(百. 選H(5版)【18】)に. 基 づ く。 この 場 合,Bも. 真 作 だ と思 っ たか らこ そ絵 を購 入 したわ けで あ るが,こ のBの 動 機 が 考 慮 され 一49一.

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