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未来社会をプロデュースするICT : 12.近距離無線通信を直感的にする-実空間を融合する通信技術の実現に向けて-

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Academic year: 2021

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(1)特集. 未来社会をプロデュースする. 12. 【若手プロデューサ. ICT. 10 】. 近距離無線通信を直感的にする.  ∼実空間を融合する通信技術の実現に向けて∼ 田頭茂明 荒川 豊 近距離通信の現状. この資料をあなたに すぐに送信するよ.  20 世紀末から 21 世紀初頭にかけてのモバイル機. 九州大学. 3台のプリンタのうち このプリンタから 写真を印刷したい. 器の普及は,コンピュータのパーソナル化を推し進 め,さらには個人のデータを持ち運ぶモバイル分散 環境を広く社会に浸透させるきっかけとなった.こ のためモバイル機器は,移動先でのシームレスなネ ットワークアクセスに加えて,図 -1 のような移動. 会議におけるデータ交換. 写真の印刷. 図 -1 近距離通信の有効例. 先にある近くの機器とのデータ通信(近距離通信)を. ン技術,を挙げることができる.本章では,これら. 実現してこそ活躍の場があると考える.このような. の課題を解決する近距離無線通信に関する研究事例. 近距離通信では,実空間における人や機器との出会. を紹介する.. いにより通信が誘発される点に加えて,実空間から 通信相手が見出される点が特徴的であり,実空間か. ■. 通信相手の特定技術および認証技術. ら得られる直感性を活かすことが重要となる.しか.  従来の通信技術では,通信相手となる情報や機器. しながら,現状の実現方法では,従来の通信技術が. を特定するために,URL やホスト名などの実空間. 単に流用される場合が多く,それらの特徴が活かさ. と関係のない識別子が用いられてきた.このことが. れているとは言い難い.すなわち,従来の通信技術. 近距離無線通信において通信相手を直感的に特定す. では,ネットワーク上に構築される論理空間内で情. ることを困難にしている.これを解決するために. 報や機器が整理され,その空間に主体が置かれるこ. 実空間における機器の相対的な位置情報を識別子. とで,実空間を意識させない通信が実現されている.. として利用する研究が行われている.NearMe. したがって,従来の通信技術の流用では,近距離通. は,周辺に存在する機器のリストと,それらの相対. 信が論理的で複雑なものとなり,近距離であること. 的な位置情報をアプリケーションへ提供するための. の直感性を活かすことが困難である.. フレームワークが実現されている.さらに筆者らは,. 1). で. NearMe の機能に加えて,機器間だけで位置計算で. 近距離無線通信の研究事例. きる機能を実現し,その機能を DNS に組み込むこ とで直感的かつ利便性に優れた通信相手の特定技術 2).  Bluetooth や WiFi Direct のような無線通信デバイ. を確立している .. スを用いて,周辺に存在する機器と一時的にネット.  また,通信相手が実空間上の機器と一致している. ワークを形成し,直接的なデータ通信を行う環境を. かを認証する研究が行われている.文献 3)では加. 想定する.このような近距離無線通信を支援する技. 速度センサを有する 2 台の機器を(握手するように). 術課題として,直感的で利便性に優れた通信相手の. 一緒に手に持って振り,そのときの加速度センサ値. 特定技術および認証技術,セキュアな通信技術,誰. から共通の鍵を個別に生成する手法が提案されてい. でも扱えるネットワーク構築およびアプリケーショ. る.これらの鍵が一致するかどうかで通信相手の認. 54 情報処理 Vol.52 No.1 Jan. 2011.

(2) 近距離無線通信を直感的にする. ∼実空間を融合する通信技術の実現に向けて∼. ︻ 若手プロデューサ . 12. 証が実現される.筆者らは,加速度センサを利用せ ドライブとして マウントされる. ずに,送信機器を振ることにより生じる無線伝送路 の変動を抽出して,共通の鍵を生成する手法を開発. 会議室でデバイスを配布. 4). している .生成した鍵を利用して,近距離環境に おけるセキュアな無線通信と,実空間での機器の認. 10 ︼  . ローカルプライベートクラウド. ・DHTによる分散ファイルシステム ・無線アドホック接続. 証を実現する.このほかにも,観測できる無線電波 の受信信号強度の類似性による認証や,機器上に表 示される情報を音や視覚を用いて互いに確認し,そ れらの情報が一致することによる認証なども提案さ れている.. 近距離無線通信のためのミドルウェア技術.  Eye-Fi. Wifi/BT. 内蔵メモリと無線を 備えたUSBデバイス. 同一ファイル が見える. 図 -2 ローカルプライベートクラウドの概要. ■. ☆1. メモリ. し,情報通信技術を意識させない社会の構築を考え. など無線機能を有する記憶デバイスが. ている.そこでは情報通信技術が実空間にシームレ. 登場し,最近では WiFi Direct という WiFi を用い. スに溶け込み,センサによりさまざまな実空間の情. て Bluetooth のようなアドホック接続を実現する仕. 報が収集されると同時に,Tangible Bits のようなイ. 組みも登場している.筆者らは,こうした無線機能. ンタフェースを用いて情報と人間が接することにな. 付きメモリをアドホック接続して共有ストレージ化. る.筆者らは,そのような社会を支える基盤技術と. するローカルクラウドストレージを提案している. して,人の感覚の一部のような近距離無線通信技術. (図 -2) .これにより,会議や授業といったすべて. を構築し,老若男女が明るく楽しく利用できる情報. の機器が 1 ホップで接続可能な近距離環境におい て,ユーザが通信設定を意識することなく,直感的 5). かつ安全なファイル共有を実現する .. 近距離無線通信のこれから  これからの 10 年,筆者らは近距離無線通信をよ り良いものにするために以下のような研究に着手す ることを考えている.  今後のモバイル環境では,移動通信網がさらに 高速化し,モバイル機器上のすべてのデータが,. Dropbox ☆ 2 等のクラウドストレージ上に保存され ると考えられる.筆者らは,このような環境での近 距離無線通信として,データのポインタだけを実空 間上で交換し,データ本体をクラウド上で交換する. 6). 通信技術の未来を創る. 参考文献 1) Krumm, J. and Hinckley, K. : The NearMe Wireless Proximity. Server, Proc. UbiComp, pp.283-300 (2004). 2) 野田,北須賀,田頭,中西,福田 : 無線可視領域通信を支援す る相対位置情報を利用した名前解決ミドルウェア,信学論, Vol.J92-B, No.4, pp.643-655 (2009). 3) Bichler, D., Stromberg, G., Huemer, M. and Low, M. : Key Generation Based on Acceleration Data of Shaking Processes, Proc. UbiComp, pp.304-317 (2007). 4) 岩 本,田 頭,荒 川,津 村,福 田 : マ ル チ パ ス の 伝 送 路 可 逆 性を用いた伝送路特性に基づく共有情報生成方式の応用, DICOMO 予稿集,7G-2 (2010). 5) 田中,荒川,田頭,福田 : 近距離無線環境のためのローカルク ラウドストレージの提案,信学技報,Vol.110, No.269, CS201043, pp.35-40 (2010). 6) Ishii, H. and Ullmer, B. : Tangible Bits : Towards Seamless Interfaces between People, Bits and Atoms, Proc. the SIGCHI Conf. on Human Factors in Computing Systems, pp.234-241 (1997). (平成 22 年 10 月 31 日受付) 田頭茂明(正会員)[email protected]. 方式を実現する.特に,この実空間上でのポインタ. (工  平成 12 年奈良先端科学技術大学院大学博士後期課程修了.博士 学).広島大学助手(助教)を経て,平成 19 年より九州大学高等研 究院特別准教授および大学院システム情報科学研究院特任准教授.. の交換を直感的かつ安全に実現する手法を研究する.. 荒川 豊(正会員)[email protected].  さらには,直感性を極めた近距離無線通信を実現 ☆1 ☆2. http://www.eyefi.co.jp/ http://www.dropbox.com/.  平成 15 年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了.平成 16 年同大 COE 研究員.平成 18 年同大博士課程修了.博士(工学). 同大助手(助教)を経て,平成 21 年より九州大学大学院システム情 報科学研究院助教.. 情報処理 Vol.52 No.1 Jan. 2011. 55.

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