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非対称縦積み線路を用いた準ミリ波帯バランスミキサ

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(1)

非対称縦積み線路を用いた準ミリ波帯バランスミキサ

山口

a)

加保

貴奈

豊田

一彦

†∗

上原

一浩

中川

匡夫

荒木

純道

††

A Balanced Mixer using Asymmetric Stacked Lines for a Quasi-millimeter Wave

Band

Yo YAMAGUCHI

†a)

, Takana KAHO

, Ichihiko TOYODA

†∗

, Kazuhiro UEHARA

,

Tadao NAKAGAWA

, and Kiyomichi ARAKI

††

あらまし 準ミリ波帯バランスミキサの小型化のため,非対称な結合線路でも一定の条件を満たせば 3 dB 結合 を実現できることを示し,多層配線構造を用いてレイアウトの自由度が高く,良好な特性をもつ縦積みマーチャ ントバランを試作した.この縦積みマーチャントバランを用い,チップ面積 1.56 mm2と非常に小型で,かつ局 部発振信号抑圧比 47 dB,変換利得 −9 dB と良好な高周波特性をもつ準ミリ波帯バランスミキサを実現した. キーワード バランスミキサ,非対称結合線路,縦積みバラン,マーチャントバラン

1.

ま え が き

近年,ブロードバンドサービスの急激な普及と周波

数の逼迫により,

SHF

帯,

EHF

帯の利用が注目を集

めており,準ミリ波帯を用いたワイヤレスアクセスシ

ステム

[1]

[3]

等の研究開発も行われている.準ミリ

波帯のような高周波帯では,無線機をヘテロダイン方

式とし,アップコンバータに局部発振信号のリークを

抑圧することができるバランスミキサ

[4]

[7]

を採用

することが多い.しかし,バランスミキサには大きな

面積を占めるバランが必要なため,サイズが大きく

なってしまうという課題がある.このため,バランを

スパイラル状として小型化を図る工夫をしたものも提

案されている

[8]

.このバランは,小型化と広帯域化を

両立させ優れた特性を示しているが,スパイラル状の

ため形状の自由度の点で課題が残っている.

これに対し,筆者等は通常の半導体プロセスによっ

HEMT (High Electron Mobility Transistor)

等の

日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所,横須賀市 NTT Network Innovation Laboratories, NTT Corporation, 1–1 Hikarinooka, Yokosuka-shi, 239–0847 Japan

††東京工業大学理工学研究科,東京都

Department of Electrical & Electronic Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2–12–1–S3–5 Ookayama, Meguro-ku, Tokyo, 152–8552 Japan

現在,佐賀大学大学院工学系研究科 a) E-mail: [email protected]

能動素子と抵抗,

MIM

キャパシタといった受動素子

を形成したのち,その上にポリイミド膜と金属配線を

多層に積層し,この積層構造を用いて電磁界的な振る

舞いを考慮してマイクロ波回路を設計することにより,

GaAs-MMIC

において高い集積度の実現を可能とす

る技術の研究開発を行ってきた

[9]

[13]

.また,本技

術を

Si MMIC

にも適用可能なことを示してきた

[14]

本技術を用いることにより,中間層に接地導体を設け,

その上下に

TFMS (Thin Film MicroStrip)

線路や逆

TFMS

線路などからなる受動回路を作成することが

可能であり,また,層間の結合を利用し従来の

2

次元

構成では実現困難な密結合の結合線路

[9]

や多層構造

のインダクタ

[12]

等を容易に実現することが可能であ

る.高周波アナログ回路ではデジタル回路などと比較

し伝送線路や集中定数素子等の受動回路が占める面積

比率が大きいため,その小型化により大きな効果をも

たらすことが可能である.

しかし,

IC

上に上下方向に結合させた線路を作成

する場合,グランドとの距離が異なること,

IC

の配線

は通常は最上層の配線が他の配線よりも厚くなってい

ること等により,結合させる二つの線路のインピーダ

ンスを同じにしようとすると線路の形状が異なってし

まう.この対応策として,非対称な構造を組み合わせ

ることにより全体として対称性をもたせる構造も提案

されている

[15]

が,二組の縦積み線路が必要という課

(2)

題が残る.一方,非対称な線路のまま結合させる試み

もなされている

[16]

.この場合,入出力端子全てのイ

ンピーダンスを一致させることは困難なため,いった

ん異なるインピーダンスのまま結合させ,そのうえで

インピーダンス整合をとることにより,基板上に方向

性結合器を作成した例などが報告されている

[17]

今回我々は,一定の条件を満たせば非対称な結合線

路においても

3 dB

結合を実現できることを,非対称

結合特性を示すパラメータを導入することにより示し

たうえで,縦積みの非対称結合線路を直列に

2

段接続

することによりマーチャントバランを

MMIC

上に構

成し,準ミリ波帯バランスミキサ

MMIC

の小型化を

図り,試作により良好な特性を確認した.

2.

回 路 構 成

2. 1

バランスミキサの構成

1

にバランスミキサのブロック図を示す.入力さ

れた

IF

(中間周波数)信号と

LO

(局部発振)信号を

それぞれ

180

度位相差で分配してシングルエンドミキ

サに入力し,出力される

RF

(高周波)信号を同相合

成する構成とした.これにより,シングルエンドミキ

サから出力される

IF

リーク成分と

LO

リーク成分は

それぞれ

180

度位相差で合成されて抑圧される.一方,

ミキシングによって生じる

RF

信号は同相となり,二

つのシングルエンドミキサの出力が加算されて出力さ

れる.

なお,

IF

帯は安価な部品が入手しやすい

2.4 GHz

帯とし,

IF

バランは市販品を利用して外付けとした.

180

度分配された

IF

信号を増幅する二つの

IF

アンプ,

LO

信号を

180

度位相差で分配する

LO

バラン,分配

された信号をミキシングする二つのシングルエンドミ

キサ,シングルエンドミキサの出力を合成するウィル

キンソンデバイダを

1

チップに集積化した.これによ

り,小型化とともに,準ミリ波帯の信号である

LO

図 1 開発したバランスミキサのブロック図 Fig. 1 Block diagram of the developed balanced

mixer.

号や

RF

信号の部品間の接合箇所を削減した.

2. 2 LO

バラン

LO

バランは,二つの

λ/4

結合線路により構成され

るマーチャントバランとした.この

λ/4

結合線路を

IC

上で形成する場合,通常は図

2 (a)

のような構造と

なる.

この場合,二つの線路は完全に対称となるので,そ

の散乱行列が式

(1)

で表されることが知られている.

S =

0

α

0

α

0

0

0

0

α

0

α

0

(1)

ただし,

α

2

+

β

2

= 1

(2)

これに対し,図

2 (b)

に示すように縦方向に結合さ

せた線路の場合,グランドとそれぞれの線路の距離が

異なるため,二つの線路は全く同じ形状とはならない.

そこで,非対称な二つの結合線路として,図

3 (a)

示す構造の結合線路について考察する.この非対称結

合線路は,線路の中央部分に対称軸をもつ

1

軸対称で

あるので,中央部分で切断し短絡並びに開放とした場

合,すなわち偶励振と奇励振を行った場合について考

えることができ,偶励振時の

S

行列

S

e

,奇励振時の

S

行列

S

o

は下式で表せる.

図 2 結合線路の構造 Fig. 2 Coupled lines.

(3)

電子情報通信学会論文誌 2016/5 Vol. J99–C No. 5

図 3 非対称結合線路 Fig. 3 Asymmetric coupled lines.

S

e

=



α

α

(3)

S

o

=



−α jβ

−α

(4)

一方,非対称結合線路が無損失で

TEM

近似が成立す

る場合,図

3 (b)

に示すように単位長さあたりの線路

L

C

で表現することができる

[16]

L =



L

11

L

12

L

12

L

22

(5)

ただし,

L

11

= l

1

L

22

= l

2

L

12

= l

12

C =



C

11

−C

12

−C

12

C

22

(6)

ただし,

C

11

= c

1

+c

12

C

12

= c

12

C

22

= c

2

+c

12

(5)

(6)

は,次のように変形できる.

L =



L

11

L

12

L

12

L

22

=

L

11

+

L

22

2

E + L

12

K

L

(7)

C =



C

11

−C

12

−C

12

C

22

=

C

11

+

C

22

2

E−C

12

K

C

(8)

ここで,

E

は単位行列,

K

L

K

C

は下記とする.

K

L

=



k

L

1

1

−k

L

, K

C

=



k

C

1

1

−k

C

ただし,

k

L

= (L

11

− L

22

)

/(2L

12

)

k

C

=

−(C

11

C

22

)

/(2C

12

)

とする.この

k

L

k

C

は,非対称結合

特性を示すパラメータとなり,これが等しくなるよう

にすると,以下に示すとおり

3 dB

結合を実現するこ

とが可能となる.今,あらためて下記のようにおく.

k = k

L

= k

C

K = K

L

=

K

C

この場合,

C

L

は交換可能となり,固有ベクトルを

共有し,また,同じ直交行列

U

で対角化が可能とな

る.このとき,

U

は下式で表せる.

U =



u

1

u

2

u

2

−u

1

(9)

ただし,

u

1

=

1 +

m

2

u

2

=

1

− m

2

m =

k

1 +

k

2

(

|m| < 1)

行列

(9)

の変成比行列をもつ理想変成器で行列

(5)

及び行列

(6)

を対角化した場合,図

3 (c)

に示すように

特性インピーダンス

Z

1

Z

2

の結合のない二つの線路

が理想的な変成器に繋がり,それぞれの基準インピー

ダンスが

Z

01

Z

02

となっているのと等価となる.こ

のときの線路の電気長を

θ

とすると,中心周波数で電

気長

θ = π/2

となるように線路を設計した場合,対

称軸で短絡及び開放としたときのインピーダンス行列

Z

e

Z

o

は下式となる.

Z

e

=

UD

e

U

(10)

Z

o

=

UD

o

U

(11)

(4)

ただし,

D

e

=



−jZ

1

0

0

−jZ

2

D

o

=



jZ

1

0

0

jZ

2

ところで,

S

行列と

Z

行列の変換は,下式で与えら

れる.

S =

Z

0−1

(

Z + Z

0

)

−1

(

Z − Z

0

)

Z

0

(12)

ここで,非対称結合線路に接続される外部基準イン

ピーダンスを

Z

01

Z

02

としているので,基準インピー

ダンス対角行列

Z

0

は,下記となる.

Z

0

=



Z

01

0

0

Z

02

したがって,

S

行列の各要素

S

11

S

12

S

21

S

22

は,

Z

行列の各要素

Z

11

Z

12

Z

21

Z

22

を用いて次のよ

うに表すことができる.

S

11

= (Δ + Z

02

Z

11

− Z

01

Z

22

− Z

01

Z

02

)

/D

S

12

= (2Z

12

Z

01

Z

02

)

/D

S

21

= (2Z

21

Z

01

Z

02

)

/D

S

22

= (Δ

− Z

02

Z

11

+ Z

01

Z

22

− Z

01

Z

02

)

/D (13)

ただし,

Δ = Det(Z) = Z

11

Z

22

− Z

12

Z

21

(14)

D = Δ + Z

02

Z

11

+ Z

01

Z

22

+ Z

01

Z

02

(15)

ここで,式

(3)

(4)

を満たすように非対称結合線路を

設計するため,

S

e

の各要素

S

11e

S

12e

S

21e

S

22e

S

o

の各要素

S

11o

S

12o

S

21o

S

22o

の間に,

S

11e

=

−S

11o

S

22e

=

−S

22o

S

12e

= S

12o

S

21e

= S

21o

関係が成立するように定めたいので,式

(10)

(11)

(12)

(13)

より,下記の関係が求められる.

Δ + Z

01

Z

02

= 0

(16)

Z

02

Z

11

− Z

01

Z

22

= 0

(17)

(10)

(14)

より,

Z

1

Z

2

=

Z

01

Z

02

(18)

Z

01

Z

02

=

1 +

mA

1

− mA

(19)

ただし,

A = Z

1

− Z

2

Z

1

+

Z

2

(20)

図 4 縦積みバラン Fig. 4 Stacked balun.

一方,結合度

CP

は,

Port1

から入力された電力のう

Port2

へ出力される電力の割合で規定されるので,

下式で表すことができる.

|CP | = |S

12

| =

Z

12

Z

01

Z

02

Z

01

Z

22

=

2

1

− m

2

A

1

− m

2

A

2

(21)

したがって,非対称線路の非対称度

m

及び結合度

CP

を定めると,式

(19)

(20)

(21)

より

Z

1

/Z

2

並びに

Z

01

/Z

02

が定まり,また,式

(18)

と合わせ,

Z

01

Z

02

を定めることができる.

以上,述べたように,縦積み結合線路は

port1

port2

の基準インピーダンス

Z

01

Z

02

が異なること

を許容することにより方向性結合器として構成する

ことが可能であり,前述したように結合度

CP

を定め

て各パラメータを決定することにより

3 dB

カプラな

どを構成することができる.通常,物理長が長い

λ/4

線路を

MMIC

上に形成する場合,途中で回折させる

など,その配置には工夫が必要となるが,縦積みカプ

ラの場合,

1

本の線路を配置するエリアを確保すれば

よいため,従来の同一平面内の並列線路によるカプラ

に対し,面積が小さくなるだけでなく,レイアウトそ

のものがより簡易になり設計の自由度を高めることが

できるという利点がある.このカプラを直列に

2

接続し,マーチャントバランを構成した.図

4

LO

バランの回路図を示す.二組の非対称結合線路の一

方同士を接続した

λ/2

線路(

Line1

)の片側を入力端

子(

Port1

)とし,逆側はオープンとする.また,そ

の上層に

λ/4

線路(

Line2, Line3

)を作成し,それぞ

れの片側をグランドに接続し,逆側をそれぞれ出力端

子(

Port2, Port3

)としている.なお,実際の設計に

あたっては線路の損失等を考慮する必要があるため,

市販の電磁界シミュレータのフィッティング機能を用

いて線路形状を決定した.

Line1

は線路幅

6

μm

,線

路長

2600

μm

,厚み

1

μm

Line2

及び

Line3

は線路

20

μm

,線路長

1260

μm

,厚み

2

μm

であり,

Port1

(5)

電子情報通信学会論文誌 2016/5 Vol. J99–C No. 5

図 5 縦積みバランの特性 Fig. 5 Performance of staked baluns.

50 Ω

Port2

及び

Port3

60 Ω

とした.そのうえ

で,

Port2

及び

Port3

に抵抗を接続しミキサの

LO

力ポートとの整合をとった.抵抗を用いた場合は損失

が生じるが,抵抗器は非常に小型で他の素子の隙間に

配置することが可能という利点があるため,今回は小

型化を優先し,用いることとした.図

5

に本バランの

電磁界シミュレーション結果を示す.なお,バランの

レイアウト作成にあたり,バランスミキサを少しでも

小型化するため,本バランを二つのシングルエンドミ

キサの間に配置し,中央部分で折り返してシングルエ

ンドミキサの外周に沿って直角に折り曲げる構造とし

た.このように折り曲げて配置した場合,バランの特

性を劣化させる可能性があるため,電磁界シミュレー

ションによってその影響を確認した.図

5 (a)

が今回

図 6 シングルエンドミキサの回路図 Fig. 6 Schematic diagram of the single-end mixer.

試作した

LO

バラン形状の場合,図

5 (b)

が直線の線

路のみで構成した場合のシミュレーション結果である.

この結果から分かるとおり,数回程度の折り曲げでは

大きな特性のずれは生じないことが確認できる.

2. 3

シングルエンドミキサ

バランスミキサの構成要素であるシングルエンドミ

キサとしては,レジスティブ

FET

ミキサ

[19]

を用い

た.レジスティブミキサは,ドレインにバイアスをか

けず,ゲートバイアスはピンチオフ電圧付近に設定し,

LO

信号をゲートから,

IF

信号をドレインから入力し

て動作させる.このミキサは,ドレインバイアスを用

いるミキサと比較し,変換利得が大きいが,ドレイン

バイアス配線が不要なためレイアウトが容易であると

いう利点がある.

6

に設計したシングルエンドミキサの回路図を

示す.

RF

出力端子の手前においたキャパシタ

C

m4

よって

IF

信号の

RF

端子へのリークを抑えた.

RF

子のインピーダンス整合は,スタブ

L

m4

によって行っ

ているが,小型化のため,キャパシタ

C

m5

によって

半集中定数化した.一方,

IF

入力端子側では,キャパ

シタ

C

m6

によって半集中定数化し短縮化したスタブ

L

m5

を用いて

RF

信号の入力側へのリークを抑えた.

ゲートバイアスは

R

m2

R

m3

により抵抗分割し,電

圧を抵抗比で決定するようにし製造ばらつきへの耐性

を高めた.パッシブ動作のミキサでありドレイン側に

バイアスの供給がないため,

DC

電位を確定させるた

めに抵抗

R

m4

を介して接地させた.なお,

RF

特性へ

の影響を抑えるため,

R

m4

2 kΩ

という

RF

回路の

特性インピーダンス(

50 Ω

)に対し十分に大きな値と

した.

2. 4 IF

アンプ

7

IF

アンプの回路図を示す.

IF

帯では波長が

長いため,リアクティブマッチングでは整合回路が大

きくなってしまう.例えば,

L

帯ローノイズアンプ

[20]

(6)

図 7 IFアンプの回路図

Fig. 7 Schematic diagram of the IF amplifier.

では,入力整合に用いられたリアクティブ素子が全

チップ面積の約

1/3

を占めている.一方,相互コンダ

クタンス(

gm

)を調整することにより入力インピーダ

ンスを変化させることが可能なゲート接地

FET

を用

い,入力整合を取る手法も知られている

[21]

.そこで,

リアクティブ素子削減のため,入力整合はゲート接地

FET

を用いて小型化を図った.ゲート接地

FET

を整

合回路として使うことは,消費電力の観点からは不利

になるが,本ミキサは固定無線アクセス用途を想定し

ているため,小型化を優先した.

なお,ゲート接地

FET

を用いた場合,ソース端子

RF

信号と

DC

バイアスを分離するチョークインダ

クタ(

IND

i1

)がサイズ増大の要因となるが,多層配

線構造を活用した多層インダクタ

[12]

を用いサイズの

抑制を図った.使用した多層インダクタのインダクタ

ンスは

5.5 nH

,面積は

23000

μm

2

である.同等のイ

ンダクタンスを従来型の単層インダクタで実現した場

合,その面積は

54000

μm

2

であり,半分以下の面積と

なっている.また,出力負荷は高周波回路で用いられ

ることの多いインダクタ負荷ではなく,小型化・広帯

域化のため抵抗負荷とした.

3.

特 性 解 析

0.15

μm GaAs HEMT

プロセスをベースとした

3

次元

MMIC

プロセスにより作成したシングルエンド

ミキサの入出力特性を図

8

に示す.なお,測定は,

LO

信号として

23.6 GHz

0 dBm

の信号を入力し,

IF

号として

2.4 GHz

の信号を入力し,オンウエハプロー

ビングにて行った.その結果,変換利得は

−13 dB

あった.また,線形性の目安となる

1 dB

利得圧縮点

における

RF

出力電力は

−12 dBm

であり,この点に

おける

RF

端子側への

LO

信号リークは

−13 dBm

後であった.したがって,

LO

信号リークに対し特段

の対策を取っていないシングルエンドミキサにおいて

図 8 シングルエンドミキサの入出力特性 Fig. 8 Power performance of the single-end mixers.

図 9 シングルエンドミキサの LO 電力特性 Fig. 9 Power performance of the single-end mixer

versus LO power.

は,希望波信号である

RF

信号と不要波信号である

LO

リークがほぼ同レベルで出力されてしまうことに

なる.

9

にシングルエンドミキサの

LO

電力依存性を

示す.本ミキサの動作として想定している

LO

入力電

0 dBm

では,まだ

LO

入力電力に対する

RF

出力

電力が十分には飽和していない.このため,

LO

電力

の変動に伴い,

RF

出力電力も変動しやすい.しかし,

飽和領域では,

RF

出力電力は増加しなくなるが

LO

リーク電力は

LO

入力電力の増加に伴い増加してしま

う.すなわち,不要波抑圧の観点からは不利である.

また,大きな

LO

電力を供給しようとした場合,

LO

増幅器の段数を増やす必要がありサイズ,消費電力,

LO

増幅器からの不要波出力の観点からも不利益が多

くなる.したがって,

LO

信号生成時に

LO

電力が安

定するよう工夫した逓倍器

[10]

を用いて変動対策を行

(7)

電子情報通信学会論文誌 2016/5 Vol. J99–C No. 5

図 10 縦積みバランの特性

Fig. 10 Measured results of the staked balun.

うこととした.

10

LO

バランの

S-parameter

の測定結果を示

す.

23 GHz

26 GHz

において,通過損失は

−6 dB

−7 dB

( 分 配 損 失

3 dB

を 含 む )で あった .ま た ,

23 GHz

26 GHz

に お け る

S

21

S

31

の 振 幅 差 は

0.3 dB

以内,

S

21

S

31

の通過位相差は

180

±5

度の範囲に収まっており,良好な特性が得られた.

11

IF

アンプの

S-parameter

の測定結果を示

す.

2 GHz

3 GHz

において入力側,出力側の反射特

性はともに

−10 dB

前後であり,利得は

10.7

±0.4 dB

と平坦な特性が得られている.

12

にウィルキンソンデバイダの

S-parameter

測定結果を示す.中間層配線をグラウンド層にし,上

層配線で

λ/4

波長線路を形成した.グラウンドとの距

離が近くなるため

TFMS

線路は

6

μm

と細い線路幅

となり,損失は若干大きくなるが,通過損失

1 dB

(分

図 11 IFアンプの測定結果 Fig. 11 Measured results of the IF amplifier.

図 12 ウィルキンソンデバイダの測定結果 Fig. 12 Measured results of the Wilkinson divider.

図 13 試作したバランスミキサ Fig. 13 Photograph of the balanced mixer.

配損失

3 dB

を除く)と良好な特性が得られた.

13

に開発したバランスミキサのチップ写真を示す.

マーチャントバランをシングルエンドミキサの形状に

合わせて折り曲げて配置する等により小型化を図った.

測定治具の都合により引き出し線路を長く取っている

ため,パッドを含めたチップサイズは

1

.6 mm×1.6 mm

角となっているが,バランスミキサとしての実効的な

(8)

図 14 バランスミキサの測定結果 Fig. 14 Measured results of the balanced mixer.

表 1 Ka帯バランスミキサの特性比較 Table 1 Comparison of Ka-band balanced mixer.

部分(図

13

点線内)のサイズは,

1

.3 mm × 1.2 mm

である.図

14

LO

信号として

23.6 GHz

0 dBm

信号を入力し,

IF

信号として

2.4 GHz

の信号を入力し

たときのバランスミキサの入出力特性を示す.シング

ルエンドミキサと比較し,バランや信号合成器の損失

が加わるうえ,ミキシングに利用される

LO

信号の電

力レベルが分配損失等により下がるため,本来ならば

変換利得は悪化するが,利得

11 dB

IF

アンプを内

蔵しているため,トータルの変換利得は

−9 dB

となっ

ている.

RF

端子側への

LO

信号リークは

−45 dBm

前後であった.また,線形性の目安となる

1 dB

利得圧

縮点における

RF

信号の出力電力は

−12 dBm

であっ

た.したがって,

1 dB

利得圧縮点における値を比較

した場合,シングルエンドミキサにおいては

RF

信号

LO

リークがほぼ同レベルで出力されていたのに対

し,バランスミキサでは

LO

リークは

RF

信号より約

35 dB

低く,十分に抑圧されていることがわかる.な

お,消費電力は,

135 mW

3 V

45 mA

)であった.

1

に他の準ミリ波帯バランスミキサ

[4]

[7]

との

特性比較を示す.本バランスミキサは,

3

次元

MMIC

構造により著しい小型化を実現しており,また,縦積

みバランにより十分な

LO

信号抑圧を達成しているこ

とが分かる.

4.

む す び

3

次元

MMIC

技術を用い,準ミリ波帯バランスミ

キサを開発した.多層配線構造による縦方向の結合を

利用して

3 dB

カプラが実現できることを示し,この

結合線路を用いてレイアウトの自由度が高く,良好な

特性をもつマーチャントバランを作成し,また,スパ

イラルインダクタを多層配線によって構成するなど,

パッシブ素子の小型化・高密度化を図った.その結果,

チップ面積

1.56 mm

2

LO

信号抑圧比

47 dB

,変換利

−9 dB

と良好な特性のバランスミキサを実現した.

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(9)

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山口

陽 (正員:シニア会員)

1989阪大・理・化学卒.1991 同大大学院 理学研究科修士課程了.2010 東京工業大学 工学研究科博士課程修了.工博.1991 日本 電信電話株式会社入社.1991∼1999 同社 にて,MMIC の研究開発に従事.1999∼ 2001総合通信エンジニアリング株式会社にて,通信コンサルタ ント業務に従事.2001 より日本電信電話株式会社にて,VHF 帯∼準ミリ波帯のワイヤレスシステム及び MMIC の研究開発 に従事.現在,NTT 未来ねっと研究所主任研究員.本会マイ クロ波研究会幹事,Electronics Express (ELEX) 編集委員, IEEE Microwave Theory and Techniques Society Japan Chapter Secretary.2011∼2014 日本学術会議電気電子工学 委員会 URSI 分科会無線通信システム信号処理(URSI-C)小 委員会統括幹事.2010 Asia-Pacific Microwave Conference (APMC 2010)及び 2014 Asia-Pacific Microwave Confer-ence (APMC 2014)技術プログラム委員会副委員長.2011 年 度本会通信ソサイエティ論文賞,2014 年度本会エレクトロニ クスソサイエティ論文賞.IEEE シニア会員.

加保 貴奈 (正員:シニア会員)

1994年都立大物理卒.1996 同大大学院 理学研究科修士課程了.同年,日本電信電 話(株)入社.以来,衛星通信,無線通信 及びマイクロ波集積回路の研究に従事.博 士 (工学).2010-2012 年東北大学電気通信 研究所客員准教授.2014 年-2015 年九州 大学システム情報科学府客員准教授.現在,NTT 未来ねっと研 究所主任研究員.1998 年 APMC 国際会議 Japan Microwave Prize受賞.平 15 年度本会学術奨励賞受賞.平 26 年度本会エ レクトロニクスソサイエティ論文賞.本会東京支部委員,エレ クトロニクスソサイエティ論文編集委員.総務省情報通信審議 会 ITU 部会専門委員.IEEE 会員.

豊田 一彦 (正員:シニア会員)

1985阪大・工・通信卒.1990 同大大学 院博士後期課程了.工博.同年,日本電信 電話株式会社入社.1990∼2001 NTT 研 究所及び NTT エレクトロニクス(株)に て,3 次元 MMIC の研究及び事業化に従 事.2001∼2011 NTT 研究所にて,ミリ 波ワイヤレスシステムの研究開発及び標準化に従事.2004∼ 2007新潟大学大学院客員助教授,2007∼2011 東京電機大学非 常勤講師.2011 より佐賀大学大学院教授として電磁界の波動 的特性を活用した高周波回路・アンテナの研究に従事.本会マ イクロ波研究専門委員会幹事,本会東京支部評議員,本会九州 支部運営委員,ミリ波実用化コンソーシアム Vice Chair 等を 歴任.著書「OFDM/OFDMA 教科書」(共著).1993 本会学 術奨励賞,Japan Microwave Prize (APMC’94),2003 電気 通信普及財団テレコムシステム技術賞,2006 本会エレクトロ ニクスソサイエティ賞,2011 本会論文賞受賞.IEEE 会員.

(10)

上原 一浩 (正員:フェロー)

昭 62 東北大・工・電子卒.平 4 同大大 学院博士課程了.同年日本電信電話(株) 入社.以来,準ミリ波・ミリ波帯広帯域ワ イヤレスアクセスシステム用アンテナ,ア クティブアンテナ,アダプティブアンテナ, 屋内電波伝搬,ソフトウェア無線・コグニ ティブ無線システム,ミリ波超高速ワイヤレスシステム,次 世代無線 LAN システム,IoT/M2M 無線アクセスシステム 等の研究開発及びマネジメントに従事.平 9∼10 カリフォル ニア工科大客員研究員.平 15∼22,25 及び 27 東北大学工学 部非常勤講師.平 21∼23 東海大学開発工学部非常勤講師.現 在,NTT 未来ねっと研究所ワイヤレスシステムイノベーショ ン研究部長.工博.平 7 本会学術奨励賞,平 9 及び 26 本会 論文賞,平 14YRP アワード及び電気通信普及財団賞(テレ コムシステム技術賞),平 23 本会通信ソサイエティ功労顕彰 状及び活動功労賞,平 24 及び 26 本会通信ソサイエティ論文 賞,平 26 本会業績賞等を受賞.本会ソフトウェア無線研究専 門委員会委員長及び顧問,通信ソサイエティ英文論文誌小特 集(WDN 及び CR)編集委員長,東京支部評議員及び庶務 幹事,2011 International Conference on Cognitive Radio Oriented Wireless Networks and Communications実行委 員長等を歴任.IEEE シニア会員.

中川 匡夫 (正員:シニア会員)

昭 61 阪大・基礎工・卒.昭 63 同大大学 院修士課程了.同年日本電信電話 (株) 入 社.以来,MMIC 回路,マイクロ波・ミリ 波装置,無線・光信号処理の研究開発に従 事.博士 (工学).現在,NTT 未来ねっと 研究所グループリーダ,主幹研究員.大阪 大学大学院情報科学研究科招へい教授.平 6 年度本会学術奨励 賞,平 18 本会エレクトロニクスソサイエティ功労感謝状,平 27本会通信ソサイエティ論文賞受賞.平 14∼平 16 本会エレ クトロニクスソサイエティ英文論文誌編集委員.平 26 本会通 信ソサイエティ総務幹事.IEEE シニア会員.

荒木 純道 (正員:フェロー)

1971年埼玉大・理工・電気卒.1973 東 京工業大学電子物理工学研究科修士課程修 了,1978 年電子物理工学研究科博士課程 修了.工博.1973∼1975,1978∼1985 東 京工業大学助手.1985∼1995 埼玉大学助 教授.1979∼1980 テキサス州立大学研究 員.1993∼1994 イリノイ州立大学客員教授.1995∼2014 東 京工業大学教授.2014 より東京工業大学名誉教授,産学官連携 研究員.マイクロ波回路,電磁界解析,回路網理論,符号理論, 暗号理論,無線通信などの研究に従事.IEEE MTT-S Japan Chapter Chair,本会 APMC 国内委員長,エレクトロニクス ソサイエティ会長,会計理事など歴任.1979 本会学術奨励賞, 2005, 2014本会論文賞,1994, 1996, 2006 電気通信普及財団 テレコムシステム賞.情報処理学会会員,電気学会会員,IEEE シニア会員.

図 3 非対称結合線路 Fig. 3 Asymmetric coupled lines.
図 5 縦積みバランの特性 Fig. 5 Performance of staked baluns.
Fig. 7 Schematic diagram of the IF amplifier.
図 10 縦積みバランの特性
+2

参照

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第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

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