銀行経営者への市場規律付け
著者
大塚 茂晃
雑誌名
経済学研究
巻
71
号
2
ページ
101-117
発行年
2017-09-20
URL
http://hdl.handle.net/10236/00026067
銀行経営者への市場規律付け
Market Influence on Bank Management
大 塚 茂 晃
This paper examines the market discipline of the banks in Japan. The market discipline includes monitoring and influence. Monitoring refers to the hypothesis that depositors and/or stock holders accurately understand changes in the condition of deposit banks. Influence is that the monitoring changes induce bank manager responses to change the banking conditions for the better. The empirical results fall into two categories. First, the results support market monitoring by depositors, certificate depositors and stock holders of the banks. However the second, the parametric tests provided a little evidence for market influence. Therefore, influence by prudential supervision could be needed to ensure the soundness of banking.Shigeaki Ohtsuka
JEL:C23, G21, G28
キーワード:市場規律、銀行業、銀行監督
Keywords:market discipline, banking, prudential supervision
1. はじめに
2005年4月にペイオフ(預金などの払い戻し保証を一定額までとする措置) が全面解禁となり、1990年代後半からの金融システム不安は、このペイオフ 解禁をもって正常化したと考えられる1)。これは、1999年に導入した「金融検 査マニュアル」に基づき、金融庁が銀行を適切に監督し、金融システムの安定 を図り、銀行の健全性を担保してきたことが寄与したと考えられる。しかし、 2017年6月、この金融検査マニュアルを廃止する方向であることが報道され 1) 本稿では、ペイオフを「預金などの払戻保証額を元本 1000 万円とその利息までとする措置」と いう意味で用いる。た2)。これは、金融庁の銀行監督体制を見直すことを意味している。これまで の金融行政は銀行の箸の上げ下ろしまで注文すると言われるほど、銀行経営に 行政が関わってきた。しかし、金融検査マニュアル廃止の動きは、このことを 変えていこうとする金融庁の姿勢の現れなのかもしれない。 2016年1月、日本銀行はいわゆるマイナス金利政策を導入した。安全資産 である国債で資産運用の一部を行ってきた銀行は、マイナス金利政策にともな う国債利回りの低下によって、厳しい経営状況におかれている。さらに、イー ルドカーブのフラット化による中長期金利の低下により、貸出利鞘も低下して いる。そのため、新たなビジネスモデルへの転換によって、収益を上げるよう に金融庁は銀行に促している。金融検査マニュアルを廃止する金融庁の狙い は、今より柔軟な銀行経営を行うことが出来るようにし、銀行にリスクをとっ て新たなビジネスモデルを構築するように促すことなのかもしれない。 一方で、都銀を中心として、銀行業はバーセルⅢによって段階的に自己資本 比率の積み増しが求められている。リーマンショックや欧州銀行危機といった 経験から銀行のリスクテイクに対し一定の歯止めをかけることが国際的な流れ なのかもしれない。 銀行監督や規制は銀行及び金融システムの健全性を担保するために行われ る。規制強化や細かな経営にまで監督当局が関わる必要がある時は、以下の 3つの状況が考えられよう。1つ目に銀行が債務超過もしくはそれに近い状態 である時、2つ目に金融システム不安が起こっているもしくはその恐れがある 時、3つ目に市場規律が十分に機能せず、銀行経営のチェックとそれに応じた 経営改善が十分に行われていない時である。金融システムが安定化し、金融再 編が行われた今、わが国の銀行が上記のはじめの2つの状況にあるとは考えに くい。よって、3つ目の市場規律が十分に機能していないため金融監督当局で ある金融庁が安定的な金融システムを担保するために、銀行への厳しい監督を 行っていたのかもしれない。バーゼルⅢによる自己資本比率規制の強化も、市 場規律が十分に機能していないと考えているからかもしれない。 2) 日本経済新聞 2017 年 6 月 9 日。
銀行業は経済の根幹をなす決済システムを担っており、これが破綻もしくは 麻痺することは、経済システムに大きな負の影響を与えることになる。そのた め、銀行業は一定の競争にはさらす必要があるが、簡単に破綻が起こらないよ う事前的規制が存在し、さらに仮に銀行破綻が生じても混乱が起こらないよう 事後的措置(セーフティーネット)が用意されている。事前的規制としては、 参入にかかわる条件(許認可)やBIS自己資本比率規制(バーゼル規制)及び 銀行監督があげられる。また、事後的措置(セーフティーネット)として、銀 行破綻が起こった際に、決済システムが維持され、預金者の信認が失われない ように預金保険制度があり、預金者の預金は一定額まで保護されている。さら に、流動性を供給するために中央銀行による最後の貸し手もある。これらは、 銀行業特有のものである。 しかし、このような事前的規制や事後的措置は、預金者らが銀行の経営に無 関心になる誘因となりうる。なぜなら、預金銀行が破綻しても預金は預金保険 制度によって保護されるからである。つまり、銀行経営に対して市場規律が働 かない可能性がある。 この市場規律には2つある(図1参照)。すなわち、①市場からの監視(Market
Monitoring)と、②市場からの影響(Market Influence)である3)。これら2
つがそろって、市場規律が働いていると言えよう。このうち①の市場からの監 視は、預金者や株主が銀行経営状況に応じて行動をすることである。例えば、 銀行経営が悪化しているのであれば、預金者は預金を引き出したり、高い預金 金利を求めたりするであろうし、株主は株価を引き下げるよう行動することで 図 1 銀行に対する市場規律 㖟⾜ 䠄㖟⾜⤒Ⴀ⪅䠅 㡸㔠⪅ ᰴ 䐟ᕷሙ䛛䜙䛾┘ど 䠄㡸㔠⪅䞉ᰴ䛜ᛂ䠅 䐠ᕷሙ䛛䜙䛾ᙳ㡪 䠄㡸㔠⪅䜙䛻⤒Ⴀ⪅䛜ᛂ䠅 (出所)筆者作成
ある。一方、②の市場からの影響は、そのような預金者や株主の行動を受け、 銀行経営者が銀行経営の健全化を図ることである。 仮に、このような①と②の行動が確認されるのであれば、箸の上げ下ろしま でと言われるような金融監督当局による過度な経営への関与は必要ないと言え よう。しかし、大塚(2012)では、金融システム不安定時(ペイオフを凍結し てからペイオフを解禁するまでの期間)を対象とした分析では、②の市場から の影響が十分に確認されなかった。そのため、金融システムが不安定な時に金 融検査マニュアルに基づく金融監督は必要であったと言えるかもしれない。そ こで、本稿では、金融システムが安定化した期間(2005年4月以降)の銀行 の財務データを用いて、銀行に対する①市場からの監視と②市場からの影響に ついて検証する。 本稿の特徴は以下の4点にまとめることが出来る。第1に、上記のような2 つの側面から市場規律について実証分析を行ったことである。先行研究では、 その言及がなされているものの、②の市場からの影響についての分析を行った ものは限られ、それを分析したことに本稿の特徴がある。第2に、金融システ ムが安定化した2006年3月期から2016年3月期までの幅広いデータを用い、 先行研究よりも分析期間を広げたことである。第3に、わが国の銀行を対象と した同様の市場規律に関する先行研究では、預金量の増減率を被説明変数とし て用いているものが多いが、これを預金量の対数値を用いて分析をしたことに より、よりモデルに近いものを用いて分析した。第4に株主の行動について、 株式市場の日時データを用いたことであり、年度末の株価だけを用いている先 行研究よりも、より株主の行動を反映した値を用いて分析を行ったことである。 本稿の構成は、以下のとおりである。まず第2節で先行研究についてまと め、第3節では分析のフレームワークを示す。第4節では、市場からの監視 について実証分析を行い、第5節では市場からの影響について実証分析を試み る。そして、第6節でこれらをまとめる。
2. 先行研究
市場からの監視に関する実証分析の研究では、預金残高やその変化および預金金利を各銀行の経営指標で回帰し、両者の間に関係があるのかどうかを検証 している。そして、預金残高やその変化および預金金利が銀行の経営状況の影 響を受けているとすれば、市場による監視が機能しているとしている。
Park(1995)は、米国の銀行データを用いて銀行の経営指標と預金残高の関 係を検証しており、両者に有意な関係を得ている。また、わが国の銀行を対象と した同様の先行研究もいくつかある(Hori and Murata(2005)・永田(2014))。
例えば、Hosono(2002)は、定期性預金のペイオフ解禁後に預金者による市
場からの監視行動が見られることを示している。Fueda and Konishi(2007) でも銀行の経営状況を預金者が見て行動をとっていることを示している。
また、譲渡性預金(CD)の残高の変化やCD金利と各銀行の経営指標を回帰
し、CD保有者が銀行のリスクを織り込んで行動しているとの研究結果が報告さ
れている(Flannery(1998)・Jagtiani and Lemieux(2000)・Calomiris and Wilson(1998)・Halle, King, Meyer and Vaughan(2002)・Gilbert, Meyer
and Vaughan(2003))。また、わが国の事例は、Kobayashi(2007)において
銀行の利益が高まるとCD金利が低下することを示している。
さらに、株価が銀行の経営指標との間の関係を捉え、株主による市場監視が働 いているとする論文もある(Yamori(1999)・Bremer and Pettway(2002))。
このように、先行研究は主に市場からの監視を検証している。本稿では、こ の市場からの監視に加え、市場からの影響についての実証分析を行い、銀行経 営者の行動を分析する。仮に市場からの影響(すなわち、銀行経営が悪化して いるとするシグナルを送られた銀行が銀行経営の健全化を図っている)がデー タで確認されば、市場規律に基づいた金融監督当局による監督を行えば良いこ とになるだろう。逆に、市場による影響などがデータによって確認されないの であれば、銀行経営を銀行監督当局がよりつぶさに監視するような金融行政が 必要と言えるかもしれない。
3. 分析手法
本節では、本稿で取り扱う実証分析のモデルを、先行研究に倣い以下のよう に想定する。まず、預金者の行動を見るには、預金量と預金金利について、銀行と預金者の双方から観測する必要がある。ここで、預金の需給について(1)
式および(2)式を想定する。(1)式は銀行による預金需要を表したものであり、 預金の需要量(Demand Deposit)は銀行のリスク(Bank Risk)と預金金利
(Interest)によって決まると考えられる。また、預金者による預金の供給につ
いても同様のことが言えると考えられ、(2)式を想定する。
Demand Depositi,t= a1+ b1 BankRiski,t−1+ c1Interestt+ ε1i,t (1) Supply Depositi,t= a2+ b2 BankRiski,t−1+ c2Interestt+ ε2i,t (2)
なお、εは誤差であり、期待値ゼロ、分散が一定、共分散ゼロの正規分布に従 うホワイトノイズである。また、今期の預金者からの預金供給は預金銀行の財 務状況によって左右されるであろうが、預金者が知りうる情報は前期の財務状 況であると考え、銀行のリスクは1期前を想定した。さらに、先行研究同様、 各銀行の預金需要も1期前の財務を反映すると考えられるため、銀行のリス クを1期前と想定した。通常、この(1)式・(2)式で規定される同時方程式を 推定するのが望ましいが、預金量と預金利子率について同時性バイアスを避け るために、Perk(1995)やMartinez-Peria and Schmukler(2001)・Murata
and Hori(2006)およびKobayashi(2007)といった先行研究にならい、以
下の誘導型の式を分析する。
Depositi,t= α1i,t+ ui+ dt+ β1BankRiski,t−1+ γ1λt+ υ1i,t (3) Interesti,t= α2i,t+ ui+ dt+ β2BankRiski,t−1+ γ2λt+ υ2i,t (4) なお、β1= b1c2− b2c1 c1− c2 、β2= b2− b1 c1− c2 である。ここで、uiは各銀行の固定効果を表しており、dtは各年度の個別効 果を示している。また、現実には銀行のリスク以外の要因も預金量と預金金利 に影響を与えていると考えられるので、これらの要因をベクトルλとして推定 式に入れる。 CD(譲渡性預金)についても、預金と同様に、CD需給量は1期前の銀行 のリスクと今期の金利によって決まると想定し、(5)・(6)式を想定する。そし て、預金と同様に、その誘導型の式(7)・(8)式を算出する。
Demand CDi,t= a1+ b1BankRiski,t−1+ c1CDInterestt+ ε1i,t (5) Supply CDi,t= a2+ b2BankRiski,t−1+ c2CDInterestt+ ε2i,t (6) CDi,t= α1i,t+ ui+ dt+ β1BankRiski,t−1+ γ1λt+ υ1i,t (7) CDInteresti,t= α2i,t+ ui+ dt+ β2BankRiski,t−1+ γ2λt+ υ2i,t (8)
さらに、株主の行動については、株価(Stock)にあらわれ、これまで同様
の考えから、株価に関する先行研究と同様に(9)式のモデルを想定する。
Stocki,t= α1i,t+ ui+ dt+ β1BankRiski,t−1+ γ1λt+ υ1i,t (9)
第1節で述べたように、銀行に対する規律付けは、図1のように①の市場か
らの監視と、②の市場からの影響の両輪が必要である。そのため、銀行の経営 者の健全化行動について分析する必要がある。具体的には、銀行の経営状況が 悪化しているとしてシグナルを送られた銀行経営者が銀行経営の健全化を図っ ているのかを分析する必要がある。この点につき、Bliss and Flannery(2002)
のモデルに従い、以下のものを想定する4)。 Actionj,t= α1j+ β1Rj,t−−1+ β2Xj,t−1+ εt (10) すなわち、銀行経営者の行動(Action)は、市場からの監視のうち負のリアク ション(R−)と外生変数(X)からなるモデルを想定する。負のリアクショ ンというのは、銀行経営が悪化しているとする預金者や株主の行動であり、預 金を引き出したり、株主が株を売却し株価を引き下げたりすることを指す。 銀行の経営状況が健全な場合、銀行経営者が現状の経営手法(経営戦略)を 変更する必要はないであろう。そのため、②の市場からの影響については、経 営状況が悪化しているとする市場からの監視に対し、銀行経営者が経営を健全 化させるのかに絞って考察する。
本稿の分析では、銀行のリスクとして、Demirg¨u¸c-Kunt and Kane(2002)と 同様にCAMEL (Capital, Asset quality, Management, Earning, Liquidity)
4) Bliss and Flannery(2002)は、正のリアクションと負のリアクションを 1 つのモデルの中 に入れて、それぞれ別々の係数を推計している。その結果、市場からの影響はとても小さなエビ デンスしか検証できていない。そこで、負の影響に絞って本稿では分析を行う。
を表す複数の指標を用いる。したがって、Bank Riskは、これらの指標のベク
トルである。以下の実証分析では、各指標の係数の符号とその有意性を個々に
検討するとともに、CAMEL全体として預金量や株価に影響を及ぼしている
かどうかも検討する。
CAMELの具体的な指標として、資本(Capital)にはBIS自己資本比率
を、資産の状況(Asset quality)には不良債権比率を、経営力(Management) には経費率を、収益性(Earning)についてはROEを、流動性(Liquidity)
は現預金を総資産で除したものを用いた。これらをまとめたものが表1であ
る。また、その他の外的な要因(λ)は、Demirg¨u¸c-Kunt and Kane(2002) やHosono(2002)・Fueda and Konishi(2004)・Tsuru(2003)といった先
行研究同様、「too big to fail(TBTF)」の影響を各行の総資産の対数値を用 いて考察する。 そして、市場の行動とする指標は、不均一分散の可能性を考慮して自然対数 値を採用する。すなわち、①各行の預金量の対数値、②各行のCDの預金額の 対数値、そして③株価(時価総額)の対数値(STOCK)の3つである。なお、 預金金利は財務データの中に明示的に示されていないことと5)、本稿の分析期 間において、わが国の金融政策においてゼロ金利政策や量的緩和政策を行って おり、預金金利が低く抑えられていたと考えられる。そのため、各銀行の経営 指標に十分反応していたとは考えにくいため、預金金利に関する実証研究を本 表 1 変数について Mark ᣦᶆ Deposit 㡸㔠⥲㢠㻔ᑐᩘ್䠅 Time ᐃᮇᛶ㡸㔠ྜィ㢠㻔ᑐᩘ್䠅 CD ㆡΏᛶ㡸㔠㢠㻔ᑐᩘ್䠅 Stock ౯⥲㢠ᖹᆒ䠄᪥䚸⤊್䚸ᑐᩘ್䠅 BIS 㻮㻵㻿⮬ᕫ㈨ᮏẚ⋡ BAD Ⰻമᶒ㢠䠄䝸䝇䜽⟶⌮മᶒྜィ㢠䠅䚷㻛㻌㈚ฟ㢠 ROE ᴗົ⣧┈㻌㻛㻌㈨ᮏ䠄⡙౯䠅 MANAGE Ⴀᴗ⤒㈝㻌㻛㻌⥲㈨⏘ LIQ ⌧㔠㡸䛡㔠㻌㻛㻌⥲㈨⏘ ASSET ⥲㈨⏘㻔ᑐᩘ್䠅 (出所)筆者作成
表 2 記述統計量
MARK Maximum Minimum Mean Median S.D. Kurtosis Skewness
Deposit 15.940 -0.897 3.437 0.027 5.899 -0.603 1.164 CD 13.763 -0.895 2.925 0.020 5.035 -0.580 1.169 Stock 27.733 0.000 4.758 0.002 9.801 0.526 1.584 Time 79.730 2.660 9.494 9.163 3.747 58.321 4.202 BIS 54.010 0.000 4.168 0.075 5.828 9.533 1.851 BAD 0.156 -0.036 0.011 0.004 0.016 5.758 1.945 MANAGE 11.544 0.001 2.150 0.016 4.125 0.086 1.431 ROE 1.859 -0.979 0.124 0.114 0.091 58.927 1.882 LIQ 16.356 -3.214 3.689 0.084 6.282 -0.643 1.153 ASSET 2.795 0.013 0.789 0.177 1.094 -0.692 1.135 (出所)筆者作成 稿では行わなかった。この点は今後の研究課題である。 本稿では、2006年3月期から2016年3月期までのクロスセクションデー タをプールし、固定効果による個別金融機関の影響も考慮して、パネル推計を 行う。また、本稿で用いるデータは、日経NEEDS-Financial QUESTにおけ る銀行(都銀と地銀の単体)の期末の財務データを用いた。この期間は合併・ 破綻があったため、分析データはアンバランスド・パネルデータである。また、 各年度に1つでも欠損データがある場合は、その銀行のその年度をサンプルか ら除外した。これらのデータを用いて先に述べた誘導型の式をパネル分析で推 計する。先行研究も含め、サンプル期間が11期と短いため、ダイナミックパ ネルなど、時系列分析するにはデータが不足しており、ダイナミックモデルで の推計は、さらなるデータ蓄積の後の課題である6)。
4. 市場からの監視
本節では、市場からの監視についての実証分析を行う。すなわち、預金総 額・CD総額と株価(時価総額)のそれぞれが、銀行の経営指標との間に関係 があるのかを検証する。(3)式・(7)式・(9)式のβに関する帰無仮説(β = 0) が棄却されれば、預金者らは銀行のリスクを織り込んだかたちで行動している 5) 先行研究では、支払い利息を預金総額で除して、預金金利を推定している。 6) また、推計における誤差項の系列相関の有無を確認するために、分散不均一と自己相関に対応した HAC 分散共分散行列系列相関、不均一分散を考慮に入れた White の HCSE を統計結果 として示す必要があるが、これもデータの蓄積がなされた後での研究課題としたい。
と考えられる。そして、銀行の経営指標との間に統計的な関係がある場合、市 場からの監視が機能していると言えよう。 それぞれの経営指標に対する符号条件を考察しよう。もし、預金者が銀行 のリスクを織り込むような行動をしているのであれば、銀行のリスクの高まり により、預金者は預金を引き出すであろう。また、同様に、銀行のリスクの高 まりにより、株主も株価を低下させるよう行動をとるであろう。具体的には、 BIS・ROE・流動性といった指標は高い方が望ましいであろうし、不良債権比 率や経費率は低い方が望ましいと考えられる。これらをまとめたのが表3で ある。 パネル分析の推計結果は表4である。なお、ここではパネル分析上で各個 体の推計したものについて、3つのF検定が行われている。すなわち、1つが 固定効果モデルにおいて、切片が同一かどうかのFテストで、これが否定さ れれば固定効果があるということになる(F1)。2つ目に切片も傾きも同一か どうかのFテストでは、これが否定されればプーリング回帰が妥当しないこ とになる(F2)。さらにそれぞれの推計におけるCAMELの係数が同時にゼ ロとなることを帰無仮説とするF検定(F3)の3つである。また、固定効果 モデルと変動効果モデルのどちらの誤差が小さいかとするハウスマン検定も同 時に示してある。 表4に示した結果から、すべてにおいて固定効果モデルが支持される。統計 的に有意となっている指標のうち、LIQやROEの一部で符号条件が異なって いる。LIQは流動性の増加を、資産運用がうまくいっていないことの現れと 株主らが捉えた結果かもしれない。ただ、ROEの符号条件が異なる点は、説 明が付きにくい。しかし、その他の統計的に有意となっている指標は符号条件 が一致している。さらに、各推計のF値からCAMELの係数が同時にゼロと 表 3 市場からの影響の符号条件 㻮㻵㻿 㻮㻭㻰 㻹㻭㻺㻭㻳㻱 㻾㻻㻱 㻸㻵㻽 㻰㼑㼜㼛㼟㼕㼠 䠇 䠉 䠉 䠇 䠇 㻯㻰 䠇 䠉 䠉 䠇 䠇 㻿㼠㼛㼏㼗 䠇 䠉 䠉 䠇 䠇 㼀㼕㼙㼑 䠇 䠉 䠉 䠇 䠇 (出所)筆者作成
⿕ㄝ᫂ኚᩘ 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾㼍 㼚㼐 㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾㼍 㼚㼐 㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾 㼍㼚㼐㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑 㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑 㼐㻌 㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾 㼍㼚㼐㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑 㼏㼠 㻯 㻮 㻵㻿 㻜㻚 㻜㻜㻤 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻜㻝㻠 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻜㻞㻥 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻜㻠㻣 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻜㻜 㻤 㻖㻖 㻜㻚 㻜㻞 㻢 㻖㻖 㻜㻚 㻜㻤 㻠 㻖㻖 㻜㻚 㻜㻣 㻥 㻖㻖 㻖 㻔㻜㻚 㻜㻜㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻞 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻡 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻟 㻕 㻔㻜 㻚㻜 㻝㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻝 㻝 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻟㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻞㻝 㻕 㻭 㻮 㻭 㻰 㻙㻝㻚 㻡㻜㻞 㻖㻖㻖 㻙㻝㻚 㻟㻥㻥 㻖㻖㻖 㻙㻟㻚 㻠㻤㻡 㻖㻖㻖 㻙㻟㻚 㻠㻤㻡 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻠㻠 㻥 㻙㻞㻚 㻟㻞 㻜 㻜㻚 㻠㻥 㻡 㻙㻜 㻚㻤㻟㻠 㻔㻜㻚 㻠㻡㻤 㻕 㻔㻜㻚 㻠㻟㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻣㻜㻢 㻕 㻔㻜㻚 㻣㻜㻢 㻕 㻔㻞㻚 㻜㻢㻥 㻕 㻔㻝㻚 㻤㻝㻢 㻕 㻔㻡 㻚㻟 㻢㻜 㻕 㻔㻠㻚 㻤㻠 㻠㻕 㻹 㻹 㻭 㻺 㻭 㻳 㻱 㻙㻜㻚 㻠㻡㻡 㻖㻖㻖 㻙㻜㻚 㻞㻜㻤 㻖㻖㻖 㻙㻜㻚 㻟㻣㻜 㻖㻖㻖 㻙㻜㻚 㻞㻝㻝 㻖㻖㻖 㻙㻜 㻚㻡 㻝㻤 㻖 㻙㻜 㻚㻝 㻝 㻥 㻙 㻞㻚 㻥㻟㻡 㻖㻖 㻖 㻙㻞 㻚㻜 㻟㻣 㻖㻖 㻖 㻔㻜㻚 㻜㻡㻞 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻟㻢 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻤㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻡㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻣㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻠㻥 㻕 㻔㻜 㻚㻡 㻣㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻟 㻟㻢㻕 㻱 㻾㻻 㻱 㻙㻜㻚 㻜㻣 㻜 㻙㻜㻚 㻜㻣 㻣 㻙㻜㻚 㻟㻤㻠 㻖㻖㻖 㻙㻜㻚 㻟㻤㻠 㻖㻖㻖 㻙㻜 㻚㻥 㻜㻢 㻖㻖 㻖 㻙㻜 㻚㻣 㻜㻢 㻖㻖 㻖 㻙㻜 㻚㻞 㻣 㻠 㻙 㻜㻚 㻟㻤㻣 㻔㻜㻚 㻜㻠㻣 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻠㻣 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻣㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻣㻟 㻕 㻔㻜 㻚㻞 㻣㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻡 㻢 㻕 㻔㻜㻚 㻠㻥㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻠㻤㻜 㻕 㻸 㻸㻵 㻽 㻝㻚 㻠㻥㻣 㻖㻖㻖 㻝㻚 㻟㻠㻣 㻖㻖㻖 㻙㻞㻚 㻜㻥㻞 㻖㻖 㻜㻚 㻣㻝 㻜 㻙 㻢㻚 㻡㻜㻠 㻖㻖 㻞㻚 㻢㻣 㻜 㻖㻖 㻞㻚 㻠㻤 㻢 㻟 㻚㻡 㻝㻤 㻔㻜㻚 㻡㻡㻣 㻕 㻔㻜㻚 㻟㻤㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻤㻡㻤 㻕 㻔㻜㻚 㻠㻣㻠 㻕 㻔㻞㻚 㻤㻡㻝 㻕 㻔㻝㻚 㻝㻤㻤 㻕 㻔㻡 㻚㻤 㻤㻣 㻕 㻔㻟㻚 㻠 㻣㻠㻕 㻭 㻿 㻿 㻱 㼀 㻙㻟㻚 㻞㻜 㻡 㻙㻜㻚 㻣㻝 㻞 㻡㻜㻚 㻡㻥㻟 㻖㻖㻖 㻣㻚 㻝㻥 㻝 㻝㻝㻣㻚 㻢㻡㻠 㻖 㻙㻝 㻣㻚 㻢㻡 㻤 㻝㻚 㻜㻣 㻞 㻙㻥 㻚㻢㻥㻟 㻔㻤㻚 㻝㻜㻠 㻕 㻔㻡㻚 㻠㻢㻠 㻕 㻔㻝㻞㻚 㻠㻤㻣 㻕 㻔㻢㻚 㻤㻝㻞 㻕 㻔㻠㻝 㻚㻤 㻣㻞 㻕 㻔㻝㻣㻚 㻠㻜 㻟 㻕 㻔㻤㻢㻚 㻠㻢 㻡 㻕 㻔㻡㻜㻚 㻞㻢㻝 㻕 㼍㼐 㼖㻌 㻾 㻞 㻜㻚 㻥㻥 㻢 㻜㻚 㻤㻣 㻠 㻜㻚 㻥㻤 㻥 㻜㻚 㻤㻝 㻥 㻝 㻚㻜 㻜 㻜 㻜㻚 㻢㻤 㻤 㻜㻚 㻤㻢 㻢 㻜㻚 㻞 㻝㻠 ほ ᩘ 㻣㻟 㻠 㻣㻟 㻠 㻣㻟 㻠 㻣㻟 㻠 㻡㻜 㻠 㻡㻜 㻠 㻡㻠 㻥 㻡 㻠㻥 䝃 䞁 䝥 䝹 ᮇ 㛫 㻲 㻝 㻠㻤㻚 㻝㻡 㻞 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻞㻡㻚 㻞㻠 㻥 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻝㻝 㻚㻠 㻜 㻜 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻞㻞㻚 㻡㻜 㻠 㼇㻜 㻚㻜 㻜㻜㼉 㻲㻞 㻢㻚 㻞㻝 㻣 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻥㻚 㻡㻞 㻤 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻤㻚 㻞㻟 㻜 㼇㻜 㻚㻜 㻜㻜 㼉 㻜 㻚㻞 㻥 㻡 㼇㻜㻚 㻥㻢㻤 㼉 㻲㻟 㻝㻡㻝㻢㻚 㻟 㻖㻖 㻖 㻤㻠㻤㻚 㻡 㻖㻖㻖 㻤㻠㻤㻚 㻡 㻖㻖 㻖 㻡㻞㻚 㻠 㻖㻖 㻖 㻝㻡 㻜㻚 㻥 㻖㻖 㻖 㻝㻤 㻡㻚 㻥 㻖㻖 㻖 㻡㻠 㻚㻝 㻖㻖㻖 㻞㻡 㻚㻥 㻖㻖 㻖 㻴 㼍㼡㼟㼑㼙 㼍㼚㻌 㼀 㼑㼟 㼠 㻠㻡㻚 㻟㻠 㻝 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻥㻝㻚 㻥㻞 㻥 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻠 㻡㻚 㻡㻣 㻥 㼇㻜㻚 㻜㻜 㻜 㼉 㻞㻝㻚 㻢 㻡 㻞 㼇㻜㻚 㻜 㻜 㻝 㼉 ᭷ពỈ‽ 䠄ฟᡤ䠅➹⪅సᡂ 㻖㻖㻖 䛿 㻝 䠂௨ෆ䚸 㻖㻖 䛿 㻡 䠂௨ෆ䚸 㻖 䛿 㻝㻜 䠂௨ෆ䛷 䛒 䜛䚹 㻔 㻌㻌 㻕 ෆ䛿 䚸 ᆒ୍ศᩓ䜢 ⪃៖ 䛧 䛯 ᶆ ‽೫ᕪ䛾 ୍⮴᥎ᐃ 㔞䛷 䛒 䜛 䚹 㻞㻜㻜㻢㻙㻞㻜㻝㻢 㻞㻜㻜㻢㻙㻞㻜㻝㻢 㻞㻜 㻜㻢㻙㻞 㻜㻝㻢 㻞㻜 㻜㻢㻙㻞 㻜㻝㻢 㻰 㼑㼜 㼛 㼟㼕㼠 㻯 㻰 㻿 㼠㼛 㼏㼗 㼀 㼕㼙 㼑 ⾲ 4䚷 ᕷሙ䛻 䜘 䜛 ┘ど䛻 㛵䛩 䜛 ᥎ィ⤖ᯝ
なる帰無仮説は棄却でき、預金者もCD保有者も株主も、それぞれその銀行の リスクを織り込んだ行動をとっていると考えられる。 すなわち、2005年度から2015年度までの間、市場からの監視は機能してい たと結論付けることが出来よう。これは、これまでのわが国の先行研究と同様 の結果でもある。そして、本稿で分析したペイオフ解禁後も引き続き、市場か らの監視は銀行業においては機能していると言えよう。
5. 市場からの影響
前述のように、銀行業における市場規律は、預金者らの行動(①市場からの 監視)と経営者の行動(②市場からの影響)の双方があってこそ成り立つもの である。よって、本節では銀行のリスクが高まったとする預金者の行動(①) を受けて、その後、銀行経営者が銀行経営を健全化する方向に動いていたのか を分析をする。 前述の通り、この市場からの影響の分析対象となるのは、銀行経営が悪化 しているとするシグナルを送られているケースに絞って、(10)式を分析する。 すなわち、分析対象としたのは、預金総額が減少しているか、株価が減価して いるケースである。分析に用いられる変数は、Bliss and Flannery(2002)の 手法に従い、各変数の前年度からの変化率である。それぞれの記述統計量は表 5である。また、先行研究同様に市場からの監視行動が市場の影響として現れ るのにはラグがあると考え、市場からの監視については1期前の変化率を用い た。すなわち、市場からの監視により銀行経営が悪化しているとするシグナル を送られ、そのシグナルを受けて翌年の銀行経営状況の改善が見られたのかを 表 5 記述統計量Maximum Minimum Mean Median S.D. Kurtosis Skewness 㡸㔠⥲㢠ኚ⋡ 0.620 -0.136 0.016 0.016 0.039 115.303 7.987 ᐃᮇᛶ㡸㔠ኚ⋡ 0.763 -0.188 0.016 0.011 0.055 67.679 5.080 ㆡΏᛶ㡸㔠ኚ⋡ 382.333 -0.970 1.436 0.059 20.344 349.078 18.625 ᰴ౯ኚ⋡ 4.918 -0.991 -0.142 -0.147 0.271 256.880 13.864 BIS⮬ᕫ㈨ᮏẚ⋡ኚ⋡ 2.161 -0.401 0.017 0.010 0.132 133.234 8.338 Ⰻമᶒẚ⋡䛾ኚ⋡ 1.148 -0.776 -0.051 -0.074 0.169 7.554 1.239 ⤒㈝⋡䛾ኚ⋡ 0.534 -0.218 -0.004 -0.007 0.049 59.913 5.627 ⮬ᕫ㈨ᮏ┈⋡䛾ኚ⋡ 15.749 -17.538 -0.148 -0.052 1.851 48.795 -2.138 ὶືᛶẚ⋡䛾ኚ⋡ 4.835 -0.770 0.129 0.007 0.612 18.878 3.431 ⥲㈨⏘ኚ⋡ 0.617 -0.109 0.015 0.014 0.040 101.690 7.138 (出所)筆者作成
分析する。 符号条件は、以下の通りである。預金者が預金を引き出した後、銀行のリス ク指標が改善することが望ましいので、BIS自己資本比率・ROEと流動性は 預金の動きと逆の動きをすることが期待される。よって、これらの符号条件は マイナスである。逆に経費率や不良債権の指標は預金が減少した後、これらの 数字が減少することが期待される。そのため、これらの符号条件はプラスと予 想される。これらをまとめたものが表6である。 推計結果は表7である。株主の負のリアクション(株価を引き下げる行動) に対し、BIS自己資本比率を改善する方向で反応している。また、預金の減少 に対し、経費率を引き下げる方向で経営指標が反応していることが分かる。こ れらの結果から、市場からの監視に対し、市場からの影響が確認されたと言 うことが出来よう。すなわち、銀行業における市場規律は機能している。大塚 (2012)では株価のみに反応していることと比較すると、表7の結果は、預金 総額や定期性預金の減少率からの影響も確認され、市場からの影響が金融シス テムの安定と共に強化されている可能性を見ることが出来る。 しかし、一部の指標では符号条件が一致しない。預金が減少するかたちで、 銀行経営指標の悪化のシグナルを送られているのに対し、BIS自己資本比率は さらに減少していたり、不良債権比率が増加したりしている。これは、預金の 流出が経営悪化をより進めた可能性を指摘出来よう。 これらから、市場からの影響については一部で確認することが出来たが、市 場からの影響が十分に確認されたとは言えない。よって、わが国の銀行業にお いては市場からの監視と市場からの影響の両輪が揃っており、市場規律が機能 しているということを十分に検証出来たわけではない。そのため、市場からの 表 6 市場からの影響の符号条件 㡸㔠⥲㢠ኚ⋡ ㆡΏᛶ㡸㔠ኚ⋡ ᰴ౯ኚ⋡ ᐃᮇᛶ㡸㔠ኚ⋡ 㻮㻵㻿⮬ᕫ㈨ᮏẚ⋡ኚ⋡ 䠉 䠉 䠉 䠉 Ⰻമᶒẚ⋡䛾ኚ⋡ 䠇 䠇 䠇 䠇 ⤒㈝⋡䛾ኚ⋡ 䠇 䠇 䠇 䠇 ⮬ᕫ㈨ᮏ┈⋡䛾ኚ⋡ 䠉 䠉 䠉 䠉 ὶືᛶẚ⋡䛾ኚ⋡ 䠇 䠇 䠇 䠇 (出所)筆者作成
⿕ㄝ᫂ኚᩘ 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾㼍 㼚㼐 㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾㼍 㼚㼐㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾 㼍㼚㼐 㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑㼐 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾㼍 㼚㼐㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻲 㼕㼤㼑㼐㻌 㻱 㼒㼒 㼑㼏 㼠 㻾㼍 㼚㼐 㼛 㼙 㻌㻱 㼒㼒 㼑㼏㼠 㡸㔠⥲㢠ቑຍ ⋡ 㻜㻚 㻤㻞㻝 㻖㻖 㻜㻚 㻢㻝㻤 㻖 㻙㻝㻚 㻤㻠㻝 㻖㻖 㻙㻝㻚 㻞㻤㻞 㻖 㻜㻚 㻤㻝㻜 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻢㻢㻞 㻖㻖㻖 㻞㻚 㻠㻡 㻝 㻝㻚 㻠㻟 㻢 㻙 㻟㻚 㻠㻟 㻣 㻙 㻟㻚 㻠㻝 㻟 㻔㻜㻚 㻟㻠㻣 㻕 㻔㻜㻚 㻟㻞㻝 㻕 㻔㻜㻚 㻤㻠㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻣㻤㻝 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻠㻣 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻜㻢 㻕 㻔㻢㻚 㻥㻤㻠 㻕 㻔㻢㻚 㻡㻤㻞 㻕 㻔㻟㻚 㻢㻠 㻜 㻕 㻔㻟㻚 㻟㻣㻟 㻕 ᐃᮇᛶ㡸㔠ቑຍ ⋡ 㻙㻜㻚 㻞㻟㻞 㻖㻖 㻙㻜㻚 㻝㻝 㻢 㻜㻚 㻡㻡 㻞 㻜㻚 㻠㻢 㻞 㻙㻜㻚 㻝㻡 㻢 㻙㻜㻚 㻜㻡 㻜 㻙㻥㻚 㻞㻠㻞 㻖㻖㻖 㻙㻢㻚 㻥㻤㻠 㻖㻖 㻞㻚 㻠 㻥 㻤 㻝㻚 㻤 㻞㻠 㻔㻜㻚 㻝㻢㻢 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻡㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻠㻜㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻠㻜㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻟㻝 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻜㻤 㻕 㻔㻟㻚 㻟㻟㻣 㻕 㻔㻟㻚 㻝㻜㻢 㻕 㻔㻝㻚 㻣㻠 㻜 㻕 㻔㻝㻚 㻡㻣㻥 㻕 㻯㻰 ⥲㢠ቑຍ ⋡ 㻜㻚 㻜㻜 㻝 㻜㻚 㻜㻜 㻜 㻙㻜㻚 㻜㻜 㻤 㻙㻜㻚 㻜㻜 㻝 㻜㻚 㻜㻜 㻠 㻜㻚 㻜㻜 㻜 㻙㻜㻚 㻜㻜 㻞 㻜㻚 㻜㻜 㻜 㻜 㻚㻜㻜 㻡 㻙 㻜㻚 㻜㻜 㻞 㻔㻜㻚 㻜㻜㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻤 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻡 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻢㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻠 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻟 㻟 㻕 㻔㻜 㻚㻜㻜㻞 㻕 ᰴ౯ቑຍ ⋡ 㻙㻜㻚 㻜㻞㻥 㻖㻖 㻙㻜㻚 㻜㻟㻜 㻖㻖 㻙㻜㻚 㻜㻟㻢㻝 㻖㻖 㻙㻜㻚 㻜㻟 㻞 㻙㻜㻚 㻜㻝 㻜 㻙㻜㻚 㻜㻜 㻞 㻙㻜㻚 㻝㻞 㻞 㻙㻜㻚 㻜 㻠 㻢 㻜㻚 㻜 㻠 㻝 㻜㻚 㻜 㻠㻠 㻔㻜㻚 㻜㻝㻡 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻝㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻟㻡 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻟㻞 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻤 㻕 㻔㻜㻚 㻜㻜㻣 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻥㻠 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻣㻞 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻡 㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻟㻤 㻕 ㈨⏘ቑຍ ⋡ 㻙㻜㻚 㻡㻠㻜 㻖 㻙㻜㻚 㻠㻠 㻜 㻝㻚 㻤㻜㻝 㻖㻖㻖 㻝㻚 㻞㻥㻤 㻖㻖 㻙㻜㻚 㻜㻡 㻤 㻜㻚 㻜㻝 㻥 㻡㻚 㻢㻥 㻥 㻠㻚 㻢㻝 㻢 㻠㻚 㻜 㻢 㻢 㻠㻚 㻟 㻡㻥 㻔㻜㻚 㻞㻤㻝 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻡㻞 㻕 㻔㻜㻚 㻣㻜㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻢㻝㻟 㻕 㻔㻜㻚 㻞㻜㻜 㻕 㻔㻜㻚 㻝㻢㻡 㻕 㻔㻡㻚 㻢㻢㻝 㻕 㻔㻡㻚 㻞㻜 㻣 㻕 㻔㻞㻚 㻥 㻡㻝 㻕 㻔㻞㻚 㻢 㻠㻡㻕 㼍㼐 㼖㻌 㻾 㻞 㻙㻜㻚 㻜㻡 㻞 㻜㻚 㻜㻝 㻣 㻙㻜㻚 㻜㻝 㻥 㻜㻚 㻜㻝 㻟 㻜㻚 㻞㻟 㻢 㻜㻚 㻞㻤 㻝 㻜㻚 㻜㻥 㻤 㻜㻚 㻜㻝 㻞 㻙 㻜㻚 㻜㻣 㻟 㻜 㻚㻜㻜㻠 ほ ᩘ 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣㻜 㻞㻣 㻜 㻞㻣 㻜 䝃䞁 䝥 䝹ᮇ㛫 㻲㻝 㻜㻚 㻢㻥 㻢 㼇㻜㻚 㻥㻠㻣 㼉 㻜㻚 㻤㻡 㻠 㼇㻜㻚 㻣㻡㻢 㼉 㻜㻚 㻤㻝 㻠 㼇㻜㻚 㻣㻥㻠 㼉 㻝㻚 㻠㻣 㻣 㼇㻜㻚 㻜㻞 㻢 㼉 㻜㻚 㻢 㻢 㻣 㼇㻜㻚 㻥 㻢㻠㼉 㻲 㻞 㻝㻡㻚 㻢㻝 㻡 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻟㻚 㻢㻟 㻜 㼇㻜㻚 㻜㻜㻡 㼉 㻣㻚 㻠㻢 㻝 㼇㻜㻚 㻜㻜㻜 㼉 㻞㻚 㻢㻤 㻡 㼇㻜㻚㻜 㻜㻤 㼉 㻞 㻚㻞㻣 㻣 㼇㻜 㻚㻜㻞㻟 㼉 㻲 㻟 㻜㻚 㻣㻤 㻣 㻝㻚 㻥㻡㻠 㻖㻖㻖 㻜㻚 㻥㻞 㻜 㻝㻚 㻣㻞 㻢 㻝㻚 㻣㻞㻢 㻖㻖㻖 㻝㻠㻚 㻜㻢㻞 㻖㻖㻖 㻝㻚 㻠㻣㻟 㻖㻖 㻝㻚 㻢㻠 㻜 㻜㻚 㻣㻜 㻠 㻝㻚 㻞㻝 㻡 㻴 㼍㼡㼟㼑㼙 㼍㼚㻌 㼀 㼑㼟 㼠 㻟㻚 㻥㻟 㻝 㼇㻜㻚 㻡㻡㻥 㼉 㻠㻚 㻜㻞 㻜 㼇㻜㻚 㻡㻠㻣 㼉 㻝㻞㻚 㻞㻡 㻡 㼇㻜㻚 㻜㻜㻟 㼉 㻤㻚 㻠㻞 㻣 㼇㻜㻚 㻝㻟㻠 㼉 㻠 㻡㻚 㻡 㻣 㻥 㼇㻜㻚 㻜 㻜㻜㼉 ᭷ពỈ‽ 㻖㻖㻖 䛿 㻝 䠂௨ෆ䚸 㻖㻖 䛿 㻡 䠂௨ෆ䚸 㻖 䛿 㻝㻜 䠂 ௨ ෆ 䛷 䛒 䜛 䚹 㻔 㻌㻌 㻕ෆ䛿 䚸 ᆒ୍ศᩓ䜢 ⪃៖䛧 䛯 ᶆ‽೫ᕪ䛾 ୍⮴᥎ᐃ㔞䛷 䛒 䜛䚹 㻞㻜㻜㻣㻙㻞㻜㻝㻢 㻞㻜㻜㻣㻙㻞㻜㻝㻢 㻞㻜㻜㻣㻙㻞㻜㻝㻢 㻞㻜㻜㻣㻙㻞㻜㻝㻢 㻞㻜 㻜㻣㻙 㻞㻜㻝㻢 㻮 㻵㻿 ⮬ᕫ㈨ᮏẚ⋡ኚ ⋡ Ⰻമᶒẚ⋡ኚ⋡ ⤒㈝⋡䛾ኚ⋡ 㻾 㻻 㻱 䛾ኚ⋡ ὶື ᛶẚ ⋡䛾ኚ ⋡ ⾲ 7 䚷 ᕷሙ䛛䜙 䛾ᙳ㡪䛻 㛵䛩 䜛 ᥎ィ⤖ᯝ 䠄ฟᡤ䠅➹⪅సᡂ
影響を補うためにも、金融監督当局による銀行検査により、金融システムの安 定及び銀行の健全性を担保する必要があるかもしれない。
6. まとめ
金融庁による検査基準やその手法が見直され、さらにバーセルⅢにより銀行 のリスクテイクに対する自己資本の強化を求められている中、銀行業において 市場規律が機能しているのかどうかを検証しておくことは、それらの必要性と その手法を考える上で必要なことであろう。そのため、銀行業における市場規 律について本稿では実証分析を試みた。 まず、銀行業における市場規律には2つ考えられる。すなわち、①市場からの監視(Market Monitoring)と、②市場からの影響(Market Influence) である。本稿では、預金者の行動として預金量を、株主の行動として株価(時 価総額)を用いて分析を行った。その結果、①の市場からの監視については、 データを用いた分析結果より確認することが出来た。 次に、②の市場からの影響についての分析を行った。その結果、預金銀行の リスクの高まりを指摘されている銀行の経営者は銀行の財務状況が改善するよ うな行動をとっていることが一部で確認された。すなわち、市場による影響が 一部ではあるがデータから明らかになった。しかし、それが十分なものとは言 うことは分析結果からは難しいかもしれない。この結果は、金融監督当局によ る監督やバーセルⅢに基づく銀行のリスクテイクに関する規制の強化の必要性 をみることが出来る。 本稿では銀行(都銀と地銀)に絞って分析を行い、信金や信組は分析に含 めていない。これは、信金や信組は各地域に根付いた金融活動を行っており、 人口減少が続く地方では、たとえ、信金や信組の経営者が財務状況を改善した いと考えても、地域経済の状況から判断して、そのようなことが出来ないケー スも考えられるからである。しかし、この点は、まだ十分に議論する余地があ る。さらに、先行研究に従い経営者の行動については実証分析に主眼を置いて 行ってきたが、そのモデルについては、十分な検討が出来ていない。また、ダ イナミックパネル分析をデータ数等の関係から行っておらず、分析手法も改善
の余地がある。これらの点については、精査の余地があり、今後の検討課題と したい。 参考文献 永田 邦和(2011)「信用金庫の競争環境と市場規律」『経済学論集』(鹿児島大学)、 第 77 号、pp.41-55。 永田 邦和(2014)「金融機関の店舗と預金市場の市場規律」『経済学論集』(鹿児 島大学)、第 83 号、pp.105-123。 細野 薫(2002)「何が銀行を規律付けるのか?」『名古屋市立大学経済学会ディス カッション・ペーパー』、第 315 号。 前多 康男(2009)「わが国の金融市場における市場規律の活用の可能性について」 『金融研究』、第 28 巻第 1 号、pp.23-46。 拙出(2012)「銀行と市場規律」『生活経済学研究』(生活経済学会)、第 36 巻、pp.1-18。 Bliss, R.R. and M.J. Flannery.(2002)“Market Discipline in the Governance
of U.S. Bank Holding Companies: Monitoring vs. Influencing”, European
Finance Review, 6(3), pp.361-395.
Bremer, M. and R.H. Pettway.(2002)“Information and the Market Per-ceptions of Japanese Bank Risk”, Pacific Basin Financial Journal, 10, pp.119-139.
Calomiris, C. and D. Wilson.(1998)“Bank Capital and Portfolio Manage-ment: The 1930s Capital Crunch and Scramble to Shed Risk”, NBER
Working Paper, 6649.
Demirg¨u¸c-Kunt, A. and E. Detragiache.(2000)“Does Deposit Insurance In-crease Banking System Stability? Emprical Investigation”, IMF Working
Paper, 00/03.
Flannery, M.J.(1998)“Using Market Information in Prudential Bank Super-vision: A Review of the U.S. Empirical Evidence”, Journal of Monetary
Economics, 30, pp.481-502.
Fueda, I. and M. Konishi.(2007)“Depositors’ Response to Deposit Insurance Reforms: Evidence from Japan, 1990-2005”, Journal of Financial Services
Research, 31, pp.101-122.
Gilbert, A.R., Meyer, A.P. and Vaughan, M.D.(2003)“Can Feedback from the Jumbo-CD Market Improve Bank Surveillance?”, FRB of St. Louis
Hall, J.R., King, T.B. Meyer., A.P. and M.D. Vaughan.(2002)“Did FDICIA Enhance Market Discipline on Community Banks?”, FRB of St. Louis
Working Paper, 2002/04.
Hori, M., Y. Ito. and K. Murata.(2005)“Do Depositors Respond to Bank Risks as Expected?”, ESRI Discussion Paper, 151.
Hosono, K.(2002)“Market Discipline and Forbearance Policy to Banks”,
Discussion Paper Series in Economics (Nagoya City University), 339.
Jagtiani, J. and C. Lemieux.(2002)“The Effect of Credit Risk on Bank and Bank Holding Company Bond Yields: Evidence from the Post-FDICIA Period”, Journal of Financial Research, 25(4), pp.559-575.
Kobayashi, A.(2007)“Market Discipline by CD Holders”, International
Fi-nancial Review, pp.471-495.
Martinez-Peria, M.S. and D.S. Schmuckler.(2001)“Do Depositors Punish Banks for Bad Behavior? Market Discipline, Deposit Insurance, and Bank-ing Crises”, Journal of Finance, 56(3), pp.1029-1051.
Murata, K. and M. Hori.(2006)“Do Small Depositors Exit from Bad Banks? Evidence form Small Financial Institutions in Japan”, The Japanese
Eco-nomic Review, 57(2), pp.260-278.
Park, S.(1995)“Market Discipline by Depositors: Evidence from Reduced-Form Equations”, Quarterly Review of Economics and Finance, 35, pp.497-514.
Tsuru, K.(2003)“Depositors’ Selection of Banks and the Deposit Insurance System in Japan: Empirical Evidence and its Policy Implications”, RIETI
Discussion Paper Series, E24.
Yamori, N.(1999)“Stock Market Reaction to the Bank Liquidation in Japan: A Case for the Information Effect Hypothesis”, Journal of Financial