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ITをイネーブラとするプラットフォーマ学会を目指す:若手やんちゃ枠も作りたい -会長就任にあたって-

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Academic year: 2021

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(1)巻頭言. IT をイネーブラとする プラットフォーマ学会を目指す: 若手やんちゃ枠も作りたい ─会長就任にあたって─ 喜連川 優 情報処理学会会長/国立情報学研究所・東京大学. 第 27 代会長を拝命いたしました喜連川優でござ. 動きを自由に意見交換する場,共に課題を考える場. います.歴史ある本会の会長を務めさせていただく. は大変貴重であり,学会の本質的必要性は明らかと. ことは大変身の引き締まる思いです.. 思います.敢えて,コンピュータになぞらえますと,. 全情報分野をカバーする学会の必要性 を考える. 単位コミュニケーション当たりの消費電力は単位計 算当たりの消費電力に比べて圧倒的に大きく,専門 が異なる人々が効率よく会話する場を実現すること. 本会に限らず学会の会員数が低迷する中,学会そ. は実は非常に難しく,学会という場の役割はとても. のものの価値が問われてきているかと存じます.創. 重要と考えます.. 成時とは大きく異なる現在の学会の置かれた状況下 において, まずその点について考えたいと思います.. IT 全体の先端感を踏まえてバランスのとれた意 見を社会に対して表明する主体. 648. 領域の拡大によって今求められるようになった. 情報技術の進展は言うまでもなく著しく速く,専. 多様な専門分野の研究者の意見交換の場. 門家にとっても先端の感覚を維持することは容易で. 情報学における研究分野は学会創設以来大きく拡. はありません.技術には常に明と暗,dual use の問. 大してきました.図 -1 に本会における研究会の推. 題があります.社会に対して,正しい意見を発信し. 移を示します.およそ 40 近い研究分野が生まれて. てゆくことは大変重要ですが,情報技術全般を見渡. きており,その過程で名称の変更なども機動的にな. してバランスの良い意見を述べられるのは本会のよ. されてきたことが分かります.図 -2 に ACM にお. うにほぼすべての情報領域の研究者を擁している学. ける SIG(Special Interest Group)の推移を示しま. 会ならではと考えます.学会は中立的な立場におい. すが,現時点での総数は概ね同じです.私が大学院. て,政府や社会に積極的に発言する主体でなくては. 学生であった昭和 50 年代前半には東大電気・電子. ならず,情報学あるいは IT 全体を見た発言が期待. 工学科にはコンピュータを対象とする講座は 1 つ. されるところです.. しかありませんでした.今日,これほどの広がった. 私が副会長の折,スーパーコンピュータの仕分け. 分野すべてを 1 つの大学でカバーすることは不可能. に関して意見を述べることが求められ,深夜 3 時ま. であり,企業においても,全分野の先端を見渡して. で当時の佐藤三久理事とその文案を議論したことが. いることは困難と言えます.そのような中で,広く. 懐かしい思い出です.大きな学会が社会にメッセー. IT 分野をカバーして活躍する学会員がその先端の. ジを発信する際には,慎重でなくてはなりません.. 情報処理 Vol.54 No.7 July 2013.

(2) IT をイネーブラとするプラットフォーマ学会を目指す:若手やんちゃ枠も作りたい ─会長就任にあたって─. 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013. コンシューマ・デバイス&システム CDS セキュリティ心理学とトラスト SPT 情報セキュリティ心理学とトラスト 教育学習支援情報システム(Gr) 教育学習支援情報システム CLE 組込みシステム EMB 組込みシステム(Gr) バイオ情報学 BIO エンタテインメントコンピューティング EC 放送コンピューティング(Gr) デジタルコンテンツクリエーション DCC 情報セキュリティ心理学とトラスト(Gr). 情報家電コンピューティング 知的都市基盤(Gr). ユビキタスコンピューティングシステム ゲーム情報学 高度交通システム コンピュータセキュリティ. UBI GI. ITS CSEC EIP 電子化知的財産・社会基盤 モーバイルコンピューティング(Gr) モバイルコンピューティングとワイヤレス通信 モバイルコンピューティングとユビキタス通信 MBL モーバイルコンピューティング MPS 数理モデル化と問題解決 高度道路交通システム(Gr). 30. 電子化知的財産・社会基盤(Gr). 研究会数. EVA システム評価(Gr) システム評価 QAI 高品質インターネット(Gr) 高品質インターネット インターネットと運用技術 DSM 分散システム運用技術(Gr) 分散システム運用技術 分散システム/インターネット運用技術 音声言語情報処理と音声入力装置(Gr) 音声言語情報処理 グループウェア(Gr) グループウェア グループウェアとネットワークサービス テクニカルコミュニケーション(Gr) デジタル・ドキュメント オーディオビジュアル複合情報処理(Gr). オーディオビジュアル複合情報処理. 情報メディア 音楽情報科学(Gr). 音楽情報科学 人文科学とコンピュータ. 20. アルゴリズム. IOT SLP GN DD AVM IM MUS CH AL. 情報基礎とアクセス技術 IFAT 情報システムと社会環境 IS ハイパフォ-マンスコンピュ-ティンク HPC ヒューマンインタフェース ヒューマンコンピュータインタラクション HCI. 情報学基礎 情報システム 数値計算(委) 日本文入力法(委) 日本文入力方式. 数値解析 文書処理とヒューマンインタフェース. 日本語文書処理. 総合CAD/CAM コンピュータ・グラフィクス. SYM 記号処理(委) ソフトウェア工学(委) MIC マイクロコンピュ-タ 計算機アーキテクチャ 計算機ア-キテクチャ・マイクロコンピュ-タ 医療情報処理 医療情報学. 10. システム評価 システム性能評価. PRG プログラミング-言語・基礎・実践. マイクロコンピュ-タとワ-クステ-ション. オペレーティング・システム. データベース・システム 設計自動化. 電子装置設計技術. 人工知能と対話技法 情報処理教育委員会 情報処理専門教育委員会 教育調査委員会. マン・マシン・インターラクション(委) マン・マシン・システム. 教育調査研究委員会 計数言語学(委). 人工知能と対話技法. 人工知能. 計算言語学. ARC. システムソフトウェアとオペレーティンク・システム コンピュータビジョンとイメージメディア マルチメディア通信と分散処理 データベースシステム システムLSI設計技術 知能と複雑系 知能システム コンピュ-タと教育. コンピュータビジョン. 分散処理システム データベース管理システム. データ・ベース. SE 計算機アーキテクチャ. コンピュータ・ネットワーク(委) コンピュータ・ネットワーク. 計算機設計自動化(委) 計算機設計自動化 電子装置設計技術(委). PRO. プログラミング. ソフトウェア工学. 計算機システムの解析と制御 計算機システムの制御と評価. イメージ・プロセッシンク(委) イメージ・プロセッシンク. CG. グラフィクスとCAD. プログラミング言語 PL SF ソフトウェア基礎論(委) ソフトウェア基礎論 記号処理. 自然言語処理. MED OS CVIM DPS DBS SLDM ICS CE NL. 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013. 図 -1 情報処理学会における研究会の推移 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013. 30. Hypertext and Hypermedia. Ada Programming Language Computer-Human Interaction Security, Audit and Control Software Engineering. Software Engineering (SIC). 20. High Performance Computing Bioinformatics SPATIAL Genetic and Evolutionary Computation Information Technology Education Embedded Systems Electronic Commerce Knowledge Discovery in Data Mobility of Systems Multimedia Hypertext and the Web Applied Computing. CHI SAC. SIG数. Design of Communication Computer Architecture Measurement and Evaluation (SIC) File Description and Translation Computers and the Physically Handicapped (SIC) Microarchitecture (SIC). 10. Measurement and Evaluation Management of Data Computers and Society Computers and the Physically Handicapped Simulation and Modeling Microarchitecture Computer Science Education Algorithms and Computation Theory Programming Languages. Computer Graphics (SIC) Data Communication (SIC). Accessible Computing. Computer Graphics and Interactive Techniques Data Communication Symbolic and Algebraic Manipulation Artificial Intelligence Operating Systems. Time-Sharing (SIC) Design Automation (SIC). Design Automation University and College Computer Services Business Data Processing. Information Retrieval Business Information Technology. HPC Bioinformatics SPATIAL EVO ITE BED ecom KDD MOBILE MM WEB APP Ada. Management Information Systems. SOFT DOC ARCH METRICS MOD CAS ACCESS SIM MICRO CSE ACT PLAN GRAPH COMM SAM ART OPS DA UCCS IR MIS. 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013. 図 -2 ACM における SIG の推移. バランスのとれた意見を取りまとめるには手間とエ. 力は著しく増大しています.次々に新サービスが生. ネルギーが必要となります.一人では困難なことが. まれる居心地の良い仮想世界を維持するコストが無. 多くの会員の力を合わせることで可能になると確信. 視できない時代も遠くないかもしれず,今後,時に. します.たとえば,巨大データセンタの消費する電. は従来路線に警鐘を鳴らすことが不可欠な場合もあ. 情報処理 Vol.54 No.7 July 2013. 649.

(3) るかもしれません.. はないかもしれません.一方で我が国において日本 情報システム・ユーザ協会(JUAS)はとても元気で,. IT 外のステークホルダとの会話主体. 増大傾向にあると伺っております.ユーザが IT の. 本 稿 執 筆 時 点 で は, ビ ッ グ デ ー タ, ス マ ー ト. 体験を語り合う場は盛り上がるのかもしれません.. XX,IoT,サイバーフィジカルシステム等が先端. 本会の今後の方向として次のようなことを考えてお. の IT 用語として注目を集めています.表現は微妙. ります.. に異なるものの方向感はほぼ同じです.共通して言 えることは,従来のような局所最適化ではなく,大. やんちゃな若手枠. きな課題の解決を目指そうとしている点で,IT 業. 2010 年に本会 50 周年記念全国大会の組織委員長. 界にとどまらない他のステークホルダとの意思疎通. を仰せつかりました.多くの方々のご支援により多. が不可欠となって参ります.このような潮流の中に. 様な企画が練られ,その結果 7,250 人という突出し. あって,IT サイドも非常に多分野にわたり総合的. た参加者数が得られましたが,その中で最も印象的. なデザイン力が求められ,全分野を擁する規模の大. でしたのは後藤真孝氏(産総研)が企画した「CGM. きな本会の役割はきわめて大切と言えましょう.. の現在と未来:初音ミク,ニコニコ動画,ピアプロ の切り拓いた世界」です.会場への参加者もきわめ. 情報学における教育内容,人材育成を議論す. て多く,加えてオンライン参加が抜きん出ていまし. る場. た.若手世代に企画をお願いするととんでもない. 学生の質保証の議論がなされる中で,情報系の学. ことが起き得ることを実感しました.私は当時 50. 生が体得すべき基本的な素養に関する検討はきわめ. 周年だからと女性初のチューリング賞受賞者 Fran. て重要です.多様な分野から構成され,しかもその. Allen 氏の招待に奔走しましたが,若者の最大の関. 対象領域が急速に変化する情報学においては,学会. 心事の 1 つは初音ミクでした.まったく想定外でし. が学問体系の整理に果たす役割は大変大きいと考え. た.シニアな層の考えには限界があると感じます.. ます.人材育成は長らく課題となっており,本会. 本会ももっと何事にも「若手枠」を作り,闊達な場. は多くの努力をしてきているものの,この問題は. をどしどし提供し,若手にやんちゃな試みをしてい. なかなか手強く,容易に解決できるものではなく,. ただくのが良いように感じます.そこから次の世代. 不断の努力が不可欠と考えます.たとえば,10 年. の研究者が求める学会像の本質が見えるかもしれま. 後の会長が本稿で MOOC(Massive Open Online. せん.. Course)をどのように取り上げられるか今から楽 しみです.. プラットフォーマを目指す 若手にすべてを押し付けておしまいというわけに. 本会はどう成長すべきでしょうか?. は当然いきません.方向感としましてはプラットフ ォーム化を考えております.学会は多様な機能を有. 650. 上述のように情報系のほぼ全分野をカバーする本. しておりますが,研究成果としての論文をパブリッ. 会の意義は大変大きいと考えますが,学会の会員は. シュする主体としての存在がきわめて大きいものと. 減少を続けています.もっとも,IEEE における最. 言えます.国際会議論文査読支援システムの機能は. 大のソサィエティは Computer Society ですが,こ. 短期間に飛躍的に進歩しました.学会のビジネスフ. の 4 年で約 1 万人減少していると聞きます.グロ. ローの IT 化に自ら率先して取り組むペインドリブ. ーバルな IEEE Computer Society ですら会員が減. ン(pane driven)な発想も重要と感じます.学会. 少している中で本会が会員増強をすることは容易で. はそれぞれに個性が強くマルチテナント化が難しい. 情報処理 Vol.54 No.7 July 2013.

(4) IT をイネーブラとするプラットフォーマ学会を目指す:若手やんちゃ枠も作りたい ─会長就任にあたって─. Domain IPSJ SIG CS. SIGWEB SIGUCCS SIGSPATIAL SIGSOFT SIGSIM SIGSAM SIGSAC SIGPLAN SIGOPS SIGMOD SIGMOBILE SIGMM SIGMIS SIGMICRO SIGMETRICS SIGKDD SIGITE SIGIR SIGHPC SIGGRAPH SIGEVO SIGecom SIGDOC SIGDA SIGCSE SIGCOMM SIGCHI SIGCAS SIGBio SIGBED SIGART SIGARCH SIGAPP SIGAda SIGACT SIGACCESS. ACM SIG. DBS. 3. SE. 4. ARC. 4. 2. 1. 1. 2. 3. 4. 2. 5. OS 2. 6. 1. HPC. 1. PRO. 1. AL. 1. 2. MPS. 3. 1. EMB. 4. 2. 3. 4. 1. DPS. 1. HCI. 1. 1. 1. 1. CG. 1. IS IFAT. 1. 1. SLDM. IE. 5. 3. 1. 1. 1. 1. 1. 1. AVM GN. 1. 1. DD. 1. MBL. 1. CSEC. 1. 1. 1. 1. ITS EVA. 1. 1. UBI. 1. IOT. 1. 1 1. 1. SPT. 1. CDS. 1. DCC MI. 図 -3 本会研究会と ACM における SIG の関係. 1. NL. 1. ICS. 1. 2. 2. CVIM. 2. 1. CE. 1. 本会大沢英一理事に取りまとめていた だいたもので,表中の数字は情報処理 学会の研究会から見た場合における ACM の SIG の関連度合い(数字が小さ いほど,すなわち緑色が濃いほど関連 性が強い)を示す.また青は互いに対 応するものがないことを意味し,両学 会の研究活動の差異が汲みとれる.. 1. CH MUS. 1. SLP. 1. EIP. 1. GI EC BIO. 1. CLE. 1. との見解はそれとして,一歩一歩の努力が不可欠と. 構築できればすばらしいと感じます.ボランティア. 考えます.大学研究者はどちらかといいますと巨大. のエコシステムとでも言うべきでしょうか.. なコード開発の経験が希薄ですが,本会会員の半数. ▪▪▪. 以上が企業会員です.Obama for America でのシス. 21 世紀は IT によって人と人がつながるソーシャ. テム開発のように,多くの専門家が協力できるので. ルな時代,モノがつながる時代となりました.この. はないでしょうか.先端的 IT がイネーブラとなる. 大きな変化を研究の対象として見るだけではなく,. 学会こそが本会の本来の姿であり,リッチメディア. 学会がどうその変化の波に乗るかという視点でも考. 論文サービスを始めとし,圧倒的に強力なプラット. えてゆきたいと思います.会員皆様のご支援,ご. フォーマとしての学会を本会が目指すことは至極自. 協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げ. 然と感じる次第です.. ます. (2013 年 5 月 12 日). ボランティアエコシステム 会員の活動は原則ボランティアであることは言う までもありません.上述のプラットフォームを作る. 喜連川優(正会員)[email protected]. にも潤沢な資産があるわけではありません.重要な. 1983 年東京大学工学系研究科情報工学専攻博士課程修了,工博. 東京大学生産技術研究所教授,東京大学地球観測データ統融合連携研 究機構長,2013 年 4 月より国立情報学研究所所長.データベース工 学の研究に従事.内閣府最先端研究開発支援プログラムを中心研究 者として推進中.本会功績賞,ACM SIGMOD E.F Codd Innovations Award 受賞.ACM,IEEE,電子情報通信学会ならびに本会フェロー.. トピックスを選び,機動的に問題を共有し会話する 場をモデレイトする仕組み,モデレータによる貢献 の真価を認め,フィードバックする仕組みをまずは. 情報処理 Vol.54 No.7 July 2013. 651.

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