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人工知能学会共同企画 -人工知能とは何か?:[エッセイ集]2.1 対話型ロボットの研究

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Academic year: 2021

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(1)■特集 人工知能学会共同企画─人工知能とは何か?. 基 応 専 般. 2. エッセイ集. 1 対話型ロボットの研究 石黒 浩(大阪大学/ ATR) 対話型ロボット. トとして普及.  ディープラーニングによって最も実用的になった. させることを. 技 術 の 1 つ が 音声 認 識 である. 特 に,Google や. 目標としてい. Apple のスマートフォンの音声認識は,従来の音声認. た.今ではも. 識に比べて格段に精度が良くなった.この音声認識の. う少し高い値. 技術を背景に,新たな人工知能ブームが生まれ,そ. 段で売られて. の人工知能ブームは人と知的にかかわる対話型ロボッ. いるが,それ. トのブームを生みつつある.. でもロボット.  近年の対話型ロボットの中で,最も成功しているの. の性能から考えれば十分に安い.. は Amazon Echo. ☆1. であろう.ただ,Echo はロボッ.  その 20 万円程度の値段で売り出されているのが, ☆4. トと言うよりもスマートフォン用の音声認識デバイスと. シャープ(株)の RoBoHoN. いう方が正しい.. 異なり,手で持ち運べる小さいロボットである.携帯.  その Echo をもう少しロボットに近づけたのが MIT ☆2. である.Pepper とは. 電話程度の大きさで,もちろん携帯電話としても使う. にな. ことができる.バッテリーで動作できる時間の短さが. る.3 自由度しかないロボットであるが,工夫された. 問題ではあるが,小さいながらにも,歩いたり話した. 自由度の配置によって,感情豊かな表現ができるよ. りすることができ,人間型ロボットの基本的な機能を. うになっている.発想の背景には Breaseal 教授らの. おおむね備えている.. Affective Computing の研究がありそうだ..  Pepper と RoBoHoN のちょうど中間的な大きさを.  これらのロボットはどちらも米国で生まれ,現状の. 持つのが,ヴィストン(株)の Sota(図 -1 右)であ. メディアを無理なく延長したものとなっている.ロボッ. る.Pepper や RoBoHoN は,ユーザがソフトウェア. トというより入出力デバイスが,独立したものと考え. を入れ変えることで,多様な機能を実現できるパーソ. た方がよい.すでに一般的に利用されている,Blue -. ナルロボットとしての普及を目指しているが,Sota も. tooth スピーカやマイクの機能を拡張したものと考え. 同様である.Sota は Pepper や RoBoHoN に先駆け. られる.そのためか Amazon Echo 等はすぐに人々に. て,開発システムをオープンにしており,研究機関を. 受け入れられた.. 中心に徐々に使われ始めている.一方で,Pepper と.  一方,日本から発信される対話型ロボットは,人間. RoBoHoN はどちらも自律的に動き回ることを想定し. 型が多い.音声認識技術が進歩して最初に登場した. てデザインされているが,Sota はテーブルトップで利. の Breaseal 教授らによって開発された Jibo. のがソフトバンクグループ(株)の Pepper. ☆3. である.. 用するロボットであり,移動機能は持たない.その分,. Pepper は当初 20 万円程度の価格で販売することが. コストが安く 10 万円程度の値段で売られている.. 計画されていた.パソコンと同様の価格で,パソコン.  Sota に似たロボットに,JST ERATO 石黒共生ヒュ. と同様に誰もが手軽に利用できるパーソナルなロボッ. ーマンロボットインタラクションプロジェクトで開発さ. ☆1. https://www.amazon.com/Amazon-Echo-Bluetooth-Speaker-withWiFi-Alexa/dp/B00X4WHP5E ☆ 2 https://www.jibo.com ☆ 3 http://www.softbank.jp/robot/consumer/products/. 958. 図 -1 CommU(左)と Sota(右). 情報処理 Vol.57 No.10 Oct. 2016. れた CommU(図 -1 左)がある.CommU は Sota ☆4. https://robohon.com/.

(2) 2 エッセイ集…1 対話型ロボットの研究. と同様のテーブルトップロボットであるが,視線制御,. 話とは何か?」という問いに答える研究がほとんどな. 瞬き,口の開閉等があり,より表情豊かに対話できる. されてこなかったという点である.. ようになっている. CommU も近い将来の実用化を.  対話に関する研究テーマとしては以下のようなもの. 目指して開発が進められている.. が考えられる.. メディアとしてのロボット.  まず感情の使い方である.人間型ロボットは表情 や身ぶり手ぶりで感情を表現でき,それによって瞬時.  このような対話型ロボットは,物理的作業を行うロ. に他者と情報を共有できる. 「感情で何を伝え,言語. ボットとは異なり,人との間で情報のやりとりを行う. で何を伝えるか?」という問題について,対話の設計. 新たなメディアとして登場してきた.. 方法を確立する必要がある..  Amazon Echo は単なる音声デバイスの延長であり,.  次に,対話における理解の問題がある. 「対話にお. その意味で純粋音声メディアである.Jibo はそれに. いて相手はどれほど理解をしているのか?」 「対話と. ディスプレイと 3 つのモータを組み合わせて,人らし. はどれほどの深い理解を必要とするのか?」実際に筆. い体ではないものの,感情的表現を用いながら人と. 者の研究グループでは,ロボット 2 体と人間 1 人,合. かかわることができるメディアとなっている.Pepper,. 計 3 人で構成される社会的状況においては,ロボット. RoBoHoN,Sota,CommU は,人間と同様の体や. は人間の発話を理解しなくても,人間との間で簡単. 動きを持つ人間型ロボットメディアである.. な対話を続けることができることを発見し,その対話.  我々人間は常に人間に似たメディアを求めてきた.. のルールを特許申請している.. たとえば,Windows の質問に答えるエージェントなど,.  さらには, 「対話とはそもそも発話をする必要がある. CG を使ったディスプレイ上のエージェントである.し. のか?」という疑問もある.物理世界における対話では,. かしながらこれらのエージェントはいつの間にか姿を. 相手の存在感を感じ,自分の存在をアピールしながら. 消した.ユーザが人らしいエージェントを求める一方で,. 対話をすることは重要であるが,そのために,必ずしも. パソコンやスマートフォン等では,その使用目的が決. 自分が発話をする必要はない.対話のストーリーを自. まると,エージェントは邪魔になって使われなくなる.. らの意思で選択できれば,誰の声で話していても,そ.  しかし,人間の脳が人間を認識する多くの機能を. の対話を自分のものとして受け入れることができる.. 持つ以上,人間にとって理想的なインタフェースは人.  そして最後に重要なのは, 「人は対話においてその. 間であり,我々は新たな人間らしいメディアを再び求. ストーリーを自分で作り出しているか?」という問題で. める.その結果登場したのが,Pepper をはじめと. ある.多くの場合,誰かが生み出したストーリーの一. する人間型メディアとしてのパーソナルロボットである.. 部分を単に記憶し,再生しているに過ぎなかったりす. まだ,爆発的な普及に至っていないため,真に世の. る.ならば, 「ロボットはどのようにストーリーを取り. 中を変革するメディアとなるかどうかは分からないが,. 込み,管理し,人に提示すべきなのだろうか?」. その可能性は高そうである..  こうした対 話の本質にかかわる問題は,音声認. 対話とは何か?  対話型ロボット,パーソナルロボットの研究開発に おいて遅れている研究は,実は対話研究である.エ. 識の問題がある程度解決できるようになった今では, 対話型ロボットの実現において,より重要な問題とな ってきている.. (2016 年 6 月 27 日受付). ージェント研究においては,ある程度研究されてはい. 石黒 浩(正会員) [email protected]. るが,まだまだ十分ではない.ロボットの対話におい. 1963 年滋賀県生まれ.大阪大学大学院基礎工学研究科システム創 成専攻教授(特別教授) ・ATR 石黒浩特別研究所客員所長(ATR フェロ ー).工学博士.2011 年大阪文化賞(大阪府・大阪市)受賞.2015 年 文部科学大臣表彰受賞.. てボトルネックになっているのが,音声認識が重要で あるという考えを持つ研究者が多かったためか, 「対. 情報処理 Vol.57 No.10 Oct. 2016. 959.

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