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東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う当院のホールボディーカウンターの運用について

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Academic year: 2021

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原著論文

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う

当院のホールボディーカウンターの運用について

茄子川集1)、佐藤明弘1)、佐藤明彦1)、斉藤雅信1)、東英世2) 1) 国立病院機構仙台医療センター 放射線科 2) 国立病院機構弘前病院 放射線科 ≪抄録≫ 目的:東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を受けて、仙台市及び名取市に住む成人の内部被ば くをホールボディーカウンターで測定し評価を行ったので報告する。 方法:対象は、福島第一原発事故以前にホールボディーカウンターで測定を行い137Cs の内部摂取を認めな かった、仙台および名取市に住む成人12 名(男:女 9:3 34.5 ± 13.5 歳)であり、事故後 1 回以上ホール ボディーカウンターで内部被ばく量を測定している。評価は以下3 つについて行った。1) 体内計測室バック グランド中の131I、137Cs、60Co 計数率とスペクトルの推移を比較した。2) 福島第一原発事故前後における137Cs 預託実効線量の推移を比較した。3) 対象の体内137Cs 残留放射能の推移を比較した。 結果:1) 平成 23 年 3 月 25 日には、体内計測室内のバックグランドに放射性核種131I、137Cs、134Cs のエ ネルギーピークを確認した。2) 137Cs の内部摂取は対象 12 人中 7 人に認められた。預託実効線量の最小値は 1.1μSv/年、最大値は 5.0μSv/年を認めた。3) 対象 A、B、C はそれぞれ異なる残留放射能の推移を示して いた。対象A の137Cs 残留放射能は、平成 23 年 3 月 17 日に 255±49.6Bq で131I 132Te のエネルギーピー クも確認された。平成23 年 11 月 22 日に 73.3±34.8Bq であった。 結語:事故直後の内部被ばく測定で131I、132Te 134Cs137Cs のγ線エネルギーピークを確認し、1、2、 3 号機爆発に伴う放射性核種のフォールアウトが、仙台圏にもあったと推測された。ただし、対象者の預託実 効線量の最大値は0.073mSv/年と推定され、健康に影響を及ぼす可能性は極めて少ないと考える。 キーワード: ホールボディーカウンター 137Cs 内部被ばく (2012 年 1 月 27 日 原稿受領、2 月 10 日 採用) 1 緒言 当院は宮城県の緊急被ばく二次医療施設であり、 各種放射線計測器が整備されている。所有する放射 線計測器は、表面汚染や空間線量を測定するサーベ イメーターと、体内被ばくを測定するホールボディ ーカウンター(以下WBC)に大別される。 東京電力福島第一原子力発電所(以下福島第一原

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発)の事故以来、放射線障害に対する国民の不安が 募っており、特にCs による内部被ばくとその人体 に対する影響が注目されている。 当院は福島第一原発の事故以前より、女川原子力 発電所の事故を想定した訓練、原子力安全協会の定 期的な講習会、大学・大学院実習生の教育などで WBC を定期的に稼働させてきた。今回我々は、福 島第一原発事故前および事故後の双方でWBC 測定 を行った成人12 名を対象として、事故前後の137Cs 残留放射能の推移を評価するとともに、 MONDAL3(MONITORING TO DOSE CALCULATION ver.3.01)1)~9)137Cs 預託実効線 量を評価したので報告する。 2 方法 対象は、福島第一原発事故以前にWBC で測定を 行い137Cs の内部摂取を認めなかった仙台および名 取市に住む成人 12 名(男:女 9:3 34.5±13.5 歳)で、いずれも事故後に1 回以上(3 名は複数回) WBC で 137Cs の測定を行っている。事故以前の測 定は2003 年 7 月から 2010 年 10 月、事故後の測定 は2011 年 3 月から 11 月の間で行われている。 使用装置はWBC-301(日立アロカメディカル株 式会社)で、体幹部用WBC の仕様は、検出部 NaI(Tl) シンチレーションで検出器結晶体寸法 3×5×15 インチ、エネルギー分解能 7.7%(137Cs)である。校 正ファントムは、137Cs ブロックファントムを使用、 検出限界値10) 29.5Bq、相対誤差率 1.71%、測定再 現性0.3%11)で、WBC(in vivo カウンター)の性 能基準を定めた国際電気標準(IEC)のスペック12) をすべて満たしている。今回分析した137Cs の光電 ピークは 662keV (85.1%)13)で、測定エネルギー範 囲を590keV から 730keV に設定し、2 分間測定し た。評価は以下の3 点で行った。 (1)体内計測室バックグランド中の 131I、137Cs、 60Co 計数率とスペクトルの推移を評価した。(平成 (2)福島第一原発事故前後における137Cs 預託実 効線量の推移を評価した(平成15 年 7 月 26 日か ら平成23 年 11 月 18 日)。 預託実効線量は MONDAL3 Ver3.01(放射線医 学総合研究所製)を用い算定した。設定パラメータ は、放射性物質摂取した基準日を福島第一原発 1、 2、3 号機水素爆発後の平成 23 年 3 月 15 日とし、 公衆を対象とした場合の粒子径1μm、血中への移 行タイプにF(急速)を用いた14)。また、胃腸管吸 収モデルによる預託実効線量は、急性経口摂取と慢 性経口摂取の場合、あるいは呼吸から吸入される場 合と口から摂取される場合とでは異なるが、このう ち、計算値が最大となる急性に呼吸から吸入された 場合の預託実効線量を評価の対象とした。 (3)事故後の体内137Cs 残留放射能の推移を評価 した(福島第一原発事故前から平成23 年 11 月 29 日)。事故後複数回測定した 3 名について、137Cs 残留放射能の推移を評価した。 3 結果 (1)体内計測室バックグランド中の 131I、137Cs、 60Co 計数率とスペクトルの推移比較。 3 月 25 日に131I、137Cs の計数率が最大値となり、 その後137Cs の計数率は減少傾向であるが、平成 24 年1 月 10 日の測定でも事故前のレベルを越えてい る。事故前後で 60Co の計数率に変化は見られなか った(図1)。 事故後の3 月 25 日には、体内計測室内のバック グランドスペクトルに事故前には認められなかっ た、放射性核種 131I、137Cs、134Cs のエネルギーピ ークを認めた(図2)。131I は 3 月 25 日と 4 月 8 日の 測定でピークを認めたが、5 月 3 日の測定では検出 限界値以下となっていた。

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図1 体内計測室バックグランド中の131I、137Cs、60Co 計 数率推移 平成12 年から平成 24 年のバックグランド測定 日と1 分間当たりの計数値との関係 図2 体内計測室内バックグランドスペクトルの推移 平 成22 年 9 月から平成 23 年 5 月までの光子エネルギーと 1 分間当たりの計数値との関係。 (2)福島第一原発事故前後における137Cs 預託実 効線量の推移比較。 137Cs の内部摂取は対象の 12 人中 7 人(58%)に 認められた。この7 名中預託実効線量の最小値 1.1 μSv/年を示したのは、平成 23 年 6 月 14 日(91 日 後 ) に 測 定 し た 30 代 女 性 で 、 残 留 放 射 能 は 137Cs46.1Bq であった。一方最大値 5.0μSv/年は、 平成23 年 11 月 25 日(252 日後)に測定した 20 代男性で、残留放射能は137Cs 73.3Bq であった(図 3)。尚、全員から60Co は検出されなかった。 (3) 対象の体内137Cs 残存放射能の推移比較。 対象A、B、C はそれぞれ異なる残留放射能の推 移を示していた。すなわちA は事故後にピークを形 成し、その後漸減した。B は 50Bq で平坦化してお り、C はいずれの測定でも検出限界値以下であった (図4)。 図3 福島第一原発事故前後における 137Cs 預託実効線量 の推移 図4 対象A、B、C 体内137Cs 残存放射能の推移の比較 対象A の137Cs 残留放射能は、平成 23 年 3 月 17 日に255±49.6Bq、平成 23 年 11 月 22 日に 73.3 ±34.8Bq であった(図5)。なお、平成 23 年 3 月 17 日の測定では、131I 132Te、137Cs のエネルギーピ ークも確認された。

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図5 対象A の体内137Cs 残留放射洗能(正味係数率)の 推移 光子エネルギーと正味計数率(対象測定計数率-バッ クグランド計数率)の関係。 4 考察 (1)体内計測室バックグランド中の 131I、137Cs、 60Co 計数率とスペクトルの推移比較 当院のWBC 測定器の周囲は体幹部座位型で、体 幹部検出器コリメータ部(検出器背面)8cmPb、そ の他の部分(被験者正面)3 から 5cmPb、甲状腺モ ニターは 1.5cmPb で遮蔽されている。しかし、当 院の体内計測室内は構造上屋外と空調が遮断され ていないため、事故直後各種の放射性核種により汚 染されていた(図2)。5 月 3 日のバックグランドス ペクトルから 131I のγ線エネルギーのピークは消 失しているが、137Cs と 134Cs のγ線エネルギーの ピークは残存している。福島第一原発の事故直後よ り放射性物質は日本各地の屋外・屋内はもちろん、 世界中各地に届いており、ほとんどの測定施設では バックグランドの上昇があったものと推定される。 平成23 年 3 月 25 日と平成 22 年 9 月 17 日のバッ クグランド計数率の差から、WBC 測定時の放射能 を推定する。137Cs の校正とバックグランド測定は ファントム形状と配列を同様にして行っている。同 じ換算定数を用いた場合、平成 23 年 3 月 25 日の WBC 測定時の 137Cs 放射能は約 85Bq と推定され る。通常の個人測定はバックグランド減算後、測定 値とされるが、測定場の放射能が検出限界値を超え は否定できない。今後も測定前後の定期的なバック グランド測定と、ピーキングは精度管理において必 須である。 (2)福島第一原発事故前後における137Cs 預託実 効線量の推移比較 福島第一原発事故以前に測定した対象12 名では、 放射性核種の体内摂取は認められていない。一方、 事故後対象の58%に137Cs の体内摂取が認められ、 137Cs 預託実効線量の最小値は 1.1μSv/年、最大値 5.0μSv/年であり、すべての食物に含まれるとされ る 40K のカウント数の数十分の一以下であること が確認された。少数のサンプル調査であるため、仙 台圏全域の安全性に言及することはできないが、本 調査症例の約40%では、事故後も体内の137Cs は検 出限界値以下であることもわかった。 137Cs 以外の核種では、事故直後の 3 月 17 日には 132Te(娘核種132I)や131I のピークも検出されてい た(Fig.5)。事故急性期に測定をした対象 2 名より 131I が検出されており、甲状腺ファントムと 131I Mock 線源で校正し預託実効線量を求めたところ、 最大値57μSv/年であった。この値は甲状腺の実効 線量限度規制値に比べると極めて小さい被ばく量 ではあるが、仙台圏においても事故当初は131I の影 響があったと考える。今回の WBC 測定では134Cs の校正線源がないために、134Cs の残留放射能を実 測できていない。平成23 年 10 月 20 日原子力安全・ 保安院発表による大気中への放射性物質の放出量 (Bq)試算値によると、134Cs の 137Cs に対する放出 量の比は1.2 倍15)で、134Cs の預託実効線量を137Cs 最大値より概算すると11μSv/年と推定される。以 上から対象における134Cs、137Cs、131I による内部 被ばく量の最大値合算は 0.073mSv/年と試算され る。これは、宇宙線や大地からの外部被ばくと空気 中の吸入や食物摂取からの内部被ばくを合わせた、 日本平均自然被ばく量 1.48mSv/年 16, 17, 18)の約 1/20 に相当し、また公衆の実効線量限度規制値 1mSv を十分に下回る数値となっている。低線量被

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致を見ないが、今回の対象者の内部被ばく量では健 康に影響を及ぼす心配は極めて少ないと考える。 (3)対象の体内137Cs 残留放射能の推移比較 残留放射能の推移は異なるパターンを示してい た。今回対象のA、B、C は当院放射線科の職員で ある。残留 Cs パターンが異なる原因として、Cs 大量降下時の屋外での吸入の違いと、その後の生鮮 食料品などの摂取量の違いが疑われ、対象A、B、 C の屋外での行動、通勤形態、摂取していた食べ物 の聞き取り調査を行った。当院の汚染状況について は、北側救急外来入口付近の空間線量率最大値が3 月13 日 20 時 30 分に 5.0μSv/h、後 3 月 15 日 21 時 00 分に 0.5μSv/h が測定されている(平成 24 年1 月 27 日現在(0.1μSv/h))。また、3 月 17 日に は当院敷地内の土壌からも131I132Te、137Cs が検 出されており、仙台圏のフォールアウトは 3 月 12 から15 日の 1、2、3 号機水素爆発に伴い、3 月 13 日から16 日であったと推測される。対象 3 人の通 勤形態は、A、B が自転車と自動車併用、C は自動 車であった。B、C は屋外で常時マスクを着用し、 特にC は、フォールアウト時ほとんどの時間病院内 で過ごし屋外に出ることは少なかった。摂取してい た食物についてA、B は現在に至るまで生鮮食品の 摂取がC よりも多く、C は当時より病院から配給さ れる保存食品や加工食品の食事が中心になってい た。生鮮食品の購入において、A、B、C 全員特に 産地を選んではいなかった。対象A の福島第一原発 事故当時137Cs 残留放射能は、生物学的半減期(100 日)に従うように11 か月後には約 35%にまで減少 しており、A の被ばくは急性期の吸入被ばくが主体 であった可能性が高い。一方B の被ばくは、慢性的 に食物などから少量のCs が摂取されている可能性 が疑われる。ただし、いずれの被ばく量も既に述べ た様に健康に影響する量を大きく下回っている。し かし、今後も食物や環境から慢性的に体内に取り込 まれることが予想されるので、定期的なWBC によ る残留放射能測定を行い、仙台圏の内部被ばくの状 況を解析していくつもりである。 本研究の問題点としては、被験者の測定日時・間 隔に統一性がなかったことがあげられる。このため、 バックグランドを統一することができず、測定値が 低かった本症例群では、バックグランドの差が測定 結果に少なからず影響していた可能性は否定でき ない。また、被ばく早期に測定した対象が必ずしも 多くはなく、131I の評価については十分とは言えな い。しかしながら、本データは仙台圏の内部被ばく の状況を把握する上で貴重なものと考える。 5 結語 福島第一原発事故に伴い、当院のWBC でバック グランド及び人体に対して放射性核種の測定行い、 預託実効線量を評価した。事故直後の内部被ばく測 定で 131I、132Te134Cs137Cs のγ線エネルギー ピークを確認し、1、2、3 号機爆発に伴う放射性核 種のフォールアウトが、仙台圏にもあったと推測さ れた。ただし、対象者の預託実効線量の最大値は 0.073mSv/年と推定され、健康に影響を及ぼす可能 性は極めて少ないと考える。 6 文献

1) ICRP;ICRP Publication 66, Ann. ICRP,

24(1-3), Elsevier Science Ltd., Oxford (1994). 2) ICRP;ICRP Publication 30 Part1, Ann. ICRP,

2(3/4), Pergamon Press, Oxford (1979). 3) ICRP;ICRP Publication 30 Part2, Ann. ICRP,

4(3/4), Pergamon Press, Oxford (1981). 4) ICRP;ICRP Publication 30 Part4, Ann. ICRP,

19(3/4), Pergamon Press, Oxford (1988). 5) ICRP;ICRP Publication 56, Ann. ICRP, 20(2),

Elsevier Science Ltd., Oxford (1989). 6) ICRP;ICRP Publication 67, Ann. ICRP,

23(3/4), Elsevier Science Ltd., Oxford (1993). 7) ICRP;ICRP Publication 69, Ann. ICRP, 25(1),

Elsevier Science Ltd., Oxford (1995). 8) ICRP;ICRP Publication 71, Ann. ICRP,

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25(3-4), Elsevier Science Ltd., Oxford (1995). 9) ICRP;The ICRP Database of Dose

Coefficients: Workers and Members of the Public Ver.1, Elsevier Science Ltd.(1998). 10) 第 25 回原子力安全委員会資料第 6-2 号「環境 放射線モニタリング指針」の一部改訂について (案)原子力安全委員会;2010:p34 11) ホールボディーカウンター等の維持・管理等に おいて踏まえるべき事項について医分第26-2-2 号原子力安全委員会 原子力施設等防災専門部 会 被ばく医療分科会;2010:p3

12) Radiation protection instrumentation – in vivo counters– Classification, general requirements and test procedures for portable, transportable, and installed equipment. IEC 61582:2004;26-27 13) アイソトープ手帳 11 版 社団法人日本アイソ トープ協会;2011:p58-64 14) 緊急被ばく医療研究センター 被ばく線量評価 部 石榑信人(現在、名古屋大学所属)、松本雅 紀、仲野高志、榎本宏子 http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/RPD/mond al3j.php 25 Dec 2011 15) 原子力安全・保安院 解析で対象とした期間で の大気中への放射性物質の放出量の試算値(Bq) 2011/10/20 16) 高橋希之:放射線の影響はあなたしだい 生体機 能研究会;2006:p154 17) 大塚徳勝、西谷源展:Q&A 放射線物理 改訂 新版.共立出版株式会社;2007:p15 18) 第4 回医学物理コース 放射線防護 独立行政 法人放射線医学総合研究所 重粒子医科学セン ター 医療放射線防護研究所 西澤かな枝、赤 羽恵一 UNSCER2000:p5

参照

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