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A群レンサ球菌の産生するCAMP factor はRAW264.7 細胞の貪食能を低下させる

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Academic year: 2021

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学 位 研 究 紹 介

学 位 研 究 紹 介

【緒   言】

 A 群レンサ球菌 Streptococcus pyogenes は,小児に多 発する咽頭炎の起因菌として知られている。同菌は宿主 免疫細胞の機能を低下させる,もしくは組織への侵入お よび組織内増殖をサポートする病原因子を産生すること で感染を拡大させると考えられている。S. pyogenes が 産 生 す る CAMP factor は 黄 色 ブ ド ウ 球 菌 のβ -hemolysin による溶血作用を増強することが報告され ているが,免疫細胞に対する作用については明らかにさ れていない。そこで本研究は,マクロファージ系細胞に 対する CAMP factor の影響を解析した。

【方   法】

1.S. pyogenes における CAMP factor の発現解析  日本人患者由来の S. pyogenes M1 型(142 株,144 株, 466 株,SSI-9 株)および M3 型(SSI-1 株,TW3384 株, SSI-7 株 ,SSI-8 株)を Todd Hewitt Yeast Extract 培地 にて 20 時間培養し,菌体と培養上清における CAMP factor 発現量について特異抗体を用いて解析した。また, Ca2+,Mg2+あ る い は 5% CO

2存 在 下 で S. pyogenes

SSI-9 株を培養し,CAMP factor の発現量を調べた。 2 .マウスマクロファージ様 RAW264.7 細胞に対する

組換え (r) CAMP factor の作用解析

 RAW 細胞に rCAMP factor,熱処理をした rCAMP factor, お よ び 抗 CAMP factor 抗 体 に て 中 和 し た rCAMP factor を 37℃,24 時間,5% CO2条件下で作

用させた後,顕微鏡観察を行った。

3 .rCAMP factor の RAW 細胞に対する細胞傷害性の 検索

 RAW 細 胞 に rCAMP factor を 24 時 間 作 用 さ せ, propidium iodide による細胞染色,細胞内外における乳酸 デヒドロゲナーゼ量の測定,および MTT assay を行った。 4 .RAW 細胞の細胞周期に対する CAMP factor の影響  RAW 細 胞 に CAMP factor を 作 用 さ せ,Cell-Clock Cell Cycle Assay 試薬および蛍光顕微鏡にて,細胞周期 に与える影響を解析した。

5.RAW 細胞の貪食能に対する CAMP factor の影響  RAW 細胞に CAMP factor を 24 時間作用させた後に S. pyogenes SSI-9 株を1時間感染させ,RAW 細胞の貪 食能を測定した。また,CAMP factor を添加した RAW 細胞に貪食能力解析用蛍光試薬(pHrodo Red S. aureus bioparticles)を 30 分反応させ,RAW 細胞の貪食能を デンシトメトリー解析した。

【結   果】

 CAMP factor は,本実験で用いたすべての菌株にお いて発現した。また,1 mM Ca2+,5 mM Mg2+あるい は5% CO2存在下では,CAMP factor 発現の上昇が認 められた。

 rCAMP factor を作用させた RAW 細胞では細胞質で 空 胞 形 成 が 認 め ら れ( 図 1), こ の 空 胞 は rCAMP factor を加熱すること,および抗 CAMP factor 抗体に て 中 和 す る こ と に よ り 抑 制 さ れ た。 ま た,rCAMP factor の添加は RAW 細胞の propidium iodide 陽性細胞 率および細胞内外の乳酸デヒドロゲナーゼ量に影響を及 ぼさなかったことから,rCAMP factor は RAW 細胞に 対して外的傷害を惹起しないことが示された。しかしな がら,MTT assay にて細胞内の酵素活性を比色定量し

A 群レンサ球菌の産生する CAMP factor

は RAW264.7 細胞の貪食能を低下させる

CAMP factor of Group A

Streptococcus inhibits phagocytic

activity of RAW264.7 cells

新潟大学大学院医歯学総合研究科 微生物感染症学分野, 小児歯科学分野

黒澤 美絵

Division of Microbiology and Infectious Diseases & Pediatric Dentistry, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

Mie Kurosawa

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図1: CAMP factor による RAW 細胞の空胞化(Kurosawa et al. Microbes Infect 18 (2) : 118-27, 2016 改変)

(2)

新潟歯学会誌 46(1):2016 - 40 - 40 たところ,rCAMP factor 処理濃度に依存して吸光度の 値が低くなっており,かつ細胞数が有意に減少した。 rCAMP factor が細胞増殖を抑制することが示唆された ことから,細胞周期に与える影響について解析した。そ の結果,rCAMP factor 処理した RAW 細胞では G2 期 停止状態の細胞が多く観察された。また,G2 期停止状 態となり空胞を形成した RAW 細胞では,コントロール 細胞に比べて S. pyogenes の付着・侵入割合が有意に低 下していた。さらに,空胞を形成した細胞では pHrodo Red S. aureus bioparticles の取り込み量が約 70% 低下 した。このことより,CAMP factor が作用すると RAW 細胞の貪食能が低下することが示唆された。

【考察と結論】

 Ca2+,Mg2+あるいは CO

2存在下において S. pyogenes

SSI-9 株の CAMP factor 発現が上昇したことから,菌の 組織侵入時に CAMP factor の発現が増加することが示 唆された。また,空胞形成毒素の多くは細胞死を惹起す ることが報告されているが,CAMP factor は RAW 細 胞の細胞死を誘導することなく,空胞形成および貪食能 の低下を引き起こす。以上の結果より,CAMP factor

図2: S. pyogenes CAMP factor によるレンサ球菌感染症の 感染拡大に関する仮説 は RAW264.7 細胞に疑似食胞と考えられる空胞を形成 させることで,S. pyogenes に対する貪食能を低下させ ると推察した。そして,S. pyogenes の産生する CAMP factor はマクロファージ機能を低下させることにより, S. pyogenes の自然免疫からの回避および感染拡大に関 与すると考えられる(図2)。

参照

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