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ユビキタスコンピューティングの世界を実現する革新的ネットワーク技術:3.ユビキタスネットワーキングへの道

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(1)3 東京大学大学院新領域創成科学研究科. 東京大学大学院情報理工学系研究科. 森川 博之. 南  正輝. [email protected]. [email protected]. 東京大学大学院情報理工学系研究科. 青山 友紀. [email protected]. 「ユビキタスコンピューティング」や「どこでもコン. これらの言葉が示唆する将来のコンピューティング. ピュータ」といった言葉が示唆する世界への扉が今まさ. 環境の特徴として,3C everywhere と物理世界とのイン. に開こうとしている.デバイスの小型・高性能・省電. タラクションの 2 つを挙げることができる.3C every-. 力化,時間や場所を選ばずにインターネット接続がで. where と物理世界とのインタラクションとを支える基盤. きる小型無線端末,サービスのプラグ・アンド・プレ. 技術がユビキタスネットワーキング技術である.. イを実現する自動設定技術などがユビキタスへの原動 力となっている.本稿ではきたるべきユビキタス時代 に向け,特にユビキタスネットワーキングという観点. • Computing everywhere : PDA,携帯電話,モニタ,. からアプリケーションシナリオを示し,その技術課題. センサ,ロボット,車,ウェアラブルなどすべてのオ. について述べる.また,ユビキタスネットワーキング. ブジェクトにプロセッサが組み込まれる.現在でも,. の実現に向けたいくつかのアプローチについて述べる.. プロセッサの 98% は,デスクトップ/ラップトップコ ンピュータにではなく,家電製品,車,工業機械など にユーザには見えないかたちで組み込まれているとい. ●. われている.今後は,すべてのオブジェクトにプロセ ッサが埋め込まれるといっても過言ではない. • Content everywhere:ファイル,データ,アプリケー ユビキタスコンピューティング(Ubiquitous Comput-. ションソフトウェアなどが遍在している.すでに,イ. ing),パーベイシブコンピューティング(Pervasive. ンターネット上にはウェブという一種の分散データベ. Computing),センティエントコンピューティング. ースが存在するが,さらにハードディスクが大容量か. (Sentient Computing),プロアクティブコンピューティ. つ安価になるとコンテンツの量は飛躍的に増大する.. ング(Proactive Computing),オートノミックコンピュ. 各個人が 1terabyte のディスクを所有しているとする. ーティング(Autonomic Computing),コンテキストア. と,全世界では少なくとも 1zettabyte(10 の 21 乗)オ. ウェアコンピューティング(Context-aware Comput-. ーダの超分散データベースが形成されることになる.. ing),あるいは,「どこでもコンピュータ」など,「○○. • Connectivity everywhere :すべてのオブジェクトが. コンピューティング/コンピュータ」というスローガン. ネットワーク接続される.セルラー,光ファイバ,. が巷で氾濫している.意味するところに若干の温度差. DSL(Digital Subscriber Line),DSRC(Dedicated. はあるものの,将来のコンピューティング環境を意図. Short Range Communication),Bluetooth に代表され. して使用されている言葉である.. るパーソナルエリアネットワークなどを介して,ネッ IPSJ Magazine Vol.43 No.6 June 2002. −1−.

(2) Special Features: Revolution of Networking Technologies to Support the Ubiquitous Computing Environment. トワークに常時接続される.また,ワイヤレスネット ワークによる接続が標準になると予測されるために,. 将来のコンピューティング環境では,センサなどを. モバイル関連技術の重要性がますます高まる.. 含めたさまざまなコンピューティング資源や膨大な容 量の分散コンテンツに,種々のネットワーク資源を介 してアクセスすることになる.ネットワークに遍在す. 今まで,ネットワークは「いつでも,どこでも,誰と. るコンピューティング/コンテンツ資源を自在に利用. でも」やりとりすることのできる情報通信基盤の構築を. できるネットワークを構築し,これらの資源を人類全. 目指してきた.ユビキタス時代においては,これとと. 体で共有することができれば,ネットワーク自体が知. もに「だけ」サービスが求められる.すなわち,今だけ,. 的活動を支援する情報基盤/インフラストラクチャと. ここだけ,あなただけ,などといった時間/空間/ユ. なり得よう.また,膨大な資源を有効に利用すること. ーザによるカスタマイズを行うことで,より人間主体. で,きわめて面白いアプリケーションが喚起され得る.. のコンピューティング環境が実現できる.このような. ユーザがネットワーク上の資源に自在にアクセスでき,. 「だけ」サービスを実現するためには,物理世界とのイ. かつ快適なサービスを享受するための情報基盤の構築. ンタラクションが必須である.ユーザの時間や空間を. に向けて,ユビキタスネットワーク技術の果たす役割. 把握しなければならないためである.. は大きい.. さらに,センサやアクチュエータなどがネットワー. このような情報基盤の構築に向けての流れは, 「電化」. ク接続されることで,物理世界と仮想世界とが相互接. の流れと対比させて考えることができる.現在,電源. 続されることで新たな世界が創出されよう.センサが. コンセントは至るところに存在するとともに,携帯用. 温度,土壌汚染度,エンジン回転数などといった物理. 電源として電池がある.また,多くの製品の中には電. 世界を直接的に監視するとともに,得られたデータは. 気モータが組み込まれている.元々発電機は「目に見え. センサ間で共有される.また,アクチュエータなどを. る」巨大なものであった.それが技術の進展とともに,. 介して物理的なアクションをも実行する.センサノー. 我々の周囲に当然のように存在する「目に見えない」も. ドが地球上に張り巡らされれば,センサネットワーク. のとなっている.. が生活・社会・産業における「神経系」ともなり得る 1).. 同様に,ネットワークも日常生活に自然に組み込ま れ,より使いやすく,より効率的に,より楽しいもの とならなければならない 2).ネットワークに遍在する膨 大な資源を自在に利用することのできる世界を実現す. “ワールドニュース視聴” ワールドニュースサービス. ☆コンテンツルーティング. ☆ センサーネットワーク ☆ 情報アプライアンス. インターネット. トランスコーダ. トランスコーダ 音声テキスト変換. ☆ デバイス選択 ☆ 位置情報 ☆ ユーザインタフェース. ☆ 端末モビリティ ☆ サービスモビリティ ☆ サービス合成. -1. 43巻6号 情報処理 2002年6月. −2−.

(3) るためには,電池や電気モータのように誰もが容易に. 機能A1. 使える情報基盤を実現しなければならない. 機能A4 機器A. 機能A2. サービス. 機能A3 ネットワーク. 機能B1. 機能C1. 3C everywhere 環境における 3 つのアプリケーション. 機能 B 2. 機能B4. シナリオを示す.なお,1980 年代に WWW の登場を予. 機能C2. 機能C4. 測できなかったことからも分かるように,新しいアプ. 機能C3. 機器C. 機能B3 機器B. リケーションの予測はきわめて困難である.アプリケ ーションはこれらに限定されるものではないことに留. -2 APLICOT. 意されたい.. ユーザの家には無数の微小センサ群によって構成さ. 器内の機能を動的に組み合わせることで,たとえば CD. れるホームセンサネットワークシステムが導入されて. プレーヤの音声出力と部屋の照明とをシンクロさせた. おり,ユーザが 2 階の自室から 1 階のリビングに移動す. インスタントディスコルームを作ったり,携帯電話の. ると,センサネットワークがユーザの位置の変化や周. ボタンでテレビを制御したり,テレビの画面を携帯電. 囲の温度を検知し,リビングの照明や空調を制御する.. 話のディスプレイに転送したりすることなどが可能と. また,2 階で見ていたワールドニュース画面が,リビン. なる.一種のユニバーサルリモコンであるが,サービ. グにあるテレビに自動的に映し出される(. スを動的に生成できることが APLICOT の特徴となる.. -1).. ユーザが屋外に出ると,携帯情報端末にワールドニ ュース画面が映し出される.このとき携帯情報端末は スクリーンサイズが小さく,またネットワーク帯域も. 膨大な数のサーバ内に蓄積されたファイルやデータ. 相対的に狭いため,ネットワークはワールドニュース. を自由自在に利用可能とするサービスである.ネット. のストリームに対して自動的にトランスコーダを挿入. ワークは,所望のコンテンツを膨大な数のコンテンツ. し,適切なスクリーンサイズと帯域のストリームを携. の中から的確に探し出す機能を保持するとともに,コ. 帯情報端末に提供する.. ンテンツのバックアップや最新バージョンへのアップ. また,ユーザが新幹線に乗ると,携帯情報端末の音. デート,ならびにユーザ近辺でのコンテンツキャッシ. 声を止め,ニュース映像とテキスト表示に切り替える.. ングなどを自動的に実行する機能をも保持する.ユー. このとき,ネットワークはトランスコーダに加え,音. ザに対して,いつでもどこでも最新コンテンツを均一. 声データをテキストデータに変換する音声テキスト変. に提供するサービスであり,PIM(Personal Information. 換プロキシを挿入し,携帯情報端末に映像とテキスト. Management)サービスとも相性がよい. たとえば,頻繁にアクセスしているコンテンツをユ. を提供する.. ーザの最寄りのサーバに複製して配置したり,コンテ ンツ自身を移住させたりすることで,ダウンロード遅 情報家電は複数の機能の集合体と考えることができ. 延の変動を抑えることができる.また,重要なコンテ. る.たとえば,携帯電話は,表示機能,テンキー入力. ンツを複数個所に自動的に複製配置することで,コン. 機能,音声入出力機能,無線通信機能,CPU 機能,メ. テンツのアベイラビリティを高めることができる.こ. モリ機能などの機能の集合体と捉えることができる.. のようなサービスによれば,ユーザ自身がストレージ. APLICOT(Appliance Condunctor)は,オーケストラの. 管理やアプリケーションのバージョン管理を行わずに. 指揮者がタクトで各パートに指示を与えて音楽を奏で. 済むため,コンテンツ管理をネットワークにアウトソ. るように,携帯端末を用いて上記のようなさまざまな. ーシングすることを可能とするサービスともいえる.. 機能を組み合わせ,多種多様な創造的機器を創出する アプリケーションである.. -2 では,機器 A 内の機能. A2 と,機器 B 内の機能 B4 と,機器 C 内の機能 C2 と C3 上記のアプリケーションシナリオを現実のものとす. とを組み合わせて創造的な機器を生成している.各機. IPSJ Magazine Vol.43 No.6 June 2002. −3−.

(4) Special Features: Revolution of Networking Technologies to Support the Ubiquitous Computing Environment. るためには,音声−テキスト変換をはじめとした多く. るにはセンサなどの利用によるコンテキスト情報の抽. の技術を必要とする.以下では,「サービス発見」 「コン. 出とともに,周辺環境とのインタラクションのための. テキスト適応性」 「サービス合成/サービスモビリティ」. 適応機構も必要となる.. の 3 つの大きな技術チャレンジを示す.. たとえば上記のワールドニュースサービスでは,新 幹線内では音声を止めて,ニュース映像とテキスト表 示モードに切り替える.これを実現するためには,新. 第 1 の課題は,多種多様でかつ遍在するサービスをど. 幹線内というコンテキスト情報の抽出や,ユーザイン. のように取り扱うかである.ここで,サービスとは,. タフェースやユーザアプリケーションの自動切替など. ネットワークアプリケーションとしてユーザに提供さ. を行わなければならない.. れるものを指しており,コンピューティング資源とと. なお,これらのコンテキスト適応性を,アプリケー. もにコンテンツ資源やネットワーク資源をも含むもの. ションレベル,ミドルウェアレベル,言語レベルなど. とする.. のどのレベルで実装するのか,という点もチャレンジ. 3C everywhere 環境では,CDN(Content Delivery. ングな課題である.. Network)技術,peer-to-peer 技術,大規模広域ストレ ージ技術などの普及によって,無数のサービスがイン ターネット上の至るところに存在するようになる.ま. 第 3 の課題は,ネットワーク上に遍在するさまざまな. た,ネットワークへのアクセスも多様な形態が存在す. データやサービスを自在にアドホックに組み合わせる. るようになる.このような場合,これらサービスの並. 機構である. サービス合成機能は,ワールドニュースサービスに. 列透過的な呼出し,負荷透過的な呼出し,あるいは障. おいて音声テキスト変換プロキシを発見し,音声⇒変. 害透過的な呼出しを可能とする技術が必要である. たとえば前述のワールドニュースサービスにおいて,. 換プロキシ⇒テキストといったサービスを自動的に構. ワールドニュースサービス,トランスコーディングサ. 築したり,APLICOT において機能を組み合わせて創造. ービス,音声テキスト変換サービスなど無数に存在す. 的なサービスを創出したりするものである.また,セ. るサービスの情報をインターネットスケールでどのよ. ンサネットワークで情報を収集するときには中間部位. うに記述して管理するのか,「ワールドニュース視聴」. で情報統合プロキシを自動発見し情報統合を行うこと. という要求をどのような基準でどこに配送するのか,. でセンサ情報をコンパクトに提供することも可能とな. 等価なトランスコーダが複数存在している状況下でど. る.サービスの自動設定ともいえる機能である.. のトランスコーダを利用するのか,複数のネットワー. また,モバイル環境では,Mobile IP のようなホスト. クアクセス形態が存在する状況下でどのアクセスリン. の移動に対するパケット到達性の維持(ターミナルモビ. クを利用するのかなどについて考えなければならない.. リティサポート)に加え,移動に伴うアプリケーション. また,ノマディック/ユビキタスコンテンツでは,. の維持(サービスモビリティサポート)の考え方が重要. 膨大な数のコンテンツの中から所望のコンテンツを的. となる.たとえばワールドニュースサービスでユーザ. 確に探し出す機構が必要となる.. が 2 階から 1 階へ移動したとき,外出したとき,それぞ. 現存のインターネットでも,サーチエンジンがポー. れの場合において必要な映像出力サービス,トランス. タルサイトになっていることからもウェブページの「発. コーディングサービス,音声テキスト変換サービスな. 見」が核となっていると考えることができるが,3C. どの複数のサービスを用いてニュース視聴という 1 つの. everywhere 環境では遍在する多様な資源の透過的な発. サービス構成そのものを維持する必要がある.また,. 見という新たなる機能が求められる.. このように複数のサービスからある 1 つのサービスが構 成される場合,移動や障害発生などに際してサービス 構成要素の切替え(サービスハンドオフ)を高速に行う. 第 2 の課題は,ユーザあるいはデバイスの置かれた状. 必要もある.. 況に鑑みて適切なサービスを提供する機構である.ユ. このようなサービス合成/サービスモビリティサポ. ーザ最寄りのモニタに所望の映像を表示するモバイル. ート機能は,周辺環境が時々刻々と変わる状況で威力. プレゼンテーションシステムや,ユーザがクエリーを. を発揮する.その場そのときに応じて必要なサービス. 発した時間や場所に応じて検索結果が変わるような検. を集め,それらを相互接続することで 1 つのサービスを. 索システムなどである.コンテキスト適応性を実現す. 構成・維持する機能を提供するためである.ユーザに. 43巻6号 情報処理 2002年6月. −4−.

(5) クライアント アプリケーション. サービスグラフ ニュース. 機能オブジェクト名 [ L o c a t io n = X YZ] [ I n t e r f a c e = A / Z] [ D o ma in = A . B . C ]. TV. ユーザインタフェース. (e) 機能補間処理. (a)サービスグラフ作成 (b) サービスグラフ入力. サービスリゾルバ. サービスシンセサイザ SS. データ. (g) ネームベース  ルーティング. Insert. SS. SS (c) 機能オブジェクト  名の解決. (f) 機能等価化処理. マルチネームサービスシステム MNSS. A. MNSS. MNSS. B MNSS. MNSS MNSS. C. A=B+C. MNSS. 機能オブジェクト群. (d) サービス合成. P r ox y. -3 STONE. 対して,サービスの構成要素が変わったことを意識せ. 化しても,サービスを構成する機能が維持できれば,. ず,必要とされる 1 つのサービスを使い続けることので. 移動・障害などに透過的にサービスを維持できる(分散. きる枠組みを提供する.. 透過性の実現).また,環境の変化に応じて,ある機能 を適切な機能に変えれば,サービス内容を環境に適応 して変化させることができる(コンテキスト適応性の実 現).. STONE(Service Synthesizer on the Net)プロジェク. STONE では位置非依存型のネーミングを導入するこ. トは,3C everywhere と物理世界とのインタラクション. とによって,分散透過性やコンテキスト適応性などの. とを想定する環境において,ユーザがネットワーク上. 実現性を図る.インターネットにおいてはリンクレイ. の資源に自在にアクセスでき,かつ快適なサービスを. ヤの MAC アドレス,ネットワークレイヤでの IP アドレ. 享受するための情報基盤の構築に向けての 1 つの試みで. ス , ネ ッ ト ワ ー ク 上 の 位 置 を 表 す U R L( U n i v e r s a l. ある.STONE は,ネーミングサービスに着目すること. Resource Locaters)や電子メールアドレスが用いられて. で,サービス発見,コンテキスト適応性,サービス合. いるが,STONE ではこれらの上位にさらに新たなネー. 成,サービスモビリティを統一的に実現する点に特徴. ミングレイヤを設ける.URL や IP アドレスなどのよう. を有する 3)∼ 6).. に“ユーザが望むコンテンツがどこにあるか(where to. -3 に STONE の概要を示す.STONE ではサービスの. find)”を表す位置依存ネーミングではなく,“どんなコ. 基本単位を機能オブジェクトと呼び,クライアントか. ンテンツを探しているのか(what to find)”を表す位置. らの要求に応じて機能オブジェクトを動的に発見・接. 非依存型ネーミングを用いる.. 続することでサービスを合成する.機能オブジェクト. 明示的に記した位置非依存型のネーミングを用いるこ. はディスプレイ,カメラ,スピーカ,マイク,各種ト. とにより,機能に関する移動透過性,複製透過性(複数. ランスコーダやプロキシ,音声や動画のソースなどの. の等価な機能をどれでも利用できる),障害分散,負荷. 多種多様のオブジェクトであり,ニュース映像のソー. 分散などを実現することが可能となり,サービス発見,. スとトランスコーダとディスプレイをサービスとして. コンテキスト適応性,サービス合成,サービスモビリ. 動作するように動的に接続したものが「合成されたニュ. ティなどを統一的に実現できる.. ースサービス」となる.. -4 に示すように機能を. 位置非依存型ネーミングをサポートするために, STONE では,既存ネットワークにオーバレイした“サ. このとき,サービス提供者や利用者の周辺環境が変. IPSJ Magazine Vol.43 No.6 June 2002. −5−.

(6) Special Features: Revolution of Networking Technologies to Support the Ubiquitous Computing Environment. ービスリゾルバネットワーク”を用いる.サービスリゾ. ータの転送を行う.このようにすることで,たとえば. ルバネットワークは,サービスリゾルバ同士が相互に. 「ユーザ A の最寄りのモニタ」などを宛先として情報を. 論理コネクションを確立したネットワークであって,. 送ることができるようになる.. サービスリゾルバネットワーク上でネーミングを用い. サービスリゾルバネットワークと機能オブジェクト. た機能オブジェクトの発見や接続が実行される.また. とともに,STONE を構成する主要要素がサービスグラ. STONE のサービスリゾルバは名前によるデータのルー. フである.サービスグラフは,クライアントの要求サ. ティング機能を具備している.IP ネットワークにおい. ービスを記述したものであり,たとえば「409 号室の部. ては IP ルータがパケットの宛先 IP アドレスを見てデー. 屋に設置されたカメラ映像を近くのモニタで見たい」と. タを転送するように,サービスリゾルバネットワーク. いうようなクライアントの要求が記述される.機能オ. ではサービスリゾルバが宛先の名前を解決しながらデ. ブジェクトの相互接続関係や接続順序の記述(409 号室. [ FO Na me = [ Loc a t ion= x .y .z@myh o m e. n et], / / P h ysi cal L o cati o n [Interface Name= / / F u n cti o n D escr i p ti o n [Output Interface = Rendered Video], [Input Interface = MPEG4/IP], [Relation = Convert Input Inteface1 to Output Interface1], [Ctrl Interface = Display Control/GUI] ] ] //- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - --------------------------------------------[ Ac c e s s P oint e r Lis t = [ Addre s s =x x x .x x x .xxx. xxx:yyyy], ]. //IP+Port. -4. 室 内 測 位システムの センサ群. 測位演算サーバ. セ ンサ制御用 ハ ードウェア群. 測位用 モバイルデバイ ス. 東京大学 本郷キャンパス. 慶應義塾大学 SFC. イ ンターネット. モバイルビデオ会議“C o n n e c t T o サービス”. ユ ビ キ タスネットワーク実験スペース “ S TONE room ” サ ービスリゾルバ群. -5 STONE. 43巻6号 情報処理 2002年6月. −6−. 万能リモコンクライアント.

(7) ユーザA. ユーザB. Application. 音声電話. 音声電話 ビデオ電話. Se ssi on. Se ssi on. S e s s io n. T r a n sp or t. TCP UDP . .. Ne t w or k. IP. Link. Bluetooth 3G. TCP. UDP. 音声電話 ビデオ電話 S e s s io n TCP. …. Bluetooth. UDP. …. IP. IP 802.11b. Ethernet. S e s s io n : A , B , 電 話 Connection: IP(A 802.11 ) == IP(B). Se ssi on : A, B , 電 話 Connection: IP(A 3G ) == IP(B). S e s s io n : A , B , 電 話 Connection: IP(A 3G ) == IP(B) Connection: IP(A 802.11 ) == IP(B). -6. のカメラ機能オブジェクトとモニタ機能オブジェクト. ングサービスという視点からサービスモビリティに対. とを接続)と,機能オブジェクトをどのような基準で選. 処しているのに対し,SLSOCKET やパーソナルメッシ. 択するかを指定するための記述(近くのモニタ機能オブ. ュはモビリティサポートという観点からサービスモビ. ジェクトを選択)とから構成される.クライアントの要. リティの実現を図っている.. 求を反映したサービスグラフ STONE システムに投げる ことによって,STONE システム内で機能オブジェクト 現在のインターネットアーキテクチャはモビリティ. の発見とサービスの合成とが実行され,クライアント. を考慮せずに設計されている.V. Cerf らは,“TCP's. に対して所望のサービスが提供される. -5 に示すように多種多様なネット接続さ. dependence upon the network and host addresses for. れたデバイスが遍在する室内実験環境 STONE ルームを. part of its connection identifiers makes dynamic recon-. 構築し,インターネットで他の室内実験環境 7)と結び,. nection difficult, a problem which has plagued network. STONE の実装と評価を進めている.また,アプリケー. designers since the inception of the ARPANET project in. ションとしては,ディスプレイ,カメラ,マイク,ス. 1968.”と 1983 年に述べている 8).すなわち,上位層の. ピーカなどを使用してコラボレーションサービスを動. トランスポートプロトコルが IP アドレスの固定性を仮. 的に合成し,試作した室内位置情報システム 6)からの位. 定しているため,IP アドレスが変化すると TCP コネク. 置情報を利用して,ユーザがどこに移動しても常に最. ションが切断されてしまうのである.. 筆者らは,. 寄りのデバイスを用いてサービスを透過的に維持でき. モビリティサポートを実現するアプローチとしては. る“Connect To”サービスや,任意の形式のデータを任. 複数のものがある.代表例としてネットワーク層で移. 意のデバイスに出力できるようにネットワークが自動. 動透過性を実現する Mobile IPを挙げることができるが,. 的にデータを加工する“メディアキッチンサービス”な. 筆者らはセッション層で移動透過性を実現する手法に. ど,種々のアプリケーションの実装を進めている. ついて検討を進めている.通信相手のネットワークア ドレスやポート番号とは非依存なセッション ID をアプ リケーションが通信識別子として用いる手法である. 通信元が移動しネットワークアドレスやポート番号が. SLSOCKET(Session Layer Socket)とパーソナルメッ. 変更されると,制御メッセージを用いて変更情報を通. シュは,ユーザの物理的な移動に伴い動的に変化する. 信相手に通知することで通信が継続される.. コンテキストに適応しながらサービスの一貫性の保持. セッション層において移動透過性を実装することで. を実現できるモバイルインターネットアーキテクチャ. 「アプリケーションの下位層からの独立」 「名前空間と通. の構築を目指すプロジェクトである.STONE はネーミ. 信空間の分離」 「ネットワークの状況変化への適応性」 IPSJ Magazine Vol.43 No.6 June 2002. −7−.

(8) Special Features: Revolution of Networking Technologies to Support the Ubiquitous Computing Environment. 「ターミナルモビリティに加えてサービスモビリティの. る.それぞれのノードが近隣ノードの発見・認証,利. サポート」 「サービスレベルの認証処理」などが実現可能. 用可能なリンク情報,仮想インタフェースの作成,上. となる 9).3C. 位層とのインタラクションなどを行うインタフェース. everywhere 環境と親和性の高いモビリテ. ィサポート機構であると考えている.. 管理部を具備することで,外部接続リンクを共有する. -6 は SLSOCKET を用いてサービスモビリティを実. ことができる.. 現する様子を示している.「移動中の A さんは IP 携帯電. 今後はますますユーザが利用できるネットワークの. 話で B さんと会話をしていた.B さんはどうやら自宅に. 多様化が進むことになる.Everything on IP 時代には,. いるらしいので,A さんはそのまま喫茶店に入りラップ. すべてのものがネットワーク接続されることになり,. トップ PC を借りた.IP 携帯電話をラップトップ PC に. パーソナルメッシュのようなアクセス形態が普遍的に. 近づけボタンを押すと,2 人の会話は PC 上のビデオ電. なるかもしれない.. 話に即座に移行した」というシナリオである.アプリケ ーションを一旦切断することなくサービスを保持する ことが可能となる. 現在のインターネット技術は,1970 年代に開発され たインターネットアーキテクチャに基づいている.し パーソナルメッシュとは,それぞれが外部接続リン. かしながら,個々の要求を満たすためにさまざまな拡. クを具備するようなノード(PC など)が近隣に複数存在. 張が施されてきたため,オリジナルなインターネット. するような環境において,ノードを跨いでこれらの外. アーキテクチャを再考すべき時期にきている 11),12).. 部接続リンクを共有する機構である(. -7)10).ここで,. 3C everywhere 環境や物理世界とのインタラクションな. ノードすべてには Bluetooth などの近距離無線通信機能. ども,インターネット設計当時は想定していなかった. が搭載される環境を想定する.ネットワーク資源が遍. 世界である.. 在している環境において自在にネットワークを利用可. 膨大なコンピューティング資源やコンテンツ資源が. 能とする機構である.. ネットワーク接続された環境において,ユーザがネッ. パーソナルメッシュでは,Bluetooth や無線 LAN など. トワーク上の資源に自在にアクセスでき,かつ快適な. のリンクデバイスのインタフェースの相違を上位層か. サービスを享受できるようなネットワークが構築でき. ら隠蔽するため,他のノード上に存在する利用可能な. てこそ,インターネットが真の社会基盤となり得よう.. リンクの仮想インタフェースを作成し IP アドレスを付. 幅広い視点からユビキタスネットワークのデザインを. 与する.これにより,パーソナルメッシュ内のノード. 進めていきたい.. に具備されているリンクを自在に選択できるようにな. WLAN W L AN. 1)21 Ideas for the 21st Century, Business Week(Sept. 30, 1999) . 2)Norman, D.: The Invisible Computer, MIT Press(1998) . 3)森川博之, 南 正輝, 青山友紀: STONE: 環境適応型ネットワークサー ビスアーキテクチャ, 信学技報, IN2001-12(May 2001) . 4)南 正輝, 杉田 馨, 森川博之, 青山友紀: ユビキタス環境に向けたイン ターネットアプリケーションプラットフォーム, 電子情報通信学会論 文誌(B) (投稿中) . 5)南 正輝, 森川博之, 青山友紀: ユビキタス環境におけるサービス合成 のためのインタフェース指向ネームサービス, 電子情報通信学会論文 誌(B) (投稿中) . 6)Shih, S., Minami, M., Morikawa, H. and Aoyama, T.: An Implementation and Evaluation of Indoor Ultrasonic Tracking System, 情処研 報,2001-MBL-17(May 2001) . 7)徳田英幸, 中澤 仁, 岩井将行, 由良淳一, 村瀬正名: ユビキタス空間を 融合するネットワーク技術への課題, 情報処理, Vol.43, No.6, pp.623630(June 2002) . 8)Cerf, V. and Cain, E.: The DoD Internet Architecture Model, Computer Networks, Vol.7, pp.850-857(Oct. 1983) . 9)金子晋丈, 森川博之, 今井尚樹, 中山雅哉: 多様化するインターネット環 境におけるエンドツーエンド型モビリティサポート, 信学技報, MoMuC(May 2002) . 10)國頭吾郎, 森川博之, 青山友紀: ヘテロジニアスリンク環境のためのパ ーソナルメッシュの設計と実装, 信学技報, NS2001-299, IN2001-255 (Mar. 2002) . 11)森川博之: 新世代インターネットアーキテクチャ, 映像情報メディア 学会誌, Vol.55, No.12, pp.1609-1615(Dec. 2001) . 12)森 川 博 之 :「IPv6 の 次 」な る チ ャ レ ン ジ , 日 経 ネ ッ ト 時 評(Feb. 7, 2002) . (平成14 年5 月8 日受付). 3G. PHS. C el l ul ar. -7. 43巻6号 情報処理 2002年6月. −8−.

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参照

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