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竹内孝之著「台湾、香港と東アジア地域主義」 (新刊紹介)

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Academic year: 2021

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全文

(1)

竹内孝之著「台湾、香港と東アジア地域主義」 (新

刊紹介)

著者

竹内 孝之

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

187

ページ

49-49

発行年

2011-04

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004275

(2)

アジ研ワールド・トレンドNo.187 (2011. 4)

49

  本書は 、東アジア 地域主義に未参加で ある台湾と香港に焦 点を当てている 。台 湾と香港は東アジア の主要な一員だが 、 ASEAN+ 3など の多国間 FT Aや東 アジア共同体の構想には含まれていな い。 バイラテラルな FT Aについても、 香港にとっては二〇〇三年に中国と締 結した経済貿易緊密化取決 ︵CEPA︶ が唯一の FT Aであり、台湾は二〇一 〇年に中国と経済協力枠組協議︵EC F A︶を締結するまで、主要国との F T Aを締結出来なかった。本書が扱う 問題は広く認識されていたものの、そ の背景を分析した研究はこれまで皆無 であった。これは、まず未参加、未締 結であるがゆえに資料が限られ、実証 的な分析が困難であったためだと思わ れる。   本書では現地資料を収集し 、また政 府関係者や財界などへのインタビュー を行い 、可能な限り実証性を求めた 。 しかし 、中国当局と台湾の中国国民党 および馬英九政権 、あるいは香港政府 との交渉は秘密裏に行われ 、交渉にお ける合意前の双方の主張の隔たりや妥 協にいたる過程が明 ら か に さ れ て い な い 。こうした部分に 言及した個所では 、 若干の推測が含まれ ていることをお断り しておきたい。   以下 、本書の構成 と内容を紹介する。   第一章は、国際社会における台湾と 香港の地位を解説している。台湾と香 港は主権国家の条件を揃えていない領 域あるいは実体である。しかし、世界 貿易機関︵W T O︶やアジア太平洋経 済協力︵APEC︶などの加盟し、 F T Aなどの国際条約を締結できる。特 に台湾は中国主権下の香港と違い、ど の他国にも属さない。このような実体 と主権国家の区別に拘泥することは 、 戦後国際社会の理念に合致しない。し かし、中国はこの区別を強調し、台湾 のアジア開発銀行、APEC、W T O への加盟あるいは参加を制限しようと 試みたが、 アメリカなどの反対にあい、 必ずしも成功しなかった。しかし、東 アジア地域枠組みでは中国の影響力が 強く、その主張が認められやすい。   第二章から第四章は、台湾と香港の FT A政策や地域主義への対応を紹介 している。台湾については、陳水扁政 権の時代と馬英九政権の時代にそれぞ れ一章を割き、第二章と第三章で扱っ た。香港でも董建華政権から曽蔭権政 権に交代したが、政権交代による変化 は台湾ほど劇的でなかったため、一章 のみを割いた。   陳水扁政権時代の台湾と中国の対立 は広く知られている。 FT A締結の遅 れや東アジア地域主義への未参加もそ の一側面と思われやすい。しかし、陳 水扁総統は当初、中国との両岸 FT A や経済統合を提案した。その狙いは台 湾の地位向上にある。馬英九政権によ るEC F A締結にも、全く同じ狙いが ある。しかし、中国は陳水扁政権の呼 びかけに応えず、馬英九政権の発足を 待って、EC F Aを締結した。台湾と シンガポールの FT A交渉も中国は陳 水扁政権時代に妨害したが、馬英九政 権時代には一転し、容認した。中国側 の変化には、どのような要因があった のだろうか。   ひとつの要因は、馬英九政権が中国 側との基本合意である﹁一九九二年コ ンセンサス﹂を確認したことにある 。 その内容は、国民党および馬英九政権 によれば、中国が中華人民共和国を名 乗る一方、台湾は中華民国を名乗り続 けることである。中国は国民党の解釈 に全面的な同意を避けているが、否定 もせず、台湾との関係改善に動いた。   もうひとつの要因は 、香港である 。 中国は国家と実体の違いを強調しすぎ たため、不本意にも香港による FT A 締結や地域主義への参加まで妨げてし まった。このジレンマがEC F A締結 の隠れた背景だと思われる 。実際に 、 香港政府は陳水扁政権時代、 FT Aや 地域主義への関心を表に出さなかっ た。しかし、二〇〇九年にニュージー ランドとの FT A交渉を再開し、二〇 一〇年に妥結した。これは馬英九政権 の発足や、EC F A締結を含む両岸関 係の改善と歩調を合わせたものと思わ れる。このように台湾と香港の両方を 観察すれば、両者と中国の関係を理解 する一助となりうる。   ただし、台湾や香港、中国における 本格的な統合は困難であることを第五 章において指摘した。香港は台湾との FT Aに関心を持ち、今後具体的な交 渉が行われる可能性がある︵本書公刊 後、台湾の経済部は香港政府から提案 があったことを認めた︶ 。しかし 、中 国と香港・マカオのCEPA、両岸E C F Aの一本化や本格的な統合は、香 港・マカオ基本法や台湾市民の対中感 情を考えると事実上不可能である。ま た、 FT A+ α 程 度の協力は他の諸外 国との間でも行われる以上、制度的な 中華経済圏にはつながり難い。   なお、 本書では言及できなかったが、 環太平洋戦略的経済連携協定 ︵ T PP︶ が脚光を浴びている。もし T PPの主 導権をアメリカが握れば、中国の影響 力は及びにくく、台湾と香港の参加が 実現するかも知れない。あるいは台湾 で再び政権交代が起き、陳水扁政権時 代に似た展開となるのだろうか。今後 の情勢を見守りたい。 ︵たけうち   たかゆき/アジア経済研究 所  東アジア研究グループ︶

竹内

孝之

﹃台湾、

香港

域主

義﹄

アジ研選書 No.二五   アジア経済研究所 ■

竹内 孝之

新刊

紹介

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出版者 日本貿易振興機構アジア経済研究所/Institute of Developing Economies (IDE‑JETRO) .

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