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本県における特別支援教育の推進について 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)本県における特別支援教育の推進について 河 野. 一 郎. (山梨県立わかば養護学校) Ⅰ. はじめに. 特殊教育から特別支援教育への転換については,平成18年6月15日に開催された衆議院 本会議において, 「学校教育法等の一部を改正する法律案」が可決・成立したことにより, 平成19年4月1日から法制度上からも,本格的に実施・推進されることとなった。 さて,特別支援教育の推進については,これまでも本県教育委員会において,平成15・16 年度特別支援教育推進体制モデル事業及び平成17年度特別支援教育体制推進事業,さらに は平成18年度特別支援教育体制推進事業の実施によって,着々と実施され,成果も現れて きている。 ところが,特殊教育から特別支援教育への転換という特殊教育の世界では大改革といっ ても過言ではない今回の転換を,より着実に,しかも無理のないところから実施していく ためには,数多くの課題があることも事実であろう。 そこで,本稿においては,これまで本県が実施してきた特別支援教育の実施を振り返り, その成果,課題及び今後の取組等を列挙することにより,今後の本県の特別支援教育推進 における何らかの知見を得たいと考えている。. Ⅱ. 特別支援教育推進に係る成果. 1.小・中学校の教員と盲・ろう・養護学校の教員とのかかわり 平成15年度のモデル事業から始まった特別支援教育の実践であるが,今日までの歩みを 振り返って,一番の成果は,盲・ろう・養護学校の教員と小・中学校の教員とが一人の児 童生徒の指導や支援にかかわって,同一の時間・場所・空間で情報交換や意見交換が活発 に行われるようになったことである。これまで,特殊教育の実践においては,障害の程度 等に応じて特別の場所で特定の教師が障害のある児童生徒にかかわってきた。すなわち, 小・中学校においては,特殊学級及び通級指導教室で,あるいは通常の学級で障害のある 児童生徒の教育が行われてきた。また,盲・ろう・養護学校においては,主に障害が中度 以上の児童生徒を対象として,しかも近年では障害が重度で重複している児童生徒の増加 に対応しながら,指導や支援が行われてきた。これらの形態においては,それぞれの場で 独自に教育を行っているため,小・中学校と盲・ろう・養護学校の教員間で,ある一人の. - 86 -.

(2) 児童生徒の指導や支援をめぐって,研究会・研修会等で顔をつき合わせ,積極的かつ中身 の濃い意見交換や情報交換が行われてきたとは言い難い。 ところが,特別支援教育が提唱され,国や都道府県が積極的に特別支援教育を実施する のに伴って,これまで別々の場所で行われてきた特殊教育が,特別支援教育の理念の下に, 融合し始め,小・中学校の教員と盲・ろう・養護学校の教員とが交流を開始したのである。 これは,大きな成果であると言える。小・中学校の教員はこれまで培ってきた障害のない 児童生徒の指導の成果と特殊学級及び通級指導教室の指導の成果の上に立って,これに対 して,盲・ろう・養護学校の教員は障害のある児童生徒の教育のノウハウを生かして,小・ 中学校に在籍している障害のある児童生徒の教育について語り合うことができるようにな ってきたのである。. 2.教育,医療,保健・福祉,労働等の関係機関間の連携 特別支援教育においては,障害のある児童生徒一人一人のニーズに応じた支援を適切に 行っていくのが基本的な考え方である。支援については,教育,医療,保健・福祉,労働 等の関係機関が連携し協力して行っていくことが最も効果的である。そのためのツールと して「個別の教育支援計画」の作成が,平成17年度から盲・ろう・養護学校に義務付けら れた。この作成過程で,教育の側から医療,保健・福祉,労働等の関係機関に働きかけ, 児童生徒の障害等の実態や日々の支援目標・内容等についての情報をいただいた。これま で,一人一人の児童生徒の教育については,学校が中心で保護者と連携を図りながらイニ シアティブをとって行ってきた。そのため,どうしても学校サイドだけで,児童生徒の実 態を把握し,それに基づいた個別の指導計画を立ててきたわけであるが,今回 ,「個別の 教育支援計画」の作成により,これまで十分な連絡や連携が図ってこれなかった医療,保 健・福祉,労働等の関係機関と連絡を取り合い,連携をしながら,一人一人の児童生徒の 自立や社会参加に向けて,共に支援を行っていこうとするスタートが切れたのである。 とりわけ,平成17年度から本県2地区に設置された特別支援連携協議会が,平成18年度 から本県全部で5地区に設置されたことにより,一人一人の児童生徒の適切な支援に関し て,特別支援教育推進地域内の連携協力の在り方 ,「個別の教育支援計画」を仲立ちとし た連携推進の在り方について,協議が行われることとなった。これまで,一人一人の児童 生徒の指導や支援を巡って同じ土俵で話し合いにつくということがほとんどなかっただけ に,画期的であるとともに,今後の協議が十分に行われ,児童生徒の支援が適切に行われ ていくことを願うばかりである。. 3.保護者との連携 これまで,盲・ろう・養護学校における日々の指導や支援については,学校独自の児童 生徒観,教育観等だけで実施してきたわけではない。そこには,必ず,主役である児童生 徒,保護者の存在があり,児童生徒や保護者の願いや希望をくみ取りながら,学校で実施 - 87 -.

(3) が可能な内容を実践してきたという経緯がある。しかし,これまでの教育はともすると学 校が主体で,児童生徒は教育を受ける側として,どうしても受け身の立場にならざるを得 なかったのではないか。ところが,このたびの特別支援教育の実施,それに伴う「個別の 教育支援計画」の作成に関して,学校と保護者とが一人一人の児童生徒の適切な支援につ いて,ざっくばらんに,腹を割って,話し合いの場につくことが可能となったことは大き な成果であると言えよう。これにより,学校と保護者との連携がこれまで以上に行われ, 深められ,児童生徒や保護者の願い・希望の実現に向けて,一歩一歩近付いていくことが 期待される。. Ⅲ. 特別支援教育推進に係る課題と今後の取組. 1.盲・ろう・養護学校における特別支援教育推進に係る課題と今後の取組 (1)特別支援学校の障害種 盲・ろう・養護学校が特別支援学校に転換する。それに伴い,これまで1種類ないしは 2種類の障害に対応してきた盲・ろう・養護学校が,複数の障害に対応することができる 複数の専門分野を備えた特別支援学校に転換していかなければならない。確かに,地域の 障害のある児童生徒については,地域の特別支援学校が直接対応できることが理想であろ う。すべての盲・ろう・養護学校がすべての障害に対応できる特別支援学校に変わってい けばいいのだろうが,人的資源や物的資源,盲・ろう・養護学校の地域配置を考慮して, 効率のよい改革を行っていくことが必要だろう。県下各地域の視覚障害児,聴覚障害児, 病弱児,知的障害児,肢体不自由児等をどの特別支援学校が支援することが児童生徒にと って一番プラスになるのか,児童生徒や保護者の意見や希望を踏まえながら十分に議論を 尽くして,個々の特別支援学校が対応する障害種について検討していくことが大切である。 また,これまで扱った経験のない障害種に対応しなければならない特別支援学校の場合 は,その障害に対応してきた専門の特別支援学校と連携を図りながら,対応していくこと が望ましいだろう。今後は,特別支援学校同士が連携を深めながら,一人一人の児童生徒 の支援目標・内容等について,情報交換ができるような体制が更に求められてくることに なろう。. (2)特別支援学校のセンター的機能 平成19年4月1日から,盲・ろう・養護学校は特別支援学校へと名称を変更する。具体的 にどう呼ぶかについては,都道府県教育委員会に任せられているが,それはさておき,こ の特別支援学校の役割として,今回改正された学校教育法では ,「特別支援学校において は,第71条の目的を実現するための教育を行うほか,幼稚園,小学校,中学校,高等学校 又は中等教育学校の要請に応じて,第75条第1項に規定する児童,生徒又は幼児の教育に 関し必要な助言又は援助を行うよう努めるものとする」と規定した。これにより,これま - 88 -.

(4) で,小・中学校に在籍する障害のある児童生徒の指導や支援について,盲・ろう・養護学 校は関係をもち,連携を図るということがほとんどなかったが,今後は盲・ろう・養護学 校がこれまで培ってきたノウハウを全面的に提供し,小・中学校の教員への助言・援助に 努めていくことが法制度上において明確になった。いわゆる,特別支援学校のセンター的 機能の発揮である。 しかし,盲・ろう・養護学校においては,在籍している児童生徒等の指導や支援にきゅ うきゅうとしていて,小・中学校に在籍している児童生徒の指導や支援について考え,実 際に学校に出向いて行って,児童生徒の様子を観察したり,教員の話を聞いたり,助言・ 指導に努めたりする等といった活動は思いも及ばないという現状があるのも事実である。 ところが,昨今の教育情勢・財政状況を考慮してみると,何をするにしても現在有して いる人的・物的資源を最大限に活用するという考え方が主流である。つまり,特別支援学 校のセンター的機能の発揮も,この考え方と深く結び付いている。これからの盲・ろう・ 養護学校は,在籍している児童生徒等の教育と地域の小・中学校に在籍する障害のある児 童生徒の教育にかかわっていくこととなり,現状でも多忙の中,更に忙しさが増すという 現実が迫っている。このセンター的機能が十分な効果を上げるためには,いくつかの留意 点を指摘することができるだろう。次にその留意点を挙げ,考察する。. ①小・中学校の現状の理解 障害のある児童生徒の在籍を考えると,小・中学校での在籍と盲・ろう・養護学校での 在籍では,人的環境や物的環境が異なることをまずもって認識する必要がある。小・中学 校において,障害のある児童生徒は,特殊学級か通常の学級に在籍し,子どもによっては 通級指導教室に通って適切な指導や支援を受けている。また,特殊学級に在籍していても, ほとんどの児童生徒が通常の学級との交流学習に参加している現実がある。さらには,通 常の学級に在籍していて,特定の時間のみ,特殊学級でのサービスを受けている児童生徒 もいる。児童生徒の指導や支援を担当している教員は,障害のある児童生徒の教育につい て十分な知識・技能を有している教員から,障害のある児童生徒の教育に関しては初めて 経験するという教員まで,経験年数や実績の幅が広いというのが現状だろう。 これに対し,盲・ろう・養護学校は,制度上また現状においても,障害のある児童生徒 等の指導や支援に関して,専門的なスタッフがそろっており,児童生徒の自立や社会参加 に向けて,専門的かつ恒常的で効果的な実践が行われている。つまり,恵まれた環境が用 意されている。 したがって,盲・ろう・養護学校がセンター的機能を発揮するためには,障害のある児 童生徒が小・中学校において実際,どういう指導や支援を受けているのかを十分に把握し, 理解した上で取り組むことが前提となる。盲・ろう・養護学校で蓄積してきたノウハウを そのまま提供するのではなく,小・中学校の現状に照らして,加除・修正を加えながら, 現実の小・中学校において取組が可能なことを提案することが大切である。 - 89 -.

(5) ②小・中学校に在籍する児童生徒の困っている状況及び小・中学校の教員の困っている状 況の理解 小・中学校に在籍する児童生徒の指導や支援に関して,盲・ろう・養護学校に助言・指 導を要請する場合,困っているのは日々指導に当たっている教員である。それと同時に一 番困っているのは,障害のある児童生徒なのである。特に,LD,ADHD,高機能自閉 症等の障害のある児童生徒の多くは,自分の困っている状況が何とか改善されないかと希 望しているはずである。その子どもたちの生の声をどうにかして聞き取って,適切な支援 に努める姿勢が一番求められてくると考えられる。それに加えて,現実に児童生徒に対応 している教師の困っている状況を共感し,理解した上で助言・指導に当たる姿勢が必要で ある。. ③専門性の向上 センター的機能に関して,小・中学校の教員から助言や指導の要請があるのは,知的障 害児,肢体不自由児等はもちろんのこと,このたびの特別支援教育で対応することとなっ たLD,ADHD,高機能自閉症等の障害のある児童生徒に関してである。このLD等の 児童生徒の指導や支援について,盲・ろう・養護学校の教員が助言・指導に当たる際に注 意しなければならないのは,これらの障害のある児童生徒についての十分な指導や支援の 蓄積をほとんど有していないという現状を改めて認識することである。確かに知的障害児 や肢体不自由児をはじめとする,これまで特殊教育が対象としてきた障害のある児童生徒 の教育については,歴史もあるし,指導や支援の積み重ね・成果等が十分にあり,この点 では小・中学校の教員に対して,適切な助言・指導が可能である。しかし,LD等の児童 生徒は,これまで盲・ろう・養護学校の現場には,ほとんど在籍していなかったという事 実がある。それなのに,小・中学校に在籍しているLD等の児童生徒の指導や支援に関し て,助言・指導をしていかなければならないのであるから,相当の準備と事前学習をして いかなければ対応できないことは自明のことであろう。確かに,これまで特殊教育が対象 としてきた障害のある児童生徒の指導や支援に関するノウハウは,LD等の児童生徒に生 かすことができるのは当然であるが,これまでの知識や経験をそのまま当てはめることは 危険であろう。そのため,盲・ろう・養護学校の教員は,これまで以上に研修を行い,い わば未知の部分であるといってもよいLD等の児童生徒に対する指導や支援の蓄積につい て理解し,学ぶ姿勢が大いに求められてくる。せっかく,小・中学校に出向いて,助言や 指導を行っても,小・中学校の教員のニーズに直接に応えることができないようであれば, センター的機能は掛声だけに終わることになろう。盲・ろう・養護学校の教員は,特別支 援学校の職員として,その専門性に磨きをかけ,あらゆる障害のある児童生徒の指導や支 援を担うことができるよう,研修を積むことが必要なのである。. - 90 -.

(6) (3)「個別の教育支援計画」の作成と活用について 特別支援教育を推進していく上で,大きな鍵を握っているのが「個別の教育支援計画」 の作成と活用であると言っても過言ではない。平成17年度から盲・ろう・養護学校におい て,また小・中学校においては平成18年度から作成されている「個別の教育支援計画」で あるが,これまで,十分に活用されてきたと言えないのが現状である。確かに,この計画 を作成する過程で,障害のある児童生徒を取り巻く関係機関と連携を図ったり,児童生徒 がどのような支援を受けているのかが明確になったりしたという成果はあるのだが,この 計画をツールとして,具体的な支援の在り方を検討したり,支援に取り組むよりどころに なったりしたという実績はほとんどないのが現状である。実際のところは ,「個別の教育 支援計画」を作成することに精力を費やしてしまい,作成し終わったらそこで完了という ような意識になってしまうのも事実である。 したがって今後は,各地区で開催されている特別支援連携協議会において ,「個別の教 育支援計画」を仲立ちとした,教育,医療,保健・福祉,労働等の関係機関の連携の在り 方について十分に審議することによって有効活用を図ることが大切である。 また ,「個別の教育支援計画」を作成する際に,一人一人の児童生徒について,関係機 関が一同に会して,子どもの必要とする支援目標・内容,連携の在り方について審議する ケース会議を実施することができればよいのだが,その時間を生み出すことは到底無理な 状況にあると思われるので,会議をもたないことには支援を始めることが困難な状態にあ る児童生徒から,まず手始めにケース会議を行って ,「個別の教育支援計画」を作成・実 施していくことが現実的な対応と言えるだろう。. (4)保護者との連携 特別支援学校における特別支援教育の実践については,児童生徒や保護者の願い及び希 望に基づいた ,「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成がベースとなる。作 成については,事前に保護者と十分に話し合いをもち,保護者の希望や気持ちに添いなが ら,学校でできること,できないこと,また,家庭でできること,できないこと等を確認, 理解した上で取り組んでいくことが大切である。その際に,話し合いに参加するのは,ほ とんどの場合,母親であろうが,可能であれば,父親も積極的に参加して,自分の子ども の実態や支援目標・内容の確認,また,直接父親の希望をストレートに教師に伝える等し て ,「個別の教育支援計画」の作成や実施に参画することを望みたい。もし,父親が参加 することが不可能であれば,前もって夫婦間でよく話し合う機会を作って,子どもの願い や希望,保護者の願いや希望を出し合って,「個別の教育支援計画」に盛り込む内容が実 のあるものとなるよう,確認・理解し合うことが大切である。特別支援教育には,父親の 参加・参画が重要な意味をもっていることを声を大にして言っておきたい。. - 91 -.

(7) (5)知的障害児童生徒の増加と学区の見直し 現在,知的障害養護学校の高等部の生徒数が増加の一途をたどっており,適切な対応を 行うことが,喫緊の課題となっている。知的障害児の後期中等教育をどのように実施して いけば,生徒の自立や社会参加に結び付くのかといった観点に立って,十分に論議を尽く していかなければならない。高等部の生徒の増加に伴って,学校では,普通教室の不足と いう事態を引き起こしており,特別教室を普通教室に変えて使用したり,一つの教室を間 仕切りで二つの教室にして使ったり,または,仮設校舎を建設して対応したりしている。 しかし,これらの対応は,あくまでも急場しのぎの対応といわねばならず,長期的な見通 しに立って,果たしてこのような対応でよいのかどうか,議論を尽くさねばならないとこ ろであろう。高等部の生徒数の増加にいかにして,長期的な視点に立って対応したらよい のか。これについては,いくつかの選択肢が考えられる。上記の緊急対応の他に,統廃合 により閉校となった高等学校を活用する方法,小・中学校及び高等学校の空き教室を利用 し,分教室を設置する方法,高等学校に特殊学級(特別支援学級)を設置する方法,高等 学校に障害のある生徒を受け入れる制度を作り,特別のコースを設ける方法,既存の知的 障害養護学校の学区を見直し,地域の養護学校に通うという基本的な枠組みを堅持して, 生徒数の適切な配置を行う方法,盲・ろう・養護学校が特別支援学校となってどの学校も 知的障害児の教育を行う方法,新たに知的障害養護学校を建設する方法,高等養護学校を 新設する方法等,対応策は色々と想定できるが,先立つものは資金である。財政状況が特 に厳しい本県では,現実的で効率のよい対応を図ることが求められるであろうが,そうは 言っても,10年,20年という長いスパンを見通した上で,適切な指針を策定することが重 要であろう。この課題への対応を考える上で,養護学校の適正規模を考えてみることも大 切である。知的障害養護学校の児童生徒数が100人~130人が適正規模であると考えると, 本校では,188人の児童生徒数なので,適正規模であると言えないのが現状である。これ では,新設の知的障害養護学校が必要であると言えるのではないか。それに加え,かえで 養護学校も児童生徒数が増加していることを加味すると,新しい知的障害養護学校を作る という案も推進したい対応策の一つとして,位置付けられるのではないだろうか。 知的障害児の教育については,地域の特別支援学校及び小・中学校で行っていくことを 基本的な考え方に据えて対応していくことが,特別支援教育の基本的な考え方にも合致し ていて現実的で望ましい方法でないだろうか。 具体的に言うと,わかば養護学校は近くに肢体不自由を専門とするあけぼの養護学校が あるので,これまでと同様に知的障害のみとする。これに対し,あけぼの養護学校は知的 障害を専門とするわかば養護学校が近隣にあるため,これまでどおり,肢体不自由のみと する。ただし,これまであけぼの医療福祉センターの医療を受けている児童生徒のみを対 象としていたのを拡充して,どの病院にかかっていてもかまわないという条件を加味する 必要がある。次に,わかば養護学校ふじかわ分校,甲府養護学校,かえで養護学校,やま びこ養護学校を知肢併置校とする。ただし,甲府養護学校とかえで養護学校は同じ甲府市 - 92 -.

(8) にあるので,新たな校区を設定する必要が出てくる。ふじざくら養護学校については現状 の知肢併置校を維持する。. (6)名称 盲・ろう・養護学校が平成19年4月1日から特別支援学校に転換するのに連動して,特別 支援学校それぞれの名称をどうするのか,検討していかなければならない。名称について は,都道府県の実情や児童生徒及び保護者の考え方もあるので,国では決めることをせず, 各都道府県に任せている。 さて本県ではどう呼ぶことがよいのか。本来であれば,名称によってどの障害に対応し ている学校かが分かることが大切であると思う。現状では盲・ろう・養護学校という名称 がついているので,どういう種類の障害に対応しているのかが分かりやすい(ただし養護 学校だけでは,知的障害か肢体不自由か,病弱かが分からないという現実はさておいて)。 したがって,盲学校は盲特別支援学校,ろう学校はろう特別支援学校がよいのではない か。盲特別支援学校では視覚障害以外の障害のある児童生徒が学ぶということがあまり想 定できないので,この名称がふさわしいだろう。これと同様に,ろう特別支援学校も聴覚 障害以外の障害のある児童生徒が学ぶことが現実的でないので,この名称でよいだろう。 いやむしろ,県下で唯一の盲特別支援学校,ろう特別支援学校という位置付けであれば, 特別支援学校の文言をあえて付ける必要はないかもしれない。盲学校,ろう学校のままで という考え方も考慮したい。 次に養護学校をどのように呼ぶべきかという議論になる。名前によって,取り扱う障害 種が分かる方がよいという考え方に立つと,わかば養護学校は,わかば養護特別支援学校 になる。しかし,そもそも養護学校から,複数の障害を扱う特別支援学校への転換という 趣旨を踏まえると,養護という文言は取り去り,わかば特別支援学校の方がよりふさわし いのかもしれない。ともかく,それぞれの特別支援学校が複数の障害に対応できる部門を 設置していくのか,そうではなく,これまでと同様な障害種に対応していくのかによって, 名称も,わかば特別支援学校になるのか,わかば養護特別支援学校になるのかが明確にな ってくると考えられる。. 2.小・中学校における特別支援教育推進に係る課題と今後の取組 小・中学校における特別支援教育の推進については,特別支援教室(仮称)の構想をどの ように考えていくかが課題となっている。すべての障害のある児童生徒が通常の学級に在 籍し,必要な時間だけ特別支援教室で指導を受けるという形態であるが,文部科学省は今 回の法改正には盛り込まず,将来の制度改革を見据え,モデル試行するための調査研究を 始めたところである。 まず,すべての障害のある児童生徒が通常の学級に在籍するという考え方であるが,児 童生徒の実態や保護者の意向や希望,在籍することの意味等を十分に研究・論議してから, - 93 -.

(9) 方向性を出すべきであろう。児童生徒の状況においては,通常の学級に在籍することで, より多くの自立を促進するような刺激を受け取ることができる子どもから,在籍すること で,むしろマイナスの刺激を受け,情緒不安や不適応の状態になってしまう子どもまで, 様々な事態が予想できる。 次に,今般,LD等の児童生徒も通級による指導の対象となったことを考えると,方向 性としては,一人一人のニーズをよく見極めながら,これまでの特殊学級でほとんどの時 間を過ごす児童生徒,特殊学級に在籍しているが通常の学級との交流学習に多くの時間参 加する児童生徒,LD等の児童生徒のように通常の学級で指導を受けながら必要な時間だ け通級による指導あるいは特殊学級で指導を受ける場合など,多様な形態があっていいと 思う。これまでの特殊学級や通級指導教室の果たしてきた役割やノウハウを存分に生かす ことで,特別支援教室の構想も反映できるのではないかと考える。将来新たに特別支援教 室を設置しなくても,現状の特殊学級及び通級指導教室を活用することで,特別な支援を 必要としている児童生徒に対応することが,一番の近道ではないか。そのためには,特殊 学級や通級指導教室を担任・担当する教員の増員や研修を強化することが求められるのは 当然であろう。さらに,年度当初決定した教育形態について,児童生徒の状況を勘案しな がら柔軟に変更できるような取組も大切になってくるだろう。いずれにしても,一人一人 の児童生徒のニーズを踏まえた上で,多様で柔軟な教育形態が採用できるような,小・中 学校での体制を作っていくことが,理想である。. 3.特別支援教育推進に係る普及啓発 特別支援教育を推進していく上で忘れてはならないこととして,一般の国民の理解を図 る取組を行っていくこと,これを付け加えさせてほしい。国民の大多数が小・中学校や高 等学校がどんなところで,どんな教育が行われているのかを知っている。なぜか。それは, これまで経験してきているからである。これに対して,盲・ろう・養護学校や特殊学級及 び通級指導教室で行われている教育について,果たして何人の一般国民が知り得ているだ ろう。多分皆無と言っていいのでないか。いや,一般の国民どころか,盲・ろう・養護学 校の教員にして,どれだけ特殊学級や通級指導教室の様子を分かっているのか私自身も含 めて,はなはだ心もとないものがある現状である。つまり,自分が経験してはじめてその 様子を知ることとなるということである。それに加えて,新聞,テレビ,ニュース等では, 毎日のように小・中学校及び高等学校での様子が記事になったり報道されたりしている。 これにより,一般の国民は,教育問題に関心をもたざるを得ない。ところが,特殊教育に ついての記事や報道はこれに比べて,まことに少ない。トピックとして時々取り上げられ ることはあっても,それが日常的に掲載・報道されることはない。プライバシーの保護や 特殊教育が少数派であるということを考慮しても,現状のままの情報提供では,特別支援 教育についての国民の理解など,程遠いものがある。そこで一つの提案だが,政府の公報 で平成19年4月1日から特別支援教育が行われるという情報提供をしたらどうだろうか。マ - 94 -.

(10) スメディアを活用することによって,わずかでも国民の注意や関心を引くことに結び付く のではないか。情報社会にあっては,このような取組が特別支援教育を推進する影の原動 力となることを信じて疑わないものである。 さて,文部科学省では,平成18年度の新規事業として,特別支援教育の理念と考え方に ついての普及啓発を図るため,保護者,教育関係者等を対象とした全国フォーラムを開催 することになっているが,この際,保護者については障害のある子どもをもっている父母 に限らず,一般の国民・保護者が参加できるような働きかけや宣伝が大切になってくると 考える。ぜひ,取り組んでほしい。. Ⅳ. おわりに. 平成19年4月から特殊教育から特別支援教育へと転換する。本県においても,特殊教育 振興審議会が開催され,特別支援教育の在り方について答申が出されることとなる。その 答申に基づいて,改革が行われていく。財政状況が厳しい本県においてはその内容も縮小 せざるを得ない状況になるかもしれないが,本稿においては,今後の本県の特別支援教育 の在り方について,少しでもその方向性を考える上で役に立つことを希望して私見を挙げ させていただいた。内容的には理想的なことばかり書いてあって,現実から遊離している との批判は免れないであろうが,あくまでも一人の養護学校教員としての個人的な考え方 を示したつもりである。今後も一人一人の障害のある児童生徒の幸福及び社会参加と自立 を目指して,最も望ましい特別支援教育が展開されることを期待して,検討を続けていか なければならない。. 文献 1) 山梨県教育委員会(2005)「個別の教育支援計画」作成の手引き 2) 中央教育審議会(2005)「 特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」 3) 山梨県教育委員会(2006)山梨県特別支援教育推進検討委員会報告書 4) 文部科学省(2006)平成18年度. 盲・聾・養護学校専門性向上事業文部科学省行政説明. (骨子). - 95 -.

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