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ケニアで見た養蜂

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Academic year: 2021

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ミツパテ科学

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ケニアで見 た養蜂

筆者は,

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月より

1

995

8

月まで 家畜飼育 を専門 とす る青年海外協力隊員 とし て,ケニア共和国に派遣 された.任国では技術 訓練応用科学省 ウカンパ農業専門学校 に配属 と なり,家畜飼育における理論 ・実技の授業を担 当,また付属農場次長 として生産管理指導を行 った . ウカンパ農業専門学校のあるキツイ県 は,首 都ナイロビか ら南東へケニアの中南部に広が り 高度

9

00

m∼300

m,29,

390

km

2の広大な土地 を有する.その大部分は半乾燥地 ・乾燥地で年 間降雨量 は

600

mm

前後

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月中旬か ら

1

月 初旬の大雨季

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月中旬か ら

5

月中旬の小雨季 に集中 している.住民 は自給用の トウモロコ シ ・豆類などの作物生産を行いなが ら,牛 ・山 羊の牧畜 も生業に組み込 まれている.表土の流 出 ・連作による地力の低下 ・農業技術の晋及度 の低さなどに伴 うて慢性的な食糧不足に悩まさ れていた. このような地域の自然環境に合 った農業の開 発に必要な技術 ・知識を持 った人材の育成を目 的に,当校では食用作物 ・園芸作物 ・土壌学 ・ 農業土木 ・農業機械そ して基礎教養課 目など, 幅広いカ リキュラムが組 まれていた.筆者が担 当 した

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で も家畜育種 ・ 繁殖 ・病理などの理論的学習やウシ・ヒツジ ・ ブタ ・ニワ トリは勿論のこと, ウサギ ・ロバ ・ ラクダ ・ミツバチ ・魚そ して

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と 呼ばれるバ ッファローやガゼルなども授業内容 に含まれており, 日本で畜産を,特に酪農を専 攻 した筆者 を戸惑わせた. また付属農場 は,

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の土地を有 し, ここで食用 ・園芸作物 や果樹が栽培され

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高見 早苗

呼ばれる熱帯牛が放牧 されていた. しか し,水 不足,農場職員の技術水準の低さなどか ら生産 性は非常に悪 く,筆者 は,新 しいプロジェク ト 導入による農場組識の活性化 ・職員への技術訓 練 ・生徒の学習への寄与 などを考え,学校側 と 協議検討を重ねた.その結果,養蜂新技術の導 入をはかることとなった.その選択理由として は,①飼養に必要な水量が少ない.②農場敷地 内で多 くの蜂群を飼養す るに十分な蜜源植物が ある.③導入 にあたっての資本金が少額であ り,ハチは自然の分蜂群を容易に捕獲できる. ④飼養管理に高額の人件費 ・管理費がかか らな い.⑤基本的知識技術を習得すれば,容易に飼 養管理ができる.(釘ハチ ミツはキツイ県におい て伝統的主要産物の-つである.などが挙げら れた. 学校敷地内に, ケニア ・トップ ・バー巣箱

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と呼ばれる改良巣箱 図1 ウカンパ農業専門学校に設置されたケニア・ト ップ・バー式巣箱

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82 図2 伝統的な丸太巣箱 が設置されていた (図 1). これは1983年頃, 当校の設立 ・運営の援助活動を していた,カナ ダのボランティアによって導入 されたというこ とであった. しか し,その後,管理の不徹底か ら巣箱 は傷み,-チもすべて逃去 し,使用に耐 えない状況 であ った. また伝統 的な丸太巣箱 (loghive,図2)もいくつかあったが,これ ら にも蜂がいる様子 はなかった. 新技術の導入を図 るとはいえ,専門的養蜂知 識 を持っ教師 も,実務 に熟練 した農場職員 もい ず,筆者 自身が巣箱を見 るのも初めて という素 人で,皆 目見当がつかなか った.そこで,教師

2

名 (含筆者),農場 と実習室の職員各 1名の計 4名が, 地元の農民訓練所で養蜂の研修を受 け た.講義,実習,モデル農場や精蜜工場見学な ど,筆者にとって, この新 しい分野 は興味が尽 きなか った.研修後,随時養蜂普及員の指導を 仰 ぎなが ら,巣箱製作実習 (図 3),養蜂場への 設置,飼養管理,収蜜,授業を行 っていった. キツイ県では,その住民であるカ ンパ族によ って伝統的 に養蜂が営 まれ, ケニアにおいて 「キツイのハチ ミツ」と言 うと,他部族 も含め垂 延の的である.高額で取引 きされ,農民にとっ て重要な副収入 となっている.養蜂 は男性の仕 事 とされ,昔 は,巣箱の所有数が多い程実力の 有 る男性 として一 目置かれたという.筆者の生 徒 にも, 父親が巣箱

50

を所有す ると言 う青年 が いて,他 の生徒 か ら驚嘆 の声 があが って い た.現在では, 自家用に数箱のみ所有す る者が その大半である.彼 らは,直径30cm,長 さ1m はどの丸太を くり抜 いて両端 に木製の蓋を付け た巣箱 (Mwatu)杏,自分 の所有地内の木の枝 か ら吊 り下 げ,分蜂群が営巣す るにまかせてい る. 巣材 となる樹種 は, Terminalia brownii, Newtoniabuchaniiなどである.巣箱内側の天 井部に蜂ろうを塗 ってお くと, ミツバチが これ を礎 に巣板を送 る.利用されるのは野生のアフ リカ蜂で,分蜂や逃亡 は年中み られた.ブーン, ザワザワッと激 しい雨が木の葉を打っような音 が近づいて きて も, ミツバチの習性を知 らない 著者 は,初めのうち何が起 こっているのか理解 できなか った.家の中にいて も聞 こえるその昔 に,真顔で 「飛行機

?

」と尋ねて笑われた事 もあ った.キツイ県は前述のように,乾燥 ・半乾燥 地ではあるが,蜜源 となる樹木にはこと欠かな い. それ らはAcacia属の mellitera,tortilis,

xanthoploeaや Croton megalocarpus,Melia

volkensii,Piliostigmathonningiiなどである.

3

月末

∼4

月が採蜜の適期で, 時期を見 はか ら って蜜の入 った巣板 ごと取 る.その作業 は全群 が帰巣 している夜間に行なわれ,手順 としては (訂上半身裸 になる.以前 は全裸で自分の尿を体 に塗 っていたとも聞いた.②二股の木を用 いて 巣箱 の受台を作 る.③木 に登 り巣箱 を吊降 ろ す.④松明の煙を吹 きかけなが ら蓋をはずす. 松明は乾 いた草をきつ く束ねたもの (図 4).⑤ 巣板を取 り出す (図 5).(参蓋を して吊 り上げ元 に戻す.一つの巣箱か ら7-20kg収穫で きる が, これには,巣板 ・幼虫 ・嫡 ・-チ ・花粉 ・ 草の灰などが混在 している.貴重品の-チ ミツ ほ訪問客への最高の持てな しの一つで,著者 も 地元の友人宅で幾度か勧め られたが,濃褐色の 蜜に昆虫の頑や腹部 ・焦げた草 ・潰れた巣片が 混 り,ね っとりとした様子 に生理的拒否感を覚 図3巣箱製作実習

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84 などの欠点があった. これ らは順次改良 されて ゆ くであろう. 養蜂 に関す る専門書 はまった く手 に入 らなか った.地元の農民訓練所でさえ,20年程前にイ ギ リスで発行 されたものが一冊備えてあるだけ であった.その反面,小中学校の農業の教科書 にも,重要な技術 としての養蜂が紹介 されてい る.これ らに,70年代の畜産大事典,偶然手 に 入 った坂上昭一氏の著書 「ミツバチの世界」そ して協力隊事務所か ら送 って もらった 「ミツバ チ科学」が筆者 にとって,すべてであった.養 蜂 という特殊な分野のため,他 に相談できる日 本人関係者がな く,手 さぐりで,経験を通 して 生徒 と共 に学んだ.本棚 に営巣 した蜂群 (図 6) を観察 していたのに,生徒達が食べて しまった こと,筆者 よりも,作業の助手を して くれる職 員の方がよ く刺 され,不公平だと文句を言 って いたこと, スムシの被害を受 けたボソボソの巣 板を初めて見て, どうしていいのか困惑 したこ と,乾季になると水を求め,た くさんの ミツバ チが台所 に入 ってきたことなどが優 しく思 い出 される. 現在 アフ リカ蜂化 ミツバチが,その狂暴性 ・ 繁殖力 ・逃亡性のために中南米の養蜂産業に打 撃を与え, さらに北米の養蜂家達がその北上 に 怯えているという事実を帰国後 に知 った.正直 なところ筆者 は,そんなに恐 しいハチと暮 して いたのか と改めて驚いている.ひとっには著者 図5 本棚に営巣した蜂群 にとって野生のアフ リカ蜂が初めて飼養 した ミ ツバチで,育種 された優良系統のイタリアンな どを知 らず,比較す ることな く 「これが ミツバ チだ」 と思 っていたため, また任地の人々が蜂 に対す る恐怖心 もな く,生活の一部のように扱 っていたためだろう.実際,内検,採蜜時は別 として,蜂場の見廻 りや見学者への案内などで は,特別な装備 もな く巣箱 に近付 くことができ た.ただ し逃亡性 は強 く,餌,蜜源の不足する 乾季には箱に執着す ることな く飛び立 って しま うことも多か った。 今後,ケニアの農村地域発展計画に,養蜂を 植林,畜産,濯概などの事業 と共に組み込むこ とは,農民の生活向上のために非常に有効であ ると感 じた.ある地域では伝統的に行なわれ, 住民の新技術収得への意欲 も高い.協同組合な どで,集荷場,販路,回転資金などが準備 され 適正 に運営 されるな らば,農民個々人 地域 に とり現金収入だけでな く, 女性の自立, agr o-forestryなどの面 で も大 きな期待が寄せ られ るであろう. 最後に,筆者に執筆の機会を与えて下 さり, 御助言,資料の提供を下 さった.玉川大学吉田 忠晴博士 に感謝 しお礼申 し上 げたい. (〒757-02 厚狭郡楠町船木 3841-2) 主 な参考文献 池野旬.1989.ウカ ンパニ東部 ケニアの小農経営.ア ジア経済研究所. Mann,T.1976.Beesarewealth. Townsend,G.F.1982.ミツバチ科学3(2):49-54, 山内耕ニ 1994.ケニア半乾燥地 の樹木.国際協力事 業団.

TAXAMl,SANAE. Beekeeping experienced in Kenya. HoneybeeScience(1996)16(2)・.81-84. 3841-2,Funaki,Kusunoki,Asa.Yamaguchi,757 -02Japan.

The author of this report was sent by Japanese Governmentasa memberofJapan Overseas Cooperation Volunteers to teach Livestock Science in Ukamba Agricultural SchoolinKenya. Herexperienceonbeesand beekeepingwasdescribed.

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83 図4 伝統的な巣箱からの採蜜 たいまつで蜂を煩し (左),長い刃物で巣板を切り出す (右) えた. これを口に入れよ く噛んだ後 ろう分 と異 物を吐 き出す.筆者 もロに入れてみたものの, 噛むと潰れる巣片や蜂の体の食感には馴れなか った.採蜜量の多 い時 は,大 きな容器 に入れ数 日置 き上部 に浮 いて くる巣片 などと蜜液 を分 離,蜜 は販売 し現金に換える.残 りは子供など によ り食べ られ るが, ミー ドのよ うな発酵酒 (uki)造 りに使われ ることも多い.大 きなひょ うたんの中で水 に溶 き, ここにゆでて乾燥 させ たソーセージツ リ- (Kigeliaatricana)の未熟 乗を入れると発酵を促進す る. これを調理場の か まどの側 に置 くと3日 ぐらいで飲 め るよ う になる. この地酒造 りは女性の仕事だが,飲む のは男性だけに許 されている.色 は,透明に近 い乳白色か ら淡い卵黄色 までさまざまで,使用 される原料によるという.黄色 っぽい物 は花粉 の栄養が有 ると彼 らに好 まれていた.筆者 は女 性であるが,外国か らの客人だか ら飲めと歓め られる事 もあり, はのかな甘みと清涼感があっ たのを覚えている. カンパ族の社会でハチ ミツ は, この他にも結婚花嫁 の父-の婚資として, 薬草 と混ぜ病気治療に,家畜 ・穀物 との交換 に と幅広 く利用 されると聞 いた. アフ リカ蜂の他にもう

1

種,蜜を造 るという -チがいた.体長6mmほどで,頭 ・胸 ・腹部 すべて丸 くて黒い.体 に比べ触角は大 きく,い つ も忙 しげに動か してお り,飛糊すると,薄い 透明の羽は見えな くなる.刺す こともな く,上 等の蜜を造 り貯めている.筆者宅の鍵穴に営巣 した 1群がいて,鍵穴の口をろうで封 じ,ハチ 1匹が通れ るくらいのス トロー状 に突 き出 した 巣門を造 り,一匹一匹交互 に出入 りしていた. 何十匹 もの蜂がホバ リングしなが ら,入 る順番 を待 っているが,驚いた時にはこれ らが,スル スルと吹い込 まれるように巣の中に入 って しま う.ある時筆者 は,蜜を採 り味わってみようと 試みたが,巣口を押 し潰 して しまっただけで失 敗に終 った.蜂にはかわいそ うなことを したと 心 を痛 めていたが,次 の 日巣 ロは元通 りにな り,門番蜂が中か ら様子を伺 っていた. このか わいい蜂を日本に帰国 してか らも忘れ られず, 図鑑 などで調べてみたが,ハ リナシバチの一種 ではないかと考え られるだけで,結局解 らなか った. この件を含め,-チについての知識がな いことが悔やまれる. ケニアではラングス トロス式巣箱 は使用され ていない.一時持 ち込 まれた時期 もあったが, アフリカ蜂の性質, シロア リ,サファリアント の問題 などか ら一般 には普及 しなか った.級 に,ギ リシャのバスケ ッ ト巣箱を基本に改良 さ れたケニア ・トップ ・バー巣箱が考案され,伝 統的な丸太巣箱 にとって代 りつつある. この巣 箱 は,巣蜜枠だけを取 り出す事が可能で,効率 良 く良質のハチ ミツ,蜂 ろうを採取で きる.必 要 に応 じて,給餌板 ・隔王板を付ける事 もでき るが,隔王板 はあまり必要 とされない.巣内の 検査,調整なども容易にできるため,婦人によ る管理が可能 となり,農家の婦人を中心 に,義 蜂組合が作 られた地域 もある.筆者 もこの巣箱 を使用 したが,内検時などに巣が トップ ・バー か ら落ちて しまいやすい. また支柱か ら針金で 吊るしてあるため,揺れやす く作業が しにくい

参照

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