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場面緘黙児支援における環境因子への介入の効果の検証 ―支援会議による間接的介入を通じて―

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Academic year: 2021

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長野大学紀要 第38巻第1・2号合併号 39―40頁 2016 - 39 - 研究実績の概要 場面緘黙とは、話す力を有しているにも関わら ず、学校や職場など特定の社会的状況において話 すことができなくなってしまう状態である。ICF (国際生活機能分類)(WHO, 2001) では、「障 害」を本人に起因する医学的な問題から直線的に 派生するだけでなく、本人自身や本人を取り巻く 様々な背景因子との相互作用の中で生じる「活動」 の制限や「参加」の制約であると定義している。 場面緘黙の実態を明らかにし支援方法を確立す るためには、場面緘黙児自身のみならず、本人を 取り巻く様々な環境についての検討が必要であ ると考えられた。しかしこれまで、わが国におい ては場面緘黙児を取り巻く環境因子について検 討を行った研究は存在しない。本研究では場面緘 黙児を取り巻く環境因子をアセスメントし、その 環境因子に介入する方法について検討を行うこ とを目的とした。本年度の研究では、場面緘黙児 自身ではなく学校等への介入を行い、対象とする 場面緘黙児の症状にどの程度改善がみられたか を検討した。介入の手段は、学校等を構成する教 職員に対して「支援会議」による個別の援助要請 とした。 対象は小学校・中学校に在籍する場面緘黙児と した。対象児はすべて学校では音声言語による充 分なコミュニケーションを行うことが困難であ ることを主訴として筆者に相談歴があり、筆者に よって場面緘黙の症状を示すことが確認された 者であった。対象児の在籍する学校において「支 援会議」を実施し、その前後にSMQ-R(かんもく ネット, 2011)による場面緘黙の程度の測定を 行った。SMQ-Rは、場面緘黙児の緘黙症状のう ち、話しことばに関する部分を定量的に測定する ことのできる質問票であり、Bergman et al. (2008) の 作 成 し たSMQ ( Selective Mutism Questionnaire)をかんもくネット(2011)が日本 語版として翻訳したものである。SMQ-Rの事前 の実施と事後の実施の間は、6ヶ月以上1年未満と し、事後の測定は支援会議実施後3ヶ月以上経過 してからとした。SMQ-Rの記入は保護者が行っ た。なお支援会議の参加者、実施形態及び実施時 期については学校によって異なるため、要件とし て以下の3点を満たしているものとした。①少な くとも保護者及び担任は参加していること、②情 報共有だけでなく対象児の個別の介入内容及び 方法について検討が行われること、③支援会議の 場として設定されていること(ただし名称は異 なっていても構わない)。 10名の場面緘黙児に対して、研究協力への同意 を得て計17回の支援会議を実施した。このうち、 支援会議実施後3ヶ月以上経過、事前の実施と事 後の実施を6ヶ月以上1年未満空けてSMQ-Rによ るデータ収集ができたのは3名のみであった。該 当者が少ない理由は、事後のSMQ-Rのデータ収 集は今後になる者が多いためである。従ってデー タの得られた3名について結果を述べる。 支援会議を挟んだ2回のSMQ-Rの測定で数値 *社会福祉学部准教授

(準備研究)

場面緘黙児支援における環境因子への介入の効果の検証

―支援会議による間接的介入を通じて―

高 木 潤 野

* Junya TAKAGI

(2)

長野大学紀要 第38巻第1・2号合併号 2016 40 - 40 - が上昇したのはbの1名であった。aについては、 これ以降のSMQ-Rの測定(4回)においては7~ 11の範囲であり、わずかに低下する傾向がみられ たと言える。cについてはこれ以降のSMQ-Rの測 定(3回)においても13~14の範囲であり、変化 がない傾向を示している。上昇を示したbについ て、SMQ-Rの数値の変化を示した。この図から、 支援会議後に上昇する傾向がみられたことが分 かる。従ってこの1名については、支援会議の介 入効果がみられた可能性が考えられる。本研究で は該当者が3名と少なかった。今後対象を増やし、 本研究で得られた知見について実証することが 課題である。 表 SMQ-Rの変化 対象 学年・性別 A:SMQ-R 事前 B:支援会議日 C:SMQ-R 事後 a 小学5年生・女児 12 (A+46日) 10(A+132日) b 小学3年生・男児 10 (A+9日) 15(A+112日) c 小学3年生・女児 12 (A+13日) 13(A+118日) 図 bのSMQ-Rの変化

参照

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