<論説>景観政策領域における地方自治体の変化について--倶知安町およびニセコ町における景観地区指定を題材として
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(2) し て 二〇 〇 四 年 に制 定 さ れ た のが 、 景 観 法 であ った 。 も ち ろ ん 、 従 来 の ソ フト な 政 策 手 段 が 効 果 を 発 揮 し て こな か っ. た わ け では な いが 、 実 効 性 あ る 政 策 手 段 が 与 え ら れ る こと で、 地 方 自 治 体 の景 観 政 策 に変 化 が 生 じ る 可 能 性 は 十 分 に. 考 え ら れ る 。 ま た 、 指 定 確 認 検 査 機 関 制 度 の導 入 によ る 行 政 指 導 の実 効 性 の低 下 か ら 、 実 効 性 の高 い手 段 に関 す る 研. 究 の意 義 は 高 ま って いる 。 本 稿 の目 的 は 、 事 例 研 究 を 通 じ て、 こう し た 変 化 を 把 握 し 分 析 す る と ころ にあ る 。. では 、 景 観 政 策 にお け る 変 化 を 把 握 す る の にふ さ わ し い事 例 の選 定 は ど のよ う にす れ ば よ い であ ろ う か 。 本 稿 は そ. のた め の判 断 基 準 と し て、 ハード ル の高 さ を 採 用 す る こと と し た 。 高 い ハード ルを 飛 び 越 え た か ら には 、 大 き な 変 化. の可 能 性 が あ る は ず と 考 え る の であ る 。 そし て、 こ の ハード ル の高 さ と いう 基 準 に従 え ば 、 政 策 手 段 と し ては 景 観 地. 区 を 採 用 す る のが 適 切 であ ろ う 。 詳 細 は 第 二節 に譲 る が 、景 観 地 区 は 、景 観 法 のな か で最 も実 効 性 の高 いも の であ り、 そ の指 定 によ り 建 築 物 の形 態 意 匠 や 高 さ に つい て コント ロー ルが 可 能 と な る 。. 手 段 に つい ては 景 観 地 区 を 選 択 す る と し て、 次 に取 り 上 げ る べき 事 例 を 選 び 出 す 必 要 が あ る 。 実 効 性 の高 い政 策 手. 段 が 採 用 さ れ て いる 以 上 、 ど の事 例 にも 大 き な 変 化 が 伴 って いる 可 能 性 が あ る が 、 か ね てよ り 景 観 政 策 に対 し て積 極. 的 に取 り 組 ん でき た 自 治 体 の場 合 には 、 そ の延 長 線 上 に位 置 づ け う る 可 能 性 も あ り 得 る 。 そ こ で本 稿 では 、 新 た に景. 観 政 策 に取 り 組 も う と し た 自 治 体 を 取 り 上 げ てみ た い。 ま た 、 景 観 地 区 指 定 に必 然 的 に伴 う 指 定 後 の事 務 負 担 を 鑑 み れ ば 、 自 治 体 の規 模 も 考 慮 に入 れ る 必 要 が あ る であ ろ う 。. さ て、 こう し た 選 定 基 準 を 設 定 し た 上 で、 二〇 〇 八 年 一〇 月 一日時 点 の景 観 地 区 指 定 事 例 リ スト を 眺 め てみ る こと. にし よ う 。 こ の時 点 で、 全 国 で 一三 の市 区 町 にお い て全 二三 地 区 の指 定 が な さ れ て いる が 、 そ の中 で最 も 目 を 引 く の. が 倶 知 安 町 にお け る ﹁ピ ラ フ高 原 景 観 地 区 ﹂ であ る 。 人 口約 一五 、 五 〇 〇 人 、 職 員 数 約 一七 〇 名 の自 治 体 であ り 、 景. 2(89). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(3) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 観 地 区 指 定 の取 り 組 み が な さ れ る ま では 景 観 条 例 は 制 定 さ れ て いな か った 。 こ のよ う な 自 治 体 にお い て、 景 観 地 区 指. 定 が な さ れ た と す る な ら ば 、 そ こ には 大 き な 変 化 を 見 出 し う る 可 能 性 が あ る 。 そ こ で本 稿 では 、 倶 知 安 町 にお け る 景. 観 地 区 指 定 を 事 例 と し て取 り 上 げ る こと と す る 。 同 町 にお い て、 ど のよ う にし て景 観 地 区 指 定 が 可 能 であ った のか 、 ま た 、 そ の後 の運 用 状 況 や そ の変 化 が いか な る も の であ る か に つい て議 論 し てみ た い。. た だ 、 それ に先 立 って次 の 二点 に つい て言 及 し てお く 必 要 が あ る 。 第 一に、 分 析 対 象 であ る が 、 本 稿 では 建 築 物 の. 外 観 を 中 心 に据 え る こと と す る 。 確 か に、 景 観 は 建 築 物 の外 観 のみ によ って構 成 さ れ る も の でも な いし 、 逆 に、 建 築. 物 の外 観 の良 さ が 必 ず し も 好 ま し い景 観 に結 び つく わ け では な い。 農 作 業 に い そし む 農 民 の振 る 舞 い等 が 、 農 村 ら し. い雰 囲 気 を 醸 し出 す の に貢 献 し て い る よ う に、 そ の場 に お け る人 々 の動 き も 景 観 を 構 成 す る 重 要 な 要 素 であ る。 逆. に、 如 何 に歴 史 的 に価 値 のあ る 建 築 物 であ っても 、 それ が 大 き な 音 の発 せ ら れ る 娯 楽 施 設 と し て利 用 さ れ て いれ ば 、. 外 観 の良 さ は 台 無 し にさ れ てし ま う 。 た だ 、 本 稿 では 、 議 論 の範 囲 を 限 定 す る た め に、 建 築 物 の外 観 を 中 心 的 な 対 象 にす る こと にす る 。. ま た 、 本 稿 では 、 倶 知 安 町 に加 え て ニセ コ町 にお け る 景 観 地 区 指 定 も 取 り 上 げ る こと と す る 。 な ぜ か と 言 え ば 、 倶. 知 安 町 で の景 観 地 区 指 定 に続 い て、 隣 の ニセ コ町 でも 景 観 地 区 指 定 が な さ れ てお り 、 両 町 にお け る 景 観 地 区 指 定 は 一 連 のも のと み な す べき も のだ か ら であ る 。. 3(88).
(4) 一一 、 景 観地 区制度 と 関連 制度. 前 節 では 簡 単 に触 れ る にと ど め た が 、 本 節 では 、 景 観 地 区 指 定 過 程 を 分 析 す る に先 立 って、 そ の制 度 を 特 に指 定 の. ハード ルと いう 観 点 か ら 詳 細 に論 じ てお く こと と し た い。 こ の こと によ って、 抑 え てお く べき ポ イ ント が 事 前 に明 確 にな る も のと 考 え て いる 。. 先 述 のよ う に、 景 観 法 で用 意 さ れ て いる 建 築 物 の外 観 コント ロー ル手 段 の中 で最 も 実 効 性 が 高 い のが 景 観 地 区 であ. る が 、 そ の指 定 には 種 々 の制 度 的 制 約 が 存 在 し て いる 。 第 一に指 摘 でき る のが 指 定 権 限 と 適 用 区 域 に起 因 す る も の で. あ る 。 景 観 法 に用 意 さ れ て いる 多 く の手 段 が 、 景 観 行 政 団 体 が 景 観 計 画 区 域 にお い て適 用 す る も の であ る の に対 し 、. こ の景 観 地 区 には 例 外 的 な 点 が あ る 。 ま ず 、 そ の指 定 権 限 は 景 観 行 政 団 体 では な く 、 市 町 村 に与 え ら れ て いる 。 国 土. 交 通 省 によ る 制 度 解 説 か ら判 断 す る 限 り で は、 景 観 行 政 団 体 では な い市 町 村 に よ る景 観 地 区 指 定 は 想 定 さ れ て いな. か った よ う であ るが 、 制 度 的 には 可 能 であ る 。 よ って、 こ の点 にお い ては 指 定 の ハード ルは 低 いと も 言 え る が 、 景 観. 計 画 区 域 が 都 市 計 画 区 域 と 関 わ り な く 設 定 でき る の に対 し 、 景 観 地 区 は 都 市 計 画 区 域 又 は 準 都 市 計 画 区 域 にお い てし か 指 定 す る こと が でき な い。. こ の両 者 の区 域 のう ち 、 準 都 市 計 画 区 域 に つい ては 簡 単 な 説 明 が 必 要 であ ろ う 。 準 都 市 計 画 区 域 は 、 中 心 市 街 地 活. 性 化 を 目 的 と す る ま ち づ く り 三 法 の 一つと し て、 二〇 〇 〇 年 に都 市 計 画 法 が 改 正 さ れ た 際 に導 入 さ れ た も の であ る 。. 適 用 対 象 と し て想 定 さ れ て いる のは 、 イ ンタ ーチ ェンジ 周 辺 や 幹 線 道 路 沿 線 で、 都 市 計 画 区 域 か ら 外 れ て いる が 開 発. 4(87). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(5) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 圧 力 の高 ま って いる 地 域 であ る 。 準 都 市 計 画 区 域 と は 、 ラブ ホ テ ルや 大 規 模 集 客 施 設 の立 地 が 予 測 さ れ る こう し た 地. 域 への指 定 によ り 、 将 来 的 な ま ち づ く り に対 し 悪 影 響 を 及 ぼす よ う な 開 発 を 抑 制 す る た め に創 設 さ れ た も の であ る 。. こ のた め 、 都 市 計 画 区 域 と 異 な り 、 そ の都 市 計 画 に整 備 、 開 発 及 び 保 全 の方 針 や 都 市 計 画 事 業 が 規 定 さ れ る こと は. な く 、 主 に開 発 抑 制 を 主 眼 と す る 、 用 途 地 域 、 特 定 用 途 制 限 地 域 及 び 高 度 地 区 等 の補 助 的 地 域 地 区 が 指 定 さ れ る だ け. であ る 。 ま た 、 準 都 市 計 画 区 域 に指 定 さ れ る と 、 都 市 計 画 区 域 と 同 様 に建 築 基 準 法 第 三 章 の規 定 、 いわ ゆ る 集 団 規 定 が 適 用 さ れ る よ う にな る 。. こう し て導 入 さ れ た 準 都 市 計 画 区 域 制 度 であ った が 、 実 際 の指 定 事 例 は 多 く は な か った 。 そ の 一因 と し て指 摘 さ れ. て いる のは 、 指 定 権 限 が 市 町 村 にあ った こと であ る 。 市 町 村 と し ては 、 地 元 の活 性 化 に つな が る の であ れ ば 、 大 規 模. 集 客 施 設 を 拒 む も の では な く 、 そ の抑 制 効 果 を 持 つ準 都 市 計 画 区 域 指 定 に対 し ては 、 ど う し ても 後 ろ 向 き と な ら ざ る. を 得 な か った の であ る 。 た だ そ の後 、 二〇 〇 六 年 のま ち づ く り 三 法 改 正 によ って、 準 都 市 計 画 区 域 の指 定 権 限 は 市 町. 村 か ら 都 道 府 県 へと 変 更 さ れ 、 そ の指 定 要 件 が 緩 和 さ れ て いる 。 これ によ り 、 確 か に準 都 市 計 画 区 域 の指 定 事 例 は 増. 加 し て いる が 、 逆 に、 市 町 村 だ け の判 断 で準 都 市 計 画 区 域 指 定 を 行 う こと は でき な く な った 。. 景 観 地 区 に関 す る 法 制 度 上 の第 二 の制 約 と し て挙 げ ら れ る のが 、 運 用 上 のも の であ る 。 景 観 地 区 は 、 都 市 計 画 の 一. つと し て指 定 さ れ る た め 、他 の地 域 地 区 と 同 様 に、種 類 、位 置 、区 域 、面 積 及 び名 称 が規 定 さ れ な け れば な ら な いが、. これ ら に加 え て、 ﹁建 築 物 の 形 態 意 匠 の制 限 ﹂、 ﹁建 築 物 の 高 さ の最 高 限 度 又 は 最 低 限 度 ﹂、 ﹁壁 面 の位 置 の制 限 ﹂ そ し て ﹁建 築 物 の敷 地 面 積 の最 低 限 度 ﹂ と い った 内 容 が 規 定 さ れ る 。. これ ら の制 限 のう ち 、 景 観 地 区 に最 も 特 徴 的 な のは 、 最 初 の ﹁建 築 物 の形 態 意 匠 の制 限 ﹂ であ る 。 第 一に、 他 の三. 5(86).
(6) つが ﹁必 要 な も のを 定 め る も のと す る ﹂ と さ れ て いる の に対 し 、 こ の制 限 だ け が 景 観 地 区 に必 ず 規 定 さ れ な け れ ば な. ら な い。 第 二 に、 他 の三 つの制 限 が 建 築 確 認 の対 象 と な る の に対 し 、 こ の制 限 に対 す る 適 合 性 の審 査 だ け は 、 市 町 村 ② が 自 ら 行 う こと と さ れ て いる 。 建 築 物 の高 さ の最 高 限 度 等 は 、 客 観 的 な 基 準 を 設 定 し て建 築 確 認 の対 象 と さ れ る べき. であ る 。 これ に対 し て、 形 態 意 匠 の制 限 に つい ては 、 客 観 的 な 審 査 基 準 を 策 定 せ ず に柔 軟 な 対 応 の余 地 を 残 し てお く 方 が 、 そ の地 域 にふ さ わ し い景 観 形 成 と いう 点 にお い て好 ま し いか ら であ る 。. 景 観 地 区 内 で建 築 物 等 の建 築 等 を 行 う 場 合 に は 、 こ の形 態 意 匠 制 限 への 適 合 性 審 査 を 原 則 的 に受 け る 必 要 が あ る. が 、 市 町 村 は こ の審 査 を 、 申 請 書 を 受 理 し た 日 か ら 三 〇 日 以 内 に行 わ な け れ ば な ら な いと さ れ て いる 。 も ち ろ ん 、 マ. ン セル 値 のみ に基 づ く 客 観 的 な 色 彩 規 制 を 設 定 す る こと も 可 能 であ る 。 だ が 、 マン セル 値 のみ によ る 規 制 に つい ては. 種 々 の限 界 が 指 摘 さ れ てお り 、 そ の場 所 に相 応 し い景 観 を よ り 強 く 希 求 す る の であ れ ば 、 材 質 や 背 景 等 に応 じ た 柔 軟 な運用が必要となる。. そし て、 こ の規 定 の存 在 が 、 特 に小 規 模 自 治 体 にと って運 用 上 の ハード ルと な る の であ る 。 仮 に、 そ の長 が 特 定 行. 政 庁 と し て の顔 も 持 って いる 自 治 体 であ れ ば 、 必 ず そ の職 員 の中 に建 築 主 事 が お り 、 こ の適 合 性 審 査 を 行 う 専 門 的 ス. タ ッフも 整 って いる であ ろ う 。 だ が 、 建 築 主 事 を 設 置 し て いな い市 町 村 の場 合 には 、 景 観 地 区 の審 査 業 務 を 行 いう る だ け の陣 容 が 整 って いる か ど う か は 疑 問 の余 地 な し と は し な い。. 京 都 市 で は、 形 態 意 匠 審 査 業 務 の実 施 に先 立 ち 、 ﹁建 築 物 のデ ザ イ ン審 査 に つ い ては 、 デ ザ イ ン基 準 の見 直 し によ. り 、 認 定 申 請 や届 出 対 象 の範 囲 を 大 き く 拡 大 し た た め 審 査 件 数 が 大 幅 に増 加 す る こと が 見 込 ま れ るた め 、 これ ま で の ③ 四 人 体 制 か ら 一挙 に 一五 人 体 制 に強 化 ﹂ し た と さ れ て いる 。 果 た し て、 小 規 模 自 治 体 にお い て こう し た 陣 容 強 化 が 可. 6(85). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(7) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 能 であ ろ う か。 ニセ コ町 職 員 の加 藤 紀 孝 氏 は 一般 論 と し て、 ﹁自 治 体 が 景 観 対 策 を 深 め て いく に は高 度 な 専 門 性 が 求. め ら れ 、 特 に専 門 的 な スタ ッフを 配 置 でき な い人 口規 模 の小 さ な 自 治 体 では 、 そ の対 策 の ハード ルを 高 く す る 原 因 と ω も な ってき た ﹂ と 述 べて いる が 、 景 観 地 区 指 定 の ハード ルは これ ら の中 でも 最 も 高 いも のと いえ る 。. 三、 倶 知 安 町 に お け る 景 観 地 区 指 定 過 程. 本 節 と 次 節 では 、 倶 知 安 町 と ニセ コ町 にお け る 景 観 地 区 指 定 過 程 に つい て述 べて いき た いが 、 それ に先 立 って、 両. 町 の地 区 の状 況 説 明 や言 葉 の定 義 を し てお く 必 要 が あ る。 ま ず、 本 稿 で は、 ﹁ニセ コ地 域 ﹂ を ニセ コア ンヌ プ リ 中 心 に広 が って いる スキ ー場 やゴ ル フ場 か ら 構 成 さ れ る 地 域 を 指 す も のと す る 。. 次 に ニセ コ地 域 の各 地 区 を 、 ニセ コア ン ヌプ リ 山 頂 を 中 心 に真 北 方 向 か ら 時 計 回 り に紹 介 し て いき た いが 、 ま ず 、. 山 頂 か ら 北 東 の方 向 に伸 び て いる ゲ レ ンデ のふ も と にあ る のが 花 園 地 区 であ る 。 こ の地 区 は 、 当 初 ニセ コ高 原 観 光 株. 式 会 社 によ って開 発 さ れ よ う と し た が 、 後 に そ の所 有 権 が 東 急 リ ゾ ート 株 式 会 社 に移 り 、 同 社 が スキ i場 と ゴ ル フ場. の整 備 を 行 った 。 同 社 は 隣 の地 区 の スキ i場 の運 営 も 行 って いる こと か ら 、 こ の 二 つを 併 せ て ﹁ニセ コグ ラ ン ヒ ラ フ スキ i場 ﹂ と 呼 ば れ て いる 。. ま た 、 山 頂 か ら 東 南 東 の方 向 に伸 び て いる スキ i場 の麓 にあ る のが ひら ふ 地 区 であ り 、 リ フト 乗 り 場 を 中 心 に数 多. く のホ テ ルが 立 地 し て いる 。 ま た 、 こ のホ テ ル の集 積 地 か ら 道 道 三 四 三 号 線 を 挟 ん でよ り 麓 に近 いと ころ に位 置 し て. いる のが 、 一九 八 〇 年 頃 か ら 始 ま った ペ ン シ ョンブ ー ム の時 に開 発 さ れ た 山 田 地 区 であ る 。 こ の地 区 の開 発 は 二 つの. 7(84).
(8) 業 者 によ って行 わ れ た が 、 両 者 の調 整 が 不 十 分 な ま ま 進 め ら れ た た め 、 迷 路 のよ う に入 り 組 ん だ 地 区 と な ってし ま っ. た 。 な お 、本 稿 では こ の山 田 地 区 ま で含 め た 広 い区 域 を 指 す 場 合 には ﹁ひ ら ふ地 区 ﹂と いう 表 現 を 用 い、特 に ペ ン シ ョ ン地 区 に限 定 し た い場 合 には ﹁山 田 地 区 ﹂ と いう 表 現 を 用 いる こと と す る 。. ひら ふ 地 区 を 後 にし て、 道 道 三 四 三 号 線 を 南 西 方 面 に進 ん だ と ころ に位 置 し て いる のが 樺 山 地 区 であ る 。 こ の地 区. には 農 地 が 広 が り 、 ペ ン シ ョンも 建 築 さ れ て いる が 、 そ の密 度 は 山 田 地 区 ほ ど 高 く は な い。 こ の樺 山 地 区 を 越 え る と. ニセ コ町 に入 る が 、 ニセ コア ン ヌプ リ 山 頂 か ら 南 南 東 の方 向 にあ る のが ニセ コビ レ ッジ スキ ーリ ゾ ート (旧 ニセ コ東. 山 スキ i場 ) であ る 。 ち ょう ど 倶 知 安 町 と ニセ コ町 の町 境 に位 置 し て いる こ の スキ i場 は 、 一九 八 二年 に西 武 グ ル ー. プ によ って開 発 さ れ た も の であ る 。 ま た 、 ニセ コ町 には これ 以 外 にも 、 ニセ コア ン ヌプ リ スキ i場 と 数 々 の スキ i大 会 の会 場 と し て利 用 さ れ て いる ニセ コモイ ワ スキ i場 が あ る 。. スキ i場 を 中 心 に本 稿 と 関 連 す る 地 区 を 紹 介 し た と ころ で、 次 は 本 節 の対 象 であ る 倶 知 安 町 に つい て簡 単 に紹 介 し. てお き た い。 倶 知 安 町 は 、 札 幌 の西 南 西 に位 置 す る 町 であ り 、 そ の市 街 地 は 北 海 道 の町 の 一つの典 型 であ る 碁 盤 状 に. 整 備 さ れ て いる 。 ま た 、 町 の中 心 部 には 北 海 道 の支 庁 の 一つ後 志 支 庁 が 置 か れ る な ど 市 街 地 が 一定 の発 展 を み て いる. こと か ら 、 都 市 計 画 区 域 が 指 定 さ れ て いる 。 ち な み に、 先 述 の スキ i場 エリ アは 、 こ の市 街 地 か ら 見 て西 か ら 南 西 方 向 に広 が って いる 。. さ て、 今 回 の倶 知 安 町 内 の ニセ コ地 域 にお い て景 観 対 策 が 必 要 と な った 主 因 の 一つと し て、 オ ー スト ラリ ア人 観 光. 客 の入 り 込 み 数 の増 加 と 、 豪 州 資 本 によ る 活 発 な 投 資 を 挙 げ る こと が でき る 。 こ の流 れ は 二 一世 紀 に入 って急 激 に加. 速 す る が 、 そ の端 緒 は 一九 九 〇 年 代 半 ば にあ った 。 こ の頃 、 それ 以 前 は 道 内 で スキ ー のイ ン スト ラク タ i等 を 行 って. 8(83). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(9) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. いた ロス ・フ ィ ンド レ i氏 が 山 田 地 区 に ニセ コ ・アド ベ ンチ ャ i ・セ ンタ i社 を 設 立 し 、 夏 場 の アク テ ィビ テ ィと し ⑤ て ﹁日本 有 数 の清 流 ・尻 別 川 を ゴ ムボ ート で下 る ラ フ テ ィ ング ﹂ を 開 始 し た 。 そ の後 他 のオ ー スト ラリ ア人 にも 追 従. す る 動 き が み ら れ る と 同 時 に、 冬 場 、 個 人 的 にオ ー スト ラリ ア人 を スキ i場 に招 待 す る 者 が 現 れ 始 め た 。 新 千 歳 空 港. 到 着 か ら 同 空 港 出 発 ま で、 日本 で の滞 在 を 完 全 に フ ォ ローす る 形 の ツ ア ーが 始 ま った の であ る 。. それ 以 降 、 ニセ コ地 域 を 訪 問 し た 豪 州 人 か ら ロ コミ で ニセ コ地 域 のパ ウ ダ ー ス ノ ー の魅 力 が 伝 え ら れ 、 少 し ず つ訪. 問 者 数 は 伸 び て い った が 、 それ が 爆 発 的 に増 加 す る 原 因 と な った のが 二〇 〇 一年 九 月 一 一日 の同 時 多 発 テ ロであ る 。. それ 以 前 は 、 多 く の豪 州 人 が カ ナ ダ や ヨ ー ロ ッパ に スキ i旅 行 に出 掛 け て いた が 、 よ り 安 全 な 旅 行 を 求 め て、 そ の行. き 先 を 日本 へと 変 更 し た の であ った 。 さ ら に、 こ の契 機 に加 え て、 豪 州 人 観 光 客 の増 加 要 因 と し て次 のよ う な 諸 点 が. 指 摘 さ れ て いる 。 す な わ ち 、 ① 世 界 一と も 評 さ れ る ニセ コ地 域 のパ ウ ダ ー ス ノ ー の素 晴 し さ 、 ② 時 差 と 標 高 面 で の優. 位 性 、 ③ 時 間 距 離 お よ び 費 用 距 離 面 で の優 位 性 、 ④ 天 然 資 源 の価 格 高 騰 を 中 心 と す る 豪 州 の好 景 気 と 豪 州 ド ル高 、 ⑤ 豪 州 の休 暇 スタ イ ル、 であ る 。. これ ら のう ち 特 に 説 明 が 必 要 な の は⑤ の豪 州 の休 暇 スタ イ ル で あ ろ う 。 豪 州 で は、 一週 間 や 二週 間 と い った ま と. ま った 休 暇 を 取 って レジ ャ ー等 を 楽 し む と いう こと が 一般 化 し て いる が 、 そ の理 由 と し て、 有 給 休 暇 取 得 者 に対 す る ⑥ 割 増 し 給 与 の前 払 い であ る ﹁奨 励 割 増 金 付 き 年 次 有 給 休 暇 ﹂ 制 度 の存 在 が 指 摘 さ れ て いる 。. こ のた め 、 豪 州 旅 行 客 の多 く は 、 一週 間 単 位 で ニセ コ地 域 に滞 在 す る こと が 多 いが 、 長 期 滞 在 と いう 彼 ら の観 光 ス. タ イ ル か ら す る と、 ホ テ ル よ り も コ ンド ミ ニア ム の方 が好 ま し い と いえ る 。 備 え 付 け の台 所 や食 器 を 用 い て 自 炊 を. し 、 広 いリ ビ ング でゆ った り と 長 期 滞 在 す る の であ る。 と こ ろが 、 当 時 、 豪 州 人 にと って居 心 地 の良 さ の感 じ ら れ る. 9(82).
(10) 施 設 は 多 く は な か った 。 こう し た 状 況 にあ って、 ニセ コ地 域 の将 来 性 を 感 得 し た 豪 州 人 実 業 家 た ち が 、 豪 州 人 向 け の. 高 級 コンド ミ ニア ム の建 築 に乗 り 出 し た の であ った 。 ま た 、 タ イ ミ ング の良 い こと に、 ペ ン シ ョンブ ー ム の際 に こ の. 地 域 に移 り 住 ん でき た 人 た ち の多 く が 、 第 二 の人 生 を 考 え 始 め る 年 代 に差 し 掛 か って いた こと に加 え 、 建 築 物 も 更 新. の時 期 を 迎 え て いた 。 こう し て、 豪 州 景 気 を 背 景 と す る 多 額 の投 資 マネ ーが 流 入 す る 結 果 と な り 、 山 田 地 区 は 二〇 〇. 六 年 か ら 二〇 〇 八 年 ま で の三 年 連 続 で、 全 国 の住 宅 地 の中 で最 も 基 準 地 価 が 上 昇 し た 地 区 と な った 。. だ が 、 こ のよ う に開 発 が 進 む 一方 で、 多 く の問 題 も 顕 在 化 し 始 め て いた 。 第 一に挙 げ ら れ る のが 落 雪 問 題 であ る 。. 平 均 降 雪 量 が 一二 mを 超 え 、 特 別 豪 雪 地 帯 にも 指 定 さ れ て いる ニセ コ地 域 では 、 か ね てよ り 、 屋 根 か ら の落 雪 に配 慮. し て、 隣 地 や 道 路 か ら 間 隔 を 空 け た 建 築 が な さ れ て いた 。 と ころ が 、 平 屋 根 にし た 上 で敷 地 い っぱ い に建 築 す る 建 築 ⑦ 物 が 登 場 し 始 め 、 隣 地 や 道 路 に対 す る 落 雪 問 題 が 生 じ る よ う にな って いた 。. ま た 、 二〇 〇 七 年 の北 海 道 ト ラ ック ス社 の高 級 コンド ミ ニア ム であ る ﹁ヨウ テイ ト ラ ック ス﹂ の完 成 は 、 景 観 ・眺 ⑧ 望 問 題 の発 生 を も 意 味 し て いた 。 先 述 のよ う に、 パ ウ ダ ー ス ノ ーが 冬 場 の ニセ コ地 域 の魅 力 であ る が 、 夏 場 の観 光 資. 源 の 一つと な る のが 、 蝦 夷 富 士 と の別 名 を 持 つ羊 蹄 山 の眺 望 であ る 。 ひら ふ 地 区 の宿 泊 施 設 か ら は 、 丁 度 山 裾 、 東 南. 東 の方 向 に羊 蹄 山 を 眺 め る こと が でき る が 、 五 階 建 て の ﹁ヨウ テイ ト ラ ック ス﹂ は 、 それ よ り 山 側 に建 築 さ れ て いた. ペ ン シ ョン ﹁ク リ エイ ト ﹂ の眺 望 を 完 全 に塞 い でし ま った の であ る 。 こ のた め 、 同 ペ ン シ ョン の夏 場 の価 値 は 著 し く 殿 損 さ れ る こと と な った 。. こ のよ う に、 ひら ふ 地 区 にお い ては 、 コンド ミ ニア ムを 原 因 と す る 問 題 が 生 じ 始 め て いた が 、 花 園 地 区 にお い ても. 変 化 が 生 じ よ う と し て いた 。 二〇 〇 四 年 八 月 に、 東 急 不 動 産 が 所 有 し て いた 同 地 区 の土 地 の所 有 権 が 、 同 様 に豪 州 資. 10(81). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(11) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 本 の 日本 ハー モ ニi ・リ ゾ ート 株 式 会 社 に売 却 さ れ た の であ る 。 こ の売 却 に対 し 、 対 応 す る 動 き を 見 せ た のが 倶 知 安. 町 役 場 であ った 。 いわ ゆ る バ ブ ル期 、 ニセ コ地 域 にお い ても 投 資 マネ ーが 流 入 し た 結 果 、 多 く の不 在 地 主 が 発 生 す る. こと と な った 。 そ の後 バ ブ ルが 崩 壊 す る と 、 こう し た 不 在 地 主 か ら の固 定 資 産 税 の徴 税 にお い て、 町 は 苦 労 を 経 験 し. て いた の であ る 。 こ のた め 、 所 有 権 の細 分 化 防 止 を 課 題 と し て、 二〇 〇 五 年 一〇 月 に役 場 内 にプ ロジ ェク ト チ ー ムが ⑨ 編 成 さ れ た 。 そ の際 、 同 じ く 問 題 を 抱 え て いる ひら ふ 地 区 にも 対 策 も 講 じ る べく 、 ひら ふ 地 区 と 花 園 地 区 それ ぞ れ に. 関 し て、 環 境 基 本 計 画 策 定 作 業 が 進 め ら れ る こと と な った 。 ひら ふ 地 区 の主 な 課 題 は 落 雪 と 眺 望 であ り 、 花 園 地 区 の 主 な 課 題 は 敷 地 細 分 化 であ った 。. こう し て、 倶 知 安 町 内 にお い ては 取 り 組 み が 始 め ら れ て いた が 、 ひら ふ 地 区 にお け る 開 発 は 一層 そ の激 し さ を 増 し. て いた 。 元 来 、 冬 場 観 光 に配 慮 し て、 冬 期 は 工 事 を し な いと いう 取 り 決 め が 地 元 では な さ れ て いた が 、 これ に反 し て ⑩ 工 事 を 進 め る 事 業 者 も 現 れ る 始 末 であ った 。 こ のた め 、 地 元 住 民 か ら 倶 知 安 町 役 場 に対 し て対 策 の要 望 が な さ れ た 結. 果 、 二〇 〇 六 年 二月 、 早 急 に講 じ る こと が でき る 措 置 と し て、 一九 九 二年 四 月 に施 行 さ れ て いた ﹁倶 知 安 町 の美 し い 風 景 を 守 り 育 てる 要 綱 ﹂ の全 面 改 定 が 行 わ れ た 。. こ の要 綱 は 全 部 で 一九 条 か ら な る も の であ る が 、 こ こ では そ のう ち 規 制 の骨 格 に相 当 す る 部 分 だ け 紹 介 す る こと に. し よ う 。 こ の要 綱 の規 定 によ れ ば 、 ﹁景 観 形 成 を図 る こと が必 要 と認 め ら れ る地 域 ﹂ (第 八 条 第 一項 ) と し て指 定 さ れ. た ﹁景 観 形 成 地 区 ﹂ 内 にお い て建 築 物 の建 築 等 を 行 う 場 合 には 、 各 地 区 の基 準 であ る ﹁地 区 景 観 形 成 基 準 ﹂ への適 合. が 求 め ら れ る こと にな る (第 一 一条 )。 さ ら に、 地 区 内 で ﹁当 該 地 域 の景 観 形 成 を 図 る こと を 目 的 と し て組 織 さ れ た. 団体﹂ ( 第 一四 条 第 一項 ) と し て 認 定 さ れ た 景 観 ま ち づ く り 団 体 が 景 観 協 定 を策 定 し た 場 合 に は、 そ の基 準 を 満 た す. 11(80).
(12) こと も 要 求 さ れ る 。. そ の後 、 要 綱 改 定 を 受 け た 地 元 住 民 の積 極 的 働 き か け によ り 、 ま ず 同 年 三 月 三 〇 日 に景 観 ま ち づ く り 団 体 第 一号 が. 認 定 さ れ 、 四 月 一日 に は ひ ら ふ 地 区 の道 道 よ り 山 側 に位 置 す る ○Φ巨 霞 く巳 pσq①地 区 に お い て、 先 陣 を 切 って協 定 が. 締 結 さ れ た 。 そ の景 観 形 成 基 準 の冒 頭 では ﹁国 際 スキ ー リ ゾ ー ト にふ さ わ し い街 並 み のあ り 方 と し て、羊 蹄 山 の眺 望 、. ニセ コ山 系 の山 並 み 、 周 辺 の樹 林 等 と 調 和 し た 中 低 層 の施 設 建 設 を コン セプ ト と す る ﹂ こと が 謳 わ れ 、 眺 望 規 制 で重. 要 な 高 さ 規 制 に つい ては 、 自 然 公 園 法 の規 定 を 準 用 し 、 一六 mを 基 本 と し た 上 で 二 二 mま で緩 和 す る と いう 規 定 が 設. け ら れ た 。 さ ら に そ の後 も 精 力 的 に協 定 締 結 に向 け た 取 り 組 み が 進 め ら れ 、 二〇 〇 七 年 四 月 一日 には 泉 郷 地 区 及 び 樺 山 地 区 が 景 観 形 成 地 区 に指 定 さ れ 、 = 一 月 一日 には 羊 蹄 の里 地 区 も 続 い て いる 。. ま た 、 先 述 の環 境 基 本 計 画 策 定 作 業 も 順 調 に進 め ら れ 、 二〇 〇 六 年 四 月 には 完 了 し て いる 。 両 地 区 それ ぞ れ に つい. て簡 単 に述 べれ ば 、 ひら ふ 地 区 に関 し ては 、 眺 望 規 制 を 行 う た め に必 要 な ル ー ル に関 す る 検 討 が な さ れ 、 将 来 的 な 準. 都 市 計 画 区 域 指 定 や 関 連 諸 制 度 の適 用 に関 し ても 言 及 が な さ れ て いる 。 そ の上 で、 景 観 形 成 地 区 指 定 ← 景 観 条 例 制 定. ← 準 都 市 計 画 区 域 指 定 と い った 段 階 を 踏 ん で、 景 観 形 成 を 行 って いく 方 針 が 示 さ れ て いる 。 こ の段 階 では 、 北 海 道 と. 倶 知 安 町 の いず れ が 景 観 行 政 団 体 にな る のか に つい ては 明 示 さ れ て いな いが 、 景 観 計 画 を 策 定 し た 上 で委 任 条 例 と し. て景 観 条 例 を 制 定 す る 必 要 性 に つい ては 明 確 に指 摘 さ れ て いる 。 地 元 住 民 と し ては 、 よ り 強 い規 制 を 適 用 す る た め に. 条 例 制 定 を 望 ん で いた の であ る 。 一方 、 花 園 地 区 に関 し ては 、 ひら ふ 地 区 よ り も 開 発 圧 力 が 低 い こと か ら 、 早 急 な 準. 都 市 計 画 区 域 指 定 に つい て は否 定 的 な 表 現 が な さ れ て いる が 、 敷 地 の細 分 化 問 題 に 関 し て は正 面 か ら 論 じ ら れ て い る。. 12(79). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(13) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. と ころ で、 倶 知 安 町 で こう し た 景 観 対 策 が 進 め ら れ る のと 並 行 し て、 北 海 道 でも 景 観 と 観 光 を テ ー マと し た 取 り 組. み が な さ れ て いた 。 も と も と 北 海 道 では 、 一九 九 〇 年 代 後 半 か ら 景 観 と 観 光 対 策 に力 が 入 れ ら れ る よ う にな り 、 一九. 九 九 年 三 月 に ﹁北 海 道 景 観 形 成 基 本 計 画 ﹂が 策 定 さ れ 、二 〇 〇 一年 一〇 月 には ﹁北 海 道 美 し い景 観 のく に づ く り条 例 ﹂ 及 び ﹁北 海 道 観 光 のく にづ く り 条 例 ﹂ が 施 行 さ れ て いる 。. これ ら のう ち 、 北 海 道 美 し い景 観 のく にづ く り 条 例 には 、 広 域 景 観 に関 す る 規 定 が 存 在 し て いた 。 倶 知 安 町 の問 題. は 狭 い区 域 のも のと も 言 え な く も な いが 、 北 海 道 の景 観 の特 徴 と し ては 、 そ の雄 大 な 自 然 景 観 を 挙 げ る こと が でき よ. う 。 こう し た 雄 大 な 自 然 景 観 は 市 町 村 域 を 超 え た 広 が り を 有 す る こと か ら 、 と り わ け 北 海 道 にお い ては 、 景 観 形 成 に. お け る 広 域 的 な 連 携 が 必 要 と な る 。 こ のた め 、 北 海 道 美 し い景 観 のく にづ く り 条 例 では 、 第 三 章 に ﹁広 域 にわ た る 景. 観 づ く り の推 進 ﹂ に関 す る 規 定 が 置 か れ て いた 。 こ の仕 組 み を 簡 単 に説 明 す れ ば 、 広 域 にわ た る 景 観 づ く り が 必 要 な. 地 域 に つい ては 、 ﹁広 域 景 観 づ く り指 針 ﹂ を定 め た上 で ( 第 一七 条 各 項 )、 市 町 村 長 の申 出 に基 づ き ﹁広 域 景 観 づ く り 推 進 地 域 ﹂ と し て指 定 を 行 う (第 一六 条 各 項 ) と いう も の であ る 。. さ ら に、 北 海 道 の景 観 対 策 を 単 な る 条 例 制 定 には 終 わ ら せ な いと いう 意 図 の下 、 二〇 〇 三 年 よ り 、 羊 蹄 山 麓 を 中 心. と し た 広 域 景 観 づ く り が 始 め ら れ て いた 。 羊 蹄 山 及 び 尻 別 川 と いう 共 通 の景 観 資 源 を 持 つ後 志 支 庁 管 内 の倶 知 安 町 、. ニセ コ町 、 蘭 越 町 、 真 狩 村 、 留 寿 都 村 、 喜 茂 別 町 そし て京 極 町 の七 町 村 が 参 加 し 、 北 海 道 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授. 小 林 英 嗣 氏 を 責 任 者 に、 株 式 会 社 シ i ・アイ ・エス計 画 研 究 所 代 表 取 締 役 会 長 の濱 田 暁 生 氏 を 総 括 コーデ ィネ ータ ー. と す る も の であ った 。 最 初 のう ち は 、 景 観 フ ォト コン テ スト を 開 催 し た 上 で ﹁ぐ る っと 羊 蹄 景 観 マ ップ ﹂ を 作 成 す る. な ど の活 動 を 通 じ て、 参 加 者 間 で の景 観 価 値 認 識 の共 有 が 進 め ら れ た 。 ま た 、 二〇 〇 四 年 度 には ﹁﹃観 光 ﹄ や ﹃農 業 ﹄. 13(78).
(14) ω と ﹃景 観 ﹄ を 関 連 付 け た 連 携 施 策 等 の提 案 ﹂ が 濱 田 氏 よ り な さ れ て いる 。 ⑫ そ の後 、 二〇 〇 五 年 四 月 一日、 伊 東 和 紀 氏 が 後 志 支 庁 長 に着 任 す る と 、 濱 田 氏 か ら 観 光 と 農 業 と 景 観 を 結 び つけ た. 広 域 景 観 づ く り の重 要 性 に つい て レク チ ャ ーが な さ れ た 。 伊 東 氏 は 、 支 庁 長 就 任 の際 に ﹁前 任 の知 事 政 策 部 では 重 点. ⑬. 政 策 づく り に携 わ り 、 ﹃観 光 ﹄ と ﹃食 ﹄ の北 海 道 ブ ラ ンド の創 出 を 打 ち 出 し た。 こ こは そ れ を 実 践 す る 場。 後 志 は 食. べ物 や自 然 な ど が豊 か 。 地 域 の人 に も っと 自 信 を 持 って も ら い、 国 内 外 への発 信 を 強 め た い﹂ と語 って い た 人 物 で. あ った 。 濱 田 氏 の レク チ ャ ーを 受 け て広 域 景 観 づ く り の意 義 を 理 解 し た 伊 東 氏 は 、 参 加 七 町 村 の首 長 及 び 担 当 課 課 長. を 集 め 、 こ の取 り 組 み の必 要 性 を 訴 え た 上 で協 力 を 強 く 求 め た 。 そ の結 果 、 動 き や す い組 織 づ く り と いう 観 点 か ら 、. 各 役 場 の企 画 課 を 中 心 と し た 係 長 ク ラ スが こ の取 り 組 み にタ ッチ す る よ う にな った 。 倶 知 安 町 か ら は 文 字 一志 氏 、 ニ セ コ町 か ら は 加 藤 紀 孝 氏 が 参 加 す る こと と な った 。. こう し て取 り組 み が 加 速 さ れ る と、 同年 八 月 に は羊 蹄 山 麓 広 域 景 観 づく り 推 進 協 議 会 (以 後 、 ﹁推 進 協 議 会 ﹂ と す. る 。)が 組 織 さ れ た 。 七 町 村 の首 長 が 協 議 会 の メ ンバ ーと な り 、そ こ に後 志 支 庁 や 北 海 道 シ ー ニ ック バ イ ウ ェイ に取 り. 組 ん でき た 北 海 道 開 発 局 も 加 わ った の であ る 。 そ し て、 ワ ーク シ ョ ップ 等 の取 り 組 み を 経 て、 ま ず 二 〇 〇 六 年 三 月 に. 羊 蹄 山 麓 広 域 景 観 づ く り 指 針 が 策 定 さ れ た 。 同 指 針 では 、 羊 蹄 山 麓 の景 観 を 六 種 類 に分 け た 上 でそ のそ れ ぞ れ に つい. て指 針 を 示 し て いる が 、 そ の 一つに ﹁観 光 地 景 観 ﹂ が 掲 げ ら れ て いる 。 こ の点 に つい て ニセ コ町 の加 藤 氏 は 、 ﹁特 に、 ⑭ 観 光地 景 観 と いう言 葉 が 意 図的 に使 わ れ、 土 地 利 用 や屋 外 広 告 な ど が他 の景観 と 調 和 す る こと を 目指 し て いる ﹂ と 説 明. し て いる 。 さ ら に、 同 指 針 策 定 後 も 取 り 組 み は 続 け ら れ 、 二〇 〇 六 年 度 には ﹁羊 蹄 山 麓 地 域 景 観 & リ ゾ ート プ ラ ット ⑮ フ ォ ー ム﹂ が 設 置 さ れ 、 ﹁﹃観 光 ﹄ と ﹃景 観 ﹄ を 共 通 の場 で総 合 的 に議 論 す る ﹂ と いう こと が 行 わ れ て いる 。. 14(77). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(15) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. ま た 、 広 域 景 観 づ く り 指 針 策 定 と いう 実 績 を あ げ た こと か ら 、 二〇 〇 六 年 三 月 には 、 同 地 域 が 道 内 で初 め て広 域 景. 観 づ く り 推 進 地 域 に指 定 さ れ る と 共 に、推 進 協 議 会 の側 か ら は 、北 海 道 に対 し景 観 計 画 策 定 の要 望 が提 出 さ れ て いる。. 各 町 村 が 別 個 に景 観 行 政 団 体 と な って景 観 計 画 を 策 定 す る の では な く 、 広 域 的 観 点 か ら 北 海 道 が 景 観 計 画 を 策 定 す る. よ う 要 望 が な さ れ た の であ る 。 加 藤 氏 は 、各 町 村 が 景 観 行 政 団 体 と な ら な か った 理 由 に つい て、﹁ニセ コ町 な ど が 自 ら. 景 観 行 政 団 体 と な る こと で解 決 でき る 方 法 も あ る が 、 広 域 景 観 づ く り によ り 地 域 が 一体 と な って景 観 対 策 を 進 め て い. る 方 向 性 を 考 慮 す る と 、 特 に小 さ い自 治 体 それ ぞ れ が 景 観 行 政 団 体 と な って別 々 の景 観 対 策 を 進 め る こと は 、 外 か ら ⑯ 見 る と 非 常 に分 か り にく い﹂ か ら だ と 説 明 し て いる 。. こ の要 望 に応 じ た 北 海 道 は 北 海 道 景 観 審 議 会 に諮 問 を 行 い、 それ を 受 け た 同 審 議 会 は 同 年 五 月 ﹁景 観 法 の制 定 を 踏. ま え た 広 域 景 観 づ く り のあ り 方 ﹂ と 題 し 、 景 観 計 画 策 定 の必 要 性 等 に つい て答 申 を 行 った 。 これ によ り 道 庁 内 部 で景. 観 法 に関 す る 検 討 が 始 め ら れ た が 、 推 進 協 議 会 にお い ても ﹁景 観 法 検 討 部 会 ﹂ が 設 置 さ れ 、 景 観 地 区 も 含 め た 諸 手 段 の検 討 が 進 め ら れ た 。. と ころ で、 倶 知 安 町 にお い て環 境 基 本 計 画 が 策 定 さ れ る のと 、 七 町 村 か ら 北 海 道 に対 す る 景 観 計 画 策 定 の要 望 が な. さ れ た のは ほ ぼ同 時 期 であ った 。 先 述 のよ う に、 環 境 基 本 計 画 にお い ては 、 倶 知 安 町 が 景 観 行 政 団 体 と な って景 観 計. 画 を 策 定 す る と いう 選 択 肢 も 検 討 さ れ て いた が 、 七 町 村 の長 が 連 名 で北 海 道 に対 し て景 観 計 画 策 定 を 要 望 し て いる こ. と か ら 、 倶 知 安 町 単 独 で の景 観 計 画 策 定 及 び 景 観 条 例 制 定 と いう 選 択 肢 は 、 こ の時 点 で難 し いも のと な った 。 ま た 、. 一九 九 五 年 か ら 三 期 一二年 にわ た って倶 知 安 町 長 を 務 め た 伊 藤 弘 氏 は 、 景 観 形 成 に関 し ては 理 解 を 示 し て いた が 、 二. 〇 〇 六 年 八 月 の時 点 で既 に次 期 町 長 選 挙 に出 馬 し な い旨 を 表 明 し て いた 。 こう し た こと か ら 、 景 観 形 成 に対 す る 倶 知. 15(76).
(16) ⑰ 安 町 内 で の動 き は ス ローダ ウ ンし 、 規 制 を 求 め る ひら ふ 地 区 の住 民 が イ ライ ラを 募 ら せ る 毎 日が 続 く こと と な った 。. 二〇 〇 七 年 に入 る と 、 ま ず 倶 知 安 町 長 選 挙 が 行 わ れ 、 福 島 世 二氏 が 当 選 し た 。 ま た 、 景 観 対 策 に道 筋 を つけ て退 き. た いと いう 前 町 長 の意 向 も 働 き 、 同 年 四 月 一日 に住 宅 都 市 課 長 に山 品 幸 子 氏 が 就 任 し 、 住 宅 都 市 課 の下 に景 観 対 策 室. が 設 置 さ れ た 。 こ の景 観 対 策 室 設 置 時 点 で、 す で に同 町 景 観 要 綱 に基 づ く 規 制 は スタ ート し て いた が 、 豪 州 人 事 業 者 ⑱ か ら は 、 法 規 制 を 求 め る 声 が 上 が って いた 。 豪 州 等 か ら 資 金 を 集 め て運 用 し て いる 彼 ら にと って、 行 政 指 導 に服 す る. こと は 投 資 家 に対 す る 説 明 と いう 点 で問 題 が あ り 、 明 確 な ル ー ルが 存 在 す る 方 が 好 ま し か った か ら であ る 。 一方 、 町. 役 場 と し ても 、 行 政 指 導 の限 界 が 感 得 さ れ て いた こと も あ って、 強 制 力 を 伴 った 規 制 が 必 要 であ る と の判 断 が な さ れ て いた 。. さ ら に、 推 進 協 議 会 に職 員 を 派 遣 し て いた 企 画 課 か ら も 町 長 に対 し 規 制 の必 要 性 が 訴 え ら れ た 結 果 、 同 年 六 月 一五 ⑲ 日、 準 都 市 計 画 区 域 指 定 の意 向 が 報 じ ら れ て いる 。 こ の時 点 で の予 定 区 域 の面 積 は 約 二、 四 〇 〇 ヘク タ ー ルと さ れ て. お り 、 先 の環 境 基 本 計 画 では 指 定 の可 能 性 に つい て否 定 的 な 見 通 し が な さ れ て いた 花 園 地 区 も 含 ま れ て いる と 解 釈 し てよ い であ ろ う 。. こう し て、 準 都 市 計 画 区 域 指 定 の方 針 が 町 役 場 と し ては 固 ま った が 、 地 元 住 民 と し ては 、 す ん な り 受 け 入 れ ら れ る. も の では な か った 。 ま ず 、 積 極 的 な 開 発 推 進 を 求 め る 声 も 依 然 と し て存 在 し てお り 、 そ のよ う な 立 場 の住 民 は 、 強 い. 規 制 に対 し ては 反 対 であ った 。 ま た 、 規 制 の必 要 性 は 理 解 し て いる 住 民 にと っても 、 いき な り の準 都 市 計 画 区 域 指 定. は 寝 耳 に水 の こと であ った 。 環 境 基 本 計 画 では 、 そ の前 段 階 と し て景 観 計 画 策 定 及 び 景 観 条 例 制 定 が あ った は ず であ. り 、 規 制 を 適 用 す る にし ても 、 地 域 のま ち づ く り のビ ジ ョンが な く ては 意 味 が な いと いう 意 見 であ った 。 ま た 、 花 園. 16(75). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(17) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 地 区 ま で対 象 区 域 に含 め た こと か ら 、 ○Φ三 零 く已 餌σqΦ地 区 等 の景 観 形 成 基 準 に は含 ま れ て いな か った敷 地 面 積 の最. 低 限 度 に関 す る規 定 も 加 わ った こと も 、 反 対 の声 を 大 き く す る結 果 と な った 。 特 に山 田地 区 で は、 す で に ペ ン シ ョン. ブ ー ム の際 に敷 地 の細 分 化 が な さ れ てし ま ってお り 、 敷 地 面 積 の最 低 限 度 が 規 定 さ れ てし ま う と 、 こ の点 で既 存 不 適 格 と な る建 築 物 が 生 じ る の は避 け られ な い状 況 であ った 。. こう し た こと か ら、準 都 市 計 画 区 域 指 定 に関 す る 地 元 と の協 議 は 難 航 し 、 一時 は暗 礁 に乗 り 上 げ てし ま って いた が、. こ の状 況 にあ って、 複 数 の開 発 計 画 が 進 み つ つあ る こと を いち 早 く 察 知 し た のが 、 後 志 支 庁 であ った 。 景 観 形 成 地 区. の エアポ ケ ット に位 置 す るた め 倶 知 安 町 の要 綱 で は対 処 す る こと が でき な い計 画 も 含 め 、 複 数 の大 規 模 開 発 計 画 に関 す る情 報 を 入 手 し た の であ る。. 公 選 の長 を 抱 く わ け でも 地 元 住 民 と 直 接 折 衝 し て い るわ け でも な い後 志 支 庁 と し ては 、 規 制 適 用 の判 断 を 自 ら 下 す. わ け には いか な い。 だ が 、 町 役 場 と 住 民 と の協 議 が 進 展 し な け れ ば 、 国 際 スキ ーリ ゾ ート に相 応 し く な い町 並 み が 形. 成 さ れ ても お か し く な い状 況 であ った 。 そ こ で、 お そら く 後 志 支 庁 と し ては 限 度 ぎ り ぎ り の こと と 思 わ れ る が 、 二〇. 〇 七 年 一〇 月 二六 日、後 志 支 庁 主 催 で ﹁ニセ コ ひら ふ 地 域 にお け る 観 光 地 づ く り に関 す る 意 見 交 換 会 ﹂が開 催 さ れ た。. 倶 知 安 町 職 員 と 地 元 住 民 に対 し 、 協 議 が 不 調 のま ま 時 が 過 ぎ てし ま う と 、 景 観 形 成 基 準 の コン セプ ト な ど 吹 き 飛 ば し てし ま う よ う な 町 並 み が 形 成 さ れ る であ ろ う こと が 説 明 さ れ た 。. こ の後 志 支 庁 によ る 情 報 提 供 の結 果 、 準 都 市 計 画 区 域 を 指 定 し た 上 で景 観 地 区 を 指 定 す る こと に関 し ては 、 住 民 と. 倶 知 安 町 と の間 で合 意 が な さ れ た 。 こ の際 、 倶 知 安 町 内 部 にお い ては 、 福 島 町 長 自 身 が 、 国 際 リ ゾ ート 都 市 づ く り を. 目 的 と す る 景 観 地 区 指 定 を 決 断 し た こと が 大 き か った と さ れ る 。 実 効 性 の高 い手 段 を 選 択 す る こと で、 よ り 積 極 的 な. 17(74).
(18) 景 観 形 成 を 図 って いく 方 針 が 明 確 に打 ち 出 さ れ た と いえ よ う 。. こう し て区 域 及 び 地 区 指 定 の方 針 が 決 定 さ れ た が 、 準 都 市 計 画 区 域 の指 定 に つい ては 、 当 初 の予 定 よ り 半 年 か ら 一. 年 程 度 前 倒 し す る こと が 必 要 であ った 。 さ ら に、 準 都 市 計 画 区 域 に つい ては 指 定 権 限 が 北 海 道 にあ り 、 そ の指 定 に先. 立 って北 海 道 都 市 計 画 審 議 会 にか け る こと が 必 要 であ る 。 こ の開 催 日程 を 動 か す のは 容 易 では な い こと か ら 、 それ に. 間 に合 わ せ る た め に 一日刻 み の スケ ジ ュー ルが 策 定 さ れ 、 住 宅 都 市 課 では 課 員 総 が か り で連 日深 夜 にま で及 ぶ 作 業 が. 続 け ら れ た 。 一方 、 北 海 道 にと っても 準 都 市 計 画 区 域 指 定 が ま だ 二度 目 の こと であ る こと か ら 、 北 海 道 本 庁 と 倶 知 安. 町 と の仲 立 ち を 後 志 支 庁 が 積 極 的 に果 た し た 結 果 、 一二月 一二 日か ら 三 日間 の 日程 で準 都 市 計 画 区 域 等 に関 す る 説 明 会 開 催 ま で漕 ぎ つけ る こと が 出 来 た 。. ま た 、準 都 市 計 画 区 域 や景 観 地 区 に適 用 さ れ る規 制 値 に関 し ては、新 た に協 議 す る 余 裕 が な い こと か ら 、原 則 的 に、. 景 観 形 成 基 準 の規 制 値 を そ のま ま シ フト さ せ る こと と な った 。 仮 に適 用 可 能 な 数 値 が 存 在 せ ず 、 ゼ ロか ら の スタ ート ⑳ であ った と す る な ら ば 、 今 回 の区 域 及 び 地 区 指 定 は 不 可 能 だ った であ ろ う と さ れ て いる 。 景 観 形 成 基 準 に設 定 さ れ て. いた 数 値 の中 に は、 容 積 率 のよ う に、 そ のま ま で は 都 市 計 画 法 で用 意 さ れ て い る数 値 に移 行 で き な いも の も あ った. 施 ・こ れ ら に つ い ては調 整 が な さ れ たf ﹂れ 以外 に も・建 築 物 の高 さ は 建 築 物 が周 囲 の地 盤 面 と接 す る位 置 のう ち・. 最 も 低 い位 置 か ら の高 さ と す る ﹂ と 規 定 さ れ 、 三 m以 内 ご と に平 均 地 盤 面 を 設 定 す る 一般 規 定 (建 築 基 準 法 施 行 令 第 二条 第 二項 ) と は 異 な る 算 定 方 法 が 採 用 さ れ て いる 。. こう し て、 準 都 市 計 画 区 域 を 指 定 し た 上 で景 観 地 区 を 定 め る た め の突 貫 工 事 が 進 め ら れ た が 、 町 内 が 規 制 賛 成 でま. と ま って い る わ け では な か った。 規 制 に賛 成 す る 側 と 、 大 規 模 開 発 に よ る 経 済 効 果 に 期 待 し て規 制 に反 対 す る 側 と. 18(73). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(19) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. で、 町 を 二分 す る 議 論 が な さ れ た の であ る 。 こ の議 論 は そ の後 も 決 着 を み る こと な く 続 き 、 区 域 指 定 及 び 地 区 決 定 の. タ イ ムリ ミ ット が 近 づ い て い った が 、 二〇 〇 七 年 一二月 、 同 じ 状 況 が 議 会 にお い ても 明 ら か と な った 。 準 都 市 計 画 区. 域 及 び 景 観 地 区 指 定 が な さ れ る ま で の規 制 の空 白 を 埋 め る べく 、 景 観 条 例 が 議 員 提 案 さ れ た の であ る 。 こ の条 例 に関. す る 採 決 は 、 翌 二〇 〇 八 年 の 一月 に持 ち 越 さ れ 、 結 果 的 には 修 正 のう え 可 決 さ れ た が 、 賛 否 は 八 対 七 であ り 、 ま さ に 薄 氷 を 踏 む よ う な も の であ った 。. 続 い て、 二〇 〇 八 年 二月 二八 日 に倶 知 安 町 で都 市 計 画 審 議 会 が 開 催 さ れ た 。 賛 成 側 反 対 側 双 方 の関 係 者 も 傍 聴 す る. 中 で の審 議 会 であ り 、 指 定 手 続 き 等 に関 し 厳 し い意 見 も 出 さ れ た が 、 最 終 的 には 付 帯 意 見 が 付 け ら れ た 上 で承 認 さ れ. た 。 さ ら に、 それ に先 立 つ二月 四 日 には 準 都 市 計 画 区 域 指 定 に つい て北 海 道 都 市 計 画 審 議 会 で承 認 さ れ てお り 、 晴 れ. て準 都 市 計 画 区 域 及 び 景 観 地 区 の指 定 が な さ れ る こと と な った 。 ま た 、 景 観 法 施 行 に必 要 な ﹁倶 知 安 町 景 観 法 の施 行 に関 す る 条 例 ﹂ が 三 月 二六 日 に制 定 さ れ て いる が 、 そ の採 決 も 八 対 七 であ った 。. 四、 ニセ コ 町 に お け る 景 観 地 区 指 定 過 程. 町 レベ ル では 全 国 で初 め て、倶 知 安 町 で景 観 地 区 指 定 が な さ れ た のは 前 節 で論 じ た と お り だ が 、隣 の ニセ コ町 でも、. 二〇 〇 九 年 七 月 一日 に景 観 地 区 が 都 市 計 画 決 定 さ れ て いる 。 こ の ニセ コ町 にお け る 景 観 地 区 指 定 は 、 倶 知 安 町 の それ. と 一連 のも のと 位 置 づ け る こと が 出 来 る が 、 指 定 経 緯 の相 違 が 規 制 内 容 の相 違 に つな が って いる 点 が 興 味 深 いと いえ る。. 19(72).
(20) さ て、 指 定 過 程 に つい て論 じ る 前 に、 ニセ コ町 の簡 単 な 紹 介 か ら 始 め る こと と す る 。 ニセ コ町 は 倶 知 安 町 か ら 国 道. 五 号 線 を 南 下 し た と ころ にあ る 町 であ り 、 か つては 農 業 を 中 心 と し て いた が 、 現 在 の中 心 は 第 三 次 産 業 へと シ フト し ⑳ て いる 。 倶 知 安 町 の人 間 が 自 ら 認 め て いる よ う に、 全 国 的 知 名 度 は 倶 知 安 町 よ り 高 いが 、 規 模 は ニセ コ町 の方 が 小 さ. く 、 人 口約 四 、 六 〇 〇 人 、 町 職 員 数 八 〇 名 余 であ る 。 ま た 、 町 の構 造 であ る が 、 ニセ コ町 駅 前 や いわ ゆ る 綺 羅 街 道 沿. い に 一定 の建 築 物 等 の集 積 は み ら れ る が 、 倶 知 安 町 ほ ど のも の では な く 、 町 域 内 に都 市 計 画 区 域 は 存 在 し て いな い。 こ のた め 、 倶 知 安 町 と 違 って都 市 計 画 審 議 会 も 設 置 さ れ て いな か った 。. ま た 、 先 述 のよ う に、 ニセ コ町 内 には 三 つの スキ i場 が 存 在 し て いる が 、 観 光 地 と し て の状 況 は 、 倶 知 安 町 と は 著. し い対 比 を 示 し て いる 。 倶 知 安 町 が 冬 場 の入 り 込 み が 多 く 、 ま た 長 期 滞 在 者 の比 率 も 高 い の に対 し 、 ニセ コ町 の方 は 夏 場 の入 り 込 み 数 の方 が 多 いう え に、 日帰 り ま た は 短 期 間 の滞 在 者 が 中 心 を 占 め て いる 。. こ のよ う な 小 さ な 自 治 体 であ る ニセ コ町 であ る が 、 そ の名 を 広 め る き っか け と な った のは 一九 九 四 年 の逢 坂 誠 二町. 長 の就 任 で あ ろ う。 ﹁情 報 共 有﹂ と ﹁住 民 参 加 ﹂ を キ ャ ッチ フレ ー ズ と し た 自 治 体 改 革 が 推 進 さ れ 、 町 長 交 代 後 も 路. 線 変 更 が な さ れ な いよ う にす る た め に、 二 〇 〇 〇 年 一二 月 二 七 日 、 わ が 国 初 の自 治 基 本 条 例 であ る ﹁ニセ コ町 ま ち づ く り 基 本 条 例 ﹂ が 制 定 さ れ て いる 。. ま ち づ く り 基 本 条 例 に関 す る 詳 細 は 他 の文 献 等 に譲 る が 、 本 稿 と の関 連 で言 及 し な け れ ば な ら な い のは 、 条 例 全 体. の体 系 化 に関 す る 規 定 であ ろ う 。 ま ち づ く り 基 本 条 例 を 中 心 と し た 条 例 全 体 の体 系 化 が 規 定 さ れ てお り 、 これ を 受 け. て二 〇 〇 三 年 = 一 月 一九 日 、﹁ニセ コ町 環 境 基 本 条 例 ﹂が 制 定 さ れ て い る。 さ ら に、同 環 境 基 本 条 例 第 二 一条 には ﹁町. は 、 ニセ コ の美 し い景 観 を 守 り 、 つく り 、 育 て、 快 適 で潤 い のあ る ふ る さ と を 形 成 す る た め に、 必 要 な 対 策 を 講 ず る. 20(71). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(21) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. も のと す る ﹂ と の規 定 が あ り 、 これ を 受 け る 形 で 二〇 〇 四 年 三 月 一五 日 に景 観 条 例 が 制 定 さ れ て いる 。 倶 知 安 町 が 要. 綱 し か 持 って いな か った の に対 し 、 決 し て早 いと は 言 え な いが 、 ニセ コ町 では 景 観 条 例 に基 づ く 対 策 は 講 じ ら れ て い た の であ る 。. こ の景 観 条 例 には、 景 観 協 定 等 の規 定 が 含 ま れ て い る が、 規 制 的 手 段 と いう 点 で は、 ﹁開 発 事 業 等 の適 正 化 ﹂ を 挙. げ る こと が でき る 。 同 条 例 第 二 八 条 にお い て、 一定 の条 件 に該 当 す る 開 発事 業 を 行 う 場 合 には、﹁当 該 事 業 の内 容 及 び. 工 事 施 工 方 法 等 に つい て町 長 と 協 議 し な け れ ば な ら な い﹂ と 規 定 さ れ て いる 。 そ し て、 こ の規 定 に基 づ い て、 携 帯 電 ㈱ 話 用 ア ン テナ 等 に対 し 規 制 が 加 え ら れ て いる 。. さ て、 先 述 の推 進 協 議 会 には ニセ コ町 も 参 加 し て いた た め 、 倶 知 安 町 と 同 じ く 、 単 独 で景 観 行 政 団 体 と な って景 観. 計 画 を 策 定 す る と いう 選 択 肢 は 採 用 せ ず 、 他 の六 町 村 と 足 並 み を 揃 え る 方 針 であ った 。 だ が 、 隣 接 す る 倶 知 安 町 ひら. ふ 地 区 の開 発 圧 力 が ニセ コ町 に波 及 す る 可 能 性 も 当 然 認 識 さ れ て いた 。 そ こ で ニセ コ町 では 、 よ り 具 体 的 な 建 築 規 制 を 適 用 す べく 、 二〇 〇 七 年 度 には 建 築 ガ イ ド ライ ン の事 前 調 査 が 進 め ら れ て いた 。. こ の調 査 が 進 め ら れ て いる 間 に、 倶 知 安 町 で準 都 市 計 画 区 域 指 定 の方 針 が 明 ら か にさ れ る と 、 ニセ コ町 内 でも 強 制 ⑳ 力 のあ る 規 制 の必 要 性 を 訴 え る 声 も 聞 か れ る よ う にな った 。 だ が 、 こ の時 点 では ま だ 、 ニセ コ町 は 準 都 市 計 画 区 域 等. の指 定 の必 要 性 が あ る と は 考 え て いな か った よ う であ る 。 建 築 ガ イ ド ライ ン策 定 によ って、 乱 開 発 の抑 制 が 可 能 と 判. 断 し て いた の であ る 。 と ころ が 、 こ の後 ニセ コ町 も 準 都 市 計 画 区 域 指 定 に向 け て 一気 に動 き 出 す こと にな る が 、 そ の. き っか け と な った のが 、 先 述 の後 志 支 庁 によ る 意 見 交 換 会 であ る 。 こ のと き 、 倶 知 安 町 だ け では な く ニセ コ町 か ら も. 関 係 者 が 出 席 し て いた が 、 一㎞ 以 上 の土 地 取 引 が 年 間 二〇 〇 件 以 上 行 わ れ てお り 、 そ の多 く が 外 国 資 本 であ る こと か. 21(70).
(22) ら 、 建 築 ガ イ ド ライ ン によ る 開 発 抑 制 が 困 難 と な る であ ろ う こと が 伝 え ら れ た 。. 後 志 支 庁 か ら の助 言 を 受 け た ニセ コ町 では 、 準 都 市 計 画 区 域 指 定 の方 針 を 固 め 、 同 年 一二月 二 一日 の定 例 議 会 で佐. 藤 隆 一町 長 は 、﹁町 で は来 年 度 、平 成 二 〇年 度 い っぱ いを め ど に、関 係 機 関 と も 協 力 し な が ら 準 都 市 計 画 導 入 のた め の. 作 業 を 進 め てま いり た いと 考 え てお り ま す ﹂ と 発 言 し て いる 。 さ ら に、 こ の発 言 に続 い て ﹁準 都 市 計 画 の策 定 に当 た. り ま し ては 、 よ り 専 門 性 の高 い作 業 を 短 時 間 で進 め な け れ ば な ら な いと いう こと か ら 、 道 庁 か ら 必 要 な 職 員 の派 遣 を. 受 け る こと も 含 め 、 検 討 体 制 を し っか り と 組 ん で いき た いと いう ふ う に考 え てお り ま す ﹂ と 述 べて いる 。 倶 知 安 町 と. 比 べても そ の陣 容 が 手 薄 であ る 以 上 、 準 都 市 計 画 区 域 指 定 のた め には そ の強 化 が 必 要 であ った 。. そ の後 、 三 月 定 例 議 会 で準 都 市 計 画 区 域 に関 す る 調 査 等 に関 す る 予 算 が 認 め ら れ る と 、 四 月 よ り 後 志 支 庁 か ら 一人. の職 員 が 二年 の年 限 で派 遣 さ れ た 。 自 ら を ﹁土 木 屋 で線 引 き と か を や って いた 人 間 です か ら ﹂ と 語 る 天 野 俊 哉 氏 であ. る 。 ニセ コ町 にお け る 準 都 市 計 画 区 域 指 定 と いう 任 務 を 与 え ら れ て赴 任 し た 天 野 氏 であ る が 、 本 人 と し ては それ で十. 分 だ と 考 え て いた と いう 。 同 区 域 に指 定 さ れ れ ば 、 集 団 規 定 の適 用 を 受 け て建 ぺ い率 や 容 積 率 が 制 限 さ れ る だ け でな. く 、 開 発 行 為 等 も 規 制 さ れ る こと にな る 。 乱 開 発 の抑 制 には これ で十 分 と 考 え て いた の であ る 。. 準 都 市 計 画 区 域 等 の指 定 を 検 討 す る に当 た っては 、 ま ず は 基 礎 調 査 か ら 始 め る 必 要 が あ る 。 ニセ コ町 赴 任 後 の天 野. 氏 の最 初 の仕 事 は こ の基 礎 調 査 の発 注 であ った が 、これ を 受 注 し た 側 は 、準 都 市 計 画 区 域 指 定 だ け では不 十 分 であ り、. 景 観 地 区 等 の指 定 ま で同 時 に行 う 必 要 が あ る と 考 え て いた 。 と いう のも 、 こ の調 査 を 受 注 し た のが 、 前 出 の濱 田 氏 が. 会 長 を 務 め る株 式 会 社 シ i ・ア イ ・エ ス計 画 研 究 所 であ った か ら で あ る。 羊 蹄 山 麓 広 域 景 観 形 成 づ く り に総 括 コー. デ ィネ ータ ーと し て関 与 し て いた 濱 田 氏 は 、 先 述 の景 観 法 検 討 部 会 にも 関 与 し て いた が 、 そ こ で の活 動 を 通 じ て、 景. 22(69). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(23) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 観 づ く り のた め には 景 観 地 区 指 定 ま で進 む べき であ る と いう 考 え 方 を 抱 い て いた 。 ま た 、 区 域 及 び 地 区 指 定 に関 す る. 住 民 と の協 議 の段 階 で蹟 い てし ま った 倶 知 安 町 の経 験 か ら 、 住 民 に対 し 的 確 な 情 報 を わ か り や す く 提 供 す る こと の必. 要 性 に つい ても 認 識 が な さ れ て いた 。 こう し た こと か ら 、 景 観 地 区 指 定 にと って必 要 な 項 目 ま で含 め て綿 密 な 調 査 を. 行 う 方 針 が 立 てら れ 、 同 研 究 所 主 任 研 究 員 嶋 田 健 一氏 が 実 際 の調 査 を 担 当 し た 。 ま た 、 倶 知 安 町 にお け る 区 域 指 定 の. 際 には 、 企 画 課 と 住 宅 都 市 課 と の間 で危 機 感 等 に差 が あ った こと に対 す る 反 省 に立 ち 、 ニセ コ町 では 、 企 画 課 と 建 設 ㈱ 課 間 の役 場 内 連 携 に つい ても 工 夫 が な さ れ た 。. こう し て、 ニセ コ町 でも 準 都 市 計 画 区 域 指 定 の方 針 が 固 め ら れ 、 そ のた め の組 織 と し て ニセ コ町 準 都 市 計 画 策 定 委. 員 会 が 発 足 し た 。 同 委 員 会 の初 会 合 は 二〇 〇 八 年 六 月 五 日 に開 催 さ れ た が 、 こ こ では 土 地 利 用 に関 す る 住 民 ア ンケ ー. ト や 説 明 会 と い った そ の後 の スケ ジ ュー ルが 説 明 さ れ 、 実 際 の動 き も それ に沿 って進 め ら れ た 。. 土 地 利 用 に 関 す る 住 民 ア ン ケ ー ト は 六 月 一七 日か ら 二 八 日 (一部 七 月 四 日 ま で 延 長 ) の期 間 で実 施 さ れ た が、 ﹁全 ⑳ 体 の約 七 四 % が 新 た な 土 地 利 用 規 制 が 必 要 と ﹂ 回 答 し て いる 。 さ ら に規 制 内 容 に関 し ては 次 のよ う な 結 果 であ った 。 すなわち、. 規 制 に つい て最 も 望 ま れ て いる のは 建 物 の種 類 の制 限 で八 〇 % 以 上 の方 が 望 ん で いま す 。 ま た 、 七 〇 % 以 上 の方. が 、 隣 の建 物 と の離 れ や 敷 地 に対 す る 建 物 の大 き さ に関 す る ル ー ルや 、 建 物 な ど の高 さ の制 限 を 必 要 と 答 え て い ⑳ ま す 。 デ ザ イ ン ・色 彩 の規 制 に つい ては 半 数 以 上 の方 が 必 要 と 答 え て いま す 。. た だ そ の 一方 で、 ﹁過 疎 地 で あ り、 開 発 や 投 資 の抑 制 に つな が る 政 策 は 好 ま しく な い﹂ と の自 由 回 答 も 寄 せ ら れ てお り 、 新 た な 土 地 利 用 規 制 に対 し 反 対 す る 声 が な いわ け では な か った 。. 23(68).
(24) 先 述 のよ う に、 定 例 議 会 で準 都 市 計 画 区 域 指 定 の方 針 を 明 ら か にし た 佐 藤 町 長 は 、 そ の後 の作 業 は ま ち づ く り 基 本. 条 例 の精 神 に の っと って進 め る よ う 指 示 し て いた 。 これ を 受 け て行 わ れ た 住 民 ア ンケ ート の結 果 が 上 記 のよ う な も の. であ った 以 上 、 も は や 準 都 市 計 画 区 域 指 定 だ け で終 わ り にす る 訳 には いか な く な った 。 と いう のも 、 上 記 ア ンケ ート. に表 明 さ れ て い る 住 民 の要 望 を 実 現 す る た め に は、 準 都 市 計 画 区 域 指 定 だ け で は 不 十 分 だ か ら であ る。 建 築 物 の用. 途 、 敷 地 面 積 の最 低 限 度 そし て高 さ の最 高 限 度 と い った 内 容 ま で制 限 す るた め に は、 景 観 地 区 及 び 特 定 用 途 制 限 地 域. 指 定 ま で行 う 必 要 が あ るか ら であ る。 こ のた め 、 八 月 四 、 五 日 に行 わ れ た ニセ コ町 準 都 市 計 画 説 明 会 で配 布 さ れ た 資 料 で は、 景 観 地 区 及 び 特 定 用 途 制 限 地 域 の仕 組 み が 紹 介 さ れ て い る。. こ の説 明 会 の時 点 で は、 具 体 的 な 規 制 数 値 等 に関 し て は明 らか にさ れ て いな いが 、 ニセ コ町 でも 景 観 地 区 及 び 特 定. 用 途 制 限 地 域 指 定 の方 向 に進 み 始 め た と いえ よ う 。 そ の後 、 八 月 二 二 日 の第 三 回 ニセ コ町 準 都 市 計 画 策 定 委 員 会 で. も 、 準 都 市 計 画 区 域 に関 連 す る諸 制 度 と し て特 定 用 途 制 限 地 域 と 景 観 地 区 が 紹 介 さ れ 、 ニセ コ町 の現 況 に つい ても 論. 議 さ れ て いる。 そ し て、 一〇 月 一四 日、 一〇 月 二 七 日及 び 一 一月 七 日 の三 回 に わ た り、 ﹁ニセ コ準 都 市 計 画 の更 な る. ル ー ル づく り に向 け た 意 見 交 換 会 ﹂ が 開 催 さ れ た 。 特 に 二回 目 と 三 回 目 で は、 三 グ ル ープ に分 か れ て、 ① 建 物 の色 、. ② 建 物 の形 態 意 匠 、 ③ 建 物 の高 さ、 ④ 道 路 や 敷 地 か ら の離 れ ( 後 退 距 離 )、 ⑤ 敷 地 の最 低 限 度 、 ⑥ 開 発 行 為 等 、 ⑦ 看. 板 の規 制 そし て⑧ 車 庫 ・コン テ ナ ・ス ーパ ー ハウ ス の規 制 と い った 項 目 に つい て議 論 が 交 わ さ れ た 。. 六 月 の ア ンケ ート の自 由 回 答 にも み ら れ た よ う に、 ニセ コ町 でも 当 初 は 、 開 発 規 制 を 危 惧 す る 声 も 聞 か れ て いた 。 ㈱ だ が 、 こう し た 意 見 交 換 会 を 通 じ て、 規 制 それ 自 体 に反 対 す る声 は な く な った と いう 。 ま た 、 こう し た 住 民 参 加 の手 続 き を 経 た 結 果 、 いく つか の点 で規 制 内 容 等 が 倶 知 安 町 と 相 違 す る こと と な った 。. 24(67). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
(25) 景 観 政 策 領 域 にお け る地 方 自治 体 の 変 化 につ いて. 第 一に、 倶 知 安 町 では 、 景 観 形 成 基 準 を でき る だ け そ のま ま 景 観 地 区 に移 行 さ せ る 必 要 が あ った た め 、 建 築 物 の高. さ に つい て独 特 の算 定 方 法 が 採 用 さ れ た だ け でな く 、 敷 地 面 積 に応 じ て、 前 面 道 路 及 び 隣 地 境 界 か ら の後 退 距 離 が 区. 分 さ れ て いる 。 だ が 、 ニセ コ町 の景 観 地 区 では 、 運 用 面 を 考 慮 す る よ う 後 志 支 庁 か ら 求 め ら れ た こと も あ って、 こう. し た 規 定 は 採 用 さ れ て いな い。 第 二 に、 ニセ コ町 では 当 初 か ら 開 発 行 為 と 工 作 物 に関 し ても 規 制 さ れ てお り 、 こ の点. にお い て、 倶 知 安 町 の先 を 行 く こと にな る 。 特 に前 者 に つい ては 、 三 % 以 上 の緑 地 のほ か に七 % 以 上 の緑 化 を 義 務 づ. け る 内 容 と な って いる 。 第 三 に、 色 彩 に つい ては 、 地 域 の特 性 に配 慮 し た 規 制 緩 和 が な さ れ て いる 。 住 民 を 交 え た 議. 論 の結 果 、 北 海 道 の農 家 の建 築 物 で広 く 用 いら れ て いる こと を 理 由 に、 青 色 と 赤 色 の 二色 に つい ては 規 制 が 緩 和 さ れ. た の で あ る 。 こう し た 緩 和 が な さ れ た 要 因 と し て は、 も ち ろ ん ま ち づ く り 条 例 の存 在 も 否 定 でき な い が、 嶋 田 氏 に. よ って対 象 地 域 の全 建 築 物 の色 彩 調 査 が な さ れ た こと も 看 過 す る わ け には いか な い。 基 礎 調 査 に支 え ら れ た 上 でま ち づ く り 条 例 が 運 用 さ れ る こと で、 こ のよ う な 政 策 形 成 に至 った の であ る 。. こう し て、 住 民 参 加 の手 続 き を 踏 み な が ら 準 都 市 計 画 区 域 、 景 観 地 区 そし て特 定 用 途 制 限 地 域 の指 定 作 業 が 進 め ら. れ 、 ま ず 、 準 都 市 計 画 区 域 に つい ては 二〇 〇 九 年 二月 五 日 の北 海 道 都 市 計 画 審 議 会 で了 承 さ れ 、 三 月 六 日よ り 適 用 さ. れ て いる 。 一方 景 観 地 区 に つい ては 、四 月 三 〇 日 に行 わ れ た ニセ コ町 都 市 計 画 審 議 会 にお い て承 認 さ れ 、七 月 一日 に、. 特 定 用 途 制 限 地 域 と 共 に都 市 計 画 決 定 が な さ れ て いる 。 さ ら に、 六 月 二六 日 には ﹁ニセ コ町 景 観 地 区 条 例 ﹂ と ﹁ニセ. コ町 特 定 用 途 制 限 地 域 にお け る 建 築 物 等 の制 限 に関 す る 条 例 ﹂が 可 決 公 布 さ れ 、七 月 一日 よ り 運 用 が 開 始 さ れ て いる。. 25(66).
(26) 五、 景 観 地 区 指 定 後 の状 況. 倶 知 安 町 及 び ニセ コ町 にお け る 景 観 地 区 指 定 の経 緯 を 振 り 返 った と ころ で、 次 は そ の指 定 後 の状 況 及 び 両 町 で観 察. さ れ る 変 化 に つい て論 じ てみ た い。 ま ず 、 景 観 地 区 指 定 後 の運 用 であ る が 、 倶 知 安 町 では 運 用 面 で特 に問 題 は 生 じ て. いな いと さ れ て いる 。 色 彩 規 制 に つい ては 基 本 的 に マン セ ル値 を 用 いた 運 用 が な さ れ てお り 、 判 断 が 難 し いも の に つ. い ては サ ンプ ルを 直 接 持 参 し ても ら って審 査 し て いる と いう 。 ま た 、 倶 知 安 町 では 判 断 が 難 し い事 案 に つい ては 景 観 ㈲ 審 議 会 に諮 った 上 で判 断 す る こと と さ れ て いる 。 適 合 性 審 査 の期 間 と 委 員 の居 住 地 の問 題 か ら 、 日程 調 整 等 で困 難 を. 抱 え る も のと 思 わ れ る が 、 こ の点 に関 し ては 、 随 時 審 議 会 を 開 催 す る と いう こと で了 承 が 得 ら れ て いる と いう 。 た だ し 、 二〇 〇 九 年 二月 末 時 点 で実 際 に審 議 会 にか け ら れ た 案 件 は 出 てき て いな い。. さ ら に、 形 態 意 匠 規 制 の運 用 が 厳 格 にな さ れ て いる 点 は 、 評 価 さ れ てし か る べき であ ろ う 。 他 の自 治 体 の自 主 条 例. に基 づ く 形 態 意 匠 規 制 に関 し ては 、 審 査 時 に提 出 さ れ た 図 面 通 り の建 築 が 行 わ れ て いな いケ ー ス の存 在 が 指 摘 さ れ て. いる が 、 特 に ひら ふ 地 区 にお い ては 、 脱 法 行 為 を 認 め る こと が 規 制 の実 効 性 を 著 し く 損 ね る こと か ら 、 完 了 検 査 時 等. に形 態 意 匠 に つい ても チ ェ ック が な さ れ て いる と いう 。 大 規 模 な 建 築 物 の場 合 には 、 後 志 支 庁 が 完 了 検 査 を 担 当 す る. が 、 倶 知 安 町 職 員 が 連 絡 を 受 け て同 行 し て いる と いう 。 仮 に、 図 面 通 り の建 築 が な さ れ て いな い場 合 には 、 そ の通 り. に建 築 さ れ る ま で 根 気 よ く 指 導 を し て い る と いう 。 倶 知 安 町 にお け る 形 態 意 匠 規 制 の運 用 はま だ 始 ま った ば か り だ が 、 基 準 に適 合 し た 建 築 物 の増 加 によ る町 並 み の変 化 を 期 待 す る声 を 聞 く こと が でき た 。. 26(65). 第57巻 第3号 近畿大学法学.
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