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「経済を通して社会がわかる」中学校社会科の授業構成 : 岩井克人氏の経済認識を中心として

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全文

(1)

『社

第18

号 2006

(pp.83-90)

「 ̄

経済を通して社会がわかる」中学校社会科の授業構成

一岩井克人氏の経済

認識を中心と

して−

A Junior High School Social Studies Lesson

Based on Economic Theories of Katuhito Iwai

Plan

”Understanding Society Through Economics",

岩 

野 

清 

仲間

中関

学校

I 

研究の

目的と方法

生徒に社会認識を獲得1

させるという社会科の

目的を達成

しうる

,経済教育の授業モデル開発が

本研究の目的である。

経済教育の

目標は

,子どもに経済学の成果

を理

解させることではない

。経済学の視点2

と理論3

を用いて社会

変動4

を明らかにすることである

具体的には経済学の視

点と

して

お金の流れ

理論と

して

“競争と相互依存

」6

を設定

した

原田智仁氏は理論について

,匚

諸事象の関連を

明する仮説

」であ

り,概念が匚

説明の

しかた

ある

いは

「様々なことが

らの関連

」であるな

らば,

それ

は理

論と言い替えてもよい

」7

と述べ

ている。

この

ように理論をとらえることにより

,厂

事象に

して投げかける質問を引き出

」8

,匚

『発見促

進能

力』を有する」9

という

,理論の特徴を生か

した授業設計が可能になる

経済」という語は,一般的に次の2

つの意味

に解される。

① 

人間は

,最小の費用で

,最大の効果を得よ

とする

(経済の事実的側面)

② 

人間は

,環境との

交換関係の中で,生存

して

いる

(経済の事象的側面)

経済的事象の追究の

場面で生徒た

ちは

,究極的

には

上記①か②の命題を追究する

。すなわち

,①

の追究によ

り獲得される知識は

「○○さんは

最大の効果を得るために

,…する」であ

り,②の

追究により獲得

される知識は

,厂

○○さんは

,周

りの

自然環境や社会的環境の

中で生存

しているの

,…する

」である。前者は

,目的一結果の知識

であ

社会認識教科と

,後者は

原因一結果の

しての社会科で獲得

知識である

させるべ

知識は

,原因一結

果の知識であるlO

したがって,

社会科の授業で追究するべき匚

経済」とは

,経済

の事象的側

面である

また

,匚

社会がわかる」とは匚

自分たちが現実

に生活

している社会

を見つめ直

,構造と

して再

構成する

ことである」と定義する。

つま

「 ̄

経済を通

して社会がわかる」経済教

育では

,経済学の視点,

と理論を用いて社会事象を

分析

し,その結

果得られた知識

を関係づけ,構造

化を行

う。

本研究の方法は

以下の通

りである

① 

科学的経済認識のモデルと

,厂

経済を通

て社会がわかる」授業で獲得

され

る知識の構

造図を明示する。

(2)

(1)

成果をも

とに

,授

業モデル

を提

案する

H 

1 

科学的経済認識のモデル

岩井克人氏の経済

認識

岩井克人氏は

,厂

複数の価値体系の差異を媒介

することで

,利潤を剔出することが資本

主義の基

本原理である

」という経済学の命題を議論の出発

点と

して

,社会変動

を経済体制の変化か

ら説明す

。このように社会

変動を経済学の視

点から一つ

の流れ

として説明

したところに

,岩井氏の功績が

ある

。本研究では

,この岩井氏の経済認識を科学

的経済認識のモデル

お金の流れ」を分析視点として岩井氏の著

として取

り上げる

作11

から経済学の命題

を抽

,その関連

を整理

構造化を行った

「貨幣に関する認識」

「資本主

義に関する認識

,匚

社会

変動に関す

る認識」の

つが抽出

に関わ

る部分のみ

,構造化された

を次ページ

(の

(図

ちの授業モデル開発

1)に示す

83 ―

(2)

巴嚮惣門 二

付 豐問 尸トト

A¬4 現実 の世界では、経済主体の間で袒互   H 貨幣経 済は分権   H 貨 幣経 済は総供 ヅ 昌 之 で ・ 巴 豐 豐 回 嚮 門 概 念 的 H グローノ くノレイヒ 世界全体を舞台として産英資本強 の原理を追1贖 めた結果 知 佩 説 明 的 如 た-6 経済は、総 供給≠ 総 需 要 舳4 現実の世界では、経 済主体の間で相互依 存や競争が鰻り返さ れている, 黼7 資本主義とは資本の無限の 増殖を目的とし、1 躙を永統 的に追求していく経済活励 である。 識 分  ̄」 祈 的 知 識 F3 現象としての グローx傴イ匕 舮3 貨幣とは、欲望 の孀介である。 H 複数の価値体系の差異剖中介 することで秬笥を創出する。

(各命題の前に記された記号偉、 岩井克人氏の経済認識のモデル( 図1 参照) に対応 する) (図1・1) 岩井克人氏の貨幣と資本主窗 こ関する認識 斃 資本 ニルB-1 産業資本主義      二 万 H ポスト 産業賢本主義 差異を 生み出 す構造 皿A    製品の髄( 労働生湎生)     未来の価値縣 参        参       令 地呟B      労働力叫 蹴m 金串)      宛 の市栽縮府 体系 '2 っの市場の   産業革命によって上昇した労働生産性   差異性を意識的lこ卿仞 出ず 間の価値の差」 │ と農村の産業予備軍によって抑えられ│   じ ことによって利潤を生み 白 異を俊介     た実質賃金率と朗皀興を媒介    、  す。 橢放 動に伴 う社会 現象 3 グローバル化       謌 乏 し IT革命- 繼 チ 先進受本主義国の国内で産葉資本主    差異性そのものとしての ミ = ≒ が ≒ めた結果。 一一        j) 結果。 ≒ 金融靭 に 二廱 二        ゛朧 、 匚7J;Xr ぶ;?m グ゜ ̄パルイ匕によ〕 (図1-2) 齏 鰍皃人氏 による 社会 変動

岩井氏 は, 資本主 義 の基 本原理 を追求 す るこ とに

よ って生じ る現代 の社会変 動 として, グロ ーバ ル

化,IT 革命, 金融革 命 の3 つ を挙 げてい る。

2「 経 済 を 通 し て 社 会 が わ か る 」 授 業 の 知 識 の 構 造 岩 井 氏 の 経 済 認 識 の モ デ ル を も と に ,59 の 先 行 授 業 実 践 を 分 析 し た。 そ れ ら の う ち, 貨 幣 ・ 資 本 主 義 , 社 会変 動 に 関 す る 知 識 を 生 徒 に 獲 得 さ せ て い る も の は37 実 践 あ っ た 。 こ れ ら の 実 践 で 獲 得 さ れ た 知 識 の な か か ら, 産 業 資 本 主 義 , ポ スト 産 業 資 本 主 義 , グ ロ ー バ ル 化 に 関 す る 概 念 的 ・ 説 明 的 知 識 と そ れ を 補 完 し う る 分 析 的 ・ 記 述 的 知 識1 ’)を 抽 出 ・ 構 造 化 し た。 ま た, こ れ ら の知 識 が 岩 井 氏 の 経 済 認 識 の モ デ ル で は ど の 部 分 に あ て は ま る の か を 示 し た。 紙 面 の 都 合 上 , 授 業 モ デ ル 開 発 に関 わ る グ ロ ー バ ル化 の 部 分 の みを ( 図 n ) に 示 す 。

Ⅲ 開 発し た授業 モデ ル

1 単元名 「私 たち の生 活 と グロ ーバ ル化」

2 日的  今 日 の グロ ーバ ル化 か 資本 主 義 経 済

の進展に よる ものであ る ことを,農業 を モデ ル

として探 究す る。

-i された記刎 ま、 岩井 克人氏 の畄 砌 廖 )モデ ル 膕 I 忝祟 函l )「経済を通 してt 牘 が わかるJ m 3 対 象  中 学 校 社 会 科 公 民 的 分 野 4  題 材 に つ い て 中 学 校 社 会 科 公 民 的 分 野 の 開 発 単 元 匚私 た ち の 生 活 と グ ロ ー バ ル 化 」 の 授 業 モ デ ル を 提 案 し た 。 グ ロ ー バ ル 化 は , 岩 井 克 人 氏 の あ げ る グ ロ ー バ ル 化 ,IT 革 命 , 金 融 革 命 と い う3 つ の 社 会 変 動 の う ち , す べ て の 中 学 校 社 会 科 公 民 的 分 野 の 教 科 書 で 取 り 上 げ ら れ て い る 内 容 で あ る 。 従 っ て , 現 場 で 実 践 し や す い 題 材 で あ る 。 こ の よ う に グ ロ ー バ ル 化 を 授 業 モ デ ル の 題 材 に 選 定 す る こ と は , 教 育 内 容 と し て の 科 学 性 , 授 業 モ デ ル の 実 践 可 能 性 , 生 徒 の 生 活 と の 結 び つ き の 面 か ら み て 意 義 深 い 。 5 単 元 の 内 容 構 成 授 業 モ デ ル 開 発 に あ た っ て , 基 本 的 学 習 過 程 の 設 計 と 知 識 の 分 類 や 問 い と 習 得 さ れ る 知 識 の 関 係 に つ い て は , 岩 田 一 彦 氏13 )の 考 え を も と に す る 。 本 研 究 で 開 発 し た 授 業 モ デ ル で は , 授 業 過 程 は 概 念 探 究 過 程 と し て 構 成 さ れ , 生 徒 は 単 元 目 標 で あ る 概 念 的 知 識 を , 単 元 の 終 結 段 階 で 獲 得 す る 。 し か し 概 念 を 獲 得 す る だ け で は 一 般 化 さ れ た , 転 移 可 能 な 知 識 に な ら な い14)。 た と え ば 西 林 克 彦 氏 は, 知 識 を 匚法 則 的 知 識 (L)」, 匚接 続 用 知 識 (I)」, 厂個 別 的 な こ と が ら (E)」 に 分 類 し た 上 で , 個 別 的 な こ と が ら を 理 解 し た り , 法 則 的 知 識 を 使 っ た り す る た め に は , 接 続 用 知 識 (I) が 重 要 で あ る と 主 張 し て い る 气 本 研 究 で は , 経 済 学 の 命 題 を 西 林 氏 の い う 厂接 続 用 知 識 」 と み な し , 概 念 的 ・ 説 明 的 知 識 と 分 析 的 ・ 記 述 的 知 識 の 中 間 に 位 置 づ 84 −

(3)

アメリカ1気多くの余豕梢4勿を販 売するために幡出殺物の市場を開 拓したので、世界最大の食料輸出国 となった。

農民

は経

ける

単元を貫

く問いと,単元の内容構成は

以下の通

○ 

である。

単元を貫

く問い

なぜ

,グ

ローバル

化は進行

しているのだ

ろうか

○単元構成

単元構成を

(図Ⅲ)に示す

6 

学習過程 

紙面の都合上

【概念探究過程

Ⅲ】の学習過程のみ

,以下に示す气

上の

留意

日本

貿

と私

生活

関わ

りに

,資

をも

とに

具体

的に

えさせ

○ 

日本が国土面積

(世

界の0.3

%)

,人口

(2%

であるのに輸入は世界

の貿易額の5,2%

を占

めている(2003

年)

ことを指摘し

,私たち

の生活は多くの輸入品

によって支えられてい

ることに気づかせる

・ 

今まで学習した内容

をもとに

,新たな問い

を発見させるようにす

る。

・ 

私たちの身のまわ

にある冷凍加工食品を

例に

,原料だけでなく

加工済み食品の多くも

輸入していること

,日

本の食料輸入相手国は

世界各地に広かってい

ることに気づかせる。

【1】世

界の貿

貨幣とは。欲望の媒介である。 ブラジルで以、や謂を求める地主 層が高く売れる大豆を好んで生産 し、輸出するため大豆栽培が拡大し 済主体とし て、最も利 潤があがる 作物を殺培 する。企業 は利潤のた めに生産工 程を癲分化 し、生産と 流通・消費 を最適化す るように国 境を越えて 配置する。 その結果、 グローノ勺レ 化が進行す る。

経済

経済学の命題

学の視

点と理論

-85−

報の

先進国で増えている加工済み調 理食品の需要を禰たすために、フィ リピンの安い賀金をめあてに。先進 国のT坦が進出している。

予想

され

る発

・思考

○ 

世界的な貿易額は

年々増えている

・ 

とで,私たちの生活は豊かになって

海外から多様な商品を輸入するこ

いる。

ロー

バル

知識

学の

点と理

:お金の

流れ

ロー

して

○ 

物以外に

,私

たちが輸入

して

いる

には

どの

うなも

のが

るだ

○ 

私たちが食べている食糧は

,どの

ような人々によって作

られ

ているの

だろう。

・ 

私たちが食糧を輸入する

ことは

外国の人たちにどのような影響を与

えているのだろう

○ 

パーマーケッ

トで売られ

てい

る缶詰や乾燥食品

,冷凍食品,生鮮

食品だけでなく

,外食産業の調理工

程の

大半

を海外に移転

している。

【概

究過

目  

○ 

ピン

に先進

向けの

を製

造す

工場が

る理

,都

流れ

々が最

低の

くとい

う工

場労働

の側

,加工

済み

調

理食

品の

が増

,生

と流

国境

を越

えて配

とい

う先進

国の

工場経

者側

因か

ら説明

きる

展  

な発

・指

○ 

この

を見

,気が

っいた

とをノー

さい

トに

この

ように貿易

が大きく伸び

,世

界経済の統合化が

進む現象をなんと

いいま

したか

○ 

これ

でグ

バル

化の

ことを

学ん

できて

,何

か気づくこと

疑問に思うこと

りません

○ 

以外に

ちが

輸入

る食

糧に

どの

ある

うなも

(4)

の・

予想の

説の

○ 

私たちが食べ

ている食糧は

どの

ような人々

によって作

られ

ているのだ

う。

○ 

私たちが食料

を輸入すること

,フィリピン

の人々に

どのよ

うな影響

を与え

ているの

ろう

・ 

前時の学習内

容をもとに予想

しよう。

を検

○ 

フィリピンに

,どの

ような

工場が進

出して

いるの

ろうか

リピンか

らは

,パ

イナ

プル

やバ

され

○ 

アグ

ビジネス

業が大

農園

を作

り,

でき

を輸

して

・ 

用作

(地

を栽

主層

して

)が高

く売れ

る輸

○ 

土地

を失

った

民が

都市

に流

非農

業人

口が増

える

・ 

入食

に依

存す

うに

なる

,前

での

学習

をも

とに

予想

をた

個人で

,必要な資料を選択

して,

仮説

を検

証する

個人が立てた仮説と検証の結果を

グル

フィリ

プで交流する。

ピン

では

,輸出用のパイナ

プル

とバナナの

生産が増加

している

フィ

リピン

では

,農業

人口が減少

し,

民の都

市への

流出が起

こっ

ている

フィリピンでは

,輸入小麦への依

を高めている

フィリピンの農民は民衆に必要な

もの

よりも

,高く売れ

る輸出用の穀

物を作

ろうとする。

先進国が

,加工済み

調理食品の工

場を建設

している

・ 

フィリピンから輸入

され

いる

食品

を例

学習の

ンに絞る。

焦点をフィリピ

○ 

農園の写真か

フィ

リピンのバナナ

ら,フィ

リピンのバナナが自給

用ではな

,輸出用に

大量に作られて

いるこ

とに気づかせる

○ 

プランテーシ

ョンに

ついて簡

単に復習

する

・ 

前時の学習内容で,

私たちがブラジルの大

豆を輸入することが

ブラジルの

人々に

どの

ような影響

を与えてい

たか

を想起させる

【IZ

】フィ

リピンの

バナナ農

園の写真

【3】

フィリ

ピンのバナナ

生産

と輸

【4】

生産

フィ

量と輸

リピンのパ

イナ

【5】

フィ

リピンの農

業人口

非農

口推移

【6】フ

リピンの

麦輸

【7】フ

ピンの

バナ

栽培

【8】

フィ

ピンの

国企

国の

場経

者は

なぜ

,先進

向けの

済み

調

理食

品の

を製

造す

る工

ピン

るの

うか

・ 

仮説を立てよう。

理由を予想し

① 

の加

先進

工済み

国の

調理

工場

経営者

食品

を製造

先進国

る工場

をフ

ィリ

民が

ピン

に造

い賃金

るのは

で働

くか

,都

らで

に流

る。

② 

先進

国の

工場

経営者

先進

国向

の加

工済み

料理

を製造

る工場

をフ

ィリ

ピンに造

るのは

,先進

えて

いる加

工済み

調理食

品の

需要

対応す

るため

,少

しでも

い値

で造れ

,生産

と流

を,国

を越

て配

分す

るか

らで

86 ―

○ 

工済み

調理

工場の進出という

「結果」を生み

出す

「原因」を考えさせ

O 

「先進

国の

工場

先進

けの

済み

を製

工場

をフ

ピン

るの

,∼だ

らで

とい

う形

で各

とめ

させ

(5)

仮 説 の 根 拠 と な る 資 料 の 収 集 検 証 ① 検 証 ① の ま と め 新 た な 問 い の 発 見 仮 説 の 根 拠 と な る 資 料 の 収 集 ② 検 証 ② ・  こ の仮 説 を 確 か め る に は , ど のよ う な こ とを 調 べ な く て はな らな いで し ょ う。 ○  フ ィ リ ピ ン の 加 工 済 み 調 理 食 品 工 場 で 働 く 人 の 賃 金 や 労 働 条 件 に つ い て 調 べ る。 ○  先 進 国 で の 加 工 済 み調 理 食 品 の 需 要 に つ い て 調 べ る 。 ・  加 工 済 み 調 理 食 品 が 私 た ち の手 元 に 届 く ま で の , 生 産 と 流 通 の 経 路 に つ い て 調 べ る。 ・  生 徒 か ら 出た 仮 説を , ① 工 場 で 働 く 労 働 者 に 関 す る も の と , ②工 場 経 営 者 に 関 す る も の に 板 書 し て ま と め る。 先 進 国 向 け の製 品 を 製 造 す る 工 場 は , な ぜ フ ィ リ ピ ン に進 出 す る の だ ろ う か。 工 場 で 働 く 人 た ち の 要 因 か ら 考 え よ う 。 ・ 資 料 を 読 んで, 仮 説 を 検 証 し よ う 。 ○  フ ィ リ ピ ンで 都 市に流 れた人々 は , 生 き て い く た め に ど う す る だ ろ う か。 ・  都 市 に 流 れ た 人 々 は , 生 き て い く た め に 、 最 低 の 賃 金 で 働 く。 【9 】 フ ィ リ ピ ン の 工 場 で 働 く 人 々 フ ィ リ ピ ン に、 先 進 国 向 け の製 品 を 製 造 す る 工 場 が 進 出 す る の は , 輸 出 用 の 作 物 栽 培 の た め に土 地 を 失 っ た人 々 が 都 市 に 流 れ , 生 き て い く た め に 最 低 の 賃 金 で 働 き, 賃 金 が安 い か らで あ る 。 先 進 国 の 工 場 経 営 者 はな ぜ , 先 進 国 向 け の 加 工 済 み 調 理 食 品 を 製 造 す る 工 場 を フ ィ リ ピ ン に造 る の だ ろ う か。 先 進 国 の様 子 か ら考 え よ う 。 【10】 先 進 国 の加 工 済 み調 理 食品 の 需要 【11】多 国籍 企業 資 本 主 義 と は, 何 を 目 的 と し た 経 済 活 動 だ ろ う か。 ・ も う け る た め で あ る 。 資 本 主 義 と は、 資 本 の 無 限 の 増 殖 を 目 的 と し, 利 潤 を 永 続 的 に追 求 して い く 経 済 活 動 で あ る。 o よ 雷 靉 竺 詣 崇 謡 o 娃 男 子7 ) 昌 経 営 者 が フ 4 リ ピ シ に工 場 を  ・  生 産 と 流 遥 の 費 用 9 く る 理 由 と し て ’ ど の よ う   が  最 も安 い と こ ろ な こ と が 考 え ら れ る だ ろ う・   で示jミWす る よ う にな っ ● こ の 仮 説 を 確 か め る た め に ブ 言 国 の 加 工 済 み は・ ど の よ う な こ と を 調 べ な   ゜  食 ゜ ’゛ く て は な ら な い で し ょ う・ .晉 回 心Jオ ‰ 分 ・  資 料を 読 もう。 ・  仮 説 を 確 か め ○  先 進 国 で は, 加 工 済 み 調 理 食 品 の よ う 。       需 要 が 増 え て い る。 ○  利 潤 を 求 め る 企 業 は, 生 産 と 流 通 を 国 境 を 越 え て 配 分 す る 。 ・  先 進 国 で は , 生 産 工 程 は 細 分 化 さ れ て い る。 ・  今 まで 学 習 し た 内 容 を も と に, 追 究 の視 点 を 考 え さ せ る よ う に す る。 ― 87

(6)

概 念 探 究 過 程 Ⅲ の ま と め 概 念 探 究 過 程 I ∼ Ⅲ の ま と め ○  こ れ ま で の学 習 を 振 り 返 って , 先 進 国 の 工 場 経 営 者 は な ぜ , 先 進 国 向 け の加 工 済 み調 理 食 品 を 製 造 す る 工 場 を フ ィ リ ピ ン に造 る の か を ま と めよ う。 【 説 明 的 知 識 Ⅲ の獲 得 】 フ ィ リ ピ ンで は , 都 市 に 流 れ た人 々 は生 き て い く た め に 最 低 の賃 金 で 働 く。 一 方 , 先 進 国 で は 加 工 済 み調 理 食 品 の 需 要 が 増 え て い る。 そ の た め , フ ィ リ ピ ン の安 い 賃 金を めあ て に , 先 進 国 に 調 理 済 み 食 品 を 輸 出 す る た め の 工 場 が 進 出 し て い る。 【 単 元 を 貫 く問 い 】 な ぜ , グ ロ ー バ ル化 は 進 行 し て い る の だ ろ う か 。 こ れ ま で の学 習 を 振 り 返 っ て ま と め よ う 。 【 概 念 的 知 識 の獲 得 】 農 民 は 経 済 主 体 と し て, 最 も利 潤 が あ が る 作 物 を 栽 培 す る。 企 業 は利 潤 の た め に 生 産 工 程 を 細 分 化 し , 生 産 と流 通 ・ 消 費 を 最 適 化 す る よ う に 国 境 を 越 え て 配 置 す る 。 そ の 結 果 , グ ロ ー バ ル 化 か 進 行 す る 。 | ○  授業 モ デ ル の 資 料 【 1 】 経 済 産 業 省 パ ン フ レ ッ ト 『 世 界 と 貿 易 だ 冂 【 2 】 鶴 見良 行 『 バ ナ ナ と 日 本 人 』岩 波 書 店, 1982, p.184 【3 】 ∼ 【6 】FAO 資 料 よ り 作 成 【 フ】 以 下 の著 作 よ り 筆 者 作 成 。 NHK 取 材 班 『21 世 紀 は 警 告 す る ② 』 日 本 放 送 出 版 協 会, 1989 。 大 塚 茂 ・ 松 原 豊 彦 編 『現 代 の 食 と アグ リビ ジ ネ ス』 有 斐 閣, 2004 加 納 弘 勝 『 第 三 世 界 の比 較 社 会 論 』 有 信 堂, 19960 ス ー ザ ン ・ シ ョ ー ジ 『 な ぜ 世 界 の半 分 が 飢 え る のか 』 朝 日新 聞 社, 19840 中 西 徹 『 ス ラ ム の経 済 学 』東 京 大 学 出 版 会, 1991 。 R. バ ー バ ッ ク,P.プ リ ン 『 ア グ リ ビ ジネ ス 』 大 月 書 店, 1987 。 渡 辺 利 夫 『 開 発 経 済 学 一経 済 学 と 現 代 ア ジ ア 』 日 本 評 論 社 , 1986o 【8 】以 下 の著 作 よ り 筆 者 作 成 。 関 下 稔 『 日 米 貿 易 摩 擦 と食 糧 問 題 』 同 文 舘 出 版, 19870 S. ジョ ー ジ, 前 掲 書, 1984 。 R.バ ー バ ッ ク他 , 前 掲 書, 1987 。 【9 】R.バ ーバ ッ ク 他, 前 掲 書, 1987 よ り 著 者 作 成 。 【10 】 以 下 の 著 作 よ り 筆 者 作 成 。 マ ー ク・ ド ラ ベ ン ス ト ット 「 序 論JI.P. シ ュ ル ツ, I.M. ダ フ ト 編  小 西 孝 蔵 ・ 中 嶋 康 博 監 訳 『 ア メ リ カ のフ ー ド シ ス テ ム 食 品 産 業 ・ 農 業 の静 か な 革 命 』 日 本 経 済 評 論 社, 1996 。 テ ニ ス・R, ベ ン ダ ー ソ ン, チ ャ ー ル ズ・R.ハ ン デ ィ 「 食 品 流 通 シ ス テ ム の国 際 的 側 面JI. P.シ ュ ル ツ 他 編 , 前 掲 書 。 松 原 豊 彦 「 世 界 の 食 料 事 情 と多 国 籍 ア グ リ ビ ジ ネ ス に よ る 食 糧 支 配 」 大 塚 茂・ 松 原 豊 彦 編 『 現 代 の 食 と ア グ リ ビ ジ ネ ス』 有 斐 閣, 2004o ダ ン・ モ ー ガ ン 喜 多 迅 鷹 ・ 喜 多 元 子 訳 『 巨 大 穀 物 商 社 』 日 本 放 送 出 版 協 会, 1980o 【11 】 以 下 の 著 作 よ り 筆 者 作 成 。 NHK 取 材 班 , 前 掲 書, 19890 ア イ リ ス・ タ ス ク マ ン 櫻 井 よ し こ 日 本 語 版 総 監 修 , 久 保 田 陽 子 訳 『 グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン 霑 THE NEWS  現 代 の世 界 と 日 本 を 知 ろ う 5 』 小 峰 書 店, 2004o M ・ ド ラ ペ ンス ト ット , 前 掲, 1996c 松 原 豊 彦, 前 掲, 2004o

7 授業 モデ ルの成 果

次 の2 つ の視点 に もとづ いて, 授業 モデ ルの成

果 を示 す。

① 岩井 克人氏 の経 済認識 の モデ ルが, ど の程度

具 体的に 授業 モデ ルに組み込 ま れて い るか。

開 発 した授 業 モ デル は,(資 料 H) に示 し た中

学校 社会科 の 厂

経 済を通 して 社会が わか る」 授業

の知 識 の構 造図 のうち, グロ ーバ ル化に関 す る説

明的 知識を すべて 含 んで い る。 し たが って, 岩井

-克人 氏 の経済認 識 のモデ ルが組 み込ま れてい る,

換言 す れば 匚経済を 通して 社会 がわか る」 授業 に

なって いる といえ る。

② 従来 の 厂グロ ーバ ル化」 の学 習 と比較 して,

今回 作成し た モデル はどうい う点 て 有効性 が高

い か。

次 の2 つ の点 につい て, 開発 し た授業 モ デル の

有効 欧が示さ れる。

・ 開発 した授業 モデ ルで は,多 国籍 企業 の活動

88 −

(7)

だけでなく経済主体

としての

農民にも焦点を当

てている

。農

民も経済主体

として利潤を得よう

とす

るがゆ

えにグ

ーバル化に巻き込まれ

る要

因が

,グ

ローバル

化か資本主義経済の必然

であることが

示され

ている

ーバル化が

,人々の生活や地域形成に大

きな影響

を及ぼ

して

いる

ことが

ブラジル

やフィ

リピン

を事例に具体的に示され

ている。

これ

らの

点か

,開発

した授

業モ

デル

「経

を通

して社

がわ

」ため

有効

モデ

ある

える

IV 

研究の成果と課題

本研究では

,新

しい経済教育の

内容論と探究の

論理を提起

した

。経済教育の

内容

を社会構造と

し,

社会構造を探究するための経済学の視

点と理論を

明示

した

本研究で提示

した授

業モデル

,中学校社会科

で獲得され

る科学的経済認識のモデルに基

づいた

ものであ

,経済教育を現実に変えうる,実践

能なモデルである

。反面

,グ

ロー

バル

化を加速す

る情報や技術革新のはた

らきに言及

した授

業開発

ついては今後の課題

とす

る。

【註】

1)

「社会認識

を獲得する

」とは

,社会を客観化

し,構

造として再構成することである

。生徒たちは現実の

世界のなかに

生活してお

,日々生徒な

りの社会認

識を獲得

している

。これ

ら既有の社会認識を批判的

に吟味

・再構成

,科学的なものに

していく過程が

社会科の授

業過程

である。

2)私たちが物事を認識す

る際には

,一定の視点が必

要である

。中久保邦夫氏は

「一定の視

点を持つこと

(中略

:引用者)構造や秩序,意味が見

えて

くる」

(中久保

邦夫匚

科学方法論における展開)角村

正博編

『経済学の方法論と基礎概念』

日本経済

評論社,

1990,

p,7

)と述べ

ている

。一定の視

点から社会事象を分析

することは

,子どもの社会認識の形成を図る上でも

育成)

要である

『教育科学社会科教

(岩田一彦匚

社会事象の

育J

No.234,

比較と社会認識

明治図書,

1982

年9月号,

p.116

。つま

り,視点を設定するこ

−89−

とは教材選択の論理であると同時に,生徒が授業に

おいて社会事象を探究する際

にも欠かせない

。また,

見るという

ことは

「対象の見えやその

変化の

り方

のなかに自分の視点の位置やその動き方の情報が含

まれ

てお

,それ

を知覚する

ということ」

(宮崎

清孝

上野直樹

『認知科学選書

1 

点』東京大学出版会,

1985, pp.81-82)

である

。このことは,

「社会を認識

している

を図る」

自己の位置を相対化

(岩田一彦

『社会科固有の授

」し,

「認識内容の科学

業理論

・30

提言』

明治図書,

2001,

p.

84)

上でも重要である

3)

「概念

」では

なく 

理論」の語

を用いるのは

,概念

的知識

(本稿匚

開発

した授業モデル)参照)との混

同を避けるため

である

4)草原和博氏は

,科学的社会認識

を形成する総合社

会科学研

究の内容のまとめ

して

「地域の社

会構造

変動を解釈

させる

『総合的社会科

学研究』

」を挙げて

いる

(草原和博

『地理教育内容編成論研究一社会科

地理の成立根拠』風間書房,

2004,

pp.407-408)

。ま

,原田智仁氏は人間行為の意味を規定する

「 ̄

時代

(社会

)の構造や特

質」に社会認識教育の内容の

中核

をおいている

社会がわかる

(原田

」とは社会

,前掲書,

を客観化

p.

124)

し構

。この

造として再構

ように

成することであるが

かむことは容易ではない。富永健一氏は

,現在進行

中の現代の構造をつ

,社会構造

が変動するとき

,すなわち社会

変動の中でこそ

,社

会構造が

明らかになると述べている

(富永健

『社

会学講義』中央公論社,

1995)

。これ

らの

ことか

ら,

社会

変動は匚

社会がわかる」社会科授

業の

内容とし

て成立

しうる

5

)お金は

,社会を流れ動いて社会に活力を与える

血液に例えられる

(全国銀行協会H

(http://

w.

morebank・g

rjp

。同時に

,経済

学とは,お金の流れ

を通

して

,人と人,人と社会,社会と社会の関係を

見る学問である

。また現代社会は,お金の流れが世

界経済の

リー

ディング

・ファクター

となっている。

P.

F.

ドラッカ

は,世界経済の構造の基本的変化と

,次の

3つを挙げている。

(1)

一次産

品経済が工業

経済か

ら分離

した

(2)

業経済において生産が雇用

から分離

した,

(3)

・サー

ビスの

貿易よ

りも資本移

動か世界経済

を動かす原動

力となった。

(P.F.

ドラ

カー 

上田惇生他訳

『マネジメン

ト・フロンティア』

ダイヤモン

ド社,

1986,

p.27)

。このよ

うに

「お金の

(8)

流れ

」は

,社

認識

組み

して

ある

6)人は

,お金の

流れ

を基盤

した

資本

主義経

済の

,利潤

を求め

て行

動す

。資本

義経

済の

,分権

うこと

である

。だれ

しもが他

人が

生産す

る財

やサ

ビス

自分

生産す

る財や

サー

を交換

しなが

ら生活

して

いる

。また

,利

を最

化す

るため

自分の

生産

る財

やサー

ビス

と競合

る財

やサ

ビス

を生産

して

いる人

,競

しなが

ら生

して

いる

。社

会は

,人間

同士の

競争

や相

互依

して

も記述

できる

この

うに

「競争

と相

互依

」は

,市

場環

とその

での

経済

主体

行動

を分

る経済

学の

概念

である

。同

時に

,初期

社会

科か

ら受け

つがれ

いる

,人

と他の

との

関係

,人間

自然

環境

との

関係

,個

と社

会制

度や

施設

との

関係

を理

での

,社会

内容編

成の

重要

論理

ある

7)原

田智仁

『世界

史教

育内

容開発

究一

論批

−』

書房

,2000

,p.98

8)棚橋

「社

会科

リキ

ュラム

開発

ける

“構

”概念

いて

日本社

会科教

育研究会

『社

究』

第31

号,

1983,

p.60

9)ラ

トシ

,村

上陽

一郎

他訳

『方

法の

擁護』

社,

1985

10

)高根

氏は

「社

おけ

問題解

ため

論理

」は

「問題

「結

果」

して

とら

え,その

『結

果』

生み

出す

「原

なるべ

き要

を探

り出

とで

と述べ

いる

(高

正昭

『創

』講

談社,

1979,

p.35)

11

)分

した

井克

氏の

(年

代順

① 

井克

『ヴ

ェニス

人の

資本

』筑

書房

1985

② 

『不

均衡

学の

論』

波書

,1987

③ 

柄谷

・岩

『終

りな

き世

』太

田出

1990

④ 

「貨

」筑摩

書房,

1993

⑤ 

『資

を語

る』

社,

1994

⑥ 

井克

・伊藤

「 ̄

経済

論の

新展

」岩

・伊藤

重編

『現

代の

経済

論』東

京大

学出

会,

1994

⑦ 

人厂

長論

」岩

井克

・伊藤

元重編

書,

1994

⑧ 

井克

「資本

義に

とっ

ての

二十世

」吉

弘之編

集代

『東京大

学公

開講座 

文化

して

20

紀』

東京

出版

会,

1997

⑨ 

『二

一世紀

資本

主義

論』

筑摩

2000

⑩ 

井克

『会社

これ

どうな

るの

』平

社,

2003

⑩ 

井克

人厂

会の

」糸

重里編

『智慧の

を食べ

よう 

学問は驚

きだ

ぴあ株

式会社

2004

12

)知

識の

分類

・構

化論に

しては

田一彦

氏の

完全

して

いる

。詳細

註13

13

)岩

田一

『社

会科

固有の

業理

論 30

言』

図書,

2001,

『地

理教

活用

した

る授

業の

造』

明治

書,

1984,

14

)た

田喜

とえば

美監訳

,米

『授

国学術

を変

研究

える 

推進会

認知

議編

心理

著 

学の

敏昭

る挑

戦』

北大路

書房,

2002o

宅なほみ

・白水

氏は

習が

転移

する

条件

して

,多様

な視

点と

メタ

を挙

げて

いる

宅なほみ

・白水

『学習科

とテ

ロジ

大学

興会,

2003)

15

)西林

克彦

『間

違いだ

らけの

学習

論 

−なぜ

勉強

身に

つか

いかー

新曜

社,

1994

16

【概

究過

・H】

いて

,拙

稿

『経

を通

して社

井克

氏の経

会がわ

かる』中学校社

認識

を中心

して 

会科の

授業構成

平成17

年度社

系教科

育学会

研究発

資料

を参

され

−90−

参照

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