木 佐 貫 暫 〔研究紀要 第15巻〕 81
鹿児島県に於け る 甜菜栽培(第1報)
-一播種期 に つ い て-木 佐 貫 哲
The Cultivation of the Sugar-Beet in Kagoshima (1st Report)
In the time for the
Sowing.-● SATOSHI, KISANUKI. Ⅰ 緒 +I-西南暖地の甜菜栽培は,昭和31年4月, 「国内産砂糖育成計画」の政府案発表により, 「甘味資源 白給度向上10カ年計画」の一環として各地の農林関係研究団体等により,技術的達成を期して努力が 進められてきているが,生産農家の甜菜に対する理解不足と,栽培技術の不備の為,大半が不成績の 結果となり,栽培面積の拡張は望めず,九州地区に於いても,唯一の大分県,新光甜菜工場の原料不 足による操業中止,熊本県の栽培面積の縮少,宮崎県の試作程度への方針変更,鹿児島県でも工場建 設予定の興南製糖工場の原料不足による確約の解消と,甜菜栽培上の前途に大きな問題を生じ,覗 今,鹿児島県議会の討論内容にも,栽培是非について,色々と討議がなされている現状である。 但し,鹿児島県の場合,昭和31年,鹿児島県農業試験場鹿屋分場に於ける,農林省応用研究費によ る約20aの導入試験が行われ,又,九州農業試験場も時を同じうした,その頃,種子島試験場で行う と言うように,その歴史的ものも古く,特に奨励一年目成績は,農林省よりも栽培適地と言う折り紙 もつけられ,又,甜菜糖工業の導入と澱粉の消費開拓策の為のブドウ糖工業育成を目指す意味から ち,甜菜栽培導入の意義の重大さから,県当局としては,県下農民の裁培意欲の向上と,製糖工場の 誘致に努力を進めている。 昭和40年度,横浜精糖工場鹿屋建設ということになっているが,操業可能原料量として大体80,000 屯が必要とされている。昭和37年度,鹿児島県の生産量は10a当,約2屯,面積にして 400ha, 県下全生産量8,000屯で操業可能必要量の志という状態で,この点よりしても10a当生産量をもっと 増すべき技術指導の徹底と栽培面積拡張-の道に努力しない限り,興南製糖工場同様な結果になるの は必然的であると思う。然らば,何故,伸び悩んでいるのか,その原因として,栽培技術と農家経営 の上に於ける不安が,その最大根拠をなしているといっても過言ではない。著者も技術的面より,こ の問題を検討すべく,昭和34年以降,小面積ではあるが試験栽培並びに諸調査を進めているが,特に 鹿児島県の場合,次の点に栽培上の難点が生じているように思う。
1) 高温・乾燥期の発芽と立枯病の発生。 2) 稚苗期に於ける台風被害。 3)根の肥大に要する適温期間の不足。 以上3点が最も大きく,特に気象要素に関係している事である。鹿児島県作付形式としては秋作栽 培の為,最高温・乾燥期の8月頃の播種となり,その結果,栽培過程第一段階の発芽成績不良の為, 栽培意欲の喪失を生じ,従来の安全作物栽培に帰する。大体,甜菜は日本では北海道中心の北方農作 物であり,場所的にも気象的にも大差のある,日本南端の鹿児島県で栽培するには,或る程度の無理 もあるとは思われがちだが,暖地栽培用種子にて,次の点に留意して裁培すれば,出来得ぬことはな い。 ㈱ 種子発芽能力限界温度の上にたって,播種期の範囲を調査し,出来得る限り生育期間に支障の ない範囲で,高温・乾燥期を避け七播種する。 (B)高温・乾燥を避ける設備等の設置により育苗を行ない,移植栽培を行う。 以上制, (B)の観点に立ち,問題点の1) -3)について,著者の調査結果より考察を進めてみた い。尚本論では,第一報として先ず, ㈱点について報告することにする。
Ⅰ 材料及び方法
(り 実験圃場---○鹿児島市伊敷町脇田,旧鹿児島大学教育学部農場。 (昭和34年度) ○鹿児島市鴨池町,鹿児島大学教育学部農場。 (昭和36 - 37年度) (衰Ⅰ ) 試験岡土質状態 原土中に含 細土中に含まれ まれる磯量 る砂:粘土量 (%) (%) o伊敷町圃場 6.0 70 : 30 o鴨池町圃場 5.75 75 : 25 砂の内容 土 佐 (%)三
30.0 18.3 21.7‡壌土 (2)実験種子---導入2号---鹿児島県農業試験場より分譲。 (註) 「導入2号」 GW系統でGW359の別称ありU. S.A. コロラド州グレート・ウェスターン製糖 会社が,イタリ-品種セセナNSAを交 配母体として育成された品種で,昭和26 年,日本甜菜糖株式会社が初輸入したも ので鹿児島県栽培品種の主体をなす。 (3)肥料-・-鹿児島県,甜菜栽培基準に準じて 施肥を行った。 ( 定 温 私 設 温 良 ) (註) 砂壌土∼壌土 (表Ⅱ) 実験種子,発芽能力調査表 -・ 1回目調査(昭和34年度) --・2回目調査(昭和36年度) D使用定温器OGW式 o使用種子粒数100粒 o調査期間10日木 佐 貫 哲 〔研究紀要 第15巻〕 83 (表Ⅱ) ㊥施 肥 量13.3m2当単位 g
肥 料 名1-元芸茜
量計
堆 肥 硫 酸 ア ンモ ニ ヤ - 4 0 0 7 6 4 00 13 過 燐 酸 石 灰 硫 ■酸 加 里 智 利 硝 石 2 0 3 0 E 8 20 30 8 消 石 灰 4 0gP .H .6●5矯 正 用 と して ●成 分 表 (註)昭和38年度は次の如き肥料が使用されてい る。 (3.3m2当 元肥) o消石灰-中和量 o堆 肥-5kg o鹿児島経済連,甜菜用…400g ほう素入り複合肥料 (4)試験方法-・-試験圃場は,試験計画により前作を行わず, 1区計画図 (3.3m2) 各 区 配 置 図 体裁地として取扱い,方法としては, 条播 (播種粒数30粒) ①I止p・; fc-rj-一1 月N*^^^2 LL)?・刈 ①&-5 ト斗Ilcr.- anj0-.-<1LJ<ゥj t ①Ruや= :3 P (註) 。標準区--8月11日播 種区 o各区間距離--・ 1m 標準区法を採用し, 8月11日を播種第一回日と し, 10月11日迄を10日置に区分,計7回の播種 を行ない, 2月25日以降3月10日迄の晴天日を 収穫日として調査を進めた。 尚,収穫時に於ける諸調査を次の如く行っ た。 ⑦ 収量測定 各区(3.3m2)毎の全株をはりあげ台秤(20 短迄計量のもの)にて測定,株数,総重, -本 当平均重,根重などを求む。 ㊥ 合糖率測定 各区(3.3m2)毎の全株申,平均重,若しくは,それに近い重量値を有するもの3株を選出し,刺 皮,粉砕,搾汁の過程を経て,検糖計にて求む。 (註)試験成績の取纏めとしての収量値は,標準区法の既定算出法式により,地力更正収量算出値として 表示する。 (5)気象関係資料--・本試験中に於ける気象関 係図表は次の如くなる。 ⑦ 気温 試験期間3カ年(昭34, 36, 37)分のもの は次の如くなる。 ^ > s ● (表Ⅳ) 栽培期間3ヶ年月別平均気温表c-30 ユ0 10 ー◆ ㊥ 降雨量 試験期間3カ年(昭34, 36, 37)分のもの は次の如くなる。 (表Ⅵ) 栽培期間3ヶ年月別平均降雨量 9 10 1 ll I ユ 3 月 乃 巧 巧 持 月 冗 巧
Ⅱ 結果及び考察
以Lの如き,甘(1)-(5)の材料及び方法により得られた結果は次の如くなり,各調査項目別に,そ れ等について考察を進めてみることにする。 (1)発芽状態 播種期別の圃場に於ける発芽 成績は右図の如くなった。 以上のⅦ表により考えられる 点は,発芽率50%以上の結果を あげる為には, 9月1日区以降 の播種でなくては,不良結果に なる ことがわかる。これは, 甘, (2) (表甘)の種子発芽能力 調査結果によれば,同数値を得 る為には30Co以下により求め られ,甘, (5), (表Ⅳ) (表Ⅴ) によって30Co以下を更に求め (表Ⅶ) 発芽状態比較表(註.播種目別)木 佐貫 哲 〔研究紀要 第15巻〕 85 ていくと,時期的には最高気温が,少なくとも,これ以下になるのは9月以降,即ち9月1日以降に 於いて求められてくる。これ等の点よりして,発芽温度の上からしても,この9月1日以降の線は, 全ての点で妥当と考えられる。 以上の点より,鹿児島県では,特別な甜菜に対する好気象条件の訪れ,若しくは人工的装置設置の なされない限り,普通状態では9月以前の播は不成績に終ることがわかる。 尚,発芽の為の水分量の問題であるが, I, (5) (表Ⅵ)によると, 8月は降雨量の点で, 9月以降 より多い結果にあるが,これは主として台風頻発時期による,その影響のもたらす,一時的豪雨型で 降雨量の割に降雨回数は少なく,実際的には,晴天高温乾燥期が多い結果を表わし,その点よりし て,期間を通じて適当な湿りを与える9月以降の状態下に播種日を定めることも,発芽適温期と一致 する意味に於いて妥当のように思う。 (2)収量状態 播種期別の圃場に於ける収穫日の収量結果は次の如くなった。尚,参考的に収穫時に於ける写真を 掲げることにする。 8月11日播 (213日) 8月21日播 (203日) 9月1日播 (192日) 9月11日播 182日)
9月21日播 (172日) 10月1日播 (162日) 10月11日播 (152日) (註) ・ 3月10日収獲 ・ ( )内数値は生育日数 ・区平均重量のもの ・ ⑧∼⑲は3.3m2当全収量のもの ・昭和34年産 8月11日播 (213日) 9月11日播 (182日) 9月21日播 (172日)
g W 仰 0 0 は S 小50 SEE bso HE ユS¢ 加 ㈱ 木 佐 貫 哲 各 年 毎 播 種 目 別 収 量 表 ( Jt.TZBE)
総童
旬 '0. 5S0 ¥ ( 急 ●干 I 5 0 II -l 、 ▲rS 如 ∼ 一 一 l tI I、 l M il I 銅 0 2 00 時 O tb ○ 5 ○ I l I I I I 、■ l k / ′ 、、 やノ′ 一 一一一 一 - 篭 葛 篭 忌肇
(註) " 叩 t s r -a > ・ 心 - * T T - : 」 3 3 矧 F g j q 拝 r c c o -t t E . -昏 8両Ji" 昏 珂 ㌦ 〔研究紀要 第15巻〕 87 巧o富 防0 官00 m回 700 抑 頼 即 ㈹ W 0 M l ぶ ^J 血l ォK=rq O 符 l t Z I -p珂利払 一・昭和34年度 ・---・ 〝 36 〝 // 37 // このグラフ上の数値は, 1個 体重(平均値)を表わす。 † 1-撮.A )
1杏強甘gll a十号乎栂 矩篭=岬略鼻) 昏主) 一一一一県立 ・・t一・根童 避雷 0 1■ 、 I 忍 留¢ I I I l 且言17 L JQ 、 、 ′′ 、 I I 盈 0 8 竜閑 葦的 雷 ⑳ I I I I ′、 l l I ら 、 、、 、 ,、 、 ゝ - J- i 亜 I一晩● . l 聴 甘 雷 宮 島 昌 男 J O ) O … 3 1 I I I 2 1 I I I 町 す す IJ 曾 8 8(表Ⅹ)によると,総重,根重共に1個体重的には早い時期,即ち, 8月11日播が圧倒的に優れ, 8月21日より9月11日迄の3播種区は大体同じ位の数値を示めし, 9月21日播種区以降は急激に低下 する傾向を示めしていることである。以上の点より生育に必要な適温期間の不足という事が,鹿児島 県の場合, 9月21日播種区以降の各区の総重,根重の急激低下にその影響を表わしているように思 う。大体,甜菜に於ける葉,塞,根の生育上の最低温度は, IOCo前後であるとされている点より, この温度を甘, (5) (表Ⅳ)により求めると月平均で12月頃となり, 9月21日播種区の場合で約70日位 となり, 9月11日播種区で約80日,散にこの10日間で急激な収量変化の表れることに注目すべきであ り,又この点より10Co前後の気温の到来前,少なくとも80日位の生長期を置けるように計画して播 種期を決定すべきである。又, 8月21日播種区, 9月1日播種区, 9月11日播種区の3区では,総 蛋,根重共に余り変化のない収量値を表わしている点より,この約3週間位の間では,播種期の早晩 は余り生育には関係がないようである。 (3)発芽状態と収量状態との関係 以上 I, (DM2)の試験結果により,播種目別による,発芽状態と収量状態において,各,好結果 を得る為の時期的ものについて考察を進めてきたが,栽培上の目的は,収穫時に於ける,より良き生 産量を得る為の需要目的にかのう生産物をより多く生産することである。それ等の意味から考える と, I, (1)は,あくまでも,発芽に於ける好結果を得る為のもので,たとえ 50%以上の発芽成績が 出ても収穫期の生産個体が不完全ものでは問題にならぬ。又,粧, (2)でも同じく,収穫時の生産物の 平均個体重が高くても,個体数が少なくては問題にならぬ。即ち,発芽状態と収量状態を一緒にして 考察を進めるところに収穫時の目的が達せられる。 大体甜菜生育上の適温は 20-23Co位で,発芽したものを出来るだけ,この温度近くの気温で生 育することが必要で,その為には,鹿児島県の如く,秋作甜菜栽培地帯では,冬に向っての栽培の 為, I, (2)でも述べれ如く10Co前後の気温の到来以前迄に一応の成長段階を経ている状態にしてお くことが重要で,その意味からも播種期の限界が大きな問題として存在する。普通,甜菜10a当の生 育本数(植付本数又は裁培本数)は 8,000-10,000本位ときれており,秤, (2) (表VI), (表Ⅸ), (表X)で示された如く, 8月11日播種区が平均個体重で如何に優れていても,肝, (1) (表Ⅶ)で示 された如く発芽不良による生育個体数が少なくては,無意味なものとなる。このような点より,生産 目的を可能ならしめる為に前述の諸調査結果を資料に次の如き方式で,これ等の問題の究明をしてみ ることにするO 今, 10a当, 10,000本の生育本数を目的に優良種子を選出し, 10,000粒を播種した場合の収穫時の 生産量を比較検討すると [, (DM2)の試験結果より,播種目別, 10a当の生産量は次の(表n)の 如き結果になる。
木 佐 貫 哲 〔研究紀要 第15巻〕 89 (註) o計算法 播種粒数×発芽率×平均個体重 ・発芽率及び平均個体重はId) (表Ⅶ)及 び(2) (表Ⅹ)でわかるが,計算を理解し やすくするため播種目別, 3ヶ年平均数 値を表わすと(表Ⅶ)となる。 ※ (表XR) 播種 日 M CO (M CD O ^ CD M W l^ ^O h N N t -H C D L O i -1 O i L O 0 0 N ^ N CO H (」) ID 00 t* ^H ^H <NI i-i L O O O ^ C O ^ < M ( N I N (D in CD O N N L O < N l < N │ C ^ l これで考察されることは,前述せる如く播種時期の良否が,如何に収量値に大なる影響を与えてい るかという点,充分理解されると思う。即ち,個体別平均重を高める為には,早い時期程良く,この 試験結果でいくと, 8月10日前後である。但し,発芽不良による収獲期の生産量に大きな期待が持て ない。又, 8月21日播種区, 9月1日播種区, 9月11日播種区の3区の個体別平均重は大差のない事 は前述せる如くだが,発芽成績の良否で,収獲期の生産量で大きな差を生じてくる。又, 9月21日播 種区においては,或る程度,数値的には高くなっているが,これも個体数で稼いだ結果で個体別平均 重で問題にならない。 以上の点より,個体的にも需要にかない,収量も高い好結果を得る為の播種日は,大体9月10日前 後と見て良いのではないかと思う。それ以前は,発芽,以後は温度不足の影響で無理な点が少しく生 ずると見て良い。 (4)含糖率について 虻(3)で鹿児島県の甜菜栽培に於ける,播種 適期は,大体,把握できたと思うが,形態,蛋 量等と共に含糖率が生産物としての重要な価値 付けをなしていることである。本試験結果によ る,播種目別,含糖率を示めすと(表Ⅷ)の如 くなる。 これによると, 8月11日播種区より9月21日 播種区の5区間では,殆んど差を生ぜず,然か も本場北海道の生産物(17- に比して ち,優れた結果を示めしている。 (表ⅩⅡ)播種期別収穫時に於ける含糖率 数値単位(%)
(5)生育期間と台風との関係 以上 1, -(3)-(4)で鹿児島県甜菜栽培に於け る適期は見出されたが,その他として台風の来 襲を鹿児島県の場合,特に注目する必要があ る。幸いに,本試験期間3カ年を通じ,見舞れ なかったが,古くよりこの8月∼10月にかけて は,台風のシーズンである。今,過去の記録よ り,生育期間に於ける台風来襲状態を調査する と(表XIV)の如くなっている。 この表によると, 1945年(昭和20年)以降, 今日迄の約20年間を通じ, 8月下旬と9月中旬 に殆んど見られていないことで,この点よりし て,当時期に播種若しくは被害度の高い稚苗期 をもってくる如く音卜画して裁膚を進めること が,台風防除対策よりして安全かつ理想な方法 かと考える。その両時期中でも, 8月下旬は, t b . サ c o 1 - O (表ⅩⅣ)台風災害頻度表 一一\- 一一一、 九、、、、ノ-′-、了、小一一一 ote-野∼川井加F Hトトトu to阿-甘∼相好相野 -巧剖fcs-^0-円3 0甘 -何日何19河が哲 血藍門-bi卑珂相野 esewiM占転瓢uB] ¢用目せ-9珂加団 (註) o鹿児島県に災害を与えしもの 1926年(昭和元年)以降今日迄 ・--- 1945年(昭和20年)以降今日迄 取, (1)の結果の如く発芽の点で少しく難点を示めすこ とと, 9月1日前後, ,即ち天災度の高い210日を控えている関係で,すべての点で優れる9月10日 前後の裁培を進めた方が,更に安全性が高いように思われる。 (6)鹿児島県甜菜栽培適地としての鹿屋地方について。 以上 1. U)-(5)にわたり,主として気象的要素を中心、に甜菜栽培の適期という問題.について色々 と考察を進めてきたが,この考察上の成績結果は,本試験を実施した鹿児島市中心のもので,これに よる考察結果生じた栽培法が,他地方でも適切であるかという点で,県が最も主眼をおく,肝属郡一 帯の中心、地,鹿屋市のもつ諸条件より,少しく検討を試みることにする。 (表Ⅹ†)による,気象的条件より考察されることは,僅少ながら気温,降雨量共に鹿屋市の場合 が,甜菜栽培の上に優れているように思われる。即ち, 8月より9月にかけての高温・乾燥期に鹿児 島市に比して,低気温にして降雨量も多い。このことは,播種作業に於ける期間(播種期)に或る程度 の巾の広さを求めることが出来ること。又発芽状態の良い結果を求めることも出来る。 10月より11月 に於ける期間は大体同じ位で, 12月以降の冬期は逆に高気温を示めすことは,生育期間の気温不足と いう点で,生育期が,長くもてるという点で,本試験結果による栽培方法を用いた場合,この試験結 果に表れた収量値より高い成果を上げうると思う。又,耕作面積の点でも肝属一帯の広大な水田地帯 と台地をなす畑地を控え問題の笠之原台地の濯概計画でも完備すれば技術進歩と共に一大甜菜地帯と しての可能性は充分に存すると思う。その例として,当地方に於いて,昭和37年度播種した甜菜の 3.3m2当りの収量高による10aの予想収量高は,最高6.17屯という驚異的成果をあげ,平均2.3屯と 予想以上の生産レベルに達している点,北海道に比して,収量的に,又含糖率に,良い結果を示めし ている点でも,はっきりする。
木 佐 貫 哲 〔研究紀要 第15巻〕 91 (表ⅩⅤ) 鹿児島市・鹿屋市気象比較表 ① 月 別最高最低気温 o o r r > (註) ふ o o E C (愚高気温) 鹿児島市 鹿屋市 fJ一木酎味気浅」 ㊥叩1翻意 2 3 円 月 鹿児島市 北緯31.34′ 鹿屋市 〝 31.20′ IY 結 東経130.33′ 〝 130.50′ 請 海抜 4.2m 〝 58.0m 以上,本試験を通じて,鹿児島県甜菜栽培上の問題について,主として気象的条件を基に,一応そ の解決策を求めてきたが,要約すると本論では次の如き結果を把握し得た。 即ち,鹿児島県甜菜栽培の播種期の限界は大体, 9月中旬位迄となり,発芽成績に於いても,収穫 時の個体重,形態でも生産目的に適した生産物をあげうる点では9月10日前後の播種が,鹿児島県気 象条件よりいって最も良い結果があげられること。又,台風の多い年でも,この時期には,他の時期 に比して,その災害度も割合少いこと等があげられる。尚生産個体の大きいものを栽培目的とする場 合は, 8月10日前後の播種で,この場合は,高温・乾燥期の為,発芽不良と立枯病発生,地熱上昇に よる枯死という点で,栽培本数の4-5倍の多くの種子を使用するか,人工的高温乾燥防止の設備を 設置せぬ限り,鹿児島県気象下の自然状態下では生産量に大きな期待は持てない。以上の如き点よ り,甜菜生育に対する好条件気象の訪れのない限り, 8月10日前後のものは,労力,生産費と言う点 で多くの問題点が存する。又9月20日以降の播種も生育温度の点で不足する結果となり感心出来な い。尚,鹿児島県計画としての鹿屋を中心とする肝属郡一帯の栽培計画は,気象的にも,立地的にも 鹿児島県に於いては最適地であること等本論で究明して釆たが,栽培技術の面の研究も大いに今後に 於ける問題として存する。例へば,圃場の深耕,充分なる病虫害の防除対策,植付距離,施肥法の適 合等である。これ等の技術的研究達成と気象的研究達成により,甜菜栽培の適期を把握し,技術を修
得し,農家の人々が自力で栽培出来る為の指導に県関係当局の努力が必要とされ,又鹿児島県の如 き,普通作主体農業地帯に甜菜栽培の発達を,もたらす事が,工場施設の誘置,農家えの換金資源, その他,畜産,澱粉県としての関連産業との提携の上からも,是非とも発展させたいものである。 以上, 3カ年間の実験結果より,鹿児島県甜菜栽培の問題点についての考察を進め,その打解策と しての諸点を論じてきたが,未だ実際の圃場栽培では,色々と問題点も生ずると思うが,それ等につ いては今後の問題として,一応,播種期について,鹿児島県気象条件を主にして,ここにまとめて報 告する。 参 考 文 献 A.北海道大学甜菜研究会(編) , 1959.甜菜, (栽培と管理) 。 A.永井威三郎1956.実験作物栽培各論 P.80-112 C.斉藤錬一・荒井隆夫(編) , 1959.全国農作物栽培分布図説 P.112-113 D.末沢一男1960.暖地の甜菜栽培法。 E.末沢一男1959.暖地テンサイの栽培。 F.農林省統計調査部・作物統計課(編) , 1962.昭和36年産・作物統計No.4 G.鹿児島県農業試験場1960.昭和34年度・暖地秋作てん菜栽培試験成積善。 H.鹿児島県1963.昭和38年度・てん菜栽培基準。 Ⅰ.松浦章, 1956.肥料便覧。 ∫.南日本新聞1963. 5月29日号。 K.西日本気象協会鹿児島出張所1963.鹿児島県気象潮汐表。 L.末沢一男・多田正敏1961.農業及園芸 36.3.P.557-558 M. Watson, D. J and K.J.Witts,1959.農業及園芸 36.3.P.578 N・宮崎政光1961. 0.野田健児, 1961. P.竹上静夫他3名, Q.末沢一男, 1961. 良.渡辺敏夫, 1962. S.嵐嘉一1962. T.高瀬昇1962. U.木佐貫哲, 1962. 農業及園芸 36.5. P.875-876 農業及園芸 36.6.P.948-952. 36.7.P.1107-llll。 1961.農業及園芸 36.6.P.971-974. 36.7.P.1130-1132。 農業及園芸 36.8. P.1277-1280。 農業及園芸 37.7.P.1143。 農業及園芸, 37.8.P.1277。 農業及園芸, 37.8.P.1297。 九州職業科研究会編,も職業科研究や37.7. P.39-44。