小学生と大学生の磁石概念 (3)―棒磁石と半分に折れた棒磁石の内部―
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(3) 25. 群馬大学教育実践研究 第 26 号 25 ~ 32 頁 2 009. 小学生と大学生の磁石概念(3) ―棒磁石と半分に折れた棒磁石の内部― 塚 越 百 加1) ・ 岡 崎. 彰2). 1)群馬県高崎市立塚沢小学校 2)群馬大学教育学部理科教育講座 (2008 年 10 月 31 日受理). 1 はじめに. て、 「両端が多い」 、 「どこも同じ」 、 「中央が多い」の 3 つの回答群で表している。回答群「両端が多い」は、. 著者らは、戦後の小学校の理科教科書における磁石. 正答の B(両端に近いほど多い)と同じ傾向の D(両. の扱いの変遷について調査を行った後(塚越・岡崎,. 端だけに付く)とを集約したもので、回答群としては. 2005) 、磁石について学習した小学生や小学校教員を. これを正答とする。回答群「どこも同じ」は、C(ど. 目指す大学生の磁石概念の実態調査を目的として、. こも同じくらい)だけから成る。回答群「中央が多い」. 2005 年の 7 月と 10 月に質問紙によるアンケートを実. は、A(真ん中[中央]に近いほど多い)と同じ傾向. 施した。対象は、磁石の学習を終えてから半年程度の. の E(中央だけに付く)とを集約したものである。. 小学 4 年生 111 名、および小学校教員免許の取得を目 指す教育学部各専攻の 2~4 年生 140 名である。その 調査のうち「電気を通す物と磁石に付く物」と「磁石 の働きに影響する物」の結果と分析については、塚越・ 岡崎(2007a)と塚越・岡崎(2007b)によって報告 されている。 本稿では、アンケート調査のうち未公表だった「半 分に折れた棒磁石と棒磁石の内部」についての調査結 果と分析結果を報告し、さらに、上記小学生のうち 33 名に対して棒磁石と半分に折れた棒磁石の内部がそれ ぞれどうなっているかのイメージを描画法によって調 べた結果と分析についても報告する。なお、アンケー. 図 1 設問 12-1. ト調査の詳しい内容については、塚越・岡崎(2007a) の報告を参照されたい。 2 棒磁石 と 半分に折れた棒磁石 2.1 棒磁石への付き方 設問 12 の前半(図 1)では、クリップが棒磁石の各 場所にどのように付くかを尋ねた。 図 2 に結果を示す。 設問では 5 つの選択肢があるが、 図 2 では、同じ傾向の回答をそれぞれグルーピングし. 図2 「棒磁石への着き方」の回答分布(白地が正答).
(4) 26. 塚越百加・岡崎. 彰. 図 2 からわかるように、正答の「両端が多い」を選択. く)とを集約したもので、回答群としてはこれを正答. した者は、小学生で 59%、大学生では 85%であった。. とする。回答群「どこも同じ」は、e(どこも同じくら. 「どこも同じ」を選んだ小学生と大学生はそれぞれ. い)だけから成る。回答群「中央が多い」は、c(折れ. 25%、12%、 「中央が多い」はそれぞれ 16%、大学生. た半分の中央に近いほど多い)と同じ傾向の i(折れ. で 4%であった。. た半分の中央だけに付く)とを集約したものである。. χ2 検定の結果、小学生と大学生の回答分布には 1% 水準で有意な差が認められた(χ2 (2)=20.8,p <0.01) 。. 回答群「折れ端が多い」は、a(折れた半分の折れ 端に近いほど多い)と同じ傾向の g(折れた半分の折 れ端だけに付く)とを集約したものである。回答群「N. 2.2 半分に折れた磁石への付き方 設問 12 の後半(図 3)では、クリップが半分に折れ. 端が多い」は、b(元の N 極側の端に近いほど多い) と同じ傾向の f(元の N 極側の端だけに付く)とを集. た棒磁石の各場所にどのように付くかを尋ねた。. 約したものである。回答群「付かない」は、j(どこに. 図 4 に結果を示す。 設問では 10 個の選択肢があるが、. も付かない)だけから成る。. 図 4 では、前の場合と同じように、同じ傾向の回答を. 図 4 からわかるように、小学生でも大学生でも、最. それぞれグルーピングして、 「両端が多い」 、 「どこも同. も多かった回答群は「どこも同じ」で、小学生で 38%、. じ」 、 「中央が多い」 、 「折れ端が多い」 、 「N 端が多い」 、. 大学生で 33%であった。大学生では、次いで、 「N 端. 「付かない」の 6 つの回答群で表している。回答群「両. が多い」が 32%、正答の「両端が多い」が 30%と続. 端が多い」は、正答の d(折れた半分の両端に近いほ. いた。小学生では、次いで、 「N 端が多い」が 20%、. ど多い)と同じ傾向の h(折れた半分の両端だけに付. 「中央が多い」が 18%と続いた。正答の「両端が多い」 は 17%であった。 χ2 検定の結果、小学生と大学生の回答分布には 1% 2 水準で有意な差が認められた(χ(5) =32.7,p <0.01)。. 2.3 「棒磁石」と「半分に折れた棒磁石」のクロス集計 前述のように、棒磁石の場合でも半分に割った磁石 の場合でも、小学生と大学生の回答分布には有意な差 が認められた。棒磁石の場合、正答の「両端が多い」 は小学生で 6 割近く、大学生では 8 割以上で、ともに 1 位を占めた。これに対して、半分に折れた棒磁石の 場合、小学生、大学生とも回答群の 1 位は「どこも同 図 1 設問 12-2. じ」であり、正答の「両端が多い」は小学生で 4 位、 大学生で 3 位と、正答率がかなり低かった。 そこで、2 つの場合の磁力分布に回答者たちがどの ような関係があると見ているのかを調べるため、小学 生、大学生それぞれの 2 つの場合の回答についてクロ ス集計を行った。 図 5 と図 6 はそれぞれ、小学生と大学生のクロス集 計の結果を表す。全体的な傾向として、大学生の回答 群は限られた組合せに集中しており、それに対して、 小学生の回答群はより広い範囲の組合せに分散してい る。上位 4 つの[棒磁石、半分に折れた棒磁石]の組. 図4 「半分に折れた棒磁石への着き方」の回答分布 (白地が正答). 合せに着目すると、 小学生と大学生のどちらの場合も、 [両端が多い、N 端が多い] 、 [両端が多い、両端が多.
(5) 小学生と大学生の磁石概念(3). 27. 図5 「棒磁石」と「半分に折れた棒磁石」のクロス集 計結果(小学4年生の場合). 図6 「棒磁石」と「半分に折れた棒磁石」のクロス集 計結果(大学生の場合). い] 、 [両端が多い、どこも同じ] 、 [どこも同じ、どこ. 絵を描かせたが、各回とも時間内に描き終えることが. も同じ]と、 (順位はともかく)同じ組合せが選ばれて. できなかった児童がいたため、後述の有効回答数は調. いること、しかも、小学生でも大学生でも、これらの. 査対象数の 33 名よりも少ない。全体を通した所要時. 4 つの組合せが 5 位以下の組合せよりも目立って多く. 間は「3 時間(45 分×3)」であった。. 選ばれている、という共通点が見られる。 後者について数字を挙げれば、全部で 18 ある回答 群組合せのうち上位 4 つの組合せを選んだ者は、小学 生で 63%、大学生では実に 93%に達する。. 3.1.2 調査の方法と手順 予め、図 7 のような、棒磁石の外観と真ん中で折れ た棒磁石半分(N 側)の外観とを模式的に描いたワー クシートをそれぞれ作成した。児童 1 名当たり、棒磁. 3 棒磁石内部のイメージ. 石のワークシートを 2 枚、折れた半分の棒磁石のワー. 3.1 描画法による調査の概要. クシートを 3 枚用意した。. 3.1.1 対象と時期. 本調査では、前節で扱った棒磁石と半分に折れた棒. 前節のアンケート調査の設問 12 に関連して、棒磁. 磁石との関係を小学生がどのように捉えているかを探. 石と半分に折れた棒磁石とについて、磁石内部で磁力. ることも目指している。そのため、2 回の演示実験を. が生じている様子を小学生がどのようにイメージして. 挟んで、全部で 3 回の描画を行った。具体的な手順は. いるかを知るため、描画法(たとえば、中山 1998). 以下のとおりである。. による調査を行った。この調査では、さらに、小学生 が棒磁石と半分に折れた棒磁石との関係をなるべく直. 1. 最初に、何のヒントも与えずに、棒磁石に鉄が付. 観的に捉えてもらうためには、どのような工夫をした. く様子と半分に折れた棒磁石に鉄が付くときのイ. らよいかの手掛かりを得ることも目指した。. メージを、それぞれ描画法を用いて表現させた。. 実施時期 2005 年 12 月 12 日 調査対象 群馬県高崎市内の公立小学校 4 年生 33 名 (前記アンケート調査対象 3 クラスのひとつ). 実施時期はアンケート調査から 5 ヶ月経過した時点 であった。その間、磁石に関する授業や活動は学校で は一切行わなかった。以下に述べるように、各児童に 全部で 5 枚(棒磁石 2 回分、半分の棒磁石 3 回分)の. 図7 描画法で用いたワークシート.
(6) 28. 塚越百加・岡崎. 描画 1 回目―有効回答は、 「棒磁石」では 29 名、 「半. 彰. 5. 半分に折れた棒磁石について、描画法を用いて表. 分に折れた棒磁石」では 30 名であり、このうち両. 現させた。. 方回答は 27 名であった。. 描画 3 回目―有効回答は、 「半分に折れた棒磁石」 29 名であった。. 2. 次の順序で 1 回目の演示実験を行った。 (a) 棒磁石をクリップに近づけ、クリップが磁石に引 き付けられる様子を見せる。. 3.2 調査結果 3.2.1 アンケート調査結果との比較. (b) 円形フェライト磁石を積み重ねて(以下「積み重. 前節で扱った棒磁石と半分に折れた棒磁石との磁. ね磁石」 ) 、(a)の棒磁石とほぼ同じ長さの棒状にな. 力分布は、本節の描画法による調査内容と密接に関係. るようにし、それを見せてから紙で被う。そして、. している。そこで、個々の対象者について、演示実験. (a)と同様にクリップに近づける。. を見せる前に実施した描画 1 回目のイメージとアンケ. (c) 上記(b)と同様に、円形フェライト磁石をつなげて. ート調査における設問 12 の回答(棒磁石と半分に折. (b)の半分くらいの長さの「積み重ね磁石」をつく. れた棒磁石との両方)との比較調査を行った。具体的. り、それを見せてから紙で被い、(a)と同様にクリ. には、描かれた絵と書き込まれた説明(記入されてい. ップに近づける。. る場合)とを検討して、児童たちの抱いている磁力分. (d) 上記(a)の棒磁石の上に紙を水平に置き、その上に. 布のイメージを判定した。次に、これらのイメージを. マグチップ(砂鉄)を撒いて、磁界のパターンを. アンケート調査の設問 12 の回答群と同じ分け方で分. 見せる。. 類し、その結果とアンケートの設問 12 の結果とを比. (e) 上記(b)の 「積み重ね磁石」 の上に紙を水平に置き、. 較した。磁力分布のイメージが判定困難なものも一部. 上記(d)と同様にその上にマグチップを撒いて、 磁. あったが、それらを除くと、アンケートと描画法の両. 界のパターンを見せる。. 方の結果が整合していた者は、25 名中 11 名であった。. (f) 上記(e)と同様に、(c)の「積み重ね磁石」 (長さ半. 以下に、そのような整合性のあった児童の描画 1 回. 分)の上に紙を水平に置き、その上にマグチップ. 目の2つの例を図8と図9に掲げる。 これらの描画は、. を撒いて、磁界のパターンを見せる。. アンケートの設問 12 におけるクロス集計の回答群組 合せのうち、それぞれ「どこも同じ、どこも同じ」 、 「両. 3. 棒磁石に鉄が付く様子と半分に折れた棒磁石に鉄 が付く様子を、1 と同様に、それぞれ描画法を用い て表現させた。. 端が多い、N 端が多い」に対応しているものと見なさ れる。 実は、図 8 のような描画は、アンケートのクロス集. 描画 2 回目―有効回答は、 「棒磁石」では 26 名、 「半 分に折れた棒磁石」では 21 名であり、このうち両 方回答は 20 名であった。 4. 再び、次の手順で 2 回目の演示実験を行った。 (a) 1 回目の演示実験で使用した「積み重ね磁石」の 紙の被いを外して、円形フェライト磁石が積み重 なっている様子を改めて見せる。 (b) 1 回目と同じ内容の演示実験を行う。今回は、各 ステップごとに全員で実験結果を確認しながら 次に進めていく。 (c) 上記 2.(b)の「積み重ね磁石」を半分に分割して、 それぞれの片端同士を近づけ、互いに引きあった り、退けあったりする様子を見せる。. 図8 クロス集計で「どこも同じ、どこも同じ」の組 合せを選んだ児童の描画の例.
(7) 小学生と大学生の磁石概念(3). 29. しれない。だとすれば、半分に折れた棒磁石では同じ 種類の要素だけになってしまうので、磁力がどこも同 じ強さになってしまうと考えても不思議はない。図 10 はクロス集計で「両端が多い、両端が多い」の回答者 の描画であるが、上記のような解釈の延長上で考えれ ば、そこに描かれた半分に折れた棒磁石内部のイメー ジは、素朴な見方として“妥当な”ものといえよう。 3.2.2 演示実験によるイメージの変容 演示実験をすることによって子どもたちの概念に 変容が見られたかどうかを調べるため、各対象者につ いて描画の 1 回目、2 回目、3 回目(半分に折れた棒 磁石のみ)を比較して調べた。その結果、棒磁石につ いては、描画 1 回目で「両端で磁力が強いと考えた者」 は 7 名であったが、1 回目の演示実験を行った後の 図9 クロス集計で「両端が多い、N 端が多い」の組 合せを選んだ児童の描画の例. 描画 2 回目では「両端で磁力が強いと考えた者」は 20 名に増えた。図 11 に示したのは、描画 1 回目では 中央付近で磁力が強いと考えていたが、2 回目では両 端で強いという見方に変容した例である。 半分に折れた棒磁石については、描画 1 回目では、 「半分に折れたら磁力が無くなると考えた者」が 12 名、 「どこも磁力は同じという見方をした者」が 5 名、. 図 10 クロス集計で「両端が多い、両端が多い」の組 合せを選んだ児童の描画の例. 計で「両端が多い、どこも同じ」という回答群組合せ を選んでいる者にもかなり見られた。図 8 における棒 磁石のイメージは、 「磁力を生み出す要素(擬人化した ものや粒子など) 」が N 側と S 側で種類が異なってい るが、同じ密度で一様に分布している、というもので ある。そのような子どもたちは、棒磁石内部の中央付 近では、種類の異なる「要素」が互いに効果を打ち消 しあって磁力が弱くなっている、と考えているのかも. 図 11 棒磁石内部のイメージが変容していく様子.
(8) 30. 塚越百加・岡崎. 彰. 図 12 に示したのは、描画 1 回目では磁力が無くな ると考え、2 回目で両端で強いとの見方に変わり、3 回目で N 極・S 極の違いまで考えるようになった例で ある。 また、N 極・S 極まで意識した者の中には、棒磁石 は「ミニ磁石」の積み重ねというイメージにまで達し た例も見られた。図 13 に掲げた 2 つの例は、棒磁石 が「ミニ磁石」の多数の集まりで、半分に折れても両 端がN極とS極となるという見方をしているものであ る。 図 12 半分の棒磁石内部のイメージが変容していく 様子. 4 考察 4.1 棒磁石 と 半分に折れた棒磁石 最初に、 クロス集計の結果を 2 つの視点で見てみる。 ここに示す百分率は全回答者に対する割合である。 まず、正答であるかないかに関係なく、棒磁石を半 分に折ったとき、磁力の分布がそのまま半分に切り取 った形で残るとの見方をしているグループに着目する。 このような “一貫性のある” グループは、 [両端が多い、 N 端が多い] 、 [どこも同じ、どこも同じ] 、 [中央が多 い、折れ端が多い]という組合せをそれぞれ選ぶはず である。 本研究のクロス集計の結果では、 [両端が多い、 N 端が多い]が小学生 17%、大学生 30%、 [どこも同 じ、どこも同じ]が小学生 16%、大学生 12%、 [中央 が多い、折れ端が多い]が小学生、大学生ともに 1% であり、合計では小学生が 34%、大学生 43%であっ た。 次に、半分に折れた棒磁石の場合、小学生、大学生 図 13 棒磁石を「ミニ磁石」の集まりと考える2名の 児童の描画例. とも「どこも同じ」と回答した者が多かった理由をク. 「N 側の磁力だけが残るとした者」が 5 名、 「両端で. 棒磁石の場合に「どこも同じ」と考えているグループ. 磁力が強いという見方をした者」は 2 名であった。し. (百分率は上記)だけでなく、正答の「両端が多い」. かし、 1回目の演示実験の後に行った描画2回目では、. を選んだグループ(小学生 16%、大学生 21%)も数. 「半分に折れたら磁力が無くなると考える者」 は 0 名、. 多く含まれていることが注目される。このように、小. 「N 側の磁力だけが残るとした者」が 9 名、 「両端で. 学生、 大学生とも、 もとの棒磁石の場合に正答しても、. 磁力が強いとの見方を示した者」は 8 名となった。さ. 半分にした場合、磁力が均等になると考える傾向が見. らに、2 回目演示実験の後に行った描画 3 回目では、. られることは興味深い。これについては、少なくとも. 「両端で磁力が強いと考えた者」は 26 名となり、そ. 小学生は、棒磁石の中央を境にしてN極側とS極側と. のうち、13 名が N 極・S 極まで意識した絵を描いた。. でそれぞれ磁力の「要素」が均等に分布していると考. このように、 2 回の演示実験を通して、 「両端で磁力が. えていることが、描画法による調査結果から推測でき. 強いと考えた者」 は2 名→ 8 名→ 26 名と劇的に増えた。. ロス集計結果から考えてみる。このような回答者は、. る。.
(9) 小学生と大学生の磁石概念(3). 31. 以上のことから、前に述べた回答群の上位 4 つの組. は 4 割強がそのようには理解していなかった。単なる. 合せは、 正答同士の組合せ ( [両端が多い、 両端が多い] ) 、. 文章や挿絵ではなく、もっと印象的な活動で学ぶこと. “一貫性のある”回答群の組み合わせの 2 つ( [両端. ができれば、定着率を高めることができるだろう。. が多い、N 端が多い] 、 [どこも同じ、どこも同じ] ) 、. その意味で注目されるのは、韓国の小学校理科 3 年. 棒磁石の場合に正答しながら半分に折れたら磁力が均. の実験観察書( 「実験観察 3-1」大韓教科書株式会社、. 等になると考える回答群の組合わせ( [両端が多い、ど. 2001)に見られる活動である。見かけがまったく同じ. こも同じ] )であることがわかった。なお“一貫性のあ. 棒磁石と鉄の棒をそれぞれ 1 本ずつ与え、どちらが棒. る”回答群の組み合わせの[中央が多い、折れ端が多. 磁石でどちらが鉄の棒かを識別するにはどのようにし. い]は、それぞれの回答者数がもともと少ないために. たらよいか、考えさせる活動である。互いに棒の端同. 上位に入っていない。. 士を近付けても識別はできない。棒磁石の中央付近で は磁力がほとんどないという性質を利用することで、. 4.2 棒磁石内部のイメージ. 初めて識別が可能になる。このようなインパクトのあ. 自然現象に対する子ども達の素朴概念は強固でそ. る実験や活動を開発していくことも、より多くの子ど. れなりの一貫性を持っているといわれるが (たとえば、. もたちに科学的な概念を定着させるために重要であろ. オズボーン、フライバーグ 1988) 、その一方で、同一. う。. の学習者が時間経過とともに複数のモデルを乗り換え. 本稿で得られた主な結果のひとつは、N 極側と S 極. ているケースが少なくないことも指摘されている(た. 側で力を生み出す要素(粒子等)が別々に存在してい. とえば、西川 1999) 。アンケート調査の実施から描画. ると考えている小学生が多いということである。この. 法での調査をするまで 5 ヶ月がたっているため、子ど. ような見方は、片岡(1993)や村越(1995)の調査で. もたちの見方がアンケート結果とどの程度整合してい. も報告されている。興味深いのは、棒磁石の中央付近. るか、注目された。描画法で描かれた絵と書き込まれ. で 2 種類の要素が何らかの相互作用をしていると考え. た説明(記入されている場合)とから、児童たちの抱. ている子どもたちが少なくないことである。アンケー. いている磁力分布のイメージを判定する過程では必ず. ト調査で目立った「棒磁石の場合に両端で磁力が強い. しも一意的に決まらない場合も若干あったが、前述の. と正答しても、半分にした場合、磁力が均等になる」. ように、整合していたのは半数近くであった。. という見方は、このような子どもたちである可能性が. これに関連して興味深いのは、設問 12 の小学生と. 強い。. 大学生のクロス集計の結果(図 5 と図 6)である。小. もうひとつの主な結果は、フェライト磁石を積み重. 学生と大学生とで回答群の組み合わせの上位 4 つが同. ねて棒状につなげた「積み重ね磁石」と通常の棒磁石. じで、しかも 5 位以下の組合せよりも目立って多いと. とを対比させる形で演示実験することで、小学生たち. いう共通点がある一方で、小学生の回答群は大学生の. に棒磁石を「ミニ磁石」の集まりというイメージで捉. それよりも多様な組合せに分散する傾向が強く、この. えてもらう可能性が開けたという点である。さらに実. 点は両者で対照的である。この事実は、統計的に見た. 験内容を検討して「積み重ね磁石」を十分に吟味して. 場合でも、小学生の持っている概念の方が大学生と比. 教材化すれば、もっと多くの小学生たちにも「ミニ磁. べて安定性に欠けていることを示していると言えよう。 石」の概念を持たせることができ、半分に折っても両 端に N 極、S 極が出現するこという見方を定着させる 5 おわりに. ことができるだろう。 「ミニ磁石」の考え方は現行の学 習指導要領では扱われていないが、少なくとも、N 極. Barrow (1987) は「磁石で磁力の一番強いところが 磁極である」という概念は重要な概念のひとつである. と S 極は分離できないという考え方は、電磁石を学ぶ 際に重要な意味を持つ。. と提起している。棒磁石で両端の磁力が最も強いこと は、小学校理科教科書の文章や挿絵で示されている。 しかし、設問 12-1 の結果で見たように、小学生で. 参考文献 Barrow, L. H.,1987, “Magnet Concepts and Elementary.
(10) 32. 塚越百加・岡崎. Student' Misconceptions”, Paper presented at the Second International Conference in Science and Mathematics, Ithaca, NY R.オズボーン,P.フライバーグ,1988, 「子ども達はいかに 科学理論を構成するか―理科の学習論―」 ,森本信也・ 堀哲夫訳,東洋館出版社,pp.14-26 片岡祥二,1993, 「第 4 章子どもにとっての電気・磁石」 , 『子 どもたちは自然をどのようにとらえているか』 ,津幡道 夫編著,東洋館出版社,pp.128-134. 彰. 研究,第 24 号,83-96 塚越百加,岡崎 彰,2007b, 「小学生と大学生の磁石概念(2) ―磁石の働きに影響する物―」 ,群馬大学教科教育学研 究,第 6 号,27-34 中山 迅,1998, 「理科授業で使う思考と表現の道具-概念 地図法と描画法入門-」 ,中山迅・稲垣成哲編著,明治 図書出版,pp.15-24 西川 純,1999, 「なぜ、理科は難しいと言われるのか?」 , 東洋館出版社,pp.87-94. 塚越百加,岡崎 彰,2005, 「小学校理科教科書における磁. 村越昌昭,1995, 「第 2 章子どもの見方や考え方をつかむ実. 石の扱いの変遷」 ,群馬大学教育実践研究,第 22 号,. 『子どもとともに学ぶ理科 第 3 巻子どもの自 践例」 ,. 93-104. 然の見方や考え方をつかむポイント 4』 ,村越昌昭・津. 塚越百加,岡崎 彰,2007a, 「小学生と大学生の磁石概念(1). 幡道夫編著,東洋館出版社,pp.118-131. ―電気を通す物と磁石に付く物―」 ,群馬大学教育実践. (つかごし ゆか・おかざき あきら).
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