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帝国書院 | 高校の先生のページ 高等学校 世界史のしおり 2007年 1月号

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− 14 − − 15 − はじめに

 大阪大学では、2003年度から高校の夏休み期間 中に全国の高校の世界史・日本史教員と大学の歴 史研究者が集まり、「全国高等学校歴史教育研究 会」を開催してきた(本誌2005年4月号に、第1・ 2回の紹介が掲載されている)。本年度も2006年 8月1日〜3日の3日間、大阪大学を会場に第4 回研究会を開催し、37都道府県97名の高校教員の ほか、大学・教科書出版会社・予備校・報道機関 の関係者など合わせて約130名が参加した。  筆者は2004年度から事務局長を務め、企画・運 営を担当してきた。ここでは、本研究会開催の目 的やその成果と課題等について、参加した高校教 員側から寄せられた意見を踏まえて報告したい。

1. 開催の趣旨

 本研究会は、大阪大学大学院文学研究科の文部 科学省21世紀COEプログラム「インターフェイ スの人文学」の取り組みの一環として発足した。  大学側が本研究会を企画した主なねらいは、以 下の諸点にある。

1)用語や年代の羅列・暗記中心の現行の高校歴 史教育を刷新すること。

2)従来の一国史観・大国中心史観を打破し、「考

え方や背景がわかる」「像を結ぶ」歴史教育を 高校において行うこと。

3)1)2)の必要性を、大学で歴史学を専攻す る教員が最新の研究をふまえつつ、歴史学の全 体を見すえた巨視的な講演を通じて説くこと。 4)歴史学系大学教員は、教育技術の専門家では

ない。1)2)のような歴史教育を高校で実現 するにはどうすべきか、大学側・高校側双方が 質疑・討論を通じて検討すること。

 上記のねらいを達成すべく、主催者側は本研究 会を、学術講演会でもなく、また教育技術研究会 でもない、中間的な「歴史研究の専門家」と「歴 史教育の現場の専門家」が対話をする場として位 置づけた。

 「『阪大史学』の挑戦」をテーマとした今回の研 究会では、中央ユーラシア史・東南アジア史・近 現代世界システム論・日本中世史を専門とする大 阪大学の4名の教授が、旧来の一国史観・大国中 心史観・時代区分論を打破し、日本史・東洋史・ 西洋史の壁を乗り越えた新しい枠組みの歴史像を、 講義形式で紹介した。次に、高校教員1名が、第 1回研究会で得られた知見に基づく授業実践例を 報告した。講演に対する質問があれば、主催者側 が配布した「質問票」に記入、提出してもらい、 各講師が翌朝までに目を通したうえ、書面・口頭

大学教員と高校教員の対話

〜大阪大学「全国高等学校歴史教育研究会」の活動〜

大阪大学特任研究員 佐 藤 貴 保

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− 16 − − 17 − で回答した。現在も電子メールでの質問を受け付

けている。講演の概要ならびに質問に対する回答 については、大阪大学文学部東洋史学研究室ホー ムページ(http://www.let.osaka-u.ac.jp/toyosi/ main/)を参照されたい。

2. 高校教員側の参加の目的

 研究会終了後に高校教員全員が提出したレポー トによると、高校教員はおもに以下のような目的 で本研究会に参加していた。

1)最新の研究情報を収集する機会が少ない。 2)情報は入手できるが、その信憑性を判断しに

くい。専門家の判断を仰ぎたい。

3)生徒の関心を上げるための「ネタ」を提供し てほしい。

4)歴史をなぜ高校で学ばねばならないか、大学 教員の意見を聞きたい。

 1)は、各地に高校教員の研究会はあるものの、 古い学説に基づく教育技術の研究が主体であるこ と、そもそも教員同士の研究活動が不活発な地域 もあること、などの実情を反映している。  2)は、インターネット等の情報が氾濫してい るが、多忙を極める校務の合間を縫って教員個人 で情報を収集し、その真偽を判断することの困難 さが窺い知れる。

 3)からは、暗記中心型の世界史が受験生に不 人気であるために生徒の「歴史離れ」が進行して いる現状と、その打開に苦悩する教員の姿が窺え る。参加教員に対して別に行ったアンケートによ ると、それでも生徒は歴史の現代との関わり合い や、身の周りにあるものの歴史に、比較的関心を 持っているという。

 4)は、大学で歴史学を専攻しなかった教員に 多く見られる目的意識である。用語や年代を教え 込ませることが中心の授業を進めつつも、歴史を 学ぶ意義がどこにあるのか、生徒だけでなく教員 自身も疑問を感じているのである。

3. 研究会に対する高校教員からの反響

 以上のような目的意識で本研究会に臨んだ教員 から感想を求めたところ、「歴史の見方が変わっ た」「教える際の姿勢が変わった」「学界ではすで に誤りとされていることが、教科書や入試問題で はいまだに放置されていることに驚いた」という 声が多く寄せられた。総じて有意義な研究会であ った、また参加したい、との評価を得られた。  しかしながら、以下のような理由から、講演内 容を高校の教育現場で活用することは難しい、と の意見が多く寄せられている。

1)内容が高度すぎる。生徒に分かりやすく伝え る工夫を高校教員が検討する必要がある。 2)「教科書が間違っている」「教科書に書いてあ

ることと違う見方もある」と教えることが、発 達途上の生徒に良い影響を与えるとは限らない。 教科書の記述を変える必要がある。

3)大学入試の多くが旧態依然とした暗記重視の 出題をし続けている以上、そこから脱却した授 業を行うことは難しい。

 中学・高校・大学が縦割りになり、相互の連携 が図られていない歴史教育および大学入試の構造

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− 16 − − 17 − 的問題が障害となっているようである。すなわち、 これらの意見は、歴史教育の刷新には、高校だけ でなく中学・大学の教育のあり方を見直すことが 必要であることを示唆している。

4. 高校教員が望む大学との連携のあり方

 大学の歴史研究と高校の歴史教育との連携には 今後どのような可能性があるのか。高校教員は何 を求めているのか。それを探るため、研究会最終 日に全参加者を4班に分けてグループ討論会を実 施した。

 圧倒的多数を占める意見は「本研究会のような 企画を今後も継続すること」であった。書籍やイ ンターネット、電子メールよりも、顔の見える形 で講演を聴き、質疑応答をその場で丁寧に行うこ とが、最新の研究動向を把握、理解するのに最も 有効であるという。

 そのほかにも、次のような提案がなされた。

1)新しい学説・歴史像を積極的に取り入れた教 科書・一般向け概説書の編纂(教科書作成に際 しては、用語の精選・統一を図る必要あり)。 2)教案検討会の実施。

3)中学・高校・大学全体の教育を視野に入れた カリキュラムの策定。

4)インターネットを用いた学説・文献・資料情 報の提供。大学図書館の開放。

5)暗記型の大学入試問題の見直し。歴史科目の 受験義務化。採点基準の公開。

6)高校教員研修の場としての大学授業の開放。

 大学教員が高校生向けに行う出前講義が中心の 従来のいわゆる「高大連携」は、大学・高校とも に負担が大きく、生徒の学問への好奇心を掻き立 てることには必ずしもつながっていない、など教 育効果を疑問視する意見が多かった。高校教育の プロは高校教員である。そこへ高校教育の素人で ある大学教員が直接介入しても、必ずしも高校教 育の活性化にはつながってないのである。

 新しい学説を授業や教科書に反映させるならば、 大学側がすべきことは大学入試の見直しである。 また、高校側は「授業の教案作成と授業実施後の 検証」という作業を反復継続的に進め、その活動 を大学側が情報面で支援する。縦割りになってい る中学・高校・大学で、子どもの発達段階に応じ てどのような教育を行うべきかを各種学校教員の 協働で検討していくことこそ、高校教員の望む「高 大連携」であるとの意見が大勢を占めた。

おわりに

 過去4回の研究会に、43都道府県260名強(複 数回参加者を除く)の高校教員が参加した。応募 者数は年々増加し、今回は百数十名の応募者に対 して参加の見合わせをお願いする事態となった。 本研究会への期待が高まっているともいえる。本 研究会の成功を受け、高校教員どうしが勉強会を 新たに立ち上げたり、全国各地の大学で同種の研 究会が発足したりしている。

 COEプログラムは2006年度で終了するが、研 究会の活動を中断することは、全国の高校教員が 寄せる期待に背くことになろう。より多くの高校 教員と対話ができるよう、こうした機会を増やす ことが肝要である。

参照

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