第 1 章 不動産市場のラビリンス
(投資におけるリスク ・ リターンの観点から)株式会社都市未来総合研究所
主席研究員 仲谷 光司 (なかたに みつじ)
概要
筆者は日頃不動産投資にかかわるデータを取り扱っている。証券化が始まった 2000
年初めに比べると、不動産市場のデータ整備は飛躍的に進み、 ようやくそのデータ
を透して不動産市場を見ることができるようになってきた。しかし、市場には投資にお
けるリスク ・ リターンの観点から不整合な点がいくつかあるように筆者には思える。本
稿では、次の 2 事象を紹介する。
■キャップレートにかかる不整合 : 東京都心 5 区のオフィスビルでは、フリーキャッシュ
フローの成長率と標準偏差の特性とキャップレートの水準に整合性がない可能性があ
る。
■底地投資の不整合 : 定期借地権付き底地の投資は、 安定したリターンが得られるこ
とから超長期利付国債への投資と類似している。しかし、中途解約を踏まえると底地
1. キャップレートにかかる不整合
(東京都心 5 区
※ 1
オフィスの場合)
1.1 CF と CR の原則
(1) CF と CR の関係
一般的に投資のリターンであるフリーキャッシュフロー
※2
(以下 「CF」 という。) の水
準が同じでも、安定している (予測できる) 投資商品は人気が高いため取引価格は高く
なり、利回りは低下する (図表 1 の A の場合)。
逆に CF が不安定な (予測できない) 商品は不人気なため取引価格は低くなる (図
表 1 の B の場合)。
一時的にはこうした整合的な関係を壊すような取引も行われるが、効率的な市場では
整合的な取引に収れんしていくと考えられる。
不動産の取引では上記の利回りはキャップレート (以下 「CR」 という。) と理解するこ
とができる。
し た が っ て、不 動 産 取 引 に お い てCRが 低 い 物 件 は、CFの 安 定 性 が 高 い 不 動 産 と
期待でき、CF の安定性は CR に反映され、当該不動産の価値が評価されると考えられる。
[ 図表 1-1-1] CF、
利回り、
評価額等の関係
CF
利回り↓
CF
利回り↑
評価額↑=
Aの場合:
Bの場合: 評価額↓=
CF
割引率-成長率
評価額=
直接還元法による評価
(2) CF の成長率とリスク
しかし、CF の変動が大きいことがここでいうところの安定性が低いことと同義ではない。
た と え ば、毎 期CFが 定 率 で 変 化 す る こ と が 予 想 さ れ る 場 合、将 来CFが 大 き く 変 化 し
ても不安定とは考えない。CF の平均変動率は成長率とされる。
平均変動率だけで予測できない要素はリスクと認識され、計測には通常は変動率の標
準偏差が用いられる。
定率成長 CF モデルを想定すると、CF の平均変動率は成長率として、 標準偏差はリ
スクとみなされ割引率にリスクプレミアムとして付加され、CR が設定されると考えられる。
以下では、 こうした一般的な CF と CR の原則的な考え方を踏まえて、 東京都心 5 区
オフィスの CF と CR の関係を見ていく。
1.2 募集賃料データの場合
(1)
募集賃料の動向
オ フィス 賃料の 変動を 示すの に オ フィス 賃貸仲介事業者の データ が 用いられ ること が
多い。本稿では、 三幸エステート社が開示するデータを用いて分析する。
募集賃料の時系列データ (当該期間の平均を 100 として指数化) から、標準偏差は
大規模ビル
※ 3
で 13、全体で 7 となった。変動は、大規模ビルの方が全体より大きい。
40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 2 0 0 0
年
1 Q 2 0 0 0
年
3 Q 2 0 0 1
年
1 Q 2 0 0 1
年
3 Q 2 0 0 2
年
1 Q 2 0 0 2
年
3 Q 2 0 0 3
年
1 Q 2 0 0 3
年
3 Q 2 0 0 4
年
1 Q 2 0 0 4
年
3 Q 2 0 0 5
年
1 Q 2 0 0 5
年
3 Q 2 0 0 6
年
1 Q 2 0 0 6
年
3 Q 2 0 0 7
年
1 Q 2 0 0 7
年
3 Q 2 0 0 8
年
1 Q 2 0 0 8
年
3 Q 2 0 0 9
年
1 Q 2 0 0 9
年
3 Q 2 0 1 0
年
1 Q 2 0 1 0
年
3 Q 2 0 1 1
年
1 Q 2 0 1 1
年
3 Q 2 0 1 2
年
1 Q 2 0 1 2
年
3 Q 2 0 1 3
年
1 Q 2 0 1 3
年
3 Q 2 0 1 4
年
1
Q
大規模ビル空室率
全体平均空室率
大規模ビル賃料
全体賃料
空室率 賃料: 平均=100
賃料の標準偏差
大規模ビル:13
全体:7
空室率 賃料: 平均=100
-8% -6% -4% -2% 0% 2% 4% 6% 8% 2 0 0 0
年
1 Q 2 0 0 0
年
3 Q 2 0 0 1
年
1 Q 2 0 0 1
年
3 Q 2 0 0 2
年
1 Q 2 0 0 2
年
3 Q 2 0 0 3
年
1 Q 2 0 0 3
年
3 Q 2 0 0 4
年
1 Q 2 0 0 4
年
3 Q 2 0 0 5
年
1 Q 2 0 0 5
年
3 Q 2 0 0 6
年
1 Q 2 0 0 6
年
3 Q 2 0 0 7
年
1 Q 2 0 0 7
年
3 Q 2 0 0 8
年
1 Q 2 0 0 8
年
3 Q 2 0 0 9
年
1 Q 2 0 0 9
年
3 Q 2 0 1 0
年
1 Q 2 0 1 0
年
3 Q 2 0 1 1
年
1 Q 2 0 1 1
年
3 Q 2 0 1 2
年
1 Q 2 0 1 2
年
3 Q 2 0 1 3
年
1 Q 2 0 1 3
年
3 Q 2 0 1 4
年
1
Q
大規模ビル賃料
全体賃料
賃料の四半期変動率の推移
変動率(四半期率)
[ 図表 1-1-2] オフィス募集賃料と空室率の推移
[ 図表 1-1-3] オフィス募集賃料の変動率の推移
(2)
募集賃料の変動率
募集賃料の、 当該期間の平均変動率では、 どちらもマイナスであるが全体 (- 1.3%)
が大規模ビル (- 2.3%) より大きく、 大規模ビルの平均変動率は全体よりも低い水準
である。
同 様 に 標 準 偏 差 は、 大 規 模 ビ ル (2.7 %) が 全 体 (1.2 %) よ り 大 き く、大 規 模 ビ ル
の方が予期できない変動が多い (リスクが大きい)。
(3)
CR との関係
一般的にCRの大きさは規模で区分すると、全体よりも大規模ビルの方が小さいと認
識されている。
しかし、募集賃料の変動率状況を見る限り、CR の関係から想定される状況 (大規模
ビルの方が平均変動率が高く、標準偏差が低い) とは逆の状態となっている。
大規模ビル では、 募集賃料とCRに関しては、整合的ではない事象が発生している
可能性がある。
し か し、開 示 さ れ る オ フ ィ ス 賃 貸 仲 介 事 業 者 の 募 集 賃 料 は、 1.1で 取 り 上 げ たCFそ
のものではない。 新規に入居したテナントの賃料 (成約賃料) には近いが、CF の大半
は既存テナントの賃料収入で構成されており、募集賃料の変動が CF の変動を表してい
ないことに留意する必要がある。
なお、空室率も同時に開示されているが、上記の理由により募集賃料と空室率を乗じ
ても賃料収入全体を示さないことにも留意する必要がある。
データ出所 : 三幸エステート 「オフィスマーケットレポート」 に基づき算出
平均変動率
( 年換算)
標準偏差
大規模ビル賃料 -0.57% -2.3% 2.7%
全体賃料 -0.34% -1.3% 1.2%
1.3 運用実績データの場合
(1)
NOI の動向
J-REITの運用実績データでは、 募集賃料より CF の概念に近い NOI
※4
の変動状況
をとらえることが可能である。
CF と NOI の内訳上の差異は、資本的支出と預り金の運用益の有無のみであり、NOI
の変動が CF の変動にほぼ直結すると考えることができる。
ここでは、 NOI実数ではなくNOI利回り (NOI÷取得額) を利用してNOIの変動を
とらえることとした。これは、 指数化の必要がないことに加え、 (取得額は変わらないため)
NOI の変化が NOI 利回りの変化として直接現れるからである。
立 地 と 規 模 を 勘 案 し 次 の 区 分 で 行 っ た 集 計 で は、 千 代 田 区 大 規 模 ビ ル のNOIは
2010 年下期に急落し、その後安定的な動きで、ほかの区分に比べて特異な動きであっ
た。
・ 千代田区大規模ビル
・ 千代田区全体
・ その他区大規模ビル
・ その他区全体
0.0% 0.5% 1.0% 1.5% 2.0% 2.5% 3.0% 3.5%
0
7
年度上期
0
7
年度下期
0
8
年度上期
0
8
年度下期
0
9
年度上期
0
9
年度下期
1
0
年度上期
1
0
年度下期
1
1
年度上期
1
1
年度下期
1
2
年度上期
1
2
年度下期
1
3
年度上期
1
3
年度下期
NOI利 回 り の推移
千代田区大規模 千代田区全体 その他区大規模 その他区全体
[ 図表 1-1-5] NOI
(利回り)
の推移
※ 4 Net Operating Income の略。日本語では純収益。収入 (賃料)から、実際に発生した経費 (管理費、 固定 資産税など) のみを控除したもの。
(2)
NOI の変動率
①大規模ビルと全体の比較
千代田区では、平均変動率は大きな相違はないが、標準偏差は大規模ビル (7.13%)
の方が全体 (2.65%) より大きい。
その他区でも千代田区とほぼ同様の傾向である。
②千代田区とその他区の比較
大 規 模 ビ ル で は、 平 均 変 動 率 で は 大 き な 相 違 は な い が、 標 準 偏 差 は 千 代 田 区
(7.13%) の方がその他区 (4.33%) より大きい。
全体では、平均変動率は千代田区(- 4.1%)の方がその他区(- 3.4%)より小さく、
標準偏差は千代田区 (2.65%) の方がその他区 (3.55%) より小さい。
-30% -25% -20% -15% -10% -5% 0% 5% 10%
0
7
年度上期
0
7
年度下期
0
8
年度上期
0
8
年度下期
0
9
年度上期
0
9
年度下期
1
0
年度上期
1
0
年度下期
1
1
年度上期
1
1
年度下期
1
2
年度上期
1
2
年度下期
1
3
年度上期
1
3
年度下期
NOI変 動 率 の推移
千代田区大規模 千代田区全体 その他区大規模 その他区全体
変動率(半年率)
平均変動率
( 年換算)
標準偏差
千代田区大規模
-2.00%
-4.0%
7.13%
千代田区全体
-2.07%
-4.1%
2.65%
その他区大規模
-1.92%
-3.8%
4.33%
その他区全体
-1.70%
-3.4%
3.55%
[ 図表 1-1-6] NOI 変動率の推移
[ 図表 1-1-7] NOI の平均変動率と標準偏差
(3)CR との関係
規模の違いに注目すると、 募集賃料でみたように、 大規模ビルの CR の方が小さいと
認識されているにも関わらす、NOI の標準偏差が大きい結果となり、整合的ではない事
象が発生している可能性がある。
立地の違いに注目すると、 一般的に立地で区分すると CR は、その他区よりも千代田
区の方が小さいと認識されている。
しかし、 大規模では平均変動率はそれほど相違はないにも関わらす千代田区の方が
標準偏差は大きい結果となった。また、全体でみても、千代田区の方が標準偏差 (リス
ク) は小さいものの、平均変動率は千代田区の方が小さくなっており、 千代田区の方が
CR が低いと認識されていることと整合しているとは言い難い。
3.8% 4.0% 4.2% 4.4% 4.6% 4.8% 5.0% 5.2%
0
7
年度上期
0
7
年度下期
0
8
年度上期
0
8
年度下期
0
9
年度上期
0
9
年度下期
1
0
年度上期
1
0
年度下期
1
1
年度上期
1
1
年度下期
1
2
年度上期
1
2
年度下期
1
3
年度上期
1
3
年度下期
千代田区大規模 千代田区全体 その他区大規模 その他区全体
キ ャ ップ レー ト
0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 4.0% 5.0% 6.0%
0
7
年度上期
0
7
年度下期
0
8
年度上期
0
8
年度下期
0
9
年度上期
0
9
年度下期
1
0
年度上期
1
0
年度下期
1
1
年度上期
1
1
年度下期
1
2
年度上期
1
2
年度下期
1
3
年度上期
1
3
年度下期
千代田区大規模 千代田区全体 その他区大規模 その他区全体
直近1年間NOI評価額利回り
[ 図表 1-1-8] 鑑定評価 CR の推移
[ 図表 1-1-9] 直近 1 年間 NOI 評価額利回りの推移
1.4 考察
整合的でないことの原因として考えられる主な要因は次のように整理できる。
①サンプル対象の影響
②価格のダウンサイドリスクを偏重する影響
③特殊な (効率的でない) 市場が形成されている可能性 等
(1) サンプル対象の影響
データを採取するサンプル対象の特性が影響している可能性がある。
NOIデータは、 対象期間にデータ欠落のない物件を 抽出し集計を 行っ ており、 サン
プ ル の 出 入 り に よ る 影 響 は 排 除 し て い る も の の、J-REITの 保 有 物 件 数 の 制 約 か ら、 そ
れ ぞ れ の 区 分 に 含 ま れ る サ ン プ ル 数 に 差 が あ り、 こ れ が 影 響 し た 可 能 性 も あ る。ま た、
対象期間が 7 年程度に過ぎないことにも留意が必要である。
(2) 価格のダウンサイドリスクを偏重する影響
不動産の取引では、将来の価格のダウンサイドはリスクであるが、アップサイドはリスク
と認識しない傾向があるとされる。
この場合は、上昇余地の大きい投資対象は、低いキャップレートで評価される傾向が
あることになる。
千代田区大規模ビルは、常にオフィス賃貸市場のプライスメーカーとされており、不況
時は景気回復時のいち早い賃料上昇が期待され、好況時はさらなる賃料上昇が期待さ
れている。このことが、実際の CF の動向とはかかわりなく、千代田区大規模ビルの CR
が小さい理由となる。
(3) 特殊な
(効率的でない)
市場が形成されている可能性
不動産には個別性があり、 代替が存在しないケースも多数存在する。取引市場では
特に立地の影響が価格に反映される。
この傾向は、オフィスであればいわゆる大丸有エリア、商業施設であれば銀座エリア
で特に強いと考えられ、特殊な市場を形成している可能性がある。
J-REITの 運 用 実 績 デ ー タ で 確 認 す る と、 千 代 田 区 大 規 模 ビ ル のNOIは2010年 下
期に急落している [ 図表 5]。しかし、鑑定評価における CR[ 図表 8] と直近 1 年間 NOI
利 回 り ( 直 近1年 間NOI÷ 鑑 定 評 価 額 ) [図 表9]を 比 較 す る と、 鑑 定 評 価 に お け る
CF 想定は 2010 年下期の急落は反映していないと推察される。
これに基づくと、テナントの千代田区大規模ビルへの入居希望層は厚く、賃貸市場で
他を圧倒する優位性 ・ブランド力があることから、不動産評価では、千代田区大規模ビ
2. 底地投資事業の不整合
2.1 J-REIT の底地投資の状況
J-REIT の底地保有が増加した。 保有している底地 67 物件中 85%にあたる 57 物件は、
定期借地契約に 基づくもの で あると思わ れ る。 ま た、その う ち45物件は上物用途が 店
舗となっている。
2.2 底地の評価試算
(1)
底地投資スキーム
底地
※ 5
は、 借地権付の土地 (宅地) のことであり、当該土地の所有権を底地権とい
う場合がある。
本稿では、 以下底地は定期借地権契約
※ 6
に基づくものを指すこととする。
底地権者 (底地取得者) は、 契約期間中は安定した収益が得られ、定期借地権契
約に基づく底地であるため、契約満了時に更地の返還を受けるというスキームである。
※ 5 借地権付き土地そのものを指して底地といい、底地の所有権を底地権という用例も一般的にみられる。 ※6 契約期間の更新のない定期借地権には、借地借家法22条に基づく一般定期借地権、同法23条に基づく事
業用定期借地権、同法 24 条に基づく建物譲渡特約付借地権がある。本稿では、注釈がない限り建物譲渡特 約付借地権のケースは除いて論を進める。
J-REITが保有する底地物件(2014/8月末時点)
契約形態 用途 政令指定都市 地方都市 東京周辺区お
よび都下 東京都心5区 総計
地上権 事務所 2 2
定期借地権 その他 3 1 1 5
事務所 2 2
住宅 2 2
店舗 17 15 11 2 45
物流施設 3 3
普通借地権 その他 1 1
事務所 3 2 5
店舗 1 1 2
総計 26 20 12 9 67
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 2 0 0 2
年
1
月
2
0
0
3
年
1
月
2
0
0
4
年
1
月
2
0
0
5
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1
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2
0
0
6
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1
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2
0
0
7
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1
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8
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1
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0
9
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1
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2
0
1
0
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1
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2
0
1
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1
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2
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1
2
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1
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2
0
1
3
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1
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2
0
1
4
年
1
月
金額単位:百万円
[ 図表 1-1-10] J-REIT による底地の取得時期と取得額
[ 図表 1-1-11] J-REIT による底地の保有状況
(2)
キャッシュフロー
①キャッシュフローの内訳
底地投資のキャッシュフロー概要は、底地売主から底地買主 (底地権者)が底地を
取得し、借地人 (建物保有者) から地代 ・一時金 (無利息返還) を得るというもので
ある。
また、建物を保有しないため、費用の内訳は単純なものである。
定期借地契約を締結するに当たり保証金等の一時金 (無利息返還が多い) が支払
われるケースが多い。これは、地代の不払いを担保するだけでなく、 契約終了時の更
地化費用も担保していると考えられる。
収支の項目は一般的に次のようになる。
収入 : 地代収入
費用 : 土地の管理費、公租公課
運用益 : 一時金の運用益
(建物を保有しないため資本的支出はない)
所有者
建物、施設 借地権者
借地権
更地 底地権
底地権者(底地買主) 地代・
一時金
賃 貸
費用( 管理費、 公租公課等)
【コラム : J-REIT のキャッシュフロー項目の比率等】 底地価値(取得額)とキャッシュフロー
項目の比率等の状況を J-REIT の運用実績 から整理すると、次のようになる。
地代比率(年間地代÷底地取得額)
借地人は、支払う地代水準をなるべく抑 えたいが、税務上底地権者から借地権者 への贈与に当たらないようように設定す る必要があり、一定の水準以上にならざ るを得ない。
J-REIT の 例 で は、 地 代 比 率 は 4 % ~ 12%の範囲でばらついていると考えられ るが、取得額が 50 億円以上の場合は 6% 前後(5%~ 7%)に落ち着いている。
費用比率(費用÷収入)
底地では、費用として管理費、公租公課 が主で、費用比率はほかの投資対象不動 産に比べると低い。J-REIT の運用実績に よると、底地全体では 14.6%、店舗は 11.8%となっている。事務所が 36.7%と 高いのは、立地が都心に近く公租公課の 負担が大きいためと考えられる。
一時金比率(一時金÷底地取得額)
保証金等の一時金は、借主が貸主に一定 の金額を無利息で預け入れる金銭のこと で、実務的には賃料の不払いやテナント の債務を担保する金銭とされている。
J-REIT の例では、11 物件で開示してい る事例があり、一時金等÷底地取得額は 4%~ 8%の範囲でばらついている(1 事 例のみ 11.4%)と考えられ、平均は 6% 程度である。年間地代との関係でみると、 年間地代に相当する程度と考えられる。
存続期間
J-REIT 保有の底地事例では、定期借地計 画期間は 20 年間とするものが多い。こ れは、2007 年 12 月以前は事業用定期 借地契約の契約期間は、最長 20 年に制 限されていたことが影響していると思 われる。借地借家法の一部改正により、
0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 10% 11% 12% 13%
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
取得額(単位:百万円) 地代÷底地取得額
用途 費用比率 事務所 36.7%
住宅 2.0%
店舗 11.8%
物流施設 18.8%
その他 12.1%
全体 14.6%
0 10 20 30 40 50 60 70 80 2 0 0 1
年
1
月
2
0
0
2
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1
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2
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0
3
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2
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1
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2
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7
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1
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2
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9
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1
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2
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1
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1
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1
1
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1
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2
0
1
2
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1
月
2
0
1
3
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1
月
2
0
1
4
年
1
月
契約期間:(年数)
が 10 年以上 50 年未満となったこと から、今後は 20 年を超える事例が増 加してくると思われる。
地代比率の状況
上物建物の用途別費用比率
(J-REIT 運用実績)
(3)
評価試算
上物用途が店舗で契約存続期間が 30 年の定期借地権付き底地 (50 億円以上) に
ついて、底地割合、割引率および地代割合の整合性のある組み合わせを試算した。
①割引率
J-REITが 保 有 し て い る 上 物 用 途 が 店 舗 の 底 地 のDCF法 の 割 引 率 は4.5 % ~9.0 %
の範囲でばらついているが、取引額が 50 億円以上の場合は 5%前後 (4%~ 6%) に
落ち着いている。この割引率の水準は、一般的不動産用途の物件との差はあまりないと
いえる。
②評価試算
財産評価基本通達 (国税庁) では、定期借地権付貸宅地について、貸宅地の評価
額=自用地評価額× (1 -定期借地権の残存期間に応じた割合 ) としており、「定期借
地権等の残存期間に応じた割合」 は、5%~ 20%となっている。つまり、底地比率 (底
地価値÷更地価値) は 0.80 ~ 0.95 (残存期間が短いほど高い割合) と想定されている。
0% 1% 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% 10%
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
DCF法の割引率
取得額(単位:百万円)
【試算の前提】
・30 年間の DCF 法、30 年目の更地の価値は現在の価値と同等。
整合性のある地代比率
4.7% 4.8% 4.9% 5.0% 5.1% 5.2% 5.3% 5.4% 5.5% 5.6% 5.7% 5.8% 5.9% 6.0% 0.95 5.1% 5.2% 5.3% 5.4% 5.6% 5.7% 5.8% 5.9% 6.0% 6.1% 6.2% 6.4% 6.5% 6.6% 0.90 5.0% 5.1% 5.2% 5.3% 5.5% 5.6% 5.7% 5.8% 5.9% 6.0% 6.2% 6.3% 6.4% 6.5% 0.85 5.0% 5.1% 5.2% 5.3% 5.5% 5.6% 5.7% 5.8% 5.9% 6.1% 6.2% 6.3% 6.4% 0.80 5.1% 5.2% 5.3% 5.5% 5.6% 5.7% 5.8% 5.9% 6.1% 6.2% 6.3%
底 地 比 率
割引率
[ 図表 1-1-13] 底地取得額と割引率の状況
[ 図表 1-1-14] 底地割合別の割引率と地代割合の組み合わせ試算結果
こ の 想 定 お よ び コ ラ ム で 整 理 し たJ-REITの キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 項 目 の 比 率 等 に 基 づ き、
上物用途が店舗の底地価値 (50 億円以上と想定) について 30 年間の DCF 法で試算
を行った。その結果、 底地価値割合と地代割合 (地代÷底地価値) および割引率の
関係を整理すると、図表 14 の組み合わせとなり、
割引率の範囲は 4.7%~ 6.0%
地代割合の範囲は 5.0%~ 6.6%
であることがわかる。
J-REITの取得額50億円以上の店舗の底地の場合は、整合的な地代割合と割引率
の組み合わせ範囲に近い分布となっており、ほぼ整合的な設定になっていると考えるこ
とができる。
3% 4% 5% 6% 7% 8% 9%
4 . 0 % 4 . 5 % 5 . 0 % 5 . 5 % 6 . 0 %
割引率 地
代 比 率
試算による整合性のある範囲
[ 図表 1-1-15] J-REIT 保有物件と試算による整合性のある範囲
2.3 底地投資のリスク
(1)
J-REIT の運用実績
定期借地契約は安定的な地代収入を得られる、修繕費が発生しない、 契
約が終了すれば更地が返還されるということを前提としておりリスクが小さいス
キームとなっている。
実 際、J-REIT保 有 の 運 用 実 績 で は 底 地 の 総 合 収 益 率 (2006年 下 期 ~
2014年 上 期 ) の リ ス ク ・リ タ ー ン は も っ と も 左 に 位 置 し ( 標 準 偏 差 が 小 さ い
こ と は、総 合 収 益 率 が 安 定 し て い る こ と を 示 し て い る )、 安 全 資 産 利 子 率 を
1.63 % と す る シ ャ ー プ レ シ オ
※7
も 物 流 施 設 に 次 ぐ 高 さ と な っ て お り、魅 力 的
な投資商品となっている。
(2)
底地特有のリスク
底地特有の主なリスクは、次のように整理できるものの、一般的な用途の
不動産のリスクと比して著しく大きいものではない。
①地価の下落リスク
他の不動産投資商品でも、不動産価格が市場で下落する場合がある。市
場での価格変動は底地特有のリスクではないが、返還を受けた更地の収益
化は基本的に売却しかないため、返還を受けた時点が地価の下落時期に当
たれば、収益率の低下が予想され特有のリスクと考えられる。
②物価上昇リスク
契約終了時の更地化を担保する保証金等の一時金が、インフレや工事費
の値上げにより、十分でなくなる可能性がある。底地投資では、上物である
建物 ・ 施設はなるべく撤去しやすいものの方がリスクは小さいといえる。
③流動性リスク
定 期 借 地 契 約 満 了 時 に 返 還 さ れ た 更 地 の 売 却 時 に お い て、当 該 更 地 の
流動性が低い場合は、底地設定時の更地価値を契約満了時に維持できな
いことが考えられる。特に、 工場やロードサイド店舗の底地であるケースには
流動性が低い場合があると考えられる。
物流施設
底地
2.5% 3.0% 3.5% 4.0% 4.5% 5.0%
平 均 (半年率)
2.4 中途解約の不整合点
(1)
中途解約時の優位性
一 般 的 な 賃 貸 オ フ ィ ス ビ ル、賃 貸 住 宅 お よ び 物 流 施 設 で は、 テ ナ ン
トの都合で契約期間中に契約が終了した場合 、 予期せず賃料収入が減
少する。特に、物流施設では、 テナント数が少ないため代替テナントが
入居しなければ賃料収入が大きく減少することになる。 一般的な賃貸事
業では、テナントの中途解約はリスクとなる。
し か し、底 地 で は、中 途 解 約 は 契 約 の 終 了 と な り、 更 地 が 底 地 権 者
に返還されることになる。底地権者にとっては、地代収入はなくなるもの
の、底地価値よりも大きい更地を入手できることになる。
一 般 的 に 借 地 権 者 側 の 都 合 に よ る 中 途 解 約 時 に は、 借 地 権 者 側 は
中途解約違約金の支払い、 に加えて更地化費用 (一時金との相殺等)
の支払をし更地を返還しなければならない。
一 方、底 地 権 者 側 は、 中 途 解 約 違 約 金 を 得 ら れ る と と も に、追 加 的
な負担なく更地を入手できることになる。
更地が市場で十分に流動性を持っているならば、テナント都合による
中途解約はリスクとは限らない。
(2)
中途解約の IRR 試算
J-REITの事例では、 契約満了までの DCF 法評価では整合的なもの
であったが、中途解約を想定すると満了までの価値よりも増加するスキー
ムが多いと思われる。
中途解約の試算結果では、 割引率 5.0%、地代割合 5.3% (底地割
合 0.8 に相当) とすると 30 年満了では整合的になるが、 10 年目で賃借
者都合による中途解約となり、 更地返還を受け、 更地を売却したとすると、
IRR は 5.0%から 6.5%に跳ね上がる。さらに、違約金を受領すると IRR
はそれに応じて上昇することになる。
つまり、定期借地権において、更地価値>底地価値、 更地の流動性
が 市場 で 確保され て い るな らば、中 途解約は底地権者に と っ て リ ス ク で
はないと考えられる。
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 11年目 12年目 地代収入 地代比率 5.10% 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 費用 費用比率 11.80% -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48
一時金 一時金比率 6.00% 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 契約満了時
更地価値 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 CF合計 -80 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69
IRR 5.0%
中途解約時
更地価値 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 100.00 CF合計 -80 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 103.69
IRR 6.5%
【試算の前提】
・30 年間の DCF 法、30 年目の更地の価値は現在の価値と同等。 ・中途解約は 10 年目。更地価格は現在の価値と同等。
・割引率 5.0%、地代割合 5.1%(底地割合 0.8 に相当)の設定。
19年目 20年目 21年目 22年目 23年目 24年目 25年目 26年目 27年目 28年目 29年目 30年目 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08 4.08
0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48 -0.48
0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 100.00 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 3.69 103.69
[ 図表 1-1-17] IRR の試算
2.5 考察
底地投資は、超長期の固定利付国債への投資と類似性はあるものの、 さ
ら に 底 地 価 値 が 更 地 価 値 よ り も 低 い こ と か ら 割 引 債 の 要 素 も 加 わ っ て い る と
考えることができる。利付債券要素において不動産商品の通常のリスクプレ
ミアムがすでにオンされていると考えると、割引債要素は追加的な魅力であ
る。加えて、 中途解約時には、より魅力的になる試算結果となった。
一 方、一 般 的 な 企 業 でCRE-Mを 検 討 す る 際 に は、稼 働 工 場 等 の 土 地
を底地化して資金調達することは、従前どおり工場等を稼働させ事業を継続
できる点で魅力的なスキームと思われる。
資 金 調 達 の 観 点 だ け で は な く、企 業 が 保 有 す る 不 動 産 の 底 地 化 + 底 地
売却+定期借地は、資産のスリム化を図れ、 ROA の向上が期待できる施策
でもある。
定期借地権は、1992 年に始まった比較的新しい制度で、2000 年以降目
立つようになってきた定期借地権付の底地の取引では、中途解約時の不安
(円滑な更地返還がなされるか等)に対応して底地投資家の理解を得るため、
底地投資家に有利な条件設定が行われていた背景があると推察できる。し
かし、こうした状態は、企業が保有する不動産の底地化を躊躇させているの
で は な い か。 国 内 で 活 動 す る 企 業 を 不 動 産 面 で 支 援 す る 意 味、不 動 産 投
資市場に魅力的な商品を継続的に供給するという意味、両面から底地権者
および借地権者にとって互いに整合的な商品づくりが行われることを期待し
たい。