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講義ノート(法政2016年度) 福川賢治のホームページ

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(1)

2016.5.12 K. Fukukawa

原子から物理まで I

レポート問題第一回 (4/28 , 福川 出題 ) 解答例・解説

I. (基本的な単語の確認)

要素還元主義と、全体論についてそれぞれ簡潔に(1,2 行程度で)説明しなさい。 (解答例)

要素還元主義 : 複雑な現象を理解する際に、その最も基本的な構成要素と相互関係が分 かっていれば、順々に複雑な現象を理解できる、とする考え方。

全体論: 最も基本的な構成要素とその相互関係が分かっても、それだけでは複雑な現象を 理解できないとする考え方。

(解説)

1 回目の講義からの出題。全体として同じ意味の文章が書けていれば OK です。要素還 元主義は古代ギリシャ時代の「アルケー (万物の根源) は何か」?という問いまで、その源 流を遡ることができます。近代以降ではデカルトが提示したと言われています。まさに分 割することによって、通常の物体から分子・原子・素粒子の世界が追究されてきました。 一方、全体論はアリストテレスの「全体は部分の総和以上の何か」である、というアリス トテレスの言葉にその源流を見いだすことができます。要素還元主義からの主に生物学や 社会科学方面からの反発として、20 世紀に大きく発展しました。基本的な哲学用語なの で、教養としてセットで覚えておくと良いでしょう。

II.(三角測量の原理 )

下の図で線分 AD の長さ d を求めなさい。但し、∠B = 45, ∠C = 60, BC = 40 [m] とし、BC 上の点 D は ∠ADB = ∠ADC = 90 を満たす点 (AD は BC と垂直) とする。

(2)

(解答例)

AD = d であるので、(△ ABD は直角二等辺三角形なので) BD = d, また、(△ ACD は

∠ C = 60, ∠ ADC = 90 なので、) DC = 1

3d。従って、AD = 40 [m] だったので、 (

1 + 1 3

)

d = 40 [m]

が成り立つ。この d についての方程式を解くと、d = 40

1 + 13 = 60 − 20

√3 [m] となる。

(解説)

2 回目の講義からの出題。三角測量は、底辺とその上の 2 つの角度が分かっていれば対 岸までの距離が出せる、という測定法。地形の測定や、近くの星までの距離の測定に使 われています。三角関数は導入していないので、有名な直角三角形を使った問題にしまし た。△ ABD は正方形の半分なので辺の長さの比が AD:BD:AB = 1 : 1 : 2、△ ADC は正三角形の半分なので、辺の長さの比が AD:DC:CA =3 : 1 : 2 となります。x は 2 乗すると、x になる数です。ピタゴラス (三平方) の定理は、直角を挟む 2 辺それぞ れの 長さ 2 乗を足すと、残りの辺の長さの 2 乗になっているというもの。この例だと、 (AD)2+ (DC)2 = (AC)2です。答えは、有理化する前のものでも、有理化した後のもので も OK。3 を小数で与えても OK です。計算過程は () の部分まで丁寧に書く必要はな いですが、せめて d についての方程式は書いておかないと、意味が分からなくなります。 最後に単位 [m] を忘れないようにしましょう。

III. (宇宙年齢の導出、指数を含んだ計算の練習) 次の文章を読み、以下の小問に答えなさい。

授業で取り扱った Hubble の法則は、地球から天体までの距離を D, 地球から天体が遠 ざかる速度 (後退速度) を v, Hubble 定数と呼ばれる比例定数を H0 として、

ア (1)

と書ける。A. 宇宙は初め極めて小さな領域に集まっており、その後爆発・膨張した。 B. 宇宙の膨張速度が常に一定であったとする と、宇宙が始まってから現在の年齢は イ と書ける。

H0 の最新の観測値は観測の誤差を無視すると、 H0 = 67.15 km/(s ·Mpc) である。こ こから宇宙年齢を求めると、 ウ 億年となる。実際には下線部 B の仮定は成り立っ ていないので、この議論はそのまま信用できないが、 ウ 億年は現代考えられている

(3)

2. 下線部 A の現象は何と呼ばれているか。カタカナ 5 文字で答えなさい。 3. ウ に入るべき整数を計算によって求めなさい。

但し、1 pc = 30.9 Pm = 3.09 ×1016 m とする。また、M (mega) は 106 を表す SI 接頭辞である。

(Hint. まず、H0 を 1/s の単位で表す。) (解答例)

1. ア. v = H0D

イ. 速さ v で地球から離れていったことになるので、距離 D だけ離れるのに必要な 時間はD

v = 1 H0

よって、求める答えは 1 H0

2. ビッグバン

3. まず、ハッブル定数 H0を 1/s の単位で表すと、H0 = 67.15 × 10

3 [m]

3.09 × 1016× 106 [m · s] = 2.173× 10−18 [1/s] 。従って、 1

H0

= 1

2.173 × 10−18 = 4.602 × 1017[s] である。また 1 年を秒で表すと、1 年 = 365.25 日 = 8766 時間 = 5.260 × 105分 = 3.156 × 107[s] である。従って、

1

H0 = 4.602 × 1017[s] = 4.602 × 10

17

3.156 × 107 年 = 1.458 × 1010年 = 146 億年 である。よって、求める答えは 146 億年。

(解説)

指数を含む計算の練習問題になると思い、第 2 回の授業で話した Hubble の法則から出 題しました。「遠くの天体ほど距離に比例して遠ざかる」という Hubble の法則は宇宙論 の基本的な法則の一つなので、ぜひ知っておきたい法則の一つです。小問 1 のア の答え は単位の関係を考えても推測できます (後の講義で次元解析の考え方を解説します)。小 問 2 はこれも現代宇宙論のパラダイムとなっている理論でビッグバン (理論) と呼ばれて います。宇宙の膨張や宇宙初期における原子核合成を説明する理論です。

人によっては 小問 3 が今回のレポート問題の中で一番難しかったかもしれません。単 位の換算は自由にできるようになっておくと、物理の話がより掴みやすくなると思いま す。指数計算 10x × 10y = 10x+y, 10−x = 1

10x とともに、ある程度慣れておきましょう。 ちなみに、1/H0 のことは Hubble 時間と呼ばれます。解答を書いて気づいたのですが、 講義スライドに書いた Hubble 時間は古い Hubble 定数から計算された値で、現在の最新 データを使うと、Hubble 時間は実際の宇宙年齢 (138 億年) よりわずかに長いようです。 申し訳ありません。また、upload している講義スライドを訂正します。途中計算の方法 が分かっていれば、細かい数字のずれは OK です。

(4)

IV. (速度 (微分の基礎))

x 軸上を動くある物体の運動を観測したところ、x(t) = t2 [m] と表される運動を行って いることが分かった。

1. t = 2 [s], 2.01 [s], 2.05[s], 2.1[s], 2.2 [s], 2.5 [s], 3 [s] の時の物体の x 座標をそれぞれ 求めなさい。

2. 授業中話したように、t = a[s] から、t = b [s] までの物体の平均速度 v は v = 位置の変化

時間 =

x(b) − x(a)

b − a (2)

で与えられる。t = 2 [s] から、t = 2.01 [s], 2.05[s], 2.1[s], 2.2 [s], 2.5 [s], 3 [s] まで の物体の平均速度をそれぞれ求めなさい。

3. t = 2 [s] から t = 2 + ∆t [s] 秒までの物体の平均速度を求めなさい。 4. 授業中話したように、t = a [s] における瞬間速度 v(t = a) は

v(t = a) = lim

∆t→0

x(a + ∆t) − x(a)

∆t dx

dt(t = a) (3) で与えられる。3. の結果で ∆t → 0 の極限をとり、t = 2 [s] における物体の瞬間速 度 v(2) を求めなさい。

5. 一般の t について、 v(t) はどのような関数で与えられるか? (解答例)

1. x(t) = t2 [m] の t に、それぞれの t の値を代入すれば良い。従って、答えは以下の 表のようになる。

t [s] 2 2.01 2.05 2.1 2.2 2.5 3 x [m] 4 4.0401 4.2025 4.41 4.84 6.25 9

2. 上の表を用いて、平均速度の定義 (式 (2)) に当てはめて解答する。従って、答えは 以下の表のようになる。

t [s] まで 2.01 2.05 2.1 2.2 2.5 3 v [m/s] 4.01 4.05 4.1 4.2 4.5 5

(5)

3. t = 2 [s] から t = 2 + ∆t [s] 秒までの物体の平均速度 v は式 (2) から v = x(2 + ∆t) − x(2)

(2 + ∆t) − 2 =

(2 + ∆t)2− 22

∆t

(

= (2 + ∆t)(2 + ∆t) − 4

∆t

= 2(2 + ∆t) + ∆t(2 + ∆t) − 4

∆t =

(4 + 2∆t) + (2∆t + (∆t)2) − 4

∆t

= (4 + 4∆t + (∆t)2) − 4

∆t

)

= 4∆t + (∆t)

2

∆t

= 4 + ∆t [m/s]

となる。途中は因数分解の公式 (b2− a2) = (b + a)(b − a) を用いて、 v = x(2 + ∆t) − x(2)

(2 + ∆t) − 2 =

(2 + ∆t)2− 22

∆t

(

= ((2 + ∆t) + 2)((2 + ∆t) − 2)

∆t

)

= (4 + ∆t)∆t

∆t = 4 + ∆t [m/s] としてもよい。

4. 問題の誘導に従って進むとよい。 v(2) = lim

∆t→0

x(2 + ∆t) − x(2)

∆t = lim∆t→0(4 + ∆t) = 4 [m/s]

5. 小問 3, 4 の t = 2 [s] のところを一般の時間を表す文字 t で置き換える。t = t [s] か ら t = t + ∆t [s] までの平均速度は、

v = x(t + ∆t) − x(t) (t + ∆t) − t =

(t + ∆t)2− t2

∆t

(

= (t + ∆t)(t + ∆t) − t2

∆t

= t(t + ∆t) + ∆t(t + ∆t) − t2

∆t =

(t2+ t∆t) + (t∆t + (∆t)2) − t2

∆t

= (t

2+ 2t∆t + (∆t)2) − t2

∆t

)

= 2t∆t + (∆t)2

∆t

= 2t + ∆t [m/s]

である。従って、t = t [s] における瞬間速度 v(t) は、∆t → 0 の極限を取れば良い ので、

v(t) = lim

∆t→0(2t + ∆t) = 2t [m/s] である。

(解説)

第三回で話した、速度と微分の関係に慣れてもらうための問題です。小問 1 は座標や関 数とは何かを問う問題です。「2 次関数って何?」という人は、参考書を見るか、Web で 動画なども落ちていますので、簡単なものを見てみましょう。小問 2 は問題文の誘導に 従えばよいです。ここまでは、電卓があればそれほど難しくないはずです。

(6)

小問 3, 4 は、∆t という文字が入るので、若干難しくなります。分配法則を使って一つ 一つ掛け算を実行すれば良いです。もし難しいと感じる人は ∆t に具体的な数字を入れて みて、小問 1, 2 の答えと一致することを確かめてみましょう。解答例では、分配法則を 使って、一つ一つ計算していますが、多くの人が計算を追えるように過剰に式を書きまし た。展開や因数分解を理解している人は、2, 3 個式を書けば理解できるので、大きな括弧 で囲った部分は書く必要はないでしょう。小問 4 は極限の簡単な計算です。

小問 5. は d dtt

2 = 2tを導出する問題です。小問 3, 4 と全く同様に解けますので、もし 難しければ、小問 3, 4 をじっくり味わってほしいと思います。

(7)

2016.12.1 K. Fukukawa

原子から物理まで II

レポート問題第一回 (11/10 , 福川 出題 ) 解答例・解説

I. (powers of 10)

第一回目の授業 (9/22) で物理学の階層性を象徴的な言葉として “Powers of 10” という 動画を紹介した。長さについては以下の表のようにまとめることができる。

単位 [m] 100 107 1011 1017 1021 1026     人の身長 地球 地球-太陽間距離 近い恒星 銀河系 観測限界     10−5 108 1010 1015 <1018

赤血球等 ウイルス 原子半径 原子核半径 電子半径 表 1: 色々な距離

この表に倣って、例えば重さや時間など、他の物理量で ”Powers of 10” を作ってみて ください。

(解説) 具体的な物理量を一つ使って、様々な量の大きさについて調べてもらう問題。エ ネルギー、速度などを使って解答しているものもあった。あまりにも個数が少ないもの、 単位を明示していないもの、ケタ数が明らかに間違えていると思えるものについては、そ のクォリティに応じて、減点した。桁は微妙なラインのものについては、厳密でなくても 良い (ざっくりした大きさをつかんでもらうことが大切なので)。ファインマン物理学「力 学」や、Wikipedia の https://ja.wikipedia.org /wiki/Category:「数量の比較」には幾つ かそのような例が載っている (情報の真偽は詳しく書かれていないが、概ね正しい情報が 載っているようである)。

II. (レンズの問題) ((1) 1 点、 他 2 点 = 7 点)

第四回 (10/13) の授業では、レンズについて取り扱った。レンズに関する以下の質問に 答えなさい。

(1) レンズの屈折率を n1 = 1.5, 空気の屈折率を n2 = 1 とする。

両凸レンズ (両方の面が凸であるレンズの) 2 つの球面の曲率半径を R1 = 60 cm, R2 = 30 cm とする。この時、レンズの焦点距離はいくらになるか計算しなさい。焦点距離 f についてのレンズ製作者の公式は

1 f =

( n1

n2 − 1

) ( 1 R1

+ 1 R2

) .

(8)

で与えられる。

(2) (1) で取り扱ったレンズの前方 50 cm に 長さ 2.0 cm の物体を光軸 (レンズの中心を 水平に通る軸) に垂直に置く。この時、光線が通る様子を 2 本以上作図し、像のできる位 置、種類および大きさを求めなさい。

(3) 焦点距離が 5.0 cm の凸レンズをつけたカメラがある。カメラでは、レンズと物体の 像を結ぶフィルムの間の距離を動かしてピントを合わせる。このカメラでは、30 cm から 無限に遠い物体まで写すことができるという。レンズとフィルムの間の距離はどこからど こまで変えることができるだろうか?

(4) (ボーナス問題) 焦点距離 10 cm のレンズの前方 15 cm のところに、長さ 3.0 cm の 物体を置いて生じる虚像の位置を求めなさい。また、このレンズは凸レンズか凹レンズか 答えなさい。

(解答例)

(1) 与えられたレンズ製作者の公式に、そのまま代入すると、焦点距離 f は 1

f = ( 1.5

1 − 1 ) ( 1

60+ 1 30

)

= 0.5 ×( 1 60+

2 60

)

= 0.5 × 1 20 =

1 40 となる。従って、求める焦点距離 f は f = 40 cm.

(9)

図 1: 凸レンズで出来る像

(2)光線の進行は図 1 のようになる。像は 倒立実像 になる。光線は焦点 F1, F2 を通る光線

と、レンズの中心をそのまま通り抜ける光線の 3 本の赤線のうち、少なくとも 2 本を書けば よい。レンズの焦点 F2から物体までの距離 SO= BO − OF2 = 50 − 40 = 10 cm. もう一方 のレンズの焦点 F1から物体までの距離を Siとすると、SOSi = f2から、10×Si= 402であ る。したがって、Si= 160 [cm] である。したがって物体はレンズから後方 OD = Si+ 40

=160+40=200 cm のところに像ができる。像の大きさ CD については三角形の相似を 適当に見つけ (例えば △ AEO と △ OGC) を見つけ AE : AB = AE : EO = GC : OG = GC : CDなどとすると、解くことができる。AB = EO = 2 cm, AE = 50 cm, GC = 200 cm から、OG = CD = 8 cm となる。

(3)無限に遠い物体からくる光線は平行な光線となって焦点に像を結ぶ (焦点の定義) ので、 このときレンズと像を写すべきフィルムの間の距離はレンズの焦点距離 f = 5 cm である。 また、レンズから 30 cm にある物体に対しては、焦点から物体までの距離 SO= 30−5 = 25 cm. であるので、焦点からフィルムまでの距離を Siとすると、SOSi= f2から、25×Si= 52 である。したがって、Si= 1 [cm] であるので、レンズとフィルムの距離は Si+ f = 1 + 5= 6 cm離れたところにある。従って、レンズとフィルムの距離は 5 cm から 6 cm まで変 わる。

(10)

(補足) カメラの レンズで できる像を正立と考えて、混乱している人が複数いた。実際に 目に見える像はカメラのレンズでできた倒立の像を電子的に (あるいはプリズムを使って) 正立になるよう補正したものである。

図 2: 凹レンズで出来る像

(4)まず与えられたパターンを考える。焦点距離 f の外側に物体を置いて、虚像ができ ているので、このレンズが 凹 レンズ であることに気づくことがポイントである。凸レン ズだと問題 (2) のように実像ができる。

凹レンズを使った場合、物体から出る光線の図は図 2 のようになる。物体からレンズ を跨いだところの焦点までの距離を SO とすると、SO = BF2 = BO + OF2 = 15 + f = 15 + 10 = 25 cm である。また、物体とレンズとの間の焦点と像との距離を Si = DF1, また像とレンズの距離を x = DO とすると、Si = F1D = F1O − DO = f − x = 10 − x [cm] である。公式 SOSi= f2 から、25(10 − x) = 102 である。従って、10 − x = 4 なの で、x = 6 cm. したがって、 物体の像はレンズの前方 6 cm の所にできる。

(注意) この問題では、この問題では、レンズの公式 1 a +

1 b =

1

f とし、a = 15 cm, f = 10 cm から b = 30 cm とした誤答が多かった。凹レンズでは焦点の役割が凸レンズと逆 になること、すなわち焦点距離は f = −10 cm, また、結像位置 b も負 (つまり、レンズ

1 1 1

(11)

2016.12.22 K. Fukukawa

原子から物理まで II

レポート問題第二回 (12/8 , 福川 出題 ) 解答例・解説

I. (波の問題) (1) 2 × 2 = 4 点 (2) 4 点 (3) 1 個につき 1 点

(1-1) 第 5 回の授業 (10/20) では波の基本式 v = f λ について取り扱った。v は波が伝わ る速度 (専門的には位相速度と呼ばれる) である。その他の記号の意味を述べた上で、v がなぜこのように書けるのか、理由を述べなさい。

(解答例) f [Hz] は振動数で一秒間に波の媒質が振動する回数である。波が一回振動する と、波動 (振動のパターン) は一波長分だけ進むことになる。λ [m] はこの波長を表すパ ラメーターである。従って一秒間では f 回振動するので、波はその間に v = f λ だけ進 むことになる。

(1-2) 現在、光速 c はレーザー光のパラメータの高精度の測定により行われている。国 際度量衡委員会の Evenson 達は論文 Physical Review Letters 29, 1346 –1349 (1972) で f = 8.837618 × 1013 Hz, λ = 3.392231 µm の値を報告した。(1 µm = 10−6m である。ま た、8 桁電卓で計算できるよう値を丸めたが、実際には 9–10 桁値を測定している)。ここ から、光速 c を求めなさい。

(解説) 現在では、光の速度がどのように測定されるかを書きたかったので、出題した。レー ザーの周波数の安定化も原子の吸収スペクトルを利用する非常に高度な技術らしい(解説を 読んだが、技術がよくわからなかった...)。計算自体は前問の公式 (波の基本式) に代入すれ ばよい。すなわち、c = f λ = (8.837618 × 1013) × (3.392231 × 10−6) = 29.97925 × 1013−6 = 2.997924 × 108[m/s] となる。指数法則 10a+b = 10a× 10b などは科学書を読む上での基本 的な式なので、ぜひ覚えておいてほしい。また、0 でない最初の桁の値はどの程度か、電 卓を叩く前に大体で良いので考えておくと、常識外の計算ミスは起こりにくくなる(この 場合は答えをあらかじめ知っているのだが)。

(2) 第 7 回の授業 (11/4) ではヤングの干渉実験を説明した。くっきりした光の干渉縞を 見るには白色光ではなく、単色光を使う方が良いとされる。その理由を説明しなさい。 (解答例) ヤングの干渉実験では干渉縞の間隔 ∆x は、光の波長を λ, スリット間の距離を d, スリット-スクリーンの間の距離を L として、L >> d 等の条件のもとで、∆x = (L/d)λ となる。従って、白色光ではあらゆる色の光のスペクトルが混ざっているため、様々な幅 の縞模様ができる。従って、縞模様がややぼやける。一方単色光を用いると、干渉縞の間 隔は常に光の波長により決まることになる。従って、鮮明な縞模様が得られる。

(12)

(3) ドップラー効果の応用例を好きなだけ調べなさい。

(解説) 野球のスピードガン (反射波の周波数がドップラー効果により変化) 、自動車の速 度違反の検出、ドップラーレーザー(反射波の観測対象の移動速度と変位を観測、飛行場、 管制塔のレーダー、気象レーダー) などに用いられている。また、ドップラー効果を利用 した超音波診断など医療用にも使われる。また、コウモリやイルカはドップラー効果でエ サの居場所を探し当てる。天体現象としては、二次元のドップラー効果や、赤方偏移など が知られている。

(13)

原子から宇宙まで II 試験解答例 (2016/1/19, 担当 : 福川 )

注意事項

1. 試験時間は授業の終了時刻までとします (12 時 30 分あるいは 14 時 50 分 まで)。 2. 計算問題は途中計算がある場合は、過程も含めて書いてください。単位がある量は 単位もつけてください。途中までしか書けていなくても、部分点は出すので、諦め ずに答えてください。

3. 持ち込み可能なものは、自筆資料と電卓です。

4. 授業内に話した通り、不正行為は厳禁です。もしトイレに行きたい、答案用紙が足 りないなどの場合は、私に声をかけてください。

以下問題 I. (40点)

以下の A 群に氏名を挙げた科学者・自然哲学者の業績として適切なものを B 群から選 び、記号で答えなさい。ただし、一人の人物に対し複数の業績がある場合はすべて答える こと。

A 群

(1) J. J. トムソン (Joseph John Thomson) (2) エンペドクレス (Empedocles)

(3) アルバート・マイケルソン (Albert Michelson) (4) ウィリアム・ハーシェル (William Herschel) (5) クリスチャン・ドップラー (Christian Doppler) (6) ジョン・ドルトン (John Dalton)

(7) アリストテレス (Aristotle)

(8) ミレトスのタレス (Thales of Miletus) (9) アメデオ・アボガドロ (Amedeo Avogadro) (10) ピエール・ド・フェルマー (Pierre de Fermat) (11) ドミトリ・メンデレーエフ (Dmitri Mendeleev) (12) マックス・プランク (Max Planck)

(13) 長岡半太郎

(14) デモクリトス (Democritus)

(15) アントワーヌ・ラボアジェ (Antoine Lavoisier) (16) オーレー・レーマー (Ole R¨omer)

(14)

(17) アルバート・アインシュタイン (Albert Einstein) (18) ニールス・ボーア (Niels Bohr)

(19) アーネスト・ラザフォード (Ernest Rutherford)

B 群(A 群の科学者・自然哲学者の業績) A. 相対性理論を構築した。

B. 波源や観測者が動いている時、波の波長や周波数が異なって観測されるが、速度と周 波数の間の関係式を見出した。

C.光線の進み方に対し 「最小時間の原理」 を発見した。

D. 陰極線を構成する粒子 (電子) が水素イオン (陽子) より非常に軽いことを見出した。 E. 元素を原子量順に並べ、周期表を初めて作成し、当時未発見の元素を予測した。 F. エーテルが光速度に関係しているかどうかを調べる実験を行い、光の速度は観測者が

静止しているか動いているかにかかわらず、変わらないことを示した。

G.黒体放射の公式を改良し、振動数 ν の光が hν (エネルギー量子) の自然数倍のエネル ギーを持つことを見出した。

H.分割できないもの (アトモス) が万物の根源 (アルケー) であると唱えた (古代原子論)。 I. 具体的に光速度の値を初めて算出した。

J. 記録上最古の自然哲学者であり、万物の根源は水であると主張した。 K.光をエネルギー E = hν を持つ粒子と考え、光電効果を説明した。 L. 赤外線を発見した。

M. 定比例の法則や倍数比例の法則を根拠として近代原子説を唱えた。

N. 質量保存の法則を発見し、「化学要論」にて元素をリストアップした表を作成した。 O.「火、水、土、空気」の離合集散から万物ができるとする四元素説を初めて唱えた。 P. 同温度、同圧力、同体積の全種類の気体は同数の分子を含むという仮説を発表した。 Q.電子に量子条件と振動数条件を課し、水素原子のスペクトルの説明に成功した。 R. 土星型原子モデルを提唱した。

S.金と α 粒子の衝突実験から、金原子の中心に小さな原子核があることを説明した。 T.四元素説を「熱・冷」「湿・乾」の性質と関係づけ、以後四元素説は中世を通じ主要な

物質観となった。

(解答例)

(1)D (2) O (3) F (4) L (5) B (6) M (7) T (8) J (9) P (10) C (11) E (12) G (13) R (14) H (15) N (16) I (17) A, K (18) Q (19) S

(15)

(解説)  

講義中に全て話している内容ですので、解説は省略します。(3), (4), (9), (10), (16) あた りはやや難しいかもしれません。ドップラーやラザフォードは意外と認識されていたので すが、アインシュタインが相対性理論を作った人であるということを知らない人が (多数 というほどではないですが) 意外とたくさんいました。

II. (20点)

以下の光のレンズに対する問いに答えなさい。

(1) レンズの焦点及び焦点距離とは何か、答えなさい。

(2) 薄い両凸レンズ (両方の面が凸であるレンズの) 2 つの球面の曲率半径をともに 50 cm とする。この時、レンズの焦点距離はいくらになるか計算しなさい。但し、焦点距離 f に ついてのレンズ製作者の公式は

1 f =

( n1 n2 − 1

) ( 1 R1 +

1 R2

) .

で与えられる。また、 レンズの屈折率を n1 = 1.5, 空気の屈折率を n2 = 1 とする。

(3) 太陽の直径を 1.4 ×109 m, 太陽と地球の距離を 1.5 × 1011 mとする。(2) のレンズを 使って太陽の像を作る時、像の位置と直径を答えなさい。

(ヒント: 太陽は地球から非常に遠いので、太陽からくる光は互いに平行とみなしてよい。)

(解答例)

(1) 焦点: レンズの中心を通り、レンズに垂直な直線 (光軸と呼ばれる) に平行に光を当て た場合、これらの光線がレンズを通過した後交わる点のこと。通常前後に 2 つある。 焦点距離: レンズの中心から焦点までの距離。

(2) 与えられたレンズ製作者の公式に、R1 = R2 = 50 cm としてそのまま代入すると、焦 点距離 f は

1

f = (1.5/1 − 1)( 1 50+

1 50

)

= 0.5 × 2 50 =

1

50 (1)

となる。従って、求める焦点距離 f は  f = 50 cm.

(3)太陽は地球との距離が非常に遠いので、太陽からレンズには互いに平行な光線が来るも のと考えられる。従って、像は (1) からレンズの焦点、つまりレンズの後方 f=50 cm の所 にできる。像の直径は、レンズの中心を通る光を考えれば求めることができる。倒立実像 の直径 d は 1.4 × 109 : d = 1.5 × 1011: 0.5 なので、d = 0.5 × 1.4 × 109

1.5 × 1011 = 4.7 × 10

3[m] =

4.7 mmとなる。

(16)

(解説)

(1)「レンズにどのように入ってくる光か?」を書いていない人が大勢いました。

(2) はレポート問題で出した問題を数字を変えた問題なので、多くの人が正答していまし た。計算を間違えていた人もいるのですが、予めどのような答えになりそうか (例えば桁 数) を予測すれば、酷い計算間違いはかなり減らすことができます。電卓持込可でしたの で、落ち着いて計算すればできたはず。

(3) これは難しかったでしょうか。途中までトライしていた人は 2 割程度で、正答は 2 人 ほどでした。(2) で求めた 50 cm = 0.5 m を 50 m の意味に捉えて代入してために惜しく も間違えた人がいました。単位には気をつけましょう。

( 選択問題 )

(40点)

以下の III., IV. から大問を一つ選び解答しなさい (選んだ問題に○をつけること)。ま た、記号は必要に応じて各自定義しなさい。

III.

(1) ヤングの干渉実験とは何か、実験のセットアップの図を書き、説明しなさい。また光 の波長との関連はどうか?

(2) (1) 以外で、光の波動説と粒子説について知るところを述べなさい。

(解答例)

(1) (図は省略) ヤングの干渉実験とは、イギリスの物理学者トーマス・ヤングが光波の干 渉を示すために、19 世紀初頭に行った実験である。この実験が、19 世紀光の波動説が優 勢に立つ大きなきっかけとなった。

ヤングは太陽光を単スリットで絞り、その単スリットから等距離に 2 つのスリット (複ス リット) を置いた。光を単スリットが通過するとき、波動特有の現象である光波の回折が生 じ、単スリットの位置を新たな波源として球面波が発生する。光波の場合は水面上に起こす 波の場合とは違い位相の調節が難しいが、単スリットから等距離の位置に複スリットを設置 することによって、複スリットで回折を起こす 2 つの光波の位相を揃えることができる(現 在ではレーザーを使って同位相の光波を発生させることができるので、その場合は最初の単 スリットは必要ない)。複スリットの後方にスクリーンを置くと、複スリットから出てきた 2 つの光波の干渉により、光波が進む距離の差に応じてスクリーン上に明線 (合成波の腹)と 暗線 (合成波の節) が交互に現れる。すなわち、2 つの光波が進む距離の差は複スリットと スクリーンの距離を L, スクリーン用で 2 つのスリットから等距離にある点と、中央の明線 とスクリーン上の任意の一点との距離を x , 複スリット間の間隔を d とすると、2 つの光波

(17)

る。従って、隣り合う明線 (暗線) の間隔は ∆x = L

dλ となり、これは光の波長を拡大して 観測していることに対応している (通常 L は 1 m 程度であり、d は 1 mm 以下である)。

(2) 光の波動説はホイヘンスの提唱を初めとする。1690 年に出版した「光についての論 考」の中で、回折などの波動特有の現象について論じ、それらの性質をホイヘンスの原 理 (ホイヘンス=フレネルの原理とも呼ばれる) にまとめた。ほぼ同時期にニュートンが

「プリンキピア」や「光学」の中で光の本質は粒子であるという粒子説を提唱した。粒子 説、波動説共に幾何光学で仮定として用いられている光の直進性や、光と光が相互作用し ないこと、光の反射や屈折の法則が説明できる。

18 世紀には粒子説が主流であったが、19 世紀にヤングの干渉実験が行われたことや、 またその後にフレネルによる光の偏光の説明や回折の強度分布を光波の重ね合わせによ り説明した (後、アラゴスポットや、薄膜の干渉を書いていた人も何人かいました)。更に 光の粒子説と波動説では、媒質中の光速が空気中より速いか遅いかという重大な違いがあ るが、1850 年にフーコーが水中での光速が空気中での光速より遅いことを実証し、波動 説がほぼ確立した。また、マックスウェルにより電磁気学の基本法則がまとめられ、そこ では電磁波が光速で伝わることから、光が電磁波の正体であることが示され、ヘルツが後 に実験的にそのことを確かめた。

以上のようにして光の波動説はほぼ確立されたが、19 世紀後半から 20 世紀初頭にか け、ヘルツやレーナルト等により光電効果の実験的な研究が行われた。光電効果は光を金 属に当てると、電子が出てくるという現象である。この現象は古典電磁気学では十分に説 明できないが、1905 年にアインシュタインが光は E = hν のエネルギーを持った粒子で あると仮定したことで理論的な説明が行われた。その他に光が粒子としての性質を持つ実 験としてはコンプトン効果と呼ばれる、光と電子を散乱させ、その際X線の波長が伸びる という効果の観測が行われた。現在では光は粒子と波動の性質を併せ持つということが、 量子力学の結論として確立している。

IV.

(1) ローレンツ変換とは何か説明しなさい。必ずしも数式を使う必要はない。

(2) 双子のパラドックスとは、どんな点がパラドックスなのか述べなさい。また、特殊相 対性理論ではこのパラドックスは解決されているが、どのようなことが起こっているか述 べなさい。

(解答例)

(1) ローレンツ変換は運動系における電磁気学の法則 (具体的にはマックスウェル方程式) が 2 つの等速度運動している座標系 (慣性系と呼ばれる) で変わらないようにする座標の 変換である。初め、ラーモアやローレンツによって提案されたが、後にアインシュタイン

(18)

によって光速度不変の原理からより簡単に導出することに成功した。それによると、ロー レンツ変換は ct 軸と x 軸によって生成される時空間の座標において、常にこれらの軸が 光の世界線に対して対称である変換として特徴付けられる。ローレンツがマイケルソン・ モーリーの実験を説明するために導入したローレンツ収縮や、時間間隔の伸びなどはロー レンツ変換の結論として自然に導き出される。

(2) 双子のパラドックスとは双子の兄弟のどちらか一方 (ここでは兄としよう) がロケット に乗り、出発し戻ってくる状況で生じるパラドックスである。このパラドックスは、運動 している座標系での時間間隔を静止している座標系で見ると長くなる (時間間隔の伸び) に由来する。単純に考えると、弟から見ると兄は動いているため、兄の時間の進みが遅 く、戻ってきたときには「兄の方が若くなる」と期待できる。一方兄から見るとまた弟は 動いているため、弟の時間の進みが遅く、戻ってきたときには「弟のほうが若くなる」と 期待できる。この両方の視点からは括弧で括った部分において矛盾した結論が導き出され る。これが双子のパラドックスである。

この問題は時空座標上で兄と弟の世界線を書き、お互いにとって同時刻の線を書き込む と理解できる。すなわち、兄が一瞬加速度座標系に乗り移るときにこれらのパラドックス が解け、(図は講義ノート 11 回目 の図を参照してください)。その間弟は年をとり、結果 兄のほうが若くなる。

V. (ボーナス問題) (10 点) 講義を受けて、興味を持ったこと、話してほしかったこと などがあれば自由に記しなさい。

(感想)

他大学での個別指導+講座準備の時間と法政での講座準備時間を合わせると、週 45 -50 時間以上働いていたはずでかなり大変でした。恐らくもう少し最初にきちんとできていれ ば、量子論や宇宙のところもよりたくさん話せたのではないかという思いはあります (宇 宙のことについて話してほしいという声多数)。私は宇宙が専門ではないのですが、ワイ ンバーグの「宇宙最初の三分間」という本はおススメです (やや理系向けですが、最初の ほうは十分読めると思います)。ちくま学芸文庫で買うことができます。

実験をやってほしかったという声が多数ありましたが、お金と実験道具があればできる のですが、中々難しいですね・・・。今はシミュレーションに取り組み始めたところで、物 体を置くなどの基礎的なところから新たに勉強しています。そうすることで、より「動く 教材」が増えるのではないかと目論んでいます。このあたりの挑戦については、私の知る 範囲では恐らく琉球大物理の「物理シミュレーションによる視覚化を用いたインタラク

(19)

まったという反省があります (あと後期の前半にそれほど準備できなかったことも影響し ました)。今季の授業ですと、高校範囲くらいまでは何とか終わらせた位だと思われます。 全部話すのはとても難しいのですが (電気・熱を含めると最低 2 年程度かかるでしょう か) 、やはり授業計画には余裕を持つことが大切に思います。

数式は、途中から微分を放棄して進めました (本当は自然法則は微分で書けているとい うことは、是非頭にとどめておいてもらえると良いです)。あと、中学・高校の段階で計算 問題にあまり触れていない人が多いようですので、もう少し授業中に 2, 3 題程度計算問 題も必要に思いました。やはり多少の数字の感覚 (フェルミ推定と呼ばれるものです) は 将来物理をやらなくても役立つのでは?と思います。この講義を一年間聴講した方は程度 の多少はあれ、科学的な本を読む素地ができていると思うので、今後も時々科学の本を読 んだり、科学館などに行ったりして気にかけてもらえると、講義担当者としては有難いで す。あと遊びの話ももう少し入れれば、私自身の科学に対する造詣も深まると思います。

今年は初年度ということもあり、一杯一杯でした。来年度からは今年の基礎の上に立て るはずなので、ようやくスタートラインに立てると考えています。

図 1: 凸レンズで出来る像 (2)光線の進行は図 1 のようになる。像は 倒立実像 になる。光線は焦点 F 1 , F 2 を通る光線 と、レンズの中心をそのまま通り抜ける光線の 3 本の赤線のうち、少なくとも 2 本を書けば よい。レンズの焦点 F 2 から物体までの距離 S O = BO − OF 2 = 50 − 40 = 10 cm

参照

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