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食品混入異物の同定試験の体系化 あいち産業科学技術総合センター|研究成果|研究報告書

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Academic year: 2018

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1食品工業技術センター 分析加工技術室(現防災局 消防保安課 産業保安室)2食品工業技術センター 分析加工

技術室

研 究 ノート

食品混入異物の同定試験の体系化

井 原 絵 梨 子

1

、 長 谷 川 摂

2

、 瀬 見 井 純

2

Systematization of Identification of Foreign Substances in Foods

Eriko IHARA

*1

, Osamu HASEGAWA

*2

and Atsushi SEMII

*2

Food Research Center*1*2

食 品 混 入 異 物 の 同 定 は 、 限 ら れ た 試 料 か ら で き る だ け 多 く の 情 報 を 引 き 出 し 、 得 ら れ た 情 報 か ら 総 合 的

に 判 断 し な け れ ば な ら な い 。 そ の た め 、 適 切 な 分 析 手 法 の 選 択 と 専 門 的 な 材 料 知 識 が 必 要 で あ る 。 本 研 究

で は 、 知 識 と 経 験 の 少 な い 分 析 者 向 け の 同 定 試 験 マ ニ ュ ア ル の 作 成 を 試 み た 。 有 機 系 及 び 無 機 系 材 料 由 来

異 物 の 種 類 別 に 同 定 手 法 を ま と め た マ ニ ュ ア ル を 作 成 し 、 異 物 同 定 試 験 の 体 系 化 を 図 っ た 。

1.はじめに

食品に混入する異物の種類は多く、分析手法も多岐

にわたるため、異物の同定には熟練した知識や経験が必

要である。限られた試料から同定に必要な情報を最大限

引き出さなければならないが、万能な分析手法はないた

め、事前に行うべき分析手法を絞り込み、手順を考えた

上で、効率良く分析を進める必要がある。また、得られ

た情報やデータを基に、総合的に判断して同定を行わな

ければならない。そのため、分析者の知識と経験、保有

分析機器等が豊富であるほど、異物に適した分析を行う

ことができ、より正確な同定が行える。

本研究では、知識と経験の少ない分析者向けの同定

試験マニュアルを作成し、異物の同定試験の体系化を試

みた。前報 1)では、食品に混入する事例が多い有機系材

料について、各種文献や過去の事例を基に異物の種類ご

とに既設の機器を用いた異物試験マニュアルを作成した。

今回は無機系材料について異物試験マニュアルを作成し、

有機系及び無機系異物の同定試験の体系化を図った。

2.実施方法

2.1 試験サンプル

当センターでの相談事例から、食品に混入する事例が

多い無機系異物を試験サンプルとして選定した。試験サ

ンプルは、組成が明確な食品製造機器、器具、包装資材

等から採取した。

2.2 異物別分析手法の収集

混入異物は人の五感によって総合的に推測されるこ

とも多くあるが、クレームへ対応するためには科学的分

析手法を用いた同定が必要となる。そのため、推測を確

定へ導くための根拠となる分析手法を異物の種類別にま

とめた。

異物の分析手法は、異物対策に特定した成書や異物

サンプルに関する専門書、JISに規定された鑑別方法、

分析機器メーカーのテクニカルマニュアル、当センター

で過去に対応した技術相談指導事例等から抽出した。

2.3 同定分析のための標準データの取得

選定した試験サンプルについて、次に示す当センタ

ーの保有分析機器を用い、画像やスペクトル等のデータ

を取得した。これを同定の指標となる標準データとし、

マニュアル作成に使用した。

・デジタルマイクロスコープ

(株)キーエンス製 VHX-2000

・生物顕微鏡

(株)ライカ製 DM 2500

・フーリエ変換赤外分光光度計

(a)日本分光(株)製 FT/IR-480 Plus

(b)サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製

NICOLET iS5

・顕微フーリエ変換赤外分光光度計

サ ー モ フ ィ ッ シ ャ ー サ イ エ ン テ ィ フ ィ ッ ク(株)製

NICOLET iN10 MX

・走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置

日本電子(株)製 JSM-6010 PLUS/LA

・エネルギー分散型蛍光X線分析装置

(株)島津製作所製 EDX-8000

・示差走査熱量計

(株)リガク製 DSC8230

3.実施結果

収集した分析手法や標準データについて、異物別に

(2)

無し(不定形固体)

やわらかい (弾力がある)

硬い

クラック・白化・ささく れ等の有無

SUS製刃で削れるか 水による形態の変化

有り (膨潤・軟化・溶解等)

無し

無し・削れない

有機物・ 無機塩類

金属光沢・ 展性有

樹脂 有り・削れる

鉱物・セラミック・錆等 (骨、貝) 金属

不透明・光沢無し 光透過性有

無機系・複合材料

ガラス 外観の特徴

有り

組織、構造、組 成(成分分析)等 による確認へ 生物・

工業製品

個別に同定試験マニュアル作成

分類し、当センターにおける同定までのアプローチ方法

をマニュアル化した。必要器具や試薬を記載し、顕微鏡

観察や化学検査による同定については、写真で形状や色

の判別ポイントを図示した。学術的な専門用語について

も、異物の同定試験の経験がなく、材料の知識がない分

析者にも理解しやすいように用語説明を付し、参考とな

る成書のページやインターネットのサイトを記載した。

金属異物で混入事例が多い歯科材料について作成し

た同定試験マニュアルの例を図 1に示す。

前報1)で作成したマニュアルと合わせ、固体異物につ

いて外観観察や簡易な化学的・物理的処理を行って判別

できる同定方法の体系化を図った (図2)。

4.結び

食品に混入する事例が多い有機系及び無機系材料に

ついて、異物の種類別に同定手法をまとめたマニュアル

(非公開)を作成し、体系化を図った。しかし、異物試験 には常に例外があるため、注意が必要である。

今後は当センターに異物試験の相談で来所した依頼

者に説明するための資料を作成して活用する予定である。

また、新たな手法や標準試料等を入手した際は、データ

の更新・追加を随時行っていく予定である。

図1 歯科材料の同定試験マニュアル(例)

文献

1)中田絵梨子,石原那美,瀬見井純:あいち産業科学 技術総合センター研究報告,5,116(2016)

図2 異物の同定試験の体系化

歯科材料(金属)

【特徴】

・喫食中(特に飴やキャラメル)に出てくる事例が殆どであり、消費中の混入が疑われる。 ・金属製の歯科補修材には金銀パラジウム合金とアマルガムがよく見られる。

○顕微鏡観察

金属光沢を有し、形状は歪で裂溝(奥歯の溝)のような形状が見られることがある。 ※アマルガムは黒ずんでいることが多い。

   金銀パラジウム合金 アマルガム

○SEM-EDS分析

検出元素:Ag,Cu,Pd,Au,(Zn),(In) 検出元素:Ag,Hg,Sn,Cu,(In) ・アマルガムは1970~80年頃に多くの虫歯治療に使用されたが、水銀を含んでいることから健康被害が懸念され、 現在取り扱っている歯医者は殆どない。しかしながら、過去に治療したアマルガムが取れて、異物となる事例は多 い。

参照

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