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第 13 章 情報の非対称性
13.1 情報の重要性
中古車市場から見る情報の重要性: アカロフのレモン市場 売り手: 自分が今まで使っていた自動車を売りたい。
• 今まで使っていたので、その車についてよく知っている。 買い手: 新たに自動車を買いたい。
• 買う車の過去の使用方法、品質はわからない。 結果: お互いがお互いの行動を考える。
• 売り手は品質の悪い車 (レモン) を高い値で売ろうとする。
• 買い手は、売り手が「レモンを売りつけてくるかもしれない」と思って、そのリスクを 割引いた分、安く買おうとする。
• 品質の良い車 (プラム) の売り手は、買い手が「この車がプラムだとは信じずにレモン かもしれないと思って安く買おう」とするので、品質に見合うだけの売値がつかないこ とがわかる。
• プラムの売り手は市場に車を出さなくなる。市場に出るのはレモンだけ。
• 買い手と売り手の情報が非対称であるため、市場が歪められる。 経済学と情報: 1970 年代以降盛んに研究される。
• 1970 年代まで、情報の非対称性といった問題を重視されなかった。
上級ミクロ経済学:影山純二
13.2 情報の非対称性による問題
民間の健康保険: 情報の非対称性の結果、どんな問題が起こるか。 加入前の問題: 保険契約前の問題
健康な人: 安ければ (自分が健康を害するリスクに見合う価格なら) 保険に入ろうと思う。 健康でない人: 多少高くとも (自分が健康を害するリスクに見合う価格ならば) 保険に入ろう
とする。
保険の提供者: 健康な人と健康でない人の見分けがつかない。
• 両者の間の価格で保険を提供しようとする。
• 健康な人は保険に加入せず、健康でない人ばかりになる。
• 保険料は健康でない人向けの価格になる。
• 健康な人に対する健康保険市場がなくなる。
結果: 保険に入る人が自然と一方のタイプに選択されてしまう。
• 逆選択 (adverse selection) によって問題が生じている。
• 取引を行う前に情報の非対称性 (取引を行う一方が他方の品質がわからない) が存 在するため、取引自体が歪められる。
• 先ほどの中古車市場問題も逆選択の例 加入後の問題: 保険契約後の問題
加入者の行動: 保険があるので、健康を害しても金銭的に補償される。
• 保険がない状態より健康に対して無頓着になる。 保険の提供者: 加入者の行動を逐次観察することはできない。 結果: 保険に入るということが加入者の行動を変えてしまう。
• モラルハザード (moral hazard) によって問題が生じている。
• 取引を行った後に情報の非対称性 (取引を行う一方が他方の行動を観察できない) が存在するため、取引自体が歪められる。
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上級ミクロ経済学:影山純二
13.3 解決法 ( 例 )
逆選択に対処する方法: シグナリングを利用
中古車市場の例: プラムの売り手が「この車はプラムだ」というシグナルを送る。
• 例えば、カーディーラーによる品質保証。
• レモンとプラムそれぞれが別々の市場で売買されるようにする (分離均衡)。 健康保険の例: 保険会社に「健康だ」というシグナルを送る。
• レモンとプラムそれぞれが別々の市場で売買されるようにする (分離均衡)。 モラルハザードに対処する方法: 適切な誘因システム (incentive system) を構築
健康保険の例: 保険会社が、加入者が健康であればトクをするシステムを導入する。
• 例えば、医療費の一部自己負担、前年健康だった場合の割引制度。
• 片方 (保険会社) が他方 (加入者) の行動を、自らの利益に合致するよう誘導する。
13.4 課題
1. 保険、中古車市場以外の逆選択の例を一つ挙げ、説明せよ。 2. 保険以外のモラルハザードの例を一つ挙げ、説明せよ。
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