公共経済学 第 23 講 講義ノート 1/ 2
23 個別分野の課題 1 : 公的保障の意義と課題
23.0 今回のアウトライン
A. 社会保障の概要と、公的扶助の問題点、改善策を理解する
23.1 社会保障とは何か
A. アメリカのニューディール政策における「社会保障法」(1935) が始まり 1. 国民の生存権の維持のための政府による所得保障と医療保障を指す B. 社会保障の領域は社会保険、公的扶助、社会福祉、公衆衛生
C. 逆選択問題回避のために国民を強制加入
23.2 公的年金制度
A. 公的年金は社会保険であり長寿の所得リスクを保障
B. 日本の年金保険は設立当初の積立方式に賦課方式を導入する修正積立方式 1. 積立方式:老後に受け取る資金を勤労時に徐々に積み立てて世代毎に保険化 2. 賦課方式:勤労時に現役老齢世代の年金を支払い、老後は逆に受け取る C. 先進国の公的年金の課題は人口減少に直面し賦課方式のネズミ講が維持困難
1. 賦課方式の公的年金は人口成長していればネズミ講方式
23.3 公的扶助と課題
A. 生活保護を受けた方が働かずに最低賃金よりも高い所得という矛盾 B. 政府が提示する余暇と所得の予算制約が特殊
グラフ1. 生活保護がある場合の予算制約と無差別曲線
Ver. 1.5 Masumi Kawade, 2017
公共経済学 第 23 講 講義ノート 2/ 2
C. 働くと生活保護よりも生活が良くなる給付金制度を提案
グラフ2.生活保護に新たな給付金を加えた予算制約と無差別曲線
1. 政府も生活保護の扶助費より労働への給付金の方が支出を節約 → 効率的 2. 就労にすぐ課税せず、生活補助をわずかに減らす方式を(1) 1
D. 一括移転である最低限所得保障 ((2) )の意義と課題 1. 複雑すぎる社会保障の制度の間に落ちる人々、逆に不適正な受給者の存在 2. 税控除や細かな補助制度も簡素化される一方、所得減や負担増の人々も
→子どもの数、年齢や病気等に関係のない一人一定額の給付 3. 経済学的にも市場活動の超過負担を削減する一括移転として妥当
4. 税控除や補助制度を残せば効率化は進まず政府支出急増、厳格にすれば高 所得者が受給の一方で母子家庭、障害者等の困窮者支援の削減
23.4 確認問題:次の文章の正誤について答えなさい
A. 公的年金における賦課方式は負担と給付に世代間の差を生むことがある B. 生活保護は働かずに保護を受けようとする行動を誘発する
C. 負の所得税とは生活保護受給者にも課税する負の側面を持つ税である D. 最低所得保障を一括所得補助と考えれば、経済学的には望ましい
1Friedman, M.(1962), Capitalism and Freedom, Chicago: University of Chicago Press
Ver. 1.5 Masumi Kawade, 2017